しかし、従来の四端子構造の抵抗器においては、以下のような問題がある。つまり、抵抗体や上面電極を厚膜により形成する場合には、厚膜ペーストを印刷後焼成することにより形成するが、焼成時に抵抗体材料と上面電極材料とが相互に拡散するという問題がある。
例えば、上記特許文献1のように、抵抗体を形成した後に上面電極を形成する場合には、上面電極の形成時に抵抗体材料と上面電極材料とが相互に拡散する。例えば、抵抗体と上面電極とについて同系の材料を使用する場合、例えば、抵抗体に銀パラジウム系の厚膜を使用し、上面電極に銀系厚膜を使用する場合には、抵抗体のパラジウムと上面電極の銀とが相互に拡散し、抵抗体の上面電極との接続部分及びその近傍の領域において、銀の比率が、抵抗体の他の部分よりも高くなる。また、抵抗体に銅ニッケル系の厚膜を使用し、上面電極に銅系厚膜を使用する場合には、抵抗体のニッケルと上面電極の銅とが相互に拡散し、抵抗体の上面電極との接続部分及びその近傍の領域において、銅の比率が、抵抗体の他の部分よりも高くなる。このような抵抗体の主材料の比率の変動により、抵抗体の特性が変動する。一般的に、抵抗体における銀や銅の比率が高くなることにより、抵抗体の抵抗値が下がり、TCRが上昇することになる。
さらに、主材料の比率の変動だけでなく、主材料以外の材料の変動も問題となる。つまり、厚膜材料には、材料の接着の目的でガラスフリットや、特性の調整材として少量の添加剤が入っているが、このガラスフリットや添加剤により抵抗体の特性が変動する場合がある。つまり、ガラスフリットや添加剤の種類や量は、厚膜材料の種類によって異なる場合があり、特に、電極材料と抵抗体材料とでは異なる場合が多い。そして、焼成時(特許文献1の場合には、上面電極の焼成時)に、ガラスフリットと添加剤とが電極と抵抗体とで相互に拡散すると、例えば、抵抗体中に上面電極のガラスフリットが拡散し、抵抗体の添加剤が上面電極に拡散する等により、抵抗体の特性が変動する。
以上のようにして、抵抗体の上面電極との接続部分及びその近傍の領域においては、抵抗体の特性が大きく変動することがある。特に、四端子構造の抵抗器のように、抵抗体の抵抗値が低い場合には、抵抗体の金属成分が多く、ほとんどが金属成分である電極との相互拡散が強く、抵抗体の特性の変動が大きい。
そして、四端子構造の抵抗器の使用に当たっては、4つの端子における一対の端子に電流が流れている場合において、他の一対の端子間の電圧を計測することにより、該電流の電流値を計測するわけであるが、上記のような従来の構成の四端子構造の抵抗器の場合には、抵抗体材料や上面電極材料が拡散することにより抵抗体の特性が変動した領域も抵抗体として機能することから、所望の特性の抵抗器を得ることができない。例えば、図10に示す四端子構造の抵抗器の例では、電極120と電極121に接続された抵抗体130において抵抗体材料や上面電極材料が拡散することにより抵抗体の特性が変動した領域Kも抵抗体として機能することから、所望の特性の抵抗器を得ることができない。なお、図10において、110は基板である。
そこで、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散がある場合でも、所望の抵抗器の特性を得ることができる四端子構造の抵抗器を提供することを目的とするものである。
本発明は上記問題点を解決するために創作されたものであって、第1には、四端子構造の抵抗器であって、抵抗体で、抵抗体本体と、抵抗体本体の一方の端部から突出して形成された一対の突出部で、第1突出部と第2突出部とからなる一対の突出部と、抵抗体本体の他方の端部から突出して形成された一対の突出部で、第3突出部と第4突出部とからなる一対の突出部とを有し、抵抗体ペーストを印刷して焼成することにより形成してなる抵抗体と、第1突出部に接続された第1電極部と、第2突出部に接続された第2電極部と、第3突出部に接続された第3電極部と、第4突出部に接続された第4電極部と、を有し、第1電極部と第2電極部と第3電極部と第4電極部は、互いに独立して形成され、抵抗体における抵抗体本体には接続されていないことを特徴とする。
この第1の構成の四端子構造の抵抗器においては、抵抗体が、抵抗体本体と4つの突出部とを有する構成となっていて、各突出部が電極部と接続されているので、抵抗体において抵抗体材料と電極材料との相互の拡散の影響がある領域を突出部内に存在させておくことができ、よって、抵抗体材料と電極部材料との相互の拡散の影響が抵抗体本体に及ばないようにできるので、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散がある場合でも、所望の抵抗器の特性を得ることができる。
