JP3590930B2 - 傾倒センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車両の傾倒状態を検知する傾倒センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、傾倒センサは、二輪自動車が転倒したり、四輪自動車が横転したことを検知して、エンジンを非常停止させるなどの種々の安全対策をとるために用いられている。
【0003】
従来、この種の傾倒センサとしては、車両の傾倒状態に応じて回動するバランス錘が所定以上に回動したときにリードスイッチが働いて車両の所定以上の傾倒状態を検知するようにしたものが存在する。そして、車両走行時の振動によるバランス錘の瞬間的な回動によって誤検知されることがないように、比較的粘性の高いオイル中にバランス錘を浸してオイルダンパ機能をもたせるか、あるいはまたバランス錘に永久磁石による磁気制動力を働かせる磁気ダンパ機能をもたせるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする問題点は、従来の傾倒センサでは、オイルダンパ機能をもたせるためにケースをオイル封入の密閉構造にしなければならず、部品点数、工数が多くなり、製造に時間がかかることである。そして、オイルダンパ機能をもたせているために、使用環境温度によって傾倒状態の検知の応答時間がオイル粘度によって変化するものになっていることである。また、磁気ダンパ機能をもたせるのでは、磁気力にバラツキがあってその調整が困難となり、そして永久磁石による磁束が周囲の電気電子部品に影響を及ぼして、磁気しゃへい手段を講ずる必要があるものになっていることである。
【0005】
また、従来の傾倒センサでは、車両が所定以上に傾倒したときに、そのときのバランス錘の回動状態に応じてリードスイッチがオン状態になるようにするための調整が困難で、製品ごとにおける傾倒角度に応じた検知精度にばらつきを生ずる傾向があることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による傾倒センサは、何らダンパー機能をもたせないようにして、車両の傾倒状態の検知を、複雑な調整をすることなく応答性良くなすことができるようにするべく、円の中心に回転軸を有し、その円の中心を通る垂線に対して対称となるように上側部分に所定の開き角度をもって切欠部が形成されたムーブメントをケースに回動自在に軸支して、ムーブメントが所定の角度以上に回動したときに前記切欠部に対応する前記垂線上の位置に設けられたフォトインタラプタの光がムーブメントによりしゃ断されることによって、その所定の角度以上の回動が検知されるようにしている。
【0007】
そして、フォトインタラプタがムーブメントの所定の角度以上の回動状態を検知したときに検知信号を出力するように検知回路を構成したうえで、その検知回路内にコンデンサおよび抵抗からなる時定数回路を設けて、その時定数によって決まる時間内でのフォトインタラプタの瞬間的な検知動作には応答しないようにすることにより、車両の走行振動による影響を受けることがないようにしている。
【0008】
その際、特に本発明では、車両がカーブを通過するときなどに際して、ムーブメントがゆっくりと大きく回動して検知回路に設定された時定数によって決まる時間以上にわたってフォトインタラプタが検知状態になって傾倒状態の誤検知がなされてしまうのを防止するべく、ムーブメントの下側中央部フォトインタラプタを強制的に不検知状態にさせるスリットまたは窓部を設けてフォトインタラプタの検知領域を分割するようにしている。
【0009】
【実施例】
本発明による傾倒センサにあっては、図1および図2に示すように、ケース1内に、ムーブメント2が回動軸3に回動自在になるように軸支されている。
【0010】
そのケース1は、ムーブメント2が取り付けられている下ケース11の上部分を上ケース12にシール用のOリング4を介して嵌め込み、その嵌め込み部分を複数箇所でフック係合することによって、防水構造となるように形成されている。図中、14はフック係合部分を示している。
【0011】
上ケース12の内部には、ムーブメント2の所定の角度以上の回動状態をフォトインタラプタ5が検知して、それがスイッチオン状態となったときに検知信号を出力するようにした検知回路が実装された回路基板6が取り付けられている。図中、7はその取付用のネジを示している。
【0012】
そして、その上ケース12には、図3に示すように、回路基板6からの電源Vcc、アースGNDおよび検知出力OUTの各端子が外部に引き出されるソケット部8が一体的に形成されている。
【0013】
また、その上ケース12には、それを振動吸収用のゴムブッシュ9を介して車体側に取り付ける取付座10が設けられている。
【0014】
