JP4486241B2 - マルチピースソリッドゴルフボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スリーピースソリッドゴルフボール、特にドライバ−ショットやロングアイアンからミドルアイアンショットにおいて高打出角化および低スピン量の実現により優れた飛行性能を有し、ショートアイアンからアプローチショットにおいては逆に高スピン量で優れたコントロール性を有し、かつドライバーショットやロングアイアンからミドルアイアンショットにおいて軽く弾きがよくて良好な打球感を有し、ショートアイアンからアプローチショットにおいてはゴルフクラブのフェースへのくっつきがよくコントロールしやすい軽くて良好な打球感を有するスリーピースソリッドゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、一般アマチュアゴルファーのほとんどは、飛距離を重視する傾向が強く、そのため反発性能が良好であり、スピン量の少ないソリッドゴルフボールを好んで使用している。一方、プロゴルファーや上級者ゴルファーの求める性能は第1にコントロール性であり、次いでソフトで良好な打球感、飛行性能である。このようにコントロール性を重視する点で、またソフトで良好な打球感を有するため、従来から糸巻きゴルフボールが主流になっていた。しかしながら、スピンのかかりやすい構造を有しているため、どのようなゴルフクラブを用いてもスピン量が大きく、飛行性能が劣るという欠点があった。そこで、良好なコントロール性を保持し、打球感および飛行性能を改善したソリッドゴルフボールが数多く提案されてきた(特開平9‐239067号公報、特開平8‐332247号公報、特開平9‐313643号公報等)。
【0003】
特開平9‐239067号公報には、コアとカバーから成るツーピースソリッドゴルフボールであって、コアのJIS‐C硬度による表面硬度が85以下であり、コアの中心硬度が表面硬度より8以上20未満軟らかく、コアの表面から5mm以内での硬度が表面硬度より8以下軟らかくなる硬度分布を有し、カバーの硬度がコアの表面硬度より1〜15硬く、カバー厚さが1.5〜1.95mmであり、ディンプル数が360〜450個であるツーピースゴルフボールが開示されている。
【0004】
特開平8‐332247号公報には、内核と外核から成る2層構造コアとカバーから成るスリーピースソリッドゴルフボールであって、内核の直径が25〜37mmであり、内核のJIS‐C硬度による中心硬度が60〜85であり、内核の中心から表面までの硬度差が4以下であり、外核のJIS‐C硬度による表面硬度が75〜90であり、カバーが曲げ剛性率1200〜3600kg/cm2であるスリーピースソリッドゴルフボールが開示されている。
【0005】
特開平9‐313643号公報には、コアとカバーの間に中間層を設けたスリーピースソリッドゴルフボールであって、コアのJIS‐C硬度による中心硬度が75以下であり、コアの表面硬度が85以下であり、コアの表面硬度が中心硬度より5〜25高く、中間層硬度がコア表面硬度より10未満高く、カバー硬度が中間層硬度より高いスリーピースソリッドゴルフボールが開示されている。
【0006】
しかしながら、上記のようなゴルフボールにおいて、ドライバーによる打撃時の飛行性能は改善されているものの、まだまだ飛距離の要求されるロングアイアンからミドルアイアンによる打撃時にスピン量が大きくなり、その結果、飛距離が低下する。また、打球感においても、飛距離の向上のため、硬いまたは重い打球感となってしまい、十分とはいえないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来のソリッドゴルフボールの有する問題点を解決し、飛行性能、コントロール性および打球感を向上させたマルチピースソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、内層コアおよび外層コアから成るコアと該コア上に形成された1層以上のカバーとから成るマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コアの直径および中心硬度、外層コアの厚さおよび表面硬度、コアの硬度分布、並びにカバーの厚さおよび硬度を特定範囲に規定することにより、飛行性能、コントロール性および打球感を向上させ得ることを見い出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、内層コア(1)および外層コア(2)から成るコア(4)と該コア上に形成された1層以上のカバー(3)とから成るマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、
該内層コア(1)が直径24〜40mmおよびJIS‐C硬度による中心硬度40〜60を有し、該内層コア(1)の表面硬度が中心硬度より20〜40だけ大きく、
該外層コア(2)が、厚さ2.0〜7.0mmおよびJIS‐C硬度による表面硬度75〜90を有し、