なお、上記第1の構成を以下のようにしてもよい。つまり、「略方形状の抵抗体本体と、抵抗体本体の一方の端部から突出して形成された一対の突出部で、略方形状を呈し第1電極部の上面に接続された第1突出部と、略方形状を呈し第2電極部の上面に接続された第2突出部とからなる一対の突出部と、抵抗体本体の他方の端部から突出して形成された一対の突出部で、略方形状を呈し第3電極部の上面に接続された第3突出部と、略方形状を呈し第4電極部の上面に接続された第4突出部とからなる一対の突出部と、を有し、方形状の相対する辺から方形状の切欠部を形成した形状からなる抵抗体で、抵抗体ペーストを印刷して焼成することにより形成してなる抵抗体と、を有し、第1電極部と第2電極部と第3電極部と第4電極部は、互いに独立して形成され、抵抗体における抵抗体本体には接続されていないことを特徴とする四端子構造の抵抗器。」としてもよい。
また、第2には、上記第1の構成において、上記抵抗体における抵抗体本体と第1突出部と第2突出部と第3突出部と第4突出部は、ともに方形状を呈し、抵抗体は全体として、方形状の相対する辺から方形状の切欠部を形成した形状を呈し、一方の切欠部を介して第1突出部と第2突出部が形成され、他方の切欠部を介して第3突出部と第4突出部が形成されていることを特徴とする。
また、第3には、上記第1又は第2の構成において、上記抵抗体における抵抗体本体と上記第1電極部間の距離が、抵抗体において抵抗体材料と第1電極部材料との相互の拡散の影響がある領域が抵抗体本体に及ばないような長さに形成され、また、上記抵抗体における抵抗体本体と上記第2電極部間の距離が、抵抗体において抵抗体材料と第2電極部材料との相互の拡散の影響がある領域が抵抗体本体に及ばないような長さに形成され、また、上記抵抗体における抵抗体本体と上記第3電極部間の距離が、抵抗体において抵抗体材料と第3電極部材料との相互の拡散の影響がある領域が抵抗体本体に及ばないような長さに形成され、また、上記抵抗体における抵抗体本体と上記第4電極部間の距離が、抵抗体において抵抗体材料と第4電極部材料との相互の拡散の影響がある領域が抵抗体本体に及ばないような長さに形成されていることを特徴とする。これにより、抵抗体本体には、拡散の影響が及ばないので、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散がある場合でも、所望の抵抗器の特性を得ることができる。
また、第4には、四端子構造の抵抗器であって、絶縁基板と、絶縁基板の上面における一方の端部側領域に形成された一対の電極部で、第1電極部と第2電極部とからなる一対の電極部と、絶縁基板の上面における他方の端部側領域に形成された一対の電極部で、第3電極部と第4電極部とからなる一対の電極部と、該第1電極部と第2電極部と第3電極部と第4電極部に接続された抵抗体で、第1電極部と第2電極部の間の位置から絶縁基板における該他方の側に向けて設けられた切欠部又はトリミング溝と、第3電極部と第4電極部の間の位置から絶縁基板における該一方の側に向けて設けられた切欠部又はトリミング溝とを有し、抵抗体ペーストを印刷して焼成することにより形成してなる抵抗体と、
を有することを特徴とする。
この第4の構成の四端子構造の抵抗器においては、抵抗体の両側から切欠部又はトリミング溝が形成されていて、切欠部やトリミング溝により突出した形状となる部分である4つの突出部と突出部以外の領域である抵抗体本体とを有する構成となっていて、各突出部が電極部と接続されているので、抵抗体において抵抗体材料と電極材料との相互の拡散の影響がある領域を突出部内に存在させておくことができ、よって、抵抗体材料と電極部材料との相互の拡散の影響が抵抗体本体に及ばないようにできるので、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散がある場合でも、所望の抵抗器の特性を得ることができる。
なお、上記第4の構成を以下のようにしてもよい。すなわち、「四端子構造の抵抗器であって、略方形状の上面を有する絶縁基板と、絶縁基板の上面における一方の端部側領域に形成された一対の電極部で、第1電極部と第2電極部とからなる一対の電極部と、絶縁基板の上面における他方の端部側領域に形成された一対の電極部で、第3電極部と第4電極部とからなる一対の電極部と、抵抗体で、略方形状の抵抗体本体と、抵抗体本体の一方の端部から突出して形成された一対の突出部で、略方形状を呈し第1電極部の上面に接続された第1突出部と、略方形状を呈し第2電極部の上面に接続された第2突出部とからなる一対の突出部と、抵抗体本体の他方の端部から突出して形成された一対の突出部で、略方形状を呈し第3電極部の上面に接続された第3突出部と、略方形状を呈し第4電極部の上面に接続された第4突出部とからなる一対の突出部と、を有し、方形状の相対する辺から方形状の切欠部を形成した形状からなる抵抗体で、抵抗体ペーストを印刷して焼成することにより形成してなる抵抗体と、を有し、第1電極部と第2電極部と第3電極部と第4電極部は、互いに独立して形成され、抵抗体における抵抗体本体には接続されていないことを特徴とする四端子構造の抵抗器。」としてもよい。
