JP4440711B2 - 燃料電池用セルモジュール及びその製造方法、並びに燃料電池 - Google Patents
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Description
固体高分子電解質型燃料電池では、水素を燃料とした場合、アノードでは(1)式の反応が進行する。
H2 → 2H+ + 2e− …(1)
(1)式で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、カソードに到達する。そして、(1)式で生じたプロトンは、水と水和した状態で、固体高分子電解質膜内をアノード側からカソード側に、電気浸透により移動する。
また、酸素を酸化剤とした場合、カソードでは(2)式の反応が進行する。
2H+ + (1/2)O2 + 2e− → H2O …(2)
カソードで生成した水は、主としてガス拡散層を通り、外部へと排出される。
このように、燃料電池では、水以外の排出物がなく、クリーンな発電装置である。
固体高分子電解質型燃料電池の出力密度向上のために、固体高分子電解質膜としては非常に膜厚の薄いプロトン伝導性高分子膜が用いられている。この膜厚はすでに100μm以下のものが主流であり、さらなる出力密度向上のためにさらに薄い電解質膜を用いたとしても、単セルの厚みを現在のものより劇的に薄くすることはできない。同様に、触媒層、ガス拡散層及びセパレータ等についてもそれぞれ薄膜化が進んでいるが、それらすべての部材の薄膜化によっても、単位体積当たりの出力密度の向上には限界がある。従って、小型化の要求に対しても、今後充分に応えられなくなることが予想される。
また、前記セパレータには、通常、耐腐食性に優れたシート状のカーボン材料を用いる。このカーボン材料自体も高価であるが、さらに、平面状の膜・電極接合体の面全体にほぼ均一に燃料ガス及び酸化剤ガスを行き渡らせるために、前記セパレータの面上には、通常、ガス流路となる溝を微細加工するので、その加工によって、セパレータは非常に高価になってしまい、燃料電池の製造原価を押し上げていた。
以上の問題の他にも、平型の単セルには、前記ガス流路から燃料ガス及び酸化剤ガスが漏れ出さないように幾層にもスタックされた単セルの周縁を確実にシールすることが技術的に難しいこと、平面状の膜・電極接合体のたわみや変形に起因して発電効率が低下してしまうことがあることなど、多くの問題がある。
通常このような中空形状のセルモジュールを有する燃料電池では、平型で使用されるセパレータに相当する部材は使用する必要がない。そして、その内面と外面とにそれぞれ異なった種類のガスを供給して発電するので、特別にガス流路を形成する必要もない。従って、その製造においては、コストの低減が見込まれる。さらに、セルモジュールが3次元形状であるので、平型の単セルに比べて体積に対する比表面積が大きくとれ、体積当たりの発電出力密度の向上が見込める。
セルから導通を取る方法としては、平型の単セルからなるスタックでは、単セル同士を積み重ね、比較的強い圧力を印加して押し合わせる方法が一般的である。そして、その印加される圧力により、前記膜・電極接合体とガス拡散層及びセパレータ間が密着し、効果的に導通されている。
上記特許文献1では、集電材としてTi線を用い、それをPt担持電極に取り付けることが開示されている。特許文献2に開示されている円柱状の電気化学素子では、その端部同士を導電性接続パターンで電気的に接続していることが開示されている。また、特許文献3に開示されているチューブ状の燃料電池では、触媒層に接続された外部端子が集電材である。特許文献4では、触媒層にリード線を用いて集電電極を接続することが開示されている。そして、特許文献5では、線状の負極端子、正極端子をそれぞれ取り付けることが開示されている。
また、中空形状のセルモジュールは、平型と違い、電極と集電材の接触性を高めるための面圧を付与しにくい形状及び構造を有するため、導通が不十分となりやすい。
特に特許文献1〜5に記載されているように集電材として線材を用いる場合には、電極と集電材の間の接触面積が小さいため、面圧不足により、導通が不十分となる傾向がさらに大きい。
特に、前記ナノ柱状体の長さが200μm以上であるようにすることで、よりガス供給が良好に行われるようになり、担持された電極触媒金属を電極反応に有効に利用することができ、且つ、セルモジュールと集電材との電気的接続をより良好にすることができる。
