JP3659855B2 - 傾斜センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば重力方向に垂直な面に対する傾斜角度を検出し、検出された傾斜角度が所定値を超えたときに、警報を発したり、所定の制御を行わせるために用いて好適な静電容量式の傾斜センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の静電容量式の傾斜センサとして、例えば図5、図6に示すような構造の傾斜検出素子を使用するものが知られている(例えば実公平4−53528号公報、実公平5−14168号公報など参照)。
【0003】
図5は、この例の傾斜センサの傾斜検出素子の分解斜視図である。また、図6は、この傾斜検出素子を、その正面に垂直な面で切断した場合の断面図を示すものである。
【0004】
これらの図において、1はプリント基板で、例えばガラス布基材エポキシ樹脂積層板等の耐熱性部材からなる。このプリント基板1は、傾斜センサが傾斜検出対象物に取り付けられる時に、傾斜測定の基準面に対して垂直に配置される。図5では、この基準面は、二点鎖線で示す仮想線L0を含む面として示した。この基準面が、被測定面となる。この場合、傾斜角が0度とは、基準面が重力方向に垂直な線を含む状態である。
【0005】
このプリント基板1には、1対の差動電極2a,2bが、銅泊パターンによって、基準面およびプリント基板1面の両方に垂直な面と、プリント基板1との交差線(図5で二点鎖線で示す仮想線L1)により左右に分割される領域に、互いに電気的に独立に形成される。
【0006】
プリント基板1の差動電極2a,2bが形成される面とは反対側の面には、後述する傾斜センサの信号処理回路部が、プリント配線パターンと必要な電子部品とによって構成されて設けられる。差動電極2a,2bのそれぞれは、図5の電極点2c,2dからスルーホールを介してプリント基板1の信号処理回路部が形成される面の銅泊パターンに接続されるようにされている。
【0007】
そして、1対の差動電極2a,2bは、前記仮想線L1を対称軸として互いに線対称となる形状の電極パターンとして設けられる。また、この1対の差動電極2a,2bのそれぞれは、仮想線L1に垂直な仮想線L2を対称軸とした線対称な電極パターン形状ともされる。図5の例の場合には、差動電極2a,2bの形状は横向きの扇形に構成されている。
【0008】
図5の例の場合、差動電極2aおよび2bの円弧状周縁は、仮想線L1と仮想線L2との交点を中心とした円の一部の円弧とされている。この例の場合、その円の直径は、30mmとされている。
【0009】
3は共通電極板で、適当な剛性を持つ導電性部材で形成されている。この共通電極板3は、この板3と一体で、この板3から直角に曲げられた複数個の端子3a,3b,3c,3dが、プリント基板1に設けられている端子孔4a,4b,4c,4dに挿入され、プリント基板1の信号処理回路部が形成される面において半田付け固定されることにより、図6に示すように、差動電極2a,2bに対して一定の間隔を持って平行に保持される状態でプリント基板1に取り付けられる。
【0010】
5はオイルケースで、適当な柔軟性を有するプラスチックからなる。このケース5は、図6に示すように、断面がコ字状を有し、その端面がプリント基板1に、例えば両面テープ5Bなどの接着手段により接着されることにより、プリント基板1と共に密閉空間を形成する。
【0011】
この場合、差動電極2a,2bの周端縁と、共通電極板3の周端縁と、ケース5の端面の内周縁は同心円状に形成され、また、差動電極2a,2bと共通電極3とケース5の対向面はそれぞれ平行に形成されている。
【0012】
ケース5とプリント基板1とで形成される密閉空間内には、プリント基板1に設けられた貫通孔6からシリコン・オイル等の誘電性液体7が、密閉空間内の有効容積のほぼ1/2のレベル、すなわち図5の仮想線L2のレベルまで充填される。
【0013】
プリント基板1の貫通孔6は、誘電性液体7が封入された後、封止される。
【0014】
なお、8及び9は、外部の影響を遮断するための静電シールド板で、静電シールド板8は、ケース5およびその周辺を覆うようにプリント基板1に取り付けられ、静電シールド板9は、後述する信号処理回路部分を覆うようにプリント基板1に取り付けられる。
【0015】
図7は、この例の傾斜センサの信号処理回路部分の構成を示すものである。
【0016】
