JP4251925B2 - ゴルフボールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴルフボール、特に耐久性、および飛行性能を向上させたソリッドゴルフボールおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゴルフボールにおいては、芯体であるソリッドコア内部の硬度を適正範囲内とすることにより、打球感および飛行性能の改良を図っている。良好な打球感、すなわちソフトな打球感を付与するためには、特にソリッドコア中心部の硬度を低くすることにより、ソリッドコア中心硬度とソリッドコア表面硬度との差を大きくする方法が最も効果的に用いられる。また、ソリッドコアの硬度差を大きくすると打球時の変形が大きくなることから、打ち出しが上がり、スピン量が抑制されることにより、結果的に飛行性能が向上することが分かっている。
【0003】
たとえば特許文献1においては、ソリッドコア表面硬度を低下させることなくソリッドコア中心硬度を低くすることによって、耐久性および飛行性能を損なわずに打球感を向上させる方法として、ソリッドコアのゴム組成物におけるゴム成分100質量部に対して、硫黄を0.01〜0.5重量部、有機硫黄化合物を0.05〜5重量部添加する方法が提案されている。
【0004】
特許文献1の方法は、硫黄が形成する柔軟性に富む架橋構造によって、ソリッドコア中心硬度を低くし、飛行性能を確保することを目的とするものである。
【0005】
この方法では、ソリッドコア中心硬度とソリッドコア表面硬度との差を大きくすることは可能である。しかし、架橋密度を所望の範囲内とするためには架橋温度の制御を精密に行なう必要があり、目的のゴム組成物を容易に製造できるとは言えない。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−355341号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題を解決し、ソリッドコア中心硬度とソリッドコア表面硬度とを容易に所望の範囲内に制御し、耐久性を損なうことなく飛行性能を向上させたゴルフボールを得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ソリッドコアと、該ソリッドコアを被覆するカバーとを有するゴルフボールにおいて、ソリッドコアが、熱可塑性樹脂で硫黄を被覆したマイクロカプセルを含有するゴム組成物で構成されることを特徴とする。ゴム組成物において、マイクロカプセル化された硫黄の含有量は、好ましくはゴム成分100質量部に対して0.01〜10質量部である。また、ゴム組成物に含まれる硫黄のうち、マイクロカプセル化された硫黄の含有量は、好ましくは1〜100質量%である。さらに、熱可塑性樹脂の軟化点は、80〜270℃であることが好ましい。
【0009】
本発明はまた、ソリッドコアと、該ソリッドコアを被覆するカバーとを有するゴルフボールの製造方法であって、該ソリッドコアの製造は、
(1) 硫黄を熱可塑性樹脂で被覆したマイクロカプセルを、共架橋剤と有機過酸化物とを含むゴム組成物に混合する工程と、
(2) 前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の温度で前記ゴム組成物を加熱して架橋する工程と、
を含むことを特徴とするゴルフボールの製造方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明においては、硫黄を熱可塑性樹脂で被覆してマイクロカプセル化したものをゴム組成物に混合した後、ソリッドコアに成形し、カバーを被覆してゴルフボールを製造する。本発明は、コアとカバーとの2層からなるツーピースゴルフボールの他、コアとカバーとの間に中間層を有するマルチピースゴルフボール、ソリッドコアに糸ゴムを巻きつけたコアを有する糸巻きゴルフボール等に対しても採用できる。ソリッドコアは、1層構造のコアはもとより、2層以上の多層コアであってもよい。
【0011】
ソリッドコアのゴム組成物に用いるゴム成分としては、天然ゴム、合成ゴムいずれのジエン系ゴムを用いてもよいが、ポリブタジエンゴムを含むゴム成分が好ましく、さらにシス−1,4結合を40%以上、特に90%以上含有するハイシスポリブタジエンゴムを用いることが好ましい。また、ポリブタジエンゴムに、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)等のジエン系ゴムを混合することもできる。
【0012】
本発明において、ソリッドコアのゴム組成物には、熱可塑性樹脂で被覆し、マイクロカプセル化した硫黄を配合する。硫黄は架橋剤として配合され、ゴム分子主鎖間に架橋構造を形成する。硫黄により架橋することで、柔軟性に富み、比較的低いゴム硬度を有するゴム組成物を得ることができる。
