JP4431301B2 - 癌細胞のアポトーシス誘導剤、その製造方法、それを有効成分とする抗癌剤、食品製剤及び化粧品 - Google Patents

癌細胞のアポトーシス誘導剤、その製造方法、それを有効成分とする抗癌剤、食品製剤及び化粧品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、3−プレニル−桂皮酸骨格を有する癌細胞のアポトーシス誘導剤、その製造方法、それを有効成分として含有する抗癌剤、食品製剤及び化粧品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェノール素材中に、癌細胞の増殖を抑制する成分があることは知られている。しかし、構造が決定されたものは少ない。例えば、ポリフェノールを大量に含有するプロポリスから、3,5−ビスプレニル−桂皮酸骨格を有する物質として抗癌作用を有するアルテピリンC(3−[4−ヒドロキシ−3,5−ビス(3−メチル−2−ブテニル)フェニル]−2−プロペン酸)が単離されている。このアルテピリンCは癌細胞に対してアポトーシスを誘導することが報告されている(特開平9−328425号公報)。一般に、抗癌剤には、正常組織の分裂を抑制し、かつ、その機能を抑制するという副作用が認められる。
【0003】
3−プレニル−桂皮酸骨格を有する物質は、プロポリス又は植物素材中に認められている(ミツバチ科学、17巻、4号、151−154、1996年)。3−プレニル−桂皮酸骨格を有する物質のうち、ドルパニンは、3−プレニル−4−ヒドロキシ桂皮酸、又は、3−[4−ヒドロキシ−3−(3−メチル−2−ブテニル)フェニル]−2−プロペン酸である。さらに、3−プレニル−4(ジヒドロシナモイロキシ)桂皮酸も単離されている。両物質はLasiolaena morri、Baccharis grisebachii、Baccharis santelicis、Baccharis reticularia等のBaccharis属、Fluorensia heterolepis(Heliantheae)、Fluorensia thurifera、Psoralea plicata、Psoralea drupaceae等のPsoralea属等のポリフェノール含有素材からも単離されている。
【0004】
アポトーシスとは、プログラム化された細胞死をいい、このアポトーシスには正常組織において発生過程に生じた余剰な細胞及び老化過程に生じた不要な細胞を除去する機能がある。さらに、アポトーシスには癌細胞やウイルスに感染された細胞を排除する役割がある。特に、癌を抑制する目的から、癌細胞に対してアポトーシスを誘導するアポトーシス誘導剤は抗癌剤として期待されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記した3,5−ビスプレニル桂皮酸骨格を有するアルテピリンCは、癌細胞に対し、アポトーシス誘導作用を有する。しかし、アルテピリンCは、正常細胞に対し、強い副作用を有する。同様に、化学的に合成された抗癌剤は正常組織の機能に悪影響を及ぼすという副作用の問題がある。副作用が弱く、癌細胞に対するアポトーシス誘導作用を有する化合物が望まれている。
【0006】
この発明は上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、副作用が弱く、癌細胞に対するアポトーシス誘導作用に優れた癌細胞のアポトーシス誘導剤を提供することにある。また、ポリフェノール含有素材から3−プレニル−桂皮酸誘導体を含有する癌細胞のアポトーシス誘導剤を収率良く製造する製造方法を提供することにある。さらに、副作用が弱く、癌細胞に対するアポトーシス誘導作用に優れた抗癌剤、食品製剤及び化粧品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、下記の式(10)で示される3−プレニル−桂皮酸誘導体から選択される少なくとも一種を有効成分とする癌細胞のアポトーシス誘導剤である。
【0008】
【化5】
Figure 0004431301
、シナモイロキシ基、p−クマロイロキシ基、カフェオイロキシ基、フェルライロキシ基、シナピロイロキシ基又はサリチロイロキシ基である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、ポリフェノール含有素材を抽出用溶媒に混合し、抽出用溶媒に抽出された抽出物を分離用担体又は樹脂に供し、分離用溶媒により溶出させ、紫外部領域の励起光に対する蛍光を指標として下記の式(10)で示される3−プレニル−桂皮酸誘導体を分取することを特徴とする請求項1に記載の癌細胞のアポトーシス誘導剤の製造方法である。
【0010】
【化6】
Figure 0004431301