図7において、11は発振器であり、その発振信号の出力端子が、前述した図5および図6で説明した構成の傾斜検出素子10の共通電極板3に接続される。また、傾斜検出素子10の1対の差動電極2a,2bのそれぞれは、容量−電圧変換回路12a,12bの入力端子に接続される。
【0017】
これら容量−電圧変換回路12aおよび12bの出力端子は、それぞれ差動増幅回路13の一方および他方の入力端子に接続される。この差動増幅回路13からは傾斜センサの出力端子14が導出される。なお、信号処理回路部には電源安定化回路15が含まれており、この電源安定化回路15を通じた安定化電圧が発振器11や差動増幅回路13に、その電源電圧として供給される。
【0018】
信号処理回路部は、上述のように構成されているので、発振器11からの一定周波数の発振出力信号は、差動電極2aと共通電極板3とで構成される第1のコンデンサを通じて容量−電圧変換回路12aに供給されると共に、差動電極2bと共通電極板3とで構成される第2のコンデンサを通じて容量−電圧変換回路12bに供給される。このとき、容量−電圧変換回路12aおよび12bのそれぞれには、第1のコンデンサの容量値および第2のコンデンサの容量値のそれぞれに応じた波高値の信号が、それぞれ入力される。
【0019】
容量−電圧変換回路12aおよび12bは、それぞれの入力信号を整流し、平滑した電圧を出力する。したがって、容量−電圧変換回路12aおよび12bの出力電圧は、それぞれの入力信号の波高値、すなわち、第1のコンデンサの容量値および第2のコンデンサの容量値のそれぞれに応じた大きさとなる。
【0020】
したがって、差動増幅回路13からは、容量−電圧変換回路12aの出力電圧と、容量−電圧変換回路12bの出力電圧との差の電圧が得られ、それが傾斜センサの出力として、出力端子14に導出される。すなわち、差動増幅回路13からは、第1のコンデンサと第2のコンデンサの容量値の差に応じた出力電圧が得られる。
【0021】
以上のような構成の傾斜検出素子10および信号処理回路部を備える傾斜センサを、前述したように被測定物の傾斜測定の基準面となる面(以下、この面を被測定面という)上に設置する。このとき、傾斜検出素子10のプリント基板1面が、被測定面の被測定傾斜方向を含む面となるように設置する。
【0022】
なお、この明細書において、被測定面の被測定傾斜方向とは、測定しようとする傾斜の方向に被測定面が傾斜するときの被測定面の法線の移動方向であり、被測定面が測定しようとする傾斜の方向に順次傾斜するときに、各傾斜位置にある被測定面の法線の全てを含む面に沿う方向をいう。
【0023】
被測定面が、前記被測定傾斜方向に傾斜していなければ(すなわち、重力方向に垂直な線を含む面となっているとき)、誘電性液体7は、差動電極2aと2bとのそれぞれほぼ半分を等しく浸漬する状態となる。したがって、差動電極2aと共通電極板3とで構成される第1のコンデンサの容量値と、差動電極2bと共通電極板3とで構成される第2のコンデンサの容量値とは等しくなり、容量−電圧変換回路12a,12bの出力電圧の差は零となる。このとき、差動増幅回路13の出力電圧は、それに応じた電圧Voとなる。
【0024】
そして、被測定面が、前記被測定傾斜方向に傾斜したとき、誘電性液体7の液面位置は、差動電極2a,2bの一方は、その傾斜角だけ誘電性液体7内に余分に浸漬し、他方は、その傾斜角だけ電極が液面から露呈するようになる状態になり、その傾斜角に応じた容量差が第1のコンデンサと第2のコンデンサとの間に生じる。
【0025】
このとき、図5において、傾斜角が0度の位置から被測定面が+θ方向(例えば反時計方向)に傾斜した場合には、第1のコンデンサの容量値が小さくなり、第2のコンデンサの容量値が大きくなるため、容量−電圧変換回路12aの出力電圧が、容量−電圧変換回路12bの出力電圧よりも大きくなる。したがって、差動増幅回路13の出力電圧は、電圧Voよりも+θ方向の傾斜角に応じた分だけ、大きくなるように変化する。
【0026】
一方、図5において、傾斜角が0度の位置から被測定面が−θ方向(例えば時計方向)に傾斜した場合には、第2のコンデンサの容量値が小さくなり、第1のコンデンサの容量値が大きくなるため、容量−電圧変換回路12aの出力電圧が、容量−電圧変換回路12bの出力電圧よりも小さくなる。したがって、差動増幅回路13の出力電圧は、電圧Voよりも−θ方向の傾斜角に応じた分だけ、小さくなるように変化する。
