JP4461590B2 - 車両用交流発電機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗用車やトラック等に搭載される車両用交流発電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の車両のエンジン室内容積は、走行抵抗の低減のためのスラントノーズ化や乗車スペースの確保に伴って狭くなり、車両用交流発電機の周囲温度は高くなる傾向にある。一方、安全制御機器などの各種電気負荷の増加に伴って、車両用交流発電機の出力能力の向上が求められており、車両用交流発電機自身の発熱量も増加する傾向にある。また、車両用交流発電機の外部から、タイヤによる跳ね上げやエンジンルーム内の洗浄などによる被水があり、特に寒冷地などでの融雪塩を含んだ水は電解溶液であるため、車両用交流発電機の腐食や電気短絡が促進される。さらに、車両用交流発電機にも低コスト化の要求があることはいうまでもない。以上のことから、最近では、温度低減と耐環境性を確保しつつ、安価な車両用交流発電機が求められている。
【0003】
特許公報第2927288号には、このような数々の要求に応える車両用交流発電機が開示されている。この特許公報には、車両用交流発電機の固定子の巻線工程において、あらかじめヘアピン状に屈曲した(この屈曲した部分を「ターン部」と称する)多数の電気導体よりなるセグメントを用い、固定子のスロットへの挿入工程とセグメント同士の接合とによって巻線を形成する方法が開示されている。この方法を用いることにより、スロット内の巻線占積率を高めることにより巻線の抵抗値を下げて、温度の低減と出力の向上を達成している。また、この車両用交流発電機では、径方向断面がほぼS字形状に形成されたインシュレータを、スロット内のセグメント間、およびセグメントとスロット間に配置して電気絶縁を行うことにより、セグメント表面の絶縁皮膜を廃止し、セグメントの低コスト化を実現している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特許公報第2927288号では、スロット内を中心とした絶縁手段の改良については開示されているが、整流装置に接続される接合線や相間接合線については絶縁に関する改良がなされていない。現実には、これらの接合線は、他のコイルエンド以上に外部ストレスが加わり易いにもかかわらず、これまでは絶縁に関する改良がなされていなかった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、固定子の絶縁特性の改良によって耐環境性を向上させることができる車両用交流発電機を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明の車両用交流発電機では、固定子鉄心の一方の端面側にターン部とこのターン部に隣接する第1の曲げ部とが配置されるとともに、他方の端面側に第2の曲げ部とこの第2の曲げ部の端部に接合部とが配置された通常の導体セグメントと、異型の導体セグメントとを含む複数の導体セグメントを相互に接続することによって固定子巻線が形成されており、異型の導体セグメントは、固定子のスロット内の電気導体と曲げ部としての斜行部とを有し、この固定子巻線の引出し線を異型の導体セグメントを用いて第1の曲げ部あるいは第2の曲げ部に沿って形成するとともに、固定子巻線のほとんどの部分を通常の導体セグメントで形成し、少なくとも引出し線の一部であってこれらの曲げ部に対向する異型の導体セグメントの全体を覆う絶縁皮膜を、通常の導体セグメントの全体を覆う絶縁皮膜よりも耐環境性が良好になるように設定している。
【0007】
同じ形状を有する導体セグメントを規則正しく並べて固定子巻線を形成する場合であっても、出力を取り出す引出し線の部分のみは他の部分と形状を異ならせる必要があるため、この部分において隣接する導体セグメントと接触する可能性が高くなる。本発明では、この接触する可能性が高くなる部分について、耐環境性が良好となる絶縁皮膜を用いることにより、固定子の絶縁特性の改良を行うことが可能になり、固定子あるいは車両用交流発電機全体の耐環境性の向上を図ることができる。
【0008】