前記プロトン伝導性物質の上に撥水化材をさらに有する場合には、電極反応で生成する生成水が三相界面から効率的に排除され、三相界面が形成される部位を多く保つことができる。
前記電極触媒金属の粒子径が前記ナノ柱状体の外径以下である場合には、単位体積当たりの反応に有効な触媒表面を大きくすることとなるので好ましい。
前記プロトン伝導性物質の厚みを1〜70μmとすることにより、三相界面を多く形成することができ、担持された電極触媒金属を電極反応に有効に利用することができる。
本発明に係る燃料電池用セルモジュールを備えた燃料電池は、中空電解質膜を有し、且つ、各構成部材間の電気的接続が良好なので、高い発電出力を示す。
図1は、中空形状のフッ素系イオン交換樹脂膜(中空電解質膜)と、その内面側及び外面側に一対の電極を配置し、さらに各電極に集電材を接続したセルモジュールの概略斜視図であって、一部を切断して内部を確認できるようにしている。図2は、本実施形態のセルモジュールの、長手方向に沿った(図1中B−B線に沿った)切断面を示す概略断面図である。また、図3は、図1において点線で囲った領域Aの拡大図であって、図1中のC−C線に沿った切断面の断面を示している。
従って、この場合、中空電解質膜の内側には、第一のカーボンファイバー層(CNT固定化集電材)12と第一のSUS管15とにより、電極及び集電材が一体化した部分が構成され、同様に、中空電解質膜の外側には、第二のカーボンファイバー層16と第二のSUS管19とにより、電極及び集電材が一体化した部分が構成される。
チューブ状中空電解質膜11の外径は特に制限されるものではないが、外径は0.01〜10mmであることが好ましく、0.1〜1mmであることがさらに好ましく、0.1〜0.5mmであることが特に好ましい。チューブ状中空電解質膜11の外径が0.01mm未満のものは、現時点では技術的な問題で製造することが難しく、一方、その外径が10mmを越えるものでは、占有体積に対する表面積があまり大きくならないため、得られるセルモジュールの単位体積当たりの発電出力を向上させる効果が十分に得られない場合がある。
また、上記の外径と膜厚の好ましい範囲から、内径の好ましい範囲は0.01〜10mmであり、より好ましくは0.1〜1mmであり、さらに好ましくは0.1〜0.5mmである。
上記フッ素系イオン交換樹脂膜を形成する重合体の重量平均分子量は、耐久性の観点から、5000以上であることが好ましい。
具体的に上記フッ素系交換樹脂膜以外のプロトン伝導性を有する中空電解質膜の例を示すと、スルホン酸基を有するポリスチレン系陽イオン交換膜などのポリオレフィンのような炭化水素を骨格として少なくともスルホン酸基、ホスホン酸基、及び、リン酸基等のプロトン交換基のうちから一種を有するもの、特表平11−503262号公報などに開示されている、ポリベンズイミダゾール、ポリピリミジン、ポリベンゾオキサゾールなどの塩基性高分子に強酸をドープした塩基性高分子と強酸との複合体からなる固体ポリマー電解質膜、ハイドロゲル化リン酸ガラス(春日敏宏、燃料電池、VOL.3、No.3、69頁、2004等参照)、多孔質性ガラスからなるプロトン伝導体(例えば、野上正行、化学と工業、第57巻、第4号、410頁、2004年)などの無機質のプロトン伝導体などが挙げられる。また、多孔質ガラスの細孔中に有機化合物を導入しプロトン伝導性を付与したもの(蔵岡孝治、菊川敬、矢澤哲夫、化学と工業、第57巻、第1号、41頁、2004年)などの有機−無機ハイブリッド固体電解質膜も使用可能である。
カーボンナノチューブ31は、200μm以上の長さとするのが望ましい。その長さが200μm未満になるとカーボンファイバー層12,16とフッ素系イオン交換樹脂膜11との間隔が狭くなりすぎるため、反応ガス成分の供給、拡散量が低下して発電効率が低下することがある。
また、電極触媒金属32の平均粒子径は、カーボンナノチューブ31の外径以下のサイズであることが好ましく、1〜3nm程度の範囲とするのが有効である。1nm未満では、現実的に作製が困難であり、触媒金属の有効面が現出しにくくなり、3nmより大きいと触媒効率が低下してしまい、燃料電池とした時に高い電圧は得られにくい。