ムーブメント2には、図4および図5に示すように、円の中心に横方向の回動軸3が設けられている。そして、ムーブメント2の上部には円の中心を通る垂線となる回動の基準位置Oに対して対称となるように所定の開き角度α(例えば70°)をもった切欠部21が設けられ、その下部には基準位置Oが垂直方向にくるようにバランスをとるための重錘部22が設けられている。
【0015】
回路基板6に取り付けられているフォトインタラプタ5は、ムーブメント2の基準位置O上に配されている。そして、ムーブメント2がバランス状態にあるときには切欠部21の部分によりフォトインタラプタ5の光が何らしゃ断されずに出力側がスイッチオフ状態になり、ムーブメント2が左,右にα/2の角度以上に回動してフォトインタラプタ5の光がムーブメント2によってしゃ断されたときに出力側がスイッチオン状態になるようになっている。
【0016】
しかして、ムーブメント2の上部に切欠部21が設けられ、その下部に重錘部22が設けられているので、その重量配分が回動軸3の上方に比してその下方が充分重くなり、ムーブメント2を回動させるには大きなモーメントを必要とするものになって、車両走行時の振動によってはそのムーブメント2が回動しにくくなる。
【0017】
そして、ムーブメント2の上部には、その回動の基準位置Oが中央にくるように比較的大きな開き角度αをもって切欠部21が設けられているので、車両走行時の振動によってそのムーブメント2がその開き角度αの範囲内で揺動してもフォトインタラプタ5が応動することがない。したがって、車両走行時の振動によって誤検知されるようなことがなく、車両が所定の角度以上に傾倒したときにのみフォトインタラプタ5がスイッチオン状態になる。
【0018】
その際、特に、ムーブメント2の切欠部21におけるエッジ部分によってフォトインタラプタ5が光しゃ断状態になることによって、車両の基準位置Oを中心とした左,右の設定角度α/2以上の傾倒状態を検知するようにしているので、その傾倒状態検知の位置決めを容易に精度良くなすことができるようになる。
【0019】
図7は、フォトインタラプタ5の出力側のスイッチング状態に応じて車両の傾倒状態を検知するための検知回路の一例を示している。
【0020】
ここでは、フォトインタラプタ5がムーブメント2の所定の角度以上の回動状態を検知してスイッチオン状態となったときにハイレベルの検知信号を出力するような回路を構成したうえで、その検知回路内にコンデンサC1,C2および抵抗R4からなる時定数回路を設けて、その時定数によって決まる時間内でのフォトインタラプタ5の瞬間的なスイッチオンには応答しないようにしている。
【0021】
すなわち、フォトインタラプタ5がスイッチオフ状態にある正常時、すなわち、図7に示すフォトインタラプタIC5′の出力信号DSがハイレベル状態になっているときには、コンデンサC1,C2が充電状態にあり、出力トランジスタQ4がオン状態になって出力端OUTの電圧はローレベルになっている。そして、車両が傾倒してフォトインタラプタ5がスイッチオン状態になる(図7に示すフォトインタラプタIC5′の出力信号DSがローレベル状態になる)と、コンデンサC1,C2の放電回路が形成され、所定の時間後に出力トランジスタQ4がオフ状態になって出力端OUTの電圧がハイレベルに切り換わる。
【0022】
したがって、車両の走行振動によってムーブメント2が瞬間的に所定の角度以上に回動したときに、傾倒状態の誤検知がなされないようになる。
【0023】
また、この検知回路には、例えば二輪自動車が傾倒したのちにもとの正常な状態に起き上がったような場合にも燃料カットやエンジン点火系統の電源しゃ断などの安全対策を継続して行わせるようにするべく、抵抗R5,R6、コンデンサC3およびトランジスタQ1からなる傾倒状態検知の保持回路が設けられている。
【0024】
すなわち、その保持回路において、車両の傾倒状態が検知されて出力トランジスタQ4がオフ状態になって出力端OUTの電圧がハイレベルになると、トランジスタQ1がオン状態となり、それにより出力トランジスタQ4がオフ状態に保持される。この保持状態は、車両のイグニッションスイッチを切って電源をしゃ断することによって解除されることになる。
【0025】
さらに、この検知回路には、制御用トランジスタQ2のコレクタに定電流を供給する定電流回路が設けられており、バッテリ電源(Vcc)の電圧が定格の仕様変更や充電状態、温度環境などによって変化しても傾倒状態検知のタイミングが変動することがないようにしている。
【0026】
ここでは定電流回路として、ツエナダイオードZDを設けることによってバッテリ電源(Vcc)の定電圧化を図り、制御用トランジスタQ2のターンオンに際して抵抗R7を通して常に定電流によるコレクタ電流が供給されるようにしている。
【0027】
