JP4493176B2 - ゴルフボールおよびゴルフボールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、本発明はスピン性能に優れたゴルフボール、およびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくはラフからのショットであってもフライヤーになりにくく、かつ高反発弾性を有するゴルフボールおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
芝生からのショットでは、芝がクラブとボールとの間に噛み込み、ボールのバックスピン量が減少してボールが高くあがってしまう現象(フライヤー)が起こることがあり、特にアプローチショットのコントロール性が劣ることがしばしばある。この現象はソリッドゴルフボール、糸巻きゴルフボールに関わらず、いずれでも起こり、ゴルフプレーヤーの悩みの一つでもある。特に、アイオノマーカバー樹脂のゴルフボールでは、比較的弾性率が高く反発性能に優れている反面、スピンがかかりにくくコントロール性が劣るという欠点があり、上述のアプローチショットのコントロール性が劣る点の重要な問題である。
【0003】
このような欠点を有しにくい材料としてトランス1,4−ポリイソプレン(TPI)いわゆるバラタがあり、このバラタを使用したバラタカバーを用いたゴルフボールはフィーリングやコントロール性において優れた性能を有する。これはポリマーの結晶部分と架橋ゴム部分とを併せ持つために適度な硬さと高スピン性能が達成されていることによると考えられ、この優れたフィーリング性およびコントロール性により、バラタカバーを用いたゴルフボールは上級者に好まれている。
【0004】
このバラタは、トランス1,4−ポリイソプレンの結晶融点(50〜60℃:DSC測定による)以上の温度で架橋を行なうと、架橋後に冷却しても結晶部分の形成が行なわれず、適度な硬さを得ることができなくなってしまう。
【0005】
そのため、バラタは特殊な雰囲気下で長時間にわたる加硫を行う必要があった。たとえば、バラタに、有機アミン、酸化亜鉛および硫黄を配合した組成物を弾性芯体上に球形カバーとして被着成形する段階と、成形された球体を適量のキサンテート系加硫促進剤と硫黄とを有機溶剤中に溶解して調整された溶液に、所定時間浸漬し、球形カバーの硫黄架橋を行う段階とからなる架橋反応技術が特開昭54−99177号公報などに開示されているが、溶液中への浸漬を必要とするため後処理に困難性を有する場合がありその結果架橋工程上問題が多い。
【0006】
また、特開平6−54928などには不飽和脂肪酸の金属塩と架橋開始剤でバラタを架橋する製法が開示されているが、高温長時間の加硫が必要であり、高温で長時間加硫を行った結果、糸巻きコアの糸ゴムが熱劣化し、ゴルフボールの反発性能が低下するという問題があり、また結晶生成が行なわれないため適度な硬度を得ることができない。
【0007】
さらに、カバーの成形工程の途中において加硫が開始される場合があり、加硫の進行に伴いカバー材料の粘度が上昇することがあった。カバーの成形工程の途中にてカバー材料の粘度が上昇することにより、カバー材料が糸巻きコアに浸透しにくくなり、そのため、カバーと糸ゴム層との密着が悪くなり、結果としてゴルフボールの耐久性が低下する問題があった。
【0008】
そこで、室温のような低温から反応開始する低温加硫促進剤すなわちジチオカルバミン酸塩類および/またはザンテート酸塩類よりなる加硫促進剤を用いたバラタの加硫技術が提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の発明の構成によると、架橋が進行した結果、バラタを加硫した後に発生するの剰余物(ばり)の再利用が比較的困難である場合があった。また、ゴム練りを行ってから成形までの時間が比較的制限されるという問題があった。
【0010】
本発明は上述の課題を解決するものであり、ゴム練りを行ってからカバーの成形を行うまでの時間的制約を比較的緩和させ、カバーの成形時に発生した剰余物を再利用を図りゴルフボールの製造コスト軽減を図るとともに、カバー成形工程中においてカバー材料をコアに十分に浸透させることでゴルフボールの耐久性を向上させることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るゴルフボールは、請求項1に記載のように、ソリッドまたは糸巻構造を有するコアと、前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールにおいて、前記カバーは、トランス1,4−ポリイソプレン(TPI)を主成分とし、加硫促進剤を熱可塑性樹脂材料で被覆したマイクロカプセルを含有させることにより、加硫開始温度を制御して加硫させたカバーである、ゴルフボールである。
【0012】