また、上述した固定子巻線を、複数の相巻線を結線した多相巻線とし、これら複数の相巻線のそれぞれをさらに複数の巻線を直列接続することにより形成するとともに、これら複数の巻線を接続する相間接合線を異型の導体セグメントを用いて上述した第1の曲げ部あるいは第2の曲げ部に沿って形成し、少なくとも相間接合線の一部であってこれらの曲げ部に対向する異型の導体セグメントの全体を覆う絶縁皮膜を、通常の導体セグメントの全体を覆う絶縁皮膜よりも耐環境性が良好になるように設定することが望ましい。各相巻線を複数の巻線を接続して形成する場合には、この複数の巻線同士を接続する相間接合線についても、上述した引出し線と同様に、隣接する他の導体セグメントと形状を異ならせる必要があり、この部分においても隣接する導体セグメントと接触する可能性が高くなる。したがって、相間接合線についても、耐環境性が良好となる絶縁皮膜を用いることにより、固定子の絶縁特性の改良を行うことが可能になり、固定子あるいは車両用交流発電機全体の耐環境性の向上を図ることができる。
【0009】
また、上述した引出し線および相間接合線の少なくとも一方は、第1の曲げ部あるいは第2の曲げ部の端部近傍であって反固定子鉄心側において、円周方向に沿って這い回されていることが望ましい。この場合には、引出し線や相間接合線の長さがさらに長くなって形状が複雑になることから、耐摩耗性や耐曲げ性等を含む耐環境性を向上させる必要があるため、この部分について耐環境性の良好な絶縁皮膜を用いることにより、絶縁性向上の効果がさらに顕著になる。
【0010】
また、上述した引出し線および相間接合線の少なくとも一方は、第1の曲げ部とほぼ同じ形状を有する第3の曲げ部を介して引き出されていることが望ましい。接合部が配置された側の第2の曲げ部は、固定子鉄心に導体セグメントを組み付けた後に成形されるため、引出し線等を形成する場合であっても同じ形成方法を用いて同じ形状に形成しやすいが、第1の曲げ部とターン部については引出し線や相間接合線を同じ形状に形成することが難しく、隣接する導体セグメントと接触する可能性が高くなる。したがって、この部分について、耐環境性の良好な絶縁皮膜を用いることにより、絶縁性向上の効果をさらに上げることができる。
【0011】
また、上述した回転子に備わった冷却ファンが発生する冷却風の通路に引出し線を配置することが望ましい。これにより、引出し線を効率よく冷却することができるが、同時にこの冷却風があたる部分について外部からの被水の可能性が高くなる。したがって、この部分について耐環境性が良好な絶縁皮膜を用いることにより、被水によって生じる絶縁性の低下を防止することができる。
【0012】
また、上述した相間接合線は、前記第1の曲げ部に沿った形状を有する第4の曲げ部を有する一つの連続した電気導体によって形成することが望ましい。これにより、相間接合線が含まれる電気導体の形状を、引出し線や相間接合線が引き出されない導体セグメントとほぼ同じにすることができるため、隣接部分の接触の可能性を低減することができ、さらに耐環境性の向上が可能になる。
異型の導体セグメントの絶縁皮膜は、通常の導体セグメントの絶縁皮膜よりも耐環境性が良好な材質によって形成されていることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用交流発電機について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、車両用交流発電機の全体構成を示す図である。図1に示す車両用交流発電機1は、固定子2、回転子3、フレーム4、整流装置5等を含んで構成されている。
【0015】
固定子2は、固定子鉄心22と、固定子鉄心22に形成された複数のスロット(例えば本実施形態では96個)内に備わった電気導体としての複数の導体セグメントを相互に接合することにより形成された固定子巻線23と、固定子鉄心22と固定子巻線23との間を電気絶縁するインシュレータ24とを含んで構成されている。固定子鉄心22は、薄い鋼板を重ね合わせて構成されている。
【0016】
固定子巻線23は、一つの多相巻線を一組として、複数組の多相巻線が設けられている。例えば、本実施形態の固定子巻線23は、2組の多相巻線としての三相巻線23A、23Bからなっており、これら2組の三相巻線23A、23Bが互いに電気角で30°異なる位置に巻装されている。一方の三相巻線23Aは、Y結線されたX相巻線、Y相巻線、Z相巻線を含んでいる。また、他方の三相巻線23Bは、Y結線されたU相巻線、V相巻線、W相巻線を含んでいる。
【0017】
回転子3は、シャフト6と一体になって回転するものであり、1組のランデル型ポールコア7、界磁コイル8、スリップリング9、10、冷却用の斜流ファン11および遠心ファン12等を含んで構成されている。シャフト6は、プーリ20に連結され、車両に搭載された走行用のエンジン(図示せず)によって回転駆動される。
【0018】
