JP3590926B2 - 傾倒センサ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、車両の傾倒状態を検知する傾倒センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、傾倒センサは、二輪自動車が転倒したり、四輪自動車が横転したことを検知して、エンジンを非常停止させるなどの種々の安全対策をとるために用いられている。
【0003】
従来、この種の傾倒センサとしては、車両の傾倒状態に応じて回動するバランス錘が所定以上に回動したときにリードスイッチが働いて車両の所定以上の傾倒状態を検知するようにしたものが存在する。そして、そのバランス錘は、車両走行時の振動による瞬間的な回動によって誤検知されることがないように、オイルダンパ機能をもたせるべく、比較的粘性の高いオイル中に浸されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする問題点は、従来の傾倒センサでは、ケースをオイル封入の密閉構造にしなければならず、部品点数、工数が多くなり、製造に時間がかかることである。また、オイルダンパー機能をもたせているために、使用環境温度によって傾倒状態の検知の応答時間がオイル粘度によって変化するものになっていることである。
【0005】
また、車両が所定以上に傾倒したときに、そのときのバランス錘の回動状態に応じてリードスイッチがオン状態になるようにするための調整が困難で、製品ごとにおける傾倒角度に応じた検知精度にばらつきを生ずる傾向があることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による傾倒センサは、何らダンパー機能をもたせないようにして、車両の傾倒状態の検知を、複雑な調整をすることなく応答性良くなすことができるようにするべく、着磁したムーブメントをケースに回動自在に軸支して、ムーブメントが所定の角度以上に回動したことをホール素子によって検知するようにしている。
【0007】
その際、特に本発明では、円の中心に回転軸を有し、その円の中心を通る垂線に対して対称となるように上側部分に所定の開き角度をもって切欠部が形成され、着磁されたムーブメントの所定の角度以上の回動状態を所定の感度をもって精度良く検知することができるように、ムーブメントが所定の角度以上に回動したときにS極(またはN極)がムーブメントの上方の前記垂線上の位置に設けられたユニポーラ感応タイプのホール素子に対向することによって、その所定の角度以上の回動が検知されるようにしたうえで、前記切欠部側の両端部分に微小な開き角度をもってN極(またはS極)が、前記垂線に対して対称となるように下側部分に微小な開き角度をもってN極(またはS極)がそれぞれ形成され、各N極(またはS極)間にそれぞれS極(またはN極)が配されるパターンをもってムーブメントを着磁するようにしている。
【0008】
【実施例】
本発明による傾倒センサにあっては、図1および図2に示すように、ケース1内に、着磁された振子式のムーブメント2が回動軸3に回動自在になるように軸支されている。
【0009】
そのケース1は、ムーブメント2が取り付けられている下ケース11の上部分を上ケース12にシール用のOリング4を介して嵌め込み、その嵌め込み部分を複数箇所でフック係合することによって、防水構造となるように形成されている。図中、14はフック係合部分を示している。
【0010】
上ケース12の内部には、ムーブメント2の所定の角度以上の回動状態をホールIC5が検知して、それがスイッチオン状態となったときに検知信号を出力するようにした検知回路が実装された回路基板6が取り付けられている。図中、7はその取付用のネジを示している。
【0011】
そして、その上ケース12には、図3に示すように、回路基板6からの電源Vcc、アースGNDおよび検知出力OUTの各端子が外部に引き出されるソケット部8が一体的に形成されている。
【0012】
また、その上ケース12には、それを振動吸収用のゴムブッシュ9を介して車体側に取り付ける取付座10が設けられている。
【0013】
ムーブメント2には、図4および図5に示すように、円の中心に横方向の回動軸3が設けられている。そして、ムーブメント2の上部には円の中心を通る垂線となる回動の基準位置Oに対して対称となるように所定の開き角度α(例えば70°)をもった切欠部21が設けられ、その下部には基準位置Oが垂直方向にくるようにバランスをとるための重錘部22が設けられている。
【0014】
回路基板6に取り付けられているホールIC5はムーブメント2の基準位置O上に配されており、ムーブメント2が回動して感応のS極が対向したときにホールIC5がスイッチオン状態になるようになっている。
