以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
酸化的リン酸化の活性化作用を呈するロイコシアニジン誘導体とは、下記の式(1)で示される構造からなるものである。
前記の式(1)のように酸化的リン酸化の活性化作用を呈するロイコシアニジン誘導体はロイコシアニジンの1分子及びベタインの2分子から構成されている。これらの分子及びその結合はすべて自然界に存在する天然型であり、各分子間はエステル結合を介して結合している。
このロイコシアニジン誘導体はロイコシアニジン及びベタインを原料として化学合成により得ることができる。しかし、その化学的な合成では原料の損失が多く、製造コストが高くなるため、産業への利用は限定される。化学合成された純度の高いロイコシアニジン誘導体は分析の標準品や微量な試供品を得るために用いられる。
このロイコシアニジン誘導体の構造を解析することは有効成分の特定ができる点から好ましい。また、製品や製剤に利用して販売する際の有効成分の含有量の指標として利用できることから好ましい。
このロイコシアニジン誘導体の構造解析の一例として化学合成された高純度(純度95%以上)の標準品を用いて重水素化ジメチルスルホキシド中の90MHzのH−NMRにより解析した場合、ピークの位置は1.342、1.379、1.487、2.059、2.910、3.013、3.844、4.195、4.374及び4.480ppmに認められる。
さらに、このロイコシアニジン誘導体は高速液体クロマトグラフィーや質量分析装置で解析され、その構造が同定される。
この構成成分であるロイコシアニジンは天然に存在している化合物である。ロイコシアニジンの化学式はC15H14O7であり、分子量は306.26である。
このロイコシアニジンはポリフェノールの一種であり、抗酸化力、抗菌作用、抗炎症作用に優れた働きを呈する。
このロイコシアニジン誘導体ではロイコシアニジンは複素環Aの2つ水酸基でベタインとそれぞれエステル結合を形成している。
このロイコシアニジン誘導体ではロイコシアニジンの水酸基とベタインのカルボン酸部分がエステル結合している。この結合によりこのロイコシアニジン誘導体は安定的に、かつ、吸収率が高くなる。
構成成分であるベタインは化学式C4H12O2N1の天然に存在する4級アンモニア化合物である。つまり、窒素が4級であり、プラスに荷電している。このベタインは植物や動物に保持され、コリンなどから生合成される。
もともとテンサイから採取された成分であり、甘味剤や保湿剤として利用されており、その安全性は確認されている。また、コリンと同様にメチル基の供与体として生体内では利用されている。メチル基は核酸やビタミンの合成に利用される。
このロイコシアニジン誘導体ではベタインはメチル基の供与体として酸化的リン酸化に関係する遺伝子の安定化及びATP産生酵素に寄与している。
さらに、ベタイン部分はプラスに荷電していることにより、リン酸などの生体内の弱酸や有機酸と反応する。特に、リン酸との反応性においてATPや核酸のリン酸と反応して酸化的リン酸化を促進することから好ましい。
このロイコシアニジン誘導体は両親媒性を示すことにより、細胞内に浸透しやすく、また、ミトコンドリアの内膜に到達しやすいことは好ましい。
ミトコンドリアの内膜でロイコシアニジン部分は疎水性的にミトコンドリア内膜の膜に浸透してリン酸化酵素を刺激して活性化する。また、ロイコシアニジン部分はリボフラビン部分を活性化して電子伝達系を刺激する。
また、ロイコシアニジン部分はフェノール性の水酸基は鉄元素を保持することにより、シトクロムcやシトクロムbなどのシトクロム類を活性化して電子伝達を活性化する。
ロイコシアニジン誘導体のベタイン部分はATP合成系酵素を活性化することにより酸化的リン酸化を促進させる。また、この誘導体は水溶液中で水素ガスを発生させる。この水素ガスは活性酸素を消去し、抗酸化作用を呈することから細胞や組織を保護する点から好ましい。
このロイコシアニジン誘導体はロイコシアニジンの水酸基によるマイナス荷電とベタインのプラス荷電により両極性を呈する。これは胃酸の酸性と腸の消化液の弱アルカリ性に従順する。これにより腸管への到達率が増加し、かつ、腸管からの吸収が増加する。
このロイコシアニジン誘導体はロイコシアニジン単独に比べて数倍から10倍以上の腸管吸収を高めることは好ましい。かつ、血液中では両親媒性として過剰量は排泄されることから過剰量の摂取に対する副作用の軽減という点からも好ましい。
