以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
細胞膜安定化作用を呈するベツリン誘導体とは、下記の式(1)で示される構造からなるものである。
前記の式(1)のようにベツリンの1分子とリボースの1分子とカプロン酸の1分子からなる。これらの結合はすべて天然型であり、酸素元素を介した結合である。
ベツリンはベツリン酸の還元アルコール型であり、トリテルペノイドの一種である。ベツリンは天然に存在する物質であり、C30H50O2である。ベツリンはタイソウ、白樺の樹皮、ウツボグサなどの植物に含有されている。
ベツリンは脂溶性であり、細胞膜の脂質二重膜の脂肪成分と疎水結合により安定化する。このベツリン誘導体のサイズは細胞膜を安定化させ、細胞膜の内側と外側を結合させる働きを呈する。
構成成分であるリボースは、D型であり、糖質である。このリボースはDNAの構成成分であり、天然に存在する五糖類である。リボースは水酸基により水溶性を高め、細胞外液とこのベツリン誘導体の間の安定化に寄与する。
このベツリン誘導体はリボースが存在することにより、核膜や遺伝子との反応性も高まることから好ましい。さらに、このベツリン誘導体のカプロン酸は脂溶性を高め、細胞膜の脂質層を維持し、細胞膜の安定性を高める。カプロン酸はヘキサン酸とも言われ、C6H12O2の直鎖構造を持ち、中鎖脂肪酸に分類される。カプロン酸はココナッツやウツボグサなどの植物一般に含有されている。
このベツリン誘導体は化学合成によりベツリンから合成することができる。しかし、その科学的な合成では原料の損失が著しく産業への利用は限定される。このベツリン誘導体の標準品を得るためには化学合成は好ましい。
このベツリン誘導体の構造を解析することは成分の特定ができ、また、製品に利用して販売する時の含有量の標準に利用できることから好ましい。
たとえば、重水素化クロロホルム中の400MHzのH−NMRにより、ピークの位置は0.82〜1.05、1.1〜1.24、1.382、2.004、2.1〜2.4、2.813、2.825、2.872、4.4〜4.502、4.721、4.843、5.644、5.8〜6.57ppmに認められる。
さらに、このベツリン誘導体は高速液体クロマトグラフィーや質量分析で解析され、その構造が同定される。
このベツリン誘導体の働きは細胞膜安定化作用である。その働きはベツリンとカプロン酸が細胞膜の内部に侵入し、脂質2重層と疎水結合することにより細胞膜で発生する酸化を抑制する。細胞膜の酸化は活性酸素を発生させ、脂質2重層に亀裂を入れ、破壊することであるから、これを防御することは細胞膜の安定化につながる。
さらに、このベツリン誘導体のリボース部位は水溶性であり、細胞外液からの刺激を緩衝させ、細胞膜に直接的な刺激を与えないようにしていることは好ましい。
このベツリン誘導体は細胞内外の浸透圧を調整し、細胞を安定化させることから好ましい。たとえば、イオントランスポーターは細胞内外のイオンの透過と膜電位を決定している。このベツリン誘導体がイオントランスポーターの局在と活性化により細胞膜の電位を安定化することは好ましい。
たとえば、細胞を低張液に入れると細胞内に液が侵入し、細胞膜が破裂するが、このベツリン誘導体は浸透圧を調整することにより細胞内の液の侵入を抑制し、細胞膜の破壊を防止する。
また、このベツリン誘導体は細胞膜の機能を亢進する働きがある。たとえば、筋肉細胞の細胞膜にはインシュリン受容体が存在しているが細胞が糖質の攻撃により糖化をうれるとこのシンシュリン受容体の機能が低下し、グルコーストランスポーター2の働きが低下して糖質の代謝が低下する。
このベツリン誘導体は細胞膜を安定化することにより筋肉細胞のインシュリン受容体を活性化し、グルコーストランスポーター2の働きを高めて糖質の代謝を亢進させる。これより、このベツリン誘導体は2型糖尿病の治療や予防に利用できる。
また、このベツリン誘導体はアレルギーの予防にも利用できる。すなわち、アレルギーは抗原がマクロファージやランゲルハンス細胞などの抗原提示細胞の細胞膜表面に結合することから開始される。この反応の際には細胞膜の流動性が関与し、流動性が増加することにより抗原提示が正常に実施され、異物が認識される。
一方、細胞膜が不安定で流動性が低下している場合には、抗原が異常に細胞に認識されて抗体の異常産生につながる。このベツリン誘導体は細胞膜を安定化させることにより抗原認識を正常化させ、抗体産生を正常化する。
