JP3975389B2 - 傾倒検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車両などの傾倒状態を検知する傾倒検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種の傾倒検出装置にあっては、車両の異常な傾倒状態を検出して運転者に警報を発したり、車両が転倒したことを検知してエンジンを非常停止させるなどの種々の安全対策をとるために車両に設置されている。
【0003】
従来の傾倒検出装置としては、着磁した振り子とホール素子とを組み合せた傾倒検出のセンサ本体を用いて、現在検出されている車両の傾斜角に応じたホール素子の出力電圧と予め車両の許容傾斜角に応じたしきい値として設定されている基準電圧とをコンパレータにより比較して、ホール素子の出力電圧がしきい値を越えたときのコンパレータの出力を警告用信号とするようにしたものが開発されている(特開平4−34309号参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする問題点は、従来の傾倒検出装置では、センサ本体によって検出されている車両の傾斜角が許容傾斜角を越えて危険な状態にあるか否かの一状態の検知しか行わせることができないものになっていることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明による傾倒検出装置は、車両の傾斜角が許容傾斜角を越えて危険な状態にあるか否かの検知のみならず、車両の転倒状態をも検知できるようにするとともに、それら二つの傾倒状態の各検知信号を同一の信号ラインから判別して出力させることができるようにしている。
【0006】
具体的には、円の中心に回転軸を有し、その円の中心を通る垂線に対して対称となるように上側部分に所定の開き角度をもって切欠部が形成され、着磁されたムーブメントをケースに回動自在に軸支して、ムーブメントが回動したときにS極がムーブメントの上方の前記垂線上の位置に設けられた、S極に感応するホール素子に接近することによって、ムーブメントの回動が検知されるようにしたセンサ本体と、そのホール素子の出力電圧Vと予め設定された第1の基準電圧Vs1とを第1のコンパレータによって比較して、V≧Vs1になったときの第1のコンパレータの出力にもとづいて転倒危険状態の検出信号を発生する転倒危険状態検出回路と、前記ホール素子の出力電圧Vと予め第1の基準電圧Vs1よりも高い値に設定された第2の基準電圧Vs2とを第2のコンパレータによって比較して、V≧Vs2になったときの第2のコンパレータの出力にもとづいて転倒状態の検出信号を発生する転倒状態検出回路とからなり、両検出回路に共通に設けられた同一の信号ラインから互いに電圧レベルの差をもった転倒危険状態および転倒状態の各検出信号を出力するように構成している。
【0007】
【実施例】
図1および図2は、傾倒状態を検出するためのセンサ本体の一構成例を示している。
【0008】
それは、ケース1内に、着磁された振子式のムーブメント2が回動軸3に回動自在になるように軸支されている。
【0009】
そのケース1は、ムーブメント2が取り付けられている下ケース11の上部分を上ケース12にシール用のOリング4を介して嵌め込み、その嵌め込み部分を複数箇所でフック係合することによって、防水構造となるように形成されている。図中、14はフック係合部分を示している。
【0010】
上ケース12の内部には、ムーブメント2に対応する所定の位置に、ムーブメント2の回動量に応じた出力電圧を生ずるように、ホールIC5が設けられている。そして、そのホールIC5の出力電圧に応じて傾倒状態を検出するための回路が実装された回路基板6が取り付けられている。図中、7はその取付用のネジを示している。
【0011】
そして、その上ケース12には、図3に示すように、回路基板6からの電源Vcc、アースGNDおよび検知出力OUTの各端子が外部に引き出されるソケット部8が一体的に形成されている。
【0012】
また、その上ケース12には、それを振動吸収用のゴムブッシュ9を介して車体側に取り付ける取付座10が設けられている。
【0013】
ムーブメント2には、図4および図5に示すように、円の中心に横方向の回動軸3が設けられている。そして、ムーブメント2の上部には円の中心を通る垂線となる回動の基準位置Oに対して対称となるように所定の開き角度α(例えば80°)をもった切欠部21が設けられ、その下部には基準位置Oが垂直方向にくるようにバランスをとるための重錘部22が設けられている。
【0014】
しかして、ムーブメント2の上部に切欠部21が設けられ、その下部に重錘部22が設けられているので、その重量配分が回動軸3の上方に比してその下方が充分重くなり、ムーブメント2を回動させるには大きなモーメントを必要とするものになって、車両走行時の振動によってはそのムーブメント2が回動しにくくなる。
【0015】
回路基板6に取り付けられているホールIC5は、ムーブメント2の基準位置O上に配されており、ムーブメント2が回動して磁極部分が接近するにしたがってそのときの回動量に応じた出力電圧を生ずる。また、車両の転倒時に、ムーブメント2が所定以上に回動して磁極部分が完全にホールIC5に対向したときには、ホールIC5は最大の出力電圧を生ずるようになっている。