【0027】
したがって、差動増幅回路13からは、容量−電圧変換回路12a,12bの出力電圧の差分、つまり、2個のコンデンサの容量値の差分、に応じた電圧が出力電圧として得られる。この差動増幅回路13の出力電圧は、図8のように、傾斜角=0の面位置からの傾斜方向も含めて、傾斜角=0の面位置からの被測定面の傾斜角に比例して直線状に変化する直流電圧となる。
【0028】
なお、この場合、差動電極2a,2b及び共通電極板3の前記扇形形状は、この差動増幅回路13の出力電圧の変化が、図8に示すように、傾斜角の変化にリニアに対応するように定めたものである。
【0029】
この傾斜センサを用いて、被測定面の一定値以上の傾斜を警報する場合には、差動増幅回路13の出力電圧に対して、閾値電圧を設定し、その閾値電圧を超えた時に警報するようにするが、この従来の傾斜センサの出力特性は図8のように直線特性であるので、傾斜方向が+θ方向の閾値傾斜角度に対応した閾値電圧V1と、傾斜方向が−θ方向の閾値傾斜角度に対応した閾値電圧V2とを設定するようにする。
【0030】
そして、警報回路は、被測定面の傾斜方向が+θ方向の場合には、差動増幅回路13の出力電圧が電圧V1よりも大きくなった時に警報を発する第1の検出回路と、傾斜方向が−θ方向の場合には、差動増幅回路13の出力電圧が電圧V2よりも小さくなったときに警報を発するように第2の検出回路とにより構成している。
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来の傾斜センサを用いて、例えば警報回路を構成する場合には、傾斜角=0の面位置からの+θ方向と−θ方向との傾斜方向の違いにより、異なる閾値電圧を設定して、それぞれ異なる検出回路を必要としており、警報回路の構成が複雑となってしまう問題があった。
【0032】
この発明は、以上の点にかんがみ、傾斜角が0度の位置からの傾斜方向に関係なく、ひとつの閾値により、被測定面の一定値以上の傾斜角の変化を検出することができる傾斜センサを提供することを目的とするものである。
【0033】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、この発明による傾斜センサは、
傾斜測定の基準面に対して垂直方向に配置されるプリント基板と、
前記プリント基板上において、互いに電気的に独立に設けられる1対の差動電極と、
前記1対の差動電極に対して所定の空隙を隔てて対向する共通電極板を備え、この共通電極板から導出される端子により、前記プリント基板に取り付けられる共通電極と、
前記1対の差動電極と前記共通電極板とを、前記プリント基板との間で形成する密閉空間内に収納するようにするケース部材と、
前記密閉空間内に、液面が前記基準面の傾斜に応じて変化するような状態で封入された誘電性液体と、
前記プリント基板上に設けられ、前記共通電極と、前記1対の差動電極のそれぞれとで構成される2個のコンデンサの容量値の差分に応じたレベルの出力信号を傾斜検出出力として得る信号処理回路部と
を備え、
前記1対の差動電極は、前記基準面に平行な面と前記プリント基板との第1の交差線により分けられる領域に互いに電気的に独立に設けられるものであって、前記第1の交差線を対称軸として互いに線対称な形状であり、かつ、前記1対の差動電極のそれぞれの形状は、前記基準面に垂直な面と前記プリント基板との第2の交差線を対称軸として線対称な形状であり、
前記誘電性液体は、前記密閉空間内の前記第1の交差線のレベルまで封入され、
前記信号処理回路部は、
記共通電極と前記1対の差動電極の一方の電極とで構成される第1のコンデンサを通じて取り出される信号を整流して電圧に変換する第1の容量−電圧変換回路と、
前記共通電極と前記1対の差動電極の他方の電極とで構成される第2のコンデンサを通じて取り出される信号を整流して電圧に変換する第2の容量−電圧変換回路と、
前記第1の容量−電圧変換回路の出力電圧と、前記第2の容量−電圧変換回路の出力電圧との差分を出力する差動増幅回路と
からなり、
前記差動増幅回路の出力に対して設定された1つの閾値を前記差動増幅回路の出力が超えたか否かにより、傾斜方向に関係なく、前記被測定面の一定値以上の傾斜角の変化を検出するようにした
ことを特徴とする。
【0034】
【作用】
上述の構成のこの発明による傾斜センサを、傾斜測定の基準面(被測定面)上に、プリント基板1面が、被測定面の被測定傾斜方向を含む面となるように設置すると、信号処理回路部の出力信号は次のような変化特性となる。