なお、カーボンナノチューブ31の表面へのPt(電極触媒金属32)の担持は、例えば、塩化白金酸や白金硝酸溶液等の白金薬液のアルコール等の溶剤希釈液などを用いて行うことができ、その詳細については後述する。
本実施形態では、このように、プロトン伝導性物質としてナフィオンを用いているが、プロトン伝導性を有する皮膜形成可能な材料であればよく、好ましくは、前記中空電解質膜と同じ材料が用いられる。
また、ナフィオン層33等のプロトン伝導性物質の厚みは、1〜70nmであることが好ましく、10〜30nmであることがさらに好ましい。この厚みが1nm未満であると、前記カーボンナノチューブに担持された電極触媒金属へのプロトンの供給又は該電極触媒金属からのプロトンの供与が充分に行われないおそれがある。一方、この厚みが70nmを超えると、プロトン伝導性物質がカーボンナノチューブを覆い過ぎてしまい、そこに担持される電極触媒金属へのガスの供給が困難になってしまうおそれがある。
また、剛性をもつ管状の中空導電体を、第一の支持集電材として中空電解質膜の内面側に用いる場合には、積層のための基体として利用可能であり、例えば、中空導電体の第一のCNT固定化集電材や電解質膜などを順次、塗布等の方法で形成することができる。従って、この場合には、セルモジュール10を容易に作製することができるという利点もある。
上記支持集電体としては、多孔質の中空導電体が好ましく、耐腐食性及び入手しやすさの観点から特にSUS管であることが好ましい。
ただし、外側の支持集電材はセルモジュール10作製時の基体としては利用されないので、第二のカーボンファイバー層16を外側から押さえつける作用があればよい。従って、多孔質の中空導電体以外の任意の形状の導電性材料も好適に使用可能である。外側の支持集電材としては、例えば、線状のワイヤ状、粗に巻かれたスプリングワイヤ状、粗い網目状などを用いてもよい。
また、本実施形態では、中空電解質膜の内面側及び外面側に共にカーボンファイバー層12,16、すなわちCNT固定化集電材(ナノチューブを有する電極と集電材とが一体化した部分)を設けた例を示したが、片面側だけにCNT固定化集電材を設けても良い。
まず、必要に応じて、基体洗浄工程を行う。基体洗浄工程では、カーボンナノチューブを生成させるために使用する基体(本実施形態ではカーボンファイバー)の表面を洗浄する。例えば、基体であるカーボンファイバーを真空にした電気炉中で加熱処理することにより洗浄を行うことができる。
CNT生成触媒金属としては、Fe以外にPd、Co、Ni、W、Mo、Mn又はこれらの合金などが挙げられる。本実施形態の基体はカーボンファイバーであるが、上述した他の集電材を使用してもよい。本発明では、基体の上に蒸着によりFeからなるCNT生成触媒金属を所望の厚み(4nm)となるように均一に担持させてCNT生成触媒担持体を作製する。
原料ガス供給時のCNT生成触媒担持体の温度は、400℃以上とすることが好ましい。CNT生成触媒担持体の温度が上記範囲であると、量産レベルの生成速度を達成でき、また、径や長さ、配向性の均一なカーボンナノチューブを安定的に生成させることができる。特にCNT生成触媒担持体の温度を500℃〜1000℃とすることによって、均質なカーボンナノチューブをより効率よく生成させることができる。また、本工程における真空状態としては、一般に10−3〜10Pa程度が望ましい。
このようにして生成させたカーボンナノチューブは、基体であるカーボンファイバーの表面からほぼ垂直に立っており、カーボンファイバーの断面は円形であるので、カーボンナノチューブはカーボンファイバーを核として外側に向けて放射状に延びている。
セルモジュール10は、
(1)第一のSUS管(第一の中空導電体)を用意し、その外面側にCNT固定化カーボンファイバーを敷き詰めて接合し、第一のカーボンファイバー層を形成する第一のCNT固定化集電材固定工程と、
(2)その接合したカーボンファイバー上のカーボンナノチューブにPt(電極触媒金属)を担持する第一の電極触媒担持工程と、
(3)第一のカーボンファイバー層の外面側にフッ素系イオン交換樹脂膜11を形成する電解質膜形成工程と、
(4)その形成したイオン交換樹脂膜11の外面側にCNT固定化カーボンファイバーを敷き詰めて接合し、第二のカーボンファイバー層を形成する第二のCNT固定化集電材固定工程と、
(5)その接合したカーボンファイバーにPt(電極触媒金属)を担持する第二の電極触媒担持工程と、
