以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
NF−κBクラスII抑制作用を呈するインドール誘導体とは、下記の式(1)で示される構造からなるものである。
前記の式(1)のようにNF−κBクラスII抑制作用を呈するインドール誘導体は3−インドールエタノールの1分子、シナピン酸の1分子及びグルコン酸の1分子から構成されている。これらの結合はすべて天然型であり、各分子間はエステル結合及びエーテル結合を介して結合している。
このインドール誘導体は化学合成により3−インドールエタノール、シナピン酸及びグルコン酸などを原料として化学合成して得ることができる。しかし、その化学的な合成では原料の損失が多く、コストが高くなるため、産業への利用は限定される。このインドール誘導体の標準品や微量な試供品を得るために化学的な合成は好ましい。
このインドール誘導体の構造を解析することは有効成分の特定ができる点から好ましい。また、製品や製剤に利用して販売する際の有効成分の含有量の指標として利用できることから好ましい。
このインドール誘導体の構造解析の一例として、たとえば、重水素化ジメチルスルホキシド中の90MHzのH−NMRにより、ピークの位置は2.949、3.287、3.621、3.653、3.845、3.919、4.024、5.485、6.272、6.658、6.835、7.146、7.167、7.512、7.567及び8.627ppmに認められる。
さらに、このインドール誘導体は高速液体クロマトグラフィーや質量分析装置で解析され、その構造が同定される。
構成成分である3−インドールエタノールとはインドールのエタノール誘導体であり、天然に存在している化合物であり、トリプトホールともいわれる。植物や動物に利用されているインドール酢酸の類似体である。その化学式はC10H11NOであり、分子量は161.2である。
この3−インドールエタノールは含窒素五員環複合ベンゼン環であり、この部分に疎水性を呈する。このインドール誘導体では3−インドールエタノールの五員環の窒素部分にグルコン酸の6位の水酸基がエーテル結合している。この結合によりこのインドール誘導体に糖質由来の水酸基が付与され、水溶性が高まる。
このインドール誘導体では3−インドールエタノールのエタノール部分の水酸基とシナピン酸のカルボン酸部分がエステル結合している。この結合によりこのインドール誘導体がNF−κBクラスII抑制作用を呈するようになる。
また、3−インドールエタノール部分には植物の生育を促進する植物活性化作用があることからこのインドール誘導体自体にも植物の生育を促進できる点は産業上の利用の点から好ましい。
また、植物が細菌やウイルスに感染して炎症を起こして生育が減少する変化においてNF−κBクラスIIが関与している点からこのインドール誘導体がNF−κBクラスIIを抑制することにより細菌感染を抑制し、植物を感染症から守る点は好ましい。
構成成分であるグルコン酸は化学式C6H12O7の天然のカルボン酸の一種であり、この場合、D体である。味噌や醤油などの発酵物に含有され、豊富な水酸基により防腐作用を呈する。
また、水酸基により水溶性が高まり、血液中の移動性が良くなることは好ましい。
このグルコン酸は天然物であり、安全性が高いことは好ましい。さらに、グルコースよりも吸収されやすいため、このインドール誘導体も体内への吸収が良いことは好ましい。
構成成分であるシナピン酸は分子式C11H12O5、分子量224.21であり、天然型のフェニルプロパノイド類の一種である。別名はシナプ酸であり、抗酸化作用と美肌作用に優れている。
シナピン酸はリグニンの形成とも関係があり、植物の細胞壁や細胞の細胞膜との結合性に優れている。
細胞膜の透過性を高めてこのインドール誘導体の移動を促進させる部位である。
このインドール誘導体のシナピン酸部分は抗酸化作用を発揮し、NF−κBクラスIIを抑制させるために必要である。
このインドール誘導体は脂溶性と水溶性の両方の性質を呈することから細胞膜及び細胞壁を通過し、細胞内に吸収される。このインドール誘導体は細胞膜を通過し、細胞内でNF−κBクラスIIと結合し、NF−κBクラスIIの働きを抑制する。
さらに、このインドール誘導体は植物の細胞壁と細胞膜を通過し、NF−κBクラスIIを抑制して植物の加齢や炎症を抑制することにより、細胞の働きを高める。また、炎症から細胞を守り、細胞膜を安定化することは好ましい。
このインドール誘導体はNF−κBのうちタイプII型に結合する。つまり、NF−κBクラスIIの働きを抑制する。NF−κBクラスII型はRelA及びRelBという細胞の増殖に関わる転写因子との関係が深く、癌細胞や炎症細胞の増殖を抑制することは好ましい。
さらに、NF−κBクラスIIタイプII型は炎症性サイトカインのmRNAの転写を促す。炎症性サイトカインとしてはインターロイキン(IL)−1、IL−6、IL−8やTNFαなどであり、炎症反応の主体とんなるたんぱく質である。
炎症性サイトカインの増加はマトリックスメタロプロテアーゼやコラゲナーゼを誘導して皮膚のコラーゲンやエラスチンを分解してシワやタルミの原因となる。
このインドール誘導体が炎症性サイトカインの誘導を抑制することは各種炎症や皮膚のシワを改善することから好ましい。