このベツリン誘導体は生体内では腎臓のエステラーゼにより分解され、尿中に排泄される。分解は構成成分であるベツリン、または、ベツリン酸、リボースとカプロン酸である。したがって、このベツリン誘導体は体内に蓄積されることはなく、分解も生体内酵素で行われ、分解物も天然物であることから安全性が高い。
このベツリン誘導体は筋肉細胞膜に浸透しやすく、筋肉の活動を高め、糖質も分解させるる。糖質が消費されることから糖尿病やダイエット作用を呈する。
さらに、このベツリン誘導体は皮膚上皮細胞の細胞膜を安定化させる。基底層の幹細胞の細胞膜を安定化させて細胞の増殖と分裂を促進する。また、角質細胞の細胞膜を安定化させることにより皮膚角質のバリア機能を維持し、異物や刺激物、細菌の侵入を抑制する。
この働きは化粧料として利用できる。
このベツリン誘導体はアレルギー反応を抑制することから、抗アレルギー剤として利用できる。
また、このベツリン誘導体は神経細胞の細胞膜に働き、細胞膜の電位と神経の伝導を高めることにより認知症やアルツハイマー症、パーキンソン症にも適している。
また、このベツリン誘導体は自然界に存在する物質であり、その食経験や化粧品としての利用実績が豊富であることから安全性が確認されている。
さらに、このベツリン誘導体は眼の角膜細胞、水晶体細胞の細胞膜を安定化させ、角膜の構造を補強し、視力の回復に利用される。
このベツリン誘導体は天然にも存在しており、ウツボグサの葉などに極微量認められる。このベツリン誘導体を精製により上記の植物から抽出することは可能である。
ただし、精製には大量の原料を必要とすることから、製造方法として産業上への利用は制限される。
このベツリン誘導体はウツボグサ葉などの植物から得ることが可能であるが、含有量が少ないことから、発酵法などにより増加させることは好ましい。発酵の方法として大豆と混合して納豆菌やベニコウジ菌により発酵させて得ることは食経験があり、増加量も多いことから好ましい。
得られたベツリン誘導体を医薬品素材として利用する場合、目的とするベツリン誘導体を分離精製することは、目的とするベツリン誘導体の純度が高まり、不純物を除去できる点から好ましい。
医薬品として、注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。
経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤は、シェラックまたは砂糖で被覆することもできる。
また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を添加することができる。
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
食品製剤として細胞膜を安定化させることによる機能性をもたらすサプリメント、滋養強壮系の食品、皮膚の健康を維持する美容サプリメント、神経、肝臓や腎臓の機能を向上させる健康食品、筋肉を増強し、脂肪を分解するダイエットなどを目的とした健康食品、美容食品などに利用される。また、保健機能食品として、栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、細胞膜の安定化を介して上皮組織や筋肉、骨細胞の強化を目的として飼料やサプリメントとして利用される。
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができる。
化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。
得られた化粧料は皮膚上皮細胞の細胞膜を安定化させることにより皮膚の構築を強固にし、シワを防止し、たるみを防ぐことは好ましい。
また、ベツリン部分が抗菌作用を発揮することにより、歯磨き剤や入浴剤などに利用できる。
次に、ウツボグサの葉、大豆粉末と納豆本舗製の納豆菌を添加して発酵させた発酵液を紅麹本舗製のベニコウジ菌で発酵する工程からなる細胞膜安定化作用を呈するベツリン誘導体の製造方法について説明する。
ここでいうベツリン誘導体とはベツリンの1分子とフロログルシノールの2分子からなる物質であり、これらの結合はすべて天然型であり、水酸基の酸素を介した結合である。ベツリン誘導体はミトコンドリア膜の安定化とビタミン類の抗酸化によりATP産生を促進する。
このベツリン誘導体のベツリンとフロログルシノールは天然に存在し、食経験も豊富であり、安全性が認められていることから好ましい。
この誘導体は皮膚や神経、骨、筋肉などの上皮細胞に働き、ATPを増加させ、組織を強化する。
この製造方法とはウツボグサの葉、大豆粉末と納豆本舗製の納豆菌を添加して発酵させた発酵液を紅麹本舗製のベニコウジ菌で発酵する工程からなる。