また、このロイコシアニジン誘導体は脂溶性と水溶性の両方の性質を呈することから動物の細胞膜及び植物や酵母の細胞壁を通過し、細胞内に吸収されやすい。
さらに、皮膚の角質細胞膜も通過しやすく、角質層のバリア機能を維持することは肌の件健康や美容の点から好ましい。また、このロイコシアニジン誘導体は細胞膜を通過し、皮膚細胞内で酸化的ン酸化を活性化して細胞の再生や機能を促進することから好ましい。
植物に対してはこのロイコシアニジン誘導体が植物の細胞壁と細胞膜を通過して植物細胞内に入り、酸化的リン酸化を促進し、生育に必要なエネルギーを産生し、花の開花や結実、果実の成長を促進して、植物の寿命を延長することは好ましい。すなわち、植物活性化剤としての働きがある。
また、このロイコシアニジン誘導体は化学物質や水銀やヒ素などの重金属をキレートする作用もあり、デトックス作用及び解毒作用を呈することは好ましい。このデトックス作用にはロイコシアニジンのフェノール性水酸基が関与している。たとえば、金属により汚染された土壌の清浄化にも利用されることは好ましい。
また、このロイコシアニジン誘導体は両親媒性であり、水溶性の化粧水と油性のクリームのいずれにも配合できる点は好ましい。このロイコシアニジン誘導体はミトコンドリアの遺伝子に働き、ミトコンドリアの増殖を促進することにより細胞機能を促進することは好ましい。
神経細胞においては細胞内の酸化的リン酸化を活性化し、ATPを増加させて細胞の成長を促進する。また、ATPによるマイクロチューブや神経フィラメントの収縮を促進して軸索輸送を高めることは神経の活動を活性化することから好ましい。脳神経においては認知症に働き、脳神経の老化を抑制する。
神経終末からの神経伝達物質の放出を促進して神経伝達を高めることは好ましい。また、運動神経細胞のATPを高めて神経末端からのアセチルコリンの放出を高めることにより筋肉の収縮を高めて神経と筋肉の活動性を増すことは好ましい。また、水素ガスは抗炎症作用を発揮することから好ましい。水素ガスによる還元作用も安定性に寄与することから好ましい。この水溶液中の水素ガス濃度は1.6ppmであり、飽和水素ガス濃度である。
すなわち、有害金属や化学物質は神経細胞に障害を与えて神経障害を生じる。このロイコシアニジン誘導体は有害金属や化学物質を吸着することにより神経障害を予防することから好ましい。
また、このロイコシアニジン誘導体は皮膚細胞の酸化的リン酸化を高めてコラーゲンやエラスチンの産生を高めることは好ましい。化粧料としての利用が高まることから好ましい。
このロイコシアニジン誘導体は心筋梗塞においては冠状動脈の梗塞や虚血状態でも心筋細胞の酸化的リン酸化を活性化してATP産生を高めて心臓の活動を活性化して強心作用を発揮する。
特に、梗塞部位の血管においてはこのロイコシアニジン誘導体は血管新生を促進し、血流の改善し、血圧を低下させる。加えてロイコシアニジン誘導体の粉末から発生する水素ガスは血液脳関門を通過して障害部位の活性酸素を除去して障害を防御する。
また、このロイコシアニジン誘導体はアスリートや運動時、筋肉を増強したい場合、筋肉細胞での脂肪の輸送を促進してエネルギー産生を活性化することから好ましい。運動の際に発生する活性酸素に対して水素ガスが筋肉組織を防御する。
このロイコシアニジン誘導体は生体内では腎臓や肝臓のエステラーゼにより分解され、尿中に排泄される。分解されて構成成分である安全性の高いロイコシアニジン及びベタインに分解される。したがって、このロイコシアニジン誘導体は体内に蓄積されることはなく、分解も生体内酵素で行われ、分解物も天然物であることから安全性が高い。
さらに、ロイコシアニジン部分には植物の生育を促進する植物活性化作用があることからこのロイコシアニジン誘導体にも植物の生育を促進できる点は産業上の利用の点から好ましい。
また、植物が細菌やウイルスに感染して炎症を起こして生育が減少する変化において過剰な脂肪が関与している点からこのロイコシアニジン誘導体が脂肪を吸着することにより細菌感染を抑制し、植物を感染症から守る点は好ましい。
このロイコシアニジン誘導体は天然にも存在しており、ピスタチオなどの果実や植物にも極微量認められる。
このロイコシアニジン誘導体を精製により上記の植物から抽出することは可能である。ただし、精製には大量の原料を必要とし、有機溶媒などを利用することから産業上への利用は制限される。