【0013】
ゴルフボールの飛行性能を左右する反発性能を向上させるためには、ソリッドコア中心硬度がソリッドコア表面硬度より低く、さらにソリッドコア中心硬度とソリッドコア表面硬度との差が大きいことが望ましい。一方で、耐久性を確保するためには、ソリッドコア表面硬度を一定以上にすることが必要である。本発明においては、熱可塑性樹脂でマイクロカプセル化された硫黄をソリッドコアのゴム組成物中に含有させることによって、ソリッドコア成形時の温度分布を利用した架橋密度の制御を行ない、ソリッドコアの中心硬度と表面硬度とのバランスを調整する。
【0014】
マイクロカプセル化された硫黄は、マイクロカプセルの膜材である熱可塑性樹脂の軟化点(融解温度)以上でのみゴム組成物中に拡散して架橋剤として作用するため、ゴム組成物の温度を制御すれば架橋反応を制御できる。すなわち、たとえばソリッドコア中心部の温度が膜材の軟化点以上で、ソリッドコア表面部の温度が膜材の軟化点未満である場合、マイクロカプセル化された硫黄はソリッドコア中心部でのみ架橋剤として作用するため、ソリッドコア中心部においては、硫黄による架橋構造の含有量が、ソリッドコア表面部よりも多くなる。他の架橋剤を併用した場合、ソリッドコア表面部については、硫黄以外の架橋剤による比較的剛直な架橋構造によって一定以上の硬度が確保され、硫黄による架橋構造を多く含むソリッドコア中心部の硬度のみが所望の範囲内まで低下するため、耐久性と反発性能を両立するゴム組成物が得られる。
【0015】
マイクロカプセル化された硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.01〜10質量部、さらに0.05〜10質量部、さらに0.2〜10質量部、特に0.5〜10質量部であることが好ましい。含有量が0.01質量部以上であれば、ソリッドコア中心硬度とソリッドコア表面硬度との差を十分に得ることができ、かつ耐久性も良好である。また10質量部以下であれば、硫黄の加硫遅延が抑制され、ゴム組成物は十分な硬度を有するため、反発性能が良好である。
【0016】
マイクロカプセル化された硫黄は、配合される硫黄全体の1〜100質量%、さらに5〜100質量%、特に10〜100質量%であることが好ましい。硫黄全体のうちマイクロカプセル化されている割合が1質量%以上であれば、マイクロカプセル化による架橋密度の制御が効果的に行なわれるため好ましい。
【0017】
マイクロカプセル化されていない硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以下、さらに0.3質量部以下、特に0.1質量部以下であることが好ましい。マイクロカプセル化されていない硫黄の含有量が0.5質量部以下であれば、ソリッドコア硬度、特にソリッドコア表面硬度が軟らかくなりすぎることがなく、反発性能が良好となる。
【0018】
硫黄は、熱可塑性樹脂を膜材としてマイクロカプセル化される。膜材の軟化点は、80〜270℃、さらに100〜260℃、特に120〜250℃の温度範囲であることが好ましい。軟化点が80℃以上であれば、ゴム成分の混練の際にマイクロカプセルが破壊する危険性がない。一方軟化点が270℃以下であれば、ゴム組成物の通常の架橋温度において膜材が融解するため、ゴム成分の劣化を抑えつつ、硫黄をマイクロカプセルから放出させることができる。
【0019】
膜材として用いられる熱可塑性樹脂は、ゴム組成物の加硫温度に応じて所望の軟化点を有するものを選択し、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エチレンアクリル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、ブタジエン樹脂、ブテン樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂、AS樹脂などを使用することが可能である。
【0020】
硫黄を熱可塑性樹脂で被覆してマイクロカプセルを製造する方法としては、一般に知られるマイクロカプセル化の手法が採用される。たとえば、気中懸濁法では芯物質(粉末)を気流によって流動化し懸濁させて、懸濁粒子表面に熱可塑性樹脂の膜材を乳化させた乳液として噴霧する。そして懸濁化空気を加熱して溶媒を蒸発させてカプセル膜を形成させることができる。また噴霧乾燥法では、熱可塑性樹脂の膜材を乳化させた乳液に芯材を懸濁させて、その懸濁液を噴霧、微粒子化して瞬間的に乾燥させて、カプセル化膜を形成させることができる。さらに粉体どうしを乾式でカプセル化する方法(芯材粒子とそれより細かい膜材粒子を混合後、遠心力などにより衝撃を与え芯材の表面に膜剤を埋め込むようにしてカプセル化する方法)などが採用できる。マイクロカプセルの膜強度の観点からは粉体どうしを乾式でカプセル化する方法が好ましい。
