以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。本実施の形態では、車両(移動体)でのナビゲーションを行うためのナビゲーションシステムに本発明が適用された場合を例に説明する。なお、本実施の形態では、車両として自動車を用いるものとする。したがって、本実施の形態にかかるナビゲーションシステムは、いわゆるカーナビゲーションシステム(カーナビ)である。
図1は、本発明の実施の形態にかかるナビゲーションシステムの構成を示す図である。図示するように、本実施の形態にかかるナビゲーションシステム1は、ナビゲーション装置100、検知部200、表示装置450から構成され、それぞれ車両VC(自動車)に配置される。ナビゲーション装置100および検知部200は車両VCの内部に構成され、表示装置450は車両VCのフロントウィンドウ(前部窓)FWに構成される。また、車両VCの外面上にはGPSアンテナ211などが設置される。
ナビゲーション装置100は、所望する目的地までの経路を車両VCの運転者に案内するための装置であり、車両VCの電気系統や情報システム等に接続されるよう車両VC内に構成される。ナビゲーション装置100の構成を図2を参照して説明する。図2はナビゲーション装置100の構成を示すブロック図である。図示するように、ナビゲーション装置100は、制御部110と、検知情報取得部120と、入力制御部130と、出力制御部140と、プログラム格納部150と、記憶部160と、入力部300と、出力部400と、を備える。
制御部110は、例えば、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)などから構成され、ナビゲーション装置100の各部を制御するとともに、プログラム格納部150に記憶されている動作プログラムを実行することで、車両VCの搭乗者等に各種情報を提供する。特に、車両VCについての種々の検知情報に基づいて、運転者を案内するためのナビゲーション動作をおこなう。なお、制御部110は、例えば、RAM(Random Access Memory)などの記憶装置を含む。この記憶装置は、動作プログラムや各種データを展開(ロード)するための記憶領域(以下、「ワークエリア」とする)として機能する。
制御部110は、動作プログラムを実行することで、少なくとも以下の機能を実現する。
(1)「車両状態検知機能」:検知情報取得部120が取得した車両VCについての検知情報に基づいて、車両VCの状態を随時検知する機能
(2)「演算機能」:車両状態検知機能によって検知された車両VCの状態に基づいて種々の演算をおこない、その結果に応じて出力すべき情報やその出力タイミングを決定する機能
(3)「ナビゲーション機能」:演算機能による演算結果に基づいて、所定の案内情報を出力することで、経路案内をおこなう機能
(4)「出力制御機能」:演算機能による演算結果に応じて、出力すべき情報を適切な出力方法で出力する機能
なお、上記各機能は、制御部110がプログラムを実行する、いわゆる「ソフトウェア処理」で実現可能であることはもとより、各機能を専門的に実行する装置との協働による、いわゆる「ハードウェア処理」によって実現されてもよい。また、ナビゲーション装置100が動作するための電力は、車両VCに備えられている所定の電源(バッテリなど)から供給されるものとする。
検知情報取得部120は、所定のインタフェース(I/F)機構から構成され、車両VCの状態等を検知する検知部200と制御部110とを接続して、検知部200の検知結果を示す情報(以下、「検知情報」とする)を生成して制御部110に入力する。
ここで、検知部200は、車両VCの動作、状態、位置等を検知するための装置群から構成されるもので、車両VCの各所に配置され、所定のワイヤハーネスなどによって検知情報取得部120と接続されている。本実施の形態における検知部200の詳細を図3を参照して説明する。図3は、検知部200の構成を示すブロック図である。図示するように、検知部200は、位置・方向検知部210、速度検知部220、異常検知部230、走行状態検知部240、を備える。
位置・方向検知部210は、例えば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)装置などから構成され、車両VCの位置および進行方向等を検知する。本実施の形態では、位置・方向検知部210としてGPS装置を用いるものとする。したがって、位置・方向検知部210には、GPSアンテナ211が接続される。GPSアンテナ211は、例えば、車両VCの外面上に設置され(図1)、GPS用の人工衛星が発信する位置測定用電波を受信する。位置・方向検知部210は、GPSアンテナ211が受信した位置測定用電波に基づいて、車両VCの位置(緯度・経度)および進行方向を検知する。
速度検知部220は、車両VCの走行速度(車速)を検知するものであり、例えば、車両VCに備えられている所定の速度検出機構(速度表示装置)などに接続されて、車両VCの車速を検知する。この場合、例えば、車両VCの車輪回転数の計測などによって車両VCの車速が検知される。なお、速度検知部220が車両VCの車速を検知する方法は任意であり、例えば、位置・方向検知部210との協働により、車両VCの移動距離と所要時間とを計測することによって車速を検知するようにしてもよい。
異常検知部230は、車両VCにおける異常を検知するものであり、例えば、車両VCに備えられている所定の異常検出機構(警告装置)に接続されて、車両VCの異常を検知する。本実施の形態では、例えば、燃料残量の低下、油圧低下、水温・油温の上昇、などといった、車両VCを走行させる上での異常(以下、「車両異常」とする)が検知される他、車両VCの盗難や破壊などといった不正行為も異常として検知されるものとする。この場合、例えば、車両VCのドアや窓などの破壊、不正なキーの使用、不正な方法での始動、などを検出することで、車両VCに対する不正行為を検知する。なお、このような不正行為の検出は、車両VCに取り付けられる任意の防犯装置(警報装置)などによっておこなわれてもよい。この場合、検知情報取得部120と防犯装置(警報装置)とが接続されることで不正行為が検知されるものとする。
走行状態検知部240は、車両VCの走行に関する状態を検知するものであり、例えば、車両VCに備えられている所定の電子制御機構などに接続されることで、車両VCの走行状態を検知する。本実施の形態では、車両VCの走行に関する操作をおこなうための、例えば、アクセルペダルやブレーキペダル、ハンドル、変速機、などの状態を検出することで車両VCの走行状態を検知する。この場合、例えば、アクセル開度やブレーキペダルの踏力、ハンドル操作による操舵角、あるいは、変速機の段数、などが検出される。
図2に戻り、ナビゲーション装置100のその他の構成について説明する。
入力制御部130は、所定のI/F機構から構成され、車両VCの搭乗者(以下「ユーザ」とする)による入力を受け付ける入力部300と制御部110とを接続し、入力部300での入力内容を制御部110に入力する。
ここで、入力部300は、操作入力装置310、音声入力装置320、などから構成される。
操作入力装置310は、例えば、ナビゲーション装置100に対する指示等が予め割り当てられているキーやボタンなどから構成され、ユーザによる操作によってナビゲーション装置100への指示等の入力をおこなう。
音声入力装置320は、例えば、マイクロフォンなどの収音装置から構成され、ユーザの発話による音声を入力する。