また、本発明に係るゴルフボールは、請求項2に記載のように、請求項1記載の発明において、前記加硫促進剤は加硫開始温度が120℃以下である、ゴルフボールである。
【0013】
また、本発明に係るゴルフボールは、請求項3に記載のように、請求項1記載の発明において、前記加硫促進剤は、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、メチルペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペコリン、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、もしくは、ブチルキサントゲン酸亜鉛のうち少なくとも一つを含むものであるゴルフボールである。
【0014】
また、本発明に係るゴルフボールの製造方法は、請求項4に記載のように、ソリッドまたは糸巻構造を有するコアと、前記コアの周りを被覆するカバーとを有するゴルフボールの製造方法であって、前記カバーは、トランス1,4−ポリイソプレンを主成分とし、かつ、加硫促進剤を熱可塑性樹脂で被覆したマイクロカプセルを含有するカバー用組成物よりなり、前記カバー用組成物をハーフシェルに成形する工程と、ハーフシェルにコアを金型内で配置し、カバー表面にディンプル模様を形成する工程と、トランス1,4−ポリイソプレンの融点以下の温度で加熱し、前記マイクロカプセルより加硫促進剤をカバー用組成物中に放出させ、前記カバー用組成物を加硫する工程よりなる、ゴルフボールの製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に係るゴルフボールは、ソリッドまたは糸巻構造を有するコアと、トランス1,4−ポリイソプレン(TPI)を主成分とし、加硫促進剤を熱可塑性樹脂材料で被覆したマイクロカプセルを含有させて加硫開始温度を制御して加硫を行ったカバーと、で構成されるゴルフボールである。
【0016】
本発明者らは、熱可塑性樹脂でカプセル内に封入した加硫促進剤と硫黄とを用いることで、所望の温度で加硫反応を起こし、室温では架橋反応を行わないカバー材料を得ることができた。
【0017】
加硫促進剤を熱可塑性樹脂でカプセル内に封入してマイクロカプセルとすることにより、カバー材料が熱可塑性樹脂の融点以下にある場合にあっては、加硫促進剤がカプセル内に閉じ込められたままである。したがって、練り、保管時において、カバー材料が熱可塑性樹脂の融点以下にある場合、カバー材料は架橋反応しないものの、成形後に所望の温度にした場合は、カプセルが融解し、加硫促進剤がカプセル外に流出して加硫反応を開始するのである。
【0018】
カバー材料が熱可塑性樹脂の融点以下にある場合、カバー材料は架橋反応しないのであるから、従来の問題であった練り後から成形までの時間制約を問題とすることは無くなった。また、成形段階を熱可塑性樹脂の融点以下で行うことにより流動性を向上させることができるから、カバー材料の糸ゴムへの浸透を向上させることができ、結果としてゴルフボールの耐久性を向上させることが可能となるのである。その後、金型内で温度を上昇することでマイクロカプセルが発破し、マイクロカプセル外に加硫促進剤が流出し、加硫反応が開始されるのである。
【0019】
加硫促進剤は加硫開始温度が120℃以下であるものを使用することが可能であり、好適には、加硫促進剤は加硫開始温度が20〜120℃であるもの、より好ましくは、加硫促進剤は加硫開始温度が30〜110℃であるものを使用することができる。加硫促進剤の加硫開始温度が20℃よりも小さい場合にあっては、マイクロカプセル内に封入する前の保管時などにおいて不要な架橋反応を起こす可能性があり、加硫促進剤の加硫開始温度が120℃よりも大きい場合にあっては、加硫温度が高くなりすぎて、たとえばコアとして糸巻構造を有するコアを用いた場合、糸ゴム層を劣化させる可能性があるからである。
【0020】
加硫促進剤を熱可塑性樹脂の皮膜で被覆してマイクロカプセルを製造する方法としては、一般に知られるマイクロカプセル化の手法が採択され、たとえば、気中懸濁法(芯物質−粉末−を気流によって流動化し懸濁させて、懸濁粒子表面に膜材を乳化させた乳液を噴霧する。懸濁化空気を加熱して溶媒を蒸発させてカプセル膜を形成させる方法)、噴霧乾燥法(膜材を乳化させた乳液に芯材を懸濁させて、その懸濁液を噴霧、微粒子化して瞬間的に乾燥させて、カプセル化膜を形成させる方法)、及び粉体どうしを乾式でカプセル化する方法(芯材粒子とそれより細かい膜材粒子を混合後、遠心力などにより衝撃を与え芯材の表面に膜剤を埋め込むようにしてカプセル化する方法)などがあるが、形成された膜の強度を考えると粉体どうしを乾式でカプセル化する方法が好適である。
【0021】
