JP2015196772A - 水系潤滑剤及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来のハイパーブランチ型ポリマーを含む水系潤滑剤に比べて耐金属腐食性に優れると共に、低粘度で且つ摩擦係数が小さく、耐摩耗性も良好である、水系潤滑剤を提供する。【解決手段】特定の繰り返し単位を有する分岐型ポリマーを含み、且つ燃焼イオンクロマトグラフ法によるフッ素原子の含有量が1.0?10-2質量%以下である、水系潤滑剤。【選択図】なし
Description
本発明は、水系潤滑剤及びその製造方法に関する。
金属加工油、作動油等の分野においては、潤滑剤の漏洩、発熱の防止や飛散による火災の発生を未然に防止する目的で水系潤滑剤が広く使用されている。ソリューション型切削油や水−グリコール系作動油に代表される水系潤滑剤では、潤滑性の向上剤や増粘剤として、ポリエーテル化合物が使用されている。このポリエーテル化合物を含む水系潤滑剤は、外観が透明であり、不燃性で高温での安定性が高く、分離や腐敗の心配が無い等の利点がある。
このような用途に用いられるポリエーテル化合物としては、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム重合物が一般的である。また、低起泡性のポリエーテル化合物として、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック重合物が使用される場合もある。
例えば、特許文献1には、ポリエチレングリコールにプロピレンオキサイドを付加させてなるリバースブロック型のポリエーテルを含有する金属加工油組成物が開示されている。
また、特許文献2には、PO−EO−PO構造(PO:オキシプロピレン基、EO:オキシエチレン基)のブロック型ポリオキシアルキレン化合物、炭素数8〜10の脂肪酸、及び塩基性化合物を含有する水溶性切削油剤組成物が開示されている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載されたような従来から使用されていたポリエーテル化合物は、いずれも潤滑性の向上という観点においては、充分に満足し得るものではなかった。
このような用途に用いられるポリエーテル化合物としては、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム重合物が一般的である。また、低起泡性のポリエーテル化合物として、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック重合物が使用される場合もある。
例えば、特許文献1には、ポリエチレングリコールにプロピレンオキサイドを付加させてなるリバースブロック型のポリエーテルを含有する金属加工油組成物が開示されている。
また、特許文献2には、PO−EO−PO構造(PO:オキシプロピレン基、EO:オキシエチレン基)のブロック型ポリオキシアルキレン化合物、炭素数8〜10の脂肪酸、及び塩基性化合物を含有する水溶性切削油剤組成物が開示されている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載されたような従来から使用されていたポリエーテル化合物は、いずれも潤滑性の向上という観点においては、充分に満足し得るものではなかった。
近年、デンドリティック高分子化合物の研究開発が、その多分岐構造が様々な機能の発現を促し、幅広い応用展開が期待できることから、積極的になされている。このデンドリティック高分子化合物は、デンドリマーとハイパーブランチ型ポリマーに大別される。
開環重合によるハイパーブランチ型ポリマーの一つとして、例えば、非特許文献1、2には、環状エーテルの開環反応を、分岐点形成、分子鎖成長に利用して得られたハイパーブランチ型ポリエーテルが開示されている。
ハイパーブランチ型ポリマーは、ポリアルキレングリコール等の直鎖型ポリマーに比べ、水系潤滑剤に使用した時、低粘度で且つ摩擦係数が小さく、潤滑性能に優れることが、特許文献3で知られている。
開環重合によるハイパーブランチ型ポリマーの一つとして、例えば、非特許文献1、2には、環状エーテルの開環反応を、分岐点形成、分子鎖成長に利用して得られたハイパーブランチ型ポリエーテルが開示されている。
ハイパーブランチ型ポリマーは、ポリアルキレングリコール等の直鎖型ポリマーに比べ、水系潤滑剤に使用した時、低粘度で且つ摩擦係数が小さく、潤滑性能に優れることが、特許文献3で知られている。
Reviews in Molecular Biotech. 2002, 90, 257-267
Macromolecules 2006, 39, 7708-7717
ところで、本発明者らの検討によると、特許文献3に記載の方法で得られたハイパーブランチ型ポリマーを含む水系潤滑剤は、潤滑性能には優れているものの、摺動材等の金属部分が腐食されやすいことがわかった。
つまり、特許文献3に記載の水系潤滑剤は、耐金属腐食性の観点について更なる検討の余地がある。
つまり、特許文献3に記載の水系潤滑剤は、耐金属腐食性の観点について更なる検討の余地がある。
本発明は、上記問題点の解決を鑑みてなされたものであり、従来のハイパーブランチ型ポリマーを含む水系潤滑剤に比べて耐金属腐食性に優れると共に、低粘度で且つ摩擦係数が小さく、耐摩耗性も良好である、水系潤滑剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、水系潤滑剤中に含有するフッ素原子が、摺動材等の金属部分の腐食を引き起こす原因であると考えた。
その上で、本発明者らは、水系潤滑剤中に含有されるフッ素原子の含有量を所定値以下に調整すること、もしくは特定の精製法により精製する分岐型ポリマーを含む水系潤滑剤が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
その上で、本発明者らは、水系潤滑剤中に含有されるフッ素原子の含有量を所定値以下に調整すること、もしくは特定の精製法により精製する分岐型ポリマーを含む水系潤滑剤が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[14]に関する。
[1]下記一般式(1)で示す繰り返し単位を有する分岐型ポリマーを含み、且つ燃焼イオンクロマトグラフ法によるフッ素原子の含有量が1.0×10-2質量%以下である、水系潤滑剤。
〔式(1)中、nはジオキシプロピレン基の平均付加モル数を示す。〕
[2]前記分岐型ポリマーが、ハイパーブランチ型ポリマーである、上記[1]に記載の水系潤滑剤。
[3]前記水系潤滑剤中に含有されるフッ素原子が、当該分岐型ポリマーの合成時に用いられるフッ素化合物に由来する、上記[1]又は[2]に記載の水系潤滑剤。