、シナモイロキシ基、p−クマロイロキシ基、カフェオイロキシ基、フェルライロキシ基、シナピロイロキシ基又はサリチロイロキシ基である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の式(10)で示される3−プレニル−桂皮酸誘導体から選択される少なくとも一種を含有する癌細胞のアポトーシス誘導剤を有効成分とする抗癌剤である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の癌細胞のアポトーシス誘導剤を有効成分とする食品製剤である。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の癌細胞のアポトーシス誘導剤を有効成分とする化粧品である
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
まず、本実施形態の癌細胞のアポトーシス誘導剤は、下記の式(1)で示される3−プレニル−桂皮酸誘導体から選択される少なくとも一種を有効成分とするものである。
【0014】
【化9】
Figure 0004431301
Xは、水酸基、ジヒドロシナモイロキシ基、シナモイロキシ基、p−クマロイロキシ基、カフェオイロキシ基、フェルライロキシ基、シナピロイロキシ基又はサリチロイロキシ基である。
【0015】
基本となる骨格は、3−プレニル−桂皮酸であり、このうち、プレニル基及び桂皮酸の二重結合は、いずれもトランス型である。これは、(E)−3−プレニル−桂皮酸と同一である。さらに、桂皮酸のベンゼン環の3位に導入されるプレニル基は、3−メチル−2−ブテニル基と同一である。
【0016】
本実施形態の癌細胞のアポトーシス誘導剤は、桂皮酸のベンゼン環の4位の誘導体である。3−プレニル−桂皮酸誘導体は、プロポリスやポリフェノール含有素材等の天然物中に存在している。
【0017】
Xは、桂皮酸のベンゼン環の4位に結合する置換基を示す。この4位の置換基Xが水酸基の場合、前記のドルパニンである。置換基Xがジヒドロシナモイロキシ基の場合、3−プレニル−4(ジヒドロシナモイロキシ)桂皮酸である。置換基Xがシナモイロキシ基の場合、3−プレニル−4−(シナモイロキシ)桂皮酸である。これは、シナモイロキシ基が抗酸化作用を示す点から、好ましい。置換基Xがp−クマロイロキシ基の場合、3−プレニル−4(p−クマロイロキシ)桂皮酸である。ここでいうp−クマロイロキシ基とは、p−ヒドロキシシナモイロキシ基である。これは、p−クマロイロキシ基が強い抗酸化作用を示す点から、好ましい。
【0018】
置換基Xがカフェオイロキシ基の場合、3−プレニル−4(カフェオイロキシ)桂皮酸である。ここでいうカフェオイロキシ基とは、3,4−ジヒドロキシシナモイロキシ基である。これは、カフェオイロキシ基が強い抗炎症作用を示す点から、好ましい。置換基Xがフェルライロキシ基の場合、3−プレニル−4(フェルライロキシ)桂皮酸である。ここでいうフェルライロキシ基とは、3−メトキシ−4−ヒドロキシシナモイロキシ基である。これは、フェルライロキシ基が抗潰瘍作用を示す点から、好ましい。
【0019】
置換基Xがシナピロイロキシ基の場合、3−プレニル−4(シナピロイロキシ)桂皮酸である。ここでいうシナピロイロキシ基とは、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシシナモイロキシ基である。これは、シナピロイロキシ基が血栓抑制作用を示す点から、好ましい。置換基Xがサリチロイロキシ基の場合、3−プレニル−4(サリチロイロキシ)桂皮酸である。ここでいうサリチロイロキシ基とは、o−ヒドロキシ−ベンゾイロキシ基である。これは、サリチロイロキシ基が抗炎症作用を示す点から、好ましい。
【0020】
これらのうち、ドルパニン及び3−プレニル−4(ジヒドロシナモイロキシ)桂皮酸は、優れたアポトーシス誘導作用に加えて強い抗酸化作用及び抗炎症作用を示すことから、最も好ましい。
【0021】
アポトーシス誘導剤において、3−プレニル−桂皮酸誘導体の含有量は10〜90重量%が好ましく、20〜80重量%がより好ましく、30〜70重量%がさらに好ましい。3−プレニル−桂皮酸誘導体の含有量が10重量%を下回る場合、十分なアポトーシス誘導作用が発揮されない。また、3−プレニル−桂皮酸誘導体の含有量が90重量%を上回る場合、アポトーシス誘導剤として安定な状態を維持されないおそれがある。
【0022】
なお、植物では、前記の3−プレニル−桂皮酸誘導体は酵素的に生成される。まず、ジヒドロシナモイロキシ基、シナモイロキシ基、p−クマロイロキシ基、カフェオイロキシ基、フェルライロキシ基及びシナピロイロキシ基は、フェニルアラニンを原料として、酵素類により生成される。この酵素類としては、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、桂皮酸−4−ヒドロキシラーゼ、p−クマル酸ヒドロキシラーゼ、o−メチルトランスフェラーゼ、フェルラ酸ヒドロキシラーゼ及びヒドロキシフェルラ酸o−メチルトランスフェラーゼである。サリチロイロキシ基も、フェニルアラニンからフェニルプロパンを経由して生成される。
【0023】
さらに、ドルパニンの4位水酸基のエステル化反応には、リパーゼによるエステル交換反応が関与している。加えて、これらの植物の生合成反応に基づき、ドルパニン、フェニルアラニン、フェニルプロパン及び前記の酵素類、補酵素類及びリパーゼを添加し、反応させることにより、前記の3−プレニル−桂皮酸誘導体を得ることができる。前記のドルパニン含有植物及び後述するポリフェノール含有素材を含む植物を常法によりカルス培養させ、前記のフェニルアラニンを栄養液に添加して、目的とする3−プレニル−桂皮酸誘導体を得ることができる。