【0035】
すなわち、被測定面が被測定傾斜方向に傾斜していなければ、1対の差動電極の一方のみが誘電性液体内に浸漬する状態になり、信号処理回路部の出力信号は、2個のコンデンサの容量値の差分に応じた所定値Vnとなる。
【0036】
この状態から被測定面が被測定傾斜方向に傾斜したとき、その傾斜角が誘電性液体の液面が、1対の差動電極の他方の差動電極にまでかからない範囲内では、傾斜方向が前述の+θ方向または−θ方向のいずれの傾斜方向の場合であっても、信号処理回路部の出力信号は、ほぼ前記所定値Vnとなる。
【0037】
そして、さらに被測定面が被測定傾斜方向に傾斜して、誘電性液体の液面が、1対の差動電極のもう一方の差動電極にまでかかるような状態になったときには、傾斜方向が前述の+θ方向または−θ方向のいずれの傾斜方向の場合であっても、それまで全てが誘電性液体内に浸漬されていた一方の差動電極の一部が誘電性液体の液面から露呈し、その分、他方の差動電極の一部が誘電性液体内に浸漬する状態になる。
【0038】
すると、それまで全てが誘電性液体内に浸漬されていた一方の差動電極と共通電極とで形成されるコンデンサの容量は小さくなり、一方、一部が誘電性液体内に浸漬される状態になった他方の差動電極と共通電極とで形成されるコンデンサの容量は大きくなる。
【0039】
したがって、2個のコンデンサの容量値の差分は小さくなり、このため、信号処理回路部からの出力信号のレベルは、傾斜角度に応じて小さくなる。このとき、傾斜方向が前述の+θ方向または−θ方向のいずれの傾斜方向の場合であっても、同様の変化となる。
【0040】
したがって、この発明によれば、所定の傾斜角度以上の傾きを検出する時の、閾値は、+θ方向および−θ方向の両方向でひとつで良くなる。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、この発明による傾斜センサの実施の形態を図を参照しながら説明する。
図1は、この実施の形態の傾斜センサの傾斜検出素子の分解斜視図である。また、図2は、この実施の形態の傾斜センサの傾斜検出素子を、その正面に垂直な面で切断した場合の断面図を示すものである。
【0042】
これらの図において、21はプリント基板で、例えばガラス布基材エポキシ樹脂積層板等の耐熱性部材からなる。このプリント基板21は、傾斜センサが傾斜検出対象物に取り付けられる時に、傾斜測定の基準面に対して垂直に配置される。図1では、この基準面は、二点鎖線で示す仮想線L0を含む面として示した。この基準面が、被測定面となる。この場合、傾斜角が0度とは、基準面が重力方向に垂直な線を含む状態である。
【0043】
このプリント基板21には、1対の差動電極22a,22bが、銅泊パターンによって、基準面に平行な面(プリント基板21面と垂直な面)と、プリント基板21との交差線(図1で二点鎖線で示す仮想線L2)により上下に分割される領域に、互いに電気的に独立に形成される。
【0044】
プリント基板21の差動電極22a,22bが形成される面とは反対側の面には、後述する傾斜センサの信号処理回路部が、プリント配線パターンと必要な電子部品とによって構成されて設けられる。差動電極22a,22bのそれぞれは、図1の電極点22c,22dからスルーホールを介してプリント基板21の信号処理回路部が形成される面の銅泊パターンに接続されるようにされている。
【0045】
そして、1対の差動電極22a,22bは、前記仮想線L2を対称軸として線対称な形状の電極パターンとして設けられる。また、この1対の差動電極22a,22bのそれぞれは、仮想線L2に垂直(したがって、基準面に垂直)な仮想線L1を対称軸とした線対称な電極パターン形状ともされる。図1の例の場合には、差動電極22a,22bの形状は縦置きの扇形に構成されている。
【0046】
図1の例の場合、差動電極22aおよび22bの円弧状周縁は、仮想線L1と仮想線L2との交点を中心とした円の一部の円弧とされている。この実施の形態の場合、その円の直径は、例えば14mmとされている。
【0047】
この場合、各差動電極22a,22bの扇形の開き角sは、傾斜センサの出力信号について、傾斜変化に対してリニアな出力特性を得たい傾斜角度範囲に応じて設定される。すなわち、傾斜角が0度の位置からの傾斜角度が所定値θa以上の範囲の出力特性をリニアにする場合には、開き角sは、s=(90−θa)×2に選定される。この例では、傾斜角が0度の位置からの傾斜角度が40度以上の範囲の出力特性をリニアにするために、100度とされている。
