JP4017228B2 - マルチピースソリッドゴルフボール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はマルチピースソリッドゴルフボールに関し、特に優れた反発弾性を持つ芯材を有し、ボール全体として適度な打感を有するマルチピースソリッドゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
芯材とカバー材とからなるツーピースソリッドゴルフボールをさらに改良して、多層の芯材を有するマルチピースソリッドゴルフボールが開発されている。この技術では、マルチピースとして特徴を持たせるために、インナーコアとアウターコアとに比重差をつけたもの(特開昭60−241464号公報、特開昭62−137075号公報等)、インナーコアとアウターコアの硬さ(硬度分布)を規定したもの(特開平2−228973号公報、特開平2−264674号公報等)がある。特に、硬度分布を規定した特開平6−23069号公報では、インナーコアとアウターコアの境界で最大硬度を持たせている。しかし従来技術におけるコア材の選定およびカバー材の規定では、適度な打感およびスピン量を得るには問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、優れた反発弾性を持つ芯材を有し、ボール全体として適度なスピン量と打感とを有するマルチピースソリッドゴルフボールを提供しようとする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、マルチピースソリッドゴルフボールにおいて、芯材の各部分の大きさと表面硬度を規定し、しかも芯材外層の表面から内層の中心に向かって硬度が減少する芯材を持つボールが上記課題を達成できることを知見し、本発明に至った。
すなわち本発明は、内層および外層を有する弾性ゴムを芯材とし、硬質弾性体を被覆層とする複層構造からなるゴルフボールにおいて、芯材の内層が20〜35mmの直径で、表面硬度(shore D)が30〜50であり、芯材の外層の厚さが2〜11mm、表面硬度(shore D)が35〜60であり、かつ外層の表面から芯材の中心に向かって硬度が減少していき、芯材の内層・外層の境界面での硬度差が7以内であることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボールである。
【0005】
前記芯材の内層、外層の比重が1.0≦内層≒外層≦1.5である。また、前記芯材は、基材ゴム100重量部に対し、架橋性モノマー15〜40重量部配合してなる組成物から構成され、架橋性モノマーがアクリル酸亜鉛であり、そのアクリル酸亜鉛の平均粒度が5.0μm以下である。
【0006】
また、前記アクリル酸亜鉛が、分散性改善の為にステアリン酸亜鉛を含有する。さらに、前記芯材は、基材ゴム100重量部に対して、無機充填材を5〜30重量部含有する組成物を含有する。また、前記硬質弾性体がアイオノマー樹脂であり、その硬度(shore D)が50〜70である。
また、本発明は、前記マルチピースソリッドゴルフボールを製造する、マルチピースソリッドゴルフボールの製造方法であって、ブタジエンゴム100質量部と、亜鉛華13質量部と、アクリル酸亜鉛24〜25質量部と、老化防止剤0.5質量部と、有機過酸化物2質量部とからなる組成物を圧縮成形または射出成形して内層を形成する工程と、ブタジエンゴム100質量部と、亜鉛華12〜13質量部と、アクリル酸亜鉛30〜33質量部と、老化防止剤0.5質量部と、有機過酸化物2質量部とからなる組成物を、前記内層表面上に圧縮成形または射出成形して外層を形成する工程と、前記内層および前記内層表面上に形成された外層を160℃で20分間架橋反応することにより、芯材を得る工程と、前記芯材を硬質弾性体の被覆層で覆う工程と、を具備するマルチピースソリッドゴルフボールの製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、内層と外層からなる芯材(コア材)を有しその上に被覆層(カバー材)を有するスリーピースソリッドゴルフボールを用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、芯材が内層・外層以外に多層となっているものでも、被覆層(カバー材)を多層としたものでも、芯材と被覆層の間に中間層を有するものであってもよい。
【0008】
本発明の芯材の内層は、20〜35、好ましくは24〜33mmの直径で表面硬度(shore D)が30〜50、好ましくは35〜50である。芯材の外層は、厚さが2〜11、好ましくは3〜9mmで表面硬度(shore D)が35〜60、好ましくは40〜60である。