具体的な加硫促進剤としては、100℃程度でも十分反応するジチオカルバミン酸塩類もしくはザンテート酸塩類などを好適に使用することが可能である。ジチオカルバミン酸塩類としては、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、メチルペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペコリン、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ヘキサデシル(またはオクタデシル)イソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジアミルジチオカルバミン酸カドミウムなどを使用することができる。ザンテート酸塩類としては、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛などを使用することができる。
【0022】
さらに、CBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系化合物加硫促進剤や、MBT(2−メルカプトベンゾチアゾール)、MBTS(ジベンゾチアジルジスルフィド)、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、亜鉛塩、銅塩、シクロヘキシルアミン塩、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール系加硫促進剤や、TMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)、テトラエチルチウラムジスルフィド、TMTM(テトラメチルチウラムモノスルフィド)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラム系加硫促進剤や、チアカルバミド、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジオルトトリルチオ尿素などのチオ尿素系加硫促進剤や、ジフェニルグアニジン、DOTG(ジオルトトリルグアニジン)、トリフェニルグアニジン、オルトトリルビグアニド、ジフェニルグアニジンフタレートなどのグアニジン系加硫促進剤や、アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系加硫促進剤や、アセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒド−アンモニア反応物などのアルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系加硫促進剤や、2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系加硫促進剤などを、熱可塑性樹脂で被覆してマイクロカプセル化することも可能であり、さらに上述したジチオカルバミン酸塩類もしくはザンテート酸塩類と混合させて使用することも可能である。また、加硫促進剤は、粉体、固体、液体のいずれの状態のものであっても使用することが可能であり、いずれの状態のものであっても熱可塑性樹脂にて被覆してマイクロカプセル化することが可能である。
【0023】
前記カバー用組成物はトランス1,4−ポリイソプレンを主成分とする。ここでトランス1,4−ポリイソプレンとはポリマー分子中、トランス構造が60以上含まれるものをいう。トランス構造が60未満のものでは結晶部分が少なく、したがって融点が低すぎてカバーとしての基本特性が満足できない。次にカバー材として混合して用いられるその他のポリマーは一部結晶構造を有する樹脂、ゴム、あるいは高反発材料が好ましく、たとえばハイスチレンレジン、ハイシス−ポリブタジエン、アイオノマー樹脂などである。これらのポリマーはカバー材のポリマー成分に対して50重量%以下、好ましくは25重量%以下の範囲で配合することができる。トランス1,4−ポリイソプレンの含量が少ないと高スピン性能およびコントロール性能が低下する。なお、アイオノマー樹脂としては、たとえば、α−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和して得られるものや、α−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数2〜22のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和して得られるものなどが挙げられる。上記のα−オレフィンとしては、たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどが用いられ、特にエチレンが好ましく、炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などが用いられ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。