該カバー(3)中で、最外層カバーが厚さ1.0〜2.0mmおよびショアD硬度40〜63を有し、かつ
該内層コア(1)のJIS‐C硬度による中心硬度をA、表面硬度をBで表し、該外層コア(2)のJIS-C硬度による表面硬度をC、厚さをTで表した場合に以下の式:
0≦{T(C−B)−(60−A)}≦10
を満足することを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボールに関する。
【0010】
更に、本発明を好適に実施するには、外層コア(2)の表面硬度と外層コアの厚さ方向の中心位置での内部硬度との差が2以下であり、外層コア(2)の表面硬度と内層コア(1)の表面硬度との硬度差(C−B)が0〜20であり、カバー(3)が1層であることが望ましい。
【0011】
本発明において、基本的には内層コアの中心と表面の硬度差を20〜40にすることで高打出角化および低スピン量化を図り、飛行性能の改善を行っている。しかしながら、アイアンショットにおいてはそのような効果は少なく、またアプローチショットにおいては逆効果となりコントロール性も低下し、重くて悪い打球感となる。更に、内層コアの中心硬度を40〜60と小さくすることで、アイアンショットにおいて高打出角化および低スピン量を図っている。しかしながら、重くて悪い打球感はより悪くなり、アプローチショットにおけるコントロール性は向上せず、加えて反発性が低下する。そこで、外層コアの厚さと外層コアと内層コアの表面硬度の差の積{T(C−B)}と内層コアの中心硬度の関係を以下の式:0≦{T(C−B)−(60−A)}≦10
を満足するように規定することにより、アプローチショットにおけるコントロール性の向上、反発性低下の抑制および軽くて良好な打球感を実現するものである。
【0012】
以下、図1を用いて本発明のゴルフボールについて更に詳しく説明する。図1は、本発明のゴルフボールの1つの態様を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明のゴルフボールは内層コア(1)と該内層コア上に形成された外層コア(2)とから成るコア(4)と、該コアを被覆する1層以上のカバー(3)とから成る。但し、図1では説明をわかりやすくするため、1層のカバー(3)を有するゴルフボールとした。
【0013】
上記コア(4)は内層コア(1)および外層コア(2)共に、基材ゴム、共架橋剤、有機過酸化物、充填材、老化防止剤等を含有するゴム組成物を加熱加圧成形して製造する。基材ゴムとしては、従来からソリッドゴルフボールに用いられている天然ゴムおよび/または合成ゴムが用いられ、特にシス-1,4-結合少なくとも40%以上、好ましくは80%以上を有するいわゆるハイシスポリブタジエンゴムが好ましい。所望により上記ポリブタジエンゴムには、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)等を配合してもよい。
【0014】
共架橋剤としては、アクリル酸またはメタクリル酸等のような炭素数3〜8個のα,β‐不飽和カルボン酸の、亜鉛、マグネシウム塩等の一価または二価の金属塩、またはそれらとアクリルエステルやメタクリルエステルとのブレンド等が挙げられるが、高い反発性を付与するアクリル酸亜鉛が好適である。配合量は基材ゴム100重量部に対して、10〜50重量部、好ましくは20〜40重量部である。50重量部より多いと硬くなり過ぎて打球感が悪くなり、10重量部未満では、適当な硬さにするために有機過酸化物の量を増加しなければならず反発が悪くなり飛距離が低下する。
【0015】
有機過酸化物としては、例えばジクミルパーオキサイド、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド等が挙げられ、ジクミルパーオキサイドが好適である。配合量は基材ゴム100重量部に対して0.3〜3重量部、好ましくは0.4〜2重量部である。0.3重量部未満では軟らかくなり過ぎて反発が悪くなり飛距離が低下する。3重量部を越えると適切な硬さにするためにα,β‐不飽和カルボン酸の金属塩の量を減少しなければならず反発が悪くなり飛距離が低下する。
【0016】
充填材としては、ソリッドゴルフボールのコアに通常配合されるものであればよく、例えば無機充填材、具体的には、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等が挙げられ、高比重金属充填材、例えばタングステン粉末、モリブデン粉末等およびそれらの混合物と併用してもよい。配合量は、それぞれ基材ゴム100重量部に対して2〜50重量部、好ましくは3〜35重量部である。2重量部未満では重量調整が難しく、50重量部を越えるとゴムの重量分率が小さくなり反発が低くなり過ぎる。
【0017】
更に本発明のゴルフボールのコアには、有機硫黄化合物、老化防止剤またはしゃく解剤、その他ソリッドゴルフボールのコアの製造に通常使用し得る成分を適宜配合してもよい。配合量は、基材ゴム100重量部に対して、老化防止剤は0.1〜1.0重量部、しゃく解剤は0.1〜5.0重量部であることが好ましい。
【0018】