また、第4の構成を以下のようにしてもよい。すなわち、「四端子構造の抵抗器であって、絶縁基板と、絶縁基板の上面における一方の端部側領域に形成された一対の電極部で、第1電極部と第2電極部とからなる一対の電極部と、絶縁基板の上面における他方の端部側領域に形成された一対の電極部で、第3電極部と第4電極部とからなる一対の電極部と、該第1電極部と第2電極部と第3電極部と第4電極部に接続された抵抗体で、抵抗体として機能する本体部と、本体部と連設され、抵抗体において抵抗体として機能しない部分である連設部で、第1連設部と第2連設部と第3連設部と第4連設部とを有し、第1連設部が第1電極部に接続され、第2連設部が第2電極部に接続され、第3連設部が第3電極部に接続され、第4連設部が第4電極部に接続されていて、該連設部にのみ、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散の影響がある領域が存在する抵抗体で、抵抗体ペーストを印刷して焼成することにより形成してなる抵抗体と、を有することを特徴とする。」としてもよい。なお、この構成において、各連設部は、実施例の説明における突出部に当たる。
また、第5には、上記第1から第4までのいずれかの構成において、四端子構造の抵抗器は絶縁基板を有し、上記第1電極部と第2電極部と第3電極部と第4電極部とは、絶縁基板の上面に接触して形成され、抵抗体は、第1電極部と第2電極部と第3電極部と第4電極部の上面に接触して形成されていることを特徴とする。
また、第6には、上記第1から第4までのいずれかの構成において、四端子構造の抵抗器は絶縁基板を有し、上記抵抗器は、絶縁基板の上面に接触して形成され、上記第1電極部と第2電極部と第3電極部と第4電極部とは、抵抗体の上面に接触して形成されていることを特徴とする。
なお、上記各構成において、「四端子構造の抵抗器」を「四端子構造のチップ抵抗器」としてもよい。
本発明に基づく四端子構造の抵抗器によれば、抵抗体において抵抗体材料と電極材料との相互の拡散の影響がある領域を突出部内に存在させておくことができ、よって、抵抗体材料と電極部材料との相互の拡散の影響が抵抗体本体に及ばないようにできるので、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散がある場合でも、所望の抵抗器の特性を得ることができる。
本発明においては、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散がある場合でも、所望の抵抗器の特性を得ることができる四端子構造の抵抗器を提供するという目的を以下のようにして実現した。
本発明に基づく四端子構造の抵抗器Aは、四端子構造のチップ抵抗器であり、図1〜図5に示すように構成され、絶縁基板10と、上面電極12a、12b、12c、12dと、抵抗体(「抵抗体層」としてもよい)14と、保護膜(「保護層」としてもよい)20と、下面電極22a、22b、22c、22dと、側面電極24a、24b、24c、24dと、メッキ26a、26b、26c、26dと、を有している。
なお、図2、図7、図9は、四端子構造の抵抗器Aにおいて保護膜や側面電極やメッキを除いた状態の平面図であり、図3は、四端子構造の抵抗器Aにおいて側面電極やメッキを除いた状態の底面図である。
ここで、四端子構造の抵抗器Aについてさらに詳しく説明すると、上記絶縁基板10は、含有率96%程度のアルミナにて形成された絶縁体である。この絶縁基板10は、直方体形状を呈しており、平面視すると、略長方形形状を呈している。この絶縁基板10は、上記四端子構造の抵抗器Aの基礎部材、すなわち、基体として用いられている。
