JP4439628B2 - ローヘッド形電気ホイスト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、玉掛け性能を向上させるフックブロックを備えたローヘッド形電気ホイストに関する。
【0002】
【従来の技術】
工場等のクレーンの巻上装置として、荷の巻上支持体にワイヤロープを用いた電気ホイストが多用されている。電気ホイスト(普通形)は、図8に見られるように、クレーンガーダ15に敷設した横行レール16に沿って横行するトロリ17にドラムケース20を取り付け、このドラムケース20に内蔵したドラム(図2中ドラム18参照)でワイヤロープ19を巻取る構成である。ワイヤロープ19は、一端を前記ドラムに、他端をドラムケース20に固着して垂らし、最下点でフックブロック1を支持している。
【0003】
フックブロック1は、図9に見られるように、平行な2枚の支持プレート4,4の上部に、ワイヤロープ19を掛け廻すシーブ21を回転自在に支持し、同支持プレート4,4の下部にトラニオン5を揺動可能に支持している。巻上用フック3は、基端部を前記トラニオン5に軸着し、スラストベアリングを介して水平旋回可能にしている。こうして、巻上用フック3は、支持プレート4に対してトラニオン5が若干揺動できるのに伴って、トラニオン5と同一方向へ揺動できると共に、トラニオン5に対して水平旋回できるようになっている。巻上用フック3は、玉掛け用ワイヤロープ等の外れ止め22を備えているのが通例である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電気ホイストでは、荷に掛けた玉掛け用ワイヤロープ等のアイを巻上用フックに掛ける場合、特に問題はなかった。この作業は、巻上用フックに掛けるべき玉掛け用ワイヤロープ側に可撓性があるため、それほど難しいものではない。しかし、例えば、吊り上げ対象となる荷に、固定された吊り環が設けられ、この吊り環に直接フックブロックの巻上用フックを掛ける場合には、巻上用フックの自由度が制限されていることから、作業上の問題が生じていた。
【0005】
上記問題は、具体的に次のように現れる(図10参照)。作業者は、巻上用フック3の背面を持って吊り環14に掛けるため、フックブロック1と吊り環14との相対的位置関係を適度に調整しなければならず、細かな電気ホイストの操作を強いられていた。また、先に述べたように、巻上用フック3は支持プレート4に支持されたトラニオン5の揺動方向と同一方向には動かすことができるものの、前記揺動方向以外には動かすことができず、降下させた巻上用フック3の揺動方向と吊り環14の開口向きが異なると、とたんに巻上用フック3を吊り環14に掛けにくくなるのである。
【0006】
こうした実作業上での問題は、吊り環14に巻上用フック3を掛ける際に、巻上用フック3の外れ止め22の損傷を招いたり、作業者が吊り環14と巻上用フック3との間に指を挟んだりして怪我をするといった実害として現れ、改善が望まれていた。そこで、こうした問題点を解消し、荷を吊り上げる際の態様がどのようなものであっても、容易に巻上用フック3を吊り環14に掛けることができるように、問題点の要素がフックブロック本体側と巻上用フックとの接続形態にあるものとして、前記接続形態の改良を目指して、検討した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
検討の結果、開発したものが、フックブロックの軸芯から垂下した支持プレートの下部にトラニオンを揺動可能に取付け、前記トラニオンの中央部へスラストベアリングを介してハンガーボルトを水平旋回可能に支持し、外れ止めを備えた巻上用フックの基端部と前記ハンガーボルトの下端部とを可撓性紐状体で接続したローヘッド形電気ホイストである。このローヘッド形電気ホイストでは、可撓性紐状体を、チェーン、ワイヤロープ又はスリングベルトのいずれか一つで構成する。可撓性紐状体をワイヤロープで構成した場合、ワイヤロープを樹脂等で被覆する。
【0008】
可撓性紐状体は、自由に曲げることができ、上述した従来の巻上用フックの取扱いにおける問題点が発生しない。吊り下げる荷の荷重が集中することから、本発明に言う可撓性紐状体には、強度、特に引っ張り強度に関して制限があり、(1)チェーン、(2)ワイヤロープ、(3)スリングベルト、又はこれらの相当品から採用することになる。フックブロックの軸芯から垂下した支持プレートの下端部にトラニオンを取付け、このトラニオンから垂下したハンガーボルトと巻上用フックとを接続する場合、ハンガーボルト及び巻上用フックの各連結ピンに嵌め込む両端を有するチェーンが最も安全性が高い。これに対して、ワイヤロープやスリングベルトは、自由に曲げることができ、取扱い上好ましい利点を有している。ワイヤロープは、全体を樹脂で被覆すると、引っ張り強度が増し、ワイヤロープ表面に塗布してあるロープ油が付着して作業者の手を汚すこともなくなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。図1は本発明を適用したローヘッド形電気ホイストの正面図、図2は同側面図、図3はフックブロック1以下の部分拡大斜視図である。本例では、可撓性紐状体としてチェーン2を採用している。図1及び図2から明らかなように、チェーン2により巻上用フック3の移動方向や向き等の自由度を高めるには、どうしても従来よりチェーン2の長さだけフックブロック1からの垂下距離が長くなる。このため、本発明は、ヘッドルーム寸法(図1中H)が小さなローヘッド形電気ホイストに適用することが好ましい。ローヘッド形電気ホイストに本発明を適用した場合、前記ヘッドルーム寸法Hは、従来の普通形電気ホイストと比較して大差がなくなる(図1及び図8比較対照)。
【0010】
