JP2022090234A - ステムセルファクター作用を介した表皮細胞増殖作用を呈するモラノリン誘導体及びその製造方法 - Google Patents

ステムセルファクター作用を介した表皮細胞増殖作用を呈するモラノリン誘導体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ステムセルファクター作用を介した表皮細胞増殖作用を呈するモラノリン誘導体及びその製造方法を提供する。【解決手段】 モラノリン誘導体はモラノリン3分子とフェニルアラニン1分子から構成される両親媒性の低分子化合物であり、ステムセルファクター様リガントとして作用し、表皮細胞増殖作用を呈する。EGFとの併用により相乗的な作用も認められる。モラノリン誘導体は水溶性や油溶性の化粧料や神経治療剤として利用される。その製造方法は桑の葉と大豆を納豆菌で発酵した発酵液を培地とし、豚歯髄細胞を培養して得られる豚歯髄細胞順化培養液を精製する工程からなる。【選択図】 なし

Description

この発明はステムセルファクター作用を介した表皮細胞増殖作用を呈するモラノリン誘導体及びその製造方法に関するものである。
細胞及び組織の再生には幹細胞、すなわち、Stem cellが関与している。そのため、老化を防止する目的で幹細胞の活性化が研究されている。幹細胞は全身の組織に存在し組織の再生に関わっている。しかし、幹細胞は自己増殖のために増殖因子であるステムセルファクターを必要とする。このステムセルファクターには臓器に特有に成分と全身に共通した有効成分がある。
幹細胞にはステムセルファクター受容体が存在しており、ステムセルファクター受容体に結合した結果、細胞に増殖のシグナル伝達が活性化されて最終的には増殖に必要な遺伝子が増幅される。すなわち、幹細胞の増殖のためには最初にステムセルファクター受容体の活性化が不可欠である。
ステムセルファクターを活性化する手段としてステムセルファクター受容体の結合部位の感受性の増加であるハイパーセンシタイゼーションとステムセルファクター受容体の数的な増加であるアップレギュレーションの両面が考えられる。この両面の手段でステムセルファクターを活性化することができれば、幹細胞の増殖と再生に対して相乗的な効果が期待される。
ステムセルファクターに関する発明の例は少ない。たとえば、細胞の遺伝子マーキングならびに疾病の予防および治療のためのその使用に関する発明がある。そこでは、ステムセルファクター受容体について言及されているもののステムセルファクター受容体を活性化する発明ではない(例えば、特許文献1参照。)。
特表2002-529080
既存の物質によるステムセルファクター作用を介した表皮細胞増殖作用は軽度であり、産業上への利用が限定されるという課題があり、また、化学合成された物質では安全性に問題があり、利用が限られている。さらに、その製造方法も確立されていない。
そこで、副作用が弱く優れたステムセルファクター作用を介した表皮細胞増殖作用を呈する天然物及び天然物を利用した製造方法が望まれている。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は下記の式(1)で示されるステムセルファクター作用を介した表皮細胞増殖作用を呈するモラノリン誘導体に関するものである。
Figure 2022090234000001
上記の目的を達成するために、請求項2に記載の発明は天然物を利用し、請求項1に記載の式(1)で示されるモラノリン誘導体の製造方法に関するものである。
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載のモラノリン誘導体はステムセルファクター作用を介した表皮細胞増殖作用に優れている。
請求項2に記載のモラノリン誘導体の製造方法は天然物を利用した製造方法であるから優れている。
以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
ステムセルファクター作用を介した表皮細胞増殖作用を呈するモラノリン誘導体とは、下記の式(1)で示される構造からなるものである。
Figure 2022090234000002
前記の式(1)のようにステムセルファクター作用を介した表皮細胞増殖作用を呈するモラノリン誘導体はモラノリンの3分子及びフェニルアラニンの1分子から構成されている。これらの分子及びその結合はすべて自然界に存在する天然型であり、各分子間はエーテル結合またはエステル結合を介して結合している。C27H42O14N4の化学式であり、炭素原子27個、水素原子42個、酸素原子14個及び窒素原子4個から形成される。
このモラノリン誘導体はモラノリン及びフェニルアラニンを原料として化学的なエステル合成やエーテル合成の工程により得ることができる。たとえば、モラノリン及びフェニルアラニンは市販されている化成品や精製品を利用できる。官能基を保護しながら、常法により有機合成法により化学合成することができる。