【0048】
23は共通電極板で、適当な剛性を持つ導電性部材で形成されている。この共通電極板23の形状は、1対の差動電極22a,22bに、この共通電極板を重ねたときに丁度一致するような、瓢箪型の形状とされている。
【0049】
この共通電極板23は、この板23と一体で、この板23から直角に曲げられた、この例では2個の端子23a,23bが、プリント基板21に設けられている端子孔24a,24bに挿入され、プリント基板21の信号処理回路部が形成される面において半田付け固定されることにより、図2に示すように、差動電極22a,22bに対して一定の間隔を持って平行に保持される状態でプリント基板21に取り付けられる。
【0050】
この例では、図1に示すように、より小型にするために、共通電極板23から導出される2個の端子23a,23bは、瓢箪型形状のくびれた部分から導出され、差動電極22aと22bとの間の電極パターンが形成されていないプリント基板21部分に設けられた端子孔24a,24bに挿入されるようにされている。これにより、傾斜検出素子の水平方向の大きさを小さくすることができる。
【0051】
25はオイルケースで、適当な柔軟性を有するプラスチックからなる。このケース25は、図2に示すように、断面がコ字状を有し、その端面がプリント基板21に、例えば両面テープ25Bなどの接着手段により接着されることにより、プリント基板21と共に密閉空間を形成する。
【0052】
このとき、差動電極22a,22bと共通電極23とケース25の対向面はそれぞれ平行になるように構成されるとともに、共通電極23の重心位置とケース25の重心位置とが一致するようにされている。
【0053】
そして、ケース25とプリント基板21とに形成される密閉空間内には、プリント基板21の差動電極22aに設けられた貫通孔26aからシリコン・オイル等の誘電性液体27が、密閉空間内の有効容積のほぼ1/2のレベル、すなわち図1の仮想線L2のレベルまで充填される。
【0054】
プリント基板21の差動電極22aの部分に設けられている貫通孔26aは、誘電性液体27が密閉空間内に封入された後、プリント基板21の信号処理回路部が設けられている面側から半田により穴埋めされて封止される。貫通孔26aは、銅泊パターン部分であるため、半田により容易に穴埋めされる。
【0055】
なお、この実施の形態では、後述する傾斜センサ出力のリニアな特性部分を補償するために、差動電極22aと対の差動電極22bにも、貫通孔26bが設けられ、前述と同様にして、半田により穴埋めされる。この場合、貫通孔26aと26bとは、同一径とされ、また、仮想線L2を対称軸として対称な位置に設けられる。
【0056】
なお、この実施の形態の場合の密閉空間のプリント基板21からの高さは、例えば3mmと薄く、プリント基板21と共通電極板23との距離は、1.5mm程度しかない。誘電性液体27は、例えば注射針のようなノズルを密閉空間内に差し込んで注入するが、1.5mmでは、差し込む距離として短すぎる。そこで、この実施の形態では、図1に示すように、差動電極22a,22bの貫通孔26a,26bの位置に対応する共通電極板23の位置には、同一径の貫通孔23c,23dが設けられ、誘電性液体27の注入用のノズルの差し込み距離として、3mmを確保できるようにしている。
【0057】
この場合、共通電極板23の貫通孔23cおよび23bは、仮想線L2を対称軸として線対称の位置となるので、後述する傾斜センサ出力のリニアな特性部分を補償することが可能となる。
【0058】
また、この実施の形態の場合、電極点22c,22dが形成されるスルーホールの一方、図の例では、電極点22cの部分は、誘電性液体27を封入するときの空気抜きにも用いられる。前述と同様に、後述する傾斜センサ出力のリニアな特性部分を補償するために、電極点22c,22dが形成されるスルーホールは、差動電極22a,22bにおいて、仮想線L2に対して対称な位置に設けられている。そして、これら電極点22c、22dは、誘電性液体を封入した後に、半田で封止される。
【0059】
28及び29は、外部の影響を遮断するための静電シールド板で、静電シールド板28は、ケース25およびその周辺を覆うように、プリント基板21に取り付けられ、静電シールド板29は、後述する信号処理回路部分を覆うようにプリント基板21に取り付けられる。