また、上面電極12a、12b、12c、12dは、図2、図4、図5等に示すように、絶縁基板10の上面の長手方向(X1−X2方向(電極間方向)(図1参照))の端部領域に設けられている。つまり、上面電極12a、12cは、絶縁基板10の上面の一方の側(X1側)の端部領域に設けられ、上面電極12b、12dは、絶縁基板10の上面の他方の側(X2側)の端部領域に設けられ、各上面電極とも同大同形状に形成されている。なお、各上面電極の形状は略方形状(具体的には、略長方形状)であり、各上面電極の各辺はX1−X2方向又はY1−Y2方向を向いている。ここで、上面電極12aと上面電極12bは所定の間隔を介してY1−Y2方向の絶縁基板における中心線を介して線対称の位置に形成され、上面電極12cと上面電極12dは所定の間隔を介してY1−Y2方向の絶縁基板における中心線を介して線対称の位置に形成され、また、上面電極12aと上面電極12cは所定の間隔を介してX1−X2方向の絶縁基板における中心線を介して線対称の位置に形成され、上面電極12bと上面電極12dは所定の間隔を介してX1−X2方向の絶縁基板における中心線を介して線対称の位置に形成されている。また、上面電極12a、12cは、絶縁基板10の上面のX1側の端部から所定の長さに形成されているとともに、上面電極12b、12dは、絶縁基板10の上面のX2側の端部から所定長さに形成されている。また、上面電極12aと絶縁基板10のY2側の端部には隙間が形成され、上面電極12bと絶縁基板10のY2側の端部には隙間が形成され、上面電極12cと絶縁基板10のY1側の端部には隙間が形成され、上面電極12dと絶縁基板10のY1側の端部には隙間が形成されている。以上のようにして、上面電極が絶縁基板10の上面の両側に一対ずつ設けられていて、四端子構造に形成されている。なお、各上面電極は、具体的には、銀系厚膜(銀系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。なお、上面電極12aは上記第1電極部に相当し、上面電極12bは上記第3電極部に相当し、上面電極12cは上記第2電極部に相当し、上面電極12dは上記第4電極部に相当する。
なお、上面電極12a、12b、12c、12dは上記の構成であるとして説明したが、これには限られず、絶縁基板10の両側に上面電極が2つずつ設けられた構成であればよい。
また、抵抗体14は、上面電極12a、12b、12c、12dに接続され、平面視において、抵抗体の両側から切欠部を形成した形状を呈している。具体的には、抵抗体14は、長方形状の両側の短辺から方形状の切欠部14Kを形成した形状を呈している。すなわち、この切欠部14Kを形成することにより突状となる部分を突出部と捉えると、抵抗体14は、図2、図4〜図6に示すように、方形状を呈する本体部15(抵抗体本体)と、該本体部15のX1側の端部から連設された突出部16a(第1突出部)及び突出部16c(第2突出部)と、該本体部15のX2側の端部から連設された突出部16b(第3突出部)及び突出部16d(第4突出部)とを有している。なお、この抵抗体14は、全体に一体に形成されている。
ここで、突出部16aは、本体部15のX1側の端部におけるY2側から連設され、突出部16aのY2側の辺と本体部15のY2側の辺とは面一となっている。また、突出部16cは、本体部15のX1側の端部におけるY1側から連設され、突出部16cのY1側の辺と本体部15のY1側の辺とは面一となっている。また、突出部16bは、本体部15のX2側の端部におけるY2側から連設され、突出部16bのY2側の辺と本体部15のY2側の辺とは面一となっている。また、突出部16dは、本体部15のX2側の端部におけるY1側から連設され、突出部16dのY1側の辺と本体部15のY1側の辺とは面一となっている。なお、突出部16a、16b、16c、16dは、ともに方形状を呈し、略同大同形状となっている。なお、抵抗体14における各突出部と上面電極との接続領域においては、突出部が上面電極の上面に積層して形成されている。つまり、突出部16aが上面電極12aの上面に積層して接続され、突出部16bが上面電極12bの上面に積層して接続され、突出部16cが上面電極12cの上面に積層して接続され、突出部16dが上面電極12dの上面に積層して接続されている。