【0024】
次に、前述したアポトーシス誘導剤の製造方法について説明する。
この製造方法は、ポリフェノール含有素材を抽出用溶媒に混合し、抽出用溶媒に抽出された抽出物を分離用担体又は樹脂に供し、分離用溶媒により溶出させ、紫外部領域の励起光に対する蛍光を指標とするものである。
【0025】
まず、原料として用いるポリフェノール含有素材としては、前記したドルパニン含有ポリフェノール素材、プロポリス等が挙げられる。その他、赤ぶどう抽出物、赤ぶどう果皮抽出物、赤ぶどう葉、白ぶどう葉、赤ぶどう果実、白ぶどう果実、白ぶどう果皮、ぶどう種子、イチョウ葉、フランス西洋松、大麦若葉、小麦若葉、稲若葉、大豆若葉、ブルーベリー果実、果皮、その種子、シソ葉、バラ葉、バラ花、ヤーコン、キクイモ、ムラサキイモ及びそれらの葉、キク科植物、又はエキナセア、レモンバーム、ウコン、グァバ、レモングラス、ラベンダー等のハーブ類、さらに、緑茶、紅茶、ウーロン茶を初めとする茶葉並びにそれらの抽出物が挙げられる。
【0026】
これらのうち、植物由来の素材としては、植物の葉部、茎部、根部、花弁部、種子等が挙げられる。これらの素材は、湿潤状態及び乾燥状態のいずれでも良い。また、溶媒によって抽出された抽出物を用いても良い。
【0027】
プロポリスの産地は中国及び日本等のアジア諸国、ブラジルを含む南米諸国、ヨーロッパ諸国、オセアニア諸国、北アメリカ諸国等があるが、そのいずれであってもよい。原料プロポリスはそのまま用いてもよいが、ごみやワックス等の夾雑物もあり、また、そのままでは処理が困難な場合があるので、溶媒によって抽出されたプロポリスを用いるのが好ましい。
【0028】
抽出用溶媒の種類としては、水、親水性有機溶媒及び親油性有機溶媒が挙げられる。親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール類、ギ酸、酢酸等の有機酸類、グルコース、蔗糖等の糖類、ジメチルスルホキシド、フェノール類等が挙げられる。これらのうち、食用に用いられるエタノールが好ましい。親油性有機溶媒としては、クロロホルム、ペンタン、ヘキサン、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、ベンゼン及びナタネ油等の植物油脂が挙げられる。
【0029】
添加される抽出溶媒の量は、ポリフェノール含有素材の1重量部に対して1〜50重量部が好ましく、1〜20重量部がより好ましい。1重量部未満の場合には、抽出率が低下する。一方、50重量部を超える場合には、濃縮の工程が必要となり、作業性が低下する。なお、プロポリスの原塊を抽出する場合、プロポリス原塊の重量の1〜5倍量の90〜100容量%エタノールを用いるのが好ましい。
【0030】
抽出の温度は、収率の点から4〜60℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。抽出の時間は、1〜72時間が好ましく、1〜24時間がより好ましい。
また、抽出液を除去した残渣について再度、同様の抽出操作により抽出することが好ましい。抽出後、固液分離により抽出溶媒を回収する。固液分離の方法としては、濾紙又は珪藻土を重層した濾紙等による吸引濾過、常圧濾過あるいは遠心分離を行う。また、遠心分離と濾過を組み合わせて用いることが好ましい。前記の操作により、抽出物が得られる。
【0031】
得られた抽出液を減圧下で濃縮して乾燥する。濃縮温度は物質の安定性の点から好ましくは20〜60℃、より好ましくは25〜55℃、さらに好ましくは30〜50℃である。これとは別に、得られた抽出液を真空凍結乾燥機により濃縮・乾燥し、抽出物を得ることができる。
【0032】
次いで、前記の抽出物は分離用担体又は樹脂により分離され、分取されることによりアポトーシス誘導剤が得られる。分離用担体又は樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
【0033】
例えば、逆相担体又は樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体又は樹脂として利用される。アフィニティ担体又は樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体又は樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
【0034】
これらのうち、桂皮酸誘導体の分離に適し、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体又は樹脂、分配性担体又は樹脂、分子篩用担体又は樹脂及びイオン交換担体又は樹脂が好ましい。さらに、桂皮酸誘導体は疎水性を示し、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体又は樹脂及び分配性担体又は樹脂はより好ましい。加えて、3−プレニル−桂皮酸に対する抗体を結合させたアフィニティ担体又は樹脂を用いることができる。