【0021】
上記方法で得られたマイクロカプセルは、硫黄を70〜95重量%含有することが好ましい。硫黄の含有率が70質量%以上であれば、硫黄の放出量が十分であり、一方95質量%以下であれば、均一なマイクロカプセルの製造が可能である。
【0022】
本発明のソリッドコアの架橋反応は、たとえば140〜180℃、好ましくは150〜170℃の温度で10〜60分間行なわれる。ここで、加硫時の加熱温度(A)と、膜材である熱可塑性樹脂の軟化点(B)の関係は、(A−B)が−50〜0℃の範囲、さらに−40〜0℃、特に−10〜0℃の範囲に設定されることが好ましい。なお加熱温度とは、加硫時の金型の表面温度を指す。
【0023】
マイクロカプセル化されていない硫黄または他の架橋剤を併用した場合、ソリッドコア全体で架橋反応が進行し、発熱が生じる。このとき、ソリッドコア中心部では熱が蓄積して表面部よりも高温になるため、(A<B)であっても、ソリッドコア中心部においては(A>B)となる場合がある。この場合、ソリッドコア中心部においてはマイクロカプセルの膜材が融解して硫黄が放出されるため、架橋反応はさらに加速する。これにより、ソリッドコア中心部はソリッドコア表面部と比べて硫黄により形成される架橋構造の割合が多くなるため、ソリッドコア表面部よりも低い硬度を有する。なお、(A−B)が0℃の場合には、マイクロカプセルの膜材が徐々に融解して硫黄が放出される。架橋反応が開始すると、特にソリッドコア中心部では温度が上昇し、さらに多量の硫黄がマイクロカプセルから放出される。これにより、ソリッドコア中心部では硫黄により形成される架橋構造の割合が高くなるため、ソリッドコア表面部と比べて低い硬度を有することとなる。
【0024】
たとえば140〜180℃で架橋反応をさせる場合、膜材としては、軟化点が140〜180℃近傍であるポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。架橋反応は発熱反応である為、架橋温度は金型への加熱温度よりも高くなる。したがって、架橋温度はソリッドコア内部の実測値で管理することが好ましい。
【0025】
なお、熱可塑性樹脂の軟化点は、TMA(熱機械分析装置)を用いて測定する。具体的には、板状の熱可塑性樹脂サンプルに対して荷重をかけた測定針を載置し、5℃/min等の所定の昇温速度にて昇温させ、測定針がサンプル内に侵入する時点の温度を軟化点として求める。
【0026】
本発明におけるソリッドコアのゴム組成物には、共架橋剤として、たとえば炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩を用いることができる。α,β−不飽和カルボン酸としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられるが、特にゴム組成物の反発性能を高めるうえでアクリル酸、メタクリル酸が好適である。また上記金属塩として、亜鉛、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の金属塩が挙げられ、特に亜鉛塩が好ましい。
【0027】
共架橋剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して10〜50質量部、さらに10〜45質量部、特に15〜45質量部の範囲であることが好ましい。配合量が10質量部以上であればゴム組成物は十分な架橋密度を得ることができ、反発性能と耐久性が良好となる。また、配合量が50質量部以下であれば、ゴム分子の主鎖に共架橋剤がグラフト重合することによる反発性能の低下を防止できるため、良好なフィーリングが得られる。
【0028】
ソリッドコアのゴム組成物には、さらに有機硫黄化合物を配合してもよい。有機硫黄化合物としては、たとえば、テトラメチルチラウムジスルフィド、テトラブチルチラウムジスルフィド、ジペンタメチレンチラウムテトラスルフィド等のチラウム類、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、ジフェニルモノスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジフェニルポリスルフィド、ジペンタクロロジフェニルジスルフィド、モルフォリンジスルフィド、ジキシリルジスルフィド等のスルフィド類、ペンタクロロチオフェノール、4−t−ブチルチオフェノール、2−ベンズアミドチオフェノール等のチオフェノール類、チオ安息香酸等のチオカルボン酸類、ジチオ酸塩類、等を用いることができる。有機硫黄化合物の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5質量部、さらに0.2〜3質量部、特に0.2〜2質量部であることが好ましい。有機硫黄化合物を配合することにより、高反発性と衝撃の小さい良好な打球感の両立が可能となる。
