JP2002058756A - ゴルフボールおよびその製造方法 - Google Patents

ゴルフボールおよびその製造方法

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JP2002058756A
JP2002058756A JP2000251899A JP2000251899A JP2002058756A JP 2002058756 A JP2002058756 A JP 2002058756A JP 2000251899 A JP2000251899 A JP 2000251899A JP 2000251899 A JP2000251899 A JP 2000251899A JP 2002058756 A JP2002058756 A JP 2002058756A
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vulcanization
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golf ball
zinc
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JP2000251899A
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Kohei Takemura
光平 竹村
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Sumitomo Rubber Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Rubber Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ゴム練りを行ってからカバーの成形を行うま
での時間的制約を緩和させ、カバーの成形時に発生した
剰余物の再利用を図るとともに、カバー成形工程中にお
いてカバー材料をコアに十分に浸透させることでゴルフ
ボールの耐久性を向上させる。 【解決手段】 ソリッドまたは糸巻構造を有するコア
と、前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボール
において、前記カバーは、トランス1,4−ポリイソプ
レン(TPI)を主成分とするカバー用組成物に、硫黄
を熱可塑性樹脂材料で被覆したマイクロカプセルを含有
させることにより、加硫開始温度を制御して加硫させた
カバーである、ゴルフボール。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スピン性能に優れ
たゴルフボール、およびその製造方法に関するものであ
り、さらに詳しくはラフからのショットであってもフラ
イヤーになりにくく、かつ高反発弾性を有するゴルフボ
ールおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】芝生からのショットでは、芝がクラブと
ボールとの間に噛み込み、ボールのバックスピン量が減
少してボールが高くあがってしまう現象(フライヤー)
が起こることがあり、特にアプローチショットのコント
ロール性が劣ることがしばしばある。この現象はソリッ
ドゴルフボール、糸巻きゴルフボールに関わらず、いず
れでも起こり、ゴルフプレーヤーの悩みの一つでもあ
る。特に、アイオノマーカバー樹脂のゴルフボールで
は、比較的弾性率が高く反発性能に優れている反面、ス
ピンがかかりにくくコントロール性が劣るという欠点が
あり、上述のアプローチショットのコントロール性が劣
る点の重要な問題である。
【0003】このような欠点を有しにくい材料としてト
ランス1,4−ポリイソプレン(TPI)いわゆるバラ
タがあり、このバラタを使用したバラタカバーを用いた
ゴルフボールはフィーリングやコントロール性において
優れた性能を有する。これはポリマーの結晶部分と架橋
ゴム部分とを併せ持つために適度な硬さと高スピン性能
が達成されていることによると考えられ、この優れたフ
ィーリング性およびコントロール性により、バラタカバ
ーを用いたゴルフボールは上級者に好まれている。
【0004】このバラタは、トランス1,4−ポリイソ
プレンの結晶融点(50〜60℃:DSC測定による)
以上の温度で架橋を行なうと、架橋後に冷却しても結晶
部分の形成が行なわれず、適度な硬さを得ることができ
なくなってしまう。
【0005】そのため、バラタは特殊な雰囲気下で長時
間にわたる加硫を行う必要があった。たとえば、バラタ
に、有機アミン、酸化亜鉛および硫黄を配合した組成物
を弾性芯体上に球形カバーとして被着成形する段階と、
成形された球体を適量のキサンテート系加硫加硫促進剤
と硫黄とを有機溶剤中に溶解して調整された溶液に、所
定時間浸漬し、球形カバーの硫黄架橋を行う段階とから
なる架橋反応技術が特開昭54−99177号公報など
に開示されているが、溶液中への浸漬を必要とするため
後処理に困難性を有する場合がありその結果架橋工程上
問題が多い。
【0006】また、特開平6−54928などには不飽
和脂肪酸の金属塩と架橋開始剤でバラタを架橋する製法
が開示されているが、高温長時間の加硫が必要であり、
高温で長時間加硫を行った結果、糸巻きコアの糸ゴムが
熱劣化し、ゴルフボールの反発性能が低下するという問
題があり、また結晶生成が行なわれないため適度な硬度
を得ることができない。
【0007】さらに、カバーの成形工程の途中において
加硫が開始される場合があり、加硫の進行に伴いカバー
材料の粘度が上昇することがあった。カバーの成形工程
の途中にてカバー材料の粘度が上昇することにより、カ
バー材料が糸巻きコアに浸透しにくくなり、そのため、
カバーと糸ゴム層との密着が悪くなり、結果としてゴル
フボールの耐久性が低下する問題があった。
【0008】そこで、室温のような低温から反応開始す
る低温加硫促進剤すなわちジチオカルバミン酸塩類およ
び/またはザンテート酸塩類よりなる加硫促進剤を用い
たバラタの加硫技術が提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
発明の構成によると、架橋が進行した結果、バラタを加
硫した後に発生するの剰余物(ばり)の再利用が比較的
困難である場合があった。また、ゴム練りを行ってから
成形までの時間が比較的制限されるという問題があっ
た。