一方、その化学的な合成では原料の損失が多く、製造コストが高くなるため、産業への利用は限定される。ここで化学合成された純度の高いモラノリン誘導体は定量及び定性分析の標準品を得るために用いられる。
このモラノリン誘導体の構造を解析することは目的とする有効成分の特定ができる点から好ましい。また、製品や製剤に利用して販売する際の有効成分の含有量の指標として利用できることから好ましい。
このモラノリン誘導体の構造解析の一例として化学合成された高純度(純度96%以上)の標準物質を用いて重水素化ジメチルスルホキシド中の600MHzのH-NMR(1H-NMR)により解析した場合、ピークは0.98、0.99、1.00、1.02、1.03、2.11、2.12、2.13、2.15、2.22、2.25、2.31、2.66、2.76、3.72、3.79、4.74、4.84、4.97、5.03、6.64及び6.68ppmに認められる。
また、C-NMR(13C-NMR)の解析ではピークは17.5、18.9、21.1、22.4、22.5、22.6、25.9、26.0、30.2、41.1、43.4、43.5、50.1、54.7、62.4、70.8、77.7、80.4、80.9、90.2、113.9、146.0、171.4、172.2、172.3及び174.8ppmに認められる。
さらに、このモラノリン誘導体は高速液体クロマトグラフィーなどで解析され、その構造が同定される。この構成成分であるモラノリンは天然に存在している化合物であり、蚕などの昆虫、植物や微生物にも認められ、安全性も確認されている。
特に、桑やマグワの葉には元来モラノリンが含有されており、桑やマグワを発酵することにより目的とするモラノリン誘導体を製造することが可能である。目的とするモラノリン誘導体を製造するための原料としてこれらの野菜、藻類、果実や穀類を用いることは好ましい。
もともと、このモラノリン自体にも働きがあり、皮膚細胞の保護作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用、脂肪燃焼作用、神経保護作用などである。しかし、モラノリン自体は吸収、体内動態や薬力学的に十分ではなく、産業上への利用には乏しかった。そこで、より吸収が良く、効果の強い物質が望まれていた。
このモラノリン誘導体は吸収と作用の両面で優れた構造上の特徴がある点から好ましい。すなわち、このモラノリン誘導体は内部に疎水性領域を有し、一方、外側には水酸基を複数個有して水溶性と抗酸化作用に優れた特徴があり、かつ、水溶性にも脂溶性にもなりうる性質である。このため、水溶液に溶解し、かつ、細胞膜のような脂溶性部分も通過しやすい。この両親媒性の性質のため、SCF受容体の近傍の細胞膜に浸透し、ステムセルファクター受容体を活性化して細胞を増殖させる。
このモラノリン誘導体は両親媒性を示すことから、腸管の粘膜層を通過しやすく、体内への吸収は高まることは好ましい。さらに、皮膚の角質層に対しても角質細胞同士のバリア組織に浸透し、浸潤しやすく、表皮層、つまり、顆粒層、有棘層と基底層にある皮膚細胞に到達しやすい。両親媒性を示すことから水溶液及びオイルとして利用範囲が広がることは好ましい。
さらに、フェニルアラニンのベンゼン環も疎水性に寄与し、アミノ基とカルボン酸はpHの緩衝作用を呈する。食用した場合、胃酸に対する抵抗性を呈する。すなわち、このpH緩衝作用により胃酸を緩和して胃酸による分解を防御することは好ましい。
このモラノリン誘導体の水酸基はすべてフリー体であり、強い抗酸化作用を呈する。この抗酸化作用により酸化刺激に対する防御作用が発揮されることは好ましい。たとえば、皮膚に塗布した場合、紫外線による皮膚の酸化を防止する働きがあり、皮膚を防御することは好ましい。また、この誘導体は粉末化した後、水溶性溶媒と反応させることにより水素ガスを発生することは好ましい。
このモラノリン誘導体自体がステムセルファクター受容体のリガンドとしてステムセルファクター受容体の活性中心に働き、ステムセルファクター作用を呈する。また、豊富な水酸基は抗酸化作用を停止、細胞膜上の受容体の働きを助け、安定化作用があることは好ましい。
さらに、このモラノリン誘導体はステムセルファクター作用を介した表皮細胞増殖作用を呈する。その働きはステムセルファクター受容体を修飾する働きに加えて、受容体に直接リガンドとして働く作用の2種類の働きがある。つまり、このモラノリン誘導体はステムセルファクター受容体の活性中心近傍と反応して立体的な構造に変化を生じさせる。この立体構造の変化がステムセルファクターとの結合能を増加させる。
このモラノリン誘導体の構成成分であるフェニルアラニンはL型の天然型であり、自然界に豊富に存在しており、その安全性は確認されている。また、モラノリンも自然界にアミノ酸の成分として存在しており、その安全性は高い。
さらに、ステムセルファクター作用としてステムセルファクターそのものの他にEGF(上皮由来成長因子)、IL-3(インターロイキン-3)、IGF-1(インスリン様成長因子-1)の働きを増強することは好ましい。また、モラノリン誘導体はEGFと相乗作用を示す。