【0060】
また、この実施の形態の場合、オイルケース25の外平面には、導電性板31が取り付けられる。この導電性板31は、導電性の取り付けピン32により、オイルケース25を貫通してプリント基板21に固定されて取り付けられる。そして、導電性の取り付けピン32の先端は、プリント基板21の接地導体に接続されることにより、導電性板31が電気的に接地されている。
【0061】
なお、この例では、オイルケース25の端面が当接するプリント基板21の両面テープ25Bが張り付けられる部分は、表面を平坦にするために、オイルケース25の端面に対応する形状に銅泊パターンが形成されている。この銅泊パターンは、プリント基板25の裏面側のアースパターンに、ピン32が挿入される孔を介して接続されて、接地されている。
【0062】
図3は、この実施の形態の傾斜センサの信号処理回路部分の構成を示すものである。
【0063】
この実施の形態の傾斜センサにおいては、入力端子41を通じてクロック信号SCが入力される。図3においては、このクロック信号SCは、傾斜センサとは別の制御回路基板に設けられる制御回路50から供給される。
【0064】
入力端子41を通じて入力された一定周波数のクロック信号は、例えばC−MOSインバータからなるクロックバッファ42により、波形整形され、これにより、入力クロック信号の波形のなまりが補正される。このクロックバッファ42の出力端子が、前述した図1および図2で説明した実施の形態の傾斜検出素子40の共通電極板23に接続される。また、傾斜検出素子40の1対の差動電極22a,22bのそれぞれは、容量−電圧変換回路43a,43bの入力端子に接続される。
【0065】
これら容量−電圧変換回路43aおよび43bの出力端子は、それぞれ差動増幅回路44の一方および他方の入力端子に接続される。この差動増幅回路44からは傾斜センサの出力端子45が導出される。
【0066】
なお、図3では、省略したが、この信号処理回路部は、図7の従来の電源安定化回路は設けられず、外部からの安定化された電源電圧が供給される構成とされている。
【0067】
この実施の形態の信号処理回路部は、上述のように構成されているので、入力端子41を通じて入力されたクロック信号SCは、クロックインバータ42により波形整形された後、差動電極22aと共通電極板23とで構成される第1のコンデンサを通じて容量−電圧変換回路43aに供給されると共に、差動電極22bと共通電極板23とで構成される第2のコンデンサを通じて容量−電圧変換回路12bに供給される。このとき、容量−電圧変換回路43aおよび43bのそれぞれには、第1のコンデンサの容量値Caおよび第2のコンデンサの容量値Cbのそれぞれに応じた波高値の信号が、それぞれ入力される。
【0068】
容量−電圧変換回路43aおよび43bは、それぞれの入力信号を整流し、平滑した電圧を出力する。したがって、容量−電圧変換回路43aおよび43bの出力電圧は、それぞれ回路43aおよび回路43bの入力信号の波高値、すなわち、第1のコンデンサの容量値Caおよび第2のコンデンサの容量値Cbのそれぞれに応じた大きさとなる。
【0069】
したがって、差動増幅回路44からは、容量−電圧変換回路43aの出力電圧と、容量−電圧変換回路43bの出力電圧との差の電圧が得られ、それが傾斜センサの出力として、出力端子45に導出される。
【0070】
この出力端子45に得られる傾斜センサの出力電圧は、制御回路50に供給される。この制御回路50は、この例では、マイクロコンピュータの構成とされており、CPU51に対して、システムバス52を通じてプログラムROM53、ワークエリアRAM54、およびI/Oポート55、56、57等を備える。
【0071】
制御回路50は、I/Oポート56を通じてクロック信号SCを傾斜センサの入力端子41に供給する。そして、傾斜センサの出力端子45からの傾斜検出出力としての出力電圧が、図示を省略したA/Dコンバータを通じて制御回路50のI/Oポート55に入力される。
【0072】
制御回路50では、プログラムROM52に格納された傾斜閾値検出プログラムに従って、傾斜センサの出力電圧が、所定の閾値電圧を超えたか否か検出し、前記閾値電圧を超えたことを検出したときには、被制御部60に、対応する制御信号を供給して所定の制御を実行させる。
【0073】