【0016】
図6は、ホールIC5の出力電圧に応じて車両の傾倒状態を検出するための具体的な回路構成例を示している。
【0017】
それは、車両が傾倒して転倒危険状態になったことを検出する転倒危険状態検出回路Aと、車両が転倒状態になったことを検出する転倒状態検出回路Bとからなり、両検出回路A,Bに共通に設けられた同一の信号ラインにおける出力端OUTに、互いに電圧レベルの差をもった転倒危険状態および転倒状態の各検出信号が得られるように構成されている。
【0018】
転倒危険状態検出回路Aは、ホールIC5の出力電圧Vと、抵抗R1,R2の分圧によって予め設定された第1の基準電圧Vs1とをコンパレータCMP1によって比較して、V≧Vs1になったときにコンパレータCMP1の出力がローレベルに反転してトランジスタQ1がオフすることによって、出力端OUTに転倒危険状態の検出信号レベルを発生するようになっている。
【0019】
第1の基準電圧Vs1としては、例えば四輪自動車が横転する危険性がある角度(例えば35°)にまで傾倒したときのホールIC5の出力電圧に相応する値に設定されている。
【0020】
そして、その転倒危険状態の検出信号としては、トランジスタQ1がオフしたとき(このとき転倒状態検出回路Bにおける出力トランジスタQ4はオン状態になっている)の抵抗R16と抵抗R15との分圧によって、バイアス電圧Vbのほぼ1/3になるミドルレベル“M”の電圧値になるように設定されている。
【0021】
転倒状態検出回路Bは、ホールIC5の出力電圧Vと、抵抗R7,R8の分圧によって予め第1の基準電圧Vs1よりも高い値に設定された第2の基準電圧Vs2とをコンパレータCMP2によって比較して、V≧Vs2になったときにコンパレータCMP2の出力がローレベルに反転してトランジスタQ2がオフ、トランジスタQ3がオン、トランジスタQ4がオフになることによって、出力端OUTに転倒状態の検出信号レベルを発生するようになっている。
【0022】
第1の基準電圧Vs1としては、例えば四輪自動車が横転する角度(例えば40°)以上にまで傾倒して、ムーブメント2の磁極部分が完全にホールIC5に対向したときにおけるホールIC5の最大出力電圧に相応する値に設定されている。
【0023】
そして、その転倒状態の検出信号としては、バイアス電圧Vbのほぼ2/3になるハイレベル“H”の電圧値になるようにその回路定数が設定されている。
【0024】
また、出力端OUTから互いに電圧レベルの差をもった転倒危険状態の検出信号および転倒状態の検出信号を出力させるに際して、その各検出信号の出力ラインに転倒状態の検出信号をレベル検出によって弁別するコンパレータCMP3を設けて、出力ラインに発生する検出信号の電圧レベルが予めハイレベル“H”に応じて設定された基準電圧レベルに達したときのコンパレータCMP3の出力信号を、車両のエンジンを強制的にストップさせる燃料カットやエンジン点火系統の電源しゃ断の指令信号ESSとして用いるようにする。そして、出力端OUTに発生する転倒危険状態および転倒状態の両検出信号を警報器に警報指令ASとして与えるようにする。
【0025】
また、転倒状態検出回路Bには、コンデンサC1および抵抗R12からなる時定数回路を設けて、その時定数によって決まる時間内での瞬間的なムーブメント2の横転角度以上の回動には応答しないようにしている。
【0026】
すなわち、ムーブメント2の回動が横転の検出角度に達していないときには、コンパレータCMP2の出力がハイレベルになってコンデンサC1が充電状態にあり、そのとき出力トランジスタQ4がオン状態になって出力端OUTの電圧はローレベル“L”になっている。そして、ムーブメント2の回動が横転の検出角度以上になってコンパレータCMP2の出力がローレベルに反転すると、コンデンサC1の放電回路が形成され、所定の時間後に出力トランジスタQ4がオフ状態なって出力端OUTの電圧がハイレベル“H”に切り換わる。
【0027】
したがって、車両の走行振動によってムーブメント2が瞬間的に横転の検出角度以上に回動したときに、傾倒状態の誤検知がなされないようになる。
【0028】
なお、その際、ムーブメント2の回動が大きく、コンデンサC1および抵抗R12の時定数によって設定される時間以上にわたって磁極(例えばホールIC5に感応するS極)部分がホールIC5に対向してしまうと傾倒状態の誤検知がなされてしまうことになるので、図4に示すように、中間に無着磁部分(ホールIC5に無感応のN極部分であってもよい)23を設けることによって磁極分割し、それにより設定時間以上にわたって磁極部分がホールIC5に対向することがないようにしている。
【0029】
また、図6に示す回路構成では、ツエナダイオードZDを設けることによってバッテリ電源Vccの定電圧化を図り、抵抗R13を通してトランジスタQ2のオン時に常に定電流によるコレクタ電流を供給するようにして、電源電圧の変動の影響を受けることがないようにしている。そして、その電源電圧の変動の受けることなく、コンパレータCMP1における基準電圧Vs1およびコンパレータCMP2における基準電圧Vs2を設定することができるようにしている。