【0010】本発明は上述の課題を解決するものであ
り、ゴム練りを行ってからカバーの成形を行うまでの時
間的制約を比較的緩和させ、カバーの成形時に発生した
剰余物の再利用を図りゴルフボールの製造コスト軽減を
図るとともに、カバー成形工程中においてカバー材料を
コアに十分に浸透させることでゴルフボールの耐久性を
向上させることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係るゴルフボー
ルは、請求項1に記載のように、ソリッドまたは糸巻構
造を有するコアと、前記コアを被覆するカバーとを有す
るゴルフボールにおいて、前記カバーは、トランス1,
4−ポリイソプレン(TPI)を主成分とするカバー用
組成物に、硫黄を熱可塑性樹脂材料で被覆したマイクロ
カプセルを含有させることにより、加硫開始温度を制御
して加硫させたカバーである、ゴルフボールである。
【0012】また、本発明に係るゴルフボールは、請求
項2に記載のように、請求項1記載の発明において、前
記カバー用組成物に、加硫開始温度が120℃以下であ
る加硫促進剤を含有するゴルフボールである。
【0013】また、本発明に係るゴルフボールは、請求
項3に記載のように、請求項2記載の発明において、前
記加硫促進剤は、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウ
ム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−n−
ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオ
カルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、
ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジアミルジチ
オカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜
鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、エチ
ルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、メチルペンタメチ
レンジチオカルバミン酸ピペコリン、イソプロピルキサ
ントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜
鉛、もしくは、ブチルキサントゲン酸亜鉛のうち少なく
とも一つを含むものであるゴルフボールである。
【0014】また、本発明に係るゴルフボールの製造方
法は、請求項4に記載のように、ソリッドまたは糸巻構
造を有するコアと、前記コアの周りを被覆するカバーと
を有するゴルフボールの製造方法であって、前記カバー
は、トランス1,4−ポリイソプレンを主成分とし、硫
黄を熱可塑性樹脂材料で被覆したマイクロカプセルを含
有するカバー用組成物よりなり、前記カバー用組成物を
ハーフシェルに成形する工程と、ハーフシェルにコアを
金型内で配置し、カバー表面にディンプル模様を形成す
る工程と、トランス1,4−ポリイソプレンの融点以下
の温度で加熱し、前記マイクロカプセルより硫黄をカバ
ー用組成物中に放出させ、前記カバー用組成物を加硫す
る工程よりなる、ゴルフボールの製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明に係るゴルフボールは、ソ
リッドまたは糸巻構造を有するコアと、トランス1,4
−ポリイソプレン(TPI)を主成分とし、硫黄を熱可
塑性樹脂材料で被覆したマイクロカプセルを含有させて
加硫開始温度を制御して加硫を行ったカバーと、で構成
されるゴルフボールである。
【0016】本発明者らは、熱可塑性樹脂でカプセル内
に封入した硫黄を用いることで、所望の温度で加硫反応
を起こし、室温では架橋反応を行わないカバー材料を得
ることができた。
【0017】硫黄を熱可塑性樹脂でカプセル内に封入し
てマイクロカプセルとすることにより、カバー材料が熱
可塑性樹脂の融点以下にある場合にあっては、硫黄がカ
プセル内に閉じ込められたままである。したがって、練
り、保管時において、カバー材料が熱可塑性樹脂の融点
以下にある場合、カバー材料は架橋反応しないものの、
成形後に所望の温度にした場合は、カプセルが融解し、
硫黄がカプセル外に流出して加硫反応を開始するのであ
る。
【0018】カバー材料が熱可塑性樹脂の融点以下にあ
る場合、カバー材料は架橋反応しないのであるから、従
来の問題であった練り後から成形までの時間制約を問題
とすることは無くなった。また、成形段階を熱可塑性樹
脂の融点以下で行うことにより流動性を向上させること
ができるから、カバー材料の糸ゴムへの浸透を向上させ
ることができ、結果としてゴルフボールの耐久性を向上
させることが可能となるのである。その後、金型内で温
度を上昇することでマイクロカプセルが発破し、マイク
ロカプセル外に硫黄が流出し、加硫反応が開始されるの
である。
【0019】マイクロカプセル内に封入させる硫黄は、
0.1〜3重量部配合することが可能であり、より好ま
しくは0.2〜2.0重量部配合することが可能であ
る。硫黄量が上記範囲より少ない場合は加硫が十分に進
行しないため、ゴルフボールカバーとして十分な強度が
得られない。また、上記範囲より多い場合は、ロールや
ニーダーなどでの材料混合中に加硫が起こってしまい、
いわゆるゴム焼けが発生する。また、成形後の製品表面
にそれらが染み出てくるブルーム現象が起こる場合があ
る。
【0020】硫黄を熱可塑性樹脂の皮膜で被覆してマイ
クロカプセルを製造する方法としては、一般に知られる
マイクロカプセル化の手法が採択され、たとえば、気中
懸濁法(芯物質−粉末−を気流によって流動化し懸濁さ
せて、懸濁粒子表面に膜材を乳化させた乳液を噴霧す
る。懸濁化空気を加熱して溶媒を蒸発させてカプセル膜
を形成させる方法)、噴霧乾燥法(膜材を乳化させた乳
液に芯材を懸濁させて、その懸濁液を噴霧、微粒子化し
て瞬間的に乾燥させて、カプセル化膜を形成させる方
法)、および粉体どうしを乾式でカプセル化する方法
(芯材粒子とそれより細かい膜材粒子を混合後、遠心力
などにより衝撃を与え芯材の表面に膜剤を埋め込むよう
にしてカプセル化する方法)などがあるが、形成された
膜の強度を考えると粉体どうしを乾式でカプセル化する
方法が好適である。
【0021】加硫促進剤は加硫開始温度が120℃以下