ランデル型のポールコア7は、一組のコアを組み合わせることにより構成されている。各コアは、シャフト6に組み付けられた円筒状のボス部71と、ボス部71の一方の軸方向端面から径方向に延びるディスク部72と、ディスク部72の外周部から軸方向に沿ってボス部71側に延びる複数の爪状磁極部73とによって構成されている。各コアは、それぞれの爪状磁極部73を互い違いに向かい合わせるようにして組み付けられる。界磁コイル8は、絶縁紙81を介してポールコア7の爪状磁極部73の内径側に適当な圧縮力をもって当接されている。絶縁紙81は、樹脂を含浸したシートからなり、界磁コイル8を包囲しており、加熱処理によって界磁コイル8を固着するとともに、ポールコア7と界磁コイル8との間の電気絶縁を担っている。
【0019】
プーリ20側に配置されたポールコア7のディスク部72の端面には、冷却用の斜流ファン11が溶接等により固定されている。また、反プーリ20側(スリップリング側)に配置されたポールコア7のディスク部72の端面には、遠心ファン12が溶接等により固定されている。斜流ファン11の投影面積(回転方向に投影したブレードの面積)は、遠心ファン12のブレードの投影面積よりも小さく設定されている。
【0020】
フレーム4は、固定子2および回転子3を収容しており、回転子3がシャフト6を中心に回転可能な状態で支持されているとともに、回転子3のポールコア7の外周側に所定の隙間を介して配置された固定子2が固定されている。フレーム4は、フロントフレーム4Aとリヤフレーム4Bとからなり、これらが複数本の締結ボルト(図示せず)によって締結されて上述した固定子2等の支持が行われる。また、フレーム4は、固定子鉄心22の軸方向端面から突出した固定子巻線23に対向した部分に冷却風の吐出窓41が、軸方向端面に吸入窓42がそれぞれ設けられている。
【0021】
リアフレーム4Bの外側には、整流装置5や電圧調整装置51、ブラシ装置52が取り付けられ、これらを覆うようにリヤカバー53が取り付けられる。
【0022】
整流装置5は、固定子巻線23から延びる引出し線が接続されており、印加される三相交流電圧を三相全波整流して直流電圧に変換する。上述したように固定子巻線23には2組の三相巻線23A、23Bが含まれているため、整流装置5には2組の三相巻線23A、23Bのそれぞれに対応する2つの三相全波整流回路5A、5Bが含まれている。
【0023】
上述した構造を有する車両用交流発電機1は、ベルト等を介してプーリ20にエンジン(図示せず)からの回転力が伝えられると回転子3が所定方向に回転する。この状態で回転子3の界磁コイル8に外部から励磁電圧を印加することにより、ポールコア7のそれぞれの爪状磁極部73が励磁され、固定子巻線23に三相交流電圧を発生させることができ、整流装置5の出力端子からは所定の直流電力が取り出される。
【0024】
次に、固定子2の詳細について説明する。図2は、固定子巻線23を構成する導体セグメントの斜視図である。また、図3は図2に示した導体セグメントの組み付け状態を示す斜視図である。図4は、導体セグメントの形成過程を示す図である。
【0025】
固定子鉄心22のスロット25に装備された固定子巻線23は複数の電気導体により構成され、各スロット25には偶数本(本実施形態では4本)の電気導体が収容されている。また、一のスロット25内の4本の電気導体は、図3に示すように固定子鉄心22の径方向について内側から内端層、内中層、外中層、外端層の順で一列に配列されている。
【0026】
一のスロット25内の内端層の電気導体231aは、固定子鉄心22の時計回り方向に向けて磁極ピッチ離れた他のスロット25内の外端層の電気導体231bと対をなしている。同様に、一のスロット25内の内中層の電気導体232aは固定子鉄心22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の外中層の電気導体232bと対をなしている。そして、これらの対をなす電気導体は、固定子鉄心22の軸方向の一方の端面側において連続線を用いることにより、ターン部231c、232cを経由することで接続される。
【0027】
したがって、固定子鉄心22の一方の端面側においては、外中層の電気導体232bと内中層の電気導体232aとをターン部232cを経由して接続する連続線を、外端層の電気導体231bと内端層の電気導体231aとをターン部231cを経由して接続する連続線が内包することとなる。このように、固定子鉄心22の一方の端面側においては、対をなす電気導体の接続部としてのターン部232cが、同じスロット25内に収容された他の対をなす電気導体の接続部としてのターン部231cにより囲まれる。外中層の電気導体232bと内中層の電気導体232aとの接続により中層コイルエンドが形成され、外端層の電気導体231bと内端層の電気導体231aとの接続により端層コイルエンドが形成される。
【0028】
