JP6436338B2 - メラニン分解作用を呈するペラルゴニジン誘導体 - Google Patents

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この発明はメラニン分解作用を呈するペラルゴニジン誘導体に関するものである。
メラニンはアミノ酸の一種であるプロリンから酵素により生成される褐色ないし黒色の色素である。メラニンはメラニン産生細胞で生成され、皮膚の基底層に蓄積される。
肌のメラニンの蓄積は日光の露光により誘導される。日光により酵素であるチロシナーゼが誘導される。また、チロシンからの生成物であるドーパキノンはシステインと反応してメラニンとなる。
美白作用を目的としてメラニンの産生を抑制する方法や物質が発明されているものの、メラニンの産生を抑制することはできていない。
例えば、シロウリを被抽出材料として抽出されたエタノール可溶性成分またはその加水分解物を有効成分として含有するチロシナーゼ活性阻害剤に関する発明がある(例えば、特許文献1参照)。
また、キノベオン還元体又はこれらの混合物を含んでなるチロシナーゼ活性阻害剤に関する発明がある(例えば、特許文献2参照)。しかし、その利用範囲は限定的であり、メラニンの減少作用は示されていない。
特許第4886878号 特許第4279523号
既存の植物エキスや化学物質によるメラニン産生の抑制作用は軽度であり、産業上への利用が限定されるという課題があり、また、化学合成された物質では安全性に問題があり、利用が限られている。
そこで、副作用が弱く優れたメラニン分解作用を呈するペラルゴニジン誘導体を提供する。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明はメラニン分解作用を呈するペラルゴニジン誘導体に関するものである。
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載のエキスによれば、優れたメラニン分解作用が得られる。
以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
まず、メラニン分解作用を呈するペラルゴニジン誘導体とは、式(1)で示される構造からなる化合物である。
このペラルゴニジン誘導体はペラルゴニジン1分子とD−グルコース3分子とL−アルギニン1分子からなる。
ペラルゴニンの2位に位置するベンゼン環の4位にグルコースの1位の水酸基と結合している。
ペラルゴニンの3位の水酸基はLーアルギニンのグアニジノのアミノ基とエステル結合している。
さらに、ペラルゴニンの5位と7位の水酸基はいずれもグルコースの1位の水酸基と結合している。このような構造をとることにより、メラニン内のシステイン由来のイオウ基を分子レベルで切断しメラニンの重合が抑制される。
また、メラニンの酸化反応をグルコースの水酸基が緩和し、メラニンの反応性を低下される。
さらに、ここに示したペラルゴニジン誘導体はメラニンを食作用するマクロファージを活性化し、生成されたメラニンを貪食して消化する作用を亢進させ、メラニンを減少させる。
加えて、ペラルゴニジン誘導体はメラニン産生細胞中のチロシナーゼを抑制する。その働きはペラルゴニジン誘導体の優れた抗酸化作用に起因している。
また、ペラルゴニジン誘導体はスーパーオキシド ディスムューターゼ(SOD)を誘導し、活性化することにより活性酸素を除去する。特に、アルギニンの側鎖がSODを活性化することは美白作用につながることから好ましい。
さて、基本骨格となるペラルゴニジンは蘭、ブドウ、ザクロ、イチジク、ラズベリー、ブルーベリー、マキベリー、スモモ、テングサアオイなどの植物の有色の花に含まれる色素であり、ポリフェノールの一種である。さらに、アントシアニジンの一種でもある。
ペラルゴニジンは分子量271.24で、炭素15個、水素11個と酸素5個からなり、1−ベンゾピリリウム−3、5、7−トリヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)である。
ペラルゴニジンは抗酸化作用に優れ、紫外線に対する防御の働きが報告されていることからメラニン分解作用の他に、美肌作用をもつ点、好ましい。
ペラルゴニジンは食経験も豊富であり、アレルギーを発生される原因にもならず、その他の副作用も報告されておらず、安全性が高いことから好ましい。
ここに示したペラルゴニジン誘導体に利用されているD−グルコース及びL―アルギニンはいずれも既知の物質で安全性も高い。また、過剰に取り込まれた場合、ペラルゴニジン誘導体は体内のエステラーゼなどの酵素により分解され、ペラルゴニジン、D−グルコース及びL―アルギニンに分解されて代謝され、排泄されることから安全性が高い。
さらに、ここに示したペラルゴニジン誘導体に中性であり、肌や口腔内、胃などの消化管に対する副作用も少ない。
ペラルゴニジン誘導体の製造方法としては発酵法、酵素反応法や化学合成法などのいずれかの方法が用いられる。