なお、四端子構造の抵抗器Aにおいて、抵抗体14における本体部15と各上面電極とは接触しておらず、本体部15と各上面電極間には、所定の距離が設けられている。例えば、上面電極12aと本体部15間には距離a1が設けられ、上面電極12bと本体部15間には距離a2が設けられ、上面電極12cと本体部15間には距離a3が設けられ、上面電極12dと本体部15間には距離a4が設けられている。つまり、各突出部においては、突出部における一部の領域が上面電極と接続されていて、他の部分の領域は上面電極と接続されていない。なお、基本的には、距離a1と距離a2と距離a3と距離a4は同じとする。これらの距離は、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散の影響が本体部15に及ばない程度の長さとする。つまり、抵抗体14において、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散の影響がある領域R(図7参照)が本体部15にまで及ばないように、該距離を設定する。なお、抵抗体14における突出部自体のX1−X2方向の長さは、上記距離よりも大きく形成されている。例えば、突出部16aのX1−X2方向の長さは、距離a1よりも長く形成され(つまり、距離a1と、上面電極12aとの接続に際して必要な長さを足した長さに形成されている)、突出部16bのX1−X2方向の長さは、距離a2よりも長く形成され(つまり、距離a2と、上面電極12bとの接続に際して必要な長さを足した長さに形成されている)、突出部16cのX1−X2方向の長さは、距離a3よりも長く形成され(つまり、距離a3と、上面電極12cとの接続に際して必要な長さを足した長さに形成されている)、突出部16dのX1−X2方向の長さは、距離a4よりも長く形成されている(つまり、距離a4と、上面電極12dとの接続に際して必要な長さを足した長さに形成されている)。
また、この抵抗体14は、具体的には、銀パラジウム系厚膜により形成されているが、これには限らず、例えば、銅ニッケル系厚膜により形成してもよい。
また、保護膜20は、図1、図4、図5等に示すように、主に、抵抗体14を被覆するように配設されている。すなわち、この保護膜20の配設位置をさらに詳しく説明すると、Y1−Y2方向には、該絶縁基板10の幅よりも短く形成され、保護膜20と絶縁基板10の端部とは所定の間隔が形成されている。さらに、X1−X2方向には、抵抗体14と上面電極12a、12b、12c、12dの一部を被覆するように設けられている。この保護膜20は、樹脂(エポキシ、フェノール、シリコン等)により形成されている。なお、ほう珪酸鉛ガラスにより形成してもよい。
また、下面電極22a、22b、22c、22dは、図3〜図5に示すように、上記絶縁基板10の下面に形成され、絶縁基板10の下面の長手方向(X1−X2方向(図3参照))の端部領域に設けられている。つまり、下面電極22a、22cは、絶縁基板10の下面の一方の側(X1側)の端部領域に設けられ、下面電極22b、22dは、絶縁基板10の下面の他方の側(X2側)の端部領域に設けられ、各下面電極とも同大同形状に形成されている。なお、各下面電極の形状は略方形状(具体的には、略長方形状)であり、各下面電極の各辺はX1−X2方向又はY1−Y2方向を向いている。なお、各下面電極のY1−Y2方向の幅は、各上面電極のY1−Y2方向の幅と略同一となっている。ここで、下面電極22aと下面電極22bは所定の間隔を介してY1−Y2方向の絶縁基板における中心線を介して線対称の位置に形成され、下面電極22cと下面電極22dは所定の間隔を介してY1−Y2方向の絶縁基板における中心線を介して線対称の位置に形成され、また、下面電極22aと下面電極22cは所定の間隔を介してX1−X2方向の絶縁基板における中心線を介して線対称の位置に形成され、下面電極22bと下面電極22dは所定の間隔を介してX1−X2方向の絶縁基板における中心線を介して線対称の位置に形成されている。また、下面電極22a、22cは、絶縁基板10の下面のX1側の端部から所定の長さに形成されているとともに、下面電極22b、22dは、絶縁基板10の下面のX2側の端部から所定長さに形成されている。また、下面電極22aと絶縁基板10のY2側の端部には隙間が形成され、下面電極22bと絶縁基板10のY2側の端部には隙間が形成され、下面電極22cと絶縁基板10のY1側の端部には隙間が形成され、下面電極22dと絶縁基板10のY2側の端部には隙間が形成されている。なお、各下面電極は、Y1−Y2方向には、上面電極と対応する位置に形成されている。つまり、下面電極22aのY1−Y2方向の形成位置は、上面電極12aの形成位置に対応し、下面電極22bのY1−Y2方向の形成位置は、上面電極12bの形成位置に対応し、下面電極22cのY1−Y2方向の形成位置は、上面電極12cの形成位置に対応し、下面電極22dY1−Y2方向の形成位置は、上面電極12dの形成位置に対応している。以上のようにして、下面電極が絶縁基板10の下面の両側に一対ずつ設けられていて、四端子構造に形成されている。なお、各下面電極は、具体的には、銀系厚膜(銀系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。
