JP4465607B2 - 傾倒センサ - Google Patents

Description

本発明は、車体の傾倒状態を検知する傾倒センサおよびその取付方法に関する。

一般に、傾倒センサは、車両が転倒したことを検知して、燃料カットやエンジン点火系統の電源しゃ断などを行うなどの種々の安全対策をとるために用いられている。

従来、この種の傾倒センサとしては、車体の傾倒状態に応じてケース内に回動自在に設けられた振子式のムーブメントが回動したときに、そのムーブメントに着磁された部分が所定位置に設けられた磁気センサによって感知されて車体が転倒したことを検知するようにしたものが開発されている（特許文献１参照）。

特開平２００１−２５６８７１号公報

そして、従来では、このような傾倒センサを、車体の左右方向の傾倒状態を検知できるように、ムーブメントの回動方向が車体の左右方向と一致するように車体に取り付けるようにしている。

解決しようとする問題点は、ムーブメントの回動方向が車体の左右方向と一致するように傾倒センサを車体に取り付けるのでは、車体が前後方向に傾倒した状態を検知することができず、車体が前後方向に傾倒した状態を検知するための傾倒センサを別途に取り付けなければならないことである。

本発明は、ケース内に回動自在に軸支されたムーブメントが回動して車体の傾倒状態を検知する傾倒センサにおいて、ケースの車体への取付面とムーブメントの回動面とのなす角が所定の角度となるようにムーブメントの回動軸をケース内に傾けて設けるようにしている。

その際、特に本発明では、ムーブメントの回動軸の両側に遊嵌され、小さい面積をもってムーブメントに当接するスペーサを介してムーブメンサをケース側に設置するようにしている。

本発明によれば、１つの傾倒センサを車体に取り付けるだけで、車体の左右方向および前後方向の傾倒状態をそれぞれ検知できるようになる。その際、特に、ムーブメントの回動とは異なる方向にケースが傾いてムーブメントがスペーサに押し付けられても、ムーブメントの軸方向の動きが拘束されてムーブメントが動かなくなる、いわゆる張り付き現象が生ずることを防止できるようになる。

図１および図２は、本発明に係る傾倒センサの基本的な構成を示している。

その傾倒センサにあっては、ケース１内に、着磁された振子式のムーブメント２がその回動軸３によって回動自在になるように設けられている。

そのケース１は、下ケース１１と上ケース１２とからなり、上ケース１２に下ケース１１をシール用のＯリング４を介してはめ込んで、そのはめ込み部分をフック結合することによって、防水構造となるように形成されている。上ケース１２には、車体側に取り付ける取付座９が設けられている。

上ケース１２の内部には、ムーブメント２の所定の角度以上の回動状態をホールＩＣ５が検知して、それがスイッチオン状態となったときに検知信号を出力するようにした検知回路が実装された回路基板６が取り付けられている。

ケース１２には、回路基板６からの電源Ｖｃｃ、アースＧＮＤおよび検知出力ＯＵＴの各端子が外部に引き出されるソケット部８が一体的に形成されている。

ムーブメント２には、図３および図４に示すように、円の中心にくるように回動軸３が隙間を介して挿入されるように軸穴２３が配設されており、上部には基準位置Ｏに対して対称となるように所定の開き角度α（例えば６２°）をもった切欠部２１が設けられ、その下部には基準位置Ｏが垂直方向にくるようにバランスをとるための重錘部２２が設けられている。

回路基板６に取り付けられているホールＩＣ５は、ユニポーラ感応タイプのもので、ムーブメント２の基準位置Ｏ上に配設されており、ここではムーブメント２が回動してその着磁されたＳ極が対向したときにスイッチオン状態になるようになっている。

そして、ムーブメント２の軸穴２３に隙間を介して挿入される回動軸３の両側にはそれぞれスペーサ７が遊嵌されており、そのスペーサ７を介してムーブメント２をケース１側に設置することによって回動軸３の両端がそれぞれ何ら強制的に軸支されることのない無拘束状態になるようになってる。そのスペーサ７によって、ムーブメント２のケース１内における軸方向の動きが規制される。

したがって、ムーブメント２の回動軸３がケース１側に何ら拘束されずにフリー状態になっているので、車体の振動が回動軸３を通してムーブメント２に直接伝わることがなくなるとともに、ムーブメント２の動きが良くなる。