このロイコシアニジン誘導体はピスタチオの果実を発酵法などにより増加させることは好ましい。発酵法としては大豆と混合して納豆菌やベニコウジ菌により発酵させて得る。用いる菌体は食用に利用できるものであるため、安全性が高い。
この方法は食経験があり、ロイコシアニジン誘導体の産生量も多いことから好ましい。
得られたロイコシアニジン誘導体を医薬品素材として利用する場合、目的とするロイコシアニジン誘導体を精製することは、目的とするロイコシアニジン誘導体の純度が高まり、不純物を除去できる点から好ましい。
医薬品としては注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。
経口剤としては錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤はシェラックまたは砂糖などで被覆することもできる。
また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を添加することができる。
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
食品製剤としては酸化的リン酸化を活性化するためのエナジードリンクや強壮性の食品に利用される。神経活動を促進することから神経障害のリハビリ用食品や学習時の食事などに利用される。また、美容食品にも利用される。保健機能食品として栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、老化の抑制と運動能力の向上を目的とした飼料やペット用サプリメントとして利用される。
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができる。
化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。
製造された化粧料は肌の再生能力の向上やコラーゲンやエラスチンなどの増加及び肌の健康維持の目的で利用される。
また、このロイコシアニジン誘導体は歯肉細胞の機能の維持を目的とした歯磨き剤、洗口液や歯磨きペーストなどに利用できる。
また、植物に対しては果実の結実と収穫量の増加を目的とした植物活性化剤として利用することができる。
この植物活性化剤は希少な蘭や花の活性化の目的で利用でき、果実や野菜、穀類の栽培を安定化させる。植物工場における野菜や果実の栽培にも利用でき、栽培効率を上げることができる。
次に、ピスタチオの果実、大豆粉末と納豆本舗製の納豆菌を添加して発酵させた発酵液を紅麹本舗製のベニコウジ菌で発酵する工程からなる酸化的リン酸化の活性化作用を呈するロイコシアニジン誘導体の製造方法について説明する。
ここでいうロイコシアニジン誘導体とはロイコシアニジンの1分子とベタインの2分子から構成されている。これらの結合はすべて天然型であり、物質の間はエステル結合及びエーテル結合を介して結合している。
このロイコシアニジン誘導体のロイコシアニジン及びベタインは天然に存在し、食経験も豊富であり、安全性が認められていることから好ましい。
この誘導体は皮膚、神経、骨、筋肉、肝臓や腎臓などにも働き、酸化的リン酸化を活性化することにより脂肪を燃焼させて筋肉でATPを産生させることにより糖質を利用させることにより、ダイエットや美容に優れた働きを呈する。
この製造方法とはピスタチオの果実、大豆粉末と納豆本舗製の納豆菌を添加して発酵させた発酵液を紅麹本舗製のベニコウジ菌で発酵する工程からなる。
原料となる物質はピスタチオの果実、大豆粉末、納豆本舗製の納豆菌及び紅麹本舗製のベニコウジ菌である。
ここでいうピスタチオは、学名Pistacia veraのウルシ科カイノキ属の植物である。その果実は食用として利用されている。食経験も豊富であり、安全性も高い。
使用するのはピスタチオの果実であり、種子を含有していても良い。果肉と果実の両方を含むことはコスト的に好ましい。
ピスタチオの果実はイラン、アメリカ、日本、アジア、その他の国で採取されたものでも良いが、品質が高く、価格の点から、イラン産が好ましい。たとえば、Iran Dried Fruit社のピスタチオの果実は品質が高いことから望ましい。
ピスタチオの果実は乾燥され、粉末化されることが好ましく、発酵の前にオートクレーブ滅菌されることは発酵をスムーズに行うることから好ましい。
3マイクロメーター以下の粒子サイズの粉末が発酵の工程を実施しやすくすることから好ましい。