(6)Ptを担持させた第二のカーボンファイバー層を外側から押さえつけて固定する第二のSUS管を設ける第二の支持集電材固定工程(本実施形態のように中空導電体固定工程とすることが好ましい)を行って作製される。
付与工程(7)でのナフィオン層33及びPTFE層34の形成は、ナフィオン溶液(プロトン伝導性物質の溶液)及びPTFE溶液(撥水化材の溶液)を用い、塗布法、浸漬法などの公知の方法により行うことができる。特に、精細なカーボンナノチューブの一本一本の表面に均一に付与できる点で特に浸漬法が好ましい。
上記のようにしてPtを担持させ、さらに必要に応じてナフィオン層33及びPTFE層34を設けた第2中間体を作製した後、次に電解質膜形成工程(3)を行い、その第2中間体のさらに外面側にフッ素系イオン交換樹脂膜11を形成して第3中間体を作製する。この形成方法は特に制限されない。例えば本実施形態のように、中空電解質膜としてフッ素系イオン交換樹脂膜11を使用する場合には、エタノール等の低級アルコールを主成分とする溶媒に溶解させたフッ素系イオン交換樹脂溶液を用意し、例えば、噴霧法、転写法、スクリーン印刷法、ローリング法等によって行える。あるいは、予め用意したフッ素系イオン交換樹脂膜を前記第2中間体の外面側に巻き、その巻いた状態を保ちながら該フッ素系イオン交換樹脂膜11のガラス転移点温度以上の温度を加えることで軟化させ、その後冷却することで接合(ホットプレス)し、第3中間体としてもよい。
ナノ柱状体は、それ自体が多くの物質に対して弱い付着性を持つので、本実施形態の場合、CNT固定化カーボンファイバーをフッ素イオン交換樹脂膜11等の電解質膜上に敷き詰めることで接合して第二のカーボンファイバー層13を形成させ、第4中間体とすることができる。また、無機質のプロトン伝導体を使用する場合のように、ナノ柱状体の付着性だけでは接合が不十分な場合には、例えば導電性接着剤を用いてCNT固定化集電材構成要素を接着してもよい。
第一のCNT固定化集電材固定工程でSUS管上にCNT固体化カーボンファイバーを固定する場合には融着が非常に有効であるが、第二のCNT固定化集電材固定工程で融着を行おうとすると電解質膜が劣化しやすいので、ナノ柱状体の付着力を利用するか又は接着剤のように融着以外の方法を行うことが好ましい。
第二の支持集電材固定工程(本実施形態では好ましい形態である第二の中空導電体固定工程)(6)では、前記第5中間体の外側に、中空導電体である第二のSUS管15を設けて、セルモジュール10を作製する。この方法としては、例えば、第二のSUS管を加熱等により膨張させ、その中空部内に上記第5中間体を挿入し、次に冷却して接合する方法等を挙げることができる。また、第二の支持集電材にバネ形状のものを用いる場合は、バネを拡げた状態で上記第5中間体をそのバネの内側に挿入し、バネの拡がりを元に戻す方法等を挙げることができる。
また、カーボンシートなどのシート状導電性材料を第二の支持集電材として使用する場合には、そのシート状導電性材料内面となる面に導電性接着剤を塗布した後、前記第5中間体を巻くことで接着して作製することができる。
例えば、前記CNT固定化集電材の構成要素(ここでは個々のCNT固定化カーボンファイバー)上に予め電極触媒を担持させ、その電極触媒を担持させたCNT固定化集電材を使用して、第一のCNT固定化集電材固定工程(1)及び/又は第二のCNT固定化集電材固定工程(4)を行うことで、第一の電極担持工程(2)及び/又は第二の電極触媒担持工程(5)を省くことができる。
また、本発明に係るセルモジュールとしては、一端が閉じている中空形状のセルモジュールも使用できる。この場合、セルモジュールの中空内部の一端が閉じているため、その中空内部に導入する反応ガスはチューブ内で消費しきることが好ましい。一般的に酸化剤ガスとして使用される空気中の真の反応ガスである酸素は、空気中に1/3以下しか含まれておらず、電極反応で酸素を全て消費した場合でも、後には窒素を主成分とする非反応性ガスが残される。従って、一端が閉じている中空形状のセルモジュールを使用する場合には、中空内部に導入する反応ガス又は反応液体を燃料ガスとし、外部側に空気などの酸化剤ガスを供給することが好ましい。
また、本発明における中空形状とはチューブ状に限られず、中空部を有し、当該中空部に反応ガスを流入させることで内面側の電極に電気化学反応に必要な反応成分を供給することができるものであればよい。