本発明のゴルフボールに用いられるコアの製造方法を、図2〜図3を用いて説明する。図2は、本発明のゴルフボールに用いられる外層コア成形用金型の1つの態様の概略断面図である。図3は、本発明のゴルフボールに用いられるコア成形用金型の1つの態様の概略断面図である。まず、上記内層コア用ゴム組成物を、金型内で例えば140〜180℃で10〜60分間加熱プレスして、球状の加硫内層コアに成形する。次いで、図2に示すような半球状キャビティを有する半球状金型(5)と内層コアと同形の半球凸部を有する中子金型(6)とを用いて、上記外層用ゴム組成物をプレスして、未加硫半球殻状外層コア(7)を成形する。続いて、図3に示すような上下2つのコア用金型(8)を用いて、上記加硫内層コア(9)を上記半球殻状外層コア(7)2個で挟んで、例えば140〜180℃で10〜60分間加硫成形して、内層コア(1)と該内層コア上に形成された外層コア(2)とから成るコア(4)を形成する。
【0019】
本発明では、内層コア(1)の直径を24〜40mm、好ましくは26〜37mm、より好ましくは28〜34mmとするが、24mmより小さいと、内層コアの性能が十分に発揮できない。また内層コアの直径が40mmより大きいと、外層コアやカバーが適切な厚さに設計できなくなる。
【0020】
また、本発明では、内層コアのJIS‐C硬度による中心硬度を40〜60、好ましくは45〜59、より好ましくは50〜58とするが、40より小さいと、打球感が重くなるとともに、軟らかくなり過ぎて反発性能が低下し、飛距離が低下する。また、60より大きいと、ドライバーからミドルアイアンまでの打撃時に十分に高打出角化ができず飛距離が低下する。
【0021】
更に本発明では、内層コアのJIS‐C硬度による表面硬度が70〜90、好ましくは72〜88、より好ましくは75〜86であることが望ましい。内層コアの表面硬度が70より小さいと打球感が重くて悪く、反発性が低下して飛距離が低下し、90より大きいと硬くて悪い打球感となる。内層コア(1)の表面硬度から中心硬度を引いた硬度差は、20〜40、好ましくは22〜35、より好ましくは25〜30である。上記硬度差が20より小さいと十分な高打出角化が達成できないため飛距離が低下し、40より大きくなると、十分な反発性能が得られないため飛距離が低下し、また打球感が重くて悪くなる。尚、内層コアの表面硬度とは前述のように加硫成形して形成した内層コア、即ち、外層コアを被覆する前の内層コアの表面で測定した硬度を意味し、内層コアの中心硬度とは通常2等分切断し、その切断面において内層コアの中心で測定した硬度を意味する。
【0022】
本発明では、外層コア(2)の厚さを2.0〜7.0mm、好ましくは2.0〜5.5mm、より好ましくは2.0〜4.0mmとするが、2.0mmより小さいと外層コアの効果が発揮できず、十分な反発性が得られず飛距離が低下する。7.0mmより大きいと、内層コアまたはカバーが適切な厚さに設計できなくなる。それによって、内層コアと外層コアを一体加硫成形して形成した2層構造を有するコア(4)の直径は、34.5〜41.0mm、好ましくは36.5〜41.0mm、より好ましくは38.5〜41.0mmであることが望ましいが、34.5mmより小さくても41.0mmより大きくても適切なカバーなカバー厚さが得られなくなる。
【0023】
更に、本発明では、外層コアのJIS‐C硬度による表面硬度が75〜90、好ましくは77〜88、より好ましくは80〜86であることが望ましいが、75より小さいと、打出角が低く、反発性能も低下し、飛距離が低下する。90より大きいと、硬くなり過ぎて打球感が非常に悪くなる。加えて、本発明では、実質的に外層コア内のいずれの場所においても硬度がほぼ一定であるのがよく、具体的には、外層コアの表面硬度と外層コアの厚さ方向の中心位置での内部硬度との差が2以下の範囲内であることが望ましく、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下である。外層コアの硬度が内部へいくほど小さくなると、反発性が低下し、打出角も低くなって飛距離が低下する。逆に、内部へいくほど大きくなると、ミドルアイアンショットにおけるスピン量が多くなって飛距離が低下する。ここで、外層コアの表面硬度とは、上記のように内層コアと外層コアを一体加硫成形して形成した2層構造を有するコアの表面硬度を意味し、外層コアの内部硬度とは上記2層構造を有するコアを通常2等分切断し、その切断面において外層コアの厚さ方向の中心位置で測定した硬度を意味する。
【0024】
更に本発明では、外層コアの表面硬度が内層コアの表面硬度より0〜20、好ましくは0〜15、より好ましくは0から10だけ高いことが望ましいが、0より小さいと、打球感が重くて悪くなり、十分な反発性も得られず飛距離が低下する。また、上記硬度差が20より大きくなると、打球感が硬くなったり、或いは重くなって悪くなる。
【0025】