入力部300は、車両VCと一体的に構成されてもよい他、後付けとして車両VC内に適宜設置されてもよい(例えば、ダッシュボード上部やコンソール部、ハンドルなど)。例えば、操作入力装置310は、複数のボタン群から構成される操作パネルとしてダッシュボード等に構成されてもよく、あるいは、ワイヤレスリモコンなどの形態で提供されてもよい。なお、入力部300は、操作入力装置310と音声入力装置320の双方を備えていてもよい他、操作入力装置310あるいは音声入力装置320のいずれかを備える構成であってもよい。
このような入力部300が接続されている入力制御部130は、入力部300での入力信号を必要に応じて所定の信号形式に変換して制御部110に入力する。本実施の形態では、音声入力装置320に入力された音声信号などのアナログ信号をデジタル信号に変換(A/D変換)するとともに、入力された音声からユーザの発話内容(指示内容)を認識する音声認識部131などを有する。すなわち、入力制御部130は入力部300での入力に基づいて、ユーザの指示を制御部110に入力する。なお、音声認識部131は、任意の周知・慣用技術を用いて構成されるものとする。
出力制御部140は、所定のI/F機構から構成され、車両VCのユーザや車両VCの外部に情報を出力する出力部400と制御部110とを接続し、制御部110が決定した情報を出力部400に出力する。
出力部400は、報音装置410、表示装置450、などを備える。報音装置410は、例えば、車両VC内に設置されるスピーカなどから構成され、制御部110が決定した音声情報を出力する。なお、報音装置410は、車両VCに備えられているオーディオシステム(カーオーディオ)などを用いてもよい。また、表示装置450は、所定のディスプレイ装置から構成され、制御部110が決定した画像情報を表示する。表示装置450の詳細については後述する。ここで、出力部400は、報音装置410と表示装置450の双方を備えていることが望ましいが、報音装置410あるいは表示装置450のいずれか(望ましくは表示装置450)を備える構成であってもよい。
このような出力部400が接続された出力制御部140は、制御部110が決定した情報を好適な出力方法で出力部400に出力する。例えば、出力制御部140は、制御部110が「音声で出力する」とした場合に、制御部110から供給された情報を報音装置410で出力可能な音声信号に変換する。また、制御部110が「画像(映像)で出力する」とした場合に、制御部110から供給された情報を好適な形式で表示装置450に表示させる。よって、出力制御部140は、制御部110から供給された情報を音声信号に変換する音声信号生成部141、制御部110から供給された情報を表示装置450に表示させる表示制御部142、などを備える。
ここで、音声信号生成部141は、例えば、所定の音声合成装置などから構成され、制御部110から供給された情報を、あたかも人間が発話しているかのような音声として出力する。また、表示制御部142は、制御部110から供給された情報(画像情報)を適宜加工等して表示装置450に表示させる(例えば、画像の変形、サイズ変更、動的表示、反転表示、点滅表示、透過表示、非透過表示、など)。
プログラム格納部150は、例えば、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ、ハードディスク装置などの記憶装置、あるいは、DVD(Digital Versatile Disc:デジタル多目的ディスク)やCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの記憶媒体、などから構成され、ナビゲーション装置100の制御部110が実行する各種プログラムを格納する。後述する各処理は、制御部110がプログラム格納部150に格納されているプログラムを実行することで実現される。
記憶部160は、例えば、ROMやフラッシュメモリ、ハードディスク装置などの記憶装置、あるいは、DVDやCD−ROMなどの記憶媒体、などから構成され、ナビゲーション装置100によるナビゲーション動作等に必要な各種情報が格納される。本実施の形態では、経路検索に必要となる「地理情報」、経路決定に必要となる「地図情報」、ナビゲーション時に出力する「案内情報」、案内情報以外の出力情報である「定型情報」、および、ナビゲーション装置100の設定内容を示す「設定情報」、などが記憶部160に格納される。
「地理情報」は、道路交通上の地点情報であり、例えば、地名、道路名、交差点名(信号名)、橋梁名、高速道路等の関連施設名(出入口名、料金所名、サービスエリア名など)、ランドマークとなる各種施設の名称(ビル等の建物名、鉄道の路線名や駅名など)、などと、それらの位置情報(緯度および経度等)、などが含まれている。
「地図情報」は、少なくとも「地理情報」に含まれている地点に対応した地域の道路地図を示す情報であり、当該地域の道路の他、地形等を示す情報から構成される。なお、「地理情報」に示される位置と、「地図情報」上の位置とは対応付けられているものとする。また、任意の地点間の距離等を地図情報に基づいて算出可能であるものとする。
「案内情報」は、ナビゲーション装置100が経路案内をおこなうためのナビゲーション動作を実行している際に運転者に報知される情報であり、例えば、表示装置450上に表示される矢印などの画像情報の他、報音装置410で音声出力する際の定型文情報、などを含む。より詳細には、設定された経路を走行するために運転者がおこなうべき操作を誘因するための情報である。すなわち、例えば、車両VCの前方にある交差点などにおいて車両VCが進行すべき方向(直進、左折、右折、など)を示す矢印や、「100m前方の交差点を左折です」などといった定型文などから構成される。このような情報が画像または音声で出力される。
「定型情報」は、ナビゲーション用の案内情報以外に表示装置450に表示される情報であり、例えば、車両VCのユーザに示すための情報の他、車両VCの外部に示すための情報を含む。例えば、異常検知部230が車両異常を検知した際に車両VCのユーザに対して表示される「警報情報」や、車両VCの盗難などの不正行為が検知された際に車両VCの外部にその旨を報知するための「通報情報」、あるいは、車両VCの停車時などに車両VCの外部に広告などを示すための「広告情報」、などが含まれる。
「設定情報」は、ナビゲーション装置100がおこなう動作についての設定情報であり、例えば、出力方式(「音声のみ」、「画像のみ」、「音声+画像」、など)や、画像表示方式(例えば、案内情報の表示時間、表示画像の透過度、など)、あるいは、通報情報や広告情報の表示要否、などの設定が示される。また、音声認識部131による音声認識結果と照合するための語彙を示す「語彙情報」なども記録される。設定情報に示される内容は、ユーザが入力部300を用いて事前に設定するものとする。
次に表示装置450の詳細を以下説明する。本実施の形態にかかる表示装置450は、表示領域を可視光が透過する透明なフラットディスプレイ装置から構成される。すなわち、表示装置450に何も表示しない状態では、透明パネルもしくは透明フィルムのような外観を呈する。このような透明ディスプレイ装置として、例えば、有機ELディスプレイあるいは無機ELディスプレイを用いることができる。EL(electroluminescence)ディスプレイは、ガラス基板などの透明基板に蒸着させた発光体が電圧の印加により発光することで画像表示をおこなうものであるが、この電圧印加をおこなうための電極や導電膜を、例えば、ITO(Indium-Tin-Oxide:インジウム−スズ酸化物)やZnO(酸化亜鉛)などで形成することにより、透明な電極あるいは導電膜を構成することができる。このような透明電極等を用いることで、表示領域を可視光が透過する透明ELディスプレイを形成することができる。