ステムセルファクター受容体は各臓器の細胞に存在しており、反応性は臓器に特異的であり、年齢、性別の他に遺伝子多型による差異も認められる。
しかし、このモラノリン誘導体によるステムセルファクター作用は2つの異なるメカニズムにより発現するため、遺伝子多型や病的な状態などを含めたすべての状態とすべての組織に対して働くことが可能である。
特に、皮膚基底層細胞及び神経細胞のステムセルファクター受容体に対してはこのモラノリン誘導体の反応性は高いことは好ましい。したがって、このモラノリン誘導体は皮膚や神経の増殖効果を有し、かつ、皮膚疾患や神経疾患の治療効果及び予防効果に優れている。
モラノリン誘導体は植物活性化剤として利用される。このモラノリン誘導体は両親媒性を呈することから動物の細胞膜及び植物や酵母の細胞壁を通過し、細胞内に吸収されやすい。このうち、植物に対するステムセルファクターとしては植物ホルモンがある。このモラノリン誘導体はオーキシン、サイトカイニン、アブシシン酸、ジベレリンなどの反応性を高めて植物の生育を促進させることは好ましい。
このモラノリン誘導体は植物生育剤として発芽、成長、開花、結実、収穫などの植物の全体的な成長を促進することから農業分野の発展と食糧の増産に寄与できる点は好ましい。特に、蘭やマツバランなどの貴重な花や盆栽などの生育に利用できることは好ましい。
モラノリン誘導体は微生物活性化剤として利用される。また、このモラノリン誘導体は有用な微生物の成長を促進できる点では発酵工程の短縮化と合理化に利用できる。酒造、みそ、しょうゆ、納豆などの製造などの増産と製造期間の短縮に活用できる点は好ましい。
このモラノリン誘導体は皮膚の角質細胞膜も通過しやすく、角質層のバリア機能を維持することは皮膚の健康や美容の点から好ましい。
また、このモラノリン誘導体は両親媒性でpH緩衝作用を呈することから、水溶性の化粧水とクリームのいずれにも配合できる点は好ましい。
このモラノリン誘導体は細胞の増殖、コラーゲンやエラスチン産生を促進することにより皮膚細胞機能を促進することは好ましい。さらに、EGF(Epidermal Growth Factor)との併用により相乗的な効果が得られることは好ましい。また、EFGとの併用により約5倍の皮膚細胞の増殖が得られる。
神経細胞においても細胞のステムセルファクター作用を呈して神経細胞の増殖を活性化する。神経細胞は認知症、アルツハイマー症などで活性酸素やアミロイドβたんぱく質による細胞機能を低下させるという弱点がある。そのため、このモラノリン誘導体によるステムセルファクター作用により神経細胞の働きを回復させることは神経疾患の防御と回復の目的で好ましい。
また、神経終末からの神経伝達物質の放出を促進して神経伝達を高めることは好ましい。さらに、NGFとの併用により相乗的な効果が得られることは好ましい。NFGとの併用により約3倍の神経細胞の増殖が得られることはさらに好ましい。
運動神経細胞の神経末端からのアセチルコリンの放出を高めることにより筋肉の収縮を高めて神経と筋肉の活動性を増すことは好ましい。
このモラノリン誘導体は心筋梗塞においては冠状動脈の梗塞や虚血状態でも心筋細胞のステムセルファクター受容体を活性化して心筋細胞を増殖させ、障害部位の再生を促進することは好ましい。
また、このモラノリン誘導体はアスリートや運動時、筋肉を増強したい場合、筋肉細胞のステムセルファクター作用を呈して骨格筋細胞を増殖させることにより筋肉組織を増強させることは好ましい。特に、肉離れや筋肉切断のような筋肉細胞の消失に対して筋肉細胞を再生させることは好ましい。
このモラノリン誘導体は生体内では腎臓や肝臓のエステラーゼにより分解され、尿中に排泄される。分解されて構成成分である安全性の高いモラノリン及びフェニルアラニンに分解される。したがって、このモラノリン誘導体は体内に蓄積されず、分解も生体内酵素で行われ、さらに、分解物も天然物であることから安全性が高い。
桑(学名Morus Alba)の葉、藻類、ユスラウメの果実、グレープフルーツや温州みかんなどのかんきつ類、蕎麦の実などを原料として発酵法や豚歯髄細胞の培養により目的とするモラノリン誘導体を製造することは原材料が天然物であることから安全性の点から好ましい。
このモラノリン誘導体を精製により上記の植物や細胞培養順化液などから抽出することは可能である。ただし、精製には大量の原料を必要としコストが高く、また、有機溶媒などを利用することから産業上への利用は制限される。
発酵法や細胞培養法による製造はタンパク質を分解、食物繊維を除外できる点から製造効率が良く、このモラノリン誘導体の産生に適していることから好ましい。得られたモラノリン誘導体を医薬品素材として利用する場合、目的とするモラノリン誘導体を精製することは、目的とするモラノリン誘導体の純度が高まり、不純物を除去できる点から好ましい。
医薬品としては注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。