本発明では、上記内層コアのJIS‐C硬度による中心硬度をA、表面硬度をBで表し、上記外層コアのJIS‐C硬度による表面硬度をC、厚さをTで表した場合に、{T(C−B)−(60−A)}の値が0〜10、好ましくは1〜8、より好ましくは2〜7であることを要件とするが、0より小さくなると打球感が重くて悪くなり、十分な反発性も得られず飛距離が低下する。また、上記値が10より大きくなると、打球感が硬くなったり、或いは重くなって悪くなる。
【0026】
前述のように、本発明の外層コア(2)は、内層コア(1)と同様に基材ゴム、共架橋剤、有機過酸化物、充填材、老化防止剤等を含有するゴム組成物を加熱成形して形成される。このように、外層コア(2)が、アイオノマー樹脂、熱可塑性エラストマー、ジエン系共重合体等の熱可塑性樹脂から構成されるのではなく、上記ゴム組成物の加熱成形体から構成されることによって、反発特性が向上し、打球感が良好となる。また、内層コア(1)と外層コア(2)との両層が同様の加硫ゴム組成物から成るために、両層間の優れた密着性により耐久性も向上する。更に、周知の通り、ゴムは樹脂に比較して、常温以下の低温領域での性能低下が小さいため、それを用いた本発明の外層コアは低温反発特性が優れる。
【0027】
次いで、上記コア(4)上には1層以上のカバー(3)を被覆する。本発明では、カバー(3)のうち、最外層カバーの厚さを1.0〜2.0mm、好ましくは1.3〜2.0mm、より好ましくは1.5〜2.0mmとするが、1.0mmより小さいと十分なコントロール性が得られなくなり、2.0mmより大きいと十分な飛距離が得られなくなる。また本発明では、最外層カバーのショアD硬度による表面硬度を40〜63、好ましくは45〜61、より好ましくは50〜58とするが、40より小さいと、反発性能が低下して飛距離が低下する。また、上記最外層カバー表面硬度が63より大きくなると、十分なコントロール性(スピン量)が得られなくなる。
【0028】
本発明のカバー(3)は熱可塑性樹脂、特に通常ゴルフボールのカバーに用いられるアイオノマー樹脂を基材樹脂として含有する。上記アイオノマー樹脂としては、エチレンとα,β‐不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、またはエチレンとα,β‐不飽和カルボン酸とα,β‐不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものである。上記のα,β‐不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸とメタクリル酸が好ましい。また、α,β‐不飽和カルボン酸エステル金属塩としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n‐ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルが好ましい。上記エチレンとα,β‐不飽和カルボン酸との共重合体中や、エチレンとα,β‐不飽和カルボン酸とα,β‐不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、錫、ジルコニウム、カドミウムイオン等が挙げられるが、特にナトリウム、亜鉛、マグネシウムイオンが反発性、耐久性等からよく用いられ好ましい。
【0029】
上記アイオノマー樹脂の具体例としては、それだけに限定されないが、ハイミラン1555、1557、1605、1652、1702、1705、1706、1707、1855、1856(三井デュポンポリケミカル社製)、サーリン8945、サーリン9945、サーリンAD8511、サーリンAD8512、サーリン6320(デュポン社製)、IOTEK 7010、8000(エクソン(Exxon)社製)等を例示することができる。これらのアイオノマーは、上記例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。
【0030】
更に、本発明のカバー(3)の好ましい材料の例としては、上記のようなアイオノマー樹脂のみであってもよいが、アイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体等の1種以上とを組合せて用いてもよい。上記熱可塑性エラストマーの具体例として、例えば東レ(株)から商品名「ペバックス」で市販されている(例えば、「ペバックス2533」)ポリアミド系熱可塑性エラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル」で市販されている(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)ポリエステル系熱可塑性エラストマー、武田バーディシュ(株)から商品名「エラストラン」で市販されている(例えば、「エラストランET880」)ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0031】