本実施の形態では、このような透明な表示装置450を車両VCのフロントウィンドウFWに構成する。表示装置450の構成例を図4を参照して説明する。
図4(a)は、車両VCの内部からみた前方風景の様子を模式的に示す図である。すなわち、フロントウィンドウFWを介して見た前方風景(外部環境)の様子である。本実施の形態の表示装置450は、図4(b)に示すように、このような外部環境を視認可能なフロントウィンドウFWに合わせて設置される。上述したように、表示装置450は可視光が透過する透明ディスプレイであるため、図4(b)に示すように、車両VCの内部から、表示装置450およびフロントウィンドウFWを介して車両VCの外部環境(前方風景)を視認することができる。
本実施の形態では、このように構成された表示装置450に、車両VCの進行方向等を案内するための案内画像GD(案内情報)が表示される(図4(c))。すなわち、図4(c)に示すように、前方風景(外部環境)に重畳されるように案内画像GDが表示装置450に表示される。また、案内画像GDは、実際の風景(外部環境)と調和するよう表示されることが望ましい。例えば、図4(c)に示すような、右左折を案内するための屈曲した矢印を表示する場合、表示装置450を介して見える実際の路上での進行方向角度と矢印の屈曲角度とが一致するように案内画像GDを表示させる。このような表示とすることで、運転者は直感的に進行方向等を認識することができる。
表示装置450はフロントウィンドウFWに合わせて設置されるが、その設置方法は任意である。表示装置450の設置方法の例を図5を参照して説明する。例えば、図5(a)に示すように、任意の固定部材FMを用いて表示装置450をフロントウィンドウFWに固定することができる。
このような固定部材FMを用いて設置した場合、表示装置450とフロントウィンドウFWとの間に空隙が生じることがある。この場合、運転者の視点から見える外部環境と表示装置450に表示される画像との間に視差が生じる可能性がある。この場合、外部環境と調和するよう案内画像GDを表示させることができないので、視差を是正するための表示調整等が必要となる場合がある。このため、フロントウィンドウFWと表示装置450とは、密着もしくは可能な限り近接していることが望ましい。
図5(b)は、表示装置450をフロントウィンドウFWに密着させて構成した場合の例を示す図であり、フロントウィンドウFWと表示装置450の断面を示したものである。図示するように、表示装置450を粘着材AHを用いてフロントウィンドウFWに貼付することで、表示装置450とフロントウィンドウFWとを密着させることができる。この方法は、表示装置450がフィルム状の形態である場合に特に有効である。すなわち、透明ELディスプレイ等において、発光体等が形成される基板を透明なフィルム状の材質で構成することで、フィルム状の透明ディスプレイを構成することができる。このようなフィルム状ディスプレイは、ガラス基板などで構成したパネル状ディスプレイより軽量となるので、粘着材AH等によってフロントウィンドウFWに貼付することが可能となる。また、フロントウィンドウFWが曲面を有する場合であっても、表示装置450をフロントウィンドウFWに密着させることができる。なお、フロントウィンドウFWに密着的に貼付できるのであれば、表示装置450はパネル状であってもよい。また、粘着材AHは任意のものとすることができ、例えば、接着剤や両面テープなどとすることができる。
このようなフィルム状ディスプレイを用いる場合、フロントウィンドウFWを構成する窓板内に表示装置450を構成してもよい。この場合の例を図5(c)に示す。図5(c)は、フロントウィンドウFWと表示装置450の断面を示す図である。図示するように、フロントウィンドウFWは、外側の窓板WP1と内側の窓板WP2の2枚(二重)の窓板から構成される。そして、表示装置450は、窓板WP1とWP2との間に構成される。すなわち、窓板WP1と窓板WP2が表示装置450を挟持する構成となる。このような構成とすることで、フロントウィンドウFWの窓板内部に表示装置450を形成することができる。この方法は、例えば、表示装置450を最初から備えた車両VCを製造する場合などに有用である。また、このような構成を有するフロントウィンドウFWを車両VCの部品として供給することもできる。なお、窓板で挟持可能であれば、表示装置450はパネル状であってもよい。また、フロントウィンドウFWの窓板WP1と窓板WP2が表示装置450を挟持するのではなく、窓板WP1と窓板WP2をディスプレイ装置の基板とし、フロントウィンドウFW自体を透明ディスプレイ装置として構成してもよい。
また、このような表示装置450の表示面の面積は、フロントウィンドウFWの窓板面積の70%以上であることが望ましい。すなわち、本実施の形態では、より直感的なナビゲーションを提供するため、案内画像GDを外部環境に調和させて表示する。例えば、交差点の位置と進入方向を矢印によって示す案内画像GDを表示する場合、案内する交差点が遠方にある場合(図6(a))と、交差点に近接した場合(図6(b))とでは、表示装置450上での案内画像GDの表示位置が異なる。すなわち、案内対象が車両VCと近接している場合、フロントウィンドウFWを介した視野の左右端側や下端側となる位置に案内画像GDを表示できるようにすることで、実際の外部風景に調和した画像表示とすることができる。ここで、例えば、表示装置450をフロントウィンドウFWの一部のみ(例えば、フロントウィンドウFWの中央部付近のみ)に構成した場合、このような画像表示を実現することはできない。したがって、外部環境と調和した画像表示を可能とするためには、表示装置450とフロントウィンドウFWの形状および面積が同一であることが好ましいが、少なくとも表示装置450の面積をフロントウィンドウFWの窓板面積の70%以上とすることができれば、外部環境に調和した画像表示が可能である。
このように、表示装置450には案内画像GDが外部環境に重畳するよう表示される。ここで、表示装置450に表示される案内画像GDは、透過的に表示されることが望ましい。すなわち、図7(a)に示すように、案内画像GDが不透過的に塗りつぶされている場合、運転者の前方視界を遮ることとなり、安全上好ましくない。したがって、例えば、図7(b)に示すように、案内画像GDを輪郭線のみの表示態様とすることで、運転者の前方視界を遮ることなく案内情報を表示することができる。
しかし、例えば、車両VCの内部と外部とで照度(明るさ)に差がある場合などには、輪郭線のみでは視認しにくい場合もある。また、表示する案内画像GDの形態によっては(例えば、文字情報のみの表示など)、輪郭線のみでは十分な視認性が得られない場合もある。このような場合、例えば、図7(c)に示すように、案内画像GDを透過的に塗りつぶすようにしてもよい。すなわち、所定の透過度(透明度)を設定して着色等することで、外部環境から反射した可視光が案内画像GDを透過するため、運転者は案内画像GDを介して外部環境を視認することができる。このような表示態様とすることで、安全性を損なわずに視認性の高い案内画像GDを表示することができる。なお。透過的な塗りつぶしは着色に限らず、例えば、透過的なパターンの適用などでもよい。
