JP4432230B2 - フッ素化炭化水素の精製方法、溶剤、潤滑性重合体含有液および潤滑性重合体膜を有する物品 - Google Patents

フッ素化炭化水素の精製方法、溶剤、潤滑性重合体含有液および潤滑性重合体膜を有する物品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素化炭化水素の精製方法、該フッ素化炭化水素を含有する溶剤、該溶剤に、潤滑性重合体を溶解又は分散してなる潤滑性重合体含有液、及び表面に該潤滑性重合体の膜を有する物品に関し、より詳しくはフッ素化炭化水素に含まれるフッ化水素濃度をフッ化水素除去材と接触させて、フッ化水素を極力低減することにより、製造設備や充填容器、あるいは用いる物品等の腐食を防止できるフッ素化炭化水素を精製する方法、該フッ素化炭化水素を含有する溶剤、該溶剤に、潤滑性重合体を溶解又は分散してなる潤滑性重合体含有液、及び表面に該潤滑性重合体の膜を有する物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ハイドロフルオロカーボンやハイドロフルオロエーテル等のフッ素化飽和炭化水素は、潤滑性重合体の溶剤や洗浄用溶剤として用いられている。また、フッ素化不飽和炭化水素は、フッ素化ポリマーの原料単量体や代替フロン、半導体製造用エッチングガス、医薬、農薬、液晶及びこれらの製造中間体として有用である。
【0003】
ところで、これらのフッ素化炭化水素を製造する方法としては、例えば、
(1)分子内に炭素−炭素二重結合を有する炭素原子に塩素原子が置換した不飽和炭化水素を、非プロトン性極性溶媒中、フッ化カリウム等のアルカリ金属フッ化物を作用させて、フッ素化不飽和炭化水素を製造する製造する方法(USP.3024290号、USP.356778号、J.Org.Chem.,28,112(1963)等参照);
(2)フッ素化不飽和炭化水素を、水素化触媒の存在下に接触水素還元してハイドロフルオロカーボンを製造する方法(WO99/33771号公報等参照);
(3)金属フッ化物存在下に酸フルオリドとアルキルハライドまたはアルキルスルホネートとを反応させる方法(特表平11−505249号);
(4)分子内にフッ素置換可能な塩素原子等を有する飽和炭化水素(ハイドロカーボン)又はハイドロエーテルにフッ素化剤を作用させて、ハイドロフルオロカーボン又はハイドロフルオロエーテルを製造する方法;等が挙げられる。
【0004】
これらの製造方法により得られた目的物は、蒸留等により単離・精製されるが、得られる目的物には、微量のハロゲン化水素が含まれている場合が多い。ハロゲン化水素、中でもフッ化水素は腐食性に富み、微量含まれている場合であっても、ガラス製や金属製の製造設備、充填容器、使用設備等を腐食する性質がある。特に、水分が混入すると、さらに腐食されやすくなる環境に置かれるため、フッ化水素を含有したままでは不都合を招く場合が多い。
【0005】
また、近年フッ素化不飽和炭化水素は、半導体製造におけるエッチングガスとして使用される機会が多くなった。半導体用途のガスは高純度の規格を要求されるため、極力不純物を除去する必要がある。さらに、ハイドロフルオロカーボンやハイドロフルオロエーテルは、電子機器、機械装置等の摺動部や表面に潤滑性を付与する潤滑性重合体の溶剤として、あるいはこれらの洗浄用溶剤として用いられるが、近年これらの小型化、高精度化に伴い、高耐久性、高信頼性が求められている。したがって、溶剤として用いられるこれらハイドロフルオロカーボンやハイドロフルオロエーテルは、フッ化水素等を極力除去することが必要となっている。
【0006】
本発明に関連して、フッ素化炭化水素中のフッ化水素を除去する技術として、例えば、(1)特開平6−184014号には、フッ化水素を含むフッ素系不活性液体をアロフェン(アルミニウムの含水ケイ酸塩である非晶質の粘土鉱物)と接触させることを特徴とするフッ素系不活性液体の精製方法が記載されている。(2)また、特開平8−3075号公報にはフッ素系不活性液体を、シリカ、アルミナ又はケイ酸塩の存在下に、水又はアルカリ水溶液と接触させて精製する方法が記載されている。
【0007】
しかしながら、上記したいずれの方法も精製の対象となるフッ素系液体がパーフルオロアルカン類、パーフルオロエーテル類、パーフルオロ3級アミン類などのパーフルオロ化合物に限定されており、炭素−水素結合を分子中に含むハイドロフルオロカーボンやハイドロフルオロエーテル、あるいはフッ素化不飽和炭化水素のようなフッ素化炭化水素についてはその効果が記載されていない。
また、上記(2)の方法では、フッ素系不活性液体を水と接触させる工程を含むため、処理後の溶剤を再度乾燥させる工程が必要となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる実状に鑑みてなされたものであり、ハイドロフルオロカーボンやハイドロフルオロエーテル、フッ素化不飽和炭化水素に含まれるフッ化水素濃度を低減することにより、これらのフッ素化炭化水素の製造設備や充填容器、あるいは用いる物品等の腐食を防止できるフッ素化炭化水素を精製する方法、溶剤、潤滑性重合体含有液及び潤滑性重合体膜を有する物品を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者らは、ハイドロフルオロカーボンやハイドロフルオロエーテル、フッ素化不飽和炭化水素等の炭素数4〜8のフッ素化炭化水素をフッ化水素除去材と接触させることにより、含まれるフッ化水素濃度を格段に低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は第1に、フッ化水素を含有する、オクタフルオロシクロペンテン、1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、又はノナフルオロブチル−エチルエーテルの少なくとも一種のフッ素化炭化水素を、該フッ素化炭化水素100重量部に対して、2〜10重量部の、アルミナ又はモレキュラーシーブスと接触させることにより、フッ化水素の含有量を0.5ppb以下に低減することを特徴とするフッ素化炭化水素の精製方法を提供する。
【0011】
本発明は第2に、本発明の精製方法により得られたフッ素化炭化水素の1種又は2種以上からなる溶剤を提供する。
【0012】
本発明は第3に、本発明の溶剤に、液全体に対し、0.0001〜10重量%の潤滑性重合体を溶解させるか、又は、液全体に対して0.01〜20重量%の潤滑性重合体を分散させて得られる潤滑性重合体含有液を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)第1の精製方法の発明は、フッ化水素を含む炭素数4〜8のフッ素化炭化水素をフッ化水素除去材と接触させる工程を有することを特徴とする。
精製の対象とするフッ素化炭化水素としては、炭素数が4〜8であり、分子中に炭素−フッ素結合を有する炭化水素であれば特に制限はないが、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル及びフッ素化不飽和炭化水素等が好適である。
【0014】
ハイドロフルオロカーボンは、炭化水素の水素原子の一部がフッ素原子のみで置換されたフッ素化炭化水素であり、ハイドロフルオロエーテルは、エーテル類の水素原子の一部がフッ素原子のみで置換されたフッ素化エーテルである。本発明で用いるハイドロフルオロカーボン又はハイドロフルオロエーテルは、沸点が30℃以上のものが好ましい。沸点が30℃未満のものでは精製時の蒸留のロスが大きく、精製収率の低下を招くおそれがある。また、ハイドロフルオロカーボン又はハイドロフルオロエーテルは、鎖状であっても、環状であってもよい。
【0015】