本実施形態のセルモジュール10によれば、CNT固定化集電材であるカーボンファイバー層12,16のカーボンファイバー40上に生成させたカーボンナノチューブ31上に電極触媒金属32を担持させ、且つ、その一部が中空電解質膜11に配向されて固定されているので、電極触媒金属32が電極面積比で高密度担持され、且つ、発電に際し供給される反応ガスは、カーボンナノチューブ31上に形成された三相界面付近まで容易に到達し、均一に拡散される。従って、カーボンファイバー40上のカーボンナノチューブ31を生成させた領域、そのなかでも特に中空電解質膜11に配向された部分は電極13,17として機能し、担持された電極触媒金属32は電極反応に効率よく利用される。
ナノ柱状体は、微視的には中空電解質膜と集電材間にほぼ垂直に多数乱立している。しかも、このナノ柱状体表面は良好な水の伝達路として作用しうる。ナノ柱状体上で集電材の近傍にある電極触媒は、ナノ柱状体表面からイオンを供給され気相から反応ガスを供給されることで電極反応を行い、発生した電荷は集電材へとホッピング等の機構で移動する。つまりナノ柱状体により、集電材の近傍に反応場が形成されることで、生じた電荷がホッピング等によりすぐに集電材に移動できるので、セルモジュールと集電材との電気的接続が良好になっていると考えられる。
本発明のセルモジュールの第2の実施形態を図5を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態のセルモジュールにおいて、CNT固定化集電材であるカーボンファイバー層を形成するカーボンファイバーを短い長さのカーボンファイバー断片で構成したものである。なお、発電のための燃料は、第1実施形態で使用した燃料を用いることができ、第1実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
カーボンファイバー層72,73において、カーボンファイバー断片上のカーボンナノチューブを生成させた領域、そのなかでも特に中空電解質膜11に配向された部分は電極13,17として機能し、カーボンナノチューブを生成させる基体であるカーボンファイバー断片は、集電材14,18として機能する。また、カーボンファイバー層72、73にそれぞれ隣接して配置される第一及び第二のSUS管15,19は、カーボンファイバー層72,73を補強すると共に集電機能を補助するために付加された支持集電材である。
前記第一のカーボンファイバー層72を中空導電体である第一のSUS管15上に形成し第1中間体を作製するには、例えば、まずカーボンナノチューブをその表面に生成させたカーボンファイバー断片を溶剤に分散させ、必要に応じ各種の添加剤を加えることでCNT固定化カーボンファイバー層形成用組成物を準備し、予め用意した第一のSUS管の外面側に前記CNT固定化カーボンファイバー層形成用組成物を塗工する第一のCNT固定化集電材塗工工程(1’)を行えばよい。溶剤として用いる液体には特に制限はないが、アセトンなどが好適であり、添加剤としては、導電性接着剤に使用される成分である導電性フィラー、バインダーである各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又はそれらバインダーの前駆体物質及びナフィオンなどが好適に用いられる。
この第3中間体の表面に前記第一のCNT固定化集電材塗工工程(1’)と同様の工程である第二のCNT固定化集電材塗工工程(4’)を行って、イオン交換樹脂膜11のさらに外面側に第二のカーボンファイバー層73を有する第4中間体を作製する。
そして、カーボンファイバー断片上に予め電極触媒を担持させ、それを使用して前記第一のCNT固定化集電材塗工工程(1’)及び/又は第二のCNT固定化集電材塗工工程(4’)を行うことにより、第一の電極触媒担持工程(2)及び/又は第二の電極触媒担持工程(5)を省くことができることも第1実施形態と同様である。
なお、第2実施形態では、CNT固定化集電材の構成要素がカーボンファイバー断片である例を示したが、他の導電性材料、例えば金属ファイバー断片、金属ワイヤ断片などでもよい。または、粉状のカーボン、金属、導電性セラミックなどでもよい。
11…フッ素系イオン交換樹脂膜(中空電解質膜)