上記ジエン系ブロック共重合体は、ブロック共重合体または部分水添ブロック共重合体の共役ジエン化合物に由来する二重結合を有するものである。その基体となるブロック共重合体とは、少なくとも1種のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1種の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとから成るブロック共重合体である。また、部分水添ブロック共重合体とは、上記ブロック共重合体を水素添加して得られるものである。ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、p‐t‐ブチルスチレン、1,1‐ジフェニルスチレン等の中から1種または2種以上を選択することができ、スチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、1,3‐ペンタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン等の中から1種または2種以上を選択することができ、ブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。上記ジエン系ブロック共重合体の具体例としては、例えばダイセル化学工業(株)から商品名「エポフレンド」市販されているもの(例えば、「エポフレンドA1010」)が挙げられる。
【0032】
上記の熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体等の配合量は、カバー用の基材樹脂100重量部に対して、1〜60重量部、好ましくは1〜35である。1重量部より少ないとそれらを配合することによる打球時の衝撃低下等の効果が不十分となり、60重量部より多いとカバーが軟らかくなり過ぎて反発性が低下したり、またアイオノマーとの相溶性が悪くなって耐久性が低下しやすくなる。
【0033】
本発明に用いられるカバーには、上記樹脂以外に必要に応じて、種々の添加剤、例えば二酸化チタン等の顔料、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を添加してもよい。
【0034】
上記カバー(3)を被覆する方法についても、特に限定されるものではなく、通常のカバーを被覆する方法で行うことができる。カバー用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてコアを包み、130〜170℃で1〜5分間加圧成形するか、または上記カバー用組成物を直接コア上に射出成形してコアを包み込む方法が用いられる。そして、カバー成形時に、必要に応じて、ボール表面にディンプルを形成し、また、カバー成形後、ペイント仕上げ、スタンプ等も必要に応じて施し得る。
【0035】
本発明では、ドライバーショットやロングアイアンからミドルアイアンショットにおいて高打出角化および低スピン量の実現により優れた飛行性能を有し、ショートアイアンからアプローチショットにおいては逆に高スピン量で優れたコントロール性を有し、かつ良好な打球感を有するマルチピースソリッドゴルフボールを提供する。
【0036】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
(i)内層コア用球状加硫成形物の作製
以下の表1(実施例、製造例)および表2(比較例)に示した配合の内層コア用ゴム組成物を混練し、金型内で同表に示す加硫条件により加熱プレスすることによって、内層コア用の球状の加硫成形物を得た。得られた内層コアの直径、中心硬度(A)および表面硬度(B)を測定し、その結果を表5(実施例、製造例)および表6(比較例)に示した。また、それらの結果から、上記表面硬度と中心硬度の差(B−A)を計算し、同表に示した。
【0038】
(ii)外層コア用半球殻状未加硫成形物の作製
以下の表1(実施例、製造例)および表2(比較例)に示した配合の外層コア用ゴム組成物を混練し、図2に示すような金型(5、6)内でプレスすることによって、外層コア用の半球殻状未加硫成形物(7)を得た。
【0039】
(iii)コアの作製
(a)実施例1〜4および6〜7、製造例5並びに比較例1〜5用コア
上記(i)で作製した内層コア用加硫成形物(9)を、(ii)で作製した2つの外層コア用半球殻状未加硫成形物(7)で挟んで、図3に示すような金型(8)内で、以下の表1(実施例、製造例)および表2(比較例)に示す加硫条件により加熱プレスすることによって、2層構造を有するコア(4)を作製した。得られたコア(4)の表面硬度を測定し、その結果を外層コアのJIS‐C硬度による表面硬度(C)として表5(実施例、製造例)および表6(比較例)に示した。更に、外層コアの内部硬度(D)および厚さ(T)を測定し、その結果を同表に示した。それらの結果から、外層コアの表面と内部との硬度差(C−D)、{T(C−B)}、(60−A)および{T(C−B)−(60−A)}を計算し、同表に示した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
(注1)JSR(株)製のハイシスポリブタジエンゴム
(1,4‐シス‐ポリブタジエン含量:96%)
(注2)JSR(株)製のハイシスポリブタジエンゴム