以上のような構成の傾斜検出素子40および信号処理回路部を備える傾斜センサを、前述したように傾斜測定の基準面となる被測定面上に設置し、制御回路50にその入力端子41および出力端子45を前述のように接続する。このとき、傾斜検出素子40のプリント基板1面が、被測定面の被測定傾斜方向を含む面となるように設置するのは、前述の場合と同様である。
【0074】
被測定面が、前記被測定傾斜方向に傾斜していない傾斜角が0の位置にあるとき(すなわち、重力方向に垂直な線を含む面となっているとき)、差動電極22bの部分は、その全体が誘電性液体27内にあり、一方、差動電極22aは、誘電性液体27には全く浸漬されていない状態になる。
【0075】
したがって、誘電体液体との浸漬量に応じた可変容量としての、差動電極22bと共通電極板23とで構成される第2のコンデンサの容量値Cbは、最大値となり、一方、差動電極22aと共通電極板23とで構成される第1のコンデンサの容量値Caは、最小値となる。
【0076】
したがって、容量−電圧変換回路43aと43bの出力電圧の差は最大となり、傾斜センサの出力電圧は、図4に示すように最大値Vmを示す。
【0077】
そして、被測定面が、前記被測定傾斜方向に傾斜したときであっても、その傾斜角度が、基準面に対して、扇形の差動電極22a,22bの開き角sに応じた角度K=90−s/2を超えない角度の範囲、この例では40度を超えない角度範囲では、差動電極22は、ほぼ全部が誘電性液体27に浸漬した状態を維持し、一方、差動電極22は、ほぼ誘電性液体27には浸漬されていない状態を維持する。
【0078】
したがって、第1のコンデンサの容量値Caと、第2のコンデンサの容量値Cbは、殆ど変化せず、差動増幅器44の出力電圧は、ほぼ電圧Vmのままとなる。
【0079】
そして、被測定面が、前記被測定傾斜方向にさらに傾斜して、前記角度Kを超えたときには、傾斜方向が+θ方向または−θ方向のいずれの傾斜方向の場合であっても、それまでほぼ全てが誘電性液体27内に浸漬されていた差動電極22の一部が誘電性液体27の液面から露呈し、その分、差動電極22の一部が誘電性液体27に浸漬する状態になる。
【0080】
そのため、差動電極22aと共通電極23とで形成される第1のコンデンサの容量値Caは、それまでよりも大きくなり、一方、差動電極22bと共通電極23とで形成される第2のコンデンサの容量値Cbは、それまでよりも小さくなる。
【0081】
したがって、容量−電圧変換回路43aの出力電圧と、容量−電圧変換回路43bの出力電圧との差が小さくなる。このため、傾斜センサの出力電圧は、図4に示すように、傾斜方向が+θ方向または−θ方向のいずれの場合であっても、傾斜角度の増加に応じてリニア(直線的)に下がるようになる。
【0082】
したがって、制御回路50で、検出する閾値の傾斜角θthに応じた単一の電圧Vthを予め定め、傾斜センサの出力電圧が、その電圧Vth以下になったか否かを検出することにより、傾斜方向が+θ方向または−θ方向のいずれの場合であっても、被測定面が閾値の傾斜角θthよりも傾いたか否かを検出することができる。
【0083】
この場合、制御回路50では、単一の電圧Vthを超えたか否かを監視するソフトウエアプログラムにより、被測定面が閾値の傾斜角θthよりも傾いたか否かを検出することができるので、従来の2つの閾値電圧を監視する場合に比べて、簡単なソフトウエアプログラムで良いという効果がある。
【0084】
制御回路50をマイクロコンピュータで構成するのではなく、デスクリートのハードウエア構成とすることもできるが、その場合には、単一の閾値電圧Vthを超えたか否かを検出する回路のみを構成するだけでよいので、従来のように、傾斜方向が+θ方向の閾値を超えたか否かの検出回路と、傾斜方向が−θ方向の閾値を超えたか否かの検出回路とを、2個設ける必要がなくなり、構成を簡略化することができる。
【0085】
また、上述の実施の形態の場合には、従来のような発振器を傾斜センサの信号処理回路に設けることなく、クロック信号を外部から供給するようにした構成であるので、プリント基板を含めて、全体の大きさを小さくすることができる。また、従来の電源安定化回路を削除するようにしたことも、傾斜センサの小型化に寄与している。
【0086】
なお、図3の例の場合には、容量−電圧変換回路43aの出力電圧を差動増幅回路44の非反転入力端子に供給し、容量−電圧変換回路43bの出力電圧を差動増幅回路44の反転入力端子に供給するようにしたので、差動増幅回路44の出力電圧の特性は、図4に示すような特性となるが、容量−電圧変換回路43aおよび43bの出力電圧の、差動増幅回路44の入力端子への入力を図3の場合と逆にすれば、差動増幅回路44の出力電圧の特性は、図4の場合とは逆となる。