また、炭素数2〜22の不飽和カルボン酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステルなどが用いられ、特にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましい。そして、上記α−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸との共重合体またはα−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数2〜22のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、たとえば、ナトリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられる。
【0024】
ここでカバーの厚さは0.5〜4.0mm、特に0.8〜3.0mmの範囲が好ましい。0.5mm未満ではカバー強度、耐久性が低下し、一方4.0mmを超えるとカバー成分のボール全体における体積分率が大きくなってボールの反発性能が低下するからである。
【0025】
本発明で採用されるカバー組成物の配合例としては、トランス1,4−ポリイソプレン以外の樹脂および/またはゴムを用いる場合、たとえば、トランス1,4−ポリイソプレン100重量部に対して天然ゴム5〜20重量部、ハイスチレンレジン5〜20重量部、ジエンゴム0〜20重量部、亜鉛華1〜10重量部、酸化チタン1〜20重量部で構成することができる。その他にも、繊維強化ゴム、繊維強化樹脂、無機単結晶成分、比重調整剤、金属粉、金属酸化物などを適宜混合できる。
【0026】
カバーには粘着付与剤を配合させることが可能である。使用される粘着付与剤はクマロン・インデン系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン誘導体、フェノール・ホルムアルデヒト系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、石油系樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド系樹脂、ポリブテンなどのオリゴマー、液状ポリイソプレンなどの液状ゴムなどであるが、特にテルペン樹脂およびロジンエステル系が好適である。
【0027】
加硫剤としての硫黄は、0.1〜3重量部配合することが可能であり、より好ましくは0.2〜2.0重量部配合することが可能である。硫黄量が上記範囲より少ない場合は加硫が十分に進行しないため、ゴルフボールカバーとして十分な強度が得られない。また、上記範囲より多い場合は、ロールやニーダーなどでの材料混合中に加硫が起こってしまい、いわゆるゴム焼けが発生する。また、成形後の製品表面にそれらが染み出てくるブルーム現象が起こる場合がある。
【0028】
なお、加硫剤としては硫黄のみならず有機過酸化物を使用することも可能である。有機過酸化物としては、たとえば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3あるいは1,3−ビス(t−ブチルパーオキシプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシロキサン、n−ブチル−4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレレートなどを使用することができる。これらの中で、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼンおよびジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼンが好ましい。
【0029】
マイクロカプセル内に封入された加硫促進剤量は0.1〜3重量部配合することが可能であり、より好ましくは0.2〜2.0重量部配合することが可能である。加硫促進剤量が上記範囲より少ない場合は加硫が不十分となり、ゴルフボールカバーとしての強度もしくは耐久性が得られない。また、上記範囲より多い場合は、ロールやニーダーなどでの材料混合中に加硫が起こってしまい、いわゆるゴム焼けが発生する。また、成形後の製品表面にそれらが染み出てくるブルーム現象が起こる場合がある。
【0030】