【0035】
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体又は樹脂が用いられる。また、医薬品製造又は食品製造に利用される担体又は樹脂は好ましい。これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2又はXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
【0036】
得られた抽出物は、分離前に分離用担体又は樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜50倍量が好ましく、3〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4〜30℃が好ましく、10〜25℃がより好ましい。
【0037】
分離用溶媒には、水、又は、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸又はそれらの混合液が好ましい。ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコール又は低級アルコールと水の混合液が好ましい。
【0038】
分取は、紫外部領域の励起光に対する蛍光を指標にする。分離された溶液に紫外線ランプを照射し、特有の蛍光を指標として分取する。さらに、紫外線ランプを分離用樹脂又は担体に照射し、蛍光を発する部分を分取する。
【0039】
以上の操作に、低速クロマトグラムシステム、精製用クロマトグラムシステム、膜分離クロマトグラムシステム等のシステム化された装置を用いることが好ましい。
【0040】
さらに、同一或いは異なる分離用担体又は樹脂を用い、かつ、同一又は異なる分離用溶媒を用い、分離操作を繰返し行うことが好ましい。この場合にも、紫外線照射装置を用いて紫外部領域の励起光に対して蛍光を発する部分を分取する手段が好ましい。以上の操作により、目的とするアポトーシス誘導剤が液体として得られる。
【0041】
加えて、製剤化を容易にする目的で、得られたアポトーシス誘導剤を乾燥することが好ましい。乾燥には減圧蒸留装置、真空乾燥機等が用いられる。物質の安定性の点から乾燥の温度は、20〜50℃が好ましく、30〜40℃がより好ましい。また、真空乾燥機の温度は、20〜60℃が好ましく、25〜40℃がより好ましい。
【0042】
次に、前記の癌細胞のアポトーシス誘導剤を有効成分とする抗癌剤について説明する。
この抗癌剤は、優れたアポトーシス誘導作用に基づき、良性腫瘍及び悪性腫瘍並びにそれらの前段階にある病変を含む癌の進展を抑制する抗癌剤である。さらに、遺伝子変異、染色体異常、変異細胞の増殖等の癌に至る過程を予防する発癌防止剤である。抗癌剤の製造に関わる常法に従って医薬品又は医薬部外品として利用される。医薬品として経口剤又は非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、歯磨き粉等に配合されて利用される。
【0043】
経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤は、シェラック又は砂糖で被覆することもできる。また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を含有させることができる。
【0044】
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
【0045】
これらの抗癌剤中における前記の3−プレニル−桂皮酸誘導体の含有量としては、0.1〜20重量%が好ましく、1〜15重量%がより好ましく、5〜10重量%がさらに好ましい。前記の3−プレニル−桂皮酸誘導体を有する物質の含有量が0.1重量%未満の場合には、含有量が少なすぎることから作用を十分に発揮することができない。また、20重量%を越える場合には、抗癌剤の安定性に寄与している成分の含有量が相対的に低下する。
【0046】
これらの抗癌剤は、他の抗癌剤と併用することができる。免疫機能を増強させるインターフェロンやサイトカイン類と併用することは、作用機序が異なる点から、好ましい。さらに、前記の誘導体は、骨髄細胞や生殖細胞のアポトーシスを抑制する点から、シスプラチン、マイトマイシン、フルオロウラシル、タキソール等の他の抗癌剤と併用することは、より好ましい。
【0047】
次に、前述した癌細胞のアポトーシス誘導剤を有効成分として食品製剤を調製することができる。その場合、種々の食品素材又は飲料品素材に添加することによって、例えば、粉末状、錠剤状、液状(ドリンク剤等)、カプセル状等の形状の食品製剤とすることができる。また、基材、賦形剤、添加剤、副素材、増量剤等を適宜添加してもよい。
【0048】
