本発明の最良の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、本発明に係る表面実装機(以下、実装機と略す)の第1の実施形態を概略的に示している。同図に示すように、実装機の基台1上には、プリント基板搬送用のコンベア2が配置され、プリント基板3がこのコンベア2上を搬送されて所定の実装作業位置(同図に示すプリント基板の位置)で停止されるようになっている。なお、当実施形態では、図1及び図2の右側からプリント基板3が搬入され、左側へ搬出されるようになっている。
上記コンベア2の両側には部品供給部4が配置されている。これらの部品供給部4には、例えば多数列のテープフィーダー4a(部品吸着ポイント)がX軸方向に並べて設けられている。各テープフィーダー4aは、各々IC、トランジスタ、コンデンサ等の小片状のチップ部品を所定間隔おきに収納、保持したテープがリールから導出されるように構成されており、後述するヘッドユニット6により部品が取出されるに伴い間欠的に部品を繰り出すように構成されている。
上記基台1の上方には、部品装着用のヘッドユニット6が装備されている。このヘッドユニット6は、部品供給部4とプリント基板3が位置する実装作業位置とにわたって移動可能とされ、X軸方向(コンベア2の方向)及びY軸方向(水平面上でX軸と直交する方向)に移動することができるようになっている。
すなわち、基台1上には、Y軸方向の固定レール7と、Y軸サーボモータ9により回転駆動されるボールねじ軸8とが配設され、上記固定レール7上にヘッドユニット支持部材11が配置されて、この支持部材11に設けられたナット部分12が上記ボールねじ軸8に螺合している。また、上記支持部材11には、X軸方向のガイド部材13と、X軸サーボモータ15により駆動されるボールねじ軸14とが配設され、上記ガイド部材13にヘッドユニット6が移動可能に保持され、このヘッドユニット6に設けられたナット部分(図示省略)が上記ボールねじ軸14に螺合している。そして、Y軸サーボモータ9の作動により上記支持部材11がY軸方向に移動するとともに、X軸サーボモータ15の作動によりヘッドユニット6が支持部材11に対してX軸方向に移動するようになっている。
なお、Y軸サーボモータ9及びX軸サーボモータ15には、それぞれエンコーダ9a,15aが設けられており、これにより上記ヘッドユニット6の移動位置が検出されるようになっている。
上記ヘッドユニット6には、軸状に構成された複数の実装用ヘッド16が設けられており、当実施形態では、6本の実装用ヘッド16がX軸方向に等間隔で一列に並べられた状態で搭載されている。なお、以下の説明において特に各実装用ヘッド16を区別する必要がある場合には、図1及び図2の右端(基板搬入側)から順に第1実装用ヘッド、第2実装用ヘッド……第6実装用ヘッドと呼ぶことにする。
これらの実装用ヘッド16は、それぞれヘッドユニット6のフレームに対してZ軸方向の移動及びR軸(ノズル中心軸)回りの回転が可能とされ、サーボモータを駆動源とする昇降駆動手段および回転駆動手段により駆動されるようになっている。また、各実装用ヘッド16には、その先端(下端)に吸着ノズル16aが装着されており、図外の負圧供給手段から吸着ノズル先端に負圧が供給されることにより、この負圧による吸引力で部品を吸着するようになっている。
前記基台1上には、さらにヘッドユニット6が部品供給部4と実装作業位置との間を移動する際に、実装用ヘッド16に吸着された部品をその真下から撮像するための一対の撮像ユニット20,21が設けられている。
撮像ユニット20,21は、図1及び図3に示すように、コンベア2とその両側の部品供給部4との間の各スペースに設けられており、それぞれ吸着部品を撮像するための一対のカメラ26a,26b(撮像手段)と照明装置27とを一体にX軸方向に移動させるように構成されている。すなわち、前記基台1上であってコンベア2と部品供給部4との間のスペースには、X軸方向に延びる互いに平行な一対の固定レール22とサーボモータ23により回転駆動されるX軸方向のボールねじ軸24とが設けられ、前記固定レール22に可動テーブル25が移動可能に装着されるとともにこの可動テーブル25に対して前記ボールねじ軸24が螺合挿着されている。そして、前記カメラ26a,26bおよび照明装置27が前記可動テーブル25に一体に搭載され、前記サーボモータ23の作動により前記カメラ26a,26b等が可動テーブル25と一体に固定レール22に沿ってX軸方向に移動するように構成されている。なお、撮像ユニット20,21のサーボモータ23には、それぞれエンコーダ23a(図5に示す)が設けられており、これにより可動テーブル25の移動位置が検出されるようになっている。
前記カメラ26a,26bは、いずれもCCDラインセンサと結像レンズ等とを内蔵したカメラであって可動テーブル25に対して上向きに設けられている。また、これらカメラ26a,26bは、図4に模式的に示すように可動テーブル25に対してその光軸(Z軸)回りに回転可能に支持されており、サーボモータ30(図5参照)を駆動源とする回転駆動機構により同方向に同角度だけ連動して回転駆動されるように構成されている。つまり、この実施形態では、このコントローラ40および前記回転機構等により、撮像手段の向きを変更する本発明の変更手段が構成されている。なお、図4中、符号260a,260bは各カメラ26a,26bに内蔵されるCCDラインセンサの素子列を示している。なお、各カメラ26a,26bには、一定の方向の光のみを素子列に導くスリットが素子列に対向して設けられている。
照明装置27は、図3に示すように、前記両カメラ26a,26bの全周に亘って配設される複数のLED27aを有している。これらLED27aは各カメラ26a,26bの光軸に向って斜め上方に指向する状態で可動テーブル25に固定されている。つまり、ヘッドユニット6が可動テーブル25の上方を通過すると、前記LED27aから射出される照明光が実装用ヘッド16に吸着された部品の下面で反射し、その反射光が前記カメラ26a,26bのCCDラインセンサに入射することにより、吸着部品の下面像(真下像)が撮像されるように構成されている。
なお、当実施形態では、上記実装用ヘッド16のうち第1〜第3実装用ヘッド16に吸着された部品の像が一方側のカメラ26aのCCDラインセンサ(撮像素子)に結像する一方、第4〜第6実装用ヘッド16の吸着部品の像が他方側のカメラ26bのCCDラインセンサ(撮像素子)に結像するようにカメラ26a,26bにおけるCCDラインセンサの素子数が設定され、またレンズ等の光学系が構成されている。