一方、一のスロット25内の内中層の電気導体232aは、固定子鉄心22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の内端層の電気導体231a’とも対をなしている。同様に、一のスロット25内の外端層の電気導体231b’は、固定子鉄心22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の外中層の電気導体232bとも対をなしている。そして、これらの電気導体は固定子鉄心22の軸方向の他方の端面側において接合により接続される。
【0029】
したがって、固定子鉄心22の他方の端面側においては、外端層の電気導体231b’と外中層の電気導体232bとを接続する外側接合部233bと、内端層の電気導体231a’と内中層の電気導体232aとを接続する内側接合部233aとが、径方向および周方向に互いにずれた状態で配置されている。外端層の電気導体231b’と外中層の電気導体232bとの接続、および内端層の電気導体231a’と内中層の電気導体232aとの接続により、異なる同心円上に配置された2つの隣接層コイルエンドが形成される。
【0030】
さらに、図2に示すように、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとが、一連の電気導体をほぼU字状に成形してなる大セグメント231により提供される。また、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとが一連の電気導体をほぼU字状に成形してなる小セグメント232により提供される。基本となるU字状の導体セグメント230は、大セグメント231と小セグメント232によって形成される。各セグメント231、232は、スロット25内に収容されて軸方向に沿って延びる部分を備えるとともに、軸方向に対して所定角度傾斜して延びる曲げ部としての斜行部231f、231g、232f、232gを備える。これら斜行部によって、固定子鉄心22から軸方向の両端面に突出するコイルエンドが形成されており、回転子3の軸方向の両端面に取り付けられた斜流ファン11および遠心ファン12を回転させたときに生じる冷却風の通風路は、主にこれら斜行部の間に形成されている。また、この冷却風の通風路には、固定子巻線23の引出し線(後述する)も配置されている。
【0031】
以上の構成を、全てのスロット25の導体セグメント230について繰り返す。そして、反ターン部側のコイルエンド群において、外端層の端部231e’と外中層の端部232e、並びに内中層の端部232dと内端層の端部231d’とがそれぞれ溶接、超音波溶着、アーク溶接、ろう付け等の手段によって接合されて外側接合部233bおよび内側接合部233aが形成され、電気的に接続されている。
【0032】
次に、導体セグメント230の形成過程の詳細について説明する。上述したように導体セグメント230には、大セグメント231と小セグメント232が含まれており、以下の説明では大セグメント231に着目して説明を行うものとする。
【0033】
大セグメント231は、図4に示すように、矩形状の断面を有する銅線からなるU字状の導体231’をA方向に変形させて形成したターン部231cおよび斜行部231fに連なる2つの直線部231a、231bを、固定子鉄心22のスロット25にインシュレータ24を介在させた状態で挿入し、反ターン部側をB方向に折り曲げて斜行部231gを形成した後、その先端部分である端部231d、231eを別に挿入された小セグメント232の端部に接合することにより構成されている。
【0034】
実際には、図3に示すように、反ターン部側の斜行部が形成される前の大セグメント231と小セグメント232を、固定子鉄心22の軸方向端面の同一側にターン部231c、232cが揃うように重ね、大セグメント231はスロット25の奥側に、小セグメント232はスロット25の開口側に位置するように挿入する。これらの大セグメント231と小セグメント232は、平角被覆導線を折り曲げ、プレス等でほぼU字型形状に成形して製作され、ほぼ平行なスロット25の側面に、大セグメント231と小セグメント232のそれぞれの両側面がインシュレータ24を介して当接するように圧入される。その後、図2に示すように、ターン部231c、232cと斜行部231f、232fによって形成される第1のコイルエンド群23aとは反対側に位置する端部231d、232dを互いに隣接するもの同士が反対側に位置するように周方向に折り曲げた後、異層の大セグメント231の端部231dと小セグメント232の端部232d同士が電気導通するように超音波溶着、アーク溶接、ろう付け等で接合され、その接合された端部231d、232dと斜行部231g、232gによって第2のコイルエンド群23bが形成される。