また、上記側面電極は、上面電極の一部と、下面電極の一部と、絶縁基板10の側面(つまり、X1側の側面の一部と、X2側の側面の一部)を被覆するように断面略コ字状に層状に形成されている。つまり、側面電極24aは、上面電極12aと、下面電極22aと、絶縁基板10のX1側の側面の一部とを被覆するように略コ字状に形成され、また、側面電極24bは、上面電極12bと、下面電極22bと、絶縁基板10のX2側の側面の一部とを被覆するように略コ字状に形成され、側面電極24cは、上面電極12cと、下面電極22cと、絶縁基板10のX1側の側面の一部とを被覆するように略コ字状に形成され、また、側面電極24dは、上面電極12dと、下面電極22dと、絶縁基板10のX2側の側面の一部とを被覆するように略コ字状に形成されている。なお、各側面電極のY1−Y2方向の幅は、上面電極や下面電極のY1−Y2方向の幅と略同一に形成されている。
また、メッキ26a、26b、26c、26dは、ニッケルメッキ28と、錫メッキ30とから構成されていて、X1側の端部とX2側の端部にそれぞれ設けられている。
ニッケルメッキ28は、保護膜20の一部と、上面電極の一部と、側面電極と、下面電極の一部を被覆するように形成されている。つまり、メッキ26aにおけるニッケルメッキ28は、保護膜20の一部と、上面電極12aの一部と、側面電極24aと、下面電極22aの一部を被覆するように形成され、また、メッキ26bにおけるニッケルメッキ28は、保護膜20の一部と、上面電極12bの一部と、側面電極24bと、下面電極22bの一部を被覆するように形成され、また、メッキ26cにおけるニッケルメッキ28は、保護膜20の一部と、上面電極12cの一部と、側面電極24cと、下面電極22cの一部を被覆するように形成され、また、メッキ26dにおけるニッケルメッキ28は、保護膜20の一部と、上面電極12dの一部と、側面電極24dと、下面電極22dの一部を被覆するように形成されている。各ニッケルメッキ28は、電気メッキにより略均一の膜厚で配設されている。これらのニッケルメッキ28は、ニッケルにて形成されており、上面電極等の内部電極のはんだ食われを防止するために形成されている。このニッケルメッキ28は、ニッケル以外にも銅メッキが用いられる場合もある。
また、錫メッキ30は、ニッケルメッキ28の上面を被覆するように略均一の膜厚で配設されている。この錫メッキ30は、上記四端子構造の抵抗器Aの配線基板へのはんだ付けを良好に行うために形成されている。なお、この錫メッキ30は、錫メッキ以外に、はんだが用いられる場合もある。
なお、上記上面電極と、これに対応する下面電極と側面電極とメッキとで電極部が形成される。つまり、上面電極12aと下面電極22aと側面電極24aとメッキ26aとで電極部40aが形成され、上面電極12bと下面電極22bと側面電極24bとメッキ26bとで電極部40bが形成され、上面電極12cと下面電極22cと側面電極24cとメッキ26cとで電極部40cが形成され、上面電極12dと下面電極22dと側面電極24dとメッキ26dとで電極部40dが形成される。
上記構成の四端子構造の抵抗器Aの製造方法について説明すると、製造方法自体は従来の方法とほぼ同様である。まず、表面と裏面の両面に一次スリットと二次スリットが形成されている無垢のアルミナ基板(このアルミナ基板は、複数の四端子構造の抵抗器の絶縁基板の大きさを少なくとも有する大判のものである)を用意し、このアルミナ基板の裏面(すなわち、底面)に下面電極を形成する(下面電極形成工程)。つまり、下面電極用のペースト(例えば、銀系メタルグレーズ等の銀系ペースト)を印刷し、乾燥・焼成する。なお、この下面電極の形成に際しては、隣接する抵抗器について同時に下面電極を形成する。
次に、アルミナ基板の表側の面(すなわち、上面)に上面電極を形成する(上面電極形成工程)。すなわち、上面電極ペーストを印刷し、乾燥・焼成する。なお、当然各抵抗器ごとに4つの上面電極を形成する。この場合の上面電極ペーストは、銀系ペースト(例えば、銀系メタルグレーズ)である。なお、四端子構造の抵抗器となった場合に隣接する抵抗器の上面電極で互いに隣接し合う上面電極については1つの印刷領域で形成する。
次に、該アルミナ基板の表側の面(すなわち、上面)に抵抗体を形成する(抵抗体形成工程)。つまり、抵抗体ペーストを印刷した後に乾燥・焼成して抵抗体を形成する。なお、形成する抵抗体の形状は、上記のように、長方形状の両側の短辺から方形状の切欠部を形成した形状とする。また、この抵抗体ペーストは、銀パラジウム系厚膜であるが、これには限らず、例えば、銅ニッケル系厚膜により形成してもよい。