図5は、上記実装機の制御系を概略ブロック図で示している。
当実施形態の実装機は、論理演算を実行する周知のCPU、そのCPUを制御する種々のプログラムなどを予め記憶するROMおよび装置動作中に種々のデータを一時的に記憶するRAM等から構成されるコントローラ40を有している。このコントローラ40は、その機能構成として主制御部42、軸制御部44、撮像ユニット駆動制御部45、照明制御部46、カメラ制御部47、カメラ姿勢切換制御部48および画像処理部49を含んでいる。
主制御部42は、実装機の動作を統括的に制御するもので、予め記憶されたプログラムに従ってヘッドユニット6等を作動させるべく軸制御部44を介してサーボモータ9,15等の駆動を制御するとともに、カメラ26a,26bにより撮像される部品画像に基づいて部品の吸着状態、具体的にはノズル中心に対するX軸、Y軸方向の吸着ずれ量およびノズル中心軸(R軸)回りの吸着ずれ量の演算を行うものである。
また、実装作業時には、後述するように、図外の実装データ記憶部に記憶されている基板情報、すなわちプリント基板3の種類とこれに実装する部品の種類および実装位置等に関する情報に基づきヘッドユニット6による部品の搬送経路(ヘッドユニット6の移動経路)を求めるとともに、この移動経路に基づき前記カメラ26a,26bによる撮像位置(座標位置)および前記カメラ26a,26bの向き(光軸回りの回転角度)を演算する。なお、実装機の具体的な動作制御については後述する。
軸制御部44は、エンコーダ9a,15aからの信号によってヘッドユニット6の現在位置(X,Y)を検知しながら、Y軸サーボモータ9及びX軸サーボモータ15を駆動制御してヘッドユニット6を所定の位置に移動させる。なお、図示を省略しているが、軸制御部44は、実装用ヘッド16の昇降駆動手段および回転駆動手段の各サーボモータについても同様に駆動制御を行う。
撮像ユニット駆動制御部45は、エンコーダ23aからの信号によって可動テーブル25(カメラ26a,26b)の現在位置(X座標)を検知しながら、サーボモータ23を駆動制御して可動テーブル25を上記撮像位置に移動させる。
照明制御部46およびカメラ制御部47は、撮像ユニット20,21に搭載される照明装置27および各カメラ26a,26bを駆動制御するものである。
カメラ姿勢切換制御部48は、カメラ26a,26bを回転制御するもので、サーボモータ30に組込まれるエンコーダ30aからの信号によってカメラ26a,26bの回転角度位置を検知しながらサーボモータ30の駆動を制御することによりカメラ26a,26bを回転させ、その向き、すなわち素子列260a,260bの並び方向を変更する。
画像処理部49は、カメラ26a,26bから出力される画像信号に所定の処理を施すことにより部品認識に適した画像データを生成して主制御部42に出力するものである。
次に、上記コントローラ40による実装機の動作制御の一例について図6のフローチャートに従って説明する。
実装動作では、まず、コントローラ40の実装データ記憶部に記憶された基板情報から吸着部品情報、すなわち最初に部品供給部4から取出す対象部品の種類、対象部品が供給されるテープフィーダー4aの位置、対象部品の種類と該部品を吸着する実装用ヘッド16の位置、吸着順序等に関する情報と、対象部品のプリント基板3上の実装位置、実装順序等に関する搭載位置情報とを読出す(ステップS1,S2)。
そして、部品供給部4における最終部品の吸着位置とプリント基板3上の最初の部品実装位置とを直線で結んだ部品の搬送経路を求め、この搬送経路に基づきカメラ26a,26bによる吸着部品の撮像位置およびカメラ26a,26bの回転角度を求める(ステップS3)。具体的には、ヘッドユニット6の前記搬送経路下方にカメラ26a,26bが配置され得るように撮像位置を求めるとともに、図4の実線に示すようにCCDラインセンサの素子列260a,260bがヘッドユニット6による部品の搬送経路Rと直交するように各カメラ26a,26bの回転角度を求める。
次いで、カメラ26a,26bを撮像位置に配置すべく前記サーボモータ23を駆動制御して可動テーブル25を移動させるとともに、前記サーボモータ30を駆動制御して各カメラ26a,26bの向きを変更する(ステップS4)。
ステップS5では、ヘッドユニット6を部品供給部4に移動させて各実装用ヘッド16によりテープフィーダー4aから部品を吸着させる。この際、可能な場合には複数の実装用ヘッド16により同時にテープフィーダー4aから部品を吸着させる。なお、ステップS5と並行してステップS3,S4を実施してもよい。
全ての実装用ヘッド16による部品の吸着が完了すると、カメラ26a,26bが上記撮像位置に配置されたか否かを判断し(ステップS6)、ここでYESと判断した場合には、部品供給部4からプリント基板3に向ってステップS3で求めた部品搬送経路に沿って直線的にヘッドユニット6を移動させるとともに、この移動中、前記照明装置27を点灯制御することにより、ヘッドユニット6がカメラ26a,26bの上方を通過する間に各実装用ヘッド16に吸着された部品の撮像処理を行う(ステップS7)。すなわち、ヘッドユニット6がカメラ26a,26bを通過する際に照明装置27を点灯させることにより、照明光が吸着部品の下面で反射してその反射光がカメラ26a,26bに入射し、ヘッドユニット6の移動に伴い主走査方向(素子列260a,260bの方向)一ライン分の吸着部品像が副走査方向(素子列260a,260bと直交する方向;部品搬送方向)に連続的に各カメラ26a,26bにより撮像されることとなる。この際、第1〜第3の実装用ヘッド16による吸着部品が一方側のカメラ26aによって、第4〜第6の実装用ヘッド16による吸着部品が他方側のカメラ26bによってそれぞれ撮像される。つまり、カメラ26a,26bのCCDラインセンサの素子列260a,260bは、両方合わせて第1〜第6の各実装用ヘッド16の吸着部品像を全て取り込み可能な十分な素子数とされている。さらに、カメラ26a,26bの向きおよび部品搬送方向によっては、第3又は第4のいずれか一方あるいは両方の実装用ヘッド16の吸着部品がカメラ26a,26bにそれぞれ撮像されることが生じる場合が有り得るが、この場合には、画像処理の過程で第1〜第6の各実装用ヘッド16の吸着部品像が識別可能に取り出される。