前記の食品製剤は、1日数回に分けて経口摂取される。1日の摂取量は0.1〜10gが好ましく、0.3〜5gがより好ましく、0.5〜3gがさらに好ましい。1日の摂取量が、0.1gを下回る場合、十分な効果が発揮されないおそれがある。1日の摂取量が、10gを越える場合、コストが高くなるおそれがある。上記の他に、飴、せんべい、クッキー、飲料等の形態で使用することができる。
【0049】
また、βグルカン及び糖タンパク質を有効成分とし、免疫機能を調節する機能を有するヒメマツタケ、霊芝、カワラタケ等のキノコ類、その抽出物及びそれらの加工物を副素材として添加することは、機序が異なった多彩な効果が発揮される点から、好ましい。これらの食品製剤は、癌の発症が心配な人に対して予防的に使用される。
【0050】
次に、前述した癌細胞のアポトーシス誘導剤を有効成分として化粧品を調製することができる。その場合、抗癌剤又は発癌を防止する目的として、常法に従って油分、界面活性化剤、ビタミン剤、紫外線防御剤、増粘剤、保湿剤等とともに用いることができる。例えば、化粧水、クリーム、軟膏、ローション、乳液、パック、オイル、石鹸、洗顔料、香料、オーディコロン、浴用剤、シャンプー、リンス等の形態とすることができる。化粧品の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状又は粉末状として用いることができる。また、紫外線による発癌を防止する点から、紫外線防御作用のあるシリマリン及びプロポリス等と併用することは、好ましい。
【0051】
化粧品として皮膚に1日数回に分けて塗布される。1日の塗布量は0.01〜5gが好ましく、0.05〜3gがより好ましく、0.1〜1gがさらに好ましい。1日の塗布量が、0.01gを下回る場合、十分な効果が発揮されないおそれがある。1日の塗布量が、5gを越える場合、コストが高くなるおそれがある。
【0052】
さらに、前記の化粧品は、老化した表皮の角質組織に作用し、アポトーシスを誘導する。これにより、角質層は剥離され、美白効果がもたらされることから、美白化粧品とすることができる。
【0053】
上記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態の癌細胞のアポトーシス誘導剤によれば、副作用が弱く、癌細胞に対し、優れたアポトーシス誘導作用を発揮することができる。
・ 本実施形態の癌細胞のアポトーシス誘導剤の製造方法によれば、アポトーシス誘導剤を収率良く製造することができる。
・ 本実施形態の癌細胞のアポトーシス誘導剤を有効成分とする抗癌剤によれば、副作用が弱く、癌細胞に対し、優れたアポトーシス誘導作用を発揮することができる。
・ 本実施形態の癌細胞のアポトーシス誘導剤を有効成分とする食品製剤によれば、副作用が弱く、優れたアポトーシス誘導作用に基づき、発癌を予防する食品製剤を提供することができる。
・ 本実施形態の癌細胞のアポトーシス誘導剤を有効成分とする化粧品によれば、副作用が弱く、優れたアポトーシス誘導作用に基づき、皮膚の発癌を予防する化粧品を提供することができる。
・ 本実施形態のプロポリスに有機溶媒を添加して得られる抽出液を分配性担体又は樹脂に供し、有機溶媒で分離される癌細胞のアポトーシス誘導剤の製造方法によれば、収率良くアポトーシス誘導剤を製造することができる。
・ 本実施形態の癌細胞のアポトーシス誘導剤を有効成分とする美白化粧品によれば、老化した皮膚の角質組織を剥離する作用に基づき、副作用の弱い優れた美白効果を発揮することができる。
【0054】
【実施例】
以下、前記実施形態を実施例、製造例及び試験例を用いて具体的に説明する。
(製造例1)
ブラジル産のプロポリス原塊1kgを粉砕し、これに1.5倍量の100容量%エタノールを加えて室温で3時間攪拌した後、3000rpmで10分間遠心分離を行い、上清を分取した。次に、その上清を濾紙(東洋濾紙社製、No2)で自然濾過し、その濾液を一晩冷凍庫に入れて脱ロウした後、再度、前記の濾紙で吸引濾過を行うことにより、液状のエタノール抽出物(エタノール抽出液)を得た。また、このエタノール抽出液を飴状になるまで濃縮し、さらに減圧下乾燥を行うことにより、粉末状のプロポリスのエタノール抽出物(プロポリスのエタノール抽出粉末)350gを得た。
【0055】
(製造例2)
バッカリス・グリセバチイ(Baccharis grisebachii)の葉部1kgを粉砕し、これに2倍量の100容量%エタノールを加えて30℃で1時間攪拌した後、3000rpmで10分間遠心分離を行い、上清を分取した。この抽出操作を2回繰返し、上清を集めた。次に、集められた上清について珪藻土を重層した濾紙(No2)を用い、吸引濾過により液状のエタノール抽出物(エタノール抽出液)を得た。また、このエタノール抽出液を飴状になるまで濃縮し、さらに減圧下乾燥を行うことにより、粉末状のバッカリス・グリセバチイのエタノール抽出物(エタノール抽出粉末)89gを得た。
【0056】
(実施例1)