原料となる物質はウツボグサの葉、大豆粉末、納豆本舗製の納豆菌及び紅麹本舗製のベニコウジ菌である。
ここでいうウツボグサは学名Prunella vulgarisであり、和名は靫草であり、日本を含めたアジア各地で栽培または自生している。シソ科ウツボグサ属の多年生植物であり、花穂は夏枯草(カゴソウ)として漢方に用いられている。
ウツボグサには利尿、消炎作用があり、腫物、浮腫、腎臓炎、膀胱炎にも利用されている。ヨーロッパにおいて民間薬として利用されている。また、若葉は食用として適している。
ウツボグサの葉には色素、ポリフェノールやベツリンが含有されていることからこのベツリン誘導体を製造する原料として好ましい。
ウツボグサの葉は日本、中国、台湾、アメリカなどいずれの国の由来でも良い。特に、日本産で低農薬や減農薬で生産されたものは好ましい。
ウツボグサの葉は乾燥され、粉末化されることが好ましく、発酵の前にオートクレーブ滅菌されることは発酵をスムーズに行うることから好ましい。
3マイクロメーター以下の粒子サイズの粉末が発酵の工程を実施しやすくすることから好ましい。
原料となる大豆粉末は、日本産、中国産、アメリカ産、ロシア産などいずれの産地の大豆でも利用できるが、トレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である日本産が好ましい。
このうち、有機栽培や無農薬で栽培された大豆は有害な農薬や金属を含有しないことから、さらに好ましい。
大豆は使用に際して、株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20、中山技術研究所製DM−6などの粉砕機で粉砕される。これにより発酵の工程が効率的に進行されやすい。
さらに、ウツボグサの葉と大豆は粉砕後、オートクレーブなどにより滅菌されることは雑菌の繁殖を防御できることから好ましい。
用いる納豆本舗製の納豆菌は学名バチルス サブチリスで日本では納豆の製造に汎用され、食経験が豊富で有用な食用菌である。沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。用いる納豆菌は納豆本舗製であり、高い発酵性を呈する。
この納豆菌はウツボグサの葉と大豆からなるベツリンとカプロン酸とリボースの結合を促進する。
前記の発酵に関するそれぞれの添加量はウツボグサの葉の乾燥粉末1重量に対し、大豆粉末は0.05〜5重量及び納豆本舗製の納豆菌は0.001〜0.05重量が好ましい。納豆菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
また、この発酵は39〜43℃に加温され、発酵は、2日間から30日間行われる。目的とするベツリン誘導体をHPLCやTLCにより定量することならびに、菌体の増殖性を確認することにより、発酵の工程管理を実施することは好ましい。
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
この発酵の工程によってベツリンとカプロン酸とリボースとが結合するものの、その結合が不安定であることから次の紅麹本舗製のベニコウジ菌による発酵を行う。
用いる紅麹本舗製のベニコウジ菌は学名Monascuc purpureusの糸状菌であり、古くから日本、中国や台湾において紅酒や豆腐ようなどの発酵食品に利用されている。また、沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。紅麹本舗製のベニコウジ菌は発酵効率に優れている。
前記の発酵に関するそれぞれの添加量は前記の発酵物1重量に対してベニコウジ菌は0.0001〜0.006重量が好ましい。紅麹本舗製のベニコウジ菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
また、この発酵は38〜41℃に加温され、発酵は1日間から14日間行われる。この発酵の工程によってベニコウジ菌の還元作用によりこのベツリン誘導体の構造が安定化される。
前記の発酵物は含水エタノールで抽出されることは、生成物を効率良く回収し、菌を滅菌でき、次の工程が実施しやすいことから、好ましい。また、得られた発酵物を超音波処理することは、生成物が分離しやすいことから、好ましい。また、凍結乾燥などにより、濃縮することは、以下の工程が短時間に実施できることから好ましい。
前記の還元反応物から、目的とするベツリン誘導体を分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