【0029】
ゴム組成物には、さらに架橋開始剤として、有機過酸化物をゴム成分100質量部に対して0.1〜5質量部、さらに0.3〜3.5質量部、特に0.5〜2.5質量部配合することができる。有機過酸化物の好ましい具体例としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等が挙げられる。
【0030】
ソリッドコアのゴム組成物には、充填剤として、主に比重調整のために用いられる酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの金属塩、タングステン粉末あるいはモリブデン粉末などの高比重金属粉末等を配合できる。また必要に応じて老化防止剤等の添加剤を適宜配合してもよい。
【0031】
ソリッドコアは、初荷重98Nから終荷重1274Nをかけたときの変形量が2.0〜10.0mm、さらに3.0〜9.0mm、特に3.5〜7.0mmの範囲に調整されることが好ましい。変形量が2.0mm以上であれば、ソリッドコアが適度な柔軟性を持ち、良好な打球感が得られる。一方、変形量が10.0mm以下であれば一定以上の硬度を有するため、反発性能および耐久性が十分に得られる。
【0032】
ソリッドコアの外径は、10〜42mm、さらに20〜41mm、特に30〜40mmの範囲が好ましい。ソリッドコアの外径が10mm以上であればソリッドコアの性能をボール性能に反映させることができる。一方、ソリッドコアの外径が42mm以下であればカバーを十分な厚みで形成できるため、ボールの成形が容易であるとともに良好な耐久性が得られる。
【0033】
ソリッドコアの表面硬度は、JIS−C硬度で60〜90、特に65〜85の範囲であることが好ましい。ソリッドコア表面硬度が60以上であれば十分な硬度を有するため、反発性能および耐久性が良好である。また、ソリッドコア表面硬度が90以下であれば適度な柔軟性を有するため、打球感および耐久性が良好である。
【0034】
ソリッドコア中心硬度は、JIS−C硬度で55未満、さらに25〜55、特に25〜45の範囲であることが好ましい。ソリッドコア中心硬度が55未満であれば良好な打球感を得ることができる。
【0035】
(ソリッドコア表面硬度−ソリッドコア中心硬度)は、JIS−C硬度で25以上、さらに25〜50、特に30〜50の範囲であることが好ましい。(ソリッドコア表面硬度−ソリッドコア中心硬度)が25以上であれば、変形量を十分有するため、打球感および飛距離が良好である。
【0036】
なお、本発明のソリッドコアの体積はゴルフボール全体の30〜90%、さらに50〜85%、特に60〜80%の範囲とすることが好ましい。ソリッドコアの体積が30%以上であれば本発明の効果がボールの性能に十分に反映され、一方90%以下であればカバー厚みを十分確保でき、良好な耐久性が得られる。
【0037】
本発明のゴルフボールは、ソリッドコアにカバーを被覆して製造する。カバー組成物は、従来公知の各種の組成物を用いることができ、耐久性と反発性能を高める観点から、熱可塑性樹脂および/または熱可塑性エラストマーを主体とするポリマー成分を使用することが好ましい。カバー組成物としては、アイオノマー樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、トランス1,4−ポリイソプレン等を、単独または2種類以上の混合物として用いることができる。特に、アイオノマー樹脂をカバー組成物中に50重量%以上、好ましくは70重量%以上配合することにより耐久性と反発性能が向上する。
【0038】
ここで、トランス1,4−ポリイソプレンとは、ポリマー分子中、トランス構造が60%以上含まれるものをいう。トランス構造が60%以上であれば、結晶部分が多く、一定以上の軟化点を有するため、カバーとしての基本特性を満足できる。
【0039】
アイオノマー樹脂としては、たとえば、α−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和して得られるもの、α−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数2〜22のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和して得られるものなどが挙げられる。上記のα−オレフィンとしては、たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどが用いられ、特にエチレンが好ましく、炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などが用いられ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。また、炭素数2〜22のα,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステルなどが用いられ、特にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましい。