これらのうち、本発明で用いるハイドロフルオロカーボンとしては、分子中に−CH2−CHF−基を有する炭素数4〜8の鎖状又は脂環式化合物が好ましい。かかる−CH2−CHF−基を有する炭素数4〜8の化合物としては、例えば、1,1,1,2,4,4,4−ヘプタフルオロ−n−ブタン、1,1,1,2,2,3,5,5,5−ノナフルオロ−n−ペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,6,6,6−ウンデカフルオロ−n−ヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,7,7,7−トリデカフルオロ−n−ヘプタン等の鎖状ハイドロフルオロカーボン;
1,1,2,2,3−ペンタフルオロシクロブタン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3,3,4,4,5−ノナフルオロシクロヘキサン等の環状ハイドロフルオロカーボンが挙げられる。
【0016】
また、ハイドロフルオロエーテルとしては、ヘプタフルオロプロピル−メチルエーテル、1,2,2,2−テトラフルオロエチルヘプタフルオロプロピルエーテル、エチル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、ノナフルオロブチル−メチルエーテル、ノナフルオロブチル−エチルエーテル、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヘプタフルオロプロポキシ−3−(1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ)−1−プロパン等を挙げることができる。
これらは、単独で用いてもよいし、ハイドロフルオロカーボンの2種以上の混合物、ハイドロフルオロエーテルの2種以上の混合物、あるいはハイドロフルオロカーボンとハイドロフルオロエーテルとの混合物で用いることもできる。
【0017】
本発明で用いられるフッ素化不飽和炭化水素は、分子中に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有し、該二重結合を構成する炭素原子に少なくとも一つのフッ素原子が結合してなる炭素数4〜8の不飽和炭化水素である。不飽和炭化水素の構造には特に制限はなく、鎖状であっても、環状構造を有していてもよい。
【0018】
本発明に用いられる不飽和炭化水素としては、式:R1−C(X)=C(F)−R2で表される化合物が好ましく例示できる。式中、Xはフッ素原子又は塩素原子を表す。R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。炭素数1〜8のアルキル基は、その全部又は一部がフッ素化されていてもよい。ただし、R1とR2の少なくとも一方は、フッ素化されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であって、R1とR2両者の炭素数の和は少なくとも2である。
【0019】
また、R1とR2とは、両者が一体に結合して炭素数2〜8の炭化水素基−R1−R2−となり、脂環式化合物を形成してもよい。2価の炭化水素基−R1−R2−の水素原子は、その全部又は一部がフッ素化されていてもよい。かかる脂環式化合物としては、例えば、シクロブテン化合物、シクロペンテン化合物、シクロヘキセン化合物、シクロヘプテン化合物、シクロオクテン化合物等が挙げられる。
【0020】
かかるフッ素化不飽和炭化水素の具体例としては、1−クロロヘプタフルオロ−2−ブテン、2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン、1,2−ジクロロ−1,1,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン、1,3−ジクロロ−1,1,2,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン、1,1,2−トリクロロ−3,4,4,4−テトラフルオロ−2−ブテン、1,1,3−トリクロロ−2,4,4,4−テトラフルオロ−2−ブテン、1,1,1,2,4−ペンタクロロ−3,4,4−トリフルオロ−2−ブテン、1,1,1,3,4−ペンタクロロ−2,4,4−トリフルオロ−2−ブテン、1,1,1,2,4,4,4−ヘプタクロロ−3−フルオロ−2−ブテン、1−クロロノナフルオロ−2−ペンテン、2−クロロノナフルオロ−2−ペンテン、3−クロロノナフルオロ−2−ペンテン、1−クロロウンデカフルオロ−2−ヘキセン、2−クロロウンデカフルオロ−2−ヘキセン、3−クロロウンデカフルオロ−2−ヘキセン等の鎖状不飽和炭化水素;
【0021】
1−クロロペンタフルオロシクロブテン、1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、1−クロロ−2,3,3,4,4,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1−クロロ−2,3,3,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1−クロロ−2,3,3,4,4−ペンタフルオロシクロペンテン、1−クロロ−2,3,3,5,5−ペンタフルオロシクロペンテン、オクタフルオロシクロペンテン、1−クロロ−ノナフルオロシクロヘキセン、1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5,6−オクタフルオロシクロヘキセン等の環状不飽和炭化水素;が挙げられる。これらの中でも、炭素数4〜8の環状フッ素化不飽和炭化水素が好ましい。
【0022】
本発明の精製方法は、フッ化水素を不純物として含むフッ素化炭化水素をフッ化水素除去材と接触させることを特徴とする。フッ化水素除去材としては、ゼオライト、アルミナ、シリカ、活性炭又はイオン交換樹脂を使用することができる。これらの中でもゼオライト、シリカ、アルミナの使用が好ましく、ゼオライト、アルミナが最も好ましい。
【0023】
ゼオライトとしては、フォージャサイト、シャバサイト、グメリナイト、エリオナイト、レビナイトなどの天然産ゼオライト、3A、4A、5A等のA型、及びモレキュラーシーブスの10X、13X等のX型、さらにF型、H型、Y型等の合成ゼオライト等が挙げられる。ゼオライトの中でも入手容易なモレキュラーシーブスが好ましい。
モレキュラーシーブスはその種類に制限はなく、多くの種類が市販されているので適宜選択できるが、モレキュラーシーブス3A、モレキュラーシーブス4A、モレキュラーシーブス5A、モレキュラーシーブス13X等をしようすることができ、それらの中でも、モレキュラーシーブス3A、4A及び5A型が好ましく、モレキュラーシーブス4A及び5Aが最も好ましい。
【0024】
アルミナはその種類に特に制限はなく、無定形アルミナ、結晶性アルミナ、アルミナ水和物等を使用することができる。これらのうち、結晶性の低いアルミナが好ましく、具体例としては、触媒用(商品名:N612N、日揮科学(株)製)等が挙げられる。
シリカはその種類に特に制限はなく、無定形シリカ、結晶性シリカ、シリカ水和物等を用いることができる。具体的には、シリカゲル、珪藻土等を使用することができる。より具体的には、CARiACT、Q−15(以上、富士デビソン(株)製)等が挙げられる。
活性炭の種類についても特に制限はなく、植物質系、石灰質系、石油系の活性炭を使用することができる。特に、木材、木炭、椰子殻炭を原料とする植物質系、瀝青炭、亜炭などを原料とする石灰質活性炭が好適に使用される。
イオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂であれば特に制限なく種々のタイプのものを使用することができる。例えば、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体からなる微細な3次元網目構造の高分子基体に、スルホン酸基を結合させた化学構造を有するものが挙げられる。また、スルホン酸基の対イオンとしてはナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンが好ましい。具体的には、ゲル型イオン交換樹脂(商品名:ダイヤイオン SKIB、三菱化学(株)製)等が挙げられる。これらのゼオライト、アルミナ、シリカ、活性炭及びイオン交換樹脂は単独でもちろんのこと、2種以上を併用することもできる。
【0025】
これらフッ化水素除去材の形状には特に制限はなく、例えば、粉末状、顆粒状、粒状のものを使用することができる。ゼオライト、アルミナ、シリカ及び活性炭の粒径は、フッ素化炭化水素との接触効率の点から小さいものが好ましく、平均粒径が10mm以下のものが好ましく使用される。実用面から、0.3〜5mmのものが適当である。
フッ化水素除去材の使用量は特に制限されないが、フッ素化炭化水素100重量部に対して、通常2〜10重量部、好ましくは3〜7重量部の範囲である。
【0026】
フッ化水素を含むフッ素化炭化水素とフッ化水素除去材と接触させる方法は、加圧又は常圧下に、バッチ式、連続式、向流式及び並流式のいずれで行ってもよい。例えば、ゼオライト、アルミナ、シリカ又はイオン交換樹脂等のフッ化水素除去材が充填されたカラム中をフッ素化炭化水素を通過させる方法が挙げられる。フッ素化炭化水素は気体状態あるいは液体状態のいずれでもよい。また、フッ化水素の除去効率を高めるために、フッ化水素除去材を充填塔内でポンプ等を用いて循環させるのも好ましい。
【0027】
フッ化水素除去材を充填するカラムとしては、フッ化水素やフッ素化炭化水素に対して安定な材料からなるものであれば特に制限はないが、例えば、テフロン製等が挙げられる。
接触温度は使用するフッ素化炭化水素の沸点により異なるが、沸点よりも温度が高い場合には、収率低下を招くおそれがあるため、沸点よりも20℃以上低い温度で接触させるのが好ましい。通常−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃の範囲である。接触させる時間は特に限定されるものではないが、通常0.1秒〜50時間、好ましくは0.1秒〜7時間である。
【0028】
本発明は、上述した(1)フッ素化炭化水素を実際に使用する前に、フッ化水素除去材と接触させることにより、フッ化水素濃度が格段に低減されたフッ素化炭化水素を得たい場合のほか、(2)炭素−炭素二重結合を有し、かつ該二重結合を構成する炭素に結合したフッ素置換可能な塩素原子を有する不飽和炭化水素を原料として用い、該不飽和炭化水素にフッ素化剤を作用させてフッ素化不飽和炭化水素を得たのち、得られたフッ素化炭化水素をフッ化水素除去材と接触させることにより、フッ化水素濃度が低減されたフッ素化不飽和炭化水素を製造する場合や、(3)フッ素化不飽和炭化水素を、水素化触媒の存在下に接触水素還元を行うことによりフッ素化炭化水素を得たのち、得られたフッ素化炭化水素をフッ化水素除去材と接触させることにより、フッ化水素濃度が低減されたフッ素化飽和炭化水素を製造する場合に好ましく適用される。
【0029】
上記(2)において、原料として用いられる不飽和炭化水素としては、式:R3−C(X)=C(Cl)−R4で表される化合物が好ましく例示できる。式中、Xはフッ素原子又は塩素原子を表す。R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。炭素数1〜8のアルキル基は、その全部又は一部がフッ素化されていてもよい。ただし、R3とR4の少なくとも一方は、フッ素化されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であって、R3とR4両者の炭素数の和は少なくとも2である。
【0030】
また、R3とR4とは、両者が一体に結合して炭素数2〜8の炭化水素基−R3−R4−となり、脂環式化合物を形成してもよい。2価の炭化水素基−R3−R4−の水素原子は、その全部又は一部がフッ素化されていてもよい。かかる脂環式化合物としては、例えば、シクロブテン化合物、シクロペンテン化合物、シクロヘキセン化合物、シクロヘプテン化合物、シクロオクテン化合物等が挙げられる。
【0031】
かかるフッ素化不飽和炭化水素の具体例としては、2,3−ジクロロヘキサフルロロ−2−ブテン、1,2,3−トリクロロ−1,1,4,4,4−ペンタフルオロ−2−ブテン、1,1,2,3−テトラクロロ−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテン、1,1,1,2,3,4−ヘキサクロロ−4,4−ジフルオロ−2−ブテン、1,2,3−トリクロロオクタフルオロ−2−ペンテン、2,3−ジクロロオクタフルオロ−2−ペンテン、2,3−ジクロロデカフルオロ−2−ヘキセン等の鎖状不飽和炭化水素;
【0032】
1,2−ジクロロテトラフルオロシクロブテン、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテン、オクタクロロシクロペンテン、1,2−ジクロロヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ジクロロ−3,3,4,4,5−ペンタフルオロシクロペンテン、1,2−ジクロロ−3,3,4,4−テトラフルオロシクロペンテン、1,2−ジクロロ−オクタフルオロシクロヘキセン、1,2−ジクロロ−3,3,4,4,5,5,6−ヘプタフルオロシクロヘキセン等の環状不飽和炭化水素;が挙げられる。
【0033】
上記不飽和炭化水素に作用させるフッ素化剤としては、フッ素イオンを放出しうる化合物であれば特に制限されないが、例えば、金属フッ素化物、無水又は水溶液の付加水素酸、フッ化水素酸とアミン又は四級アンモニウム塩からなる会合体、フッ化水素酸と極性溶媒との会合体等が挙げられる。中でも金属フッ化物が好ましい。
【0034】
金属フッ化物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属などの金属のフッ化物が挙げられ、好ましくはアルカリ金属フッ化物である。アルカリ金属フッ化物の具体例としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化ルビジウム等が挙げられる。また、これらの2種類以上を組み合わせて用いることもできる。また、これらのアルカリ金属フッ化物は、市販品をそのまま使用することができるが、反応活性を高めるために、機械的に粉砕したものを使用することもできる。フッ素化剤の使用量は、原料となる不飽和炭化水素中の塩素原子に対し、通常1モル当量以上、好ましくは1〜5当量、より好ましくは1〜3当量、最も好ましくは1〜2当量の範囲である。
【0035】
フッ素化反応は液相反応で行っても気相反応で行ってもよいが、上記のアルカリ金属フッ化物を用いる場合には液相反応で行うのが一般的である。
液相反応は、不飽和炭化水素を適当な溶媒で希釈して行うのが好ましい。用いられる溶媒としては、通常非プロトン性極性溶媒が好ましい。例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。これらの中でも、N−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドの使用が特に好ましい。これらの非プロトン性極性溶媒は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、必要に応じて、非プロトン性極性溶媒と相溶性のあるベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素を加えて用いることができる。溶媒の使用量は不飽和炭化水素100重量部に対して、通常、0〜1,000重量部である。