芯材の硬度は芯材外層の表面から芯材内層の中心に向かって硬度が減少していき、内層・外層の境界面での硬度(shore D)差が7以内である。
上記範囲の構成を有する芯材は、優れた反発弾性を有し、このためボール全体の打感・スピン量が適切範囲となる。
好ましくは、芯材内層・外層の比重は略同じであり1.0≦内層比重≒外層比重≦1.5とする。略同じとは±0.5、さらには±0.3の範囲である。比重をこの範囲とするとボールとして適切な慣性モーメントが得られ、反発性、スピン性能等により、優れた飛翔性能を得ることができるからである。
【0009】
本発明に用いる芯材の基材ゴムは、特に限定されるものではないが、シス−1,4構造を有するポリブタジエンを含有するゴムが好ましく、ポリブタジエン単独で用いるのが好ましいが、必要に応じて天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等を配合してもよい。
【0010】
基材ゴム100重量部に対して、架橋性モノマー15〜40重量部含有するのが好ましい。架橋性モノマーとして、不飽和結合を有するカルボン酸、特にα,β−エチレン性不飽和カルボン酸類およびこれらの金属塩が好ましい。例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フタル酸等が挙げられ、アクリル酸が特に好ましい。また、金属塩の金属種としては、1〜3価の原子価を有する金属イオンを含むもので、例えば、亜鉛、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等が挙げられ、亜鉛が特に好ましい。この不飽和カルボン酸金属塩特にアクリル酸亜鉛の沈降性粒度分布測定法による平均粒度は、5.0μm以下、好ましくは2.0〜4.5μmである。平均粒度が2.0μm未満の場合には、微細すぎて混練の際に飛散が多く、混合性が悪い。また5.0μm超であるとゴム中で凝集塊を形成し易く分散性が悪くなり、かつ得られたゴルフボールの特性が悪くなる。
上記不飽和カルボン酸の金属塩は、基材ゴム100重量部に対して15〜40重量部、より好ましくは20〜35重量部配合する。15重量部未満では芯材の硬度が不足となり、40重量部を超えると芯材が硬くなりすぎて打撃時のフィーリングを損なう等の欠点を有する。
アクリル酸亜鉛は5〜15、好ましくは10重量%のステアリン酸亜鉛を含んでいてもよい。
【0011】
本発明の芯材は、さらに無機充填材を含有してもよい。無機充填材としては、酸化鉛、酸化鉄、酸化亜鉛のような金属酸化物、硫酸バリウム二酸化珪素、炭酸カルシウム等が挙げられる。このうち、二酸化珪素が補強性があり、かつ適度な比重を有していることから好ましい。この無機充填材の添加量は、好ましくは基材ゴム100重量部に対して5〜30さらには10〜25重量部である。この範囲とするとゴルフボールとして適切な硬度ならびに補強性が得られる。
本発明の芯材には、上記成分の他に通常重合開始剤としての過酸化物、有機イオウ化合物、架橋剤、酸化防止剤、老化防止剤等が使用されてもよい。
【0012】
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは芯材の上にカバー材としての被覆層を有する。被覆層は硬質弾性体から形成される。その硬度は、shore Dで50〜70とする。この範囲であるとゴルフボールとして、適度な打感を得ることができるからである。被覆層の厚さは好ましくは1〜4mm、さらには1〜2.5mmとする。この範囲であると本発明における芯材の性質、特に反発性能および打感に関して充分な効果を得ることができる。
【0013】
硬質弾性体は、アイオノマー樹脂などを主成分とする樹脂組成物またはバラタ系組成物等のいずれであってもよいがアイオノマー樹脂が好ましい。その理由はボールにおける打球時の耐傷付性および反発弾性に優れるからである。
被覆層には、さらに無機充填材、顔料、添加剤等が含まれていてもよい。
【0014】
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールの製造方法は、特に限定されないが好ましくは下記の工程で製造される。
芯材の内層を構成する成分をミキサーや2本ロールミル等の混合機を用いて混合し、この混合物を用いて圧縮成形または射出成形を行い内層を形成する。必要に応じて研磨等を実施し、定められた大きさの内層コアを得る。さらに、外層を構成する成分を混合し、内層表面上に圧縮成形または射出成形を行い外層を形成する。芯材全体を適切な温度条件で架橋反応すると芯材の外層の表面から芯材の中心に向かって硬度が減少していき、芯材の内層・外層のそれぞれの表面硬度が所定範囲内であり、内層・外層の境界面での硬度差が7以内である本発明のゴルフボールの芯材が得られる。このような芯材は内層・外層の構成成分、特に架橋剤を適切に選択することによっても得られる。