以上のような表示態様とすることで、案内画像GDと外部環境とが透過的に重畳されるよう、案内画像GDが表示装置450に表示される。このような表示態様(出力態様)の設定や指定は出力制御部140の表示制御部142によっておこなわれる。すなわち、表示制御部142が所定の透過度などを指定して表示装置450に画像情報を供給することで、表示装置450は指定された表示態様で案内情報GDを表示する。
ここで、案内情報GDの表示態様はユーザの指示により変更可能であることが望ましい。この場合、車両VCのユーザは、入力部300から指示を入力して表示態様を切り替える。例えば、操作入力装置310に表示態様の切り替え指示を割り当てたボタン等を構成し、ユーザが所望する表示態様に対応するボタンを操作することで、表示態様の切替指示をナビゲーション装置100に入力する。より詳細には、例えば、輪郭のみの表示態様に切り替えるための「輪郭」ボタンや、透過的に塗りつぶした表示態様に切り替えるための「透過」ボタンなどを操作入力装置310に構成する。そして、表示制御部142が、ユーザによる操作入力装置310の操作に応じて、操作されたボタンに対応する表示態様を指定して表示装置450に画像表示させる。
なお、上記のような「透過表示」に関する表示態様の切替だけでなく、案内画像GD等の表示/非表示の切替をユーザの指示によっておこなってもよい。すなわち、案内画像GDを透過的に表示させた場合であっても、例えば、周囲の安全確認をおこなう時などには、画像表示がない方が好ましいこともある。このような場合に、ユーザ(特に運転者)の指示により表示態様を「非表示」にし、案内画像GDを表示させないようにすることで、運転者が必要とする視界を確保することができる。そして、案内画像GDによる案内が必要になった際に、ユーザの指示によって表示態様を「非表示」から「表示」に切り替えることで、再度ナビゲーションを受けることができる。この場合、例えば、表示態様を「非表示」に切り替えるための「非表示」ボタンや、表示態様を「表示」に切り替えるための「表示」ボタンなどを操作入力装置310に構成する。表示制御部142は、ユーザによる操作入力装置310の操作に応じて、操作されたボタンに対応する表示態様を指定して表示装置450を制御する。すなわち、表示装置450は、表示制御部142の制御により、表示していた画像を非表示にしたり、非表示としていた画像を再表示する。
このように、表示態様(出力態様)をユーザの指示によって切替可能とすることで、場面に応じて好適な表示態様を選択することができる。すなわち、より視認性の良好な表示態様にしたり、画像が不要な場合に非表示とすることで、安全性の向上を図ることができる。しかし、表示態様の切り替えを操作入力装置310でおこなう場合、操作時に操作入力装置310のボタン位置などの確認が必要となる場合がある。特に運転者が操作する場合、運転中に視線が操作入力装置310に向けられることとなり、安全上好ましくない場合もある。
したがって、表示態様の切替指示は、音声入力でおこなわれることが望ましい。すなわち、ユーザが所望する表示態様への切替指示を表す単語等を発話して、音声入力装置320に入力する。そして、入力制御部130の音声認識部131によって音声認識され、入力された音声がいずれの表示態様を指示するものであるかを認識する。より詳細には、各表示態様毎に切替指示を表す語(以下、「指示語」とする)を予め規定し、設定情報に含まれる語彙情報として記憶部160に記録しておく。ここでは、ユーザが任意に設定する指示語が、所定の指示内容に対応付けられて記録される。例えば、指示語を「輪郭」とした場合、指示内容「輪郭のみの表示態様に切り替え」に対応付ける。
制御部110は、認識された音声が規定された指示語のいずれかと一致する場合、当該指示語に対応する指示内容を表示制御部142に指示する。すなわち、例えば、ユーザが「輪郭」と発話すると、表示装置450に表示されている案内画像GDが輪郭のみの表示態様に切り替わる。同様に、例えば、「透過」、「表示」、「非表示」などとユーザが発話することにより、表示装置450における案内画像GDの表示態様が切り替わる。
このような音声入力による表示態様切替とすることにより、ユーザ(特に運転者)は、操作入力装置310などを操作することなく表示態様を所望のものに切り替えることができる。このため、運転者は視線を前方からそらさずに表示態様を切り替えることができ、運転中に表示態様の切替が必要となった場合でも、安全に実行することができる。
上記のような構成を有するナビゲーションシステム1の動作を以下説明する。まず、図8に示すフローチャートを参照して、本実施の形態にかかる「ナビゲーション処理」を説明する。本実施の形態では、自動車である車両VCにおいて、所望する目的地までの経路を車両VCの運転者等に案内する(ナビゲーションする)場合を例に以下説明する。なお、以下に説明する「ナビゲーション処理」は、電源投入などによってナビゲーション装置100が起動されたことを契機に開始される。また、「ナビゲーション処理」の開始に伴い、検知部200による検知動作も開始されるものとし、ナビゲーション装置100の制御部110は、検知部200による検知結果を示す情報(検知情報)を、検知情報取得部120を介して随時取得するものとする。
制御部110は、例えば、入力部300からユーザが入力した目的地に基づき、車両VCの現在位置から目的地までの経路を決定するとともに、当該経路上での「案内ポイント」(案内地点)を決定して、ワークエリアに保持する(ステップS101)。より詳細には、制御部110は、ユーザが入力した目的地の位置(緯度・経度など)を記憶部160の「地理情報」を参照して特定するとともに、位置・方向検知部210より車両VCの現在位置(緯度・経度など)を「出発地点」として特定する。そして、記憶部160の「地図情報」を参照して、特定した出発地点から目的地までの経路を決定する。さらに、当該経路上でユーザに案内すべき地点(例えば、右左折すべき交差点や利用する高速道路等の入り口など)を「案内ポイント」として特定し、「地理情報」を参照することで各案内ポイントの位置(緯度・経度など)を示す位置情報を取得する。取得した案内ポイントの位置情報は、例えば、出発地点から近い順に連続番号(例えば、「1、2、…、n」:以下、「案内番号」とする)を付した上でワークエリアに格納する。
運転者の操作により車両VCが走行を開始すると、制御部110は、案内番号を初期値「1」に設定し、当該案内番号に対応する案内ポイントから車両VCまでの距離Dを随時演算する(ステップS102)。ここでは、位置・方向検知部210によって随時検知される車両VCの位置と、ワークエリアに保持した当該案内ポイントの位置情報とに基づいて、制御部110が記憶部160の「地図情報」を参照し、車両VCの現在位置と当該案内ポイントまでの距離Dを随時演算する。
制御部110は、案内ポイントから車両VCまでの距離Dが所定値になったか否かを判別する(ステップS103)。ここで「所定値」とは、ナビゲーション装置100が案内情報を出力するときの車両VCの走行範囲(以下、「案内範囲NA」とする)を規定する距離の最大値である(以下、「距離Dmax」とする)。すなわち、図9(a)に示すように、案内ポイントから車両VCに向かって距離Dmaxまでの範囲が案内範囲NAとなる。本実施の形態では、車両VCが案内範囲NAを走行しているときに案内情報が出力される。ここで、案内範囲NAを規定する距離Dmaxは、所定の最高速度(以下、「速度Vmax」とする)を基準に予め規定される。