原料となる大豆粉末は、日本産、中国産、アメリカ産、ロシア産などいずれの産地の大豆でも利用できるが、トレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である日本産が好ましい。
このうち、有機栽培や無農薬で栽培された大豆は有害な農薬や金属を含有しないことから、さらに好ましい。
大豆は使用に際して、株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20、中山技術研究所製DM−6などの粉砕機で粉砕される。これにより発酵の工程が効率的に進行されやすい。
さらに、ピスタチオの果実と大豆は粉砕後、オートクレーブなどにより滅菌されることは雑菌の繁殖を防御できることから好ましい。
用いる納豆本舗製の納豆菌は学名バチルス サブチリスで日本では納豆の製造に汎用され、食経験が豊富で有用な食用菌である。沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。用いる納豆菌は納豆本舗製であり、高い発酵性を呈する。
この納豆菌はピスタチオの果実と大豆からなるロイコシアニジンとベタインの結合反応を促進する。
前記の発酵に関するそれぞれの添加量はピスタチオの果実の乾燥粉末1重量に対し、大豆粉末は0.01〜6重量及び納豆本舗製の納豆菌は0.003〜0.07重量が好ましい。納豆菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
また、この発酵は40〜44℃に加温され、発酵は1日間から10日間行われる。目的とするロイコシアニジン誘導体をHPLCやTLCにより定量することならびに菌体の増殖性を確認することにより、発酵の工程管理を実施することは産生量が調整されることから好ましい。
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
この発酵の工程によって生成されるロイコシアニジン誘導体はその結合が不安定であり、分解されやすいことから次の紅麹本舗製のベニコウジ菌による発酵を行い、目的とするロイコシアニジン誘導体の結合を安定化させる。
用いる紅麹本舗製のベニコウジ菌は学名Monascus purpureusの糸状菌であり、古くから日本、中国や台湾において紅酒や豆腐ようなどの発酵食品に利用されている。また、沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。紅麹本舗製のベニコウジ菌は発酵効率に優れており、また、安全性も高い。
前記の発酵に関するそれぞれの添加量は前記の発酵物1重量に対してベニコウジ菌は0.0002〜0.06重量が好ましい。紅麹本舗製のベニコウジ菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
また、この発酵は40〜44℃に加温され、発酵は1日間から14日間行われる。この発酵の工程によってベニコウジ菌の酸化及び還元作用によりこのロイコシアニジン誘導体の構造が安定化される。
前記の発酵物は含水エタノールで抽出されることは、生成物を効率良く回収し、菌を滅菌でき、次の工程が実施しやすいことから、好ましい。また、得られた発酵物を超音波処理することは、生成物が分離しやすいことから、好ましい。また、凍結乾燥などにより、濃縮することは、以下の工程が短時間に実施できることから好ましい。
前記の還元反応物から、目的とするロイコシアニジン誘導体を分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
例えば、分離用担体または樹脂により分離され、分取されることにより目的とするロイコシアニジン誘導体が得られる。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して3〜40倍量が好ましく、4〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から10〜30℃が好ましく、12〜25℃がより好ましい。
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
ロイコシアニジン誘導体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とするロイコシアニジン誘導体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから好ましい。