[4]前記フッ素化合物が、フッ素原子及びホウ素原子を含有する化合物である、上記[3]に記載の水系潤滑剤。
[5]前記フッ素化合物が、BF3錯体である、上記[3]又は[4]に記載の水系潤滑剤。
[6]前記分岐型ポリマーが、イオン交換樹脂を用いて精製されたものである、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の水系潤滑剤。
[7]フッ素化合物を用いてグリシドールの開環重合により得られ、イオン交換樹脂を用いて精製された、下記一般式(1)で示す繰り返し単位を有する分岐型ポリマーを含む、水系潤滑剤。
〔式(1)中、nはジオキシプロピレン基の平均付加モル数を示す。〕
[8]前記分岐型ポリマーの重量平均分子量が、5,000〜100,000である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の水系潤滑剤。
[9]前記分岐型ポリマーの含有量が1〜70質量%である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の水系潤滑剤。
[10]前記水系潤滑剤の25℃での粘度が1〜100mPa・sである、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の水系潤滑剤。
[11]水系金属加工剤として用いられる、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の水系潤滑剤。
[12]塑性加工用水系金属加工剤、切削加工用水系金属加工剤、又は研削加工用水系金属加工剤として用いられる、上記[11]に記載の水系潤滑剤。
[13]液圧作動液として用いられる、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の水系潤滑剤。
[14][1]〜[13]のいずれかに記載の水系潤滑剤の製造方法であって、下記工程(I)〜(II)を有する、水系潤滑剤の製造方法。
工程(I):フッ素化合物を用いて、グリシドールの開環重合により、前記分岐型ポリマーを合成する工程
工程(II):前記分岐型ポリマーを含有する溶液から、後処理後に残留する前記フッ素化合物及び当該フッ素化合物に由来の生成物を除去する工程
[1]下記一般式(1)で示す繰り返し単位を有する分岐型ポリマーを含み、且つ燃焼イオンクロマトグラフ法によるフッ素原子の含有量が1.0×10-2質量%以下である、水系潤滑剤。
[2]前記分岐型ポリマーが、ハイパーブランチ型ポリマーである、上記[1]に記載の水系潤滑剤。
[3]前記水系潤滑剤中に含有されるフッ素原子が、当該分岐型ポリマーの合成時に用いられるフッ素化合物に由来する、上記[1]又は[2]に記載の水系潤滑剤。
[4]前記フッ素化合物が、フッ素原子及びホウ素原子を含有する化合物である、上記[3]に記載の水系潤滑剤。
[5]前記フッ素化合物が、BF3錯体である、上記[3]又は[4]に記載の水系潤滑剤。
[6]前記分岐型ポリマーが、イオン交換樹脂を用いて精製されたものである、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の水系潤滑剤。
[7]フッ素化合物を用いてグリシドールの開環重合により得られ、イオン交換樹脂を用いて精製された、下記一般式(1)で示す繰り返し単位を有する分岐型ポリマーを含む、水系潤滑剤。
[8]前記分岐型ポリマーの重量平均分子量が、5,000〜100,000である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の水系潤滑剤。
[9]前記分岐型ポリマーの含有量が1〜70質量%である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の水系潤滑剤。
[10]前記水系潤滑剤の25℃での粘度が1〜100mPa・sである、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の水系潤滑剤。
[11]水系金属加工剤として用いられる、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の水系潤滑剤。
[12]塑性加工用水系金属加工剤、切削加工用水系金属加工剤、又は研削加工用水系金属加工剤として用いられる、上記[11]に記載の水系潤滑剤。
[13]液圧作動液として用いられる、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の水系潤滑剤。
[14][1]〜[13]のいずれかに記載の水系潤滑剤の製造方法であって、下記工程(I)〜(II)を有する、水系潤滑剤の製造方法。
工程(I):フッ素化合物を用いて、グリシドールの開環重合により、前記分岐型ポリマーを合成する工程
工程(II):前記分岐型ポリマーを含有する溶液から、後処理後に残留する前記フッ素化合物及び当該フッ素化合物に由来の生成物を除去する工程
本発明の水系潤滑剤は、従来のハイパーブランチ型ポリマーを含む水系潤滑剤に比べて耐金属腐食性に優れると共に、低粘度で且つ摩擦係数が小さく、耐摩耗性にも優れる。
〔水系潤滑剤〕
本発明の水系潤滑剤は、下記一般式(1)で示す繰り返し単位を有する分岐型ポリマーを含み、且つ燃焼イオンクロマトグラフ法によるフッ素原子の含有量が1.0×10-2質量%以下である水系潤滑剤(以下、「本発明の水系潤滑剤(1)」ともいう)に関する。
〔式(1)中、nはジオキシプロピレン基の平均付加モル数を示す。〕
本発明の水系潤滑剤は、下記一般式(1)で示す繰り返し単位を有する分岐型ポリマーを含み、且つ燃焼イオンクロマトグラフ法によるフッ素原子の含有量が1.0×10-2質量%以下である水系潤滑剤(以下、「本発明の水系潤滑剤(1)」ともいう)に関する。
また、本発明の水系潤滑剤の別態様としては、フッ素化合物を用いてグリシドールの開環重合により得られ、イオン交換樹脂を用いて精製された、上記一般式(1)で示す繰り返し単位を有する分岐型ポリマーを含む水系潤滑剤(以下、「本発明の水系潤滑剤(2)」ともいう)に関する。
なお、以下の記載において、「本発明の水系潤滑剤」とは、「本発明の水系潤滑剤(1)」及び「本発明の水系潤滑剤(2)」の双方を示す。
なお、以下の記載において、「本発明の水系潤滑剤」とは、「本発明の水系潤滑剤(1)」及び「本発明の水系潤滑剤(2)」の双方を示す。
本発明の水系潤滑剤に含まれる上記分岐型ポリマーは、一般的にグリシドールの開環重合によって得ることができる。当該開環重合は、モノマーのグリシドール自体には分岐点がなく、開環反応によって分岐点が形成される重合であって、多重分岐重合(multibrnching ring−opening polymerization:MBP又はMBROP)と呼ばれる。グリシドールはエポキシ基を1個、ヒドロキシ基を1個もつため、上記MBPに対する潜在的AB2型モノマーと見なすことができる。
