JP4424842B2 - ゴルフボールおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はソリッドゴルフボール、特に均一性、反発性能および耐久性に優れたソリッドゴルフボール、さらにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ソリッドゴルフボールのコアは、従来ポリブタジエンを主体とするゴム成分に、共架橋剤として不飽和カルボン酸金属塩と、遊離基開始剤を混合したゴム組成物を加熱し、ゴム分子主鎖に架橋を形成することにより製造されている。そして上記不飽和カルボン酸金属塩として一般にアクリル酸亜鉛が用いられ、ジクミルパーオキサイドのような遊離基開始剤でポリブタジエン主鎖にグラフト重合し、共架橋が形成される。ここで不飽和カルボン酸金属塩等のゴム組成物中における分散状態およびゴム分子主鎖への架橋反応速度は、架橋後のゴム組成物の基本物性、さらにこれを用いたゴルフボールの特性に大きく影響する。
【0003】
そこで従来、アクリル酸亜鉛の粒子表面を高級脂肪酸、あるいは高級脂肪酸金属塩でコーティングし、ゴム組成物中でのアクリル酸亜鉛の分散性を向上することが提案されている(特開昭59−141961号公報、特開昭60−92781号公報)。
【0004】
また、平均粒度5μm以下の不飽和カルボン酸金属塩や、粒度分布が0.1〜5μmで、平均粒度が1〜4.5μmの不飽和カルボン酸塩を共架橋剤に用いて、ゴム組成物中での不飽和カルボン酸金属塩の分散性を高めることも提案されている(特開平8−196661号公報、特開平9−235413号公報、特開平11−57068号公報、特開平11−57069号公報)。
【0005】
これらの技術は、共架橋剤のゴム組成物中における分散性を向上せしめ、ゴム組成物の硬度を高めるには好ましい方法である。しかしこの方法は共架橋剤が微分散してしまう為、反発性能に最も寄与するゴム分子主鎖相互間の架橋密度が減少する一方、反発性能にあまり寄与しないゴム分子主鎖と共架橋剤のグラフト重合の形態が増加し反発性能が充分発揮されない。
【0006】
そこで発明者はすでに共架橋剤を熱可塑性樹脂で被覆したマイクロカプセルを用いることにより、ゴム分子主鎖間の架橋速度とグラフト重合の速度を調整し、反発性能を改善する方法を提案した(特願2000−281468号)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ゴルフボールのソリッドコアに用いられるゴム組成物において、共架橋剤のゴム組成物中での均一分散性を改善するとともに、ゴム分子主鎖相互間の架橋速度とグラフト重合速度を調整することにより、反発性能および耐久性を一層高めたゴルフボールおよびその製造方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明はソリッドコアと、該ソリッドコアを被覆するカバーとを有するゴルフボールにおいて、前記ソリッドコアは、共架橋剤が配合され、その一部は熱可塑性樹脂で共架橋剤を被覆したマイクロカプセルとして配合されたゴム組成物であることを特徴とするゴルフボールである。ここで共架橋剤としてアクリル酸亜鉛および/またはメタクリル酸亜鉛が好適に使用される。そして前記熱可塑性樹脂は、軟化点が80℃〜250℃の範囲の材料が好ましい。さらにマイクロカプセルに含まれる共架橋剤は、好ましくは共架橋剤全体の70〜99重量%である。
【0009】
次に他の発明はソリッドコアと、該ソリッドコアの周りを被覆するカバーとを有するゴルフボールの製造方法であって、前記ソリッドコアの製造は、
(1) 共架橋剤および熱可塑性樹脂で共架橋剤を被覆したマイクロカプセルをゴム組成物と混合する工程と、
(2) 前記熱可塑性樹脂の軟化点より高い温度で前記ゴム組成物を加熱し、架橋する工程を含む、
ことを特徴とするゴルフボールの製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係るゴルフボールは、ソリッドコアにカバー材として典型的には、アイオノマー樹脂あるいはトランス1,4−ポリイソプレン(TPI)などの熱可塑性樹脂を被覆して構成される。前記ソリッドコアは、そのゴム組成物に共架橋剤が配合され、その一部に熱可塑性樹脂で共架橋剤を被覆したマイクロカプセルが使用される。
【0011】