より詳細には、想定しうる最高速度(速度Vmax)で車両VCが走行している場合において、案内情報を認識した運転者が適切な操作をおこなうために必要な距離を距離Dmaxに設定する。例えば、交差点を曲がる場合において、走行速度が高い時には、十分手前から減速操作をおこなわなければ、交差点に到達した時点での速度が高すぎて曲がることができない場合がある。したがって、例えば、車両VCが速度Vmaxから停止状態(0km/h)となるまでに要する距離(いわゆる、制動距離)を示す実証結果もしくは理論値などに基づいて、距離Dmaxが規定されるものとする。この距離Dmaxを規定する上での基準となる速度Vmaxは、例えば、車両VCの性能上の最高速度(すなわち、車両VCが走行可能な速度の物理的上限)とすることができる。このような速度Vmaxに基づいて距離Dmaxを規定することで、車両VCがどのような速度で走行している場合であっても、適切に案内情報を出力することができる案内範囲NA内を規定することができる。なお、速度Vmaxの設定は任意とすることができ、例えば、交通安全上の推奨速度や道路交通規則(例えば、車両VCが走行している道路に設定されている制限速度)などを基準に設定してもよい。また、本実施の形態では、例として、速度Vmaxを「100km/h」とし、距離Dmaxが「500m」に設定されているものとする。
本実施の形態では、このように規定された案内範囲NAの端部(距離Dmax)となる地点に到達した時点での車両VCの車速に基づいて、案内情報を出力すべき地点(出力タイミング)を決定する。ここで、距離Dmaxとなる地点に到達してから案内ポイントに到達するまでの間の車両VCの車速を「速度Vx」とし、速度Vxに応じた案内情報の出力タイミングを規定するため距離(案内ポイントから車両VCまでの距離)を「距離Dx」とする。
本実施の形態では、速度Vxと距離Dxとを予め対応付けておき、速度Vxに対応する距離Dxに基づいて案内情報の出力タイミングを決定する。すなわち、案内ポイントから車両VCまでの距離が距離Dxとなった時点で案内情報が出力される。
ここで、距離Dxは、例えば、図10(a)のグラフに示すように、速度Vxと比例関係となるように設定される。すなわち、速度Vxが高いほど、距離Dxが長くなる。換言すれば、速度Vxが高いほど、より手前で案内情報が出力されることになる。これは、車速が速いほど、現在位置から案内ポイントに到達するまでの時間が短くなるため、運転者が案内ポイントで適切な操作が行えるよう、十分手前で案内情報を報知しておくためである。なお、速度Vxと距離Dxとの関係は、上記のような比例関係でなくてもよく、車両VCの性能等に基づいて規定されてもよい。
本実施の形態では、このような速度と距離との関係を、図10(b)に示すような「車速−距離対応表」として記憶部160に予め記録しておくものとする。なお、「車速−距離対応表」は、「設定情報」として記憶部160に記録されるものとする。制御部110は、記憶部160が記憶する「車速−距離対応表」を参照し、車両VCの車速に応じた案内情報の出力タイミングを決定することとなる。
図8のフローチャートに戻り、このような出力タイミングを決定するための処理の詳細を説明する。
制御部110は、車両VCと案内ポイントとの距離Dが距離Dmaxとなると(ステップS103:Yes)、検知情報取得部120を介して速度検知部220から取得した現在の車速(速度Vx)を示す車速情報を取得する。制御部110はさらに、取得した車速情報に基づいて、現在の車両VCの車速(速度Vx)が速度Vmax未満であるか否かを判別する(ステップS104)。
速度Vxが速度Vmax未満である場合(ステップS104:Yes)、制御部110は記憶部160の「車速−距離対応表」を参照し、速度Vxに対応する距離Dxを示す距離情報を取得して、ワークエリアに保持する。制御部110はさらに、案内ポイントから車両VCの現在位置までの距離Dが、ワークエリアに保持した距離情報に示される距離Dxとなったか否かを判別する(ステップS105)。
案内ポイントから車両VCの現在位置までの距離Dが距離Dxとなると(ステップS105:Yes)、制御部110は、その時点での速度Vxが所定の閾値以上であるか否かを判別する(ステップS106)。この閾値は、案内情報の出力を「音声出力」とするか「画像出力」とするかを決定するためのものである。本実施の形態では、車速が高いほどより手前で案内情報が出力されることになるため、高速走行をしている場合、案内情報が出力された時点では、実際の案内ポイント(交差点等)は相当距離前方にあり、場合によっては視認できないこともある。このような場合に、当該案内ポイントを的確に指し示す案内画像GDを表示装置450に表示することは困難である。したがって、速度が高い場合(高速域)は、案内情報を音声出力することが適当となる。本実施の形態では、車速が高速域であるか否かを判別するための基準となる速度を「閾値速度Vth」とする。
閾値速度Vthは、例えば、「車速−距離対応表」(図10(b))に設定されている距離Dxに基づいて規定することができる。すなわち、車両VCから案内ポイントが視認できる距離に対応する速度Vxの値を閾値速度Vthとして設定することで、案内ポイントを的確に指し示す案内画像GDを表示することができる。本実施の形態では、例として、閾値速度Vthを「80km/h」と設定する。なお、閾値速度Vthの設定は上記に限らず任意であり、例えば、ユーザの好みによって設定されてもよい。この場合、ユーザが指定した閾値速度Vthを示す情報が「設定情報」として予め記憶部160に記録されるものとする。
ステップS106で速度Vxが閾値速度Vth(80km/h)以上であると判別された場合(ステップS106:Yes)、制御部110は、音声信号生成部141を制御し、報音装置410から案内情報を音声出力する(ステップS107)。ここでは、距離Dxに応じた内容の案内情報が出力される。例えば、車両VCが距離Dmaxとなる地点に到達したときの速度Vxが80km/hであった場合、「車速−距離対応表」(図10(b))に基づき、対応する距離Dxが「300m」となる。この場合、図9(b)に示すように、車両VCが案内ポイントの300m手前に到達した時点で、「300m先を右折(左折)です」などといった内容の音声が報音装置410から出力される。
一方、速度Vxが閾値速度Vth未満である場合(ステップS106:No)、制御部110は表示制御部142を制御し、表示装置450に所定の案内画像GDを表示する。すなわち、案内情報を画像出力する(ステップS108)。例えば、車両VCが距離Dmaxとなる地点に到達したときの速度Vxが50km/hの場合、「車速−距離対応表」(図10(b))に基づき、対応する距離Dxが「100m」となる。この場合、図9(c)に示すように、車両VCが案内ポイントの100m手前に到達した時点で、案内ポイントでの進行方向を示す矢印などの画像が表示装置450に表示される。
この場合、現在の車速(速度Vx)に対応する距離Dxに応じて、表示制御部142が、案内画像GDのサイズや表示装置450上での表示領域などを決定して表示装置450に表示させる。例えば、図6に示すような、右左折すべき交差点の位置と進入方向を示す矢印を案内画像GDとして表示する場合、距離Dxに応じた案内画像GDのサイズや表示装置450での表示領域を予め規定しておく。ここでは、例えば、図11(a)に示すように、表示装置450の表示面に複数の領域(A1〜E5)を予め割り当てておくとともに、図11(b)に示すような「距離−画像対応表」を「設定情報」として記憶部160に予め用意する。図示するように、「距離−画像対応表」には、用意されている案内画像GD毎に、距離Dxに応じた「表示領域」と「表示サイズ」が規定される。ここで「表示サイズ」は、表示装置450の表示面サイズ(面積)に対する案内画像GDの面積比率(%)で規定するものとする。ここでは、距離Dxの値が大きいほど、案内画像GDのサイズが小さく、また、表示装置450の中央付近に表示されるよう規定される。