ところで、上記開環重合の際に、触媒として、BF3錯体等のフッ素化合物が通常使用される。当該フッ素化合物は、反応停止後の後処理において、アンモニア水等を加えて失活させた後、減圧留去が行われる。
しかしながら、当該フッ素化合物は、反応停止後の後処理で加えられた水と反応し、水溶性の生成物(例えば、フッ化水素酸、HBF4等)が生じやすい。この水溶性の生成物は、減圧留去により除去することが難しく、摺動材等の金属部分の腐食の進行の原因となる。
ところで、上記開環重合の際に、触媒として、BF3錯体等のフッ素化合物が通常使用される。当該フッ素化合物は、反応停止後の後処理において、アンモニア水等を加えて失活させた後、減圧留去が行われる。
しかしながら、当該フッ素化合物は、反応停止後の後処理で加えられた水と反応し、水溶性の生成物(例えば、フッ化水素酸、HBF4等)が生じやすい。この水溶性の生成物は、減圧留去により除去することが難しく、摺動材等の金属部分の腐食の進行の原因となる。
そこで、本発明の水系潤滑剤(1)は、該水系潤滑剤(1)中に含まれるフッ素原子の含有量を1.0×10-2質量%以下に調製することで、耐金属腐食性に優れた水系潤滑剤となり得るいう知見により、完成されたものである。
また、本発明の水系潤滑剤(2)は、フッ素化合物を用いたグリシドールの開環重合後に、イオン交換樹脂により精製し、フッ素化合物及び当該フッ素化合物に由来の化合物が除去された分岐型ポリマーを用いることで、耐金属腐食性に優れた水系潤滑剤が得られるという知見により、完成されたものである。
また、本発明の水系潤滑剤(2)は、フッ素化合物を用いたグリシドールの開環重合後に、イオン交換樹脂により精製し、フッ素化合物及び当該フッ素化合物に由来の化合物が除去された分岐型ポリマーを用いることで、耐金属腐食性に優れた水系潤滑剤が得られるという知見により、完成されたものである。
なお、本発明の水系潤滑剤は、水溶液型潤滑剤又は水を媒体とするエマルション型潤滑剤を指す。
なお、本発明の水系潤滑剤は、本発明が奏する効果を損なわない範囲において、上記分岐型ポリマー以外に、汎用添加剤や溶媒等を含有してもよく、上記分岐型ポリマーを合成する際に使用した未反応の原料や添加剤等が含まれていてもよい。
以下、本発明の水系潤滑剤に含まれる各成分について説明する。
なお、本発明の水系潤滑剤は、本発明が奏する効果を損なわない範囲において、上記分岐型ポリマー以外に、汎用添加剤や溶媒等を含有してもよく、上記分岐型ポリマーを合成する際に使用した未反応の原料や添加剤等が含まれていてもよい。
以下、本発明の水系潤滑剤に含まれる各成分について説明する。
<分岐型ポリマー>
本発明の水系潤滑剤に含まれる分岐型ポリマーは、上記一般式(1)で示す繰り返し単位を有する分岐を有するポリマーである。
当該分岐型ポリマーの中でも、上記一般式(1)で示す繰り返し単位を有しつつ、構造中に樹状分岐を有する一方、分岐していない部分も存在する、ハイパーブランチ型ポリマーが好ましい。
本発明の水系潤滑剤に含まれる分岐型ポリマーは、上記一般式(1)で示す繰り返し単位を有する分岐を有するポリマーである。
当該分岐型ポリマーの中でも、上記一般式(1)で示す繰り返し単位を有しつつ、構造中に樹状分岐を有する一方、分岐していない部分も存在する、ハイパーブランチ型ポリマーが好ましい。
分岐型ポリマーの末端基としては、水酸基又は炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましく、末端基の少なくとも一つが水酸基であることがより好ましく、すべての末端基が水酸基であることが更に好ましい。
炭素数1〜3のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等)等が挙げられる。
炭素数1〜3のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等)等が挙げられる。
分岐型ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、低粘度の水系潤滑剤を得る観点、並びに、摩擦係数を低下させて、耐摩耗性が良好な水系潤滑剤を得る観点から、好ましくは5,000〜100,000、より好ましくは6,000〜90,000、更に好ましくは7,000〜80,000である。
なお、前記式(1)中のnは、ジオキシプロピレン基の平均付加モル数を示し、分岐型ポリマーの重量平均分子量(Mw)の範囲に併せて、適宜設定されるものであり、通常は10≦n≦10000を満たす範囲の値である。
なお、前記式(1)中のnは、ジオキシプロピレン基の平均付加モル数を示し、分岐型ポリマーの重量平均分子量(Mw)の範囲に併せて、適宜設定されるものであり、通常は10≦n≦10000を満たす範囲の値である。
本発明の水系潤滑剤中の分岐型ポリマーの含有量は、得られる水系潤滑剤中にてポリマー同士の絡み合いを少なくし、粘度及び摩擦係数を低下させた水系潤滑剤とする観点から、水系潤滑剤の全量(100質量%)に対して、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは2〜60質量%、更に好ましくは5〜55質量%、より更に好ましくは10〜55質量%である。
<その他の成分>
本発明の水系潤滑剤は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記分岐型ポリマーや必要により用いるその他のポリマー成分以外に、汎用添加剤や溶媒を含む水系潤滑剤としてもよい。
本発明の水系潤滑剤は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記分岐型ポリマーや必要により用いるその他のポリマー成分以外に、汎用添加剤や溶媒を含む水系潤滑剤としてもよい。
上記汎用添加剤としては、例えば、油性剤、摩擦緩和剤、極圧剤、酸化防止剤、清浄剤、分散剤、消泡剤、界面活性剤、防錆剤、防腐剤、防食剤、塩基性化合物が挙げられる。
これらの成分は、それぞれ単独で又は2種以上を併用してもよい。
本発明の水系潤滑剤にこれらの成分を含有される場合、これらの成分のそれぞれの含有量は、水系潤滑剤の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.03〜10質量%、更に好ましくは0.05〜5質量%である。
これらの成分は、それぞれ単独で又は2種以上を併用してもよい。