本発明において、共架橋剤は炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸、またはその金属塩が用いられる。α,β−不飽和カルボン酸として、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられるが、特に反発性能を高めるうえでアクリル酸が好適である。また上記金属塩として、亜鉛、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の金属塩が挙げられ、特に亜鉛塩が好ましい。
【0012】
共架橋剤として特定温度で融解する熱可塑性樹脂によってマイクロカプセル化した共架橋剤とマイクロカプセル化していない共架橋剤を併用する。マイクロカプセル化した共架橋剤を用いることによってゴム分子主鎖と共架橋剤のグラフト重合速度を制御し、ゴム分子主鎖相互間の架橋密度の最適化が可能となり、反発性能が向上する。一方、マイクロカプセル化していない共架橋剤を少量配合することによって、反発性能を低下させない程度にグラフト重合をさせることによって、耐久性を高めることができる。
【0013】
マイクロカプセル化された共架橋剤は、共架橋剤全体の70〜99重量%、好ましくは80〜97重量%、特に80〜94重量%の範囲である。ここで70重量%未満の場合はマイクロカプセルによる反発性能向上の効果が小さく、一方99%を超えると耐久性の改善が充分期待できない。
【0014】
マイクロカプセルの膜材に使用される熱可塑性樹脂は、その軟化点が80〜250℃、好ましくは100〜200℃、特に120〜160℃の温度範囲にあるものを使用する。なお、軟化点が80℃よりも低いとゴム成分の混練の際にマイクロカプセルが破壊する可能性がある。一方軟化点が250℃を超えると、ゴム組成物の通常の架橋温度において、マイクロカプセルの膜材である熱可塑性樹脂が融解せずマイクロカプセルから共架橋剤が放出されない。したがって熱可塑性樹脂の種類は加硫温度との関係で選定されることが好ましい。
【0015】
本発明でマイクロカプセルの膜材として用いられる熱可塑性樹脂は、たとえば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エチレンアクリル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、ブテン樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂、AS樹脂などを使用することが可能である。なお、塩化ビニル樹脂などのように塩素系の樹脂を使用する場合にあっては、有機溶剤に可溶でありしかも意図する温度域付近に軟化点を有するものが好適である。
【0016】
共架橋剤を熱可塑性樹脂で被覆してマイクロカプセルを製造する方法としては、一般に知られるマイクロカプセル化の手法が採用される。たとえば、気中懸濁法では芯物質(粉末)を気流によって流動化し懸濁させて、懸濁粒子表面に熱可塑性樹脂の膜材を乳化させた乳液として噴霧する。そして懸濁化空気を加熱して溶媒を蒸発させてカプセル膜を形成させることができる。また噴霧乾燥法では、熱可塑性樹脂の膜材を乳化させた乳液に芯材を懸濁させて、その懸濁液を噴霧、微粒子化して瞬間的に乾燥させて、カプセル化膜を形成させることができる。さらに粉体どうしを乾式でカプセル化する方法(芯材粒子とそれより細かい膜材粒子を混合後、遠心力などにより衝撃を与え芯材の表面に膜剤を埋め込むようにしてカプセル化する方法)などが採用できる。マイクロカプセルの膜強度の観点からは粉体どうしを乾式でカプセル化する方法が好ましい。
【0017】
上記方法で得られたマイクロカプセルは共架橋剤を70〜95重量%含有することが好ましい。70重量%未満の場合、共架橋剤の放出が不充分であり、一方95重量%を超えると、均一なマイクロカプセルの製造が困難になる。
【0018】
本発明では共架橋剤全体のソリッドコアのゴム組成物への配合量は、共架橋剤換算でゴム成分100重量部に対して10〜70重量部、好ましくは15〜40重量部の範囲である。10重量部未満では充分な架橋密度が得られず、一方70重量部を超えると、硬くなりすぎるとともに、ゴム分子の主鎖に共架橋剤がグラフト重合する密度が高く、反発性能に不利となるとともにフィーリングが悪くなる。
【0019】
ソリッドコアのゴム組成物には、マイクロカプセル化した共架橋剤およびマイクロカプセル化しない共架橋剤のほか、ゴム成分、有機過酸化物、充填剤などを含有する。ゴム成分としては、天然ゴム、合成ゴムいずれのジエン系ゴムを用いてもよいが、好ましくはシス−1,4結合を40%以上、特に90%以上含有するハイシスポリブタジエンゴムを用いることが好ましい。また、必要に応じて上記ハイシスポリブタジエンゴムに、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)などのジエン系ゴムを混合することができる。