【0036】
反応温度は、液相反応の場合には、20℃〜200℃、好ましくは50℃〜150℃である。反応は、精留塔を装備した反応容器を用い、金属フッ化物を分散させた溶媒中で行うのが好ましい。この場合には、精留塔塔頂部より目的生成物のみを濃縮して純度よく単離することができる。
気相反応の場合には、反応温度は100℃〜500℃である。この場合には、バッチ方式又は原料を連続的に反応器へ供給し、反応生成物を連続的に反応器から抜き出す連続方式が採用される。また、気相反応の場合には、反応終了後、未反応のフッ素化剤などを吸収又は中和して除去するのが好ましい。除去に際しては、必要であれば系内にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、弱酸塩、有機酸塩等の添加剤を添加することができる。
【0037】
得られたフッ素化不飽和炭化水素は、必要に応じ、蒸留等の精製法によって純度のよいものとすることができるが、通常微量のフッ化水素が含まれている。そこで、本発明においては、フッ化水素除去材と接触させる工程をさらに設ける。
【0038】
用いることのできるフッ化水素除去材としては、前記(1)の精製方法で列記したゼオライト、アルミナ、シリカ、活性炭及びイオン交換樹脂が使用できる。また、フッ化水素除去材の使用量、処理温度等のフッ化水素の除去処理の条件などは、前記(1)の精製方法で述べたのと同様である。
【0039】
上記(3)において、原料として用いることのできるフッ素化不飽和炭化水素としては、上記(2)で得られるフッ素化不飽和炭化水素が挙げられる。
用いられる水素化触媒としては、貴金属単体又は貴金属化合物である。貴金属触媒は、担体に担持させた形態で使用するのが好ましい。貴金属としては、例えば、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、レニウム、白金等が挙げられ、中でもパラジウム、ロジウム及びルテニウムが好ましい。貴金属化合物としては、例えば、酢酸パラジウム、硫酸パラジム、硝酸パラジム、塩化パラジウム、酸化白金等が挙げられる。これらの水素化触媒は単一金属からなるものを使用してもよいし、2種類以上の金属、いわゆるバイメタル触媒として用いてもよい。
【0040】
貴金属触媒を担持させる担体の種類、担体の形状、大きさ等は特に制限されない。担体の種類としては、活性炭、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア及びこれらをフッ化水素処理したものが好ましい。担体の形状は粉末でも、球形、ペレット状等の粒状物でもよい。担体に対する貴金属の担持量は、通常0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%での範囲である。
【0041】
水素化に使用される水素はガス状であればよい。水素はフッ素化不飽和炭化水素に対し過剰量で使用するのが好ましい、例えば、フッ素化不飽和炭化水素1モル当たり2モル以上、好適には2〜50モルの水素を使用すればよい。
【0042】
水素化の方式としては液相反応又は気相反応が挙げられる。液相反応では溶剤を用いることができる。気相反応では希釈剤を必要により用いることができる。希釈剤としては、不活性ガスであればよいが、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ペンタフルオロエタン、ペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロブタン等が挙げられる。これらの希釈ガスは単独で、あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
また、気相反応では、固定床型気相反応、流動床型気相反応等を方式を採ることもできる。
【0043】
液相反応で使用する溶媒は特に制限はなく、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハイドロフルオロカーボン類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、水等を用いることができる。
【0044】
水素化反応の反応系の圧力は、通常、常圧〜50kgf/cm2であり、好ましくは常圧〜20kgf/cm2の範囲である。反応温度は、通常、常温〜350℃、好ましくは常温〜200℃であり、本反応においては、必要に応じて攪拌又は振とうする。また、水素化反応は、バッチ反応又は原料を連続的に反応器に供給し、反応生成物を反応器から抜き出す連続反応を採用するのが好ましい。
【0045】
本反応では塩化水素ガス等の酸性成分が副生成物として発生する。この酸性成分は、反応中に吸収又は中和して除去するのが好ましい。除去方法としては、系内に添加剤を添加すればよい。かかる添加剤としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、弱酸塩、有機酸塩等が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種類以上を混合して添加される。
反応終了後は、必要に応じて、酸性成分を添加剤で吸収又は中和させた後、蒸留などの通常の精製方法によって目的物を単離することができる。
【0046】
得られたハイドロフルオロカーボンは高純度であるが、微量のフッ化水素等を含む。そこで、本発明では、得られた反応生成物をフッ化水素除去材と接触させることによって、フッ化水素濃度を極力低減する。
【0047】
用いることのできるフッ化水素除去材としては、上記(1)の精製方法で列記したゼオライト、アルミナ、シリカ、活性炭及びイオン交換樹脂が使用できる。また、フッ化水素除去材の使用量、処理温度等のフッ化水素除去処理の条件などは、上記(1)の精製方法で述べたのと同様である。
【0048】
フッ化水素除去材と接触させた後においては、精留を行うのが好ましい。精留は、周期律表0属の不活性ガス中で行うのが好ましい。精留塔の理論段数はフッ素化炭化水素の種類、含有される不純物の種類により適宜選択することができるが、通常30段以上であり、好ましくは50段以上である。精留時の圧力は、通常、ゲージ圧で−0.5気圧以上、好ましくは常圧〜10気圧の範囲である。還流比は特に制限されず、精留塔の能力に見合った還流比を適宜選択できる画、通常2以上、好ましくは5以上である。精留は回分式、連続式の何れでもよく、また、抽出溶剤を加えて抽出蒸留を行うこともできる。
【0049】
このようにして、フッ素化炭化水素中に含まれるフッ化水素濃度を格段に低減することができる。すなわち、フッ素化水素除去材による処理後のフッ化水素濃度を5ppb以下に低減することが可能である。
【0050】
フッ素化炭化水素中のフッ化水素濃度は、例えば、(1)超純水(電気伝導度、18MΩ/cm2)でフッ素化炭化水素中のフッ素イオンを抽出し、抽出液をイオンクロマトアナライザーにてフッ素イオン濃度を測定し、フッ化水素濃度に換算することにより求めることができる。また、(2)市販のフッ素イオン電極を用いて得られたフッ素化炭化水素中に含まれるフッ素イオン濃度を測定し、フッ化水素濃度に換算することにより求めることもできる。
【0051】
このようにして得られたフッ素化炭化水素は、種々の用途に有用である。例えば、フッ素化不飽和炭化水素は、半導体製造における高純度エッチングガスやフッ素系ポリマーの原料単量体として、また、ハイドロフルオロカーボンやハイドロフルオロエーテルは、以下に述べる洗浄用溶剤あるいは潤滑製重合体の溶剤として好ましく用いられる。