カメラ26a,26bの上方を通過した後、各吸着部品の画像に基づいて各実装用ヘッド16による部品の吸着状態を画像認識し、吸着ノズル16aに対する部品のX軸、Y軸およびR軸回りの吸着位置誤差を求めるとともに、この誤差に基づいて補正量(ΔX,ΔY,ΔR)を演算する(ステップS8)。そして、この補正量に基づいて目標位置の再設定を行い、この再設定された目標位置に従ってヘッドユニット6を駆動制御することにより、各実装用ヘッド16に吸着された部品を順次プリント基板3上に実装する(ステップS9)。
次いで、プリント基板3に対する全ての実装処理が終了したか否かを判断し(ステップS10)、ここでNOと判断した場合には、次の吸着部品情報を読出すとともにプリント基板3において最後に部品を実装した位置と次に部品を吸着するテープフィーダー4aとを直線で結ぶヘッドユニット6の移動経路を求め(ステップS12)、この移動経路に基づいて撮像位置(カメラ26a,26bを配置すべき位置)を演算し(ステップS13)、その撮像位置にカメラ26a,26bを配置すべく前記サーボモータ23を駆動制御して可動テーブル25を移動させる(ステップS14)。ステップS13,S14では、それぞれステップS3,S4の処理と同様に、CCDラインセンサの素子列260a,260bがヘッドユニット6の上記移動経路と直交するように各カメラ26a,26bの回転角度を求め、前記各サーボモータ23,30を駆動制御する。
そして、カメラ26a,26bが前記撮像位置に配置されたか否かを判断し(ステップS15)、ここでYESと判断した場合には、ヘッドユニット6をステップS13で求められた上記移動経路に沿って実装作業位置(プリント基板3)から部品供給部4へ移動させるとともに、この移動中、照明装置27を点灯制御することにより、ヘッドユニット6がカメラ26a,26b上方を通過する間に各実装用ヘッド16の吸着ノズル先端の撮像処理を行う(ステップS16)。
次いで、各実装用ヘッド16の先端画像に基づいて実装されることなく実装作業位置から部品供給部4へ運ばれる部品の有無判断(部品持ち帰りチェック)、および吸着ノズル16a先端の汚れの有無判断(ノズル汚れチェック)を行い(ステップS17,S18)、それぞれNOと判断した場合、例えば先端画像の輪郭が明らかに部品の輪郭に一致するために部品の持ち帰りが生じていると判断できる場合や、吸着ノズル16aの先端にはんだ等が付着していると判断できる場合には、ステップS19に移行し、ここで液晶表示器等の表示装置(図示省略)を作動させてエラー表示を行うとともに実装機を停止させ、さらに音声装置(図示省略)を作動させてオペレータの注意を喚起する。
そして、これに対してオペレータが所定の復旧処理を行ったか否かを判断し(ステップS20)、YESと判断した場合にはステップS21に移行し、再度プリント基板3に対する全ての実装処理が終了したか否かを判断する。ここで、NOと判断した場合には、ステップS2に移行して次の部品実装動作に移行する。一方、YESと判断した場合には、実装作業位置のプリント基板3を搬出して本フローチャートを終了する。
なお、ステップS10の判断においてYESと判断した場合には、ヘッドユニット6の所定の待機位置に関する情報(リセット位置情報)を読み出した後(ステップS11)、ステップS13に移行する。つまり、ステップS11の処理を経由した場合には、ステップS13においてこのリセット位置情報に基づいて撮像位置(カメラ26a,26bの位置)を演算し、求められた撮像位置にカメラ26a,26bを配置すべく前記可動テーブル25を移動させる。具体的には、プリント基板3において最後に部品を実装した位置とヘッドユニット6のリセット位置とを直線で結ぶヘッドユニット6の移動経路を求め、この経路下方にカメラ26a,26bが配置され得るように撮像位置を求めるとともに、CCDラインセンサの素子列260a,260bがヘッドユニット6の上記移動経路と直交するように各カメラ26a,26bの回転角度を求め、前記各サーボモータ23,30を駆動制御することとなる。
なお、上記のフローチャートにおいてステップS10とステップS21では常に同一の判断結果となるようにされている。つまり、ステップS10でNOの場合にはステップS21でもNOと判断し、ステップS10でYESの場合にはステップS21でもYESと判断する。また、ステップS10で終了か否かの判断のためには、その前提として終了か否かの判断を行うための情報が必要となる。この場合、ステップS12で与える次の吸着部品情報において最後の吸着部品情報であることを認識できるようにしておき、ステップS5で吸着が終了した時点で終了(最終部品)であることを認識させるか、あるいは基板情報そのものの中に、必要な全ての部品装着が終了した後の吸着部品情報として、次の吸着部品が何もないこと、およびヘッドユニット6のリセット位置(待機位置)の情報を与えるようにすれば、ステップS10,S11を省略することが可能となる。この場合は、ステップS9の後、ステップS12に移行するようにすればよい。
上記のような実装動作を簡単にまとめると図7のようになる。まず、ヘッドユニット6が部品供給部4に移動して部品を吸着し、部品供給部4からプリント基板3上の実装作業位置に直線的に移動する。この際、可動テーブル25(カメラ26a,26b)がその部品搬送経路下方に移動することによりヘッドユニット6が部品供給部4からプリント基板3上に移動する間に各実装用ヘッド16に吸着された部品が撮像される(同図中[1]で示す動作)。そして、部品の実装が終了すると、その実装位置から部品供給部4又は待機位置にヘッドユニット6が直線的に移動し、この際、可動テーブル25(カメラ26a,26b)がその移動経路下方に移動することにより、ヘッドユニット6がプリント基板3上から部品供給部4等へ移動する間に各吸着ノズル16a先端が撮像されることとなる(同図中[2]で示す動作)。そして、いずれの認識動作においても、CCDラインセンサの素子列260a,260bがヘッドユニット6の移動経路と直交するように各カメラ26a,26bの向きが制御される。
以上のようにこの実装機では、部品供給部4と実装作業位置(プリント基板3)との間にラインセンサを備えたカメラ26a,26bをX軸方向に移動可能に設け、部品搬送時には、最後の部品を吸着した位置からヘッドユニット6を最初の部品実装位置へ直線的に移動させるとともに、この部品搬送に先立ち、ヘッドユニット6の移動経路に対してCCDラインセンサの素子列260a,260bが直交するようにカメラ26a,26bの向きをセットした状態で同移動経路下方にカメラ26a,26bを移動させておくようにしているので、ヘッドユニット6による部品吸着完了位置が何処であっても、常に、部品供給部から実装作業位置に最短距離で部品を搬送することができ、しかも搬送途中で一旦部品を静止させるといった動作を伴うことなく部品の吸着状態を画像認識することができる。従って、部品吸着後、ヘッドユニットを基台上の特定位置に一旦移動させてから部品認識処理を行う必要がある従来のこの種の表面実装機と比較すると、極めて効率的に吸着部品の認識を行うことができ、その結果、タクトタイムを効果的に短縮することができる。