加硫促進剤をマイクロカプセル化して封入するのに使用される熱可塑性樹脂は、その軟化点あるいは融点が所望の温度範囲にあるものを使用することができる。なお、熱可塑性樹脂の軟化点とは、熱可塑性樹脂の形状は保たれているが圧力をかけると変形する温度をいう。また、熱可塑性樹脂の融点とは、熱可塑性樹脂が液体になる温度をいう。100℃近傍での加硫反応を望む場合にあっては、たとえば、軟化点が100℃近傍であるポリスチレンや、融点が100℃近傍でのポリエチレンなどを使用することが可能である。熱可塑性樹脂の軟化点は70〜150℃のものを使用することが可能であり、好ましくは80〜130℃のものを使用することができ、さらに好ましくは80〜120℃のものを使用することができる。熱可塑性樹脂の軟化点が70℃よりも小さいものを使用するとカバー材料を混練り時において、マイクロカプセルの皮膜が破れる可能性があるからである。一方、熱可塑性樹脂の軟化点が150℃よりも大きいものを使用すると、加硫温度が高温となりすぎて、加硫時にコアとしての糸ゴム層を劣化させる場合があるからである。なお、熱可塑性樹脂の軟化点は分析装置TMAを使用して測定を行う。具体的な軟化点の測定方法は、板状の熱可塑性樹脂サンプルに対して荷重をかけた測定針を載置し、5℃/minなどの所定の昇温速度にて昇温させ、何℃にて測定針がサンプル内に侵入するかを測定する。
【0031】
加硫促進剤をマイクロカプセル化して封入するのに使用される熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エチレンアクリル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、ブテン樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂、AS樹脂などを使用することが可能である。なお、塩化ビニル樹脂などのように塩素系の樹脂を使用する場合にあっては、有機溶剤に可溶でありしかも意図する温度域付近に軟化点を有するものが好適である。
【0032】
カバーの主成分はトランス1,4−ポリイソプレン(TPI)であるから、加硫促進剤を被覆する熱可塑性樹脂として、ポリスチレン、ポリエチレン、アイオノマーなどを使用する場合にあっては、その熱可塑性樹脂は補強効果を有することになる。したがって、熱可塑性樹脂として、ポリスチレン、ポリエチレン、アイオノマーなどを使用する場合、カバーの強度を向上させることが可能であり、ゴルフボールのカバーに要求される耐カット性能を向上させることができるのである。
【0033】
次に本発明のゴルフボールの製造方法は次の工程による。まず、カバー組成物の混練は、ロールやニーダーによって行なうことができる。このときの材料温度は50℃〜80℃が適している。50℃以下ではトランス1,4−ポリイソプレンが融解しないため、他の材料を混合することができない。また80℃以上では、せん断によってマイクロカプセルが発破する可能性があり、マイクロカプセルが発破した場合にあっては加硫反応が開始してしまい、ゴム焼けが発生する場合がある。なお、混合時間はできるだけ短い方がよい。具体的には1分〜20分が好適であるが、加硫促進剤の配合量により異なるためこの限りではない。上記時間より短い混合時間であると、配合剤のカバー組成物中での分散が悪くなる。また、上記時間より長い場合はゴム焼けが発生してしまう。
【0034】
上述したカバー組成物は、ソリッドコア、糸巻きコアのいずれの場合にも被覆することはできるが、糸巻きコアを用いた際に有効な効果が現れる。ソリッドコアとしては、1層構造のコアはもとより、2層以上の多層コアであってもよい。糸巻きコアとしては、センターとそれに巻き付けた糸ゴムとからなるが、センターとしては液系、ゴム系のいずれも用いることができる。ソリッドコアを構成するゴム組成物の配合組成は特に限定せず、従来より用いられているソリッドコア用のゴム組成物を用いることができる。具体的には、基材ゴム、不飽和カルボン酸の金属塩、有機過酸化物、充填剤等を含有する。基材ゴムとしては、天然ゴム、合成ゴムいずれのジエン系ゴムを用いてもよいが、好ましくはシス−1,4結合を40%以上、特に80%以上含有するハイシスポリブタジエンゴムが用いることが好ましい。また、必要に応じてハイシスポリブタジエンゴムに、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)等のジエン系ゴムを混合して用いてもよい。上記有機過酸化物は主に架橋開始剤として配合され、例えばジクミルパーオキサイドや1−ブチルパーオキサイド等が用いられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。また有機過酸化物の配合量は、基材ゴム100重量部に対して0.3〜2.0重量部であることが好ましい。上記不飽和カルボン酸の金属塩は共架橋剤として配合され、、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸等の炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸のカリウム等の1価の金属;亜鉛、マグネシウム等の2価の金属との塩が挙げられ、これらのうち高い反発性を付与するアクリル酸亜鉛が好ましい。