【0052】
本発明の溶剤は、炭素数が4〜8のフッ素化炭化水素、好ましくは炭素数4〜8のハイドロフルオロカーボン及び/又はハイドロフルオロエーテルの1種若しくは2種以上を含有してなる溶剤であって、含有されるフッ化水素濃度が5ppb以下であることを特徴とする。本発明の溶剤において、フッ化水素濃度を5ppb以下に低減する方法としては、本発明の溶剤を前述したフッ化水素除去材と接触させるのが好ましい。
【0053】
本発明の溶剤は、例えば、物品の洗浄用組成物または潤滑性重合体の溶剤として好ましく用いられる。物品の洗浄用組成物と用いる場合には、炭素数4〜8のハイドロフルオロカーボン及び/又はハイドロフルオロエーテルの1種若しくは2種以上の混合物、及びこれらと他の有機溶剤との混合物を用いるのが好ましい。
【0054】
有機溶剤としては、フッ化水素濃度が5ppb以下で、沸点が25〜300℃の有機溶剤が好ましい。また、該有機溶剤としては、炭化水素と接触したときに組成変化が少なく(すなわち、環状フッ化炭化水素と同程度の溶解度を有する)、かつ蒸留再生しても洗浄液の組成の変化の少ないものが好ましい。環状フッ化炭化水素と有機溶剤とが共沸組成物を形成する場合には、その共沸組成物形成付近での使用が望ましい。
【0055】
かかる有機溶剤としては、例えば、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素類;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸ビニルなどのエステル類;1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタンなどの鎖状ハイドロフルオロカーボン類;パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタンなどのパーフルオロカーボン類:等を挙げることができる。これらの有機溶剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
被洗浄物としては、格別な限定はなく、例えば、精密機械工業、金属加工工業、光学機械工業、電子工業、プラスチック工業などにおける金属、セラミックス、ガラス、プラスチックス、エラストマーなどの加工製品等が挙げられる。
本発明の溶剤は、フッ化水素濃度が5ppb以下に低減されたフッ素化炭化水素からなるので、被洗浄物を連続洗浄する場合であっても、洗浄設備等を腐食することはない。
【0057】
本発明の潤滑性重合体含有液は、膜形成能を有する潤滑性重合体を前記本発明の溶剤に溶解又は分散させてなることを特徴とする。
前記潤滑性重合体は、基材表面に均一な膜を形成し得るものであれば、特に限定されるものではない。また、該重合体の性質も特に限定されるものではなく、潤滑性、非凝着性あるいは撥水性等の膜を形成した場合に、従来必要とされる性質を有するものであればよい。かかる膜形成能を有する潤滑性重合体の例としては、フッ素系重合体、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられ、これらの中でもフッ素系重合体が好ましい。
フッ素系重合体としては、分子内にフッ素原子を有するものであれば格別な制限はないが、例えば、フッ化オレフィン重合体類;塩化フッ化オレフィン重合体類;ヘテロ原子を含むフッ素系重合体;等が挙げられる。
【0058】
これらのうち、本発明においてはヘテロ原子を含むフッ素系重合体が特に好ましい。ヘテロ原子を含むフッ素系重合体のヘテロ原子としては、周期律表の第2周期乃至は第3周期で、かつ第4B族、第5B族又は第6B族に属する原子が挙げられる。より具体的には、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子等が挙げられ、酸素原子が好ましい。
かかるフッ素原子を含むフッ素系重合体としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸ポリエステル類;パーフルオロアルキルポリエーテル類;パーフルオロアルキル基を有するポリイミド類;部分フッ素化変性シリコーンオイル類;等が挙げられる。これらの中で、パーフルオロアルキルポリエーテル類が特に好ましい。
【0059】
パーフルオロアルキルポリエーテル類としては、一般に撥水膜形成材料として使用されているものであれば格別な制限はない。例えば、特開昭61−126627号公報、特開昭63−97264号公報、特開昭64−31642号公報、特開平4−211969号公報、特開平5−342570号公報、特開平7−182652号公報に記載されているようなパーフルオロアルキルポリエーテル類が使用できる。好適なパーフルオロアルキルポリエーテル類としては、例えば、CH3O−(CF2CF2O)a−CH3、PhOCH2CH2OCH2O−(CF2CF2O)b−CH3、CF3−[(OCF(CF3)CF2c−(OCF2d]−OCF3、CF3−[(OCF2CF2e−(OCF2f]−OCF3等の一般式で表されるものが挙げられる(式中、a〜fは任意の正整数を表す。)。
【0060】
また、主鎖に環状構造を有するフッ素系重合体、例えば、特開平6−305151号公報に記載されているような環状パーフルオロカーボン、環状パーフルオロエーテル、環状パーフルオロカーボンの一部のフッ素原子が塩素原子で置換された形の環状フルオロクロロカーボン重合体も用いることができる。
【0061】
本発明に使用される潤滑性重合体の形態は格別に限定されるものではなく、粒子状であっても、グリース状あるいはワックス状であってもよい。これらの膜形成能を有する重合体は、単独で、あるいは2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0062】
上記潤滑性重合体には、例えば、特開平7−182652号公報や特開平7−182653号公報に記載されているように、摩擦係数をさらに低下させる目的で、潤滑剤等の配合剤を加えて用いることができる。
かかる潤滑剤としては、例えば、パラフィン系、アロマ系、ナフテン系の鉱物油;シリコーンオイル;ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール等の高級アルコール;トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸等の高級脂肪酸、及びこれら高級脂肪酸のLi、Na、K、Mg、Ca、Ba等の塩;ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、ペンタデカン酸イソプロピル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸ヘキシル、マルガリン酸ブチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソアミル、ステアリン酸ヘキシル等の高級脂肪酸エステル;特開平7−125219号公報に記載されているCF3(CH22Si(CH3)Cl2、CF3(CH22Si(OCH33、CF3(CH22SiCl3、CF3(CF27(CH22Si(CH32Cl、CF3(CF27(CH22Si(OCH2CH33、CF3(CF25(CH22Si(NH23等の含フッ素シラン化合物、フォスファゼン化合物等が挙げられる。これらの中でも、鉱物油、シリコーンオイル、高級アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステル、フォスファゼン化合物等が好適である。
潤滑剤の使用量は、潤滑性重合体膜の特性を損なわない範囲で適宜選択され、溶剤100重量部に対して、通常0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜15重量部の範囲である。