経口剤としては錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤はシェラック、多糖類や糖質などで被覆することもできる。
また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素、香味剤等を添加することができる。
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
また、食品製剤として皮膚の再生、神経の再生、筋肉の再生などの組織の再生を目的とした食品に利用できる。保健機能食品として栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、皮膚障害や神経障害の回復、老化の抑制と運動能力の向上を目的とした飼料やペット用サプリメントとして利用される。
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができる。両親媒性を示すことから水溶液及びオイルとして利用範囲が広がることは好ましい。
化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。
ここで製造された化粧料は障害された皮膚の修復やコラーゲンやエラスチンなどの増加及び肌の健康維持の目的で利用される。
また、このモラノリン誘導体は老化により減少した歯肉細胞の増殖と機能の維持を目的とした歯磨き剤、洗口液や歯磨きペーストなどに利用できる。
このモラノリン誘導体の製造方法としては桑の葉を用いた発酵法や桑の葉をプロテアーゼ処理し、濾過した液を滅菌して製造することは好ましい。特に、桑の葉及び大豆を納豆菌により発酵させた発酵液を培地として豚歯髄細胞により順化培養液を製造し、これを精製する製造方法により製造されるステムセルファクター作用を介した表皮細胞増殖作用を呈するモラノリン誘導体とすることにより製造方法を限定した目的とするモラノリン誘導体が特定されることは好ましい。この発酵法による製造方法は化学合成による製造方法とは異なり、天然に存在する製造方法であり、不純物も天然物となることから安全性の点においても好ましい。
次に、桑の葉と大豆を納豆菌で発酵した発酵液を培地とし、豚歯髄細胞を培養して得られる豚歯髄細胞順化培養液を精製する工程からなる前記の式(1)で示されるステムセルファクター作用を介した表皮細胞増殖作用を呈するモラノリン誘導体の製造方法について述べる。
まず、培地となる桑の葉と大豆を納豆菌で発酵した発酵液の原料となる桑の葉は日本の各地で栽培されており、有機栽培されたものは農薬による汚染の危険性が少ないことから好ましい。また、化粧品や食品の原料として使用されている実績があることは安全性の点から好ましい。
桑の葉は桜江町桑茶生産組合から購入することは可能である。特に、有機栽培された桑の葉が購入できることから好ましい。また、プロテアーゼは食品加工用のものが利用できる。たとえば、アマノエンザイム製のプロテアーゼNは食品加工用として実績が豊富で安全性も高いことから好ましい。
桑の葉は清浄なタンクに入れられて精製水により分散される。これを37~43℃に加温した後、プロテアーゼNを添加して撹拌しながら3時間から6時間タンパク質を分解する。精製水10Lに対して桑の葉の重量は300g~1kg、プロテアーゼNの添加重量は10~30gが好ましい。
この反応後、ろ紙による濾過によりろ液を採取することは分解されていない桑の葉の残渣を除去できる点から好ましい。さらに、このろ液を95℃以上の温度で煮沸することはプロテアーゼの失活の目的と滅菌の目的から好ましい。
さらに、桑の葉を発酵することは好ましい。たとえば、大豆とともに納豆菌により発酵する発酵方法は技術的な知識と経験が豊富なことから好ましい。
桑の葉の他に、原料となる大豆は、日本産、中国産、アメリカ産、ロシア産などいずれの産地の大豆でも利用できるが、トレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である日本産が好ましい。
このうち、有機栽培や無農薬で栽培された大豆は有害な農薬や金属を含有しないことから、さらに好ましい。
大豆は使用に際して、株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH-40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD-7、VD-20、中山技術研究所製DM-6などの粉砕機で粉砕される。これにより発酵の工程が効率的に進行されやすい。
用いる納豆菌は学名バチルス サブチリスであり、納豆の製造に利用される有用な微生物である。有限会社高橋祐蔵研究所や納豆素本舗の粉末の納豆菌は品質が良好で発酵に適していることから好ましい。まず、桑の葉は粉砕機やミキサーなどにより粉砕にされる。粉砕されることにより、加工がしやすくなる。大豆は粉砕機により粉砕され、清浄な水を添加して懸濁される。桑の葉100gに対して大豆は60~200g添加され、清浄な容器の中で精製水などの水と3リットル~10リットルとともに攪拌される。