不飽和カルボン酸金属塩の配合量は、基材ゴム100重量部に対して18〜35重量部が好ましい。上記充填剤としては、主として比重調整のために用いられる酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属塩;タングステン粉末、モリブデン粉末等の高比重金属粉末が挙げられ、これらの他に、更に必要に応じて老化防止剤、しゃく解剤などを配合してもよい。コアの外径は、36.8〜41.2mmとすることが可能であり、好ましくは37.8〜40.8mmとすることができる。コアの外径が36.8mmよりも小さい場合は相対的にカバーが厚くなり、カバーを厚くすると反発性能が低くなる場合があるからである。一方、コアの外径が41.2mmよりも大きい場合は相対的にカバーが薄くなり、カバーが薄くなるとゴルフボールの耐久性が悪くなるからである。
【0035】
カバー組成物をソリッドコアまたは糸巻きコアに被覆するには予め半殻状のハーフシェルを作製し、それでコアを包みプレス成形する。ハーフシェルの作製時には、材料が流動しかつできるだけ低温である60℃〜90℃で行ない、速やかに冷却することが望ましい。
【0036】
次に、コアをハーフシェルで包み、ボール表面にディンプル模様を形成するが、この際には90〜120℃で成形し、その後120℃以上の温度に昇温することにより、マイクロカプセルを破り封入されていた加硫促進剤が放出され、架橋反応が開始される。
【0037】
ボール表面にディンプル模様を形成する際の温度を90〜120℃に設定することで、加硫反応はまだ起こってないか、もしくは一部に起こっていたとしてもカバー材料流動性が損なわれるほどではない。したがって、カバー材料の流動性を担保することができ、糸ゴム層とカバー材の密着性を向上させることができるのである。そして、その後プレス温度を120℃以上に設定することで、金型内にて加硫反応を完了させることができる。加硫反応を行う加硫工程においては、加硫最高温度を80〜160に設定することが可能であり、好ましくは90〜140℃に設定することができ、さらに好ましくは90〜130℃に設定することが可能である。加硫工程における加硫最高温度が80℃よりも小さい場合にあっては、トランス1,4−ポリイソプレン(TPI)の流動性が良くなく、ボール表面にディンプル模様を形成する成形性が良好でなくなる場合があると考えられるからである。一方、加硫工程における加硫最高温度が160℃よりも大きい場合にあっては、コアとしての糸ゴム層の劣化が発生したり、トランス1,4−ポリイソプレン(TPI)の結晶性が減少し、カバーの硬度が減少する場合があるからである。
【0038】
加硫最高温度と熱可塑性樹脂の軟化点との関係において、加硫最高温度と熱可塑性樹脂の軟化点との差、すなわち(加硫最高温度)−(熱可塑性樹脂の軟化点)が5以上とすることが可能であり、好適には10以上とすることが可能である。加硫最高温度と熱可塑性樹脂の軟化点との差が少ないとマイクロカプセルの破壊が遅くなり加硫時間が長くなる場合が考えられるからである。一方、加硫最高温度と熱可塑性樹脂の軟化点との差が大きくなりすぎると、マイクロカプセルの被覆膜である熱可塑性樹脂の軟化点が相対的に高くなりすぎて、加硫工程において、コアとして糸巻コアを使用した場合、糸ゴムなどの劣化が発生することが考えられる。したがって、(加硫最高温度)−(熱可塑性樹脂の軟化点)が50以下とすることが可能であり、好適には30以下とすることが可能であり、より好ましくは20以下とすることができる。
【0039】
また、加硫促進剤の加硫開始温度と熱可塑性樹脂の軟化点との関係において、加硫促進剤の加硫開始温度と熱可塑性樹脂の軟化点との差、すなわち(加硫促進剤の加硫開始温度)−(熱可塑性樹脂の軟化点)が0以下とすることが可能である。(加硫促進剤の加硫開始温度)−(熱可塑性樹脂の軟化点)が0よりも大きいと、マイクロカプセルが破壊したとしても加硫反応が起こらない場合があり、その結果加硫時間が長くなる場合が考えられるからである。一方、(加硫促進剤の加硫開始温度)−(熱可塑性樹脂の軟化点)が相当にマイナスとなる場合にあっては、熱可塑性樹脂の軟化点が相対的に高くなりすぎて、加硫工程において加硫温度を高くする必要性が生じ、コアとして糸巻コアを使用した場合、糸ゴムなどの劣化が発生することが考えられる。
【0040】
また、加硫最高温度と加硫促進剤の加硫開始温度との関係において、加硫最高温度と加硫促進剤の加硫開始温度との差、すなわち(加硫最高温度)−(加硫促進剤の加硫開始温度)が10以上とすることが可能であり、好適には20以上とすることが可能である。加硫最高温度と加硫促進剤の加硫開始温度との差が少ないと加硫時間が長くなる場合が考えられるからである。一方、加硫最高温度と加硫促進剤の加硫開始温度との差が大きくなりすぎると、加硫工程において加硫温度が高くなりすぎて、コアとして糸巻コアを使用した場合、糸ゴムなどの劣化が発生することが考えられる。