製造例1で得られたプロポリスのエタノール抽出物を分配性担体としてシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフに供した。すなわち、直径70mm、高さ500mmのガラス製カラムに、2容量%メタノール含有クロロホルム液に懸濁したシリカゲル600gを注入した。2容量%メタノール含有クロロホルム液を流した後、プロポリスのエタノール抽出物10gを2容量%メタノール含有クロロホルム液に溶解し、カラムに注入した。次いで、2容量%メタノール含有クロロホルム液2リットル(検体1)、5容量%メタノール含有クロロホルム液2リットル(検体2)、10容量%メタノール含有クロロホルム液3リットル(検体3)を流した。20容量%メタノール含有クロロホルム液2リットル(検体4)、50容量%メタノール含有クロロホルム液2リットル(検体5)及び70容量%メタノール含有クロロホルム液2リットル(検体6)をカラムに流した。
【0057】
それぞれの分離用溶媒により分離された溶液に紫外線ランプ(井内盛栄堂(株)社製)を照射し、特有の蛍光を指標として分取した。得られた画分を減圧濃縮後、40℃で24時間真空乾燥させ、粉末を得た。検体1、検体2、検体3、検体4、検体5及び検体6の回収量は、それぞれ0.5g、0.7g、1.3g、1.1g、1.2g及び1.1gであった。これらの成分を癌細胞のアポトーシス誘導剤とした。
【0058】
(実施例2)
製造例2で得られたバッカリス・グリセバチイのエタノール抽出物をシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフにより、製造した。すなわち、直径70mm、高さ500mmのガラス製カラムに、2容量%メタノール含有クロロホルム液に懸濁したシリカゲル550gを注入した。2容量%メタノール含有クロロホルム液で平衡化した後、バッカリス・グリセバチイのエタノール抽出物10gを2容量%メタノール含有クロロホルム液に溶解し、カラムに注入した。
【0059】
次いで、2容量%メタノール含有クロロホルム液2リットル(検体1)、5容量%メタノール含有クロロホルム液2リットル(検体2)、10容量%メタノール含有クロロホルム液3リットル(検体3)を流した。さらに、20容量%メタノール含有クロロホルム液2リットル(検体4)、50容量%メタノール含有クロロホルム液2リットル(検体5)及び70容量%メタノール含有クロロホルム液2リットル(検体6)をカラムに流した。それぞれの溶液により分離された分画を採取した。
【0060】
それぞれの分離用溶媒により分離された溶液に前記の紫外線ランプを照射し、特有の蛍光を指標として分取した。得られた画分を減圧濃縮後、40℃で18時間真空乾燥させ、粉末を得た。検体1、検体2、検体3、検体4、検体5及び検体6の回収量は、それぞれ0.1g、0.2g、0.4g、0.3g、1.2g及び2.1gであった。これらの成分を癌細胞のアポトーシス誘導剤とした。
【0061】
以下に、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)による分析について説明する。
(試験例1)
実施例1で得られた検体1〜3についてHPLCにより分析した。HPLCの測定条件としては、カプセルパックAG120(資生堂製、直径4.6mm、長さ250mm)をセットした液体クロマト装置(島津製作所製)を用いた。検体溶液10μlを添加後、第1移動相による分離を開始した。20容量%アセトニトリル及び2%酢酸含有水溶液を第1移動相とし、100容量%アセトニトリル及び2容量%酢酸含有水溶液を第2移動相とした。クロマト開始から60分後に第2移動相が100容量%となるように、設定した。カラム流速は、1ml/分とし、280nmの吸光度を検出させ、クロマトグラムを得た。
【0062】
その結果、実施例1の検体2では、保持時間38.217分の位置にピークが認められ、アルテピリンCのピークと一致した。実施例1の検体3では、保持時間27.873の位置にピークが認められ、文献で示されたドルパニン(式(2))のピークと一致した。同様に、実施例2で得られた検体3では、保持時間27.861の位置にピークが認められた。さらに、実施例1の検体5の分析では、保持時間43.683分の位置に単一のピークが観察され、3−プレニル−4(ジヒドロシナモイロキシ)桂皮酸(式(3))と同定された。
【0063】
さらに、実施例1及び2から、3−プレニル−4(シナモイロキシ)桂皮酸(式(4))、3−プレニル−4(p−クマロイロキシ)桂皮酸(式(5))、3−プレニル−4(カフェオイロキシ)桂皮酸(式(6))、3−プレニル−4(フェルライロキシ)桂皮酸(式(7))、3−プレニル−4(シナピロイロキシ)桂皮酸(式(8))及び3−プレニル−4(サリチロイロキシ)桂皮酸(式(9))が同定された。
【0064】
【化10】
Figure 0004431301
【0065】
【化11】
Figure 0004431301
【0066】
【化12】
Figure 0004431301
【0067】
【化13】
Figure 0004431301
【0068】
【化14】
Figure 0004431301
【0069】
【化15】
Figure 0004431301
【0070】
【化16】
Figure 0004431301
【0071】
【化17】
Figure 0004431301
(試験例2)
以下に、核磁気共鳴(NMR)装置による分析について説明する。
