JP3590927B2 - 傾倒センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車両の傾倒状態を検知する傾倒センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、傾倒センサは、二輪自動車が転倒したり、四輪自動車が横転したことを検知して、エンジンを非常停止させるなどの種々の安全対策をとるために用いられている。
【0003】
従来、この種の傾倒センサとしては、車両の傾倒状態に応じて回動するバランス錘が所定以上に回動したときにリードスイッチが働いて車両の所定以上の傾倒状態を検知するようにしたものが存在する。そして、そのバランス錘は、車両走行時の振動による瞬間的な回動によって誤検知されるこどがないように、オイルダンパ機能をもたせるべく、比較的粘性の高いオイル中に浸されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする問題点は、従来の傾倒センサでは、ケースをオイル封入の密閉構造にしなければならず、部品点数、工数が多く、製造に時間がかかることである。また、オイルダンパー機能をもたせているために、使用環境温度によって傾倒状態の検知の応答時間がオイル粘度によって変化するものになっていることである。
【0005】
また、車両が所定以上に傾倒したときに、そのときのバランス錘の回動状態に応じてリードスイッチがオン状態になるようにするための調整が困難で、製品ごとにおける傾倒角度に応じた検知精度のばらつきが大きくなる傾向にあるという問題がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による傾倒センサは、何らダンパー機能をもたせないようにして、車両の傾倒状態の検知を、複雑な調整をすることなく応答性良くなすことができるようにするべく、円の中心に回動軸を有し、その円の中心を通る垂線に対して対称となるように上側部分に所定の開き角度をもって切欠部が形成され、着磁されたムーブメントをケースに回動自在に軸支して、ムーブメントが所定の角度以上に回動したときにS極(またはN極)がムーブメントの上方の前記垂線上の位置に設けられたユニポーラ感応タイプのホール素子に対向することによって、その所定の角度以上の回動が検知されるようにしている
【0007】
そして、車両の走行振動による影響を受けることがないように、ケースに回動自在に軸支された振子式のムーブメントが所定の角度以上に回動して、着磁されたS極(またはN極)部分がユニポーラ感応タイプのホール素子に対向したときのホール素子の感応出力が所定の時定数によって決定される時間以上に継続したときに傾倒状態の検知信号を出力するようにした検知回路を設けて、その時定数によって決まる時間内でのホール素子の瞬間的な感応出力には応答しないようにしている。
【0008】
その際、特に本発明では、ムーブメントが大きく回動して着磁されたS極(またはN極)部分がホール素子によって時定数によって決まる時間以上にわたって対向してしまうと傾倒状態の誤検知がなされてしまうのを防止するとともに、車両が180°転倒して倒立した状態をも確実に検知することができるようにするべく、ムーブメントに、その下側中央部分にムーブメントの倒立時にホール素子によって感応される倒立感応エリアと、その倒立感応エリアの両側にそれぞれ配されたホール素子に感応されない微小な不感応エリアと、その不感応エリアに接してそれぞれ配されたムーブメントの左,右側の傾倒時にホール素子によって感応される傾倒感応エリアとを設けるようにしている。
【0009】
【実施例】
本発明による傾倒センサにあっては、図1および図2に示すように、ケース1内に、着磁された振子式のムーブメント2が回動軸3に回動自在になるように軸支されている。
【0010】
そのケース1は、ムーブメント2が取り付けられている下ケース11の上部分を上ケース12にシール用のOリング4を介して嵌め込んで、その嵌め込み部分をフック結合することによって、防水構造となるように形成されている。
【0011】
上ケース12の内部には、ムーブメント2の所定の角度以上の回動状態をホールIC5が検知して、それがスイッチオン状態となったときに検知信号を出力するようにした検知回路が実装された回路基板6が取り付けられている。図中、7はその取付用のネジを示している。
【0012】
そして、その上ケース12には、図3に示すように、回路基板6からの電源Vcc、アースGNDおよび検知出力OUTの各端子が外部に引き出されるソケット部8が一体的に形成されている。
【0013】
また、その上ケース12には、それを振動吸収用のゴムブッシュ9を介して車体側に取り付ける取付座10が設けられている。
【0014】
ムーブメント2には、図4および図5に示すように、円の中心に横方向の回動軸3が設けられている。そして、ムーブメント2の上部には円の中心を通る垂線となる回動の基準位置Oに対して対称となるように所定の開き角度α(例えば70°)をもった切欠部21が設けられ、その下部には基準位置Oが垂直方向にくるようにバランスをとるための重錘部22が設けられている。