【0041】
なお、本発明は、ソリッドまたは糸巻構造を有するコアと、トランス1,4−ポリイソプレン(TPI)を主成分とし、加硫促進剤を熱可塑性樹脂材料で被覆したマイクロカプセルを含有させて加硫開始温度を制御して加硫を行ったカバーと、で構成されるゴルフボールであるが、さらに、加硫剤を熱可塑性樹脂材料で被覆したマイクロカプセルも併用することもできる。
【0042】
【実施例】
(1) コアの作成
直径32mmの天然ゴム主体の加硫体に糸ゴムを延伸して巻きつけたいわゆる糸巻きコアを用いた。コアの外径は39mmとした。
【0043】
(2) カバー組成物
表1で示すカバー組成物No.1〜No.6のものを用いて次の工程によりゴルフボールを作成した。実施例、比較例はいずれもカバー厚みが1.9mmとなるようにした。
【0044】
【表1】
【0045】
カバー組成物No.1〜No.3のものは本発明に係る配合例であり、熱可塑性樹脂でマイクロカプセル内に加硫促進剤を封入させたものを配合している。カバー組成物No.1のものを実施例1とし、カバー組成物No.2のものを実施例2とし、カバー組成物No.3のものを実施例3とする。実施例1〜3において、加硫促進剤を被覆する熱可塑性樹脂はポリスチレンを使用した。そのポリスチレンの軟化点は100℃であった。また、加硫促進剤は、実施例1ではノクセラーTPを使用し、実施例2ではノクセラーZTCを使用し、実施例3ではノクセラーPを使用した。実施例1〜3において、熱可塑性樹脂と加硫促進剤との重量比は0.6:1.0とした。
【0046】
マイクロカプセルは下記のようにして製造した。すなわち、ポリスチレン5gを塩化メチレン50mlに溶解し、この溶液に20%加硫促進剤TP水溶液を加え、30分間攪拌し乳化を行った。乳化状態は(W/O)型エマルジョンであった。次に4%PVA水溶液1リットルを用意し、攪拌しながら前述の(W/O)型エマルジョンを添加し、〔(W/O)/W〕型複合エマルジョンとした。系の温度を40℃までに徐々に昇温させ、塩化メチレンを蒸発させた後、55℃で1時間攪拌し、壁質を硬化させてマイクロカプセルを得た。
【0047】
一方、カバー組成物No.4〜No.6のものは比較例に係る配合例であり、加硫促進剤はそのまま配合させている。カバー組成物No.4のものを比較例1とし、カバー組成物No.5のものを比較例2とし、カバー組成物No.6のものを比較例3とする。
【0048】
(3) ゴルフボールの製造工程
上記配合物をロール温度70℃で8分間混合して混合物を作製し、その混合物をシート状にした。シート状混合物を半殻作製用金型にて80℃、30秒間成形後、20℃にて急冷し形づけ、半殻状ハーフシェルを作製した。この工程を2回行い、半殻状ハーフシェルを2枚用意して、それら半殻状ハーフシェル2枚にてコアを包み、ディンプル付き金型にて、100℃にて2分間成形後、120℃にて5分間加硫を行い、冷却してからディンプル付きボールを得た。
【0049】
この際、カバー材料は糸ゴム層に十分浸透すると同時に、与えられた熱によりマイクロカプセルが破れ、マイクロカプセル内に封入されていた加硫促進剤がマイクロカプセル外に流出し始め、加硫反応が開始される。取り出したゴルフボールのカバー材料はこの時点で相当に加硫されたものであるが、十分加硫反応を行うために、室温あるいはオーブンでの後加硫反応工程を設けることも可能である。具体的な後加硫反応工程としては、40℃に設定したオーブン内に8時間放置し、加硫反応を完了させた。なお、後加硫反応工程での温度は、TPIの結晶融点以下である20〜50℃が好ましい。20℃よりも小さいと、加硫時間の進行が遅くなり、加硫完了までの時間が非常に長くなり、ゴルフボールの生産効率が比較的悪くなる場合がある。一方50℃よりも大きいと、TPIの結晶が融解した状態で加硫してしまい、加硫後冷却しても所望の結晶形態が形成されない場合があり、ゴルフボールの適切な硬さが得られない傾向がある。したがって、後加硫反応工程を設けた場合、後加硫を完了させるための温度条件は20〜50℃とすることが好適である。後加硫反応工程を設けた場合、後加硫に要する加硫時間は、加硫促進剤の配合量により異なるが、2〜72時間程度である。また、ボールを金型から取り出さずに金型全体を20〜50℃に保ち、加硫を完了させることも有効である。その際の加硫時間も、オーブンによる加硫と同じ加硫時間が好ましい。
【0050】
(4) 物性測定
カバー材料の物性は次の方法にて測定を行った。すなわち、キャピラリーレオメーターを用いて、温度100℃、せん断速度100(1/s)での測定値をpoise単位で表したものでカバー材料の粘度を測定した。測定結果を下記の表2に示す。用いたキャピラリーは直径1.5mmで、L/Dは20であった。なおLとはキャピラリーの長さをいい、Dとはキャピラリーの直径をいう。粘度は数値が小さいほど流動し易く、コアに十分浸透させることが可能となる。キャピラリーレオメーターはモンサント社のモンサントプロセサビリティテスターを使用した。