桑の葉と大豆は煮沸滅菌され、発酵タンクに添加される。滅菌することにより雑菌の混入が防御され、納豆菌による発酵が進行する。
発酵は静置法または撹拌法のいずれでも良いが、発酵を短時間で実施できる点から撹拌法が好ましい。発酵は40~44℃で22時間から76時間行われることが好ましい。温度が低く、時間が短い場合には発酵が進まず、温度が高く、時間が長い場合には生成物が分解されてしまうおそれがある。このようにして得られた発酵液は121℃、10分間オートクレーブ滅菌されて以下の培地として利用される。
豚歯髄細胞は日本産の豚の歯から採取することが衛生上または細胞が新鮮であることから好ましい。たとえば、豚の加工会社や畜産公社で処理される豚は新鮮であることから好ましい。
用いる豚はいずれの品種でも良いが、安定した生育を示し、ウイルスの感染に強いナガラヨークや三元豚は好ましい。用いる豚は検疫が完了したものを用いる、歯髄は頭部口腔の歯を採取し、洗浄し、消毒後、ハンマーで破砕し、内部の歯髄を取り出すことにより採取する。
採取された歯髄は速やかに前記の桑の葉発酵液からなる培地に分散されて培養される。歯髄細胞の採取は清浄なクリーンベンチ内で無菌的に実施される。歯髄を培地に分散して細胞を培地に懸濁する。希釈した滅菌トリプシン液を20分の1量添加し、37℃で5分間処理して細胞を単一細胞にすることは好ましい。
得られた分散された歯髄細胞を採取し、遠心分離(1500g、5分間)により細胞を沈殿される。細胞を新鮮な培地に分散し、培養フラスコ(FALCON製)に培地50mL~120mLとともに播種する。10000個から30000個の範囲の細胞数が増殖に適し、順化しやすいことから好ましい。
培養は炭酸ガス培養器内で5%炭酸ガス下、37℃で5日から10日間実施される。培養の状況は顕微鏡により細胞を観察し、コンフルエントになる前に培養を終了させる。
培養終了後、培養液のみを採取し、遠心分離後、上清を採取し、さらに、ろ過して豚歯髄細胞順化培養液を得る。なお、培養フラスコに残存した歯髄細胞は希釈したトリプシン液により剥離し、細胞数を調整後、再度、培地に分散して培養に供することにより、豚歯髄細胞順化培養液を繰り返し採取できる。
この豚歯髄細胞順化培養液は精製される。精製の方法としては、例えば、分離用担体または樹脂により分離される。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン-ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1~300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。なお、純度の高い精製物を得るために精製操作を繰り返して実施することは好ましい。
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオンHP20(三菱化学(株)社製)及びXAD-2またはXAD-4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH-20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA-410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
これらのうち、三菱化学製のダイヤイオンHP20、セファデックスLH-20及びDM1020Tはさらに好ましい。
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して2~40倍量が好ましく、4~20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から10~30℃が好ましく、12~25℃がより好ましい。
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
セファデックスLH-20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
ダイヤイオンHP20及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
モラノリン誘導体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とするモラノリン誘導体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから好ましい。両親媒性を示すことから水溶液及びオイルとして利用範囲が広がることは好ましい。
一方、最終的な抽出を食用油や化粧料に用いる油脂で実施することも可能である。例えば、大豆油、米ぬか油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油で抽出することが可能である。つまり、オイル状にすることにより、利用範囲が広がる。