【0015】
回路基板6に取り付けられているホールIC5は、ユニポーラ感応タイプのもので、ムーブメント2の基準位置O上に配されており、ムーブメント2が回動してそのS極が対向したときにスイッチオン状態になるようになっている。
【0016】
しかして、ムーブメント2の上部に切欠部21が設けられ、その下部に重錘部22が設けられているので、その重量配分が回動軸3の上方に比してその下方が充分重くなり、ムーブメント2を回動させるには大きなモーメントを必要とするものになって、車両走行時の振動によってはそのムーブメント2が回動しにくくなる。
【0017】
そして、ムーブメント2の上部には、その回動の基準位置Oが中央にくるように比較的大きな開き角度αをもって切欠部21が設けられているので、車両走行時の振動によってそのムーブメント2がその開き角度αの範囲内で揺動してもホールIC5が応動することがない。したがって、車両走行時の振動によって誤検知されるようなことがなく、車両が所定の角度以上に傾倒したときにのみホールIC5がスイッチオン状態になる。
【0018】
また、そのムーブメント2は、図4および図6に示すように、基準位置Oに対して対称となるように、図示の極性をもって異ピッチ多極となるように着磁されている。すなわち、切欠部21側の両端部分には微小な開き角β(例えば8°)をもってN極部N1,N2が、またその周面の中ほどには微小な開き角γ(例えば10°)をもってN極部N3,N4がそれぞれ形成され、その各N極間にはそれぞれ所定の開き角δ(例えば101°)をもったS極部S1,S2および所定の開き角ε(例えば60°)をもったS極部S3が形成されている。
【0019】
しかして、このような異ピッチ多極構造をとることによって、N極部とS極部との境における磁束密度の変化を急峻にすることができ、ムーブメント2が所定の角度以上に回動してS極部がホールIC5に対向したときにスイッチオン状態になるときの位置決めを高精度に設定することができるようになる。
【0020】
図7は、ホールIC5のスイッチング状態に応じて車両の傾倒状態を検知するための検知回路の一例を示している。
【0021】
ここでは、ホールIC5がムーブメント2の所定の角度以上の回動状態を検知してスイッチオン状態となったときにハイレベルの検知信号を出力するような回路を構成したうえで、その検知回路内にコンデンサC1,C2および抵抗R4からなる時定数回路を設けて、その時定数によって決まる時間内でのホールIC5の瞬間的なスイッチオンには応答しないようにしている。
【0022】
すなわち、ホールIC5がスイッチオフ状態にある正常時には、コンデンサC1,C2が充電状態にあり、出力トランジスタQ4がオン状態になって出力端OUTの電圧はローレベルになっている。そして、車両が傾倒してホールIC5がスイッチオン状態になると、コンデンサC1,C2の放電回路が形成され、所定の時間後に出力トランジスタQ4がオフ状態になって出力端OUTの電圧がハイレベルに切り換わる。
【0023】
したがって、車両の走行振動によってムーブメント2が瞬間的に所定の角度以上に回動したときに、傾倒状態の誤検知がなされないようになる。
【0024】
また、この検知回路には、例えば二輪自動車が傾倒したのちにもとの正常な状態に起き上がったような場合にも燃料カットやエンジン点火系統の電源しゃ断などの安全対策を継続して行わせるようにするべく、抵抗R5,R6、コンデンサC3およびトランジスタQ1からなる傾倒状態検知の保持回路が設けられている。
【0025】
すなわち、その保持回路において、車両の傾倒状態が検知されて出力トランジスタQ4がオフ状になって出力端OUTの電圧がハイレベルになると、トランジスタQ1がオン状態となり、それにより出力トランジスタQ4がオフ状態に保持される。この保持状態は、車両のイグニッションスイッチを切って電源をしゃ断することによって解除されることになる。
【0026】
さらに、この検知回路には、制御用トランジスタQ2のコレクタに定電流を供給する定電流回路が設けられており、バッテリ電源(Vcc)の電圧が定格の仕様変更や充電状態、温度環境などによって変化しても傾倒状態検知のタイミングが変動することがないようにしている。
【0027】
ここでは定電流回路として、ツエナダイオードZDを設けることによってバッテリ電源(Vcc)の定電圧化を図り、制御用トランジスタQ2のターンオンに際して抵抗R7を通して常に定電流によるコレクタ電流が供給されるようにしている。
【0028】
すなわち、このツエナダイオードZDおよび抵抗R7による定電流回路を設けない場合には、バッテリ電源(Vcc)の電圧が変動するとそれに応じて制御用トランジスタQ2コレクタ電流が変化してそのスイッチングのタイミングが変わってしまい、コンデンサC1,C2および抵抗R4によって決定される傾倒状態検知のタイミングが変動してしまうことになる。
【0029】