病的な細胞や癌細胞ではNF−κBクラスIIが異常であることから、このインドール誘導体によるNF−κBクラスIIの抑制により細胞が正常化することにより細胞レベルで癌などの疾患が改善することからこのインドール誘導体は好ましい。
また、インドール誘導体は抗酸化作用により腎臓細胞の上皮細胞や肝臓細胞での活性酸素や酸化反応に対しても効果的である。つまり、細胞障害の原因を抗酸化力により減らし、NF−κBクラスIIによるサイトカインの産生を抑制するメカニズムの異なる抗炎症作用と細胞防御機能を有する。
さらに、インドール誘導体はマクロファージ、単球、ランゲルハンス細胞、メサンギウム細胞、クッパー細胞などの免疫調節作用を有する細胞のNF−κBクラスIIを抑制することによりアトピーやアレルギーを減少させることは好ましい。
神経細胞においてはストレスによりNF−κBクラスIIが活性化され、神経機能が低下する。インドール誘導体はNF−κBクラスIIの抑制により神経機能を亢進させることは好ましい。
また、このインドール誘導体は優れた抗酸化力を呈し、メラニンの産生を抑制して肌の美白作用をもたらすことは、化粧料としての利用が高まることから好ましい。
このインドール誘導体は心筋梗塞においては冠状動脈の梗塞や虚血状態でも心筋細胞のNF−κBクラスIIと活性酸素による障害を改善する。特に、梗塞部位の血管平滑筋においてこのインドール誘導体は抗炎症作用及び抗酸化作用を発揮して血流を改善し、血圧を低下させる。
また、このインドール誘導体はアスリートが筋肉を増強したい場合、筋肉細胞でのNF−κBクラスIIの活性化を抑制して炎症を改善することにより老廃物と二酸化炭素の排泄や活性酸素による障害を改善することから好ましい。
このインドール誘導体は生体内では腎臓や肝臓のエステラーゼにより分解され、尿中に排泄される。分解されて構成成分である安全性の高い3−インドールエタノール、グルコン酸及びシナピン酸に分解される。したがって、このインドール誘導体は体内に蓄積されることはなく、分解も生体内酵素で行われ、分解物も天然物であることから安全性が高い。
このインドール誘導体は脂肪細胞膜に浸透しやすく、脂肪細胞の中性脂肪を移動させ、この分解を高め、糖質も分解させる。糖質が消費されることから糖尿病の予防やダイエット対策にも好ましい。
さらに、このインドール誘導体は皮膚上皮細胞の炎症も抑制し、シワの形成を抑制する。また、角質細胞を安定化させることにより皮膚角質のバリア機能を維持し、異物や刺激物、細菌の侵入を抑制する。この働きは化粧料として利用できる。
このインドール誘導体は天然にも存在しており、ナツメ果実などに極微量認められる。
このインドール誘導体を精製により上記の植物から抽出することは可能である。ただし、精製には大量の原料を必要とし、有機溶媒などを利用することから産業上への利用は制限される。
このインドール誘導体はナツメ果実を発酵法などにより増加させることは好ましい。発酵法としては大豆と混合して納豆菌やベニコウジ菌により発酵させて得る。
この方法は食経験があり、インドール誘導体の産生量も多いことから好ましい。
得られたインドール誘導体を医薬品素材として利用する場合、目的とするインドール誘導体を精製することは、目的とするインドール誘導体の純度が高まり、不純物を除去できる点から好ましい。
医薬品としては注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。
経口剤としては錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤はシェラックまたは砂糖などで被覆することもできる。
また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を添加することができる。
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
食品製剤としてNF−κBクラスIIを抑制させることによる炎症の抑制やアレルギーの予防をもたらすサプリメント、デトックスと滋養強壮系の食品、コラーゲンの増加、美白と皮膚の健康を維持する美容サプリメント、神経、肝臓や腎臓の機能を向上させる健康食品、筋肉を増強し、脂肪を分解するダイエットなどを目的とした健康食品や美容食品などに利用される。また、保健機能食品として栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、細菌感染、アレルゲン、異物による炎症の抑制を目的とした飼料やペット用サプリメントとして利用される。
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができる。
化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。
得られた化粧料はニキビ、加齢によるシワの原因であるNF−κBクラスIIを抑制することにより炎症を抑制し、ケラチンやコラーゲンの産生を促進する。これによりシワを防止し、たるみを防ぐことは好ましい。さらに、抗酸化作用によりメラニンの産生を抑制することによる美白作用が発揮される。