【0015】
しかして、ムーブメント2の上部に切欠部21が設けられ、その下部に重錘部22が設けられているので、その重量配分が回動軸3の上方に比してその下方が充分重くなり、ムーブメント2を回動させるには大きなモーメントを必要とするものになって、車両走行時の振動によってはそのムーブメント2が回動しにくくなる。
【0016】
そして、ムーブメント2の上部には、その回動の基準位置Oが中央にくるように比較的大きな開き角度aをもって切欠部21が設けられているので、車両走行時の振動によってそのムーブメント2がその開き角度αの範囲内で揺動してもホールIC5が応動することがない。したがって、車両走行時の振動によって誤検知されるようなことがなく、車両が所定の角度以上に傾倒したときにのみホールIC5がスイッチオン状態になる。
【0017】
このようなものにあって、特に本発明では、ムーブメント2を、図4および図6に示すように、基準位置Oの垂線方向に対して対称となるように、ホールIC5に感応するS極部分を2等分に分割して、その分割された各S極部分の両側にそれぞれN極が配されるパターンをもって、異ピッチ多極となるように着磁するようにしている。
【0018】
ここでは、切欠部21側の両端部分には微小な開き角β(例えば8゜)をもってN極部n1,n3が、またその下部には基準位置Oの垂線方向を中心とした微小な開き角γ(例えば10゜)をもってN極部n2がそれぞれ形成され、その各N極間にはそれぞれ所定の開き角δ(例えば132゜)をもってS極部s1,s2が形成されている。
【0019】
しかして、このような異ピッチ多極構造をとることによって、図6に示すように、N極部とS極部との境における磁束密度Bの変化を急峻にすることができ、ムーブメント2が所定の角度以上に回動してS極部分がホールJC5に対向したときにスイッチオン状態になるときの位置決めを高精度に設定することができるようになる。図中、DLはホールIC5の感応レベルを示している。
【0020】
また、2つに等分割されたS極部s1,s2の間に微小なN極部n2が設けられていることにより、比較的広い範囲にわたって配されるS極部分の磁束密度Bがだれることなく、所定の感応レベルDLをもってムーブメント2の回動状態を広い範囲にわたって検知できるようになる。
【0021】
なお、図7は、ムーブメント2が回動したときにホールIC5に対向する側面が全てS極になるように着磁した場合の磁束密度Bの分布状態を示している。この場合には、両端の磁束密度Bの変化が緩慢で、ムーブメント2の回動によりホールIC5がスイッチオン状態になるときの位置がずれて、傾倒状態を検知する際の位置決め精度が悪くなってしまう。また、比較的広い範囲にわたって分布する磁束密度Bが中央部分でだれてしまい、ホールIC5の感応レベルDLをもって検知できる範囲が狭くなってしまうことになる。
【0022】
このように、ムーブメント2を異ピッチ多極構造となるように着磁することによって、特に着磁力を強くしたり、ホールIC5の感度を上げたり、あるいはまたホールIC5をムーブメント2に接近させて設けるようにするなどの製造上、設計上の制約をきたすような手段を講じなくとも、車両が所定の角度以上に傾倒した状態を精度良く検知できるようになる。
【0023】
図8は、ホールIC5のスイッチング状態に応じて車両の傾倒状態を検知するための検知回路の一例を示している。
【0024】
ここでは、ホールIC5がムーブメント2の所定の角度以上の回動状態を検知してスイッチオン状態となったときにハイレベルの検知信号を出力するような回路を構成したうえで、その検知回路内にコンデンサC1,C2および抵抗R4からなる時定数回路を設けて、その時定数によって決まる時間内でのホールIC5の瞬間的なスイッチオンには応答しないようにしている。
【0025】
すなわち、ホールIC5がスイッチオフ状態にある正常時には、コンデンサC1,C2が充電状態にあり、出力トランシスタQ4がオン状態になって出力端OUTの電圧はローレベルになっている。そして、車両が傾倒してホールIC5がスイッチオン状態になると、コンデンサC1,C2の放電回路が形成され、所定の時間後に出力トランジスタQ4がオフ状態になって出力端OUTの電圧がハイレベルに切り換わる。
【0026】
したがって、車両の走行振動によってムーブメント2が瞬間的に所定の角度以上に回動したときに、傾倒状態の誤検知がなされないようになる。
【0027】
なお、その際、ムーブメント2の回動が大きく、コンデンサC1,C2および抵抗R4の時定数によって設定される時間以上にわたってS極部分がホールIC5に対向してしまうと傾倒状態の誤検知がなされてしまうことになるので、図4および図6に示すように、中間にN極部n2を設けることによって磁極分割し、それにより設定時間以上にわたってS極部分がホールIC5に対向することがないようにしている。