このようなものにあって、特に本発明では、ムーブメント2が瞬間的に大きく回動して時定数回路における設定時間以上にわたってS極部分がホールIC5に対向して傾倒状態の誤検知がなされてしまうのを防止するとともに、車両が180°転倒して倒立した状態をも検知することができるように、ムーブメント2を図4および図6に示すような着磁パターンとしている。
【0030】
すなわち、そのムーブメント2には、その下側中央部分に車両が180°転倒したときの倒立状態時にホールIC5によって感応される倒立感応エリア(S極部S3)と、その倒立感応エリアの両側にそれぞれ配されたホールIC5に感応されない微小な不感応エリア(N極部N3,N4)と、その各不感応エリアに接してそれぞれ配された左,右側の傾倒時にホールIC5によって感応される傾倒感応エリア(S極部S1,S2)とが設けられている。
【0031】
したがって、ムーブメント2の周面の中ほどにホールIC5によっては感応されないN極部分N3,N4が配されてS極部分からなる感応エリアが複数に分割されているので、車両の走行振動などによってムーブメント2が瞬間的に大きく回動しても、時定数回路の設定時間以上にわたってS極部分がホールIC5に対向することがなくなり、傾倒状態の誤検知がなされない。
【0032】
その際、不感応エリアであるN極部分N3,N4がホールIC5に対向することによって、時定数回路における設定時間が初期にリセットされることになる。
【0033】
また、車両が180°転倒して倒立状態になったときには、ムーブメント2の回動の中間位置に配されている倒立感応エリアであるS極部S3がホールIC5に対向して、その倒立状態が確実に検知される。
【0034】
【発明の効果】
以上、本発明による傾倒センサにあっては、着磁した振子式のムーブメントをケースに回動自在に軸支して、ムーブメントが所定の角度以上に回動したことをホール素子によって検知するようにしたもので、車両の傾倒状態の検知を、複雑な調整をすることなく応答性良くなすことができるようになる。
【0035】
そして、本発明によれば、ムーブメントが所定の角度以上に回動して、着磁されたS極(またはN極)部分がユニポーラ感応タイプのホール素子に対向したときのホール素子の感応出力が所定の時定数によって決定される時間以上に継続したときに傾倒状態の検知信号を出力するようにした検知回路を設けるようにしているので、その時定数によって決まる時間内でのホール素子の瞬間的な感応出力には応答することがなく、車両の走行振動による影響を受けることがなくなる。
【0036】
その際、特に本発明によれば、ムーブメントの周面の中ほどにホールICによっては感応されない微小な不感応エリアを設けて感応エリアを分割するようにしているので、ムーブメントが走行振動によって大きく回動しても、時定数によって決まる時間以上にわたって感応エリアがホール素子に対向することがなくなり、傾倒状態の誤検知がなされるようなことを防止することができる。そして、感応エリアを分割するに際しても、ムーブメントの下側中央部分に倒立感応エリアが配されるようにしているので、車両が180°転倒して倒立状態になったときにもそれを確実に検知できるという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による傾倒センサの一実施例を示す正面図である。
【図2】同実施例における傾倒センサの側断面図である。
【図3】同実施例における傾倒センサのソケット端子部分の下面図である。
【図4】同実施例における傾倒センサのムーブメントを示す正面図である。
【図5】そのムーブメントの側面図である。
【図6】そのムーブメントにおける着磁パターンを示す展開図である。
【図7】車両の傾倒状態を検知するための検知回路を示す電気回路図である。
【符号の説明】
1 ケース
11 下ケース
12 上ケース
2 ムーブメント
3 軸
4 Oリング
5 ホールIC
6 回路基板
S3 倒立感応エリア
N3 不感応エリア
N4 不感応エリア
S1 傾倒感応エリア
S2 傾倒感応エリア

Claims (1)

  1. 円の中心に回動軸を有し、その円の中心を通る垂線に対して対称となるように上側部分に所定の開き角度をもって切欠部が形成され、ケースに回動自在に軸支された着磁されたムーブメントと、そのムーブメントが所定の角度以上に回動したときにS極(またはN極)がムーブメントの上方の前記垂線上の位置に設けられたユニポーラ感応タイプのホール素子に対向して、ホール素子の感応出力が所定の時定数によって設定される時間以上に継続したときに傾倒状態の検知信号を出力するようにした検知回路とによって構成され、ムーブメントに、その下側中央部分にムーブメントの倒立時にホール素子によって感応される倒立感応エリアと、その倒立感応エリアの両側にそれぞれ配されたホール素子に感応されない微小な不感応エリアと、その不感応エリアに接してそれぞれ配されたムーブメントの左,右側の傾倒時にホール素子によって感応される傾倒感応エリアとを設けたことを特徴とする傾倒センサ。
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