また、スペーサ７は、図６に示すように、そろばん球状に形成されており、最小限の面積をもってムーブメント２に当接するようになっている。

したがって、ムーブメント２の回動とは異なる方向にケース１が傾いてムーブメント２がスペーサ７側に押し付けられても、両者の当接面が小さいために、ムーブメント２の軸方向の動きが拘束されてムーブメント２が動かなくなる、いわゆる張り付き現象が生ずるようなことを有効に防止することができるようになる。

なお、スペーサとしては、ムーブメント２との当接面が小さくなるようにするべく、図７に示すように、円錐台形状にするなどの他の形状にしてもよいことはいうまでもない。

上ケース１２の下部に形成されたムーブメント２の押え部分１２１によって回動軸３の上方を隙間Ｓを空けて覆うようにして、ムーブメント２が下ケース１１の所定位置から脱落しないようにしている。

また、車体の振動に対してムーブメント２が不安定に大きく揺れることがないように、ムーブメント２の軸穴２３に対して、上側部分と下側部分との重量比が１：９から３：７の範囲になるように最適設定されている。

ムーブメント２の上側部分と下側部分との重量比を変えた複数のサンプルを用いて実験を行った結果、その重量比が１：９から３：７の範囲によるものが、ムーブメント２に一定の振動を加えたときの安定性が良好であった。この場合、特に、重量比が２：８のものが最も良好な振動特性を示した。そして、この範囲を外れて上側部分の重量が大きくなると、それにしたがって重心位置が上方にずれてムーブメント２の動きが不安定になってしまう。

ここでは、ムーブメント２の上側部分に穴１０をあけたり、その下側部分中央にウエイト１３を埋め込んだりして、その重量配分を調整している。

したがって、ムーブメント２の回動軸３に対する上側部分と下側部分との重量配分が最適に設定されているので、ケース１の傾動に対して、適正なモーメントをもってムーブメント２を回動させることができ、車両走行時の振動によってはムーブメント２が不安定に大きく回動しにくくなる。

また、ムーブメント２の上部には、その回動の基準位置Ｏが中央にくるように比較的大きな開き角度αをもって切欠部２１が設けられているので、車両走行時の振動によってそのムーブメント２がその開き角度αの範囲内で振動してもホールＩＣが応動することがない。したがって、車両走行時の振動によって誤検知されるようなことがなく、車体が所定の角度以上に傾倒したときにのみホールＩＣがスイッチオン状態になる。

また、そのムーブメント２は、図３および図５に示すように、基準位置Ｏに対して対称となるように、図示の極性をもって着磁されている。すなわち、切欠部２１側の両端部分には微小な開き角β（例えば２７°）をもってＮ極部Ｎ１，Ｎ２が、またその各Ｎ極間には所定の開き角γ（例えば２４４°）をもったＳ極部Ｓ１が形成されている。

しかし、このような多極構造をとることによって、Ｎ極部とＳ極部との境における磁束密度の変化を急峻にすることができ、ムーブメント２が所定の角度以上に回動してＳ極部がホールＩＣ５に対向したときにスイッチオン状態になるときの位置決めを高精度に設定することができるようになる。

図８は、ホールＩＣ５のスイッチング状態に応じて車体の傾倒状態を検知するための検知回路の一例を示している。

ここでは、ホールＩＣ５がムーブメント２の所定の角度以上の回動状態を検知してスイッチオン状態になったときにハイレベルの検知信号を出力するような回路を構成している。ここで、抵抗Ｒ１およびコンデンサＣ２はホールＩＣ５の保護のためのローパスのフィルタを構成している。Ｃ１は、ノイズおよび発振防止のためのコンデンサである。

また、ここでは、車体が所定の角度以上の斜面で転倒した状態および倒立した状態をも検知することができるように、ムーブメント２が図３および図５に示すような着磁パターンになっている。

このように構成された傾倒センサにあって、特に本発明では、図９および図１０に示すように、ケース１の車体への取付面Ａとムーブメント２の回動面Ｂとのなす角θが所定の角度（１０°以上４５°以下の範囲）となるように、ムーブメント２の回動軸３をケース１内に傾けて設けるようにしている。

このようなムーブメント２の回動軸３をケース１内に傾けて設けるようにした傾倒センサを、その取付面Ａが車体の左右Ｘ方向に一致するように車体に取り付けることにより、車体が左右Ｘ方向に傾倒したときのみならず、車体が前後Ｙ方向に傾倒したときにもムーブメント２がその傾倒状態に応じて回動して、車体の左右Ｘ方向および前後Ｙ方向の傾倒状態を検知することができるようになる。