また、最終抽出を食用油や化粧料に用いる油脂で実施することは、得られるロイコシアニジン誘導体が安定に維持されることから好ましい。例えば、大豆油、米ぬか油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油で抽出することは好ましい。
また、このロイコシアニジン誘導体を粉末化することは防腐の目的から好ましい。
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは一例であり、素材、原料や検体の違いに応じて常識の範囲内で条件を変更させることが可能である。
イランで減農薬栽培されたピスタチオ(学名Pistacia vera)の果実をIran Dried Fruitから購入して用いた。この果実を水道水で水洗後、天日で乾燥させ、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製のスーパー自由ミル)にて粉砕し、ピスタチオの果実の乾燥粉末粉砕物を1.0kg得た。
また、北海道産の大豆(学名Glycine max)をミキサー(クイジナート製)に供し、大豆の粉砕物1.0kgを得た。前記のピスタチオの果実と大豆の粉砕物をオートクレーブ(SDL−320、トミー製)に供し、121℃、20分間、滅菌した。
これらを清浄な発酵タンク(滅菌された発酵用丸形40リットルタンク、遠藤科学製)に入れ、滅菌された水道水7kgを添加し、攪拌した。
これとは別に、納豆本舗製の粉末納豆菌(学名Bacillus subtilis)の10gを上記の発酵タンクに供し、滅菌した大豆粉末と前培養させた発酵準備液を用意した。
前記の前培養した納豆菌の発酵準備液とピスタチオの果実の乾燥粉末と大豆とを入れた発酵タンクに添加し、攪拌後、42〜43℃の温度範囲で加温し、発酵させた。
発酵過程では通気によりバブリングと攪拌を行いつつ、発酵液のサンプリングを行い、7日間発酵させた。発酵終了後、発酵タンクより発酵物を取り出し、煮沸滅菌した。この発酵物を濾過布により濾過して、納豆菌による発酵液1.3kgを得た。この発酵液1kgに対して紅麹本舗製のベニコウジ菌(学名Monascus purpureus)の10gを添加して41〜42℃で6日間発酵させた。
この発酵物にエタノールを添加して発酵を停止した。さらに、煮沸滅菌した。これを濾過し、濾過液を目的とするロイコシアニジン誘導体とした。これを検体1とした。この検体1は凍結乾燥により粉末化した。この粉末0.1gと精製水10mLを添加することにより水素ガスが発生した。ガスクロマトグラフィーの定量の結果、水溶液中の水素ガス濃度は1.6ppmであった。
さらに、構造解析及び実験の目的で精製物を得た。つまり、前述の検体1のロイコシアニジン誘導体の100gに6%エタノール含有精製水の1Lを添加し、ダイヤイオン(AMP03型、三菱化学製)600gを6%エタノール液に懸濁して充填したガラス製カラム(遠藤科学製)に供した。
これに10Lの6%エタノール液を添加して清浄し、さらに、30%エタノール液を1L添加して洗浄した。また、50%エタノール液を1L添加して目的とするロイコシアニジン誘導体を溶出させ、この溶出液を濃縮して精製した。精製されたロイコシアニジン誘導体を減圧蒸留により、エタノール部分を除去し、水溶液とした。これを真空乾燥させ、ロイコシアニジン誘導体の精製物33gを得てこれを検体2とした。収率は約3.3%であり、天然物から製造するには十分な収量であり、この製造方法が優れた製法であることが確認された。
以下に、ロイコシアニジン誘導体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
上記のように得られた検体2をエタノールに溶解し、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析した。
さらに、これを核磁気共鳴装置(90MHz、H−NMR、ブルカー製)で解析した結果、検体1と検体2からロイコシアニジンの1分子とベタインの2分子からなるロイコシアニジン誘導体が検出された。
すなわち、重水素化ジメチルスルホキシド中のH−NMRの結果、1.342、1.379、1.487、2.059、2.910、3.013、3.844、4.195、4.374及び4.480ppmに認められた。