しかも、プリント基板3への部品実装後は、実装用ヘッド16による吸着部品の認識と同様の手順で実装用ヘッド16(吸着ノズル16a)の先端を画像認識することにより、部品の持ち帰りの有無を判断する(実装作業の良否を判別する)ように構成されているので、実装不良(ミス)が発生したまま作業が続行されるといったトラブルの発生を未然に防止することができる。また、部品の持ち帰りが発生していない場合でも、さらにノズル汚れの有無を判断するように構成されているので、はんだ付着等の発生を早期に検知することにより部品の吸着不良や実装ミスの発生を未然に回避することもできる。従って、必要な部品をプリント基板3に対して確実、かつ正確に実装することができるようになる。
なお、この実施形態では、可動テーブル25に搭載される2つのカメラ26a,26bをX軸方向に一列に並べているが、例えばY軸方向に多少ずらして配置するようにしてもよい。すなわち、テープフィーダー4aの配列数や、テープフィーダー4aとプリント基板3との間隔等の具体的な構成に応じ、ヘッドユニット6が何れの移動経路で移動しても、第1〜第3の各実装用ヘッド16の吸着部品が一方側のカメラ26aで、第3〜第6の各実装用ヘッド16の吸着部品が他方側のカメラ26bでそれぞれ適切に撮像され得るように両カメラ26a,26bの配列方向を設定すればよい。
また、吸着部品を撮像する際のヘッドユニット6の移動経路(部品の搬送経路)に対するカメラ26a,26bの向きは、必ずしも搬送経路に対して素子列260a,260bが直交する向きに限らず、これに近い向きであっても構わない。例えば、図4(b)に示すように、最後の部品吸着位置([a]ポジション)と最初の部品実装位置([b]ポジション)とを直線で結ぶ部品の搬送経路をR、[b]ポジションを通るY軸と平行な軸をY′、この軸Y′と搬送経路Rとのなす角度をθ、素子列260a,260bをX軸方向に一致させたときに当該素子列260a,260bを通るX軸と平行な軸をX′、この軸X′と前記搬送経路Rとの交点をO、点Oを通り搬送経路Rと直交する方向をLとすると、この方向Lを基準として点O回りに正逆それぞれ角度θの範囲内(すなわち、図中軸X′と線分L′で囲まれた範囲)で、点Oを通る任意の方向に素子列260a,260bが一致するように両カメラ26a,26bの向きを設定するようにしてもよい。この範囲内であれば画像の歪みの程度が比較小さいため歪み補正によって実体に近い吸着部品等の画像を容易に得ることができる。
また、搬送経路Rに応じてその経路毎に両カメラ26a,26bの向きを代える以外に、例えばX軸と搬送経路Rとのなす角度に応じて、その角度が一定範囲内にあるときには両カメラ26a,26bを一定の向きに設定するようにしてもよい。この場合、予めX軸と搬送経路Rとのなす角度の範囲とその範囲における両カメラ26a,26bの向きを定めたテーブルを記憶しておき、搬送経路Rとこのテーブルとに従って両カメラ26a,26bの向きを切換制御するようにしてもよい。これによれば両カメラ26a,26bの向きの切換制御負担を軽減することが可能になる。
次に、本発明に係る表面実装機の第2の実施形態について図1〜図3および図8を用いて説明する。
第2の実施形態に係る実装機の全体構成は、次の点を除き図1〜図3に示す第1の実施形態の実装機と共通である。すなわち、第2の実施形態の実装機は、撮像ユニット20,21のカメラ26a,26bが可動テーブル25に固定的に設けられており、この点で第1の実施形態と構成が相違している。具体的には、各CCDラインセンサの素子列260a,260bがX軸方向に一列に並ぶ状態で各カメラ26a,26bが可動テーブル25に対して固定的に設けられており、そのため、第1の実施形態のようなカメラ26a,26bの回転駆動機構等は設けられていない。
図8は、第2の実施形態に係る実装機の制御系を概略ブロック図で示している。
第2の実施形態のコントローラ40′も第1の実施形態のコントローラ40と同様に、主制御部42、軸制御部44、撮像ユニット駆動制御部45、照明制御部46、カメラ制御部47および画像処理部49をその機能構成として含んでおり、予め記憶されたプログラムに従ってヘッドユニット6等を作動させるべく、前記主制御部42により軸制御部44を介してサーボモータ9,15等の駆動を制御するとともに、カメラ26a,26bにより撮像される部品画像に基づいて部品の吸着位置誤差を演算するように構成されている。但し、以下の点で第1の実施形態のコントローラ40と構成が相違している。
第2の実施形態では、上記の通りカメラ26a,26bが可動テーブル25に対して固定的に設けられるため第1の実施形態のようなカメラ姿勢切換制御部48は設けられておらず、その代わり、画像処理部49が斜行歪み補正部49aを含んだ構成となっている。この斜行歪み補正部49aは、ラインセンサ22の素子列に対してヘッドユニット6を斜め方向に移動させた場合、各吸着部品像が斜めに歪んだ状態で撮像されることとなるため、この歪みを部品撮像時の各ノズル中心の移動経路に応じて補正するように構成されている。この点については後述する。
第2の実施形態のコントローラ40′による実装機の動作制御は、カメラ26a,26bの回転駆動制御を除き、図6のフローチャートを使って説明した第1の実施形態の動作制御と同じである。すなわち、ヘッドユニット6により部品供給部4から部品を吸着させた後、最終部品吸着位置からプリント基板3上の最初の実装載置に直線的にヘッドユニット6を移動させるとともに、この移動に先立ちカメラ26a,26b(可動テーブル25)をヘッドユニット6の移動経路下方に移動させることにより、部品吸着後、ヘッドユニット6をカメラ26a,26bに対して相対的に移動させ、これによって吸着部品を撮像してその吸着状態を画像認識させる。また、部品吸着後は、その実装位置から部品供給部4又は待機位置へヘッドユニット6を直線的に移動させるとともに、この移動に先立ちカメラ26a,26b(可動テーブル25)をヘッドユニット6の移動経路下方に移動させることにより、部品実装後、吸着ノズル16aの先端を撮像してその状態を画像認識させるようになっている。