【0020】
上記有機過酸化物は主に架橋開始剤として配合され、ゴム分子主鎖間に架橋を形成する。そして有機過酸化物による架橋形態が、主に反発性能に寄与するため、有機過酸化物の配合量は所望のソリッドコアの特性を勘案して決定する。有機過酸化物は、例えばジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が用いられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましい。有機過酸化物の配合量は、ゴム成分100重量部に対して0.1〜5.0重量部、好ましくは0.3〜3.0重量部である。0.1重量部未満の場合、架橋密度が低く、硬度および反発性能が低くなる。一方5.0重量部を超えると架橋密度が高くなり、硬くなりすぎる。
【0021】
上記充填剤としては、主として比重調整のために用いられる酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの金属塩、タングステン粉末あるいはモリブデン粉末などの高比重金属粉末が挙げられ、更に必要に応じて老化防止剤などを配合してもよい。
【0022】
ソリッドコアの外径は、30〜42mmとすることが望ましく、特に32〜40mmの範囲が好ましい。ソリッドコアの外径が30mmよりも小さい場合は相対的にカバーが厚くなり、その結果反発性能が低下する傾向がある。一方、ソリッドコアの外径が42mmよりも大きい場合はカバーが薄くなり、その結果ゴルフボールの成形が困難になるとともに耐久性が悪くなる。
【0023】
さらにソリッドコアは初荷重98Nから終荷重1275Nをかけたときの変形量が2.5〜5.0mm、好ましくは2.8〜4.0mmの範囲に調整される。2.5mm未満の場合、打撃時の衝撃が大きく打球感が好ましくない。一方、5.0mmを超えると硬度が低くなり反発性能が低下する。
【0024】
本発明では、ソリッドコアはソリッドコア単体の他、ソリッドコアに糸ゴムを巻きつけた糸巻きコアのいずれも採用できる。ソリッドコアとしては、1層構造のコアはもとより、2層以上の多層コアであってもよい。
【0025】
なお、本発明のソリッドコアの体積はゴルフボール全体の30〜90%の範囲、さらに50〜85%の範囲、特に60〜80%の範囲とするが好ましい。30%未満になると本発明の効果は充分認められない。一方90%を超えると、カバーが相対的に薄くなり、ゴルフボールの耐久性に劣ることとなる。
【0026】
本発明のソリッドコアの架橋反応は、共架橋剤としてその一部は熱可塑性樹脂で共架橋剤を被覆したマイクロカプセルとしてゴム組成物に配合される。そして、たとえば120〜230℃の温度で10〜50分、好ましくは130〜200℃で10〜40分、さらに好ましくは140〜180℃で10〜40分の加熱条件で行なわれる。そして加熱温度(A)とマイクロカプセルの膜材である熱可塑性樹脂の軟化点(B)の関係は、(A−B)が0〜100℃の範囲、さらに10〜90℃、特に20〜80℃の範囲に設定することが好ましい。
【0027】
(A>B)でない場合、共架橋剤のマイクロカプセルからの放出が遅くなって、架橋時間が長くなって生産性が低下する。一方、(A−B)が100℃を超えると、ゴム組成物の混練中にマイクロカプセルが破壊し、本発明の効果は達成できない。
【0028】
たとえば、140〜170℃で架橋反応をする場合、軟化点が100〜120℃近傍であるポリスチレン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。なお、架橋反応は発熱反応である為、架橋温度は金型への加熱温度よりも高くなる。したがって、架橋温度はソリッドコア内部の実測値で管理することが好ましい。本発明ではマイクロカプセル化していない共架橋剤を併用するため架橋時の発熱反応により加熱温度よりもコアのゴム組成物の内部温度は上昇する。したがって(A−B)が0℃の場合でも共架橋剤がマイクロカプセルから放出される。
【0029】
ソリッドコアのゴム組成物の加熱温度が熱可塑性樹脂の軟化点以下にある場合、ゴム組成物中の共架橋剤による架橋反応が起こりにくいので、混練り後から成形までの時間制約が少なく工程管理が容易となる。
【0030】
なお、前記熱可塑性樹脂の軟化点は分析装置TMAを使用して測定を行なう。具体的な軟化点の測定方法は、板状の熱可塑性樹脂サンプルに対して荷重をかけた測定針を載置し、5℃/minなどの所定の昇温速度にて昇温させ、何℃にて測定針がサンプル内に侵入するかを測定する。