これは、車両VCの走行している道路(走行路)が直線で平坦であると仮定した場合、その道路の遙か先(消失点)は、表示装置450の表示領域のほぼ中央付近に収束するよう視認されることになるため(図6参照)、距離Dxが大きい場合(すなわち、案内ポイントが遠方にある場合)は、案内画像GDのサイズを小さくし、かつ、表示領域の中央付近に表示させることで、案内ポイントを的確に指し示すことができる。一方、車両VCが案内ポイント(例えば、交差点)に接近したとき(すなわち、距離Dxが小さい場合)は、当該案内ポイントは表示領域の右端もしくは左端側に視認されることになり、さらに接近するにしたがって、表示領域の下端側に大きく視認されることになる。よって、距離Dxが小さい場合は、案内画像GDのサイズを大きくし、かつ、表示領域の左右端側の下端側領域に表示させることで、的確に案内ポイントを指し示すことができる。
ここで例示した「距離−画像対応表」は、走行路が直線かつ平坦である場合を想定して設定されたものである。しかし、記憶部160の「地図情報」などに基づいて、走行路が湾曲(カーブ)や傾斜していると判断された場合は、湾曲方向や湾曲度、あるいは、勾配度などに応じて、「距離−画像対応表」に基づいて特定された表示領域を左右方向もしくは上下方向に適宜シフトさせることで、走行路が直線や平坦でない場合であっても案内画像GDの表示位置を適切なものとすることができる。このような処理により、案内画像GDを外部環境に調和させて表示装置450に表示することができ、ユーザは直感的に案内ポイントを認識することができる。このような案内画像GDの表示位置の決定は、現在の車速である速度Vxに対応する距離Dxに基づいてなされているため、案内画像GDは車両VCの車速に応じてそのサイズや表示位置が決定されることとなる。
図8に戻り、ステップS104で車速(速度Vx)が速度Vmaxである(もしくは、速度Vmax以上である)と判別された場合(ステップS104:No)、制御部110は、当該速度Vx(すなわち、速度Vmax)に対応する距離Dx(すなわち、距離Dmax)に応じた案内情報を報音装置410から音声出力する(ステップS107)。ここでは、報音装置410による音声出力によって案内情報を出力する。すなわち、本実施の形態での距離Dmaxは「500m」であるため、例えば、「500m先を左折(右折)です」などといった案内情報を音声出力する。ここで音声出力とするのは、車速が速く(最高速度Vmax)、案内ポイントまでの距離が長い(案内範囲NAの最大値)ためである。
制御部110は、車両VCが当該案内ポイントに到達したか否かを判別する(ステップS109)。ここでは、位置・方向検知部210により検知される車両VCの現在位置と、ワークエリアに保持されている案内ポイントの位置情報とに基づいて、車両VCが案内ポイントに到達したか否かが判別される。車両VCが案内ポイントに到達していない場合は(ステップS109:No)、ステップS104〜S108を繰り返す。すなわち、案内ポイントに到達するまで、案内ポイントまでの距離と車両VCの車速に応じた案内情報の出力を随時おこなう。ここで、案内情報が出力された場合、これに応じて運転者は減速操作をするものとする。したがって、車両VCが距離Dmaxとなる地点に到達してから案内ポイントに到達するまでの間、車両VCの車速(速度Vx)は次第に減少することとなる。よって、速度Vxに対応する距離Dxの値も次第に減少することになるので、速度の変化に応じた適切なタイミングで、適切な形式の案内情報が出力されることとなる。例えば、距離Dmaxとなる地点に到達した際の車両VCの速度が高速である場合、まず音声によって案内情報が出力され、これに応じて運転者は車両VCを減速させる。そして、車両VCの減速にしたがって、案内画像GDによる経路案内がおこなわれるようになる。
一方、車両VCが当該案内ポイントに到達した場合(ステップS109:Yes)、制御部110は、当該案内ポイントがステップS101で決定した案内ポイントの内の最終案内ポイントであるか否かを判別する(ステップS110)。
ここで、当該案内ポイントが最終案内ポイントでない場合(ステップS110:No)、制御部110は、案内番号を「+1」(インクリメント)して(ステップS111)、ステップS102〜S110を実行する。すなわち、次の案内番号に対応する案内ポイントについての案内情報出力を車両VCの車速に応じて随時実行する。
一方、車両VCが最終案内ポイントに到達した場合(ステップS110:Yes)は、「ナビゲーション処理」を終了する。
上記「ナビゲーション処理」の実行により、ナビゲーション装置100の制御部110は、車両VCの車速に基づいて、案内情報の出力タイミングを決定して出力する。また、車速に応じて、案内情報の出力形態を「音声出力」または「画像出力」に自動的に切り替える。ここで画像出力の場合には、さらに表示制御部142が、案内画像GDのサイズや表示位置を車速に応じて随時変化させて表示装置450に表示させる。なお、このようにして案内画像GDが表示装置450に表示されている間にユーザから表示態様の切替指示があれば、制御部110が割り込み処理を発生させ、表示制御部142によってユーザの指示に応じた表示態様に切り替えられる(「輪郭」や「透過」の切り替え、もしくは、表示・非表示の切り替え)。
以上説明したナビゲーション装置100によれば、ナビゲーションのための案内情報を、車両VCのフロントウィンドウFWに構成された透明な表示装置450に表示するので、ユーザ(運転者)は、前方の風景(外部環境)と案内情報を同時に視認することができる。また、案内情報は、車両VCの車速に応じて外部環境に調和するよう表示されるので、運転者は直感的に案内ポイント(交差点等)を認識することができる。さらに、案内情報の出力タイミングを車速に応じて決定しているので、例えば、高速走行時には案内ポイントの十分手前で案内情報が提供される。これにより、運転者は余裕を持って減速動作や操舵をおこなうことができ、案内情報に適切に対応することができる。すなわち、減速が間に合わずに案内ポイントを通過してしまったり、急ブレーキや急ハンドルなどといった安全上好ましくない操作をすることなく、指定された経路を走行することができる。
このようなナビゲーションシステム1に用いられる表示装置450は、上述したように、透明ディスプレイから構成されているので、例えば、図12(a)に示すように、車両VCの内部側に向かって所定の画像(図の例ではアルファベットの「B」)を表示装置450に表示させた場合、図12(b)に示すように、車両VCの外部からは、当該画像が左右方向に反転して表示されているように見ることができる。つまり、表示装置450が透明であるため、表示装置450に表示した画像は、車両VCの内部のみならず、車両VCの外部からも視認できることとなる。
ここで、画像を左右方向に反転して表示装置450に表示すれば、図12(c)に示すように、車両VCの外部から認識可能な画像を表示することができる。すなわち、表示画像の方向を制御することによって、車両VCの内部側を対象とした表示面(以下、「内側表示面」とする)と、車両VCの外部側を対象とした表示面(以下、「外側表示面」とする)とを表示装置450に構成することができる。表示装置450の内側表示面には、上述したナビゲーション動作における案内画像GDの他、各種警告情報(例えば、車両の異常を示す情報)などといった、車両VCのユーザを対象とした画像を表示させることができる。