また、このインドール誘導体はインドール性の水酸基により抗菌作用と抗酸化作用を発揮し、炎症の抑制、歯肉細胞の増殖を目的とした歯磨き剤、洗口液や歯磨きペーストなどに利用できる。
また、植物細胞のNF−κBクラスIIを抑制させることにより植物の外的である細菌感染やウイルスに対して植物防御剤として利用することができる。
この植物防御剤は希少な蘭や花の保護の目的で利用でき、果実や野菜、穀類の栽培を安定化させる。植物工場における野菜や果実の栽培にも利用でき、栽培効率を上げることができる。
次に、ナツメの果実、大豆粉末と納豆本舗製の納豆菌を添加して発酵させた発酵液を紅麹本舗製のベニコウジ菌で発酵する工程からなる請求項1に記載のNF−κBクラスII抑制作用を呈するインドール誘導体の製造方法について説明する。
ここでいう請求項1に記載のインドール誘導体とは3−インドールエタノールの1分子、シナピン酸の1分子及びグルコン酸の1分子から構成されている。これらの結合はすべて天然型であり、物質の間はエステル結合及びエーテル結合を介して結合している。
このインドール誘導体の3−インドールエタノール、グルコン酸及びシナピン酸は天然に存在し、食経験も豊富であり、安全性が認められていることから好ましい。
この誘導体は皮膚、神経、骨、筋肉、肝臓や腎臓などにも働き、細胞内に侵入してNF−κBクラスIIを抑制させることにより、炎症を抑制し、細胞機能を維持させる。
この製造方法とはナツメの果実、大豆粉末と納豆本舗製の納豆菌を添加して発酵させた発酵液を紅麹本舗製のベニコウジ菌で発酵する工程からなる。
原料となる物質はナツメの果実、大豆粉末、納豆本舗製の納豆菌及び紅麹本舗製のベニコウジ菌である。
ここでいうナツメは棗と表記され、学名はZiziphus Jujubaでクロウメモドキ科の樹木である。その果実は漢方薬、食用や化粧品原料として用いられ、食経験も豊富である。また、ナツメはナツメヤシとも表現される。
ナツメの果実を利用した漢方薬として大棗があり、強壮作用及び鎮静作用を呈する。また、補性作用・降性作用も示す。葛根湯や甘麦大棗湯などの漢方薬にも配合されている。ナツメの果実には有機酸、インドール類、糖質が含有されていることからこのインドール誘導体を製造する原料として好ましい。
ナツメの果実は日本、中国、台湾、アメリカ、オーストラリアなどいずれの国の由来でも良い。特に、低農薬や減農薬で生産されたものは好ましい。たとえば、オーストラリア産のナツメの果実は(株)スローフードキッチンなどで販売されている。
ナツメの果実は乾燥され、種子を除去して粉末化されることが好ましく、発酵の前にオートクレーブ滅菌されることは発酵をスムーズに行うることから好ましい。
3マイクロメーター以下の粒子サイズの粉末が発酵の工程を実施しやすくすることから好ましい。
原料となる大豆粉末は、日本産、中国産、アメリカ産、ロシア産などいずれの産地の大豆でも利用できるが、トレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である日本産が好ましい。
このうち、有機栽培や無農薬で栽培された大豆は有害な農薬や金属を含有しないことから、さらに好ましい。
大豆は使用に際して、株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20、中山技術研究所製DM−6などの粉砕機で粉砕される。これにより発酵の工程が効率的に進行されやすい。
さらに、ナツメの果実と大豆は粉砕後、オートクレーブなどにより滅菌されることは雑菌の繁殖を防御できることから好ましい。
用いる納豆本舗製の納豆菌は学名バチルス サブチリスで日本では納豆の製造に汎用され、食経験が豊富で有用な食用菌である。沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。用いる納豆菌は納豆本舗製であり、高い発酵性を呈する。
この納豆菌はナツメの果実と大豆からなる3−インドールエタノールとシナピン酸とグルコン酸の結合反応を促進する。
前記の発酵に関するそれぞれの添加量はナツメの果実の乾燥粉末1重量に対し、大豆粉末は0.05〜5重量及び納豆本舗製の納豆菌は0.001〜0.04重量が好ましい。納豆菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
また、この発酵は40〜44℃に加温され、発酵は1日間から7日間行われる。目的とするインドール誘導体をHPLCやTLCにより定量すること、ならびに菌体の増殖性を確認することにより、発酵の工程管理を実施することは好ましい。
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
この発酵の工程によって生成されるインドール誘導体はその結合が不安定であることから次の紅麹本舗製のベニコウジ菌による発酵を行い、目的とするインドール誘導体の結合を安定化させる。
用いる紅麹本舗製のベニコウジ菌は学名Monascus purpureusの糸状菌であり、古くから日本、中国や台湾において紅酒や豆腐ようなどの発酵食品に利用されている。また、沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。紅麹本舗製のベニコウジ菌は発酵効率に優れている。