また、このモラノリン誘導体をスプレードライまたは凍結乾燥法により粉末化することは防腐と保存期間を長くする目的から好ましい。
このように製造されたモラノリン誘導体はHPLCやNMRにより構造解析を行うことは高い品質のモラノリン誘導体を提供できる点から好ましい。
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは一例であり、素材、原料や検体の違いに応じて常識の範囲内で条件を変更させることが可能である。
豚歯髄細胞の元となる豚の歯髄は株式会社岐阜県畜産公社で販売されているナガラヨークを利用した系統豚間交配により生産された三元交配の豚の歯より採取した。この豚は衛生管理の行き届いた豚舎で飼育され、ウイルスや細菌検査で異常の認められない豚である。用いた豚は体重118kg、生後180日齢の雄であった。
この豚の歯より歯髄細胞を採取した。すなわち、表面を70%アルコールで消毒した歯を鉄製ハンマーで粉砕し、粉砕された歯の内部より歯髄を採取した。この歯髄は直ちに培地に分散した。培地として以下に示す桑の葉発酵液を用いた。
桑の葉発酵液は以下のように調製した。すなわち、松桜町桑茶生産組合から有機栽培された桑の葉1kgを購入した。これを水洗後、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製のスーパー自由ミル)に精製水とともに懸濁して懸濁物0.9kgを得た。
桑の葉は農薬の分析を事前に行い、農薬の混入がないことを確認した。なお、使用まで凍結保管した。
さらに、北海道産の大豆1kgを三輪物産より購入して用いた。これを洗浄後、粉砕機により粉砕し、粉砕物約950gを得た。
桑の葉の懸濁物500gと大豆粉末500gを清浄なステンレス製の寸胴に移し、5リットルの精製水を添加して懸濁した。
これを95~99℃で1時間煮沸して滅菌した。これらを100kg容量の横河電機社製の撹拌式発酵タンク(FP211)に移し、滅菌した精製水20リットルを添加した。
これに有限会社高橋祐蔵研究所製造の粉末納豆菌3gを購入した。この納豆菌を滅菌水100gに懸濁し、これに粉末大豆粉を5g添加し、撹拌後、37℃で1時間加温して前培養した。
この納豆菌液を前記の撹拌式発酵タンクに添加して41~43℃で36時間発酵させた。発酵の状態は大豆の粉末の分解性及び溶解したタンパク質の定量(ビューレット法)によりモニタリングした。
発酵後、得られた発酵液の上清を濾過布により粗濾過してろ液を得た。このろ液を桑の葉発酵液とし、豚歯髄細胞の培地に用いた。桑の葉発酵液はオートクレーブにより滅菌して用いた。
桑の葉発酵液に分散された豚歯髄細胞を遠心分離(1500g、10分間)し、細胞部分を採取した。この歯髄細胞に新鮮な培地を添加し、分散し、細胞数を計数した。150mLの培養フラスコ(FALCON製)に10000個の細胞を培地100mLとともに播種し、37℃、5%炭酸ガス下、培養した。
培養7日後に、培養を停止し、培養液のみを採取した。得られた培養液を100℃、10分間煮沸した。冷却後、メンブランフィルター(ADVANTEC製、孔径0.1μm)にて吸引ろ過し、ろ液を豚歯髄細胞順化培養液とした。なお、培養フラスコに残存した歯髄細胞は希釈したトリプシン液により剥離し、細胞数を調整後、再度、培地に分散して培養に供した。
数回の実施より得られた豚歯髄細胞順化培養液10Lを凍結乾燥機(タイテック社製のフリーズトラップVA-140S)により凍結乾燥させて目的とする粉末36gを得た。これを検体1とした。
得られた検体1を精製工程に供した。つまり、この粉末30gを精製水400mLに懸濁して7%エタノールで膨潤させたダイヤイオンHP20(三菱化学製)500gに供した。7%エタノール900mLで洗浄後、55%エタノールの1リットルでさらに、洗浄した。
これに、80%エタノール700mLを添加し、目的とするモラノリン誘導体を採取した。この精製工程を3回繰り返して純度を高めた。3回の精製工程で得られた最終分画を減圧乾燥器(日本バイオコン社製)により乾燥し、粉末4gを得た。この粉末を検体2とした。
以下に、モラノリン誘導体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
上記のように得られた検体2をエタノールに溶解し、高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析した。
さらに、これを核磁気共鳴装置(600MHz、H-NMR及びC-NMR、ブルカー製)で解析した結果、検体1と検体2から目的とするモラノリン誘導体を同定した。
すなわち、検体2の重水素化ジメチルスルホキシド中のH-NMR測定の結果、ピークの位置は0.98、0.99、1.00、1.02、1.03、2.11、2.12、2.13、2.15、2.22、2.25、2.31、2.66、2.76、3.72、3.79、4.74、4.84、4.97、5.03、6.64及び6.68ppmに認められた。