次に、抵抗体14にトリミング溝を形成して抵抗値を調整する(抵抗値調整工程)。つまり、レーザートリミングにより抵抗体14にトリミング溝を形成する。
次に、少なくとも抵抗体14を覆うように保護膜を形成する(保護膜形成工程)。つまり、樹脂ペーストを印刷し、乾燥・硬化させる。なお、Y方向に帯状に樹脂ペーストを印刷して、Y方向に複数の抵抗器分まとめて一連の帯状に保護膜を形成するようにしてもよい。
その後は、一次スリットに沿って一次分割する(分割工程)。この分割に際しては、例えば、下面側を基点として、アルミナ基板を折り曲げるようにして分割する。つまり、1つの抵抗器分のアルミナ基板の部分を直線状に配列してなる短冊状基板を隣接する短冊状基板に対して折り曲げるように上面側から下方に折曲させて分割する。
次に、該短冊状基板に対して、側面電極を形成する(側面電極形成工程)。つまり、側面電極用ペーストを印刷し、乾燥・硬化する。なお、側面電極用ペーストを印刷し、乾燥・焼成する方法としてもよい。また、スパッタ法により側面電極を金属薄膜で形成してもよい。その後、二次スリットに沿って二次分割する。
次に、ニッケルメッキを形成し、その後、錫メッキを形成して、四端子構造の抵抗器とする。
なお、製造された四端子構造の抵抗器を製品として完成するには、4つの電極部のうちの左右一対の電極部を電流端子とし、他の左右一対の電極部を電圧端子として、一対の電流端子間に電流を流した状態で、一対の電圧端子に電圧計を接続して電圧を計測する。例えば、電極部40aと電極部40bを電流端子とし、電極部40cと電極部40dを電圧端子として、電極部40aと電極部40b間に電流を流した状態で、電極部40cと電極部40d間に電圧計を接続して電圧を計測する。なお、電極部40a、40bを電圧端子とするとともに、電極部40c、40dを電流端子としてもよいし、また、電極部40a、40dを電流端子とするとともに、電極部40c、40bを電圧端子としてもよいし、また、電極部40a、40dを電圧端子とするとともに、電極部40c、40bを電流端子としてもよい。電流値と計測された電圧値とにより抵抗値を算出されるので、その四端子構造の抵抗器の抵抗値が特定される。この抵抗値は、四端子構造の抵抗器Aを使用するに際して、既知の抵抗値として使用される。なお、算出される抵抗値は、図8に示す等価回路からすると、本体部15の部分の抵抗値を算出していることになる。
次に、上記構成の四端子構造の抵抗器Aの使用状態及び作用について説明する。この四端子構造の抵抗器Aは、配線基板に実装して使用するが、一対の電流端子を電流を流す回路(電流回路)L1(図8参照)に接続し、一対の電圧端子を電圧計測回路(例えば、電圧計が接続された回路)L2(図8参照)に接続する。そして、電流端子間に電流が流れている状態で電圧計測回路L2によって電圧値を計測することにより、計測された電圧値と既知の抵抗値とにより、電流値が算出される。これにより、電流回路L1の電流値を計測することができる。
ここで、本実施例の四端子構造の抵抗器Aにおいては、抵抗体14が上記のように形成されており、抵抗体14において、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散の影響がある領域R(図7参照)が抵抗体14における突出部内のみにあり、該領域Rは本体部15にまで及ばないように構成されていて、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散の影響が本体部15に及ばないようになっているので、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散がある場合でも、所望の抵抗器の特性を得ることができる。
つまり、本実施例の四端子構造の抵抗器Aの等価回路を示すと図8に示すようになる(なお、側面電極やメッキ部分は省略して描かれている)。そして、電極部40aと電極部40bを電流端子とした場合に、電流は、上面電極12a、突出部16a、本体部15、突出部16b、上面電極12bと流れるが、電圧計測回路L2における計測に際しては、本体部15における電圧降下の値を計測することになるため、抵抗体14における各突出部の存在は、電圧計測に際しては影響なく、よって、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散の影響がある領域Rの存在も影響がない。つまり、該領域Rは、抵抗体としては機能しないことになる。よって、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散がある場合でも、所望の抵抗器の特性を得ることができる。