であるものを使用することが可能であり、好適には、加
硫促進剤は加硫開始温度が20〜120℃であるもの、
より好ましくは、加硫促進剤は加硫開始温度が30〜1
10℃であるものを使用することができる。加硫促進剤
の加硫開始温度が20℃よりも小さい場合にあっては、
保管時などにおいて不要な架橋反応を起こす可能性があ
り、加硫促進剤の加硫開始温度が120℃よりも大きい
場合にあっては、加硫温度が高くなりすぎて、たとえば
コアとして糸巻構造を有するコアを用いた場合、糸ゴム
層を劣化させる可能性があるからである。
【0022】加硫促進剤としては、100℃程度でも十
分反応するジチオカルバミン酸塩類もしくはザンテート
酸塩類などを好適に使用することが可能である。ジチオ
カルバミン酸塩類としては、ジメチルジチオカルバミン
酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウ
ム、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ
メチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバ
ミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、
ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカ
ルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン
酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、メチ
ルペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペコリン、ブチ
ルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオ
カルバミン酸亜鉛、ヘキサデシル(またはオクタデシル)
イソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレン
ジチオカルバミン酸ピペリジン、ジメチルジチオカルバ
ミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジ
アミルジチオカルバミン酸カドミウムなどを使用するこ
とができる。ザンテート酸塩類としては、イソプロピル
キサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン
酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛などを使用すること
ができる。
【0023】さらに、CBS(N−シクロヘキシル−2
−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−
tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミ
ド)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジル
スルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾ
チアジルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−
2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェ
ンアミド系化合物加硫促進剤や、MBT(2−メルカプ
トベンゾチアゾール)、MBTS(ジベンゾチアジルジ
スルフィド)、2−メルカプトベンゾチアゾールのナト
リウム塩、亜鉛塩、銅塩、シクロヘキシルアミン塩、2
−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチア
ゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチ
オ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール系加硫促進剤
や、TMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)、
テトラエチルチウラムジスルフィド、TMTM(テトラ
メチルチウラムモノスルフィド)、ジペンタメチレンチ
ウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノス
ルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィ
ド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テト
ラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラ
ムテトラスルフィドなどのチウラム系加硫促進剤や、チ
アカルバミド、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、
トリメチルチオ尿素、ジオルトトリルチオ尿素などのチ
オ尿素系加硫促進剤や、ジフェニルグアニジン、DOT
G(ジオルトトリルグアニジン)、トリフェニルグアニ
ジン、オルトトリルビグアニド、ジフェニルグアニジン
フタレートなどのグアニジン系加硫促進剤や、アルデヒ
ド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系加硫促進
剤や、アセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアル
デヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、
アセトアルデヒド−アンモニア反応物などのアルデヒド
−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系加硫促進剤
や、2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系
加硫促進剤などを使用することが可能であり、さらに上
述したジチオカルバミン酸塩類もしくはザンテート酸塩
類と混合させて使用することも可能である。
【0024】カバー用組成物中には加硫促進剤量を0.