本例は、フックブロック1の軸芯から垂下した支持プレート4,4の下部に、トラニオン5を揺動可能に取付け、このトラニオン5の中央部へスラストベアリングを介してハンガーボルト6を水平旋回可能に支持して、ハンガーボルト6と巻上用フック3とをチェーン2で接続している。図3に見られるように、チェーン2両端の各リンク7は、ハンガーボルト6及び巻上用フック3それぞれの連結ピン8,8にしっかりと嵌め込まれているので、抜け落ちる心配はなく、安全性は高い。また、従来と比較して分かるように、部材的にはハンガーボルト6及びチェーン2が増えただけであり、残余の部材には特別な加工も施しておらず、そのまま流用している。これは、現存の電気ホイストでも容易に改造して本発明を実現できること、仮に新規に製造した場合でも製造コストが安く抑えられることを意味している。
【0011】
図4は可撓性紐状体としてワイヤロープ9を用いた例の図3相当斜視図、図5はワイヤロープ9の断面図であり、図6は可撓性紐状体としてスリングベルト10を用いた例の図3相当斜視図である。ワイヤロープ9又はスリングベルト10を用いた場合、図4又は図6に見られるように、上記例示のチェーンをそのまま代替した構成で本発明を適用できる。
【0012】
ワイヤロープ9の場合、両端をシンブル付アイクランプ加工として、上記チェーンと同様にハンガーボルト6及び巻上用フック3それぞれの連結ピン8,8にしっかりと嵌め込む。ワイヤロープ9は、図5に見られるように、構成要素であるストランド11を樹脂12で被覆して用いると、引っ張り強度が向上するだけでなく、ワイヤロープ9表面に塗布されたロープ油が付着して作業者の手を汚すこともなくなる。スリングベルト10の場合、両端はアイ部を作って縫製加工とし、上記チェーンと同様にハンガーボルト6及び巻上用フック3それぞれの連結ピン8,8にしっかり嵌め込む。スリングベルト10は、玉掛け用に利用されていることからも、引っ張り強度には問題がなく、またワイヤロープのようにロープ油が付着して作業者の手を汚すと言った心配もない。構造的に平坦断面になるので、面直角方向に曲がりやすいが、面方向に曲がりにくい。面方向に巻上用フック3を向ける場合には、スリングベルト10を捻るか、トラニオン5で巻上用フック3の向きを水平旋回させるとよい。
【0013】
図7は図1以下に例示した電気ホイストを用いて、荷13に設けた吊り環14に、外れ止め22を備えた巻上用フック3を掛けようとしている作業状態を表した正面図である。本発明の適用により、必然的にフックブロック1の軸芯から巻上用フック3までの距離が長くなる結果、巻上用フック3の変位幅が大きくなり、巻上用フック3の取扱い性が改善される。また、本例ではチェーン2(可撓性紐状体)を自由に曲げることができる。こうした取扱い性の改善と巻上用フックの移動方向又は向きの自由度との相乗効果により、フックブロック1が吊り環14に対して相対的に低い位置に下がったり、外れ止め22を備えた巻上用フック3が吊り環14の開口方向とは違った向きに向いていても、容易に外れ止め22を備えた巻上用フック3を吊り環14に掛けることができるのである。
【0014】
【発明の効果】
本発明によって、荷を吊り上げる際の態様がどのようなものであっても、容易に巻上用フックを吊り環に掛けることができるようになる。これは、上述したように、可撓性紐状体が自由に曲がって巻上用フックを任意の方向へ動かし、また向きを変えることができるようになるほか、巻上用フックの移動範囲が増えるからである。これにより、荷に設けた吊り環に巻上用フックを掛けるだけでなく、様々な荷役作業における玉掛け作業が迅速に実施できるようになり、作業能率の向上をもたらす。
【0015】
こうした玉掛け作業の改善は、作業能率の向上だけでなく、作業自体に内在する問題を解決する。すなわち、外れ止めの損傷を招かなくなったり、作業者が吊り環と巻上用フックとの間に指を挟んで怪我をするといった実害が現れなくなる。このように、本発明は玉掛け作業における安全性の向上に効果があるのである。このほか、本発明の電気ホイストは、従来の普通形電気ホイストと比較してもヘッドルーム寸法に大差がなく、クレーンの揚程に及ぼす影響がない利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したローヘッド形電気ホイストの正面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】フックブロック以下の部分拡大斜視図である。
【図4】可撓性紐状体としてワイヤロープを用いた例の図3相当斜視図である。
【図5】ワイヤロープの断面図である。
【図6】可撓性紐状体としてスリングベルトを用いた例の図3相当斜視図である。
【図7】図1以下に例示した電気ホイストを用いて、荷に設けた吊り環に巻上用フックを掛けようとしている作業状態を表した正面図である。
【図8】従来の普通形電気ホイストの正面図である。
【図9】従来のフックブロックの縦断面図である。
【図10】従来の電気ホイストを用いて、荷に設けた吊り環に巻上用フックを掛けようとしている作業状態を表した正面図である。
【符号の説明】
1 フックブロック
2 チェーン(可撓性紐状体)
3 巻上用フック
4 支持プレート
5 トラニオン
6 ハンガーボルト
Claims (2)
- フックブロックの軸芯から垂下した支持プレートの下部にトラニオンを揺動可能に取付け、前記トラニオンの中央部へスラストベアリングを介してハンガーボルトを水平旋回可能に支持し、外れ止めを備えた巻上用フックの基端部と前記ハンガーボルトの下端部とを可撓性紐状体で接続して構成され、巻上用フックの自由度を高めたことを特徴とするローヘッド形電気ホイスト。
- 可撓性紐状体を、チェーン、ワイヤロープ、樹脂で被覆したワイヤロープ又はスリングベルトのいずれか一つで構成したことを特徴とする請求項1記載のローヘッド形電気ホイスト。
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