【0028】
また、この検知回路では、ツエナダイオードZDを設けることによって電源の定電圧化を図り、抵抗R7を通してトランジスタQ2のオン時に常に定電流によるコレクタ電流を供給するようにして、電源+Vccの変動の影響を受ることがないようにしている。
【0029】
すなわち、このツエナダイオードZDおよび抵抗R7による定電流回路を設けない場合には、電源+Vccが変動するとそれに応じてトランジスタQ2コレクタ電流が変化してそのスイッチングのタイミングが変わってしまい、コンデンサC1,C2および抵抗R4によって決定される傾倒状態検知のタイミングが変動してしまうことになる。
【0030】
さらに、その検知回路内には、傾倒状態検知の保持回路が設けられている。
【0031】
その保持回路は、抵抗R5,R6、コンデンサC3およびトランジスタQ1による回路からなっている。
【0032】
その保持回路において、車両の傾倒状態が検知されて出力トランジスタQ4がオフ状になって出力端OUTの電圧がハイレベルになると、トランジスタQ1がオン状態となり、それにより出力トランジスタQ4がオフ状態に保持される。
【0033】
この保持状態は、車両のイグニッションスイッチを切ってバッテリ電源(Vcc)をしゃ断することによって解除される。
【0034】
したがって、例えば二輪自動車が傾倒したのちにもとの正常な状態に起き上がったような場合にも、運転者の意思によって車両のイグニッションスイッチが切られるまで、燃料カットやエンジン点火系統の電源しゃ断などの安全対策が継続して行われることになる。
【0035】
【発明の効果】
以上、本発明による傾倒センサにあっては、着磁したムーブメントをケースに回動自在に軸支して、ムーブメントが所定の角度以上に回動したことをホール素子によって検知するようにしたもので、車両の傾倒状態の検知を、複雑な調整をすることなく応答性良くなすことができるという利点を有している。
【0036】
その際、特に本発明によれば、円の中心に回転軸を有し、その円の中心を通る垂線に対して対称となるように上側部分に所定の開き角度をもって切欠部が形成され、着磁されたムーブメントが所定の角度以上に回動したときにS極(またはN極)がムーブメントの上方の前記垂線上の位置に設けられたユニポーラ感応タイプのホール素子に対向することによって、その所定の角度以上の回動が検知されるようにしたうえで、前記切欠部側の両端部分に微小な開き角度をもってN極(またはS極)が、前記垂線に対して対称となるように下側部分に微小な開き角度をもってN極(またはS極)がそれぞれ形成され、各N極(またはS極)間にそれぞれS極(またはN極)が配されるパターンをもってムーブメントを着磁するようにしているので、車両が所定の角度以上に傾倒した状態を所定の感度をもって精度良く検知することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による傾倒センサの一実施例を示す正面図である。
【図2】同実施例における傾倒センサの側断面図である。
【図3】同実施例における傾倒センサのソケット端子部分の下面図である。
【図4】同実施例における傾倒センサのムーブメントを示す正面図である。
【図5】そのムーブメントの側面図である。
【図6】そのムーブメントにおける着磁パターンを示す展開図である。
【図7】ムーブメントを単極に着磁したときの磁束の分布状態を示す図である。
【図8】車両の傾倒状態を検知するための検知回路を示す電気回路図である。
【符号の説明】
1 ケース
11 下ケース
12 上ケース
2 ムーブメント
3 軸
4 Oリング
5 ホールIC
6 回路基板
Claims (1)
- 円の中心に回転軸を有し、その円の中心を通る垂線に対して対称となるように上側部分に所定の開き角度をもって切欠部が形成され、着磁されたムーブメントをケースに回動自在に軸支して、ムーブメントが所定の角度以上に回動したときにS極(またはN極)がムーブメントの上方の前記垂線上の位置に設けられたユニポーラ感応タイプのホール素子に対向することによって、その所定の角度以上の回動が検知されるようにした傾倒センサであって、前記切欠部側の両端部分に微小な開き角度をもってN極(またはS極)が、前記垂線に対して対称となるように下側部分に微小な開き角度をもってN極(またはS極)がそれぞれ形成され、各N極(またはS極)間にそれぞれS極(またはN極)が配されるパターンをもってムーブメントを着磁したことを特徴とする傾倒センサ。
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