本発明の水系潤滑剤にこれらの成分を含有される場合、これらの成分のそれぞれの含有量は、水系潤滑剤の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.03〜10質量%、更に好ましくは0.05〜5質量%である。
また、上記溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール等の炭素数1〜3のアルコール等が挙げられ、水が好ましい。
本発明の水系潤滑剤は、水溶液型潤滑剤、又は水を媒体とするエマルション型潤滑剤のいずれであってもよい。なお、上記添加成分として、均一な水溶液型潤滑剤とすることができない成分を用いる場合には、水を媒体とするエマルション型潤滑剤とすればよい。
本発明の水系潤滑剤は、水溶液型潤滑剤、又は水を媒体とするエマルション型潤滑剤のいずれであってもよい。なお、上記添加成分として、均一な水溶液型潤滑剤とすることができない成分を用いる場合には、水を媒体とするエマルション型潤滑剤とすればよい。
本発明の水系潤滑剤における水の含有量は、水系潤滑剤の全量(100質量%)に対して、好ましくは2〜98質量%、より好ましくは10〜98質量%、更に好ましくは30〜98質量%、より更に好ましくは50〜98質量%である。
<本発明の水系潤滑剤(1)の特徴>
本発明の水系潤滑剤(1)は、燃焼イオンクロマトグラフ法によるフッ素原子の含有量が5.0×10-2質量%以下に調製されたものである。
当該フッ素原子の含有量が1.0×10-2質量%を超える水系潤滑剤は、耐金属腐食性が劣るものであり、使用した場合、摺動材等の金属部分が腐食されやすい。
本発明の水系潤滑剤(1)は、燃焼イオンクロマトグラフ法によるフッ素原子の含有量が5.0×10-2質量%以下に調製されたものである。
当該フッ素原子の含有量が1.0×10-2質量%を超える水系潤滑剤は、耐金属腐食性が劣るものであり、使用した場合、摺動材等の金属部分が腐食されやすい。
本発明の水系潤滑剤(1)の燃焼イオンクロマトグラフ法によるフッ素原子の含有量は、得られる水系潤滑剤の耐金属腐食性の向上の観点から、好ましくは1.0×10-2質量%以下、より好ましくは9.0×10-3質量%以下、更に好ましくは8.0×10-3質量%以下である。
なお、本発明の水系潤滑剤(1)中の当該フッ素原子の含有量の下限値は、特に制限はないが、通常1.0×10-3質量%程度である。
なお、本発明の水系潤滑剤(1)中の当該フッ素原子の含有量の下限値は、特に制限はないが、通常1.0×10-3質量%程度である。
なお、本発明の水系潤滑剤(1)中に含有されるフッ素原子は、上述の分岐型ポリマーの合成時に用いられるフッ素化合物に由来する化合物が主である。上述のとおり、当該フッ素化合物としては、上述のとおり、グリシドールの開環重合の際に触媒として用いられ、BF3錯体等のフッ素原子及びホウ素原子を含有する化合物が一般的である。
また、「フッ素化合物に由来する化合物」とは、例えば、グリシドールの開環重合に触媒として用いられる、BF3錯体等のフッ素化合物そのものだけでなく、重合後の後処理により水等と反応した生成物(例えば、フッ化水素酸、HBF4等)も含まれる。
また、「フッ素化合物に由来する化合物」とは、例えば、グリシドールの開環重合に触媒として用いられる、BF3錯体等のフッ素化合物そのものだけでなく、重合後の後処理により水等と反応した生成物(例えば、フッ化水素酸、HBF4等)も含まれる。
本発明の水系潤滑剤(1)中の上述のフッ素原子の含有量を上記範囲となるように調製する方法としては、特に制限は無いが、イオン交換樹脂を用いて精製された分岐型ポリマーを用いることが好ましい。
上述のとおり、水系潤滑剤中に含まれるフッ素原子は、分岐型ポリマーの合成時に用いられるフッ素化合物に由来する化合物が主であるため、イオン交換樹脂を用いて精製された分岐型ポリマーを用いることで、水系潤滑剤(1)中のフッ素原子の含有量を低減させることができる。
なお、使用するイオン交換樹脂としては、後述の本発明の水系潤滑剤(2)で用いられるイオン交換樹脂と同じものが挙げられ、好適な樹脂も同じである。
上述のとおり、水系潤滑剤中に含まれるフッ素原子は、分岐型ポリマーの合成時に用いられるフッ素化合物に由来する化合物が主であるため、イオン交換樹脂を用いて精製された分岐型ポリマーを用いることで、水系潤滑剤(1)中のフッ素原子の含有量を低減させることができる。
なお、使用するイオン交換樹脂としては、後述の本発明の水系潤滑剤(2)で用いられるイオン交換樹脂と同じものが挙げられ、好適な樹脂も同じである。
本発明の水系潤滑剤(1)中に含有する分岐型ポリマー100質量部に対する、燃焼イオンクロマトグラフ法によるフッ素原子の含有量の比率(質量比)としては、好ましくは5.0×10-2質量部以下、より好ましくは2.0×10-2質量部以下、更に好ましくは1.0×10-2質量部以下である。
なお、上記比率の下限値は、特に制限はないが、通常1.0×10-3質量部程度である。
なお、上記比率の下限値は、特に制限はないが、通常1.0×10-3質量部程度である。
<本発明の水系潤滑剤(2)の特徴>
本発明の水系潤滑剤(2)は、フッ素化合物を用いてグリシドールの開環重合により得られ、イオン交換樹脂を用いて精製された分岐型ポリマーを含有する。
BF3錯体等のフッ素化合物及び当該フッ素化合物に由来する化合物は、通常の精製法では除去され難い。これに対して、本発明の水系潤滑剤(2)が含有する上記分岐型ポリマーは、イオン交換樹脂により精製されたものであるため、当該分岐型ポリマー中のフッ素化合物及び当該フッ素化合物に由来の化合物が除去されており、当該分岐型ポリマー中のフッ素原子含有量が非常に少ない。そのため、本発明の水系潤滑剤(2)は、耐金属腐食性に優れる。
本発明の水系潤滑剤(2)は、フッ素化合物を用いてグリシドールの開環重合により得られ、イオン交換樹脂を用いて精製された分岐型ポリマーを含有する。
BF3錯体等のフッ素化合物及び当該フッ素化合物に由来する化合物は、通常の精製法では除去され難い。これに対して、本発明の水系潤滑剤(2)が含有する上記分岐型ポリマーは、イオン交換樹脂により精製されたものであるため、当該分岐型ポリマー中のフッ素化合物及び当該フッ素化合物に由来の化合物が除去されており、当該分岐型ポリマー中のフッ素原子含有量が非常に少ない。そのため、本発明の水系潤滑剤(2)は、耐金属腐食性に優れる。
本発明の水系潤滑剤(2)に含まれる分岐型ポリマーを得るために用いるイオン交換樹脂としては、アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂、又はこれらの混合が好ましい。