前記の発酵に関するそれぞれの添加量は前記の発酵物1重量に対してベニコウジ菌は0.0003〜0.03重量が好ましい。紅麹本舗製のベニコウジ菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
また、この発酵は40〜44℃に加温され、発酵は1日間から7日間行われる。この発酵の工程によってベニコウジ菌の還元作用によりこのインドール誘導体の構造が安定化される。
前記の発酵物は含水エタノールで抽出されることは、生成物を効率良く回収し、菌を滅菌でき、次の工程が実施しやすいことから、好ましい。また、得られた発酵物を超音波処理することは、生成物が分離しやすいことから、好ましい。また、凍結乾燥などにより、濃縮することは、以下の工程が短時間に実施できることから好ましい。
前記の還元反応物から、目的とするインドール誘導体を分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
例えば、分離用担体または樹脂により分離され、分取されることにより目的とするインドール誘導体が得られる。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して2〜40倍量が好ましく、4〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から10〜39℃が好ましく、12〜37℃がより好ましい。
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
インドール誘導体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とするインドール誘導体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
また、最終抽出を食用油や化粧料に用いる油脂で実施することは、得られるインドール誘導体が安定に維持されることから好ましい。例えば、大豆油、米ぬか油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油で抽出することは好ましい。
また、このインドール誘導体を粉末化することは防腐の目的から好ましい。
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは一例であり、素材、原料や検体の違いに応じて常識の範囲内で条件を変更させることが可能である。
オーストラリアで無農薬栽培されたナツメの果実をスローフードキッチンから購入して用いた。この果実を水道水で水洗後、天日で乾燥させ、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製のスーパー自由ミル)にて粉砕し、ナツメの果実の乾燥粉末粉砕物を1.0kg得た。
北海道産の大豆をミキサー(クイジナート製)に供し、大豆の粉砕物1.0kgを得た。前記のナツメの果実と大豆の粉砕物をオートクレーブに供し、121℃、20分間、滅菌した。
これらを清浄な発酵タンク(滅菌された発酵用丸形40リットルタンク)に入れ、滅菌された水道水5kgを添加し、攪拌した。
これとは別に、納豆本舗製の粉末納豆菌の10gを小型発酵タンクに供し、滅菌した大豆粉末と前培養させた発酵準備液を用意した。
前記の前培養した納豆菌の発酵準備液とナツメの果実の乾燥粉末と大豆とを入れた発酵タンクに添加し、攪拌後、41〜42℃の温度範囲で加温し、発酵させた。
発酵過程では、通気によりバブリングと攪拌を行いつつ、発酵液のサンプリングを行い、3日間発酵させた。発酵終了後、発酵タンクより発酵物を取り出し、煮沸滅菌した。この発酵物を濾過布により濾過して、納豆菌による発酵液0.9kgを得た。この発酵液1kgに対して紅麹本舗製のベニコウジ菌の10gを添加して40℃で3日間発酵させた。
この発酵物にエタノールを添加して煮沸滅菌した。これを濾過し、濾過液を目的とするインドール誘導体とした。これを検体1とした。
さらに、構造解析及び実験の目的で精製物を得た。つまり、前述の検体1のインドール誘導体の200gに6%エタノール含有精製水の1Lを添加し、ダイアイオン(三菱化学製)500gを6%エタノール液に懸濁して充填したガラス製カラムに供した。
これに2Lの6%エタノール液を添加して清浄し、さらに、65%エタノール液を1L添加して目的とするインドール誘導体を溶出させ、濃縮して精製した。精製されたインドール誘導体を減圧蒸留により、エタノール部分を除去し、水溶液とした。これをインドール誘導体の精製物46gを得てこれを検体2とした。
以下に、インドール誘導体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
上記のように得られた検体2をエタノールに溶解し、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析した。
させら、これを核磁気共鳴装置(90MHz、H−NMR、ブルカー製)で解析した結果、検体1と検体2から3−インドールエタノールとグルコン酸とシナピン酸の各1分子からなるインドール誘導体が検出された。