上記の解析結果から化学的に合成した標準品と同一構造を呈することが判明した。すなわち、検体2からロイコシアニジン1分子とベタインの2分子がエステル結合した目的とするロイコシアニジン誘導体であると確認できた。
以下にヒト皮膚表皮細胞を用いた皮膚作用試験について述べる。なお、この試験方法は生化学的に成分の働きを検証できる再現性のある常法である。
(試験例2)
クラボウより購入したヒト由来表皮細胞(表皮由来、エピーダーセル)を用いた。培養液として5%牛胎児血清含有MEM培地(Sigma製)を用いて培養した1000個の細胞を35mm培養シャーレ(FALCON製)に播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。ここに酸化された脂質混合物1mgを添加した。ここに、前記の検体1、検体2及び陽性対照としてEGF(フナコシ製、表皮成長因子)をいずれも0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養して試験した。
培養液を採取後、表皮細胞の生存率をトリパンブルー法により計数した。その後、表皮細胞の懸濁液を調製した。この表皮細胞中に存在しているATP量をATP測定キット(和光純薬製)により分光学的に定量した。
なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。溶媒を添加した溶媒対照群と比較した。
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加によりヒト由来表皮細胞数は溶媒対照群に比して平均値として156%に増加した。また、検体2では233%に増加した。一方、EGFでは144%となった。この結果、検体1及び検体2の方がEGFよりも優れた細胞活性化作用を呈した。
それぞれの細胞中のATP量は溶媒対照群では12μg、検体1処理群では86μg、検体2処理群では166μg、EGF処理群では55μgとなった。
検体1及び検体2の方がEGFよりATP産生に勝っていた。すなわち、対照物質に比して酸化的リン酸化が活性化されていた。また、検体1及び検体2を添加した培養液では1.6ppmの水素ガスの発生が確認された。
一方、安全性試験の一環として人工皮膚であるEpiSkin(SkinEthic社製)を用いた皮膚刺激性実験では、検体1及び検体2の添加により刺激性は認められず、安全性が確認された。なお、この方法は皮膚刺激性試験評価法として動物を使用しない代替法として確立されている。
以下にヒト神経細胞の障害モデルを用いた障害に対する試験について述べる。なお、この試験方法は生化学的に成分の働きを検証できる再現性のある常法である。
(試験例3)
コスモバイオから購入したヒト神経細胞(Human Neurons(HN))を用いた。培養液として専用の培養液(神経細胞増殖培地)を用いて培養した1000個の細胞を35mm培養シャーレに播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。これに1%の神経毒であるアクリルアミド水溶液を添加して神経細胞を刺激した。
ここに、前記の実施例1で得られた検体1及び検体2、陽性対照としてNGF(フナコシ(株)、ヒトタイプ)をいずれも0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養した。
培養終了後、細胞数を顕微鏡的に計数した。さらに、細胞を培養シャーレに入れた状態で細胞内のATP量を前記の方法に従い、定量した。なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。溶媒を添加した溶媒対照群と比較した。
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加により神経細胞数が溶媒対照群に比して平均値として177%に増加した。また、検体2では244%に増加した。一方、NGFでは166%の増加であり、その増加量を比較すると検体1及び検体2の方が優れていた。
神経細胞内のATP量については検体1により溶媒対照群に比して188%に増加した。また、検体2の添加によっては溶媒対照の366%に増加した。NGFでは144%となり、検体1及び検体2の方がNGFに比べてATP量、すなわち、酸化的リン酸化の活性化作用に優れていた。さらに、検体1及び検体2を添加した培養液では1.6ppmの水素ガスの発生が確認された。