【0072】
実施例1の検体3及び検体5についてNMR装置(バリアン社製)を用いて解析を行った。得られた結果のケミカルシフト値をppm単位(δH(CDCl3))で示した。
【0073】
【表1】
Figure 0004431301
【0074】
【表2】
Figure 0004431301
その結果、表1に示すようなプロトンのケミカルシフト値が得られた。これらは、文献で既に報告されているドルパニンのケミカルシフト値と一致した。試験例1及び試験例2の結果から、実施例1の検体3をドルパニンと同定した。実施例2の検体3についても、同様なケミカルシフト値を示し、ドルパニンと同定された。また、表2に示すように、実施例1の検体5は3−プレニル−4(ジヒドロシナモイロキシ)桂皮酸であった。同様に、実施例1の検体5及び実施例2の検体5は、3−プレニル−4(ジヒドロシナモイロキシ)桂皮酸と同定された。
【0075】
加えて、実施例1及び2から、3−プレニル−4(シナモイロキシ)桂皮酸、3−プレニル−4(p−クマロイロキシ)桂皮酸、3−プレニル−4(カフェオイロキシ)桂皮酸、3−プレニル−4(フェルライロキシ)桂皮酸、3−プレニル−4(シナピロイロキシ)桂皮酸及び3−プレニル−4(サリチロイロキシ)桂皮酸が同定された。
【0076】
なお、製造例1及び2並びに実施例1及び2における3−プレニル−桂皮酸誘導体の収率は、それぞれ、0.2、0.1、5.9及び3.6%であり、従来の製造方法に比して実施例1及び2の製造方法による収率が高かった。
【0077】
以下に、癌細胞を用いた抗癌作用の実験について説明する。
(試験例3)
大腸癌細胞株SW480、DLD−1及びCOLO201、胃癌細胞株MKN1、MKN28及びMUGC4並びに白血病細胞株HL60、NB4、K562及びU937を用いた。これらの細胞を培養液に懸濁し、培養用シャーレに播種した。5容量%炭酸ガス/95容量%空気下、37℃で培養した。これに、実施例1及び2の検体並びに得られた8種類の3−プレニル−桂皮酸誘導体を添加した。また、対照物質としてアルテピリンC(シグマ製)を添加した。最終濃度を10及び50μg/mlとし、さらに、72時間培養した。培養後の細胞数を計数し、溶媒対照と比較した。なお、結果は、溶媒対照群に比して90%を上回る場合を−、50〜90%の場合を+、25〜49%の場合を++、25%を下回る場合を+++とした。
【0078】
【表3】
Figure 0004431301
【0079】
【表4】
Figure 0004431301
【0080】
【表5】
Figure 0004431301
【0081】
【表6】
Figure 0004431301
表3〜6に示すように、実施例1及び2並びに3−プレニル−桂皮酸誘導体は、全ての癌細胞に対して細胞数を減少させ、抗癌作用が認められた。アルテピリンCにも抗癌作用が認められた。
【0082】
以下に、正常細胞に対する毒性試験について説明する。
(試験例4)
健康な人より末梢血を採取し、リンパ球を分離した。このリンパ球を培養用シャーレに播種し、5容量%炭酸ガス/95容量%空気下、37℃で培養した。マイトジェンであるコンキャナバリンAで刺激した後、実施例で得られた8種類の3−プレニル−桂皮酸誘導体及びアルテピリンCを添加した。最終濃度は50μg/mlとした。これをさらに、72時間培養した。培養後の生細胞数を計数し、溶媒対照と比較した。溶媒対照群に対してt検体を行い、危険率5%未満を基準とし、有意差(*印)を判定した。
【0083】
【表7】
Figure 0004431301
表7に示すように、実施例1及び2並びに8種類の3−プレニル−桂皮酸誘導体を添加した群の生細胞数は、溶媒対照群の値と同程度であった。これらの誘導体は、正常細胞に対する副作用が弱いと結論された。一方、アルテピリンCの処理では、生細胞数が減少しており、正常細胞に対する副作用が認められた。
【0084】
(試験例5)
アポトーシス誘発実験について説明する。大腸癌細胞株SW480又は白血病細胞株HL60を用いた。試験例3で処理された細胞についてアポトーシス誘導能を調べた。試料で72時間処理された細胞懸濁液に5μg/mlのヘキスト33342溶液を添加し、37℃で、30分間反応させた。この細胞懸濁液をPBSで洗浄後、無蛍光性スライドグラスの上に滴下し、蛍光顕微鏡下で観察した。細胞の核が、ぶどうの房状又は数珠状に変化している細胞をアポトーシス細胞として計測した。細胞200個を計数し、アポトーシス細胞の出現率を求めた。溶媒対照群に対してt検体を行い、危険率5%未満を基準とし、有意差(*印)を判定した。
【0085】
【表8】
Figure 0004431301
表8に示すように、溶媒対照群に比して実施例1及び2並びに8種類の3−プレニル−桂皮酸誘導体ではアポトーシス細胞が増加していた。また、前記の細胞を蛍光顕微鏡により観察すると、処理された細胞の核は、ぶどうの房状又は数珠状に変化しており、アポトーシスの誘導が確認された。
【0086】
以下に、電気泳動によるアポトーシス検出実験について説明する。
(試験例6)