なお、四端子構造の抵抗器Aの完成段階において算出される抵抗値は、本体部15の部分の抵抗値を算出していることになるので、電流値の計測に際して抵抗体14の突出部が抵抗体として機能していなくても支障はない。
一方、図10に示す従来の構成の四端子構造の抵抗器Bにおいては、その等価回路を示すと図11に示すように構成される。ここで、130−2と130−3は、抵抗体130において抵抗体材料と電極材料との相互の拡散の影響がある部分を示し、130−1は、その影響がない部分を示す。
すると、四端子構造の抵抗器Bの完成段階において抵抗値を計測する場合に、拡散の影響がある部分を含めた抵抗体130全体の抵抗値を計測することになり、四端子構造の抵抗器Bの使用状態においても、電流回路L1に電流を流した状態で、電圧計測回路L2により電圧を計測するので、拡散の影響がある部分を含めた抵抗体130全体の電圧降下の値を計測するので、結果として、抵抗体材料や上面電極材料が拡散することにより抵抗体の特性が変動した領域も抵抗体として機能することから、所望の特性の抵抗器を得ることができない。
なお、上記の説明においては、抵抗体14は、抵抗体の両側から切欠部を形成した形状を呈しており、その形状については、予めその形状に抵抗体ペーストを印刷することにより形成するものとして説明したが、図9に示すように、トリミング溝14Tを形成することにより、同様の構成としてもよい。
つまり、図9に示す四端子構造の抵抗器A’においては、抵抗体14は、方形状(具体的には、長方形状)の抵抗体の両側、つまり、X1側とX2側からトリミング溝14Tが形成されていて、トリミング溝14Tにより、抵抗体14は、本体部15と、突出部16a、16b、16c、16dが構成されている。この四端子構造の抵抗器A’も四端子構造のチップ抵抗器である。
そして、四端子構造の抵抗器A’において、抵抗体14における本体部15と各上面電極とは接触しておらず、本体部15と各上面電極間には、所定の距離が設けられている。例えば、上面電極12aと本体部15間には距離a1が設けられ、上面電極12bと本体部15間には距離a2が設けられ、上面電極12cと本体部15間には距離a3が設けられ、上面電極12dと本体部15間には距離a4が設けられている。つまり、各突出部においては、突出部における一部の領域が上面電極と接続されていて、他の部分の領域は上面電極と接続されていない。なお、基本的には、距離a1と距離a2と距離a3と距離a4は同じとする。これらの距離は、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散の影響が本体部15に及ばない程度の長さとする。つまり、抵抗体14において、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散の影響がある領域R(図7参照)が本体部15にまで及ばないように、該距離を設定する。つまり、製造に際しては、抵抗体ペーストの印刷、乾燥、焼成に際しては、方形状に抵抗体を形成しておき、トリミングに際して、距離a1、a2、a3、a4が少なくとも抵抗体材料と電極材料との相互の拡散の影響が本体部15にまで及ばない程度になるまでトリミング溝を形成する。つまり、トリミング溝を図9に示す方向に形成することにより、抵抗体14全体の抵抗値は降下するので、抵抗体は予め高めに形成しておき、所望の抵抗値を得るには、少なくともトリミング溝を抵抗体材料と電極材料との相互の拡散の影響が本体部15にまで及ばない程度に形成しなければならないようにする。
なお、上記の説明においては、抵抗体14は、上面電極12a、12b、12c、12dの上面に積層して形成されているものとして説明したが、抵抗体14が絶縁基板10の上面に形成され、上面電極12a、12b、12c、12dが抵抗体14の上面に積層して形成されたものとしてもよい。
なお、上記の説明においては、抵抗体14は、方形状の両側から切欠部又はトリミング溝を形成した形状であるとして説明したが、これには限られず、両側から切欠部やトリミング溝を設けて、本体部と4つの突出部を有する構成とする等して、抵抗体に抵抗体として機能しない領域を設け、抵抗体材料と電極材料との相互の拡散の影響がある領域を抵抗体として機能しない領域内に存在させる構成であればよい。
また、上記の説明においては、四端子構造の抵抗器として、四端子構造のチップ抵抗器を例に取って説明したが、これには限られず、四端子構造のチップ抵抗器以外の四端子構造の抵抗器であってもよい。