JP4462695B2 - セラミック回路基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックの焼成における平面の収縮率を抑制したセラミック回路基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、セラミック回路部品の平面における収縮率を抑える技術が提案されている。例えば、特許登録第2803414号は、ガラスセラミック材料からなるグリーンシートを複数積層し、その両主面に、前記ガラスセラミック材料の焼成温度では焼結しない無機組成物を主原料とするグリーンシート(以下、無機組成物層という)を積層し、前記ガラスセラミック材料の焼成温度で焼成した後、前記無機組成物層の表面に樹脂を含浸させることで厚み方向だけ収縮し、平面方向には収縮せず、かつ、良好な機械強度をえることができるセラミック回路基板の製造方法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の無機組成物層に樹脂を含浸させて無機組成物層の耐湿性を保持する場合、例えば、セラミック回路基板の表面に形成した導体層にはんだ濡れ性の維持するためにメッキ処理を施すことがあるが、上述のように無機組成物層に樹脂を含浸させると、導体表面を活性化する為、脱脂工程で酸処理を行うが、この酸処理で含浸した樹脂が侵され、耐湿性を劣化するためにメッキ処理を施すことができない。
【0004】
また、無機組成物層を樹脂で含浸した後は、抵抗体を焼成する際、含浸した樹脂成分が分解酸化されるために無機組成物の表面に抵抗体を形成する事もできない。仮に樹脂を含浸する前に無機組成物層の表面に抵抗体を形成する際、焼成の過程で抵抗体のガラス成分が基体側に流れ込んでしまい、当初の抵抗体の特性が得られなくなってしまうという問題がある。
【0005】
さらに、表層導体の接着強度についても無機組成物層のセラミック材料が焼結していない状態で樹脂による含浸が行われているため、セラミック基板、例えば、アルミナ基板やガラスセラミック基板上に直接形成した表層導体の接着強度に比べると弱くなる。また、樹脂であるがゆえに、長期信頼性、例えば、耐湿性の面で樹脂が吸湿する事で、セラミック回路基板の内部導体、特にAgを用いた内部導体においては、マイグレーションが発生する。
【0006】
本発明は、上述の問題点に鑑みて案出されたものであり、耐湿性に優れ、また、メッキ処理も可能な平面的な収縮を抑制した多層基板を提供する事を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の問題点を解決するために本発明は、導体ペーストで電極パターンを形成した有機バインダ,可塑剤を含むガラスセラミック材料からなるグリーンシートを複数積層して積層体を形成し、該積層体の両主面もしくは一方主面に前記ガラスセラミック材料の焼成過程において焼結しない無機組成物層を被着させ、次に前記積層体を前記ガラスセラミック材料が焼結できる温度で焼成し、しかる後、前記無機組成物層の表面にガラス材料を塗布し、再度、該ガラス材料が焼結できる温度で焼成することを特徴とするセラミック回路基板の製造方法を提供する。
【0008】
本発明の構成によれば、積層体の両主面もしくは一方主面に前記無機組成物層を形成しているために、ガラスセラミック材料が焼結する温度で焼成した際、無機組成物層がポーラスな状態で残る。この無機組成物層の表面を覆うようにガラス材料を塗布すると、ガラス材料は、そのポーラスな状態の無機組成物層の内部に浸透していき、無機組成物層の空隙を埋め、その後、ガラス材料が焼結できる温度で加熱することで、十分な耐湿性及び機械的強度を得ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の回路基板を図面に基づいて詳説する。
図1は、本発明の回路基板の断面図である。なお、本発明の実施の形態における構造としては、例えば4枚のグリーンシートを複数積層してなる絶縁層の内部に内部配線及びそれらを接続させるビアホール導体からなる多層回路基板で説明する。
図において、10はセラミック回路基板であり、絶縁層1b,1cが積層された積層体11の両主面に絶縁層1a,1dが被着形成されて基体1が形成されており、基体1の内部に内部配線3、ビアホール導体4が形成されて成る。また、2は表面配線層であり、5は抵抗体膜、6はその保護膜である。
【0010】
基体1の絶縁層1b,1cはガラスセラミック材料からなり、絶縁層1a,1dはガラスセラミック材料の焼成過程で焼結せず、収縮しない無機組成物からなる。
【0011】