(1,4‐シス‐ポリブタジエン含量:96%)
(注3)JSR(株)製のハイシスポリブタジエンゴム
(1,4‐シス‐ポリブタジエン含量:96%)
【0043】
(iv)カバー用組成物の調製
以下の表3(実施例)および表4(比較例)に示した配合の材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は押出機のダイの位置で150〜260℃に加熱された。
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
(注4)三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、ショアD硬度=61、曲げ剛性率=300MPa
(注5)三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、ショアD硬度=62、曲げ剛性率=310MPa
(注6)三井デュポンポリケミカル(株)製の亜鉛イオン中和エチレン‐メタクリル酸‐イソブチルアクリレート三元共重合体系アイオノマー樹脂、ショアD硬度=54、曲げ剛性率=87MPa
(注7)デュポン社製のナトリウムイオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、ショアD硬度=63、曲げ剛性率=270MPa
(注8)デュポン社製の亜鉛イオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、ショアD硬度=61、曲げ剛性率=220MPa
(注9)デュポン社製のマグネシウムイオン中和エチレン‐メタクリル酸‐n‐ブチルアクリレート三元共重合体系アイオノマー樹脂、ショアD硬度=44、曲げ剛性率=35MPa
(注10)東レ(株)製のポリエーテルアミド系熱可塑性エラストマー
(注11)ダイセル化学工業(株)製のエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)構造のブロック共重合体、JIS-A硬度=67、スチレン/ブタジエン=40/60(重量比)、エポキシ含量約1.5〜1.7重量%
【0047】
(実施例1〜4および6〜7、製造例5並びに比較例1〜5)
上記のカバー用組成物を、上記のように得られた2層構造を有するコア(4)上に直接射出成形することにより、表5(実施例、製造例)および表6(比較例)に示すカバー厚さおよびショアD硬度を有するカバー層(3)を形成し、表面にペイントを塗装して、直径42.8mmを有するゴルフボールを作製した。得られたゴルフボールの打出角、スピン量、飛距離(キャリーおよびトータル)および打球感を測定または評価し、その結果を表7(実施例、製造例)および表8(比較例)に示した。試験方法は以下の通り行った。
【0048】
(試験方法)
▲1▼硬度
(i)JIS‐C硬度
JIS‐K 6301に規定されるスプリング式硬度計C型を用いて測定した。
(a)内層コア硬度
内層コアの表面硬度は加硫成形して得られた内層コアの外表面で測定し、内層コアの中心硬度は得られた内層コアを2等分切断し、その切断面の中心で測定した。
(b)外層コア
外層コアの表面硬度は内層コア上に外層コアを一体加硫成形して形成した2層構造を有するコアの外表面で測定し、外層コアの内部硬度は上記2層構造を有するコアを2等分切断し、その切断面において外層コアの厚さ方向の中心位置で測定した。
(ii)カバー硬度
コアのまわりにカバーを被覆したゴルフボールにおいて、その外表面の硬度をASTM‐D 2240‐68に規定されるスプリング式硬度計ショアD型を用いて23℃の環境下で測定した。
【0049】
▲2▼飛行性能
(1)ゴルフラボラトリー社製スイングロボットにメタルヘッド製ウッド1番クラブ(W#1)を取付け、ゴルフボールをヘッドスピード49m/秒に設定して打撃し、飛距離としてキャリー(落下点までの距離)およびトータル(停止点までの距離)を測定した。測定は各ゴルフボールで12回(n=12)行って、その平均を算出して、各ゴルフボールの結果とした。
【0050】
(2)ゴルフラボラトリー社製スイングロボットにアイアン5番クラブ(I#5)を取付け、ゴルフボールをヘッドスピード41m/秒に設定して打撃し、打出角(打ち出された時のゴルフボールの発射角度)、飛距離としてキャリー(落下点までの距離)およびトータル(停止点までの距離)を測定し、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによってスピン量を求めた。測定は各ゴルフボールで12回(n=12)行って、その平均を算出して、各ゴルフボールの結果とした。
【0051】
(3)ゴルフラボラトリー社製スイングロボットにサンドウェッジ(SW)を取付け、ゴルフボールをヘッドスピード21m/秒に設定して打撃し、打出角(打ち出された時のゴルフボールの発射角度)を測定し、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによってスピン量を求めた。測定は各ゴルフボールで12回(n=12)行って、その平均を算出して、各ゴルフボールの結果とした。