【0031】
本発明のゴルフボールは前記ソリッドコアにカバーを被覆して構成される。ここで前記カバー組成物はトランス1,4−ポリイソプレン、アイオノマー樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー等を単独または混合して用いることができる。
【0032】
前記トランス1,4−ポリイソプレンとはポリマー分子中、トランス構造が60%以上含まれるものをいう。トランス構造が60%未満のものでは結晶部分が少なく、したがって軟化点が低すぎてカバーとしての基本特性が満足できない。
【0033】
また、アイオノマー樹脂としては、たとえば、α−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和して得られるもの、α−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数2〜22のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和して得られるものなどが挙げられる。上記のα−オレフィンとしては、たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどが用いられ、特にエチレンが好ましく、炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などが用いられ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。また、炭素数2〜22の不飽和カルボン酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステルなどが用いられ、特にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましい。
【0034】
そして、上記α−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸との共重合体またはα−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数2〜22のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、たとえば、ナトリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられる。
【0035】
なお本発明のカバー組成物には耐久性と反発性能を高める観点から、熱可塑性樹脂および/または熱可塑性エラストマーを主体とするポリマー成分を使用することが好ましい。特に、アイオノマー樹脂がカバー組成物中に50重量%以上、好ましくは70重量%以上配合することにより耐久性と反発性能が向上する。
【0036】
ここでカバーの厚さは0.35〜6.35mm、さらに0.7〜5.35mm、特に1.0〜4.0mmの範囲が好ましい。0.35mm未満ではカバー強度、耐久性が低下し、一方6.35mmを超えるとカバー成分のボール全体における体積分率が大きくなってボールの反発性能が低下するからである。
【0037】
前記カバーには、繊維強化ゴム、繊維強化樹脂、比重調整剤、金属粉、金属酸化物、色粉、比重調整剤、蛍光増白剤、滑剤などを適宜混合することが可能である。
【0038】
次に本発明のゴルフボールの製造方法は、まずカバー組成物をロールやニーダーによって混練する。そして、カバー組成物をソリッドコアに被覆するには予め半殻状のハーフシェルを作製し、それを2枚用いてソリッドコアを包み、130〜170℃で1〜5分間、加圧成形するか、上記カバー組成物をソリッドコア上に直接射出成形してソリッドコアを被覆する。
【0039】
【実施例】
(1) マイクロカプセルの製造
ポリスチレン(軟化点100℃)5gを塩化メチレン50mlに溶解し、この溶液に共架橋剤としてアクリル酸亜鉛水溶液を100g(濃度20%)加え、30分間攪拌し乳化を行なった。乳化状態は(W/O)型エマルジョンであった。次に4%PVA水溶液1リットルを用意し、攪拌しながら前述の(W/O)型エマルジョンを添加し、〔(W/O)/W〕型複合エマルジョンとした。系の温度を40℃までに徐々に昇温させ、塩化メチレンを蒸発させた後、55℃で1時間攪拌し、膜材を硬化させてマイクロカプセルを得た。アクリル酸亜鉛はマイクロカプセル中78重量%含まれている。
【0040】
(2) ソリッドコアの作製