ガラスセラミック材料からなる絶縁層1b、1cとは、例えば、無機組成物と結晶化ガラスの混合物からなる。
無機組成物としては、クリストバライト、石英、コランダム(αアルミナ)、ムライト、ジルコニア、コージェライト等が例示でき、1種または複数種類を含むものであり、総称してセラミック材料といわれている。このセラミック材料の平均粒径は1.0〜6.0μmが好ましい。
結晶化ガラス材料としては、複数の金属酸化物を含むガラスフリットであり、800〜1000℃で焼成した際に、コージェライト、ムライト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウイレマイト、ドロマイト、ペタライト、オオスミライト及びその置換誘導体の結晶を少なくとも1種析出するものがあげられ、この結晶化ガラス材料の平均粒径は、1.0〜5.0μmが好ましい。
また、無機組成物であるセラミック材料と結晶化ガラス材料の構成比率は、セラミック材料が10wt%〜60wt%、好ましくは、30wt%〜50wt%、結晶化ガラス材料が90wt%〜40wt%、好ましくは、70wt%〜50wt%である。ここで、セラミック材料が10wt%未満で結晶化ガラス材料が90wt%以上であれば絶縁層1b、1cにガラス質が増加し過ぎ、絶縁層1b、1cの強度を得ることができない。また、結晶化セラミック材料が60wt%を超えて結晶化ガラス材料が40wt%未満となると、焼成後の基体緻密性が損なわれる。
【0012】
ガラスセラミック材料の焼成過程で焼結しない材料としては、上述のセラミック材料の粉末と有機バインダ、可塑剤と溶剤とを混練しスラリー化したものをドクターブレード法や引き上げ法でグリーンシートにして用いられる。この基体1はガラスセラミック材料が焼結する800〜1000℃で焼成され、これにより、基体1の絶縁層1a,1dのみが焼結せずにポーラスな状態で基体1の表面に残ることになる。この状態でガラス材料が絶縁層1a,1d表面に塗布され、ポーラスな状態の絶縁層1a,1d内部に浸透していき、絶縁層1a,1dの空隙を埋めるように浸透していく。ガラス材料としては、低温で焼成できるB2O3−SiO2系、ZnO−B2O3系、B2O3−SiO2−Al2O3−PbO系、Li2O−SiO2系等が挙げられ、400℃〜1000℃で焼成する。なお、無機組成物層に塗布するガラス材料に関し、例えば、アルカリ土類金属酸化物−B2O3-SiO2系のような化学的に安定な物を選ぶことで耐メッキ性を十分得ることもできる。
【0013】
絶縁層1a〜1dは、1層あたり50〜300μm程度の厚みを有し、上述のように、その厚み方向にビアホール導体4が、また、絶縁層1a〜1dの層間には、所定回路網を構成する内部配線3が形成されている。この内部配線3、ビアホール導体4は、Ag、Ag−Pd、Cuなどを主成分とする導体材料により構成されている。内部配線3及びビアホール導体4を形成する導電性材料は、例えば、所定量のAg粉末等の金属粉末,必要に応じて所定量のホウケイ酸系低融点ガラス,エチルセルロース等の有機バインダ,2.2.4−トリメチル−1.3−ペンタジオールモノイソブチレート等の有機溶剤を混合し、3本ロールミルで混練して作製する。さらに、基体1の表面の焼結しない絶縁層1a,1dの層上に、内部導体と接続するためのビアホール導体が覗いている部分を除き、低温で軟化するガラス材料を塗布、又は、印刷する。この状態で再度形成したガラス材料が焼成される温度で焼成される。
【0014】
このガラス材料が塗布された基体1の表面の絶縁層1a,1dに、Ag、Cuなどを主成分(Ag単体またはAg−Pd、Ag−PtなどのAg合金、Cu単体またはCu合金)とする導体材料から成る表面配線層2が形成されている。この表面配線層2は、ガラスセラミック材料が焼結する温度で焼成した際、絶縁層1a,1dがポーラスな状態で残り、そのポーラスな焼成状態の絶縁層1a,1d表面にガラス材料を塗布して、表面配線層2が被着され、さらにガラス材料が低粘度化し、かつ、セラミック材料中に拡散していく温度であって同時に導体が焼結する温度にて焼成されて被着形成される。なお、上述の絶縁層1a,1dがポーラスな状態で表面配線層2を形成する例を示したがこれに限定されることはなく、ポーラスな絶縁層1a,1dの表面にガラス材料を塗布して焼結させた後に表面配線層2を形成しても良い。このとき、最初のガラス材料の焼結は、低粘度化しセラミック材料中に拡散していく温度で焼成され、その後、表面配線層2を焼成する温度は、その導体ペーストを招請するに必要な温度であればよく、前工程のガラス焼成温度とは異なっても良い。
【0015】