アニオン交換樹脂としては、一般にはスチレン−ジビニルベンゼン架橋共重合体をクロルメチル化後、アミノ化をトリメチルアミン、ジメチルエタノールアミンで行い4級化して得られる強塩基性樹脂(交換基は第4級アンモニウム基)、スチレン−ジビニルベンゼン架橋共重合体で第1ないし第3級アミンを交換基とする弱塩基性樹脂、アクリル酸系架橋重合体で第3級アミンを交換基とする樹脂、ピリジル基又は置換ピリジル基を有するポリマーからなるピリジン系アニオン樹脂等が挙げられる。
カチオン交換樹脂としては、H+型カチオン交換樹脂が好適に使用される。カチオン交換樹脂としては一般にはスチレン−ジビニルベンゼン架橋共重合体にスルホン酸基を導入した網目状分子構造からなる強酸性カチオン交換樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、官能基として−NR3Clや−NR2(Rはアルキル基)を有する強塩基性アニオン交換樹脂が好ましい。
アニオン交換樹脂としては、一般にはスチレン−ジビニルベンゼン架橋共重合体をクロルメチル化後、アミノ化をトリメチルアミン、ジメチルエタノールアミンで行い4級化して得られる強塩基性樹脂(交換基は第4級アンモニウム基)、スチレン−ジビニルベンゼン架橋共重合体で第1ないし第3級アミンを交換基とする弱塩基性樹脂、アクリル酸系架橋重合体で第3級アミンを交換基とする樹脂、ピリジル基又は置換ピリジル基を有するポリマーからなるピリジン系アニオン樹脂等が挙げられる。
カチオン交換樹脂としては、H+型カチオン交換樹脂が好適に使用される。カチオン交換樹脂としては一般にはスチレン−ジビニルベンゼン架橋共重合体にスルホン酸基を導入した網目状分子構造からなる強酸性カチオン交換樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、官能基として−NR3Clや−NR2(Rはアルキル基)を有する強塩基性アニオン交換樹脂が好ましい。
本発明の水系潤滑剤(2)の燃焼イオンクロマトグラフ法によるフッ素原子の含有量は、得られる水系潤滑剤の耐金属腐食性の向上の観点から、好ましくは1.0×10-2質量%以下、より好ましくは9.0×10-3質量%以下、更に好ましくは8.0×10-3質量%以下である。
なお、本発明の水系潤滑剤(2)中の当該フッ素原子の含有量の下限値は、特に制限はないが、通常1.0×10-3質量%程度である。
なお、本発明の水系潤滑剤(2)中の当該フッ素原子の含有量の下限値は、特に制限はないが、通常1.0×10-3質量%程度である。
本発明の水系潤滑剤(2)に含まれる、イオン交換樹脂を用いて精製された分岐型ポリマー100質量部に対する、燃焼イオンクロマトグラフ法によるフッ素原子の含有量との比率(質量比)としては、好ましくは5.0×10-2質量部以下、より好ましくは2.0×10-2質量部以下、更に好ましくは1.0×10-2質量部以下である。
なお、当該比率の下限値は、特に制限はないが、通常1.0×10-3質量部程度である。
なお、当該比率の下限値は、特に制限はないが、通常1.0×10-3質量部程度である。
〔本発明の水系潤滑剤の製造方法〕
本発明の水系潤滑剤の製造方法としては、特に制限は無いが、下記工程(I)〜(II)を有する製造方法が好ましい。
・工程(I):フッ素化合物を用いて、グリシドールの開環重合により、前記分岐型ポリマーを合成する工程
・工程(II):前記分岐型ポリマーを含有する溶液から、後処理後に残留する前記フッ素化合物及び当該フッ素化合物に由来の生成物を除去する工程
以下、上記工程(I)及び(II)について説明する。
本発明の水系潤滑剤の製造方法としては、特に制限は無いが、下記工程(I)〜(II)を有する製造方法が好ましい。
・工程(I):フッ素化合物を用いて、グリシドールの開環重合により、前記分岐型ポリマーを合成する工程
・工程(II):前記分岐型ポリマーを含有する溶液から、後処理後に残留する前記フッ素化合物及び当該フッ素化合物に由来の生成物を除去する工程
以下、上記工程(I)及び(II)について説明する。
<工程(I)>
工程(I)で使用するフッ素化合物としては、フッ素原子及びホウ素原子を含む化合物が好ましく、BF3錯体がより好ましい。
BF3錯体としては、例えば、BF3・エチルエーテル錯体[(C2H5)2O・BF3]、BF3・フェノール錯体[(C6H5OH)2・BF3]、BF3・モノエチルアミン錯体[C2H5NH2・BF3]、BF3・n−ブチルエーテル錯体[(n−C4H9)2O・BF3]等が挙げられる。これらの中でも、BF3・エチルエーテル錯体が好ましい。
工程(I)で使用するフッ素化合物としては、フッ素原子及びホウ素原子を含む化合物が好ましく、BF3錯体がより好ましい。
BF3錯体としては、例えば、BF3・エチルエーテル錯体[(C2H5)2O・BF3]、BF3・フェノール錯体[(C6H5OH)2・BF3]、BF3・モノエチルアミン錯体[C2H5NH2・BF3]、BF3・n−ブチルエーテル錯体[(n−C4H9)2O・BF3]等が挙げられる。これらの中でも、BF3・エチルエーテル錯体が好ましい。
グリシドールの開環重合反応で使用する溶媒としては、反応に不活性であって、触媒、モノマーのグリシドール及び生成物の分岐型ポリマーを、充分に溶解し得る有機溶媒であれば特に制限されないが、ジクロロメタンが好ましい。
本工程での具体的な操作としては、攪拌装置及びグリシドール投入装置を備えた反応装置に、上述の溶媒及び触媒であるBF3錯体を投入し、攪拌しながら、−30〜10℃(好ましくは−25〜0℃)の温度条件の下、グリシドールを添加する方法が好ましい。
BF3錯体の配合量は、溶媒1L当たり、好ましくは1〜30mmol、より好ましくは2〜20mmolである。
また、グリシドールの添加方法としては、滴下が好ましい。グリシドールの滴下速度としては、スケールにより適宜設定されるが、例えば、滴下量が500g以下であれば、好ましくは0.1〜3.0mL/分、より好ましくは0.3〜1.5mL/分である。
グリシドールの配合量は、BF3錯体1モルに対して、好ましくは100〜1800モル、より好ましくは150〜1600モルである。
グリシドールを添加してからの反応時間としては、好ましくは1〜12時間である。
そして、アンモニア水等を反応器内に投入して重合反応を停止後、溶媒を留去し、残渣をメタノール等に溶解し、アセトン/メタノール混合溶媒中で再沈殿することにより、分岐型ポリマーを高純度で得ることができる。
BF3錯体の配合量は、溶媒1L当たり、好ましくは1〜30mmol、より好ましくは2〜20mmolである。
また、グリシドールの添加方法としては、滴下が好ましい。グリシドールの滴下速度としては、スケールにより適宜設定されるが、例えば、滴下量が500g以下であれば、好ましくは0.1〜3.0mL/分、より好ましくは0.3〜1.5mL/分である。
グリシドールの配合量は、BF3錯体1モルに対して、好ましくは100〜1800モル、より好ましくは150〜1600モルである。