1〜3重量部配合することが可能であり、より好ましく
は0.2〜2.0重量部配合することが可能である。加
硫促進剤量が上記範囲より少ない場合は加硫が不十分と
なり、ゴルフボールカバーとしての強度もしくは耐久性
が得られない。また、上記範囲より多い場合は、ロール
やニーダーなどでの材料混合中に加硫が起こってしま
い、いわゆるゴム焼けが発生する。また、成形後の製品
表面にそれらが染み出てくるブルーム現象が起こる場合
がある。
【0025】前記カバー用組成物はトランス1,4−ポ
リイソプレンを主成分とする。ここでトランス1,4−
ポリイソプレンとはポリマー分子中、トランス構造が6
0以上含まれるものをいう。トランス構造が60未満の
ものでは結晶部分が少なく、したがって融点が低すぎて
カバーとしての基本特性が満足できない。次にカバー材
として混合して用いられるその他のポリマーは一部結晶
構造を有する樹脂、ゴム、あるいは高反発材料が好まし
く、たとえばハイスチレンレジン、ハイシス−ポリブタ
ジエン、アイオノマー樹脂などである。これらのポリマ
ーはカバー材のポリマー成分に対して50重量%以下、
好ましくは25重量%以下の範囲で配合することができ
る。トランス1,4−ポリイソプレンの含量が少ないと
高スピン性能およびコントロール性能が低下する。な
お、アイオノマー樹脂としては、たとえば、α−オレフ
ィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸との共
重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオ
ンで中和して得られるものや、α−オレフィンと炭素数
3〜8のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数2〜22の
α,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中
のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和
して得られるものなどが挙げられる。上記のα−オレフ
ィンとしては、たとえば、エチレン、プロピレン、1−
ブテン、1−ペンテンなどが用いられ、特にエチレンが
好ましく、炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸と
しては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル
酸、マレイン酸、クロトン酸などが用いられ、特にアク
リル酸、メタクリル酸が好ましい。また、炭素数2〜2
2の不飽和カルボン酸エステルとしては、たとえば、ア
クリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などの
メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエ
ステルなどが用いられ、特にアクリル酸エステル、メタ
クリル酸エステルが好ましい。そして、上記α−オレフ
ィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸との共
重合体またはα−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−
不飽和カルボン酸と炭素数2〜22のα,β−不飽和カ
ルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基
の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、たと
えば、ナトリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオ
ン、マグネシウムイオン、カリウムイオンなどが挙げら
れる。
【0026】ここでカバーの厚さは0.5〜4.0m
m、特に0.8〜3.0mmの範囲が好ましい。0.5
mm未満ではカバー強度、耐久性が低下し、一方4.0
mmを超えるとカバー成分のボール全体における体積分
率が大きくなってボールの反発性能が低下するからであ
る。
【0027】本発明で採用されるカバー組成物の配合例
としては、トランス1,4−ポリイソプレン以外の樹脂
および/またはゴムを用いる場合、たとえば、トランス
1,4−ポリイソプレン100重量部に対して天然ゴム
5〜20重量部、ハイスチレンレジン5〜20重量部、
ジエンゴム0〜20重量部、亜鉛華1〜10重量部、酸
化チタン1〜20重量部で構成することができる。その
他にも、繊維強化ゴム、繊維強化樹脂、無機単結晶成
分、比重調整剤、金属粉、金属酸化物などを適宜混合で
きる。
【0028】カバー用組成物には粘着付与剤を配合させ
ることが可能である。使用される粘着付与剤はクマロン
・インデン系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン誘導体、フ
ェノール・ホルムアルデヒト系樹脂、アルキルフェノー
ル系樹脂、石油系樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド系
樹脂、ポリブテンなどのオリゴマー、液状ポリイソプレ
ンなどの液状ゴムなどであるが、特にテルペン樹脂およ
びロジンエステル系が好適である。
【0029】また、カバー用組成物には、色粉、比重調
整剤、蛍光増はく剤、滑剤などを適宜混合することが可
能である。なお滑剤としては、ステアリン酸バリウム、
ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリ
ン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステア
リン酸亜鉛・ステアリン酸バリウム複合体、ステアリン
酸亜鉛・ステアリン酸カルシウム複合体などの単体もし
くはそれらの混合物を使用することができる。
【0030】なお、加硫剤としては硫黄のみならず有機
過酸化物を使用することも可能である。すなわち、マイ
クロカプセル内に硫黄とともに有機過酸化物を含有させ
ること可能である。有機過酸化物としては、たとえば、
ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、
ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパー
オキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメ
ンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5
−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメ
チル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキ
シ)ヘキシン−3あるいは1,3−ビス(t−ブチルパ
ーオキシプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキ
シ−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルパーオキシベ
ンゼン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、
1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリ
メチルシロキサン、n−ブチル−4,4−ジ−t−ブチ
ルパーオキシバレレートなどを使用することができる。
これらの中で、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパ
ーオキシベンゼンおよびジ−t−ブチルパーオキシ−ジ
イソプロピルベンゼンが好ましい。
【0031】硫黄をマイクロカプセル化して封入するの
に使用される熱可塑性樹脂は、その軟化点あるいは融点
が所望の温度範囲にあるものを使用することができる。
なお、熱可塑性樹脂の軟化点とは、熱可塑性樹脂の形状
は保たれているが圧力をかけると変形する温度をいう。
また、熱可塑性樹脂の融点とは、熱可塑性樹脂が液体に
なる温度をいう。100℃近傍での加硫反応を望む場合
にあっては、たとえば、軟化点が100℃近傍であるポ
リスチレンや、融点が100℃近傍でのポリエチレンな
どを使用することが可能である。熱可塑性樹脂の軟化点
は70〜150℃のものを使用することが可能であり、
好ましくは80〜130℃のものを使用することがで
き、さらに好ましくは80〜120℃のものを使用する
ことができる。熱可塑性樹脂の軟化点が70℃よりも小
さいものを使用するとカバー材料を混練り時において、
マイクロカプセルの皮膜が破れる可能性があるからであ
る。一方、熱可塑性樹脂の軟化点が150℃よりも大き
いものを使用すると、加硫温度が高温となりすぎて、加
硫時にコアとしての糸ゴム層を劣化させる場合があるか
らである。なお、熱可塑性樹脂の軟化点は分析装置TM
Aを使用して測定を行う。具体的な軟化点の測定方法
は、板状の熱可塑性樹脂サンプルに対して荷重をかけた
測定針を載置し、5℃/minなどの所定の昇温速度に
て昇温させ、何℃にて測定針がサンプル内に侵入するか
を測定する。
【0032】硫黄をマイクロカプセル化して封入するの
に使用される熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリス
チレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタ
ン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エチレンアクリル
共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹
脂、ブタジエン樹脂、ブテン樹脂、ポリカーボネート、
ABS樹脂、AS樹脂などを使用することが可能であ
る。なお、塩化ビニル樹脂などのように塩素系の樹脂を
使用する場合にあっては、有機溶剤に可溶でありしかも
意図する温度域付近に軟化点を有するものが好適であ
る。
【0033】カバーの主成分はトランス1,4−ポリイ
ソプレン(TPI)であるから、硫黄を被覆する熱可塑
性樹脂として、ポリスチレン、ポリエチレン、アイオノ
マーなどを使用する場合にあっては、その熱可塑性樹脂
は補強効果を有することになる。したがって、熱可塑性
樹脂として、ポリスチレン、ポリエチレン、アイオノマ
ーなどを使用する場合、カバーの強度を向上させること
が可能であり、ゴルフボールのカバーに要求される耐カ
ット性能を向上させることができるのである。
【0034】次に本発明のゴルフボールの製造方法は次
の工程による。まず、カバー用組成物の混練は、ロール
やニーダーによって行なうことができる。このときの材
料温度は50℃〜80℃が適している。50℃以下では
トランス1,4−ポリイソプレンが融解しないため、他
の材料を混合することができない。また80℃以上で
は、せん断によってマイクロカプセルが発破する可能性
があり、マイクロカプセルが発破した場合にあっては加
硫反応が開始してしまい、ゴム焼けが発生する場合があ
る。なお、混合時間はできるだけ短い方がよい。具体的
には1分〜20分が好適であるが、硫黄や加硫促進剤の
配合量により異なるためこの限りではない。上記時間よ
り短い混合時間であると、配合剤のカバー組成物中での
分散が悪くなる。また、上記時間より長い場合はゴム焼
けが発生してしまう。
【0035】上述したカバー組成物は、ソリッドコア、
糸巻きコアのいずれの場合にも被覆することはできる
が、糸巻きコアを用いた際に有効な効果が現れる。ソリ
ッドコアとしては、1層構造のコアはもとより、2層以
上の多層コアであってもよい。糸巻きコアとしては、セ
ンターとそれに巻き付けた糸ゴムとからなるが、センタ
ーとしては液系、ゴム系のいずれも用いることができ
る。ソリッドコアを構成するゴム組成物の配合組成は特
に限定せず、従来から用いられているソリッドコア用の
ゴム組成物を用いることができる。具体的には、基材ゴ
ム、不飽和カルボン酸の金属塩、有機過酸化物、充填剤
などを含有する。基材ゴムとしては、天然ゴム、合成ゴ
ムいずれのジエン系ゴムを用いてもよいが、好ましくは
シス−1,4結合を40%以上、特に80%以上含有す
るハイシスポリブタジエンゴムが用いることが好まし