【0063】
本発明の潤滑性重合体含有液は、本発明の溶剤組成物に重合体を溶解又は分散させることにより調製することができる。すなわち、潤滑性重合体と所望により配合剤とを本発明の溶剤組成物中に入れ、攪拌すればよい。必要に応じて、加熱や超音波照射等の手段を採ることもできる。また、溶解重合体の分散液を得る場合には、微粒子状態の重合体を用いるのが好ましい。
【0064】
本発明の潤滑性重合体含有液中の潤滑性重合体の含有量は、重合体の種類、被塗布基材の種類、塗布作業性、塗膜の膜厚等を考慮して適宜選択される。また、重合体が含有液中に溶解しているか、分散しているかによっても濃度が変化する。潤滑性重合体が含有液中に溶解している場合には、潤滑性重合体含有液に全体に対して、通常0.0001〜10重量%、好ましくは0.001〜1重量%、より好ましくは0.005〜0.5重量%の範囲である。また、重合体が含有液中に分散している場合には、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲である。
【0065】
本発明の潤滑性重合体含有液が塗布される物品(被塗布基材)としては、特に制限はなく、使用目的に応じて適宜選択される。塗布の対象となる物品の材質としては、例えば、天然ゴム、イソプレン重合体、ブタジエン重合体ゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体グム(SBR)、水素化スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(水素化SBR)、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(水素化NBR)、クロロプレン重合体ゴム、シリコーンゴム等のゴム;アルミニウム、鉄、ステンレス、チタニウム、銅等の金属;カーボン、ガラス、セラミックス、シリコン等の無機物;及びポリカーボネート、ポリイミド、ポリサルフォン、ポリエステル、ポリエーテルサルフォンポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリオレフィン、水素化ポリノルボルネン、水素化ポリスチレン、ベークライト、ポリアセタール感光性樹脂等の樹脂;等が挙げられる。
【0066】
また、本発明の潤滑性重合体含有液は、磁性基材に塗布するのに好適である。磁性基材としては、種々の非磁性基材に直接又はニッケル/リン、チタニウム、ケイ素、クロム、アルマイト等の下地層を介して、強磁性金属薄膜をそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて積層したものを用いることができる。
強磁性金属薄膜の材料としては、例えば、Co、Co−Ni、Co−Cr、Co−Fe、Co−Ni−Fe、Co−Ni−Cr、Co−Ni−P、Co−Ni−Ti、Co−Ni−Ta及びこれらの部分酸化されたものを挙げることができる。これらの金属薄膜は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレティング法、メッキ法等により形成することができる。下地層を含めた強磁性金属薄膜の厚みとしては、通常0.005μm〜100μm、好ましくは0.01μm〜50μmの範囲である。
【0067】
前記強磁性金属薄膜は、その表面に、必要に応じて通常の磁気記録媒体で一般的に用いられている保護膜層が形成されていてもよい。保護膜としては、例えば、Cr、W、Ni等の金属保護膜層;酸化シリコン、SiC、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン等の無機系保護膜層(特開昭61−126627号公報、特開平5−342570号公報等参照);炭素数8〜28の直鎖型飽和脂肪酸及びこれらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩(特公昭56−30609号公報等参照)、シリコン樹脂(特開昭61−131231号公報等参照)、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、プラズマ重合生成物、放射線重合生成物等の有機系保護膜層あるいは複合系保護膜層;等が挙げられる。
【0068】
上記のような材質からなる物品の具体例としては、インクジェット記録ヘッド;電子写真複写装置の感光体上の残存トナーを除去するためのゴム製クリーニングブレード等の事務機器のクリーニングブレード;カメラ、事務機器、医療機器、精密機器、真空ポンプ等の真空機器、電子部品、精密自動車部品、小型モーター、超音波モーター、マイクロマシン等の摺動部;ハードディスク、デジタルビデオテープ 等の各種磁気ディスクの磁気記録媒体;フィルムとゴム又は樹脂シートの間;等が挙げられる。
【0069】
表面に潤滑性重合体含有液を塗布し、次いで溶媒を除去することによって、表面に潤滑性重合体の膜(重合体膜)を有する物品を得ることができる。潤滑性重合体含有液の塗布方法としては、常法に従えばよく、例えば、ディップ法、スピンコート法、スプレーによる吹きつけ法等が挙げられる。潤滑性重合体含有液の塗膜に含まれる溶剤は、一般に、室温下又は加温下に、窒素ガス等の不活性ガス中又は空気中で乾燥させることによって除去することができる。加熱する場合には減圧下に行うことができる。また、光、電子線等のエネルギーを付与して溶媒の除去を促進せしめることもできる。さらに、所望により、塗膜の乾燥後に、熱、光、電子線等のエネルギーを付与して、塗膜を構成する潤滑性重合体の重合度を高めたり、架橋結合を形成せしめることもできる。
【0070】
潤滑性重合体膜の厚さは、通常0.0001μm〜10μm、好ましくは0.0005μm〜5μm、より好ましくは0.001μm〜3μmの範囲である。なお、膜厚の厚さはその用途によっても変化する。例えば、インクジェット記録ヘッドに形成する重合体膜の膜厚は、通常0.001μm〜10μm、好ましくは0.005μm〜5μm、より好ましくは0.01μm〜2μmであり、電子写真複写装置のクリーニングブレードに形成する重合体膜の膜厚は、通常0.01μm〜10μm、好ましくは0.01μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜5μmであり、磁性記録ハードディスクに形成する重合体膜の膜厚は、通常0.0001μm〜10μm、好ましくは0.0001μm〜5μm、より好ましくは0.0005μm〜3μmの範囲である。
【0071】
本発明の潤滑性重合体含有液は、フッ化水素濃度が5ppb以下に低減されたフッ素化炭化水素を溶剤として用いるので、表面が腐食されやすい物品の表面に潤滑性重合体膜を形成した場合であっても、物品表面を腐食することがない。
【0072】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、フッ素化炭化水素、フッ化水素除去材等の種類や使用量等は本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に選択し・変更することができる。
【0073】
(実施例1)