グリシドールを添加してからの反応時間としては、好ましくは1〜12時間である。
そして、アンモニア水等を反応器内に投入して重合反応を停止後、溶媒を留去し、残渣をメタノール等に溶解し、アセトン/メタノール混合溶媒中で再沈殿することにより、分岐型ポリマーを高純度で得ることができる。
<工程(2)>
工程(2)は、前記分岐型ポリマーを含有する溶液から、後処理後に残留する前記フッ素化合物及び当該フッ素化合物に由来の生成物を除去する工程である。
前記フッ素化合物及び当該フッ素化合物に由来の生成物としては、BF3錯体等のフッ素化合物も含まれるが、それ以外に、重合後の後処理により水等と反応した生成物(例えば、フッ化水素酸、HBF4等)も含まれる。
工程(2)は、前記分岐型ポリマーを含有する溶液から、後処理後に残留する前記フッ素化合物及び当該フッ素化合物に由来の生成物を除去する工程である。
前記フッ素化合物及び当該フッ素化合物に由来の生成物としては、BF3錯体等のフッ素化合物も含まれるが、それ以外に、重合後の後処理により水等と反応した生成物(例えば、フッ化水素酸、HBF4等)も含まれる。
前記フッ素化合物及び当該フッ素化合物に由来の生成物を除去する方法としては、前記分岐型ポリマーを含有する溶液中に、上述のイオン交換樹脂を投入して精製する方法が好ましい。
イオン交換樹脂を用いた精製処理法としては、前記合成反応後の反応液中にイオン交換樹脂を存在させて、処理後にイオン交換樹脂と反応液とを濾過等により分離してもよいし、イオン交換樹脂を充填した樹脂塔に反応液を通液してもよい。
イオン交換樹脂を用いた精製処理法としては、前記合成反応後の反応液中にイオン交換樹脂を存在させて、処理後にイオン交換樹脂と反応液とを濾過等により分離してもよいし、イオン交換樹脂を充填した樹脂塔に反応液を通液してもよい。
イオン交換樹脂を分岐型ポリマーを含む溶液中に投入して精製する場合、溶液中の分岐型ポリマーとイオン交換樹脂との混合比率(質量比、〔分岐型ポリマー/イオン交換樹脂〕としては、好ましくは1.0〜5.0、より好ましくは1.0〜4.0、更に好ましくは1.0〜3.0である。
また、混合時間としては、好ましくは1〜10時間である。
また、混合時間としては、好ましくは1〜10時間である。
その後、イオン交換樹脂を除去し、再沈殿法等を経ることで、フッ素含有量が低減された分岐型ポリマーを得ることができる。
そして、得られた分岐型ポリマーに、上述の汎用添加剤や水等の溶媒を加えることで、本発明の水系潤滑剤を得られる。
そして、得られた分岐型ポリマーに、上述の汎用添加剤や水等の溶媒を加えることで、本発明の水系潤滑剤を得られる。
〔水系潤滑剤の特性〕
本発明の水系潤滑剤は、従来の水系潤滑剤に比べ低粘度で且つ摩擦係数が小さく、耐摩耗性にも優れるだけでなく、耐金属腐食性にも優れる。
本発明の水系潤滑剤の25℃での粘度は、好ましくは1〜100mPa・s、より好ましくは1〜95mPa・s、更に好ましくは1〜35mPa・s、より更に好ましくは1〜25mPa・sである。
なお、本発明において、水系潤滑剤の粘度は、実施例に記載の方法により測定した値を意味する。
本発明の水系潤滑剤は、従来の水系潤滑剤に比べ低粘度で且つ摩擦係数が小さく、耐摩耗性にも優れるだけでなく、耐金属腐食性にも優れる。
本発明の水系潤滑剤の25℃での粘度は、好ましくは1〜100mPa・s、より好ましくは1〜95mPa・s、更に好ましくは1〜35mPa・s、より更に好ましくは1〜25mPa・sである。
なお、本発明において、水系潤滑剤の粘度は、実施例に記載の方法により測定した値を意味する。
本発明の水系潤滑剤を用いて実施例に記載の方法で測定した摩擦係数は、好ましくは0.200以下、より好ましくは0.170以下、更に好ましくは0.155以下、より更に好ましくは0.100以下である。
さらに、本発明の水系潤滑剤を用いて実施例に記載の方法で測定した摩耗量は、好ましくは1.50mm以下、より好ましくは1.00mm以下、更に好ましくは.0.50mm以下、より更に好ましくは0.20mm以下である。
さらに、本発明の水系潤滑剤を用いて実施例に記載の方法で測定した摩耗量は、好ましくは1.50mm以下、より好ましくは1.00mm以下、更に好ましくは.0.50mm以下、より更に好ましくは0.20mm以下である。
〔水系潤滑剤の用途〕
本発明の水系潤滑剤は、上述のとおり、従来の水系潤滑剤に比べ低粘度で且つ摩擦係数が小さく、耐摩耗性や耐金属腐食性にも優れる。
そのため、本発明の水系潤滑剤は、例えば、水系金属加工剤や液圧作動液等に好適に使用することができる。
本発明の水系潤滑剤は、上述のとおり、従来の水系潤滑剤に比べ低粘度で且つ摩擦係数が小さく、耐摩耗性や耐金属腐食性にも優れる。
そのため、本発明の水系潤滑剤は、例えば、水系金属加工剤や液圧作動液等に好適に使用することができる。
本発明の水系潤滑剤が水系金属加工剤として用いられる場合、当該水系潤滑剤は、金属の塑性加工用水系金属加工剤、切削加工用水系金属加工剤、又は研削加工水系金属加工剤等に用いられることが好ましい。
また、本発明の水系潤滑剤が液圧作動液として用いられる場合、当該水系潤滑剤は、建設機械、一般産業機械、工作機械、プラスチック加工機械、自動車組立設備の溶接ロボット、鉄鋼設備、ダイカストマシン等の油圧機器や油圧装置等の油圧システムに用いられる液圧作動油として用いられることが好ましい。
また、本発明の水系潤滑剤が液圧作動液として用いられる場合、当該水系潤滑剤は、建設機械、一般産業機械、工作機械、プラスチック加工機械、自動車組立設備の溶接ロボット、鉄鋼設備、ダイカストマシン等の油圧機器や油圧装置等の油圧システムに用いられる液圧作動油として用いられることが好ましい。
以下の実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例で使用した各成分の物性、及び調製した水系潤滑剤の特性は、下記の方法に基づいて測定した。
<分岐型ポリマーの重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)の測定>
装置として、送液ポンプ(日本分光社製、製品名「Jasco PU−1580」)、水系SECカラム(東ソー社製、製品名「TSKgel G4000PWXL+G2500PWXL」)、及び屈折率(RI)検出器(Waters社製、製品名「Waters 410」)を、標準物質として、ポリエチレンオキシド(3.4×103〜9.4×105g/mol)を用いて、溶離液:0.2M硝酸ナトリウム水溶液、流速:0.5mL/min、温度:40℃の条件にて、測定した。