【0052】
▲3▼打球感
ゴルファー10人によるメタルヘッド製ドライバーでの実打テストを行い、打撃時の衝撃の大きさと反発感の有り無しとを評価し、最も多い評価をそのゴルフボールの結果とした。評価基準は以下の通りである。
評価基準(衝撃性)
○ … 衝撃が小さくて打球感が良好
△ … 衝撃が多少大きい
× … 衝撃が大きく悪い
評価基準(反発感)
○ … 反発感があり良好
△ … 多少重い感じで反発感が小さい
× … 反発感のない重い打球感であり悪い
【0053】
(試験結果)
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
以上の結果より、実施例1〜4および6〜7の本発明のゴルフボールは、比較例1〜5のゴルフボールに比べて、ウッド1番クラブによる打撃時における飛距離の大きさと、アイアン5番クラブによる打撃時における打出角が高く、スピン量が低いことによる飛距離の大きさ、サンドウェッジによる打撃時におけるスピン量の高さ、および良好な打球感のすべてに優れる性能となっている。
【0058】
比較例1のゴルフボールは内層コアの中心硬度が高いため、打球感が硬くて悪く、アイアン5番クラブによる打撃時に打出角が低くて飛距離が小さい。比較例2のゴルフボールは{T(C−B)−(60−A)}の値が大きいので反発性能が悪く飛距離が短くなっており、また{T(C−B)−(60−A)}の値が大きいことと内層コアの表面と中心との硬度差(B−A)が小さいことが原因で反発感のない重い打球感となっており、打球感が悪くなっている。比較例3のゴルフボールは外層コアの厚さが小さいため、ドライバーによる打撃時に飛距離が小さく、また反発感のない重い打球感となっている。比較例4のゴルフボールは最外層のカバーの厚さが大きいため、反発性能が低く、またドライバーやミドルアイアンによる打撃時に打出角が低くてスピン量が多くなるため飛距離が小さく、また打球感も反発感のない重いものとなり悪くなっている。比較例5のゴルフボールは最外層のカバー硬度が大きいため、特にサンドウェッジによる打撃時にスピン量が小さくなっており、また打撃時の衝撃が大きくて打球感が悪くなっている。
【0059】
【発明の効果】
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、内層コアの直径および中心硬度、外層コアの厚さおよび表面硬度、コアの硬度分布、並びにカバーの厚さおよび硬度を特定範囲に規定することにより、ドライバーショットやロングアイアンからミドルアイアンショットにおいて高打出角化および低スピン量の実現により優れた飛行性能を有し、ショートアイアンからアプローチショットにおいては逆に高スピン量で優れたコントロール性を有し、かつ良好な打球感を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のゴルフボールの1つの態様の概略断面図である。
【図2】 本発明のゴルフボールの外層コア成形用金型の1つの態様の概略断面図である。
【図3】 本発明のゴルフボールのコア成形用金型の1つの態様の概略断面図である。
【符号の説明】
1 … 内層コア
2 … 外層コア
3 … カバー
4 … コア
5 … 半球状金型
6 … 中子金型
7 … 半球殻状外層コア
8 … コア成形用金型
9 … 加硫内層コア
Claims (3)
- 内層コア(1)および外層コア(2)から成るコア(4)と該コア上に形成された1層以上のカバー(3)とから成るマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、
該内層コア(1)が直径24〜40mmおよびJIS‐C硬度による中心硬度40〜60を有し、該内層コア(1)の表面硬度が中心硬度より20〜40だけ大きく、
該外層コア(2)が、ゴム組成物の加熱成形体から構成され、厚さ2.0〜7.0mmおよびJIS‐C硬度による表面硬度75〜90を有し、該外層コアの表面硬度と外層コアの厚さ方向の中心位置での内部硬度との差が2以下であり、
該カバー(3)中で、最外層カバーが厚さ1.0〜2.0mmおよびショアD硬度40〜63を有し、かつ
該内層コア(1)のJIS‐C硬度による中心硬度をA、表面硬度をBで表し、該外層コア(2)のJIS‐C硬度による表面硬度をC、厚さをTで表した場合に以下の式:
2≦{T(C−B)−(60−A)}≦7
を満足することを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。 - 前記外層コア(2)の表面硬度と内層コア(1)の表面硬度との硬度差(C−B)が0〜20である請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- 前記カバー(3)が1層である請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
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