い。また、必要に応じてハイシスポリブタジエンゴム
に、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、
スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピ
レン・ジエン三元共重合体(EPDM)などのジエン系
ゴムを混合して用いてもよい。上記有機過酸化物は主に
架橋開始剤として配合され、例えばジクミルパーオキサ
イドや1−ブチルパーオキサイドなどが用いられ、これ
らのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられ
る。また有機過酸化物の配合量は、基材ゴム100重量
部に対して0.3〜2.0重量部であることが好まし
い。上記不飽和カルボン酸の金属塩は共架橋剤として配
合され、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸などの炭
素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸のカリウムなど
の1価の金属;亜鉛、マグネシウムなどの2価の金属と
の塩が挙げられ、これらのうち高い反発性を付与するア
クリル酸亜鉛が好ましい。不飽和カルボン酸金属塩の配
合量は、基材ゴム100重量部に対して18〜35重量
部が好ましい。上記充填剤としては、主として比重調整
のために用いられる酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カル
シウムなどの金属塩;タングステン粉末、モリブデン粉
末などの高比重金属粉末が挙げられ、これらの他に、更
に必要に応じて老化防止剤、しゃく解剤などを配合して
もよい。
【0036】コアの外径は、36.8〜41.2mmと
することが可能であり、好ましくは37.8〜40.8
mmとすることができる。コアの外径が36.8mmよ
りも小さい場合は相対的にカバーが厚くなり、カバーを
厚くすると反発性能が低くなる場合があるからである。
一方、コアの外径が41.2mmよりも大きい場合は相
対的にカバーが薄くなり、カバーが薄くなるとゴルフボ
ールの耐久性が悪くなるからである。
【0037】カバー組成物をソリッドコアまたは糸巻き
コアに被覆するには予め半殻状のハーフシェルを作製
し、それでコアを包みプレス成形する。ハーフシェルの
作製時には、材料が流動しかつできるだけ低温である6
0℃〜90℃で行ない、速やかに冷却することが望まし
い。
【0038】次に、コアをハーフシェルで包み、ボール
表面にディンプル模様を形成するが、この際には90〜
120℃で成形し、その後120℃以上の温度に昇温す
ることにより、マイクロカプセルを破り封入されていた
硫黄が放出され、架橋反応が開始される。
【0039】ボール表面にディンプル模様を形成する際
の温度を90〜120℃に設定することで、加硫反応は
まだ起こってないか、もしくは一部に起こっていたとし
てもカバー材料流動性が損なわれるほどではない。した
がって、カバー材料の流動性を担保することができ、糸
ゴム層とカバー材の密着性を向上させることができるの
である。そして、その後プレス温度を120℃以上に設
定することで、金型内にて加硫反応を完了させることが
できる。加硫反応を行う加硫工程においては、加硫最高
温度を80〜160に設定することが可能であり、好ま
しくは90〜140℃に設定することができ、さらに好
ましくは90〜130℃に設定することが可能である。
加硫工程における加硫最高温度が80℃よりも小さい場
合にあっては、トランス1,4−ポリイソプレン(TP
I)の流動性が良くなく、ボール表面にディンプル模様
を形成する成形性が良好でなくなる場合があると考えら
れるからである。一方、加硫工程における加硫最高温度
が160℃よりも大きい場合にあっては、コアとしての
糸ゴム層の劣化が発生したり、トランス1,4−ポリイ
ソプレン(TPI)の結晶性が減少し、カバーの硬度が
減少する場合があるからである。
【0040】加硫最高温度と熱可塑性樹脂の軟化点との
関係において、加硫最高温度と熱可塑性樹脂の軟化点と
の差、すなわち(加硫最高温度)−(熱可塑性樹脂の軟
化点)が5以上とすることが可能であり、好適には10
以上とすることが可能である。加硫最高温度と熱可塑性
樹脂の軟化点との差が少ないとマイクロカプセルの破壊
が遅くなり加硫時間が長くなる場合が考えられるからで
ある。一方、加硫最高温度と熱可塑性樹脂の軟化点との
差が大きくなりすぎると、マイクロカプセルの被覆膜で
ある熱可塑性樹脂の軟化点が相対的に高くなりすぎて、
加硫工程において、コアとして糸巻コアを使用した場
合、糸ゴムなどの劣化が発生することが考えられる。し
たがって、(加硫最高温度)−(熱可塑性樹脂の軟化
点)が50以下とすることが可能であり、好適には30
以下とすることが可能であり、より好ましくは20以下
とすることができる。
【0041】また、加硫促進剤の加硫開始温度と熱可塑
性樹脂の軟化点との関係において、加硫促進剤の加硫開
始温度と熱可塑性樹脂の軟化点との差、すなわち(加硫
促進剤の加硫開始温度)−(熱可塑性樹脂の軟化点)が
0以下とすることが可能である。(加硫促進剤の加硫開
始温度)−(熱可塑性樹脂の軟化点)が0よりも大きい
と、マイクロカプセルが破壊したとしても加硫反応が起
こらない場合があり、その結果加硫時間が長くなる場合
が考えられるからである。一方、(加硫促進剤の加硫開
始温度)−(熱可塑性樹脂の軟化点)が相当にマイナス
となる場合にあっては、熱可塑性樹脂の軟化点が相対的
に高くなりすぎて、加硫工程において加硫温度を高くす
る必要性が生じ、コアとして糸巻コアを使用した場合、
糸ゴムなどの劣化が発生することが考えられる。
【0042】また、加硫最高温度と加硫促進剤の加硫開
始温度との関係において、加硫最高温度と加硫促進剤の
加硫開始温度との差、すなわち(加硫最高温度)−(加
硫促進剤の加硫開始温度)が10以上とすることが可能
であり、好適には20以上とすることが可能である。加
硫最高温度と加硫促進剤の加硫開始温度との差が少ない
と加硫時間が長くなる場合が考えられるからである。一
方、加硫最高温度と加硫促進剤の加硫開始温度との差が