窒素気流下、滴下ロート、精留塔及び撹拌装置を備えた5Lの四つ口フラスコに、フッ化カリウム(商品名:クロキャットF、森田化学工業(株)製)988g(17mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)3Lを仕込み、精留塔塔頂部に備え付けられたジムロート冷却器に−20℃の冷媒を流し、留分トラップを−70℃に冷却した。一方、滴下ロートに原料である1,2−ジクロロ−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン1658g(6.77mol)を仕込み、0.5時間かけてフラスコ内の温度が135℃になるまで昇温した。昇温開始後、0.5〜4時間の間に、滴下ロートから原料を滴下した。塔頂部の温度が生成物の沸点(−27℃)に安定した後、0.7時間(反応開始より1.5時間)経過した時に、精留塔塔頂部とジムロート冷却器の間に設けた抜き出し口から留分の抜き出しを開始した。抜き出しは、塔頂部の温度が上昇をはじめ、DMFの沸点付近となるまで(反応開始から8時間)行ったところ、オクタフルオロシクロペンテン1260g(収率87.8%、純度99.80%)を得た。また、フッ素イオン電極(商品名:イオンメーターTi−5101、東興化学(株)製、)を用いてフッ化水素の濃度を測定したところ、37ppmであった。
【0074】
次に、アルミナ(商品名:N612N、日揮化学(株)製)60gを、内径2.2cm×長さ40cmのテフロン製カラムに充填し、先に得られたオクタフルオロシクロペンテン1200gを流速30ml/minの速さで、15℃で通過させ、0℃に冷却した冷却したステンレス製容器に捕集した。オクタフルオロシクロペンテン約1000gを通過させたところで、該容器内に捕集したオクタフルオロシクロペンテンのフッ化水素濃度を測定したところ、0.4ppbであった。また、ガスクロマトグラフィー(Shimazu GC−14A)にて分析したところ、純度は99.83%であり、オクタフルオロシクロペンテンの新たな不純物の生成は確認されなかった。
上記で得られたオクタフルオロシクロペンテン1000gを2Lのガラス製丸形フラスコに仕込み、窒素雰囲気下で理論段数55段の精留塔を用いて精留を行った。塔頂部温度27℃、還流比40:1で抜き出した結果、純度99.99%のオクタフルオロシクロペンテン900gを得た。
【0075】
(参考例1)
実施例1で用いたアルミナに代えて、Na+フォームの陽イオン交換樹脂(商品名:ダイヤイオンSKIB、三菱化学(株)製)60gを用いた以外は、実施例1と同様に行った。陽イオン交換樹脂中を通過させる前のオクタフルオロシクロペンテンのフッ化水素濃度は45ppmであり、通過させた後のオクタフルオロシクロペンテンのフッ化水素濃度は5ppbであった。また、ガスクロマトグラフィー(Shimazu GC−14A)にて分析したところ、純度は99.83%であり、オクタフルオロシクロペンテンの新たな不純物の生成は確認されなかった。
【0076】
(実施例2)
窒素気流下、滴下ロート、精留塔、温度計及び撹拌装置を備えた5Lの四つ口フラスコにフッ化カリウム(商品名:クロキャットF、森田化学工業(株)製)を500g(8.6mol)、DMF 500ml及びトルエン 500mlを仕込み、精留塔塔頂部に備え付けられたジムロート冷却器に−10℃の冷媒を流し、留分トラップを−70℃に冷却した、滴下ロートに72.1%の1,2−ジクロロ−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、20.7%のトリクロロペンタフルオロシクロペンテン類及び5.4%のテトラクロロテトラフルオロシクロペンテン類からなる原料混合物1498gを仕込んだ。フラスコ内温度を130℃に昇温後、5時間にわたって継続的に原料化合物を滴下ロートから滴下した。反応開始(滴下開始)から2時間経過した後、精留塔塔頂部の温度が目的物の沸点(56℃)になって安定した。その時点から塔頂部の温度が110℃まで昇温するまでの間(反応開始から13時間)、継続的に反応生成物の抜き出しを行った結果、2種類の留分が得られた。各留分をガスクロマトグラフィー(Shimazu GC−14A)にて分析したところ、沸点56℃の留分(留分1)は、目的とする1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン 1106g(4.8mol 収率80.7%、純度98.82%)であった。
【0077】
次に、アルミナ(商品名:N612N、日揮化学(株)製)60gを、内径2.2cm×長さ40cmのテフロンPFA製カラムに充填し、該カラム内に、先に得られた1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン1050gを流速30ml/minの速さで15℃にて通過させ、0℃に冷却したステンレス容器に捕集した。約1000gを通過させたところで、該容器内に捕集した1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンのフッ化水素濃度を測定したところ、フッ化水素濃度は0.4ppbであった。また、ガスクロマトグラフィー(Shimazu GC−14A)にて分析したところ、純度は98.85%であり、1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンの分解による新たな不純物の生成は確認されなかった。
得られた1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン1000gを2Lのガラス製丸型フラスコに仕込み、窒素雰囲気下で理論段数55段相当の精留塔を用いて精留を行った。塔頂部温度56℃、還流比40:1で抜き出した結果、純度99.83%の1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンが950g得られた(収率92%)。
【0078】
(実施例3)
攪拌機付きの50Lオートクレーブに、オクタフルオロシクロペンテン(99.9%純度)42.4kg(200mol)、5%パラジウムカーボン 2.12kgを仕込み、50℃、水素圧0.6MPaの雰囲気下に水素添加を行った。15時間後、水素の吸収が完全に止まったところで加温を止め、反応を停止させた。飽和重曹水にて十分に中和を行った後、有機層を分離し、1mol濃度の炭酸ナトリウム水溶液20Lを加え、30℃で10時間攪拌した。反応液を二層分離し、得られた有機層を、再度攪拌機付きの50Lオートクレーブに、5%パラジウムカーボン1.78kg及びトリデカン1kgとともに仕込んだ。先と同様に50℃で15時間反応させて、水素の吸収が完全に止まったところで加温を停止し、飽和重曹水により中和を行った。その後有機層を蒸留したところ、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン34.0kg(純度99.0%)を得た。
【0079】
得られた1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン5.0kgを5Lのポリプロピレン製のビンに入れ、平均粒径4mmのモレキュラーシーブス5A(ユニオン昭和(株)製)を150g充填したテフロン製カラム(内径2.5cm×長さ40cm)内を流速100ml/minの速度でポンプ循環させた。3時間循環させた後、ポンプを停止し、5Lのポリプロピレン製ビンから1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン200gを抜き出した。抜き出した1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンのうち150gを容量300mlの分液ロートに移し、超純水(電気伝導度:18MΩ/cm2)でフッ素イオンを抽出した。抽出液をイオンクロマトアナライザー(商品名:DX−120、ダイオネクス社製)にてフッ素イオン濃度を分析し、フッ化水素濃度に換算した。
【0080】