一方、外側表示面には、例えば、対外的な内容を示す「定型画像」を適宜表示させることができる。「定型画像」は、例えば、広告や宣伝等を表す「広告画像」とすることができる。また、車両VCに対し盗難などの不正行為がおこなわれた場合に、例えば、「この車は盗難車です」などといったメッセージ等を示して外部に通報するための「通報画像」などとすることもできる。
ナビゲーション装置100によってこのような定型画像を表示する際の処理(「定型画像表示処理」)を図面を参照して説明する。まず、「広告画像」を表示させる場合(広告表示)の処理を図13に示すフローチャートを参照して説明する。
この「定型画像表示処理」は、例えば、車両VCの走行開始を契機に開始されるものとし、車両VCの停車中などに所定の広告画像を表示装置450に表示する。また、上述した「ナビゲーション処理」が実行されている場合は、並行して実行されるものとする。なお、処理実行中は、検知部200による検知結果を示す検知情報が、検知情報取得部120によって随時取得される。
制御部110は、走行している車両VCが停止状態となったか否かを判別する(ステップS210)。ここでは、速度検知部220が検知した車速に基づいて停止状態であるか否かを判別する。
車両VCが停止したと判別した場合(ステップS201:Yes)、制御部110はさらに、広告画像を表示してよいか否かを判別する(ステップS202)。ここでは、例えば、記憶部160に記憶されている「設定情報」や「地点情報」、および、検知情報取得部120が取得する各種「検知情報」などに基づいて、広告表示の適否が判別される。すなわち、「設定情報」に設定された「広告表示の要否」に基づいて表示するか否かが判別される他、「検知情報」に基づく車両VCの状態などによって、広告画像を表示すべきか否かを判別する。
例えば、車両VCの停止がブレーキペダルの操作のみによっておこなわれている場合、渋滞などによる一時的もしくは断続的な停止である可能性がある。このような場合、すぐに走行を再開する可能性があるので、広告表示をおこなうメリットが低いだけでなく、表示装置450での広告画像表示が断続的となり安全上も好ましくない。したがって、走行状態検知部240が検知するパーキングブレーキ(サイドブレーキ)の操作や変速機の状態(「ニュートラル」や「パーキング」)などに基づいて、車両VCが一定時間以上停止することが予測される場合に広告表示してもよいと判別する。その他、例えば、車両VCが高速道路を走行している場合には、停止しても広告表示すべきではないと判別してもよい。このような広告画像の表示条件は、ユーザなどによって適宜設定され、「設定情報」として記憶部160に格納されていてもよい。
ステップS202で広告表示が適当でないと判別された場合(ステップS202:No)には、ステップS201に戻り、車両VCの停止状態を検知する。
一方、広告表示してもよいと判別した場合(ステップS202:Yes)、制御部110は記憶部160から所定の広告画像を取得して(ステップS203)、ワークエリアに展開する。
制御部110は、表示制御部142を制御し、ステップS203で取得した広告画像(広告画像AD)を表示装置450の外側表示面に表示する(ステップS204)。つまり、図14(a)に示すように、車両VCの内部からみて反転表示となるよう広告画像ADを表示装置450に表示する。これにより、図14(b)に示すように、車両VCの外部から認識可能に広告画像ADが表示される。この場合、取得した画像を表示制御部142が反転させて表示装置450に表示することができる他、広告画像ADとして用いる画像は予め反転させた状態で記憶部160に格納しておいてもよい。
また、「ナビゲーション処理」によって表示装置450の内側表示面に案内画像GDが表示されている場合などには、内側表示面の表示を中断してから外側表示面に広告画像ADを表示させてもよい他、内側表示面に表示している案内画像GD等と重畳するよう、外側表示面に広告画像ADを表示してもよい。なお、広告画像ADは、車両VCの外部の者に視認させる必要があるため、案内画像GDとは異なり、透過的に表示させる必要はなく、むしろ不透過的に表示させることが好ましい。
図13に戻り、表示制御部142は、車両VCが走行を開始(再開)するまで、表示装置450の外側表示面に広告画像ADを表示する(ステップS205:No)。すなわち、制御部110が検知情報取得部120から取得した検知情報に基づいて、車両VCが走行を開始したか否かを判別する。ここでは、速度検知部220が検知した車両VCの車速や、走行状態検知部240が検知した走行系の動作などに基づいて、車両VCの走行開始を検知する。
車両VCが走行を開始したと判別すると(ステップS205:Yes)、制御部110は表示制御部142を制御し、広告画像ADの表示を終了する(ステップS206)。
制御部110は、広告表示動作終了までステップS201〜S206を繰り返す(ステップS207:No)。ここでは、例えば、ユーザにより広告表示の終了指示が入力部300から入力されたり、ナビゲーション装置100の電源OFFや、車両VCのエンジン停止などの検知、などによって広告表示動作を終了すべきか否かが判別される。広告表示動作の終了が判別されると(ステップS207:Yes)、「定型画像表示処理(広告表示)」を終了する。
上記処理によって、車両VCが停車した際に、表示装置450の外側表示面に所定の広告画像が表示される。これにより、例えば、信号待ちなどで停車中に広告画像が表示されるので、歩行者や対向車の搭乗者などに対して広告等を示すことができる。このような表示機能により、例えば、車両VCが企業等の社用車である場合には、自社の社名や商品広告などを車両VCを用いて表示することができる。あるいは、車体に広告塗装を施すことによって広告活動をおこなう車両に適用してもよい。本実施の形態では、車両VCが停車したことを車速等に基づいて検知して広告画像ADを表示するので、車両VCの走行中に広告画像ADによって運転者の視界が妨げられてしまうことがない。
また、本実施の形態にかかる表示装置450は、ELディスプレイで構成されているため、文字等に限られず多様な画像を広告画像ADとして表示することができる。すなわち、フルカラーの写真画像等が表示可能であることはもとより、動画像なども表示することができ、高い広告効果を得ることができる。さらに、本実施の形態にかかる表示装置450は、フロントウィンドウFWの面積の70%以上となる表示面積を有しているので、ほぼフロントウィンドウFWの全面に広告画像を表示することができ、表現力の高い広告表示をおこなうことができる。なお、広告画像ADの表示条件は任意であり、例えば、車両VCの駐車中(例えば、屋外の駐車場に駐車している場合など)に広告画像ADを表示するようにしてもよい。
次に、「定型情報」として車両VCに発生した異常を示す情報(異常情報)を表示する場合の処理(「定型画像表示処理(異常表示)」)を図15に示すフローチャートを参照して説明する。本実施の形態にかかるナビゲーション装置100は、例えば、車両VCが駐車状態(すなわち、エンジンが停止状態である場合など)であっても、例えば、待機電力によって機能の一部が動作するものとする(いわゆる、スタンバイ状態)。そして、「定型画像表示処理(異常表示)」は、ナビゲーション装置100の動作中に検知部200の異常検知部230が異常を検知したことを契機に開始されるものとする。すなわち、検知情報取得部120が、異常検知部230から検知情報(異常情報)を取得したことを契機に開始される。