大きくなりすぎると、加硫工程において加硫温度が高く
なりすぎて、コアとして糸巻コアを使用した場合、糸ゴ
ムなどの劣化が発生することが考えられる。
【0043】なお、本発明は、ソリッドまたは糸巻構造
を有するコアと、トランス1,4−ポリイソプレン(T
PI)を主成分とし、硫黄を熱可塑性樹脂材料で被覆し
たマイクロカプセルを含有させて加硫開始温度を制御し
て加硫を行ったカバーと、で構成されるゴルフボールで
あるが、さらに、加硫促進剤を熱可塑性樹脂材料で被覆
したマイクロカプセルも併用することもできる。
【0044】
【実施例】(1) コアの作成 直径32mmのブタジエンゴム主体の加硫体に糸ゴムを
延伸して巻きつけたいわゆる糸巻きコアを用いた。コア
の外径は39mmとした。
【0045】(2) カバー組成物 表1で示すカバー組成物No.1〜No.6のものを用
いて次の工程によりゴルフボールを作成した。実施例、
比較例はいずれもカバー厚みが1.9mmとなるように
した。
【0046】
【表1】
【0047】カバー組成物No.1〜No.3のものは
本発明に係る配合例であり、熱可塑性樹脂でマイクロカ
プセル内に硫黄を封入させたものを配合している。表1
においては、熱可塑性樹脂でマイクロカプセル内に硫黄
を封入させたものをマイクロカプセル化硫黄と記載して
ある。カバー組成物No.1のものを実施例1とし、カ
バー組成物No.2のものを実施例2とし、カバー組成
物No.3のものを実施例3とする。実施例1〜3にお
いて、硫黄を被覆する熱可塑性樹脂はポリスチレンを使
用した。そのポリスチレンの軟化点は100℃であっ
た。また、加硫促進剤は、実施例1ではノクセラーTP
を使用し、実施例2ではノクセラーZTCを使用し、実
施例3ではノクセラーPを使用した。なお、実施例1〜
3において、マイクロカプセル化硫黄は2.5重量部と
記載しているが、これはマイクロカプセル化硫黄全体の
重量部であり、そのうち2.0重量部が硫黄の重量部で
ある。
【0048】マイクロカプセルは下記のようにして製造
した。すなわち、ポリスチレン5gを塩化メチレン50
mlに溶解し、この溶液に硫黄を加え、30分間攪拌し
乳化を行った。乳化状態は(W/O)型エマルジョンで
あった。次に4%PVA水溶液1リットルを用意し、攪
拌しながら前述の(W/O)型エマルジョンを添加し、
〔(W/O)/W〕型複合エマルジョンとした。系の温
度を40℃までに徐々に昇温させ、塩化メチレンを蒸発
させた後、55℃で1時間攪拌し、壁質を硬化させてマ
イクロカプセルを得た。
【0049】一方、カバー組成物No.4〜No.6の
ものは比較例に係る配合例であり、硫黄はそのまま配合
させている。カバー組成物No.4のものを比較例1と
し、カバー組成物No.5のものを比較例2とし、カバ
ー組成物No.6のものを比較例3とする。
【0050】(3) ゴルフボールの製造工程 上記配合物をロール温度70℃で8分間混合して混合物
を作製し、その混合物をシート状にした。シート状混合
物を半殻作製用金型にて80℃、30秒間成形後、20
℃にて急冷し形づけ、半殻状ハーフシェルを作製した。
この工程を2回行い、半殻状ハーフシェルを2枚用意し
て、それら半殻状ハーフシェル2枚にてコアを包み、デ
ィンプル付き金型にて、100℃にて2分間成形後、1
20℃にて5分間加硫を行い、冷却してからディンプル
付きボールを得た。
【0051】この際、カバー材料は糸ゴム層に十分浸透
すると同時に、与えられた熱によりマイクロカプセルが
破れ、マイクロカプセル内に封入されていた硫黄がマイ
クロカプセル外に流出し始め、加硫反応が開始される。
取り出したゴルフボールのカバー材料はこの時点で相当
に加硫されたものであるが、十分加硫反応を行うため
に、室温あるいはオーブンでの後加硫反応工程を設ける
ことも可能である。具体的な後加硫反応工程としては、
40℃に設定したオーブン内に8時間放置し、加硫反応
を完了させた。なお、後加硫反応工程での温度は、TP
Iの結晶融点以下である20〜50℃が好ましい。20
℃よりも小さいと、加硫時間の進行が遅くなり、加硫完
了までの時間が非常に長くなり、ゴルフボールの生産効
率が比較的悪くなる場合がある。一方50℃よりも大き
いと、TPIの結晶が融解した状態で加硫してしまい、
加硫後冷却しても所望の結晶形態が形成されない場合が
あり、ゴルフボールの適切な硬さが得られない傾向があ
る。したがって、後加硫反応工程を設けた場合、後加硫
を完了させるための温度条件は20〜50℃とすること
が好適である。後加硫反応工程を設けた場合、後加硫に
要する加硫時間は、加硫促進剤の配合量により異なる
が、2〜72時間程度である。また、ボールを金型から
取り出さずに金型全体を20〜50℃に保ち、加硫を完
了させることも有効である。その際の加硫時間も、オー
ブンによる加硫と同じ加硫時間が好ましい。
【0052】(4) 物性測定 カバー材料の物性は次の方法にて測定を行った。すなわ
ち、キャピラリーレオメーターを用いて、温度100
℃、せん断速度100(1/s)での測定値をpois
e単位で表したものでカバー材料の粘度を測定した。測
定結果を下記の表2に示す。用いたキャピラリーは直径
1.5mmで、L/Dは20であった。なおLとはキャ
ピラリーの長さをいい、Dとはキャピラリーの直径をい
う。粘度は数値が小さいほど流動し易く、コアに十分浸
透させることが可能となる。キャピラリーレオメーター
はモンサント社のモンサントプロセサビリティテスター
を使用した。
【0053】ゴルフボールの物性は次の方法にて測定し
た。すなわち、作製したゴルフボールを初速度45m/
sで鉄板に打ちつけ、カバーにひびがはいるまでの衝突
回数を測定した。測定結果を下記の表2に示す。衝突回
数が多いほどカバーの耐久性は良好となる。
【0054】
【表2】
【0055】実施例1、2、3に係るカバー材料の粘度
は、いずれも比較例1、2、3に係るカバー材料の粘度
と比較して低く抑えられている。したがって、カバーの
成形工程にて、カバー材料をコアに充分に浸透させるこ
とにより、カバーとコアとの密着性を向上させることが
できることが判明した。また、実施例1、2、3に係る
ゴルフボールのカバーの耐久性は、いずれも比較例1、
2、3に係るゴルフボールのカバーの耐久性と比較して