残りの1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン50gを使って水分測定と純度分析を行った。水分量はカールフィッシャー水分測定器(商品名:AQ−5型、平沼産業(株)製)で分析し、純度はガスクロマトグラフィー(商品名:HP−6890、ヒューレットバッカー社製)にて分析した。また、同様にして、モレキュラーシーブス5Aで処理する前の1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン中のフッ化水素濃度、水分量及び純度分析を実施した。測定結果を第1表に示す。
また、ガスクロマトグラフィーによる測定の結果、モレキュラーシーブス5Aによる処理の前後で、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの純度に変化は見られず、新たな分解生成物も認められなかった。
【0081】
(実施例4)
実施例3において、モレキュラーシーブス5Aをモレキュラーシーブス4Aに代えた以外は、実施例3と同様に行い、フッ化水素除去処理後の1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン中のフッ化水素濃度、水分量及び純度分析を行った。測定結果を第1表に示す。また、ガスクロマトグラフィーによる測定の結果、モレキュラーシーブス4Aによる処理の前後で、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの純度に変化は見られず、新たな分解生成物も認められなかった。
【0082】
(実施例5)
ペール缶入りのノナフルオロブチル−エチルエーテル(商品名:HFE−7200,住友3M(株)製)5kgを5Lのポリプロピレン製ビンに入れ、平均粒径4mmのモレキュラーシーブス5A(ユニオン昭和(株)製)を150g充填したポリテトラフルオロエチレン製カラム(内径2.5cm×40cm)内を流速100ml/minの速度でポンプ循環させた。3時間循環させた後、ポンプを停止し、ポリプロピレン製ビンからノナフルオロブチル−エチルエーテル200gを抜き出した。抜き出したノナフルオロブチル−エチルエーテルのうち150gを容量300mlの分液ロートに移し、超純水(電気伝導度:18MΩ/cm2)でフッ素イオンを抽出した。抽出液をイオンクロマトグラフィー(商品名:DX−120、ダイオネクス社製)にてフッ素イオン濃度を分析し、フッ化水素濃度に換算した。
【0083】
残りのノナフルオロブチル−エチルエーテル50gを用いて、実施例4と同様にして水分測定と純度分析を行った。また、モレキュラーシーブス5Aと接触させる前のノナフルオロブチル−エチルエーテル中のフッ化水素濃度、水分量及び純度分析も行った。これらの測定結果を第1表に示す。
また、ガスクロマトグラフィーによる測定の結果、モレキュラーシーブス5Aによる処理の前後で、ノナフルオロブチル−エチルエーテルの純度に変化は見られず、新たな分解生成物も認められなかった。
【0084】
【表1】
Figure 0004432230
【0085】
(比較例)
実施例2で合成した1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンのうち1kgを、容量3Lのポリエチレン製ビンに入れ、さらに、ケイ酸塩であるSiO2/Alのモル比が1.97で平均粒径が2mmのアロフェン(商品名:セカードKW、品川煉瓦(株)製)及び10重量%の水酸化ナトリウム水溶液500mlを仕込み、全容を温度25℃、攪拌速度300rpmで3時間攪拌させた。攪拌を停止した後、処理液をろ過してアロフェンを除去し、分液ロートを用いて分液することにより、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを分取した。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの26%が分解し、新たな生成物が認められた。
【0086】
(実施例6)
実施例3と同様に精製して得られた1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン20kg(フッ化水素濃度=0.2ppb)に、直鎖パーフルオロポリエーテル系の潤滑性重合体(分子量1,500)20gと、フォスファゼン系の潤滑剤(商品名:X−1P、ダウケミカル社製)5gを添加した。添加と同時に透明、均一な溶液が得られた。このものを孔径0.2ミクロンのポリテトラフルオロエチレン製フィルターを通して、潤滑性重合体含有液を得た。
【0087】
次いで、得られた潤滑性重合体含有液をハードディスク表面への潤滑剤塗布装置内のディッピング槽内へそれぞれ入れ、該ディッピング槽内へ、ヘッド部に磁性層を有し、該磁性層の表面にカーボン層が形成されたハードディスク10枚を導入した。ハードディスクをディッピング槽内で3分間静置した後、液レベルが2mm/秒で下がるように潤滑性重合体含有液を一定速度で抜き出した。液を抜き出した後、該ハードディスクを室温下に自然乾燥させて、表面に潤滑性重合体膜が形成されたハードディスクを得た。
【0088】
上記で得られたハードディスク10枚のうち、任意の3枚を取り出して、それぞれのハードディスク表面を超純水(電気伝導度:18MΩ/cm2)で抽出し、抽出液をイオンクロマトアナライザー(商品名:DX−120、ダイオネクス社製)にてフッ素イオン濃度を測定した。3枚のいずれのハードディスクからもフッ素イオンは検出されなかった。このことから、本実施例で得られた潤滑性重合体含有液を用いてハードディスク表面に潤滑性重合体膜を形成しても、ハードディスクのヘッドの汚れ、腐食が低減されることがわかった。
【0089】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のフッ素化炭化水素の精製方法によれば、簡便且つ効率よくフッ化水素濃度を格段に低減できる。また、本発明によれば、フッ化水素除去材と接触させてもフッ素化炭化水素の分解等が起こらず、フッ化水素を除去することが可能である。したがって、特に本発明はアルカリに安定でないフッ素化炭化水素を精製する場合に好適である。本発明のフッ素化不飽和炭化水素は、含まれるフッ化水素が格段に低減されているので、特に高純度なものが要求される半導体製造におけるエッチングガスとして有用である。本発明の溶剤は、含まれるフッ化水素濃度を0.5ppb以下に低減されたフッ素化炭化水素を主成分とする。したがって、本発明の溶剤を洗浄溶剤として用いた場合であっても、洗浄設備を腐食することがない。また、本発明の溶剤を潤滑性重合体の溶剤として用いる場合には、得られた潤滑性重合体含有液を物品表面に塗布して潤滑性重合体膜を形成した場合であっても、該物品の表面を腐食することがない。したがって、本発明の潤滑性重合体含有液は、特に高耐久性が要求され、且つ表面が腐食されやすい磁性基材等の表面に潤滑性重合体膜を形成する場合に好適に使用することができる。

Claims (3)

  1. フッ化水素を含有する、オクタフルオロシクロペンテン、1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、又はノナフルオロブチル−エチルエーテルの少なくとも一種のフッ素化炭化水素を、該フッ素化炭化水素100重量部に対して、2〜10重量部の、アルミナ又はモレキュラーシーブスと接触させることにより、フッ化水素の含有量を0.5ppb以下に低減することを特徴とするフッ素化炭化水素の精製方法。
  2. 請求項1に記載の精製方法により得られたフッ素化炭化水素の1種又は2種以上からなる溶剤。
  3. 請求項2に記載の溶剤に、液全体に対し、0.0001〜10重量%の潤滑性重合体を溶解させるか、又は、液全体に対して0.01〜20重量%の潤滑性重合体を分散させて得られる潤滑性重合体含有液。
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