この表面配線層2は、内部配線3,ビアホール導体4と同様に作製される。また、上述のようにビアホール導体4を介して内部配線3と電気的に接続し所定回路網を構成しているが、抵抗体膜5が接合される電極部、外部回路や実装部品と接続する接続端子などとなる。なお、表面配線層2は、上述の金属材料に、必要に応じてガラス成分などが含有されている。
【0016】
次にセラミック回路基板10の製造方法を説明する。
まず、絶縁層1b,1cとなるグリーンシートを作成する。例えば、グリーンシートはセラミック粉末の無機組成物,結晶化ガラス材料,アルキルメタクリレート等の有機バインダー,DBP等の可塑剤,トルエン等の有機溶剤とを混合し、ボールミルで48時間混練してスラリーを作成する。
このスラリーをドクターブレード法により、例えば厚さ100μmにテープ成型し、所定寸法に切断してグリーンシートを作成する。
【0017】
次に、所定グリーンシートにビアホール導体4となる貫通孔を形成し、この貫通孔にビアホール導体4となる導体及び内部配線3となる導体膜を導電性ペーストの印刷充填により形成する。
【0018】
次に、最外層となる絶縁層1a、1dとなるグリーンシートを作製する。この方法として、例えば、グリーンシートはセラミック粉末の無機組成物,アルキルメタクリレート等の有機バインダ,DBP等の可塑剤,トルエン等の有機溶剤を混合し、ボールミルで48時間混練してスラリーを作製する。このとき、収縮が始まらない程度、例えば5%以下の焼結助剤としてのガラス成分が添加されていても良い。このスラリーをドクターブレード法により、例えば厚さ100μmにテープ成型し、所定寸法に切断してグリーンシートを作製する。このように作製されたグリーンシートにビアホール導体4となる貫通孔を形成し、この貫通孔にビアホール導体4となる導体を形成する。
【0019】
このように内部配線3、ビアホール導体4となる導体、導体膜が形成されたグリーンシートを、基体1の積層順序に応じて、積層して、未焼成状態の基体1を形成する。このとき、表面に形成される絶縁層1aと1dは中心となる絶縁層1b,1cを積層した後、印刷して形成してもよい。
【0020】
その後、未焼成状態の基体1を一体的に前記ガラスセラミック材料の焼結できる温度である800〜1000℃で焼成する。この焼成における脱バインダ過程は概ね600℃以下の温度領域であり、絶縁層1a〜1d及びビアホール導体4となる導体や内部配線3に含まれている有機バインダを焼失することができる。なお、焼成条件は、例えば、ピーク温度950℃,30分の大気雰囲気、または、中性雰囲気で行われる。
【0021】
このように焼結された基体1の絶縁層1a,1dは焼結せずにポーラスな状態で残っており、その状態で、内部導体と接続するためのビアホール導体が形成されている部分を除き、低温で軟化するガラス材料を塗布する。この状態で再度形成したガラス材料が焼成される温度で焼成する。使用されるガラス材料としては、低温で焼成できるB2O3 −ZnO系ガラス粉末をペースト化したものを使用し、焼成温度としては800℃とする。
【0022】
なお、ポーラスな状態の絶縁層1a,1dと後述する表層配線層2とを同時に焼成する際は600〜1000℃で焼成され、ガラス材料単独の場合は、400℃以上で焼成される。
【0023】
このガラス材料を塗布した基体1の表面に、Ag、Cuなどを主成分(Ag単体またはAg−Pd、Ag−PtなどのAg合金、Cu単体またはCu合金)とする導体材料から成る表面配線層2が配置されている。この表面配線層2は焼成状態の基体1上に、表面配線層2となる導体膜が被着され、焼成されてなる。この表面配線層2は、ビアホール導体4を介して内部配線3と電気的に接続し所定回路網を構成するとともに、次に説明する厚膜抵抗膜5が接合される電極部、外部回路や実装部品と接続する接続端子となる。
【0024】
その後、焼成された基体1に、必要に応じて、表面配線層2に接続するように厚膜抵抗膜5を焼き付けたり、また、絶縁保護膜6を被覆してセラミック回路基板が形成される。
【0025】
なお、上述の製造方法は、グリーンシートを利用した多層方法であるが、絶縁層となるスラリーや内部配線3、を順次印刷した印刷多層を行ってもよい。この時、スラリーに光硬化可能なモノマーを添加しておき、グリーンシート、または、塗布印刷した誘電体塗布膜を選択的な露光・現像処理しても構わない。
【0026】
また、未焼成状態の基体1を複数の基板が抽出できるような形状としておき、焼成前に必要に応じて分割溝を形成し、焼成後個々の回路基板に分割しても構わない。
【0027】
【実施例】