制御部110は、取得された異常情報が「不正行為」を示すものであるか「車両異常」を示すものであるかを判別する(ステップS301)。
取得された異常情報が、車両VCの盗難や破壊などの「不正行為」を示す場合(ステップS301:Yes)、制御部110は記憶部160から所定の「通報画像」を取得し、表示制御部142によって表示装置450の外側表示面に表示する(ステップS302)。なお、「異常情報」が「不正行為」を示す例としては、車両VCの窓の破壊、ドアロックの破壊、不正なキーの使用、不正な手段での車両VCの始動、などが検出された場合が該当する。
ここで「通報画像」とは、車両VCに不正行為が行われていることを外部に通知するための画像であって、例えば、「この車は盗難車です」などのメッセージを示すものである。「通報画像」は、車両VCの外部の者に視認される必要があるので、図16(a)に示すように、表示装置450の外側表示面に通報画像EMが表示される。また、外部からの視認性を高めるために、通報画像EMは透過的な表示にはせず、不透過的に表示することが望ましい。
さらに、車両VCの外部の者に視認されやすいよう、表示制御部142によって所定の表示制御が適宜おこなわれることが好ましい。例えば、「この車は盗難車です」のメッセージの他に、「窃盗事件発生中」、「警察に通報してください」などといった複数のメッセージを用意して順次切替表示する。あるいは、通報画像EMを点滅表示させたり、目立つ色彩で表示してもよい。さらに、車両VCが停止状態である場合には、図16(b)に示すように、表示装置450の表示領域全体を不透過的に塗りつぶすように通報画像EMを表示することで、前方視界を妨げ、不正行為者が車両VCを運転できないようにして、盗難を抑止するようにしてもよい。
通報画像EMは、異常状態が正規の復旧動作によって復旧されるまで表示される(図15 ステップS303:No)。ここで「正規の復旧動作」とは、例えば、正規のキーを用いての解錠や、ユーザやナビゲーション装置100の製造・販売者のみが実施できる所定のリセット動作などである。
このような正規の復旧動作が実行されると(ステップS303:Yes)、制御部110は通報画像EMの表示を終了し(ステップS306)、処理を終了する。
一方、「異常情報」が、車両VCの走行上の異常を示す「車両異常」を示す場合(ステップS301:No)、制御部110は、記憶部160から所定の警告画像を取得し、表示制御部142によって表示装置450の内側表示面に表示する(ステップS304)。
ここでは、例えば、自動車のインストゥルメンタルパネル(インパネ)に表示される警告灯に該当する画像が警告画像ALとして表示される。警告画像ALの表示例を図16(c)に示す。図示するように、車両VCのユーザが認識可能となるように、表示装置450の内側表示面に警告画像ALが表示される。なお、車両VCの走行中に車両異常が発生する場合もあるので、運転者の視界を妨げないよう、警告画像ALは透過的に表示されることが望ましい(輪郭表示もしくは透過的塗りつぶし)。また、「ナビゲーション処理」によって、内側表示面に案内画像GDが表示されている場合は、案内画像GDの表示と並行して警告画像ALを表示する。この場合、案内画像GDと警告画像ALとが重畳しないよう、警告画像ALの表示位置が決定されることが望ましい。いずれの画像もユーザに視認されるべき情報であり、かつ、案内画像GDは車両VCの走行に応じて表示位置が随時変化するためである。
警告画像ALは、当該車両異常が解消されるまで表示される(ステップS305:No)。異常検知部230によって車両異常の解消が検出されると(ステップS305:Yes)、制御部110は表示制御部142を介して警告画像ALの表示を終了し(ステップS306)、処理を終了する。
以上の処理により、車両VCに異常が発生した場合、その旨を表示装置450に表示し、車両VCのユーザ、あるいは、車両VCの外部に通知することができる。これにより、車両異常に起因する事故の防止や、犯罪の抑止もしくは早期解決に寄与することとなる。本実施の形態では、フロントウィンドウFWに対応した表示装置450で画像表示をおこなうので、通報情報EMをフロントウィンドウFWのほぼ全面に表示することができ、効果的に外部に通知することができる。また、通常インパネなどに表示される警告画像ALを、フロントウィンドウFWに構成した表示装置450に表示するので、車両VCの走行中に車両異常が発生しても、運転者の視線を移動させることなくその旨を通知することができ、車両異常への対応を安全に促すことができる。
上記実施の形態では、表示装置450を車両VCのフロントウィンドウFWに構成するものとしたが、フロントウィンドウFWの他に、例えば、リアウィンドウ(後部窓)や側面の窓などに構成してもよい。また、表示装置450が構成される場所は窓部に限らず、例えば、メガネ型のディスプレイ装置やヘルメットのバイザーなどであってもよい。このような場合でも、ユーザの視界において、外部環境と重畳するよう透過的に案内画像等を表示することで、各種情報をユーザに直感的に認識させることができる。
また、上記実施の形態では、本発明をカーナビに適用した場合を例示したが、カーナビ機能を有しない表示システムとして提供されてもよい。この場合、上述した表示装置450を車両VCの窓部に構成し、広告画像ADや通報画像EMおよび警告画像ALを窓部に表示する。
また、上記実施の形態にかかるナビゲーションシステム1は、表示装置450以外の表示装置を備えていてもよく、あるいは、表示装置を備えない構成であってもよい。例えば、従来より自動車のダッシュボードなどに設置される液晶表示装置などをナビゲーションシステム1用の表示装置として用いてもよい。この場合、案内画像の表示タイミングを車両VCの車速に基づいて決定することで、車速に応じた適切な案内画像の表示を行うことができる。あるいは、このような従来の表示装置と、上記実施の形態にかかる表示装置450とを併用してもよい。この場合、例えば、目的地設定などの各種設定動作は従来の表示装置を用いて行い、ナビゲーション中の案内画像の表示には表示装置450を用いるなど、表示する画像の目的や用途に応じて表示装置を使い分けるようにしてもよい。
あるいは、表示装置を備えない構成とした場合、車両VCの車速に基づいて案内音声の出力タイミングを決定することで、車速に応じた適切な案内を行うことができる。
さらに、従来のカーナビ装置において、例えば、動作プログラムの書き換えにより機能を変更することができる場合、上述したような車両VCの車速に応じて出力タイミングを決定する動作を実行するプログラムを適用することで、従来のカーナビ装置でも、車速に応じた適切な案内を実現することができる。このようなプログラムは、例えば、CD−ROMやDVDなどの記録媒体に格納して提供することができる他、インターネットなどの通信媒体を介して提供することもできる。
上記実施の形態では、車両VCとして自動車を例に説明したが、自動車に限らずあらゆる車両に本発明を適用することができる。さらに、車両に限らずあらゆる移動体に本発明を適用することができる。すなわち、車両VCは、自動車に限らず、例えば、鉄道、船舶、航空機、などであってもよく、これらに本発明を適用することができる。
以上説明したように、本発明によれば、移動体(車両)の速度に応じた適切なナビゲーションを実現することができる。また、外部環境と重畳するよう画像情報を表示することで、安全性と利便性を両立した画像表示を行うことができる。さらに、透明なディスプレイを窓部に構成することで、移動体(車両)の内部だけでなく、外部に対する画像表示を行うことができ、有用な情報提供を実現することができる。