装置として、送液ポンプ(日本分光社製、製品名「Jasco PU−1580」)、水系SECカラム(東ソー社製、製品名「TSKgel G4000PWXL+G2500PWXL」)、及び屈折率(RI)検出器(Waters社製、製品名「Waters 410」)を、標準物質として、ポリエチレンオキシド(3.4×103〜9.4×105g/mol)を用いて、溶離液:0.2M硝酸ナトリウム水溶液、流速:0.5mL/min、温度:40℃の条件にて、測定した。
<水系潤滑剤のフッ素原子含有量の測定>
実施例及び比較例で調製した水系潤滑剤のフッ素原子の含有量について、下記の条件にて測定した。
(1)試料燃焼
・装置:三菱化学アナリテック社製、製品名「AQF−100」
・燃焼条件
燃焼炉設定温度:前段800℃、後段1000℃
ガス流量:燃焼管外管より、酸素=400ml/min
燃焼管内管より、アルゴン又は酸素=200ml/min
加湿用超純水供給量:0.1ml/min
(2)イオンクロマトグラフ
・装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、製品名「DX−120」
・カラム:「IonPac AG12A」及び「IonPac AS12A」
実施例及び比較例で調製した水系潤滑剤のフッ素原子の含有量について、下記の条件にて測定した。
(1)試料燃焼
・装置:三菱化学アナリテック社製、製品名「AQF−100」
・燃焼条件
燃焼炉設定温度:前段800℃、後段1000℃
ガス流量:燃焼管外管より、酸素=400ml/min
燃焼管内管より、アルゴン又は酸素=200ml/min
加湿用超純水供給量:0.1ml/min
(2)イオンクロマトグラフ
・装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、製品名「DX−120」
・カラム:「IonPac AG12A」及び「IonPac AS12A」
<水系潤滑剤の粘度の測定>
レオメータ(Anton Paar社製、製品名「Physica MCR−301」)を用いて、下記測定条件にて、水系潤滑剤の粘度を測定した。
(試験治具)
・外径50mmのパラレル・プレート型の治具(プレート間のギャップ:1mm)
(測定条件)
・温度:20℃
・ひずみ:30%
・角周波数:10〜100rad/sの範囲で変化
なお、角周波数が26.8rad/sの際の粘度を、対象物の粘度として表1に記載している。
レオメータ(Anton Paar社製、製品名「Physica MCR−301」)を用いて、下記測定条件にて、水系潤滑剤の粘度を測定した。
(試験治具)
・外径50mmのパラレル・プレート型の治具(プレート間のギャップ:1mm)
(測定条件)
・温度:20℃
・ひずみ:30%
・角周波数:10〜100rad/sの範囲で変化
なお、角周波数が26.8rad/sの際の粘度を、対象物の粘度として表1に記載している。
<摩擦係数、摩耗量>
ボール・オン・ディスク型の往復動摩擦試験機(バウデン・レーベン式)を用い、荷重2N、温度25℃、すべり速度30mm2/s、ストローク15mmの条件にて摩擦係数及び摩耗幅を測定した。ボールの材質はSUJ2であり、ボールの直径は10mmであり、ディスクの材質はSUJ2である。
摩擦係数、摩耗幅が小さいほど潤滑性、耐摩耗性に優れると言える。
ボール・オン・ディスク型の往復動摩擦試験機(バウデン・レーベン式)を用い、荷重2N、温度25℃、すべり速度30mm2/s、ストローク15mmの条件にて摩擦係数及び摩耗幅を測定した。ボールの材質はSUJ2であり、ボールの直径は10mmであり、ディスクの材質はSUJ2である。
摩擦係数、摩耗幅が小さいほど潤滑性、耐摩耗性に優れると言える。
<水系潤滑剤の耐金属腐食性>
上記摩擦係数及び摩耗量の測定後のディスク表面を目視により観察し、以下の基準により、耐金属腐食性を評価した。
A:金属溶出が見られず、腐食した箇所がない。
F:茶褐色又は黒色状の溶出物が見られ、腐食した箇所が確認された。
上記摩擦係数及び摩耗量の測定後のディスク表面を目視により観察し、以下の基準により、耐金属腐食性を評価した。
A:金属溶出が見られず、腐食した箇所がない。
F:茶褐色又は黒色状の溶出物が見られ、腐食した箇所が確認された。
製造例1(「HPB−PGR(1)」の合成)
ガラス製セパラブルフラスコ(容量:1000mL)内を窒素置換し、乾燥ジクロロメタン(400mL)と、重合開始剤として、BF3・エチルエーテル錯体(三フッ化ホウ素ジエチルエーテル)(0.85mL(6.77mmol))を加え、モーター付き攪拌装置を用いて85rpm(攪拌翼:マックスブレンド)で攪拌した。
この溶液を−20℃まで冷却し、−20℃の条件下で、グリシドール(100g(1.35mol))を0.83mL/minの速度で滴下した。滴下終了後、約3時間かけて室温(25℃)まで昇温し、反応溶液にアンモニア水入りメタノールを加え、反応を停止した。
そして、反応停止後の溶液に対して、イオン交換樹脂(強塩基性アニオン交換樹脂、オルガノ株式会社製、商品名:「アンバーライトIRA900(OH)−HG(4級アンモニウム型)」)を30g添加し、室温で8時間撹拌した。
そして、当該イオン交換樹脂を除去し、ろ液を減圧留去した。その後、残渣をメタノールに溶解し、アセトン/メタノール混合溶媒中での再沈殿によりポリマーを精製した。
その結果、末端基がすべて水酸基であり、重量平均分子量(Mw)=73,600、分子量分布(Mw/Mn)=18.8のハイパーブランチ型ポリグリセロール(以下、「HPB−PGR(1)」ともいう)を90g(収率90%)得た。
ガラス製セパラブルフラスコ(容量:1000mL)内を窒素置換し、乾燥ジクロロメタン(400mL)と、重合開始剤として、BF3・エチルエーテル錯体(三フッ化ホウ素ジエチルエーテル)(0.85mL(6.77mmol))を加え、モーター付き攪拌装置を用いて85rpm(攪拌翼:マックスブレンド)で攪拌した。
この溶液を−20℃まで冷却し、−20℃の条件下で、グリシドール(100g(1.35mol))を0.83mL/minの速度で滴下した。滴下終了後、約3時間かけて室温(25℃)まで昇温し、反応溶液にアンモニア水入りメタノールを加え、反応を停止した。
そして、反応停止後の溶液に対して、イオン交換樹脂(強塩基性アニオン交換樹脂、オルガノ株式会社製、商品名:「アンバーライトIRA900(OH)−HG(4級アンモニウム型)」)を30g添加し、室温で8時間撹拌した。
そして、当該イオン交換樹脂を除去し、ろ液を減圧留去した。その後、残渣をメタノールに溶解し、アセトン/メタノール混合溶媒中での再沈殿によりポリマーを精製した。
その結果、末端基がすべて水酸基であり、重量平均分子量(Mw)=73,600、分子量分布(Mw/Mn)=18.8のハイパーブランチ型ポリグリセロール(以下、「HPB−PGR(1)」ともいう)を90g(収率90%)得た。
製造例2(「HPB−PGR(2)」の合成)