【0087】
すなわち、第1のコンデンサの容量Caと第2のコンデンサCbの容量の差が最大の時に、出力電圧が最小になり、容量の差が小さくなるに連れて、出力電圧が増加するような特性となる。この場合には、閾値電圧Vthよりも大きくなることを検出することにより、被測定面が閾値の傾斜角θthよりも傾いたか否かを検出することができる
【0088】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の傾斜センサによれば、被測定面が、傾斜していない状態から時計方向、反時計方向のいずれの方向に傾斜しても、その傾斜の方向に関係なく、一定方向に変化する出力電圧を得ることができるので、検出する傾斜角に対応する閾値電圧がひとつでよく、所定の傾斜角以上に傾斜したか否かの検出回路を簡単な構成のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による傾斜センサの実施の形態の分解図である。
【図2】実施の形態の傾斜センサの断面図である。
【図3】実施の形態の傾斜センサの信号処理回路部の構成を説明するための図である。
【図4】実施の形態の傾斜センサの出力電圧特性を示す図である。
【図5】従来の傾斜センサの一例の分解図である。
【図6】従来の傾斜センサの一例の断面図である。
【図7】従来の傾斜センサの信号処理回路部の構成を示す図である。
【図8】従来の傾斜センサの出力電圧特性を示す図である。
【符号の説明】
21 プリント基板
22a,22b 差動電極
23 共通電極
25 オイルケース
27 誘電性液体
41 傾斜センサの入力端子
42 クロックバッファ
43a,43b 容量−電圧変換回路
44 差動増幅器

Claims (2)

  1. 傾斜測定の基準面に対して垂直方向に配置されるプリント基板と、
    前記プリント基板上において、互いに電気的に独立に設けられる1対の差動電極と、
    前記1対の差動電極に対して所定の空隙を隔てて対向する共通電極板を備え、この共通電極板から導出される端子により、前記プリント基板に取り付けられる共通電極と、
    前記1対の差動電極と前記共通電極板とを、前記プリント基板との間で形成する密閉空間内に収納するようにするケース部材と、
    前記密閉空間内に、液面が前記基準面の傾斜に応じて変化するような状態で封入された誘電性液体と、
    前記プリント基板上に設けられ、前記共通電極と、前記1対の差動電極のそれぞれとで構成される2個のコンデンサの容量値の差分に応じたレベルの出力信号を傾斜検出出力として得る信号処理回路部と
    を備え、
    前記1対の差動電極は、前記基準面に平行な面と前記プリント基板との第1の交差線により分けられる領域に互いに電気的に独立に設けられるものであって、前記第1の交差線を対称軸として互いに線対称な形状であり、かつ、前記1対の差動電極のそれぞれの形状は、前記基準面に垂直な面と前記プリント基板との第2の交差線を対称軸として線対称な形状であり、
    前記誘電性液体は、前記密閉空間内の前記第1の交差線のレベルまで封入され、
    前記信号処理回路部は、
    記共通電極と前記1対の差動電極の一方の電極とで構成される第1のコンデンサを通じて取り出される信号を整流して電圧に変換する第1の容量−電圧変換回路と、
    前記共通電極と前記1対の差動電極の他方の電極とで構成される第2のコンデンサを通じて取り出される信号を整流して電圧に変換する第2の容量−電圧変換回路と、
    前記第1の容量−電圧変換回路の出力電圧と、前記第2の容量−電圧変換回路の出力電圧との差分を出力する差動増幅回路と
    からなり、
    前記差動増幅回路の出力に対して設定された1つの閾値を前記差動増幅回路の出力が超えたか否かにより、傾斜方向に関係なく、前記被測定面の一定値以上の傾斜角の変化を検出するようにした
    ことを特徴とする傾斜センサ。
  2. 前記信号処理回路は、外部からの一定周波数のクロック信号を受けて、前記共通電極に供給するバッファ回路をさらに備える
    ことを特徴とする請求項1に記載の傾斜センサ。
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