表1に示すゴム組成物をニーダーおよびロールを用いて混練し、160℃で30分間、加熱加圧成形し、外径は38.4mm、重量34.6gのソリッドコアを作製した。混練時はゴム組成物の温度が100℃を超えないように温度を制御した。ソリッドコアの初期荷重98Nから終荷重1275Nをかけた時の圧縮変形量(mm)は表1に示す。
【0041】
(3) カバー組成物およびゴルフボールの製造
表1で示すカバー組成物を射出成形で前記ソリッドコアに厚さ2.3mmに被覆し、その上にウレタン製のクリアペイントを塗布した。得られたゴルフボールは直径42.7mm、重さ45.4gであった。
【0042】
【表1】
【0043】
表1のコア組成物およびカバー組成物に用いたポリマー成分と配合剤の内容は以下の通りである。
注1:ポリブタジエンはJSR社製のBR01を用いた。シス−1,4結合含量96%である。
注2:マイクロカプセルは実施例で製造したものを使用した。
注3:アクリル酸亜鉛は日本蒸留社製のZNDA−90Sを用いた。
注4:酸化亜鉛は東邦亜鉛社製を用いた。
注5:ジクミルパーオキサイドは日本油脂社製のパークミルDを用いた。
注6:ハイミラン1605は三井デュポンポリケミカル社製のナトリウム中和アイオノマーを用いた。
注7:ハイミラン1706は三井デュポンポリケミカル社製の亜鉛中和アイオノマーを用いた。
注8:酸化チタンは石原産業社製のA−220を用いた。
【0044】
得られたゴルフボールの物性測定は次の方法で行なった。
1) 圧縮変形量
初荷重98Nから終荷重1275Nを負荷したときのソリッドコアの変形量を測定した。
【0045】
2) 反発係数
重さ198.4gのアルミニウム製円柱を初速度45m/sで打ち出しゴルフボールを打撃した際のゴルフボールの速度から計算した。
【0046】
3) 耐久性
ゴルフボールをウッド1番クラブで初速度45m/sのスピードで繰返し打撃した場合のゴルフボールが破壊するまでの回数を比較例2を100として指数で示した。
【0047】
表1から本発明の実施例1〜3は共架橋剤にマイクロカプセル化したものの一部をソリッドコアのゴム組成物に用いた為、マイクロカプセル化した共架橋剤のみを用いた比較例1およびマイクロカプセルを用いないゴム組成物である比較例2よりも反発係数および耐久性が総合的に優れていることが認められる。
【0048】
なお、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0049】
【発明の効果】
本発明はソリッドコアのゴム組成物に配合される共架橋剤の一部を熱可塑性樹脂でカプセル内に封入することにより、混練時に共架橋剤の大部分はマイクロカプセルの状態でゴム組成物中に均一に分散することができる。架橋反応時には熱可塑性樹脂の軟化点以上にゴム組成物を加熱をする為、マイクロカプセルの融解により閉じ込められていた共架橋剤が放出され、架橋開始剤と接触して架橋反応を開始する。マイクロカプセルが融解後、共架橋剤は直ちに反応を開始するため、共架橋剤はある程度の塊として、ゴム分子の主鎖と架橋反応を行なう。
【0050】
さらにゴム分子と共架橋剤の反応は、マイクロカプセル化されていない共架橋剤とマイクロカプセル化された共架橋剤により、そのグラフト重合速度は調整される。そのためゴム分子と共架橋剤のグラフト結合点を少なくすることができ、ソフトで反発性能に優れたソリッドコアを得ることができる。またマイクロカプセルにより、粒子の大きさを均一にできる為、均一な物性のソリッドコアが得られる。さらにマイクロカプセルが融解するまでは過酸化物等の架橋開始剤によるゴム分子主鎖の架橋が形成される為、反発性能に有利な架橋形態を形成することができ、反発性能および耐久性を向上することができる。
Claims (4)
- ソリッドコアと、該ソリッドコアを被覆するカバーとを有するゴルフボールにおいて、
前記ソリッドコアは、共架橋剤が配合され、その一部は熱可塑性樹脂で該共架橋剤を被覆したマイクロカプセルとして配合されたゴム組成物であり、
前記ゴム組成物は前記熱可塑性樹脂の軟化点より高い温度で加熱され、架橋されることを特徴とするゴルフボール。 - 共架橋剤はアクリル酸亜鉛および/またはメタクリル酸亜鉛であることを特徴とする請求項1記載のゴルフボール。
- 熱可塑性樹脂は、軟化点が80℃〜250℃の範囲であることを特徴とする請求項1記載のゴルフボール。
- マイクロカプセル化された共架橋剤は、共架橋剤全体の70〜99重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載のゴルフボール。
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