【0035】
図5は、本実施形態の車両用交流発電機1の結線図である。また、図6は一方の三相巻線23Aの詳細な等価回路を示す図である。なお、他方の三相巻線23Bも同様の構成を有しており、その詳細説明は省略する。
【0036】
上述したように、固定子巻線23には2組の三相巻線23A、23Bが含まれており、それぞれが整流装置5に含まれる整流回路5A、5Bに別々に接続されている。また、一方の三相巻線23Aは、X相巻線、Y相巻線、Z相巻線のそれぞれの一方端同士が共通に結線されたY結線を有するが、各相巻線は電気角が180°異なるように巻装された2つの巻線を相間接合線を介して逆相の状態で直列接続することにより構成されている。
【0037】
X相巻線に着目すると、互いに電気角が180°異なる巻線X1と巻線X2とが、異型の導体セグメント(後述する)によって構成される相間接合線Xaを介して接続されている。そして、一方の巻線X1の一方端側であって相間接合線Xaと反対側の端部Xからは整流装置5に向かって引出し線Xbが延びており、他方の巻線X2の他方端側であって相間接合線Xaと反対側の端部X’からは各相巻線が共通に接続される中性点に向かって延びる引出し線Xcが延びている。
【0038】
同様に、Y相巻線に着目すると、互いに電気角が180°異なるY1相巻線とY2相巻線とが、異型の導体セグメントによって構成される相間接合線Yaを介して接続されている。そして、一方の巻線Y1の他方端側であって相間接合線Yaと反対側の端部Yからは整流装置5に向かって引出し線Ybが延びており、他方の巻線Y2の他方端側であって相間接合線Yaと反対側の端部Y’からは各相巻線が共通に接続される中性点に向かって延びる引出し線Ycが延びている。
【0039】
Z相巻線に着目すると、互いに電気角が180°異なるコイルZ1とコイルZ2とが、異型の導体セグメントによって構成される相間接合線Zaを介して接続されている。そして、一方の巻線Z1の他方端側であって相間接合線Zaと反対側の端部Zからは整流装置5に向かって引出し線Zbが延びており、他方の巻線Z2の他方端側であって相間接合線Zaと反対側の端部Z’からは各相巻線が共通に接続される中性点に向かって延びる引出し線Zcが延びている。
【0040】
本実施形態では、上述した各相巻線に含まれる相間接合線および引出し線に対応して形成される絶縁皮膜の耐環境性がそれ以外の部分(例えば図2に示す導体セグメントの絶縁皮膜)よりも良好になるように設定されており、部分的に絶縁特性の改良が行われている。これらの詳細については後述する。
【0041】
図7は、固定子巻線23の巻線仕様図であり、引出し線および相間接合線に関連する部分を抜き出して示したものである。図7において、「68」等の数字はスロット番号を示している。「N1」、「N2」はY結線された各相巻線が共通に接続される中性点を示している。丸で囲まれた「X」はX相巻線の整流装置5側の端部を、丸で囲まれた「X’」はX相巻線の中性点側の端部をそれぞれ示している。また、X相巻線以外のY相巻線、Z相巻線、U相巻線、V相巻線、W相巻線についても同様である。また、各スロットにおいて、一点鎖線は内端層の電気導体に、点線は内中層の電気導体に、実線は外中層の電気導体に、二点差線は外端層の電気導体にそれぞれ対応している。
【0042】
図7に示すように、本実施形態の固定子巻線23においては、例えばX相巻線を構成する一方の巻線X1は、第40スロットと第34スロットが両端となるように、5スロットおきにほぼ1周巻装されている。X相巻線を構成する他方の巻線X2も、第40スロットと第36スロットが両端となるように、5スロットおきにほぼ1周巻装されている。第40スロットから延びる巻線X1の一方端側は引出し線Xbとして整流装置5に向けて引き出されており、第34スロットから延びる巻線X2の一方端側は引出し線Xcとして中性点N1に向けて引き出されている。また、第34スロットから延びる巻線X1の他方端側と第40スロットから延びる巻線X2の他方端側は、相互に相間接合線Xaを介して接続されている。
【0043】
図8は、固定子2の平面図であり、リヤ側から見た2組の三相巻線23A、23Bから引き出される6本の引出し線の配置の具体例が示されている。また、図9は図8に示した固定子2をA方向から見た側面図である。図10は、図8に示した固定子2をB方向から斜め下向きに見た斜視図である。
【0044】