【0040】
上記α−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸との共重合体またはα−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数2〜22のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、たとえば、ナトリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられる。
【0041】
カバーには、上記以外の成分として、繊維強化ゴム、繊維強化樹脂、比重調整剤、金属粉、金属酸化物、色粉、比重調整剤、蛍光増白剤、滑剤などを適宜混合することが可能である。
【0042】
カバー厚みは、0.3〜6.0mm、さらに0.4〜3.0mm、特に0.5〜1.5mmの範囲が好ましい。カバー厚みが0.3mm以上であれば、カバー強度、耐久性が十分得られ、一方6.0mm以下であれば、カバー成分のボール全体における体積分率が大きくなり過ぎず、ボールの反発性能が良好であるとともに、本発明のソリッドコアの性能をボール性能に十分反映させることができる。なおカバーは1層でも2層以上でもよい。
【0043】
上記の材料を用い、通常用いられる方法でゴルフボールを製造することができる。たとえば、マイクロカプセル化された有機過酸化物を含むゴム組成物を、ロール、ニーダー、バンバリー等によって混練した後、金型を用い、加圧下で120℃〜180℃、好ましくは150℃〜170℃で10分〜60分間加硫してソリッドコアを作製する。このとき、ソリッドコア中心部とソリッドコア表面部の温度差を大きくするためには、配合成分の特性上許容される範囲で、なるべく高温で加硫し、架橋反応を活発に行なわせることが望ましい。たとえば、架橋開始剤にジクミルパーオキサイドを使用する場合には、加硫温度を160℃以上とすることが好ましい。
【0044】
ソリッドコアとカバーとの密着をよくするため、得られたソリッドコアの表面に接着剤を塗布したり、表面を粗面化してもよい。またソリッドコアの外側に、たとえば射出成形等の方法でさらに中間層を形成させてもよい。
【0045】
次に、カバー組成物が成形されたハーフシェルの2枚を用いてソリッドコアを包み、130〜170℃で1〜5分間、加圧成形する方法や、混練したカバー組成物を、温度200〜250℃、圧力3〜7MPa等の条件で直接ソリッドコア上に射出成形する方法等によって、ソリッドコアをカバーで被覆する。最後に、ペイント処理等を適宜行ない、ゴルフボールを完成させる。
【0046】
【実施例】
(1) マイクロカプセルの製造
ポリプロピレン(軟化点160℃)5gをトリクロロベンゼン50mlに溶解した溶液に、硫黄の20wt%水溶液を100g加え、30分間攪拌し乳化を行なった。乳化状態は(W/O)型エマルジョンであった。得られたエマルジョンを、PVAの4wt%水溶液の1リットル中に攪拌しながら添加し、〔(W/O)/W〕型複合エマルジョンとした。系の温度を40℃まで徐々に昇温させ、トリクロロベンゼンを蒸発させた後、55℃で1時間攪拌し、膜材を硬化させてマイクロカプセルを得た。マイクロカプセル中の硫黄の含有量は80質量%であった。
【0047】
(2) ソリッドコアの作製
表1に示すゴム組成物をニーダーおよびロールを用いて混練し、160℃で20分間、加熱加圧成形し、表1に示すコア径のソリッドコアを作製した。混練時はゴム組成物の温度が100℃を超えないように温度を制御した。
【0048】
【表1】
【0049】
注1:ポリブタジエンゴムは、JSR社製の「BR−11」であり、シス−1,4結合の含有量は96%である。
注2:アクリル酸亜鉛は、日本触媒社製の「ZNDA−90S」である。
注3:酸化亜鉛は、東邦亜鉛社製である。
注4:硫酸バリウムは、堺化学工業社製の「バリコ♯100」である。
注5:有機硫黄化合物は、住友精化社製のジフェニルジスルフィドである。
注6:ジクミルパーオキサイドは、日本油脂社製の「パークミルD」である。
注7:硫黄は、鶴見化学工業社製の「金華印微粉硫黄」である。
【0050】
(3) カバー組成物およびゴルフボールの製造
得られたソリッドコアに、表2に示すカバー組成物を、射出成形によって表1の厚みで被覆し、その上にウレタン製のクリアペイントを塗布した。
【0051】
【表2】
【0052】
注8:「ハイミラン1605」は、三井デュポンポリケミカル社製のナトリウム中和アイオノマーである。