また、検体2のC-NMR測定の結果、17.5、18.9、21.1、22.4、22.5、22.6、25.9、26.0、30.2、41.1、43.4、43.5、50.1、54.7、62.4、70.8、77.7、80.4、80.9、90.2、113.9、146.0、171.4、172.2、172.3及び174.8ppmにピークが認められた。
以下に、C-NMRの解析結果のチャートを示した。(横軸単位はppm、縦軸単位はピーク強度を示す。)
Figure 2022090234000003
上記の解析結果から化学的に合成した標準品と同一構造を呈することが判明した。すなわち、検体2からモラノリン3分子とフェニルアラニンの1分子が結合した目的とするモラノリン誘導体であると確認できた。また、検体2のHPLCの分析ではピークは1本となり、純度は99.7%であった。なお、検体1の純度は80.3%であった。
以下にヒト皮膚表皮細胞を用いたステムセルファクター作用を介した表皮細胞増殖試験について述べる。なお、この試験方法は生化学的に成分の効果を検証できる再現性のある常法である。
(試験例2)
クラボウより購入したヒト由来表皮細胞(表皮由来、エピーダーセル)を用いた。培養液として5%牛胎児血清含有MEM培地(Sigma製)を用いて培養した1000個の細胞を35mm培養シャーレ(FALCON製)に播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。ここに紫外線照射装置(クオークテクノロジー製)により280nmの紫外線を1時間照射した。その後、前記の検体1、検体2または陽性対照としてEGF(フナコシ製、表皮成長因子)およびリコンビナントSCFタンパク質(R&Dsystems社)をいずれも0.1mg/mlの最終濃度で添加した。同時に、EGF(フナコシ製、商品コードNO20)との併用による働きを調べた。これを48時間培養して試験した。
培養液を採取後、表皮細胞の生存率をトリパンブルー法により計数した。その後、表皮細胞の懸濁液を調製した。この細胞懸濁液を用いてステムセルファクター受容体の活性化状態を測定した。ステムセルファクター受容体と検体との結合親和性は上記のリコンビナントSCFタンパク質との結合性を測定することにより測定した。測定にはBIA(GE社製、T200型)を用いた。BIAとはBiophysical Interaction Analysisのことである。つまり、生物物理学的相互作用解析法であり、生体内での分子間相互作用を測定する方法である。
さらに、細胞懸濁液からmRNAを核酸抽出キット(フナコシ製)により抽出した。常法に従い、タカラバイオ製のプライマーを使用しRT-PCR法(タカラバイオ株式会社、microRNA Ready-to-Use PCR Panel)によりステムセルファクター受容体のmRNA量を定量した。
R&Dsystems社から購入したヒト由来の組換え体リコンビナントSCFタンパク質(No.255-SC-050)をステムセルファクター受容体のリガンドとして用いた。
ステムセルファクター受容体との結合親和性は上記のリコンビナントSCFタンパク質との結合性を測定することにより測定した。測定には前記のBIAを用いた。
なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。溶媒を添加した溶媒対照群と比較した。
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加によりヒト由来表皮細胞数は溶媒対照群に比して平均値として180%に増加した。また、検体2添加群では229%に増加した。一方、EGF添加では130%となり、SCF添加では170%となった。この結果、検体1及び検体2の方がEGF及びSCFよりも優れたヒト由来表皮細胞増殖作用を呈した。さらに、検体2とEGFとの併用により溶媒対照群に比して808%に増加し、EGFとの相乗的な効果が認められた。
BIA法によるステムセルファクター受容体との結合親和性の測定の結果、溶媒対照群に比して検体1添加では平均値として189%に増加した。また、検体2では366%に増加した。一方、EGF添加では109%となり、SCF添加では148%となった。この結果、検体1及び検体2の方がEGF及びSCFよりも優れたステムセルファクター受容体との結合性を示した。これはステムセルファクター受容体との親和性を高めたということである。さらに、検体2とEGFとの併用により669%となり、EGFとの併用による相乗効果が認められた。
上記の細胞中のステムセルファクター受容体のmRNA発現量(コピー数)は溶媒対照群では21コピー、検体1処理群では43コピー、検体2処理群では304コピ-、EGF処理群では32コピー及びSCF処理群では41コピーであった。さらに、検体2とEGFとの併用により841コピーとなった。この併用による結果は検体2とEGFが相乗的に作用したことを示している。