Z相巻線の一方端から延びた出力取り出し用の引出し線ZbとY相巻線の一方端から延びた出力取り出し用の引出し線Ybは、比較的近いスロット位置から引き出されて周方向に沿って引き延ばされてさらに接近させた後、ほぼ90°折り曲げられてほぼ平行に整流装置5側に引き出される。また、X相巻線の一方端から延びた出力取り出し用の引出し線XbとU相巻線の一方端から延びた出力取り出し用の引出し線Ubは、上述した2つの引出し線Zb、Ybから周方向にほぼ90°隔たった位置であって、比較的近いスロット位置から引き出される。さらに、W相巻線の一方端から延びた出力取り出し用の引出し線WbとV相巻線の一方端から延びた出力取り出し用の引出し線Vbは、上述した2つの引出し線Xb、Ubから周方向にほぼ90°隔たった位置であって、比較的近いスロット位置から引き出されて周方向に沿って引き延ばされてさらに接近させた後、ほぼ90°折り曲げられてほぼ平行に整流装置5側に引き出される。
【0045】
また、Z相巻線の他方端から引き出された引出し線Zc、Y相巻線の他方端から引き出された引出し線Yc、X相巻線の他方端から引き出された引出し線Xcは、ともに周方向に沿って這い回された後に所定位置で接合されて一方の中性点N1が形成される。同様に、U相巻線の他方端から引き出された引出し線Uc、W相巻線の他方端から引き出された引出し線Wc、V相巻線の他方端から引き出された引出し線Vcは、ともに周方向に沿って這い回された後に所定位置で接合されて他方の中性点N2が形成される。
【0046】
図11は、各相巻線の2つの引出し線と相間接合線を実現するために用いられる異型の導体セグメントを示す斜視図である。なお、以下ではX相巻線について説明を行うが、X相巻線以外の各相巻線に含まれる各引出し線や相間接合線についても同様であり、図11に示した異型の導体セグメントを用いて実現することができる。
【0047】
図3に示したように、引出し線Xbや相間接合線Xa等が引き出されない通常の導体セグメントには、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとがターン部231cを介して接続された大セグメント231と、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとがターン部232cを介して接続された小セグメント232とが含まれており、これらの端部同士を接合することによりX相、Y相、Z相、U相、V相、W相の各相巻線が形成されている。
【0048】
ところが、例えばX相巻線に着目すると、図11に示すように、X相巻線に含まれる相間接合線Xaは、外端層の電気導体と内中層の電気導体とをターン部236cを介して接続するように形成された異型の導体セグメント236を用いて実現されている。この導体セグメント236は、ターン部236cを挟んで配置された曲げ部としての2つの斜行部236fを有しており、これらの斜行部236f、ターン部236c、斜行部236fによって形成された相間接合線Xaによって、X相巻線に含まれる巻線X1と巻線X2とが第34スロットと第40スロットの間で相互に接続される。
【0049】
また、X相巻線から整流装置5側に延びる引出し線Xbは、外中層の電気導体を延長したほぼ直線形状を有する異型の導体セグメント234を用いて実現されている。この導体セグメント234は、曲げ部としての斜行部234fを有しており、その端部を引き出して引出し線Xbとして用いることにより、第40スロットから引き出されたX相巻線の一方端が整流装置5に接続される。
【0050】
同様に、X相巻線から一方の中性点N1側に延びる引出し線Xcは、内端層の電気導体を延長したほぼ直線形状を有する異型の導体セグメント235を用いて実現されている。この導体セグメント235は、曲げ部としての斜行部235fを有しており、その端部を引き出して引出し線Xcとして用いることにより、第34スロットから引き出されたX相巻線の他方端がY相巻線およびZ相巻線の各一方端に共通に接続される。
【0051】
各相巻線に含まれる相間接合線Xa、Ya、Za、Ua、Va、Waを実現する導体セグメント236と、各相巻線と整流装置5とを接続する引出し線Xb、Yb、Zb、Ub、Vb、Wbを実現する導体セグメント234と、中性点N1あるいはN2において相互に接続される引出し線Xc、Yc、Zc、Uc、Vc、Wcを実現する導体セグメント235は、図2および図3に示した他の導体セグメント230(大セグメント231、小セグメント232)と異なる形状を有しており、しかも形成方法も異なることから、斜行部やターン部の一部が、隣接する導体セグメントと接触する可能性が高くなる。したがって、本実施形態では、図11に示した3種類の導体セグメント234、235、236の表面であってこの接触のおそれがある部分の被膜の材質は、導体セグメント230で使用されている被膜の材質よりも、耐環境性が良好なものが用いられており、これにより、導体セグメント234、235、236の一部が、隣接する他の導体セグメント230に接触しても絶縁不良が生じないように対策が施されている。