酵素反応法の場合、ペラルゴニジンを含有する植物または合成されたペラルゴニジンを原料として用いる。これにグルコース、アルギニンを添加し、さらに、エステル形成酵素を追加して反応させることにより得られる。
さらに、精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
例えば、分離用担体または樹脂により分離され、分取されることは好ましい。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜35倍量が好ましく、4〜25倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4〜30℃が好ましく、10〜25℃がより好ましい。
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
また、活性を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
このペラルゴニジン誘導体は人の肌に存在するメラニン細胞やメラニン自体に直接作用してメラニンを分解し、美肌作用を呈する。
ペラルゴニジン誘導体に油脂を添加することは、得られる活性部分が油の中で安定に維持することから好ましい。例えば、大豆油、米ぬか油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油で抽出することは好ましい。
医薬品として注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。
経口剤としては錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤は、シェラックまたは砂糖で被覆することもできる。
また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を添加することができる。
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
食品製剤として美容を目的とした美容食品、美容を目的とした食品、肝臓細胞の維持を目的とした滋養強壮剤などに利用される。また、保健機能食品として、栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、皮膚の健康を維持する目的として、飼料やサプリメントとして利用される。
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができ、美肌作用を呈する化粧料となる。
化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。
たとえば、このペラルゴニン誘導体は蘭花、コメヌカ粉末とベニコウジ菌を添加して発酵させた発酵液をプロテアーゼ処理する工程からなる製造により製造される。
原料となる物質は蘭花、コメヌカ粉末、ベニコウジ菌とプロテアーゼである。
ここでいう蘭は学名Cornus officinalisである。
蘭花にはペラルゴニンが豊富に含有されていることからこの誘導体の原料として好ましい。
蘭花は日本、中国、台湾、アメリカなどいずれの国の由来でも良い。また、低農薬や減農薬で生産されたものは好ましい。
蘭花は乾燥され、粉末化されることが好ましく、発酵の前にオートクレーブ滅菌されることは発酵をスムーズに行うことから好ましい。
また、3マイクロメーター以下の粒子サイズの粉末が発酵の工程を実施しやすくすることから好ましい。
原料となるコメヌカ粉末は日本産、中国産、アメリカ産、ロシア産などいずれの産地のコメヌカでも利用できるが、トレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である日本産が好ましい。
このうち、有機栽培や無農薬で栽培されたコメヌカは有害な農薬や金属を含有しないことから、さらに好ましい。
コメヌカは使用に際して、株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20、中山技術研究所製DM−6などの粉砕機で粉砕される。これにより発酵の工程が効率的に進行しやすい。
さらに、蘭花とコメヌカは粉砕後、オートクレーブなどにより滅菌されることは雑菌の繁殖を防御できることから好ましい。
用いるベニコウジ菌は学名Monascuc purpureusの糸状菌であり、古くから日本、中国や台湾において紅酒や豆腐ようなどの発酵食品に利用されている。
また、沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。
このベニコウジ菌は蘭花とコメヌカからなるペラルゴニンを発酵させることにより得られる。
前記の発酵に関するそれぞれの添加量は蘭花の乾燥粉末1重量に対し、コメヌカ粉末は0.2〜4重量及びベニコウジ菌は0.0002〜0.007重量が好ましい。ベニコウジ菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
