JP4290133B2 - 自動車のフロアパネル - Google Patents

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本発明は、自動車のフロアパネルに係り、車体強度や乗り心地の向上を図る技術に関する。
モノコック構造の自動車(以下、モノコック車と記す)では、薄鋼板をプレス成型することで多数のボディパネルを製造した後、これらボディパネルをスポット溶接等により接合することによりボディが製造される。車室の床面を形成するフロアパネルは、乗員やシート等の重量を支えるための強度や剛性を確保すべく、その下面や上面にフロアフレームやフロアクロスメンバ等のリーンフォースメントを備えることが多い(特許文献1参照)。リーンフォースメントは、例えば鋼板をコ字断面形状に成形したものであり、両端部に形成されたフランジ等によってフロアパネルにスポット溶接される。
フロアパネルの下面にフロアフレームを設ける場合、面振動および騒音の抑制や、応力集中に起因する疲労の抑制、衝突エネルギの効果的な分散等を図るべく、フロアフレームの断面をその全長にわたって大きく変化させないことが望ましい。そのため、例えば、フロアフレームは、電着塗装液を排出するためにフロアパネルが上下方向に屈曲していた場合(すなわち、上下方向に凹凸が形成されていた場合)には、フロアパネルの屈曲に沿って屈曲することで全高が略一定になるように設計されることが一般的である。
特開2003−252251号公報(段落00048〜0053、図1)
フロアパネルに沿ってフロアフレームを屈曲させた場合、以下に述べる問題が発生することがあった。例えば、図6(a)に示すように、フロアパネル1の下面に局部的な凸部22が存下し、この凸部22に沿うようにフロアフレーム31に屈曲部31aを形成した場合、屈曲部31aの下端のみが他の部位に対して低くなってしまう。そのため、自動車の最低地上高Zが小さくなって悪路走破性等が低下したり、あるいは、最低地上高Zを確保するために車高を大きくする必要が生じたりすることがあった。一方、このような問題を防ぐべく、図6(b)に示すように、フロアフレーム31にフロアパネル1の凸部22が進入する逃げ部31bを形成した場合、フロアフレーム31には、逃げ部31bの中央付近に断面の小さな脆弱部31cができてしまい、前述の応力集中等が惹起される虞がある。
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、フロアパネルが下方に屈曲していた場合においても、最低地上高を徒に小さくすることなくリーンフォースメントによる補強を実現した自動車のフロアパネルを提供することを目的とする。
請求項1の発明は、金属板を素材としてプレス成形加工により形成され、上面に形成された凹部と、当該凹部に対応して下面に形成された凸部とを有する自動車のフロアパネルであって、前記凸部を含む範囲で前記下面に固着され、当該凸部に対応する位置でその下部が地面に対して略平行な直線状に形成されるとともに、当該凸部が進入する逃げ部をその上部に有したロアリーンフォースメントと、前記凹部を含む範囲で前記上面に固着され、当該凹部に対応する位置でその上部が略直線的に形成されるとともに、前記ロアリーンフォースメントに対応する位置で前記凹部に向けて延設された壁部をその下部に有するアッパリーンフォースメントとを備え、シートの脚部が前記アッパリーンフォースメントに支持されたことを特徴とするたことを特徴とする。
請求項1の発明によれば、ロアリーンフォースメントに逃げ部を設けることによる強度や剛性の低下がアッパリーンフォースメントの壁部により補完されるため、ロアリーンフォースメントの下部を略直線状にして比較的大きな最低地上高Zを確保しながら、フロアパネルにおける脆弱部の発生が無くなり、面振動および騒音の抑制や、応力集中に起因する疲労の抑制、衝突エネルギの効果的な分散等を実現することができるとともに、シートの支持剛性が向上することにより、乗り心地の向上を図ることができる。
以下、図面を参照して、本発明を適用した自動車のフロアパネルの一実施形態を詳細に説明する。
図1は実施形態に係る乗用車の側面図であり、図2は実施形態に係るフロアパネルを斜め上方から視た斜視図であり、図3は同フロアパネルを斜め下方から視た斜視図であり、図4は図2中A部の要部透視拡大図であり、図5は図4中のB矢視図である。
≪実施形態の構成≫
<全体構成>