【0052】
具体的には、上述した接触が生じるおそれがある部分としては、図11に示した導体セグメント234の斜行部234fとこれより先端部分、導体セグメント235の斜行部235fとこれより先端部分、導体セグメント236の斜行部236fとターン部236cがあげられる。なお、耐環境性の良好な被膜材料は、図11に示した導体セグメント234、235、236の全体を耐環境性の良好な被膜材料で覆うようにしている
【0053】
また、「耐環境性の良好」とは、絶縁皮膜の耐摩耗性、耐熱性、耐曲げ性の全部あるいは一部が良好なことをいう。
【0054】
図12、図13は、耐環境性が良好な絶縁皮膜が形成された導体セグメントの具体例を示す図であり、図8に示した異型の導体セグメント234、235、236の斜行部等の横断面が示されている。また、比較のために、図14には、図3等に示した通常の導体セグメント230の横断面が示されている。
【0055】
例えば、図14に示すように、通常の導体セグメント230の表面を覆う絶縁皮膜として所定の膜厚(例えば20μm)のポリエステルイミド樹脂237が用いられている場合に、図12に示すように、さらにその上から所定の膜厚(例えば20μm)のポリアミドイミド樹脂238で覆うことにより、耐環境性の向上を図ることができる。一般に、ポリエステルイミド樹脂237よりもポリアミドイミド樹脂238の方が耐熱性および可撓性(耐曲げ性)に優れており、しかも2種類の樹脂全体の膜厚が増すことから耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0056】
また、図13に示すように、2度塗りして膜厚を厚くした(例えば40μm)ポリエステルイミド樹脂239を用いるようにしてもよい。一般に、各種の皮膜材料には、被水時に電食等の原因となるピンホールが存在するが、皮膜材料を重ね塗りすることにより、このピンポールを低減することができ、膜厚増大による耐摩耗性の向上とともに吸湿後の絶縁性の向上を図ることができる。
【0057】
このように、本実施形態の車両用交流発電機1では、図2に示した大セグメント231と小セグメント232からなる通常の導体セグメント230を用いて固定子巻線23を形成するとともに、相間接合線あるいは引出し線に対応する部分についてのみ図11に示した異型の導体セグメント234、235、236を使用する場合に、これら異型の導体セグメント234、235、236の一部であって隣接する通常の導体セグメント230に接触するおそれがある部分について、耐環境性が良好な絶縁皮膜を使用することにより、この部分において発生する絶縁不良を低減することができる。また、固定子巻線23の全体について耐環境性が良好な高価な絶縁皮膜を用いることを避けることができ、ほとんどの部分について安価な絶縁皮膜を用いることができることから、コストダウンを図ることが可能になる。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、図5に示したように2組の三相巻線23A、23Bが含まれる固定子巻線23を用いるようにしたが、1つの三相巻線のみを含む固定子巻線を用いるようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、図11に示した連続線としての導体セグメント236の一部を用いて相間接合線を形成したが、導体セグメント234、235と同様にスロット内の電気導体を一旦引き出した後に、図10に示した中性点N1の形成方法と同じ要領で、これら引き出した2本の相間接合線を円周方向に一旦這い回して接合するようにしてもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、固定子巻線23に含まれる全ての相間接合線と引出し線について、耐環境性が良好な被膜を用いるようにしたが、絶縁不良の発生に偏りがある場合には、絶縁不良が発生しやすい相間接合線あるいは引出し線について耐環境性の良好な被膜を用いるようにしてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態では、同種あるいは2種類の絶縁皮膜を重ねることにより、耐環境性が良好な絶縁皮膜を実現したが、引出し線や相間接合線についてのみ耐摩耗性、耐熱性、耐曲げ性が良好な1種類の絶縁皮膜に置き換えて、この部分の耐環境性の向上を図るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の車両用交流発電機の全体構成を示す図である。