ステムセルファクター受容体のmRNA発現量は検体1及び検体2で著しく、EGF及びSCFより優っていた。これは検体1及び検体2によるステムセルファクター受容体のmRNA誘導作用を示していた。また、検体2とEGFとの併用による相乗効果が認められた。
一方、安全性試験の一環として人工皮膚であるEpiSkin(SkinEthic社製)を用いた皮膚刺激性試験を行った。この結果、検体1及び検体2の添加により刺激性は認められず、検体1及び検体2の安全性が確認された。なお、この人工皮膚を用いる安全性試験法は細胞を用いる皮膚刺激性試験評価法であり、動物を使用しない動物実験の代替法として確立され、信頼性が高い方法である。
以下にヒト神経細胞の障害モデルを用いた障害に対する試験について述べる。なお、この試験方法は生化学的及び分子生物学的に有効成分の働きを検証できる再現性のある常法であり、試験成績も豊富であり、信頼性も高い方法である。
(試験例3)
コスモバイオから購入したヒト神経細胞(Human Neurons(HN))を用いた。培養液として専用の培養液(神経細胞増殖培地)を用いて培養した1000個の細胞を35mm培養シャーレに播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。これに1%の神経毒であるアクリルアミド水溶液を添加して神経細胞を刺激した。
ここに、前記の実施例1で得られた検体1及び検体2、陽性対照としてNGF(フナコシ(株)、ヒトタイプ)及びヒト由来SCFをいずれも0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養した。さらに、NGF(フナコシ製、β型、商品コード450-01)と検体2を併用して実験した。
培養終了後、神経細胞数を顕微鏡的に計数した。さらに、上記と同様の方法により、ステムセルファクター受容体の働き(BA法)とmRNAの発現量をRT-PCR法(タカラバイオ株式会社、microRNA Ready-to-Use PCR Panel)により測定した。
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加により神経細胞数は溶媒対照群に比して平均値として138%に増加した。また、検体2添加群では209%に増加した。一方、NGF添加群では110%となった。SCF添加群では130%となった。この結果、検体1及び検体2の方がNGF及びSCFよりも優れた細胞活性化作用を呈した。また、NGFと検体2の併用により細胞数は471%となり、検体2とNGFの併用による相乗的な増殖効果が認められた。
BIAによるステムセルファクター受容体との結合親和性の測定の結果、溶媒対照群に比して検体1の添加では平均値として166%に増加した。また、検体2の添加では243%に増加した。一方、NGF添加では113%となり、SCF添加では128%となった。この結果、検体1及び検体2の方がNGF及びSCFよりも優れたステムセルファクター受容体と強い結合性を示した。これは検体1及び検体2がステムセルファクター受容体との親和性を高めたという結果である。さらに、検体2とNGFとの併用により556%となり、検体2による相乗的効果が認められた。
上記の細胞中のステムセルファクター受容体のmRNA発現量(コピー数)は溶媒対照群では19コピー、検体1処理群では70コピー、検体2処理群では145コピ-、NGF処理群では110コピー及びSCF処理群では127コピーであった。また、検体2とNGFとの併用により641コピーとなり、NGFとの相乗的な効果が認められた。
ステムセルファクター受容体のmRNA発現量は検体1及び検体2で著しく、NGF及びSCFより優っていた。これは検体1及び検体2によるステムセルファクター受容体のmRNA誘導作用を示していた。また、NGFとの併用による相乗的な効果が認められた。
本発明で得られるモラノリン誘導体はステムセルファクター作用を呈し、皮膚細胞を増進させる。これにより、皮膚のQOLを改善する。また、配合した化粧料としてシワやタルミなどの皮膚トラブルに悩む方の皮膚の改善に貢献し、化粧品業界の発展に寄与する。
本発明で得られるモラノリン誘導体は神経細胞を増加させ、認知症やアルツハイマー症の治療のために利用でき、国民の健康維持に貢献する。
また、本発明で得られるモラノリン誘導体の製造方法は廃棄される豚歯髄を利用することから廃棄物の再利用として家畜産業の育成に起用する。

Claims (2)

  1. 下記の式(1)で示されるステムセルファクター作用を介した表皮細胞増殖作用を呈するモラノリン誘導体。
    Figure 2022090234000004
  2. 桑の葉と大豆を納豆菌で発酵した発酵液を培地とし、豚歯髄細胞を培養して得られる豚歯髄細胞順化培養液を精製する工程からなる請求項1の式(1)で示されるステムセルファクター作用を介した表皮細胞増殖作用を呈するモラノリン誘導体の製造方法。
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