【0051】
ゴルフボールの物性は次の方法にて測定した。すなわち、作製したゴルフボールを初速度45m/sで鉄板に打ちつけ、カバーにひびがはいるまでの衝突回数を測定した。測定結果を下記の表2に示す。衝突回数が多いほどカバーの耐久性は良好となる。
【0052】
【表2】
【0053】
実施例1、2、3に係るカバー材料の粘度は、いずれも比較例1、2、3に係るカバー材料の粘度と比較して低く抑えられている。したがって、カバーの成形工程にて、カバー材料をコアに充分に浸透させることにより、カバーとコアとの密着性を向上させることができることが判明した。また、実施例1、2、3に係るゴルフボールのカバーの耐久性は、いずれも比較例1、2、3に係るゴルフボールのカバーの耐久性と比較して大きいものとなっている。すなわち、カバーの成形工程にて、カバーとコアとの密着性を向上させることができるから、結果としてゴルフボールの耐久性を向上させることが可能である。特にコアとして糸巻きコアを使用した場合、糸巻きコアにカバー材料を密着性良好に浸透させることができるのでこの効果は著しいものである。
【0054】
なお、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0055】
【発明の効果】
加硫促進剤を熱可塑性樹脂でカプセル内に封入してマイクロカプセルとすることにより、カバー材料が熱可塑性樹脂の融点以下にある場合にあっては、加硫促進剤がカプセル内に閉じ込められたままとすることができ、カバー材料の練り後から成形までの時間的制約を問題とすることは無くなった。また、成形段階において発生するの剰余物(ばり)は、加硫促進剤がマイクロカプセル化されたままであるため再利用することが可能であり、結果としてゴルフボールの製造コストの低減化を達成することができた。また、成形段階を熱可塑性樹脂の融点以下で行うことにより、カバー材料の流動性を向上させることができるから、カバー材料の糸ゴムへの浸透を向上させることができ、結果としてゴルフボールの耐久性を向上させることが可能となった。
Claims (3)
- ソリッドまたは糸巻構造を有するコアと、前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールにおいて、
前記カバーは、トランス1,4−ポリイソプレン(TPI)を主成分とし、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、メチルペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペコリン、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、もしくは、ブチルキサントゲン酸亜鉛のうち少なくとも一つを含む加硫促進剤を、軟化点が70〜150℃の熱可塑性樹脂材料で被覆したマイクロカプセルを含有させることにより、加硫開始温度を制御して加硫させた後に、トランス1,4−ポリイソプレン(TPI)の結晶融点以下で後加硫させたカバーである、ゴルフボール。 - 前記熱可塑性樹脂がポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エチレンアクリル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、ブテン樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂、AS樹脂から選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載のゴルフボール。
- ソリッドまたは糸巻構造を有するコアと、前記コアの周りを被覆するカバーとを有するゴルフボールの製造方法であって、
前記カバーは、トランス1,4−ポリイソプレンを主成分とし、かつ、加硫促進剤を軟化点が70〜150℃の熱可塑性樹脂で被覆したマイクロカプセルを含有するカバー用組成物よりなり、
前記カバー用組成物をハーフシェルに成形する工程と、
前記ハーフシェルにコアを金型内で配置し、前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の温度で加熱することでカバー表面にディンプル模様を形成する工程と、
前記熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度で加熱することで、マイクロカプセルより前記加硫促進剤を前記カバー用組成物中に放出させる工程と、
前記トランス1,4−ポリイソプレンの融点以下の温度で加熱し、前記カバー用組成物を後加硫する工程よりなる、ゴルフボールの製造方法。
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