大きいものとなっている。すなわち、カバーの成形工程
にて、カバーとコアとの密着性を向上させることができ
るから、結果としてゴルフボールの耐久性を向上させる
ことが可能である。特にコアとして糸巻きコアを使用し
た場合、糸巻きコアにカバー材料を密着性良好に浸透さ
せることができるのでこの効果は著しいものである。
【0056】なお、今回開示された実施の形態および実
施例はすべての点で例示であって制限的なものではない
と考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明
ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の
範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含ま
れることが意図される。
【0057】
【発明の効果】加硫剤である硫黄を熱可塑性樹脂でカプ
セル内に封入してマイクロカプセルとすることにより、
カバー材料が熱可塑性樹脂の融点以下にある場合にあっ
ては、硫黄がカプセル内に閉じ込められたままとするこ
とができ、カバー材料の練り後から成形までの時間的制
約を問題とすることは無くなった。また、成形段階にお
いて発生するの剰余物(ばり)は、加硫剤である硫黄が
マイクロカプセル化されたままであるため再利用するこ
とが可能であり、結果としてゴルフボールの製造コスト
の低減化を達成することができた。また、成形段階を熱
可塑性樹脂の融点以下で行うことにより、カバー材料の
流動性を向上させることができるから、カバー材料の糸
ゴムへの浸透を向上させることができ、結果としてゴル
フボールの耐久性を向上させることが可能となった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 9/10 C08K 9/10 C08L 9/00 C08L 9/00

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ソリッドまたは糸巻構造を有するコア
    と、前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボール
    において、 前記カバーは、トランス1,4−ポリイソプレン(TP
    I)を主成分とするカバー用組成物に、硫黄を熱可塑性
    樹脂材料で被覆したマイクロカプセルを含有させること
    により、加硫開始温度を制御して加硫させたカバーであ
    る、ゴルフボール。
  2. 【請求項2】 前記カバー用組成物に、加硫開始温度が
    120℃以下である加硫促進剤を含有する請求項1記載
    のゴルフボール。
  3. 【請求項3】 前記加硫促進剤は、ジメチルジチオカル
    バミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナト
    リウム、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ナトリウ
    ム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオ
    カルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸
    亜鉛、ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジ
    チオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカル
    バミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜
    鉛、メチルペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペコリ
    ン、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロ
    ピルキサントゲン酸亜鉛、もしくは、ブチルキサントゲ
    ン酸亜鉛のうち少なくとも一つを含むものである請求項
    2記載のゴルフボール。
  4. 【請求項4】 ソリッドまたは糸巻構造を有するコア
    と、前記コアの周りを被覆するカバーとを有するゴルフ
    ボールの製造方法であって、 前記カバーは、トランス1,4−ポリイソプレンを主成
    分とし、硫黄を熱可塑性樹脂材料で被覆したマイクロカ
    プセルを含有するカバー用組成物よりなり、 前記カバー用組成物をハーフシェルに成形する工程と、 ハーフシェルにコアを金型内で配置し、カバー表面にデ
    ィンプル模様を形成する工程と、 トランス1,4−ポリイソプレンの融点以下の温度で加
    熱し、前記マイクロカプセルより硫黄をカバー用組成物
    中に放出させ、前記カバー用組成物を加硫する工程より
    なる、ゴルフボールの製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7595016B2 (en) 2003-09-12 2009-09-29 Sri Sports Limited Method for manufacturing golf ball
JP2017179348A (ja) * 2016-03-24 2017-10-05 キャスコ株式会社 ゴルフボール用ゴム組成物及びゴルフボール
CN109608696A (zh) * 2018-11-16 2019-04-12 青岛科技大学 一种复合硫磺及其制备与应用

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7595016B2 (en) 2003-09-12 2009-09-29 Sri Sports Limited Method for manufacturing golf ball
JP2017179348A (ja) * 2016-03-24 2017-10-05 キャスコ株式会社 ゴルフボール用ゴム組成物及びゴルフボール
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