製造例1において、モーター付き攪拌装置の回転数を100rpmに変えて、グリシドールのジクロロメタン溶液を0.2〜0.83mL/minの速度範囲で、BF3・エチルエーテル錯体のジクロロメタン溶液に滴下したこと以外は、製造例1と同様の操作を行った。
その結果、末端基がすべて水酸基であり、重量平均分子量(Mw)=7,700、分子量分布(Mw/Mn)=2.5のハイパーブランチ型ポリグリセロール(以下、「HPB−PGR(2)」ともいう)を80g(収率80%)得た。
製造例1において、モーター付き攪拌装置の回転数を100rpmに変えて、グリシドールのジクロロメタン溶液を0.2〜0.83mL/minの速度範囲で、BF3・エチルエーテル錯体のジクロロメタン溶液に滴下したこと以外は、製造例1と同様の操作を行った。
その結果、末端基がすべて水酸基であり、重量平均分子量(Mw)=7,700、分子量分布(Mw/Mn)=2.5のハイパーブランチ型ポリグリセロール(以下、「HPB−PGR(2)」ともいう)を80g(収率80%)得た。
製造例3(「HPB−PGR(3)」の合成)
製造例1において、モーター付き攪拌装置の回転数を100rpmに変えて、反応停止後の溶液に対して、イオン交換樹脂を添加せずに、当該溶液を減圧留去したこと以外は、製造例1と同様に操作を行った。
その結果、末端基がすべて水酸基であり、重量平均分子量(Mw)=11,000、分子量分布(Mw/Mn)=3.4のハイパーブランチ型ポリグリセロール(以下、「HPB−PGR(3)」ともいう)を90g(収率90%)得た。
製造例1において、モーター付き攪拌装置の回転数を100rpmに変えて、反応停止後の溶液に対して、イオン交換樹脂を添加せずに、当該溶液を減圧留去したこと以外は、製造例1と同様に操作を行った。
その結果、末端基がすべて水酸基であり、重量平均分子量(Mw)=11,000、分子量分布(Mw/Mn)=3.4のハイパーブランチ型ポリグリセロール(以下、「HPB−PGR(3)」ともいう)を90g(収率90%)得た。
〔実施例1〜4、比較例1〜2〕
表1に示す種類の製造例1〜3で得た分岐型ポリマーである「HPB−PGR(1)〜(3)」を用い、当該分岐型ポリマーの濃度が表1に示す値となるように、さらに純水で希釈し、それぞれの水系潤滑剤を調製した。調製した水系潤滑剤中の燃焼イオンクロマトグラフ法によるフッ素原子の含有量を表1に示す。
また、調製した水系潤滑剤を用いて、上述の方法にて、粘度、摩擦係数、摩耗幅及び耐金属腐食性を測定又は評価した。それらの結果も表1に示す。
表1に示す種類の製造例1〜3で得た分岐型ポリマーである「HPB−PGR(1)〜(3)」を用い、当該分岐型ポリマーの濃度が表1に示す値となるように、さらに純水で希釈し、それぞれの水系潤滑剤を調製した。調製した水系潤滑剤中の燃焼イオンクロマトグラフ法によるフッ素原子の含有量を表1に示す。
また、調製した水系潤滑剤を用いて、上述の方法にて、粘度、摩擦係数、摩耗幅及び耐金属腐食性を測定又は評価した。それらの結果も表1に示す。
表1に示す評価結果から、実施例1〜4で調製した水系潤滑剤は、比較例1及び2で調製した水系潤滑剤に比べて、粘度や摩擦係数が同程度であるにもかかわらず、優れた耐金属腐食性を有していることが分かる。
なお、比較例1及び2において、摩擦係数及び摩耗幅の測定試験の際に、使用したディスク表面の腐食が見られたため、摩耗幅の測定をせずに終了した。
なお、比較例1及び2において、摩擦係数及び摩耗幅の測定試験の際に、使用したディスク表面の腐食が見られたため、摩耗幅の測定をせずに終了した。
本発明の水系潤滑剤は、例えば、水系金属加工剤や液圧作動液等として好適に使用することができる。
Claims (14)
- 前記分岐型ポリマーが、ハイパーブランチ型ポリマーである、請求項1に記載の水系潤滑剤。
- 前記水系潤滑剤中に含有されるフッ素原子が、当該分岐型ポリマーの合成時に用いられるフッ素化合物に由来する、請求項1又は2に記載の水系潤滑剤。
- 前記フッ素化合物が、フッ素原子及びホウ素原子を含有する化合物である、請求項3に記載の水系潤滑剤。
- 前記フッ素化合物が、BF3錯体である、請求項3又は4に記載の水系潤滑剤。
- 前記分岐型ポリマーが、イオン交換樹脂を用いて精製されたものである、請求項1〜5のいずれかに記載の水系潤滑剤。
- 前記分岐型ポリマーの重量平均分子量が、5,000〜100,000である、請求項1〜7のいずれかに記載の水系潤滑剤。
- 前記分岐型ポリマーの含有量が1〜70質量%である、請求項1〜8のいずれかに記載の水系潤滑剤。
- 前記水系潤滑剤の25℃での粘度が1〜100mPa・sである、請求項1〜9のいずれかに記載の水系潤滑剤。
- 水系金属加工剤として用いられる、請求項1〜10のいずれかに記載の水系潤滑剤。
- 塑性加工用水系金属加工剤、切削加工用水系金属加工剤、又は研削加工用水系金属加工剤として用いられる、請求項11に記載の水系潤滑剤。
- 液圧作動液として用いられる、請求項1〜10のいずれかに記載の水系潤滑剤。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の水系潤滑剤の製造方法であって、下記工程(I)〜(II)を有する、水系潤滑剤の製造方法。
工程(I):フッ素化合物を用いて、グリシドールの開環重合により、前記分岐型ポリマーを合成する工程
工程(II):前記分岐型ポリマーを含有する溶液から、後処理後に残留する前記フッ素化合物及び当該フッ素化合物に由来の生成物を除去する工程
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Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPH05209051A (ja) * | 1991-09-10 | 1993-08-20 | Bp Chem Internatl Ltd | 油溶性ポリアルキレングリコール |
JP2002047218A (ja) * | 2000-07-27 | 2002-02-12 | Nippon Zeon Co Ltd | フッ素化炭化水素の精製方法、溶剤、潤滑性重合体含有液および潤滑性重合体膜を有する物品 |
JP2010215734A (ja) * | 2009-03-13 | 2010-09-30 | Idemitsu Kosan Co Ltd | 水系潤滑剤 |
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2014
- 2014-04-01 JP JP2014075537A patent/JP2015196772A/ja active Pending
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