なお、第2の実施形態の実装機では、上記の通り撮像ユニット20,21においてカメラ26a,26bが可動テーブル25に固定的に設けられているため、カメラ26a,26bに対するヘッドユニット6の移動経路によっては部品画像に歪みが生じることになる。つまり、CCDラインセンサの素子列260a,260bと直交する方向(すなわちY軸方向)にヘッドユニット6が移動する場合には部品画像に歪みは生じないが、素子列260a,260bに対して斜め方向に移動する場合には、その移動方向と素子列260a,260bとの成す角度に応じて部品画像が菱形に歪むこととなる。
そこで、第2の実施形態では、このような画像歪みを前記歪み補正部49aにおいて補正し、その補正画像に基づき部品の吸着状態を認識するように構成されている。画像歪みの具体的な補正方法としては、例えば本願出願人の先の出願(特願平2003−382691号)に開示されるような方法が適用されている。具体的には、主制御部42において部品搬送時のヘッドユニット6の速度ベクトルとそのX軸方向成分とのなす角度を求め、この角度に基づき、斜行歪み補正部49aにおいて実際に得られた吸着部品像の座標変換を行うことにより画像の歪みを補正する。すなわち、当実施形態では、画像処理部49(斜行歪み補正部49a)が本発明の画像補正手段として、また、主制御部42が本発明の認識手段として機能する。
以上のような第2の実施形態に係る実装機についても、部品吸着後、最終部品の吸着位置に拘わらず、ヘッドユニット6を常に部品供給部から実装作業位置に最短距離で移動させながらその途中で部品の吸着状態を画像認識することができる。そのため、第1の実施形態の実装機と同様に、効率的に吸着部品の認識を行うことができ、その結果、タクトタイムを効果的に短縮することが可能となる。
但し、第2の実施形態では、上記の通りカメラ26a,26bを可動テーブル25に固定的に設けている結果、カメラ26a,26bの回転駆動機構等が不要な構成となっているので、第1の実施形態に比べると撮像ユニット20,21の構成を簡素化、低廉化することができる。また、カメラ26a,26bの回転駆動制御が不要となるため、主制御部42による制御負担が軽減されるという利点がある。
ところで、上述した第1および第2の実施形態では、撮像ユニット20,21の可動テーブル25上にカメラ26a,26bを上向きに固定し、カメラ26a,26bにより直接吸着部品を撮像するようにしているが、例えば図9に示すように、全反射ミラー29を傾斜姿勢で可動テーブル25に設けるとともに、このミラー29に映る吸着部品像を横から撮像するようにカメラ26a,26bを可動テーブル25に搭載した構成としてもよい。例えば、カメラ26a,26bの構成上、上記実施形態のようにカメラ26a,26bを上向きに設けるとZ軸方向の占有スペースが大きくなるような場合には、図9に示す構成を採用することにより、カメラ26a,26bを含む可動テーブル25全体をZ軸方向にコンパクト化することが可能になるというメリットがある。なお、ミラー29の取り付けは、ミラー29の法線がカメラ26a,26bの光軸(水平)とZ軸とのなす角を二等分するような角度となるようにする。また、この構成では吸着部品を映す(反射させる)ための光学部材としては、全反射ミラー29以外に、ハーフミラーやプリズム等を用いてもよい。
次に、本発明に係る表面実装機の第3の実施形態について図10〜図15を用いて説明する。なお、第3実施形態の実装機の基本的な構成は第1の実施形態の実装機と共通するため、共通する部分については同一の符号を付して説明を省略し、相違点についてのみ以下に詳細に説明することにする。
図10〜図12に示すように、第3の実施形態では、実装用ヘッド16に吸着された部品を撮像するための構成として、第1の実施形態の撮像ユニット20,21に代えてカメラユニット50およびミラー62等を有している。
カメラユニット50は、CCDラインセンサを内蔵した一対のカメラ52a,52bと照明装置51とを一体に備えており、前記支持部材11の下面に支持された状態でこの支持部材11に沿ってX軸方向に移動可能に設けられている。
具体的に説明すると、支持部材11の下面にはX軸方向に延びる固定レール55とサーボモータ56により回転駆動されるX軸方向のボールねじ軸57とが設けられ、前記固定レール55にカメラユニット50が移動可能に装着されるとともにこのカメラユニット50に対して前記ボールねじ軸57が螺合挿着されている。この構成により、前記サーボモータ56が作動するとカメラユニット50が固定レール55に沿ってX軸方向に移動するように構成されている。なお、サーボモータ56は、ボールねじ軸57に対してY軸方向に並べられた状態で支持部材11に固定されており、例えばベルト伝動機構によりボールねじ軸57を駆動するように構成されている。すなわち、サーボモータ56の出力軸に駆動プーリ58aが、ボールねじ軸57にプーリ58bがそれぞれ装着され、これら両プーリ58a,58bに亘って駆動ベルト59が装着されている。
前記カメラ52a,52bは、いずれもCCDラインセンサと結像レンズ等とを内蔵したカメラであってカメラユニット50に対して斜め下向きに、詳しくは、基台1上に設けられる後記ミラー62上方をヘッドユニット6が移動する際に、同ミラー62に映る吸着部品像を撮像し得る角度でカメラユニット50に対して斜め下向きに固定されている。また、これらカメラ52a,52bは、カメラユニット50に対してその光軸回りに回転可能に支持されており、サーボモータ60(図13参照)を駆動源とする回転駆動機構により同方向に同角度だけ連動して回転駆動されるように構成されている。つまり、この実施形態では、このコントローラ40および前記回転機構等により、撮像手段の向きを変更する本発明の変更手段が構成されている。
なお、この実施形態でも、ミラー62に映る吸着部品像のうち第1〜第3実装用ヘッド16に吸着された部品の像が一方側のカメラ52aのCCDラインセンサ(撮像素子)に結像する一方、第4〜第6実装用ヘッド16に吸着された部品の像が他方側のカメラ52bのCCDラインセンサ(撮像素子)に結像するように各カメラ52a,52bにおけるCCDラインセンサの素子数が設定され、またレンズ等の光学系が構成されている。
照明装置51は、詳しく図示していないが、両カメラ52a,52bの周囲に配設される複数のLED51aを有している。これらLED51aはカメラ52a,52bの光軸と平行に、かつ下向きに指向する状態でカメラユニット50に固定されており、ヘッドユニット6が後記ミラー62の上方を移動する際に、該ミラー62を介して実装用ヘッド16に対してその下側から照明光を照射するように構成されている。