例えば、分離用担体または樹脂により分離され、分取されることにより目的とするベツリン誘導体が得られる。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜40倍量が好ましく、4〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から10〜39℃が好ましく、12〜37℃がより好ましい。
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
ベツリン誘導体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とするベツリン誘導体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
また、最終抽出を食用油や化粧料に用いる油脂で実施することは、得られるベツリン誘導体が安定に維持されることから好ましい。例えば、大豆油、米ぬか油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油で抽出することは好ましい。
また、このベツリン誘導体を粉末化することは防腐の目的から好ましい。
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは一例であり、素材、原料や検体の違いに応じて常識の範囲内で条件を変更させることが可能である。
埼玉県で減農薬と有機肥料により栽培されたウツボグサの新葉を株式会社エルブより購入して用いた。この葉を水道水で水洗後、天日で乾燥させ、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製のスーパー自由ミル)にて粉砕し、ウツボグサの葉の乾燥粉末粉砕物を0.9kg得た。
北海道産の大豆をミキサー(クイジナート製)に供し、大豆の粉砕物1.4kgを得た。前記のウツボグサの葉と大豆の粉砕物をオートクレーブに供し、121℃、20分間、滅菌した。
これらを清浄な発酵タンク(滅菌された発酵用丸形40リットルタンク)に入れ、滅菌された水道水5kgを添加し、攪拌した。
これとは別に、納豆本舗製の粉末納豆菌の11gを小型発酵タンクに供し、滅菌した大豆粉末と前培養させた培養液を用意した。
前記の前培養した納豆菌の培養液とウツボグサの葉の乾燥粉末と大豆とを入れた発酵タンクに添加し、攪拌後、39〜42℃の温度範囲で加温し、発酵させた。
発酵過程では、通気によりバブリングと攪拌を行いつつ、発酵液のサンプリングを行った。発酵終了後、発酵タンクより発酵物を取り出し、煮沸滅菌した。この発酵物を濾過布により濾過して、納豆菌による発酵液2.4kgを得た。この発酵液1kgに対して紅麹本舗製のベニコウジ菌の10gを添加し、37℃で2日間発酵させた。
この発酵物にエタノールを添加して煮沸滅菌した。これを濾過し、濾過液を目的とするベツリン誘導体とした。これを検体1とした。
さらに、構造解析及び実験の目的で精製物を得た。つまり、前述の検体1のベツリン誘導体の50gに5%エタノール含有精製水の1Lを添加し、ダイアイオン(三菱化学製)500gを5%エタノール液に懸濁して充填したガラス製カラムに供した。
これに3Lの5%エタノール液を添加して清浄し、さらに、50%エタノール液を1L添加して目的とするベツリン誘導体を溶出させ、濃縮して精製した。精製されたベツリン誘導体を減圧蒸留により、エタノール部分を除去し、水溶液とした。これをベツリン誘導体の精製物11gを検体2とした。
以下に、ベツリン誘導体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
上記のように得られた検体2をエタノールに溶解し、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析した。
させら、核磁気共鳴装置(400MHz、H−NMR、ブルカー製)で解析した結果、検体2からベツリンとカプロン酸とリボースからなるベツリン誘導体が検出された。
すなわち、H−NMRの重水素化クロロホルム中ケミカルシフトは、0.827、1.054、1.103、1.119、1.246、1.382、2.004、2.108、2.201、2.409、2.458、2.813、2.825、2.872、4.409、4.520、4.721、4.843、5.644、5.870、6.482及び6.570ppmのピークを呈した。
上記の解析結果は、化学的に合成した標準品と同一構造を呈することが判明したことから、検体2はベツリン1分子とカプロン酸1分子とリボース1分子が結合したベツリン誘導体であると確認できた。