12…第一のカーボンファイバー層(第一のCNT固定化集電材)
13…第一の電極(内面側電極)
14…第一の集電材(内面側集電材)
15…第一のSUS管(第一の中空導電体、内面側支持集電体)
16…第二のカーボンファイバー層(第二のCNT固定化集電材)
17…第二の電極(外面側電極)
18…第二の集電材(外面側集電材)
19…第二のSUS管(第二の中空導電体、外面側支持集電体)
20…孔
21…導線
22…導線
31…カーボンナノチューブ
32…電極触媒金属
33…ナフィオン層(プロトン伝導性物質層)
34…PTFE層(撥水層)
40…カーボンファイバー
51…導線
52…導線
60…燃料電池
61…セルモジュール集合体
70…セルモジュール
72…第一のカーボンファイバー層(第一のCNT固定化集電材)
73…第二のカーボンファイバー層(第二のCNT固定化集電材)
Claims (11)
- 中空電解質膜の内面及び外面に配置された一対の電極、および前記一対の電極にそれぞれ接続する集電材を有し、
前記中空電解質膜の内面又は外面のうち少なくとも一方において、前記集電材は1本又は2本以上の導電性ファイバーからなり、当該導電性ファイバーは、前記中空電解質膜の長手方向に整列されて前記電極に接続しており、当該電極は、直線上のナノ柱状体を有し、当該ナノ柱状体は前記導電性ファイバー上に略垂直に配向し、その一端で接合して設けられ、当該ナノ柱状体の一部は、前記中空電解質膜の膜面に対しても略垂直に配向し、且つその他端が当該中空電解質膜に接触しており、当該ナノ柱状体の表面上且つナノ柱状体間の隙間には電極触媒が分散されて担持されており、且つ、当該ナノ柱状体の表面にプロトン伝導性物質が設けられていることを特徴とする、燃料電池用セルモジュール。 - 前記中空電解質膜の内面又は外面のうち少なくとも一方に、電極触媒を担持したナノ柱状体を設けた前記集電材を介してさらに別の集電材を有する、請求項1に記載の燃料電池用セルモジュール。
- 前記ナノ柱状体の長さが200μm以上である、請求項1又は2に記載の燃料電池用セルモジュール。
- 前記電極触媒が白金又は白金と他の金属とからなる合金である、請求項1乃至3のいずれかに記載の燃料電池用セルモジュール。
- 前記プロトン伝導性物質の上に撥水化材をさらに有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の燃料電池用セルモジュール。
- 前記電極触媒の粒子径が前記ナノ柱状体の外径以下である、請求項1乃至5のいずれかに記載の燃料電池用セルモジュール。
- 前記プロトン伝導性物質の厚みが1〜70μmである、請求項1乃至6のいずれかに記載の燃料電池用セルモジュール。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載の燃料電池用セルモジュールを備えた燃料電池。
- 表面にナノ柱状体を設けた第一の集電材を第一の中空導電体の外周面に固定する第一の集電材固定工程と、
前記第一の集電材のナノ柱状体に電極触媒を担持する第一の電極触媒担持工程と、
電極触媒担持後の第一の集電材上に電解質を塗布して中空状電解質膜を形成する電解質膜形成工程と、
表面にナノ柱状体を設けた第二の集電材を前記中空状電解質膜の外周面に固定する第二の集電材固定工程と、
前記第二の集電材のナノ柱状体に電極触媒を担持する第二の電極触媒担持工程と、
電極触媒担持後の第二の集電材上に第二の中空導電体を固定する第二の中空導電体固定工程とを有し、且つ、
前記第一の電極触媒担持工程と前記電解質膜形成工程との間、及び/又は、前記第二の電極触媒担持工程と前記第二の中空導電体固定工程との間に、前記第一の集電材のナノ柱状体、及び/又は、前記第二の集電材のナノ柱状体の上にプロトン伝導性物質を設ける付与工程を有することを特徴とする燃料電池用セルモジュールの製造方法。 - 前記第一の集電材固定工程及び/又は前記第二の集電材固定工程において集電材を中空導電体上に融着又は接着剤により固定する請求項9に記載の燃料電池用セルモジュールの製造方法。
- 前記第一の集電材固定工程及び/又は前記第二の集電材固定工程において集電材を中空導電体上に塗布により固定する請求項9に記載の燃料電池用セルモジュールの製造方法。
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