前記基台1上であってコンベア2と部品供給部4との間のスペースには、ヘッドユニット6が部品供給部4からプリント基板3へ移動する際に、各実装用ヘッド16(吸着ノズル16a)に吸着されている部品の真下像(下面像)を映し出す(反射させる)ための一対のミラー62,62(光学部材)が設けられている。
これらのミラー62は、X軸方向に細長の矩形の全反射ミラーからなり、図12に示すように、各ミラー62の上方に各実装用ヘッド16が位置するときに各ミラー62がカメラ52a,52bを指向するように反射面を上向きにした状態で、かつ装置前側から後側(図10では下側から上側)に向って先下がりの傾斜姿勢で、詳しくは、ミラー62の法線が前記カメラ52a,52bの光軸M1とZ軸とのなす角を二等分するような角度でコンベア2と部品供給部4との間の各スペースに固定的に設けられている。
各ミラー62は、少なくとも部品供給部4を包含するようにX軸方向の長さ寸法が設定されるとともに、実装用ヘッド16に吸着された部品、具体的には実装部品のうち最大サイズの部品が吸着された場合にその部品の真下像(下面像)の全体が映る(反射する)ようにY軸方向(傾斜方向)の長さ寸法が設定されている。
図13は、第3の実施形態に係る実装機の制御系を概略ブロック図で示している。
第3の実施形態のコントローラ41も第1の実施形態のコントローラ40と同様に、主制御部42、軸制御部44、照明制御部46、カメラ制御部47および画像処理部49をその機能構成として含んでおり、予め記憶されたプログラムに従ってヘッドユニット6等を作動させるべく、前記主制御部42により軸制御部44を介してサーボモータ9,15等の駆動を制御するとともに、カメラ52a,52bにより撮像される部品画像に基づいて部品の吸着位置誤差を演算するように構成されている。但し、以下の点で第1の実施形態のコントローラ40と構成が相違している。
まず、主制御部42は、実装作業中、実装用ヘッド16に吸着された部品を撮像するための所定の部品認識動作をカメラユニット50や上記ヘッドユニット6等に実行させるべく軸制御部44および後記カメラユニット駆動制御部61を介してサーボモータ9,15,56等を駆動制御するように構成されている。なお、詳しい部品認識動作については後に詳述することにする。
また、第1の実施形態の撮像ユニット駆動制御部45に代えてカメラユニット駆動制御部61が設けられている。カメラユニット駆動制御部61は、サーボモータ56に組込まれたエンコーダ56aからの信号によってカメラユニット50の現在位置(X座標位置)を検知しながら、サーボモータ56を駆動制御してカメラユニット50を所定の撮像位置に移動させるものである。
さらに、画像処理部49としてミラー歪み補正部49bおよび倍率補正部49cを含んだものが設けられている。
ミラー歪み補正部49bは、カメラ52a,52bによるミラー62上の撮像位置と図外の記憶部に記憶されている歪み成分データとに基づいて画像補正を行うものである。すなわち、前記記憶部には、ミラー62が有する画像歪み成分により当該ミラー62に映った画像が基準位置に対してどの程度ずれるかを、ミラー62の反射面を複数の部分領域に分けて測定したデータが予め記憶されており、前記ミラー歪み補正部49bは、撮像位置とその位置が該当する部分領域の歪み成分データとに基づいて画像補正を行う。たとえば歪み成分の正負を逆転した歪みを吸着部品の撮像画像に付与することにより、その歪みを除去するように構成されている。
また、倍率補正部49cは、後述する部品認識動作に基づいて撮像された吸着部品画像に生じる倍率誤差を補正するものである。この点については後に説明する。
なお、第3の実施形態のコントローラ41において、照明制御部46にはカメラユニット50の照明装置51が、カメラ制御部47には同ユニット50の各カメラ52a,52bが、カメラ姿勢切換制御部48には同ユニット50のサーボモータ60および同モータ60に内蔵されるエンコーダ60aが電気的に接続されている。
ここで、第3の実施形態の実装機における吸着部品の認識方法について詳述する。なお、以下の説明では、便宜上、ヘッドユニット6をY軸方向に真っ直ぐに移動させ、CCDラインセンサの素子列がX軸方向に並ぶようにカメラ52a,52bの向きが制御されている場合について説明する。
第3の実施形態では、ミラー62に対して支持部材11をY軸方向へ移動させながらミラー62に映った各実装用ヘッド16の吸着部品像をカメラ52a,52bにより撮像する。この場合、ヘッドユニット6とカメラユニット50は、上記の通り共に支持部材11に支持されていてY軸方向へ一体的に移動するため、各カメラ52a,52b(CCDラインセンサ)によって吸着部品を撮像することは一見不可能と考えられるが、上記のようにミラー62を傾斜姿勢で基台1上に設けている結果、ミラー62に対して吸着部品をY軸方向に移動させることでカメラ52a,52bと吸着部品とを擬似的にY軸方向に相対移動させることができ、その結果、カメラ52a,52bによる吸着部品の撮像が可能となっている。
以下、その原理について図14に基づいて説明する。同図はカメラ52a,52b、実装用ヘッド16、吸着部品Cおよびミラー62の位置関係を模式的に示している。この図において、ヘッドユニット6およびカメラユニット50がミラー62に対して左側から右側(Y軸方向)に移動する場合を考える。ここで、
・移動前のカメラ52a,52bからミラー62(反射面)までの光路長 ;L1
・移動前のミラー62(反射面)から吸着部品Cまでの光路長 ;L2
・移動後のカメラ52a,52bからミラー62までの光路長 ;L1′
・移動後のミラー62(反射面)から吸着部品Cまでの光路長 ;L2′
・ミラー62の傾斜角度(反射面と水平面とのなす角度) ;θ
・ヘッドユニット6の移動距離 ;Δd
とする。また、移動前のカメラ52a,52bによる撮像位置(光軸L2の位置)はノズル中心に一致しているものとする。
この状態から吸着部品Cを一定の高さ位置に保ったままでヘッドユニット6およびカメラユニット50をミラー62に対して相対的にY軸方向に移動させると、ミラー62が傾斜している結果、カメラ52a,52bによる移動後の撮像位置(光軸L2′の位置)はノズル中心から変位量yだけY軸方向にずれることとなる。つまり、同図より
Δd・tanθ=y・tanθ+y/tan2θ
であるから、
y=((tanθ・tan2θ)/(tanθ・tan2θ+1))・Δd