大腸癌細胞株SW480に実施例1及び2並びに8種類の3−プレニル−桂皮酸誘導体の50μg/mlを添加して37℃で72時間処理した。得られた細胞からDNAを抽出した。このDNAをアガロースゲル電気泳動装置に供し、エチジウムブロマイド溶液で染色した。これを紫外線照射装置下で紫外線を照射し、蛍光を発するDNAを観察した。
【0087】
その結果、実施例1及び2並びに8種類の3−プレニル−桂皮酸誘導体のいずれの処理によっても、切断されたDNAラダーが観察され、アポトーシスの誘導が確認された。
【0088】
以下に、癌細胞のアポトーシス誘導剤を含有する食品製剤について説明する。
(実施例3)
実施例1で得られた癌細胞のアポトーシス誘導剤0.2g、ヒメマツタケ粉砕物0.2g、霊芝粉砕物0.2g、異性化糖3g、食用セルロース1.8g、アスコルビン酸0.01g及び食用香料0.1gの比率で混合した。これを常法により打錠し、直径10mm、重量0.3gの三角型錠剤を得た。
【0089】
(試験例7)
実施例3で得られた食品製剤を使用して、健常者3例を対象にリンパ球の小核試験を行なった、すなわち、健常者に1日6粒を7日間摂取させた。摂食前及び摂食7日後に5mlずつ採血し、リンパ球の小核形成率を計測した。その結果、摂食前に比して摂食7日後のリンパ球の小核形成率は有意に減少した。また、使用感においても特に苦情は聞かれなかった。さらに、尿検査値、血液検査値及び血液生化学値に異常は認められなかった。
【0090】
以下に、癌細胞のアポトーシス誘導剤を含有する化粧品について説明する。
(実施例4)
モノステアリン酸ポリエチレングリコール1g、親油型モノステアリン酸グリセリン1g、馬油エステル2g及びオレイン酸3gを加熱し、溶解した。得られた溶液に、実施例1で得られた癌細胞のアポトーシス誘導剤0.2g、シリマリン0.2g、プロポリス抽出物0.2g、プロピレングリコール2g、グリチルリチン酸ジカリウム0.1g、α−トコフェロール0.1g及び精製水70gを添加した。これらを溶解した後、冷却して乳液を得た。
【0091】
(試験例8)
実施例4で得られた乳液を使用して健常者3例を対象に、皮膚細胞の8−ハイドロキシデオキシグアニン(8−OHG)量を測定した。すなわち、健常者の前腕皮膚に乳液を1日0.5gずつ7日間塗布させた。塗布前及び塗布7日後に皮膚細胞を粘着テープ(ニプロ(株))で剥離し、得られた皮膚細胞の8−OHG量を8−OHG測定キット(日研化学(株))を用いて測定した。その結果、塗布前に比して塗布7日後の皮膚細胞の8−OHG量は有意に減少した。また、使用感においても特に苦情は聞かれなかった。
【0092】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記記載の式(10)で示される3−プレニル−桂皮酸誘導体を化学的に合成しても良い。すなわち、桂皮酸誘導体とプレニル化合物を触媒下で化学的に結合させることにより、桂皮酸誘導体のべンゼン環にプレニル基を導入することができる。
【0094】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の癌細胞のアポトーシス誘導剤によれば、副作用が弱く、癌細胞に対して優れたアポトーシス誘導作用が発揮される。
【0095】
請求項2の記載された癌細胞のアポトーシス誘導剤の製造方法によれば、収率良くアポトーシス誘導剤を製造することができる。
請求項3に記載の癌細胞のアポトーシス誘導剤を含有する抗癌剤によれば、副作用が弱く、優れたアポトーシス誘導作用に基づき、抗癌作用が発揮される。
【0096】
請求項4に記載の食品製剤によれば、副作用が弱く、癌細胞に対する優れたアポトーシス誘導作用が発揮される食品製剤を得ることができる。
請求項5に記載の化粧品によれば、副作用が弱く、癌細胞に対する優れたアポトーシス誘導作用を示す化粧品が得ることができる。

Claims (5)

  1. 下記の式(10)で示される3−プレニル−桂皮酸誘導体から選択される少なくとも一種を有効成分とする癌細胞のアポトーシス誘導剤。
    Figure 0004431301
    Yは、シナモイロキシ基、p−クマロイロキシ基、カフェオイロキシ基、フェルライロキシ基、シナピロイロキシ基又はサリチロイロキシ基である。
  2. ポリフェノール含有素材を抽出用溶媒に混合し、抽出用溶媒に抽出された抽出物を分離用担体又は樹脂に供し、分離用溶媒により溶出させ、紫外部領域の励起光に対する蛍光を指標として下記の式(10)で示される3−プレニル−桂皮酸誘導体を分取することを特徴とする請求項1に記載の癌細胞のアポトーシス誘導剤の製造方法。
    Figure 0004431301
    Yは、シナモイロキシ基、p−クマロイロキシ基、カフェオイロキシ基、フェルライロキシ基、シナピロイロキシ基又はサリチロイロキシ基である。
  3. 請求項1に記載の癌細胞のアポトーシス誘導剤を有効成分とする抗癌剤。
  4. 請求項1に記載の癌細胞のアポトーシス誘導剤を有効成分とする食品製剤。
  5. 請求項1に記載の癌細胞のアポトーシス誘導剤を有効成分とする化粧品。
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