また、この発酵は36〜47℃に加温され、発酵は1日間から15日間行われる。目的とするペラルゴニン誘導体をHPLCやTLCにより定量すること、ならびに、菌体の増殖性を確認することにより、発酵の工程管理を実施する。
また、得られた発酵物を超音波処理することは、生成物が分離しやすいことから、好ましい。また、凍結乾燥などにより、濃縮することは、以下の工程が短時間に実施できることから好ましい。
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは一例であり、素材、原料や検体の違いに応じて常識の範囲内で条件を変更させることが可能である。
沖縄県で減農薬栽培された蘭花を用いた。花を採取した後、水道水で水洗後、天日で乾燥させ、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製のスーパー自由ミル)にて粉砕し、蘭花の乾燥粉末粉砕物を1.2kg得た。
三重県産のコメ由来のコメヌカをミキサー(クイジナート)に供し、コメヌカの粉砕物1.2kgを得た。前記の蘭花とコメヌカの粉砕物をオートクレーブに供し、121℃、20分間、滅菌した。
これらを清浄な発酵タンク(滅菌された発酵用丸形40リットルタンク)に入れ、滅菌された水道水11kgを添加し、攪拌した。
これとは別に、粉末のベニコウジ菌(納豆本舗製)11gを小型発酵タンクに供し、滅菌したコメヌカ粉末と前培養させた培養液を用意した。
前記の前培養したベニコウジ菌の溶液を前記の蘭花の乾燥粉末とコメヌカを入れた発酵タンクに添加し、攪拌後、39〜42℃の温度範囲で加温し、発酵させた。
発酵過程では、通気によりバブリングと攪拌を行いつつ、発酵液のサンプリングを行った。
得られた発酵物1kgに対してアマノ製薬のプロテアーゼNを11g添加し、40℃で3時間加温した。
この処理物を加温し、エタノールを添加して目的とするペラルゴニン誘導体230gを得た。これを検体1とした。
(試験例1)
上記のように得られた検体1をエタノールに溶解し、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析した。
さらに、核磁気共鳴装置(NMR、ブルカー製、AC−250)で解析した。構造解析の結果、検体からペラルゴニジン1分子とD−グルコース3分子とL−アルギニン1分子から構成されていた。
ペラルゴニンの2位に位置するベンゼン環の4位にグルコースの1位の水酸基と結合していた。
ペラルゴニンの3位の水酸基はLーアルギニンのグアニジノのアミノ基とエステル結合していた。
さらに、ペラルゴニンの5位と7位の水酸基はいずれもグルコースの1位の水酸基と結合していた。
以下に、ヒト皮膚由来メラニン産生細胞を用いた確認試験について述べる。
(試験例2)
クラボウ株式会社より購入したヒト由来メラニン細胞(メラノセル)を用いた。培養液としては、5%牛胎児血清含有MEM培地(Sigma製)を用いて培養した、1000個の細胞を35mm培養シャーレに播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。
これに、前記の実施例1で得られた検体1及び対照としてビタミンCを0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養した。
細胞を剥離後、細胞数を計数した。なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加によりメラニン産生細胞数が溶媒対照群に比して平均値として33%に減少した。一方、ビタミンCの添加では、細胞数は64%に低下した。
得られた細胞を採取して超音波処理してメラニンを含有する溶液を採取した。この溶液中のメラニン量をHPLC(島津製作所製)により定量した。
その結果、検体1の添加によるメラニン量は溶媒対照の値に比して11%となった。一方、ビタミンC添加では57%となった。この結果、検体2はビタミンCより著しいメラニンの抑制作用が認められた。
以下にメラニン分解試験について述べる。
(試験例2)
前記のようにヒト由来メラニン産生細胞より得られたメラニンを0.1mg/mLの濃度に調製し、これに検体1の溶液を10%添加して37℃で3時間攪拌した。その後、メラニン量を定量した。
同時に、溶媒を同量添加した対照群を用いた。その結果、検体1の添加により溶媒対照に比してメラニン量は15%となり、メラニンの減少が認められた。
本発明で得られるペラルゴニジン誘導体はメラニン分解作用を示し、かつ、副作用が少ないことから、国民のQOLを改善し、美容業界の発展に寄与するものである。

Claims (1)

  1. 式(1)で示される構造からなるメラニン分解作用を呈するペラルゴニジン誘導体。
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