注9:「ハイミラン1706」は、三井デュポンポリケミカル社製の亜鉛中和アイオノマーである。
注10:「ラバロンSR04」は、三菱化学社製のSEBSのポリマーアロイである。
注11:酸化チタンは、石原産業社製の「A−220」である。
【0053】
(4) ソリッドコア硬度
JIS−K6301に準拠し、スプリング式硬度計C型を用いて、ソリッドコア中心硬度およびソリッドコア表面硬度を測定した。なおソリッドコア中心硬度は、ソリッドコアを2分割して半球とし、半球のカット面で測定した。結果を表1に示す。
【0054】
(5) カバー組成物のJIS−C硬度
JIS−K6301に準拠し、スプリング式硬度計C型を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0055】
(6) カバー硬度
カバー用組成物から作製した厚み約2mmの熱プレス成形シートを23℃で2週間保存後、成形シートを3枚重ね、JIS−K6301に準拠し、スプリング式硬度計C型を用いてカバー硬度を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
(7) ソリッドコア圧縮変形量
初荷重98Nから終荷重1274Nを負荷したときのソリッドコアの変形量を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
(8) ボール反発係数
重さ200gのアルミニウム製円柱を初速度40m/sで打ち出し、ゴルフボールを打撃した際のゴルフボールの速度から計算した。測定は各実施例および各比較例につき12個ずつ行ない、その平均値を算出し、比較例1を1.00とした相対値で示した。結果を表1に示す。
【0058】
(9) ボール耐久性
ツルーテンパー社製のスイングロボットにメタルヘッド製W♯1ドライバーを取り付け、ヘッドスピードを45m/sに設定し、衝突版に衝突させた。同一ボールを繰返し打撃してゴルフボールが破壊するまでの回数を測定し、比較例1を100とした相対値で示した。結果を表1に示す。
【0059】
(10) 飛距離
ツルーテンパー社製のスイングロボットにメタルヘッド製ウッド(XXIO R 11度)1番クラブ(ドライバー)を取り付け、ゴルフボールをヘッドスピード40m/sで打撃し、落下後停止した位置までを飛距離として測定した。測定は各実施例および各比較例につき12個ずつ行ない、その平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0060】
マイクロカプセル化された硫黄を配合した実施例1〜4は、マイクロカプセル化されていない硫黄のみを含む比較例1、比較例2に対して、反発係数を保ちつつ耐久性、飛距離が大幅に改善されている。これらの結果より、本発明のゴルフボールは、十分な耐久性を有しながら、反発性能および飛距離にも優れる事が分かる。
【0061】
なお、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0062】
【発明の効果】
本発明においては、硫黄の一部または全部を熱可塑性樹脂からなる膜材でカプセル内に封入し、ゴム組成物中に均一に分散させる。架橋反応時の発熱によってソリッドコア中心部の温度が膜材の軟化点以上となり、ソリッドコア表面部の温度が膜材の軟化点未満に保たれた場合、マイクロカプセル化された硫黄はボール中心部でのみカプセル外へ放出されて架橋反応に寄与する。一方マイクロカプセル化されていない硫黄はソリッドコア全体で架橋反応に寄与する。硫黄によって架橋されたソリッドコアでは、ソリッドコア中心部がソリッドコア表面部よりも低い硬度を有するが、本発明では、硫黄がマイクロカプセル化されていない場合と比べ、ソリッドコア中心部とソリッドコア表面部との硬度差が大きくなる。すなわち、ソリッドコア表面硬度を低下させずにソリッドコア中心硬度を低下させることによって、耐久性を保ったまま、良好な反発性能および飛行性能を実現したゴルフボールの提供が可能となる。
Claims (1)
- ソリッドコアと、該ソリッドコアを被覆するカバーとを有するゴルフボールの製造方法であって、該ソリッドコアの製造は、
(1) 硫黄を熱可塑性樹脂で被覆したマイクロカプセルであって、前記マイクロカプセル化された硫黄の含有量が、ゴム成分100質量部に対して0.2〜0.8質量部であり、かつ、ゴム組成物に含まれる硫黄のうち、前記マイクロカプセル化された硫黄の含有量が70.6〜100質量%であるものを、共架橋剤と有機過酸化物とを含むゴム組成物に混合する工程と、
(2) 前記熱可塑性樹脂の軟化点は120〜250℃の温度範囲であり、前記軟化点より0〜50℃低い温度で前記ゴム組成物を加熱して架橋する工程と、
を含むゴルフボールの製造方法。
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