本実施形態は、図1に示すように、ハッチバック乗用車のフロアパネルに本発明を適用したものである。フロアパネル1は、比較的薄い鋼板を素材とするプレス成形品であり、前縁に接合されたフロントダッシュボード2と、後縁に接合されたリヤフロアパネル3とともに、車体4の床面を形成している。フロアパネル1の上面には、前後方向略中央にフロントシート5が設置され、後端側に折り畳み式のリヤシート6が設置されている。リヤシート6は、リヤフロアパネル3の前端にヒンジ結合されるとともに、使用時(引き出し時)において、スタンド脚7の先端がフロアパネル1の上面に設置されたキャッチ装置8に保持される。また、フロアパネル1の下面には、前後方向略中央(すなわち、フロントシート5の下方)にフュエルタンク9が設置されている。
図2に示すように、フロアパネル1は、平面視で略正方形を呈するとともに、ビードや凹凸を形成することにより平面部の剛性が確保されている。フロアパネル1の左右側縁1Sl・1Srには略コ字断面形状の左右サイドシルインナ3l,3rがそれぞれスポット溶接されており、これらサイドシルインナ3l,3rに外板パネルであるサイドシルアウタ(図示せず)が接合される。
フロアパネル1における車幅方向の中央部には、前後方向での曲げ剛性を高めるために、断面形状が略台形をなし、室内側に突出した縦フロアトンネル11が前後方向に延設されている。そして、縦フロアトンネル11の前寄りの位置には、左右方向についての曲げ剛性を高めるために、縦フロアトンネル11の側部から左右サイドシルインナ3l,3rに向けて左右横フロアトンネル12,13が、室内側に突出して形成されている。
左右横フロアトンネル12,13は、フロントシート5側の床面の一部をなす前床部1fhから前壁12fw,13fwが立ち上げられ、前壁12fw,13fwの上端から後方へ延出された後に傾斜面12ic,13icでリヤシート6側の後床部1rhに接続されている。
図3に示すように、フロアパネル1の下面における傾斜面12ic,13icの後端側には、断面形状が略コ字形状をなす中間部フロアクロスメンバ14l・14rが、その前後縁のフランジがスポット溶接されることによって接合されている。これにより、車幅方向に延在する閉断面部が傾斜面12ic,13icの後端側の下面に形成されることになる。左右横フロアトンネル12,13によってフロアパネル1の下面に画成された下向きに凹となる空間は、フュエルタンク9の設置場所として利用される。また、フロアパネル1の下面におけるフュエルタンク9の左右両側部には、前後方向に沿って側部フロアフレーム15l・15rが延設されている。そして、フロアパネル1の下面におけるフュエルタンク9の前方中央には、縦フロアトンネル11の内壁を連結するかたちで、前部フロアクロスメンバ16が設置されている。
図2,図4(右側のみ示す)に示すように、フロアパネル1の後床部1rhには、塗料排出凹部21,22が縦フロアトンネル11の左右に形成され、更に、塗料排出凹部21,22の後部には塗料排出孔23がそれぞれ穿設されている。塗料排出凹部21,22は、後方に向かってなだらかに下がる傾斜部21ic,22icと、後端で略垂直に立ち上がる立ち上がり部21rw,22rwとを有している。フロアパネル1が電着漕から引き上げられると、電着塗料は、横フロアトンネル12,13やサイドシルインナ3l,3rから塗料排出凹部21,22に流れ込んだ後、塗料排出孔23から落下して回収される。
図3〜図5に示すように、フロアパネル1の後床部1rhの左右下面には、鋼板プレス成型品の後部ロアフロアフレーム(ロアリーンフォースメント)24が接合されている。また、図2,図4,図5に示すように、フロアパネル1の後床部1rhの左右上面には、後部ロアフロアフレーム24と対峙するかたちで、これも鋼板プレス成型品の後部アッパフロアフレーム(アッパリーンフォースメント)25が接合されている。
<後部ロアフロアフレーム>
後部ロアフロアフレーム24は、その下面が略直線状に形成された略コ字断面形状を呈して前後方向に延設されており、その上面には塗料排出凹部21,22におけるフロアパネル1の下面が進入する逃げ部24aが形成されている。後部ロアフロアフレーム24は、前後のフランジ24b,24cがフロアパネル1にスポット溶接(図4中に、スポット溶接部を符号SWで示す)されている。
<後部アッパフロアフレーム>
後部アッパフロアフレーム25は、左右方向に長い矩形の横板部25aと、横板部25aの中央から前方に向けて延設された縦板部25bとからなる略T字形状を呈している。
横板部25aは、後床部1rhの上面から塗料排出凹部21,22の傾斜部21ic,22ic側にオーバハングしており、その後端が後床部1rhにスポット溶接されている。横板部25aの左右前端からは下方(すなわち、塗料排出凹部21,22)に向けて第1壁部25cが延設され、第1壁部25cの下端からは傾斜部21ic,22icにスポット溶接される接合突片25dが前方に延設されている。なお、横板部25aにはキャッチ装置8を固定するボルトや爪が挿通される3つの取付孔25eが穿設され、中央の取付孔25eの下面にはそのボルトがねじ込まれるウエルドナット26が固着されている。