【図2】固定子巻線を構成する導体セグメントの斜視図である。
【図3】図2に示した導体セグメントの組み付け状態を示す斜視図である。
【図4】導体セグメントの形成過程を示す図である。
【図5】図1に示した車両用交流発電機の結線図である。
【図6】一方の三相巻線の詳細な等価回路を示す図である。
【図7】固定子巻線の巻線仕様図である。
【図8】固定子の平面図である。
【図9】図8に示した固定子をA方向から見た側面図である。
【図10】図8に示した固定子をB方向から斜め下向きに見た斜視図である。
【図11】各相巻線の引出し線と相間接合線を実現するために用いられる異型の導体セグメントの形状を示す斜視図である。
【図12】耐環境性が良好な絶縁皮膜が形成された導体セグメントの具体例を示す図である。
【図13】耐環境性が良好な絶縁皮膜が形成された導体セグメントの他の具体例を示す図である。
【図14】通常の導体セグメントの断面図である。
【符号の説明】
1 車両用交流発電機
2 固定子
3 回転子
4 フレーム
5 整流装置
22 固定子鉄心
23 固定子巻線
230、234、235、236 導体セグメント
237、239 ポリエステルイミド樹脂
238 ポリアミドイミド樹脂

Claims (7)

  1. 回転駆動される回転子と、前記回転子と対向配置される固定子鉄心とこの固定子鉄心に装備された固定子巻線とを有する固定子と、前記回転子および前記固定子を支持するフレームと、前記固定子巻線に電気的に接続される整流装置とを備える車両用交流発電機において、
    前記固定子巻線は、前記固定子鉄心の一方の端面側にターン部とこのターン部に隣接する第1の曲げ部とが配置されるとともに、他方の端面側に第2の曲げ部とこの第2の曲げ部の端部に接合部とが配置された通常の導体セグメントと、異型の導体セグメントとを含む複数の導体セグメントを相互に接続することによって形成されており、
    前記異型の導体セグメントは、前記固定子のスロット内の電気導体と曲げ部としての斜行部とを有し、
    前記異型の導体セグメントを用いて前記固定子巻線の引出し線を前記第1の曲げ部あるいは前記第2の曲げ部に沿って形成するとともに、
    前記固定子巻線のほとんどの部分を前記通常の導体セグメントで形成し、
    少なくとも前記引出し線の一部であって前記第1の曲げ部あるいは前記第2の曲げ部に対向する前記異型の導体セグメントの全体を覆う絶縁皮膜を、前記通常の導体セグメントの全体を覆う絶縁皮膜よりも耐環境性が良好になるように設定したことを特徴とする車両用交流発電機。
  2. 請求項1において、
    前記固定子巻線は、複数の相巻線を結線した多相巻線であり、
    前記複数の相巻線のそれぞれをさらに複数の巻線を直列接続することにより形成し、
    前記異型の導体セグメントを用いて前記複数の巻線を接続する相間接合線を前記第1の曲げ部あるいは前記第2の曲げ部に沿って形成するとともに、
    少なくとも前記相間接合線の一部であって前記第1の曲げ部あるいは前記第2の曲げ部に対向する前記異型の導体セグメントの全体を覆う絶縁皮膜を、前記通常の導体セグメントの全体を覆う前記絶縁皮膜よりも耐環境性が良好になるように設定したことを特徴とする車両用交流発電機。
  3. 請求項2において、
    前記引出し線および前記相間接合線の少なくとも一方は、前記第1の曲げ部あるいは前記第2の曲げ部の端部近傍であって反固定子鉄心側において、円周方向に沿って這い回されていることを特徴とする車両用交流発電機。
  4. 請求項2または3において、
    前記引出し線および前記相間接合線の少なくとも一方は、前記第1の曲げ部とほぼ同じ形状を有する第3の曲げ部を介して引き出されていることを特徴とする車両用交流発電機。
  5. 請求項2〜4のいずれかにおいて、
    前記回転子には冷却ファンが備わっており、前記冷却ファンが発生する冷却風の通路に前記引出し線を配置することを特徴とする車両用交流発電機。
  6. 請求項2〜5のいずれかにおいて、
    前記相間接合線は、前記第1の曲げ部に沿った形状を有する第4の曲げ部を有する一つの連続した電気導体によって形成されることを特徴とする車両用交流発電機。
  7. 請求項1〜6のいずれかにおいて、
    前記異型の導体セグメントの前記絶縁皮膜は、前記通常の導体セグメントの前記絶縁皮膜よりも耐環境性が良好な材質によって形成されていることを特徴とする車両用交流発電機。
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