以下にヒト皮膚上皮細胞を用いた確認試験について述べる。
(試験例2)
クラボウ株式会社より購入したヒト由来皮膚上皮細胞を用いた。培養液として5%牛胎児血清含有MEM培地(Sigma製)を用いて培養した、1000個の細胞を35mm培養シャーレ(FALCON製)に播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。これを紫外線照射装置により紫外線照射した。さらに、前記の検体1、検体2及び陽性対照としてEGF(フナコシ(株)、ヒトタイプ)を0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養して試験した。
細胞を剥離後、細胞数を計数した後、細胞懸濁液を調整した。また、培養上清を採取してLDH(乳酸脱水素酵素)量を分光光学的に測定した。さらに、細胞内のケラチン量について抗ケラチン抗体(低分子タイプ)を用いたELISA法にて測定した。なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。溶媒を添加した溶媒対照群と比較した。
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加により皮膚上皮細胞数は溶媒対照群に比して平均値として144%に増加した。また、検体2では211%に増加した。一方、EGFでは140%の増加であり、検体1及び検体2の方が優れていた。
培養上清中のLDH量については検体1により溶媒対照群に比して77%に減少した。また、検体2の添加によっては溶媒対照の60%となった。EGFでは98%となり、検体1及び検体2のLDH量の減少が著しかった。
LDHは細胞膜の安定性を調べる方法であり、細胞膜が破壊されると細胞内のLDHが増加する。検体1と検体2の処理でLDHが減少したことは細胞膜が検体1と検体2には細胞膜安定化作用が確認された。
細胞内ケラチン量については検体1により溶媒対照群に比して155%に増加した。また、検体2の添加によっては溶媒対照の261%となった。EGFでは150%となり、検体1及び検体2のケラチン産生の増加が著しかった。
以下にヒト筋肉細胞を用いた確認試験について述べる。
(試験例3)
タカラバイオ株式会社から購入したヒト骨格筋細胞(Human Skeletal Muscle(SKMC))を用いた。培養液としては、専用の培養液(骨格筋細胞増殖培地)を用いて培養した、1000個の細胞を35mm培養シャーレに播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。これに1%の乳酸水溶液を添加して骨格筋細胞を弱らせた。
ここに、前記の実施例1で得られた検体1及び検体2、陽性対照としてFGF(フナコシ(株)、ヒトタイプ)を0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養した。
培養後、細胞を剥離後、細胞数を計数した後、骨格筋細胞懸濁液を調整し、骨格筋細胞内のATP量について抗ATP抗体(低分子、酸性タイプ)を用いたELISA法にて測定した。なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。また、培養上清を採取してLDH量を分光光学的に測定した。
さらに、細胞膜上のグルコーストランスポーター2(GLUT−2)量をmRNAの発現量としてRT^PCR法により半定量した。
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加により骨格筋細胞数が溶媒対照群に比して平均値として144%に増加した。また、検体2では209%に増加した。一方、FGFでは139%の増加であり、検体1及び検体2の方が優れていた。
培養上清中のLDH量については検体1により溶媒対照群に比して70%に減少した。また、検体2の添加によっては溶媒対照の62%となった。FGFでは96%となり、検体1及び検体2のLDH量の減少が著しかった。
ATP量については検体1により溶媒対照群に比して155%に増加した。また、検体2の添加により溶媒対照の311%となった。FGFでは150%となり、検体1及び検体2のATP産生量が著しかった。
さらに、GLUT−2のmRNA発現量については検体1により溶媒対照群に比して188%に増加した。また、検体2の添加により溶媒対照の388%となった。FGFでは177%となり、検体1及び検体2のGLUT−2発現量が著しかった。