縦板部25bは、横板部25aの前端中央から前方に向けて略水平に延設され、その左右前端が後部ロアフロアフレーム24のフランジ24bとともに傾斜部21ic,22icにスポット溶接されている。また、縦板部25bの左右側縁からは、塗料排出凹部21,22の傾斜部21ic,22icに向けて第2壁部25fが延設されている。なお、第2壁部25fは、前述した第1壁部25cに連続するかたちで形成されている。
≪実施形態の作用≫
本実施形態では、後部ロアフロアフレーム24の上部に塗料排出凹部21,22が進入する比較的大きな逃げ部24aが形成されているが、この逃げ部24aによる強度や剛性の低下が後部アッパフロアフレーム25によって補完される。すなわち、後部ロアフロアフレーム24は、横板部25aおよび第1壁部25cによってフロアパネル1との間に横方向の閉断面を形成する一方、縦板部25bおよび第2壁部25fによってフロアパネル1との間に縦方向の閉断面を形成する。これにより、後部ロアフロアフレーム24の下面が略直線状にして比較的大きな最低地上高Zを確保しながら、後床部1rhにおける脆弱部の発生が無くなり、面振動および騒音の抑制や、応力集中に起因する疲労の抑制、衝突エネルギの効果的な分散等を実現することができた。また、キャッチ装置8が後部アッパフロアフレーム25の横板部25aに固定されるため、リヤシート6の支持剛性が高くなり、乗り心地が向上した。また、左右横フロアトンネル12,13とリヤフロア3との間のフロアパネル1に電着塗料を排出するための塗料排出凹部21,22や塗料排出孔23を設けたにも拘わらず、該部におけるフロアパネル1の補強を確実に行うことができ、面振動および騒音の抑制や強度および剛性の向上を実現できた。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では後部アッパフロアフレームをT字形状としたが、後部ロアフロアフレームと同様に断面コ字形状としてもよい。また、上記実施形態はフロアパネルに対して前後方向に延設されたフロアフレームに係るものであるが、左右方向に延設されたクロスメンバに本発明を適用してもよい。また、上記実施形態は、フロアパネルに塗料排出凹部が形成されている場合を例にしたものであるが、フロアパネルに機器類を設置するための凹部が形成されいる場合等にも、本発明は当然に適用可能である。また、上記実施形態では、後部アッパフロアフレームに折り畳み式のリヤシートのスタンド脚部が支持されるものとしたが、固定式のリヤシートの脚部が支持されるものとしてもよいし、フロントシートの脚部が支持されるものとしてもよい。また、後部アッパフロアフレームや後部ロアフロアフレームのフロアパネルとの接合についても、ボルトやリベットによる締結等を採用するようにしてもよい。その他、フロアパネルの具体的構造等についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
実施形態に係る乗用車の側面図である。 実施形態に係るフロアパネルを斜め上方から視た斜視図である。 実施形態に係るフロアパネルを斜め下方から視た斜視図である。 図2中A部の要部透視拡大図である。 図5は図4中のB矢視図である。 従来のフロアパネルの例を示す側面図である。
符号の説明
1 フロアパネル
6 リヤシート(シート)
7 スタンド脚(脚部)
21 塗料排出凹部(凹部,凸部)
24 後部ロアフロアフレーム(ロアリーンフォースメント)
24a 逃げ部
25 後部アッパフロアフレーム(アッパリーンフォースメント)
25a 横板部
25b 縦板部
25c 第1壁部
25f 第2壁部

Claims (1)

  1. 金属板を素材としてプレス成形加工により形成され、上面に形成された凹部と、当該凹部に対応して下面に形成された凸部とを有する自動車のフロアパネルであって、
    前記凸部を含む範囲で前記下面に固着され、当該凸部に対応する位置でその下部が地面に対して略平行な直線状に形成されるとともに、当該凸部が進入する逃げ部をその上部に有したロアリーンフォースメントと、
    前記凹部を含む範囲で前記上面に固着され、当該凹部に対応する位置でその上部が略直線的に形成されるとともに、前記ロアリーンフォースメントに対応する位置で前記凹部に向けて延設された壁部をその下部に有するアッパリーンフォースメントと
    を備え
    シートの脚部が前記アッパリーンフォースメントに支持されたことを特徴とする自動車のフロアパネル。
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