その場合、ムーブメント２の回動面Ｂとは異なる方向に車体が傾いてムーブメント２がスペーサ７側に押し付けられても、スペーサ７によってムーブメント２の回動軸３がケース１側に何ら拘束されずにフリー状態になっているので、ムーブメント２の張り付き現象が生ずるようなことがなく、ムーブメント２が円滑に回動するようになる。

図１０は、本発明の傾倒センサによる傾倒状態の検知可能領域Ｗ１および検知不可領域Ｗ２を示している。

図１１は、ムーブメント２の回動軸３をケース１内に傾けることなく、ケース１の車体への取付面Ａとムーブメント２の回動面Ｂとが平行になるようにした傾倒センサによる傾倒状態の検知可能領域Ｗ１および検知不可領域Ｗ２を示している。

ケース１の車体への取付面Ａとムーブメント２の回動面Ｂとのなす角θを１０°以上４５°以下の範囲に設定したとき、車体の左右Ｘ方向および前後Ｙ方向の傾倒状態をそれぞれ良好に検知できることが実験によって確認されている。

また、本発明は、図１２に示すように、ケース１の車体への取付面Ａと平行にムーブメント２が回動するようにした傾倒センサ１４を車体１５に取り付けるに際して、ムーブメント２の回動軸３が車体１４の前後方向Ｙに対して所定の角度θ（１０°以上４５°以下の範囲）傾くように取り付けるようにしている。

この場合にあっても、図１０に示すのと同様の検知可能領域Ｗ１をもって、車体１４が左右Ｘ方向に傾倒したときのみならず、前後Ｙ方向に傾倒したときにもムーブメント２がその傾倒状態に応じて回動して、車体の左右Ｘ方向および前後Ｙ方向の傾倒状態を検知することができるようになる。

本発明による傾倒センサにあっては、ケース内に回動自在に軸支されたムーブメントが回動して車体の傾倒状態を検知するに際して、ケースの車体への取付面とムーブメントの回動面とのなす角が所定の角度となるようにムーブメントの回動軸をケース内に傾けて設けるようにしているので、１つの傾倒センサを車体に取り付けるだけで、車体の左右方向および前後方向の傾倒状態をそれぞれ検知できるという利点を有している。

その際、特に本発明によれば、ムーブメントの回動軸の両側に遊嵌され、小さい面積をもってムーブメントに当接するスペーサを介してムーブメンサをケース側に設置するようにしているので、ムーブメントの回動とは異なる方向にケースが傾いてムーブメントがスペーサに押し付けられても、両者の当接面が小さいために、ムーブメントの軸方向の動きが拘束されてムーブメントが動かなくなる、いわゆる張り付き現象が生ずることを防止できるという利点を有している。

本発明に係る傾倒センサの基本的な構成例を示す正面図である。 その基本的な構成例による傾倒センサの側断面図である。 その基本的な構成例による傾倒センサにおけるムーブメントを示す正面図である。 そのムーブメントの側面図である。 そのムーブメントにおける着磁パターンを示す展開図である。 その基本的な構成例による傾倒センサにおけるスペーサの一例を示す側面図である。 その基本的な構成例による傾倒センサにおけるスペーサの他の例を示す側面図である。 本発明に係る傾倒センサを用いて車体の傾倒状態を電気的に検知するための検知回路図である。 本発明による傾倒センサの外観を示す斜視図である。 本発明による傾倒センサの平断面図である。 ケースの車体への取付面とムーブメントの回動面とが平行になるようにした傾倒センサによる傾倒状態の検知可能領域および検知不可領域を示す平断面図である。 ケースの車体への取付面と平行にムーブメントが回動するようにした傾倒センサを車体に取り付けるに際して、ムーブメントの回動軸が車体の前後方向に対して所定の角度傾くように取り付けた状態を示す平断面図である。

符号の説明

１ ケース
２ ムーブメント
３ 回動軸
５ ホールＩＣ
７ スペーサ
１４ 傾倒センサ
１５ 車体

Claims (2)

1. ケース内に回動自在に軸支されたムーブメントが回動して車体の傾倒状態を検知する傾倒センサにおいて、ムーブメントの回動軸の両側に遊嵌され、小さい面積をもってムーブメントに当接するスペーサを介してムーブメントをケース側に設置したうえで、ケースの車体への取付面とムーブメントの回動面とのなす角が所定の角度となるようにムーブメントの回動軸をケース内に傾けて設けたことを特徴とする傾倒センサ。
2. スペーサの形状が、そろばん球状または円錐台状であることを特徴とする請求項１の記載による傾倒センサ。

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