だけ、カメラ22,23と吸着部品Cとが擬似的に相対移動することとなる。換言すればカメラ52a,52bと吸着部品Cのミラー像とが相対的に移動することとなる。
従って、上記のようにヘッドユニット6とカメラユニット50とを一体的にY軸方向に移動させながらも、上記のようなカメラ52a,52bと吸着部品Cとの擬似的な相対移動が生じる結果、カメラ52a,52bによる吸着部品Cの撮像が可能となる。
なお、上記のような擬似的な相対移動を利用して吸着部品Cを撮像する場合には、カメラ52a,52bと被写体(吸着部品C)との撮像距離がヘッドユニット6の移動に伴い変化する。すなわち画像倍率が変化するため、部品認識に際しては倍率補正を行う必要がある。
詳しくは、移動前後のカメラ52a,52bからミラー62(反射面)までの光路長の差をa、移動前後のミラー62から吸着部品Cまでの光路長の差をbとすると、図14より、
・a=y/sin2θ
・b=y/tan2θ
であるから、移動前後の倍率のずれをeとすると、
・e=(L1′+L2′)/(L1+L2)
=(L1+L2−(y/sin2θ+y/tan2θ))/(L1+L2)
となる。
このように擬似的な相対移動を利用して吸着部品Cを撮像する場合にはカメラ52a,52bのY軸方向の移動量に応じた倍率ずれeが画像に生じることとなる。そこで、当実施形態では、このような倍率ずれeを前記主制御部42において演算し、この倍率ずれeに基づいて画像処理部49の前記倍率補正部49cにおいて画像補正(倍率補正)を行うように構成されている。
第3の実施形態のコントローラ41による実装機の動作制御は、以下の点を除き、図6のフローチャートを使って説明した第1の実施形態の動作制御と同じである。
第3の実施形態では、図6のステップS3(およびステップS13)において、ヘッドユニット6による部品の搬送経路に基づきカメラ52a,52bによる吸着部品の撮像位置、すなわち支持部材11上におけるカメラユニット50のX軸座標位置を求めるとともに、カメラ52a,52bの回転角度を求め、さらにステップS4(およびステップS14)において、カメラ52a,52bをこの撮像位置に移動させるべくサーボモータ56を駆動制御するとともに、カメラ52a,52bの向きを変更すべくヘッドユニット6を駆動制御する。具体的には、図15に示すように、部品搬送経路Rに沿ってヘッドユニット6がミラー62上方を通過するときに該ミラー62を介して吸着部品像を撮像し得る座標位置を求めるとともに、CCDラインセンサの素子列がヘッドユニット6の前記搬送経路Rと直交するようにカメラ52a,52bの回転角度を求める。そして、前記サーボモータ56,60をそれぞれ駆動制御することによりその座標位置にカメラユニット50を移動させるとともにカメラ52a,52bの向きを変更する。また、図6のステップS7(およびステップS16)において、カメラユニット50の前記照明装置51を点灯制御する。
これにより、部品吸着後、部品吸着位置から最初の部品実装位置にヘッドユニット6を直線的に移動させながら、ヘッドユニット6がミラー62上方を通過する間に各実装用ヘッド16に吸着された部品の撮像処理を行うようになっている。すなわち、前記搬送経路Rに沿ってヘッドユニット6を移動させながら該ヘッドユニット6がミラー62上方を通過する際に照明装置51を点灯させると、照明光がミラー62で反射して吸着部品の下面に照射され、さらに吸着部品の下面で反射した反射光が再度ミラー62で反射してカメラ52a,52bに入射する。その一方でヘッドユニット6の移動に伴い吸着部品とカメラ52a,52bとの間に上記のような擬似的な相対移動が生じることにより、主走査方向(素子列の方向)一ライン分の吸着部品像が副走査方向(素子列と直交する方向;部品搬送方向)に連続的に取込まれ、その結果、各カメラ52a,52bにより吸着部品が撮像されることとなる。
以上のような第3の実施形態に係る実装機についても、部品吸着後、最終部品の吸着位置に拘わらず、ヘッドユニット6を常に部品供給部から実装作業位置に最短距離で移動させながらその途中で部品の吸着状態を画像認識することができる。そのため、第1、第2の実施形態の実装機と同様に、効率的に吸着部品の認識を行うことができ、その結果、タクトタイムを効果的に短縮することが可能となる。
なお、この第3の実施形態では、カメラユニット50に照明装置51を設けているが、照明装置51を基台1側に設けるようにしてもよい。具体的には、ミラー62に沿ってその全域にLED51aを配置し、主制御部32により、部品撮像時のヘッドユニット6の移動経路に応じて必要なLED51aを点灯制御するように構成してもよい。この構成によるとミラー62の近傍にLED51aが配置されることで、実装用ヘッド16に吸着された部品に対してより接近した位置から照明光を照射することが可能となる。そのため、部品認識に適したより鮮明な画像を撮像することが可能になるという利点がある。
また、第3の実施形態についてはその変形例として、図16〜図18に示すように、前記ミラー62および照明装置51の代わりに光学ユニット70,71を設けた構成を採用することもできる。以下、この例(第4の実施形態とする)について説明する。
図16、図17に示すように、光学ユニット70,71は、それぞれコンベア2とその両側の部品供給部4との間のスペースに設けられており、吸着部品像を反射させるミラー76(光学部材)と照明装置77とを一体にX軸方向に移動させるように構成されている。すなわち、前記基台1上であってコンベア2と部品供給部4との間のスペースには、X軸方向に延びる互いに平行な一対の固定レール72とサーボモータ73により回転駆動されるX軸方向のボールねじ軸74とが設けられ、前記固定レール72に可動テーブル75(保持部材)が移動可能に装着されるとともにこの可動テーブル75に対して前記ボールねじ軸74が螺合挿着されている。そして、前記ミラー76および照明装置77が前記可動テーブル75に一体に搭載され、前記サーボモータ73の作動によりミラー76等が可動テーブル75と一体に固定レール72に沿ってX軸方向に移動するように構成されている。