すなわち、このツエナダイオードZDおよび抵抗R7による定電流回路を設けない場合には、バッテリ電源(Vcc)の電圧が変動するとそれに応じて制御用トランジスタQ2コレクタ電流が変化してそのスイッチングのタイミングが変わってしまい、コンデンサC1,C2および抵抗R4によって決定される傾倒状態検知のタイミングが変動してしまうことになる。
【0028】
このように構成された傾倒センサにあっては、例えば、車両がカーブを走行する際に遠心力が作用してムーブメント2がゆっくりと大きく回動するような場合に、時定数回路における設定時間以上にわたってフォトインタラプタ5がスイッチオン状態になると傾倒状態の誤検知がなされてしまうことになる。
【0029】
そのため、特に本発明では、図4に示すように、ムーブメント2の下側中央部分に、フォトインタラプタ5を強制的にスイッチオフの不検知状態にさせるスリット23を基準位置Oを中心とした開き角度βをもって設けることによってムーブメント2を分割し、それにより設定時間以上にわたってフォトインタラプタ5がスイッチオン状態になることがないようにしている。
【0030】
その際、フォトインタラプタ5が強制的にスイッチオフ状態にされることによって、時定数回路における設定時間が初期にリセットされることになる。
【0031】
【発明の効果】
以上、本発明による傾倒センサにあっては、円の中心に回転軸を有し、その円の中心を通る垂線に対して対称となるように上側部分に所定の開き角度をもって切欠部が形成されたムーブメントをケースに回動自在に軸支して、ムーブメントが所定の角度以上に回動したときに前記切欠部に対応する前記垂線上の位置に設けられたフォトインタラプタの光がムーブメントによりしゃ断されることによって、その所定の角度以上の回動が検知されるようにしているので、車両の傾倒状態の検知を、複雑な調整をすることなく応答性良くなすことができるという利点を有している。
【0032】
【発明の効果】
以上、本発明による傾倒センサにあっては、振子式のムーブメントをケースに回動自在に軸支して、ムーブメントが所定の角度以上に回動したことをフォトインタラプタによって検知するようにしたもので、車両の傾倒状態の検知を、複雑な調整をすることなく応答性良くなすことができるようになる。
【0033】
そして、本発明によれば、ムーブメントが所定の角度以上に回動して、フォトインタラプタの検知出力が所定の時定数によって決定される時間以上に継続したときに傾倒状態の検知信号を出力するようにした検知回路を設けるようにしているので、その時定数によって決まる時間内でのフォトインタラプタの瞬間的な検知出力には応答することがなく、車両の走行振動による影響を受けることがなくなる。
【0034】
その際、特に本発明によれば、ムーブメントの下側中央部分にフォトインタラプタを強制的に不検知状態にさせるスリットまたは窓部を設けるようにしているので、車両がカーブを走行する際に遠心力が作用してムーブメントがゆっくりと大きく回動するような場合に、検知回路における時定数により決まる設定時間以上にわたってフォトインタラプタが検知状態になることがなくなり、傾倒状態の誤検知がなされることを防止することができるという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による傾倒センサの一実施例を示す正面図である。
【図2】同実施例における傾倒センサの側断面図である。
【図3】同実施例における傾倒センサのソケット端子部分の下面図である。
【図4】同実施例における傾倒センサのムーブメントを示す正面図である。
【図5】そのムーブメントの側面図である。
【図6】ムーブメントの他の構成を示す正面図である。
【図7】車両の傾倒状態を検知するための検知回路を示す電気回路図である。
【符号の説明】
1 ケース
11 下ケース
12 上ケース
2 ムーブメント
23 スリット
24 窓部
3 軸
5 フォトインタラプタ

Claims (1)

  1. 円の中心に回転軸を有し、その円の中心を通る垂線に対して対称となるように上側部分に所定の開き角度をもって切欠部が形成されたムーブメントをケースに回動自在に軸支して、ムーブメントが所定の角度以上に回動したときに前記切欠部に対応する前記垂線上の位置に設けられたフォトインタラプタの光がムーブメントによりしゃ断されることによって、その所定の角度以上の回動が検知されるようにした傾倒センサであって、そのフォトインタラプタの光のしゃ断状態が所定の時定数によって決定される時間以上に継続したときに傾倒状態の検知信号を出力するようにした検知回路を設けるとともに、ムーブメントの下側中央部分にフォトインタラプタを強制的に不検知状態にさせるスリットまたは窓部を設けたことを特徴とする傾倒センサ。
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