たとえば、重水素化ジメチルスルホキシド中のH−NMRの結果、2.949、3.287、3.621、3.653、3.845、3.919、4.024、5.485、6.272、6.658、6.835、7.146、7.167、7.512、7.567及び8.627ppmにピークが認められた。
上記の解析結果は、化学的に合成した標準品と同一構造を呈することが判明した。すなわち、検体2から3−インドールエタノール1分子とグルコン酸1分子とシナピン酸1分子がエーテル結合及びエステル結合した目的とするインドール誘導体であると確認できた。
以下にヒト皮膚上皮細胞を用いたNF−κBクラスIIの抑制作用試験について述べる。なお、この試験方法は生化学的に成分の働きを検証できる再現性のある常法である。
(試験例2)
クラボウ株式会社より購入したヒト由来皮膚上皮細胞を用いた。培養液として5%牛胎児血清含有MEM培地(Sigma製)を用いて培養した1000個の細胞を35mm培養シャーレ(FALCON製)に播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。これを紫外線照射装置(アイグラフィクス株式会社製)により紫外線照射して酸化ストレスを与えた。これに、前記の検体1、検体2及び陽性対照としてヒト由来EGF(上皮細胞増殖因子、フナコシ(株)、ヒトタイプ)をいずれも0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養して試験した。
NF−κBクラスIIの定量はRT−PCR法により実施した。すなわち、前記の細胞をトリプシン溶液で剥離して低張液にてホモジナイズした。この細胞破壊液からmRNAを抽出した。抽出にはMicro−Fast Track2.0 mRNA Isolation Kitを用いた。
このmRNAを材料としてRT−PCR法(タカラバイオ製、Prime ScriptRT−PCRキット)によりNF−κBクラスII型の定量を行った。
さらに、細胞懸濁液のインターロイキン−6(IL−6)量をタカラバイオ製のサンドイッチELISA定量キットにより定量した。
なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。溶媒を添加した溶媒対照群と比較した。
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加により皮膚上皮細胞数は溶媒対照群に比して平均値として152%に増加した。また、検体2では188%に増加した。一方、EGFでは140%の増加であり、検体1及び検体2の方が優れていた。
NF−κBクラスIIについては検体1により溶媒対照群に比して33%に減少した。また、検体2の添加によって溶媒対照の18%と、いずれも減少が認められた。EGFでは105%となり、変化は認められなかった。
NF−κBクラスII抑制作用は遺伝子的炎症の指標でもあることから、検体1と検体2の処理でのNF−κBクラスIIの抑制が確認された。なお、クラスI型のNF−κBクラスIIのmRNA量には検体1及び検体2ともに変化は示さなかった。
細胞内IL−6量については検体1により溶媒対照群に比して51%に減少した。また、検体2の添加によっては溶媒対照の22%となった。EGFでは101%となり、検体1及び検体2の方がIL−6量の減少作用に優れていた。
以下にヒト神経細胞の障害モデルを用いた炎症抑制試験について述べる。なお、この試験方法は生化学的に成分の働きを検証できる再現性のある常法である。
(試験例3)
コスモバイオから購入したヒト神経細胞(Human Neurons(HN))を用いた。培養液として専用の培養液(神経細胞増殖培地)を用いて培養した1000個の細胞を35mm培養シャーレに播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。これに1%のアクリルアミド水溶液を添加して神経細胞を刺激した。
ここに、前記の実施例1で得られた検体1及び検体2、陽性対照としてNGF(フナコシ(株)、ヒトタイプ)をいずれも0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養した。
培養終了後、細胞数を顕微鏡的に計数した。さらに、細胞を培養シャーレに入れた状態でNF−κBクラスII及びIL−6量を前記の方法に従い、定量した。なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。溶媒を添加した溶媒対照群と比較した。
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加により神経細胞数が溶媒対照群に比して平均値として128%に増加した。また、検体2では188%に増加した。一方、NGFでは126%の増加であり、検体1及び検体2の方が優れていた。
神経細胞のNF−κBクラスIIについては検体1により溶媒対照群に比して46%に減少した。また、検体2の添加によっては溶媒対照の26%と減少した。NGFでは102%となり、検体1及び検体2の方がNGFに比べてNF−κBクラスII抑制作用に優れていた。
なお、クラスI型のNF−κBクラスIIのmRNA量には検体1及び検体2ともに変化は示さなかった。