前記ミラー76は、X軸方向に細長の矩形の全反射ミラーからなり、図17に示すように、各ミラー76の上方に各実装用ヘッド16が位置するときに各ミラー76がカメラ52a,52bを指向するように反射面を上向きにした状態で、かつ装置前側から後側(図16では下側から上側)に向ってやや先下がりの傾斜姿勢で前記可動テーブル75に搭載(保持)されている。なお、ミラー76のX軸方向のサイズは、ヘッドユニット6の全実装用ヘッド16に吸着された部品、具体的には実装部品のうち最大サイズの部品が吸着された場合にその部品の真下像(下面像)が同時に映る(反射する)ように両端の実装用ヘッド16の間隔よりも適度に長く設定されている。また、同Y軸方向のサイズは、上記の最大サイズの部品が余裕をもって映るように長さ設定されている。また、照明装置77は、詳しく図示していないが、ミラー76の全周に亘って配設される複数のLED77aを有している。これらLED77aは略真上に指向する状態で前記可動テーブル75に固定されており、ヘッドユニット6が可動テーブル75の上方にある時に、各実装用ヘッド16の吸着部品に対してその下側から照明光を照射するように構成されている。
第4の実施形態の制御系は、図18に示すように、第2の実施形態のコントローラ41に、さらに光学ユニット駆動制御部64が設けられた構成となっている。
この光学ユニット駆動制御部64は、光学ユニット70,71の前記可動テーブル75の動作を制御するもので、前記サーボモータ73に内蔵されるエンコーダ73aからの信号によって可動テーブル75の現在位置(X座標位置)を検知しながらサーボモータ73を駆動制御することにより可動テーブル75を所定位置に移動させるものである。
なお、このコントローラ41において、照明制御部46には各光学ユニット70,71の照明装置77が接続されており、照明装置77の点灯制御がこの照明制御部46により行われるように構成されている。
第4の実施形態では、ヘッドユニット6による部品吸着後、カメラ52a,52bによる吸着部品の撮像が可能となるように、ヘッドユニット6による部品搬送経路下方に光学ユニット70,71の可動テーブル75を移動させるとともに、その部品搬送経路に沿ってヘッドユニット6が可動テーブル75上方を通過するときにミラー76を介して吸着部品像を撮像し得る位置にカメラ52a,52b(カメラユニット50)を移動させるようになっている。これにより、部品吸着完了後は、第3の実施形態と同様に、ヘッドユニット6を最終部品の吸着位置から最初の部品実装位置に直線的に移動させてミラー76の上方を通過させることによりミラー76に映った吸着部品像を各カメラ52a,52bにより撮像するようになっている。
このように第4の実施形態では、テープフィーダー4aの配列方向全体に亘って長尺のミラー62を設ける代わりに、小型のミラー76を移動可能に設け、吸着部品の撮像が可能となるように、カメラ52a,52b(カメラユニット50)およびミラー76(可動テーブル75)を移動させるように構成した、つまりカメラ52a,52b(カメラユニット50)とミラー76(可動テーブル75)とを連動させるようにしたものである。
以上のような第4の実施形態の構成によると、ミラー76が小型化されるため、ミラー76自体に歪みが生じ難くなり、また、雰囲気温度の上昇によるミラー76の歪みの発生も低減される。従って、ミラー76自体の歪みに起因する画像への影響を効果的に低減させることができる。また、このようにミラー76が小型化されることにより、画像歪みを補正するためのデータの収集負担、つまり前記ミラー歪み補正部49bにおける歪み補正処理に用いる歪み成分データの収集負担も軽減されるため、ミラー76の全体(反射面全体)について歪み成分を精査することが容易になる。従って、トータル的にみるとミラー76の歪みに起因する画像への影響を低減させることが可能となり、第3の実施形態に比べて吸着部品の画像認識精度を高めることが可能になるという利点がある。
また、ミラー76を保持する可動テーブル75に照明装置77を一体に搭載した構成となっているので、吸着部品に対してより近接した位置から照明を提供することができ、部品認識に適したより鮮明な画像を得ることが可能になるという利点もある。
但し、この第4の実施形態では、コンベア2と部品供給部4との間のスペースに可動テーブル75の駆動機構、照明装置77の配線等を設ける必要があるため、同スペースにミラー62のみを配置する第3の実施形態に比べると部品供給部4とコンベア2との間隔を狭くすることが難しくなる。従って、一連の実装動作におけるヘッドユニット6のトータル的な移動距離を短縮する、要するにタクトタイムの短縮化を図るという点では第3の実施形態の方が若干有利である。
なお、第4の実施形態において、照明装置77は、第2の実施形態の場合と同様にカメラユニット50に搭載してもよいし、また基台1に固定的に設けたもの、具体的には、可動テーブル75の移動経路沿いにLEDを並べて設け、これらLEDのうち可動テーブル75の位置に対応するものを点灯させるものであっても構わない。
ところで、以上説明した第1〜第4の実施形態の実装機は、本発明に係る表面実装機の最良の実施形態であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。例えば、第3、第4の実施形態においては、実装用ヘッド16に吸着された部品を映す(反射させる)ための光学部材として全反射ミラー62(ミラー76)が適用されているが、勿論、これ以外のハーフミラーやプリズム等の光学部材を適用することもできる。
また、第3および第4の実施形態に係る実装機において、例えばカメラ52a,52bをカメラユニット50に対して固定的に、具体的には、CCDラインセンサの素子列がX軸方向に一列に並ぶようにカメラ52a,52bを固定的に設け、さらに、コントローラ41の画像処理部49にヘッドユニット6の移動経路に応じて部品画像の歪みを補正する斜行歪み補正部(画像補正手段)を設けるように構成してもよい。すなわち、第3および第4の実施形態のように、実装用ヘッド16(吸着部品)とカメラ52a,52bとの擬似的な相対移動を利用して吸着部品を撮像するように構成する一方で、カメラ52a,52bを固定的に設けたことにより生じる画像歪み、つまりCCDの素子列に対してヘッドユニット6が斜めに移動することにより生じる画像歪みを第2の実施形態のようにヘッドユニット6の移動経路に応じて補正するように構成してもよい。このような構成によると、カメラユニット50の構成を簡素化、低廉化することができ、また、カメラ52a,52bの回転駆動制御が不要となるため、主制御部42による制御負担が軽減されるという利点がある。
また、上述した第1,第2の実施形態に係る実装機では、可動テーブル25に2つのカメラ26a,26bを搭載し、また第3,第4の実施形態に係る実装機は、カメラユニット50に2つのカメラ52a,52bを搭載しているが、吸着部品を撮像するためのカメラの数は必ずしも2つに限られるものではなく、ヘッドユニット6に設けられる実装用ヘッド16の数や配置、また撮像時の倍率等に応じて適宜選定すればよい。