【0015】
本発明のゴルフボールは、上述の芯材を有するので反発性能、打球感に優れている。
芯材は、次に硬質弾性体の被覆層で覆われる。被覆層は射出成形または圧縮成形またはあらかじめ半球殻状のハーフシェルを成形し、それを2枚用いて芯材を包み加圧成形したりして形成される。被覆層成形時、必要に応じて表面にディンプルが形成され、被覆層成形後、ペイント塗布、マーキングなどを行う。
【0016】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
表1に示す配合処方(重量部)によりゴム組成物を調整した(実施例1〜5、比較例1〜4)。得られたゴム組成物をそれぞれ160℃で20分間プレス成形し、直径39mmの球状芯材とし、この芯材に被覆層としてカバー材をアイオノマーのハイミランH1707を厚さ2.5mm被覆し、ゴルフボールを製造した。これらのゴルフボールの物性を下記の条件で測定し表1に示した。表1に用いた原材料および測定条件はそれぞれ下記のものである。なお、芯材外層の表面から芯材の中心に向かって硬度が減少することは実施例について破壊試験で確認した。
【0017】
Figure 0004017228
【0018】
【表1】
Figure 0004017228
【0019】
【表2】
Figure 0004017228
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば芯材が優れた反発弾性を有し、このためボールのスピン量が適切となり打球感に優れたマルチピースソリッドゴルフボールが提供される。

Claims (7)

  1. 内層および外層を有する弾性ゴムを芯材とし、硬質弾性体を被覆層とする複層構造からなるゴルフボールにおいて、芯材の内層が20〜35mmの直径で、表面硬度(shore D)が30〜50であり、芯材の外層の厚さが2〜11mm、表面硬度(shore D)が35〜60であり、かつ外層の表面から芯材の中心に向かって硬度が減少していき、芯材の内層・外層の境界面での硬度差が7以内であることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
  2. 前記芯材の内層、外層の比重が1.0≦内層≒外層≦1.5である請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
  3. 前記芯材は、基材ゴム100重量部に対し、架橋性モノマー15〜40重量部配合してなる組成物から構成され、架橋性モノマーがアクリル酸亜鉛であり、そのアクリル酸亜鉛の平均粒度が5.0μm以下である請求項1または2に記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
  4. 前記アクリル酸亜鉛が、分散性改善の為にステアリン酸亜鉛を含有する請求項3に記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
  5. 前記芯材は、基材ゴム100重量部に対して、無機充填材を5〜30重量部含有する組成物を含有する請求項1〜4のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
  6. 前記硬質弾性体がアイオノマー樹脂であり、その硬度(shore D)が50〜70である請求項1〜5のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボールを製造する、マルチピースソリッドゴルフボールの製造方法であって、
    ブタジエンゴム100質量部と、亜鉛華13質量部と、アクリル酸亜鉛24〜25質量部と、老化防止剤0.5質量部と、有機過酸化物2質量部とからなる組成物を圧縮成形または射出成形して内層を形成する工程と、
    ブタジエンゴム100質量部と、亜鉛華12〜13質量部と、アクリル酸亜鉛30〜33質量部と、老化防止剤0.5質量部と、有機過酸化物2質量部とからなる組成物を、前記内層表面上に圧縮成形または射出成形して外層を形成する工程と、
    前記内層および前記内層表面上に形成された外層を160℃で20分間架橋反応することにより、芯材を得る工程と、
    前記芯材を硬質弾性体の被覆層で覆う工程と、を具備するマルチピースソリッドゴルフボールの製造方法。
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