ガラスセラミック材料として、結晶化ガラス材料と無機組成物から構成したグリーンシートを用意した。無機組成物としては、平均粒径2μmのアルミナフィラーを用い、結晶化ガラス材料は、Al2O3−SiO2−B2O3−CaO系で焼成すると、アノーサイトが析出するガラス組成物を平均粒径2μmに粉砕して混合したものを用いた。この混合比は、フィラー50wt%とガラス50wt%で行った。ガラスセラミック材料の焼成過程で焼結しない材料としては、無機組成物であるアルミナを用いた。
【0028】
これらのガラスセラミック材料又はアルミナ単独の材料とを、それぞれ、アルキルメタクリレート等の有機バインダーと、DBP等の可塑剤と、トルエン等の有機溶剤とを混合し、ボールミルで48時間混練してスラリーを作成した。これらの粉末と有機バインダー、可塑剤と溶剤を混練しスラリー化したものをドクターブレード法で厚み0.2mmのグリーンシートを作製した。
【0029】
ガラスセラミックで作製したグリーンシート及びアルミナで作製したグリーンシートの所望の個所に層間を接続するビアホール導体を形成する為の孔を開ける。これに、ビアホール導体となるAgペーストを充填し、更に、層内の配線をする為の内層導体を形成する為、Agペーストを印刷した。Agペーストは、Ag粉末等の金属粉末99wt%と、ホウケイ酸系低融点ガラス1wt%と、エチルセルロースの有機バインダー2wt%と、2.2.4−トリメチル−1.3−ペンタジオールモノイソブチレートの有機溶剤10wt%を混合し、3本ロールミルで混練して作成した。
【0030】
次にこのように作製された各グリーンシートの各々を加圧積層する。この時、ガラスセラミックのグリーンシートの上下に挟持するようにアルミナのグリーンシートを各1枚ずつ両端から挟持させて積層体を形成した。その後、未焼成状態の積層体を一体的に800〜1000℃の比較的低温の大気中で焼成した。
【0031】
さらに、積層体の表面の焼結しない層上に、内部導体と接続する為のビアホール導体が覗いている部分を除き、低温で軟化するガラスを印刷した。この時、使用したガラス材料は、ZnO−B2O3系のガラス材料を2μmまで粉砕した物に、エチルセルロースの有機バインダー2wt%と、2.2.4−トリメチル−1.3−ペンタジオールモノイソブチレートの有機溶剤10wt%を混合し、3本ロールミルで混練して作成した。
【0032】
これを、600℃1時間で焼成した。この後、Ag−Pt(Pt;1wt%)のペーストを表層配線となるように焼成体の表面に印刷焼成を行った。これに、厚膜抵抗体となる抵抗ペースト(RuO2系)を所定の位置に印刷焼成して抵抗体を形成し、さらに、この抵抗体の表面に保護ガラス膜を印刷形成して、焼成した。
【0033】
この時の、焼成体の収縮率は、99.9%であった。また、このようにして作成した電子部品をHHBT(85℃85%RH、DC15V印加)200時間後に内層と表層間の絶縁抵抗を調べたが、100MΩ以上有り問題ないことが確認できた。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、導体ペーストで電極パターンを形成した有機バインダ,可塑剤を含むガラスセラミック材料からなるグリーンシートを複数積層し、該積層したグリーンシートの両主面もしくは一方主面に前記ガラスセラミック材料の焼成過程において焼結しない無機組成物層を積層して積層体を形成するとともに、該積層体を前記セラミック材料が焼結できる温度で焼成した後、前記無機組成物層の表面にガラス材料を塗布し、再度、前記ガラス材料が焼結できる温度で焼成したことからに、平面の収縮率を抑制し、更に、信頼性、耐メッキ性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るセラミック回路基板の断面図である。
【符号の説明】
10・・・・・・セラミック回路基板
11・・・・・・積層体
1・・・・・・・基体
1a,1d・・・無機組成物層
1b,1c・・・ガラスセラミック層(積層体)
2・・・・・・・表面配線層
3・・・・・・・内部配線層
4・・・・・・・ビアホール導体
5・・・・・・・抵抗体
6・・・・・・・保護膜
Claims (1)
- 導体ペーストで電極パターンを形成した有機バインダ,可塑剤を含むガラスセラミック材料からなるグリーンシートを複数積層して積層体を形成し、該積層体の両主面もしくは一方主面に前記ガラスセラミック材料の焼成過程において焼結しない無機組成物層を被着させ、次に前記積層体を前記ガラスセラミック材料が焼結できる温度で焼成し、しかる後、前記無機組成物層の表面にガラス材料を塗布し、再度、該ガラス材料が焼結できる温度で焼成することを特徴とするセラミック回路基板の製造方法。
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