【0030】
さらに、図6に示す回路構成では、車両が横転したのちにもとの正常な状態に戻ったような場合に、燃料カットやエンジン点火系統の電源しゃ断などの安全対策を継続して行わせるようにするべく、抵抗R10,R11、コンデンサC2およびトランジスタQ5からなる転倒状態検出の保持回路を設けるようにしている。
【0031】
すなわち、車両の転倒状態が検知されて出力トランジスタQ4がオフ状になって出力端OUTの電圧がハイレベル“H”になると、トランジスタQ5がオン状態となり、それにより出力トランジスタQ4がオフ状態に保持される。この保持状態は、車両のイグニッションスイッチを切ってバッテリ電源Vccをしゃ断することによって解除されるようになっている。
【0032】
また、車両の転倒状態が検知されて出力トランジスタQ4がオフ状になって出力端OUTの電圧がハイレベル“H”になると、トランジスタQ6がオン状態となってコンパレータCMP1の出力側を強制的にローレベルにし、転倒危険状態検出回路Aを検出状態に保持させるようにしている。
【0033】
【発明の効果】
以上、本発明による傾倒検出装置にあっては、円の中心に回転軸を有し、その円の中心を通る垂線に対して対称となるように上側部分に所定の開き角度をもって切欠部が形成され、着磁されたムーブメントをケースに回動自在に軸支して、ムーブメントが回動したときにS極がムーブメントの上方の前記垂線上の位置に設けられた、S極に感応するホール素子に接近することによって、ムーブメントの回動が検知されるようにしたセンサ本体と、そのホール素子の出力電圧Vと予め設定された第1の基準電圧Vs1とを第1のコンパレータによって比較して、V≧Vs1になったときの第1のコンパレータの出力にもとづいて転倒危険状態の検出信号を発生する転倒危険状態検出回路と、前記ホール素子の出力電圧Vと予め第1の基準電圧Vs1よりも高い値に設定された第2の基準電圧Vs2とを第2のコンパレータによって比較して、V≧Vs2になったときの第2のコンパレータの出力にもとづいて転倒状態の検出信号を発生する転倒状態検出回路とからなり、両検出回路に共通に設けられた同一の信号ラインから互いに電圧レベルの差をもった転倒危険状態および転倒状態の各検出信号を出力するようにしたもので、複雑な調整をすることのない簡単な構成により、車両の転倒危険状態および転倒状態の2つのモードをそれぞれ応答性良く検出できるとともに、それらの各検出信号を同一の信号ラインから判別して出力させることができるという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による傾倒検出装置におけるセンサ本体の一構成例を示す正面図である。
【図2】そのセンサ本体の側断面図である。
【図3】そのセンサ本体におけるソケット端子部分の下面図である。
【図4】そのセンサ本体におけるムーブメントの正面図である。
【図5】そのムーブメントの側面図である。
【図6】本発明による傾倒検出装置における車両の傾倒状態を検出するための回路構成例を示す電気回路図である。
【符号の説明】
2 ムーブメント
5 ホールIC
A 転倒危険状態検出回路
B 転倒状態検出回路
CMP1 第1のコンパレータ
CMP2 第2のコンパレータ

Claims (3)

  1. 円の中心に回転軸を有し、その円の中心を通る垂線に対して対称となるように上側部分に所定の開き角度をもって切欠部が形成され、着磁されたムーブメントをケースに回動自在に軸支して、ムーブメントが回動したときにS極がムーブメントの上方の前記垂線上の位置に設けられた、S極に感応するホール素子に接近することによって、ムーブメントの回動が検知されるようにしたセンサ本体と、そのホール素子の出力電圧Vと予め設定された第1の基準電圧Vs1とを第1のコンパレータによって比較して、V≧Vs1になったときの第1のコンパレータの出力にもとづいて転倒危険状態の検出信号を発生する転倒危険状態検出回路と、前記ホール素子の出力電圧Vと予め第1の基準電圧Vs1よりも高い値に設定された第2の基準電圧Vs2とを第2のコンパレータによって比較して、V≧Vs2になったときの第2のコンパレータの出力にもとづいて転倒状態の検出信号を発生する転倒状態検出回路とからなり、両検出回路に共通に設けられた同一の信号ラインから互いに電圧レベルの差をもった転倒危険状態および転倒状態の各検出信号を出力するように構成した傾倒検出装置。
  2. 転倒状態検出信号の出力に応じて、転倒状態検出回路を転倒検出状態に保持させるとともに、転倒危険状態検出回路を強制的に検出状態にする保持回路を設けたことを特徴とする請求項1の記載による傾倒検出装置。
  3. 同一の信号ラインから出力する検出信号の電圧レベルの検出を行って転倒危険状態の検出信号と転倒状態の検出信号との弁別を行って、転倒危険状態の検出信号によって警報器を作動させるとともに、転倒状態の検出信号によって車両のエンジンを強制的にストップさせるようにしたことを特徴とする請求項1の記載による傾倒検出装置。
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