JP4227260B2 - マルチピースソリッドゴルフボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い反発特性と高打出角化の実現により、低ヘッドスピードでの打撃時や、アイアンクラブでの打撃時においても優れた飛行性能を有し、かつ良好な打球感を有するマルチピースソリッドゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴルフボールの開発の歴史において、まず登場したのが糸巻きゴルフボールである。糸巻きゴルフボールは、中心の固体または液体の芯部上に、糸ゴムを高延伸力下に巻き付けて糸巻きコアを形成し、これに厚さ1〜2mmのバラタ等によるカバーで被覆して形成される。
【0003】
次に登場したのが、ツーピースソリッドゴルフボールと呼ばれるもので、一体成形されたゴム製コアをアイオノマー樹脂等の熱可塑性樹脂製のカバーで被覆したものである。ツーピースソリッドゴルフボールは、簡単な構造を有しているので、製造が容易で、かつ高い反発特性と優れた耐久性を有し、アマチュアゴルファーを中心に広く受け入れられた。
【0004】
しかしながら、ツーピースソリッドゴルフボールは、糸巻きゴルフボールに比べて硬いため、打球感が悪いという欠点があった。
【0005】
近年ではツーピースソリッドゴルフボールにおいて、糸巻きゴルフボールに近い打球感を得るため、ソフトタイプのツーピースゴルフボールも提案されている。しかしながら、そのようなツーピースゴルフボールを得るためには、軟らかいコアを使用する必要があり、それによってボールの反発性能が低下するため、ツーピースソリッドゴルフボールの特徴である飛距離が低下すると共に耐久性も低下する。
【0006】
そこで、ツーピースソリッドゴルフボールのコアとカバーの間に中間層を設けてスリーピースにして、飛行性能と打球感を両立させる試みが多数なされており、現在ではこのスリピース構造が主流となっている。例えば、ツーピースソリッドゴルフボールのコアと同様の組成から成る加硫ゴムを中間層に用いて2層構造コアとしたスリーピースソリッドゴルフボールが、特開平8-332247号公報等に開示されている。これらは、いずれも中間層の厚さが大きく、打撃時のヘッドスピードの低いゴルファー(特に、ミドルアイアンからショートアイアンクラブでの打撃時)にとっては、十分な反発特性と高打出角を得ることが困難であった。
【0007】
また、中間層の厚さを小さくしたスリーピースソリッドゴルフボールも数多く開示されている(例えば、特開平9-313643号公報、特開平9-239063号公報等)。しかしながら、これらはいずれも中間層部分が熱可塑性樹脂から成り、反発特性が劣り、打球感が硬くて悪いという問題点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来のソリッドゴルフボールの有する問題点を解決し、打撃時のヘッドスピードの低いゴルファーにでも、打球感を損なうことなく、十分な反発特性と高打出角化により飛行性能を向上させたマルチピースソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、内層コアおよび外層コアから成るコアと該コア上に形成された1層以上のカバーとから成るマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コアの直径、中心硬度および硬度分布、外層コアの厚さおよび表面硬度、コアの硬度分布、並びにカバーの厚さおよび硬度を特定範囲に規定することにより、打撃時のヘッドスピードの低いゴルファーにでも、打球感を損なうことなく、十分な反発特性と高打出角化により飛行性能を向上させ得ることを見い出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は、内層コア(1)および外層コア(2)から成るコア(4)と該コア上に形成された1層以上のカバー(3)とから成るマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、
該内層コア(1)が、直径30〜39.5mmおよびJIS-C硬度による中心硬度55〜70を有し、中心からの距離15mmの位置のJIS-C硬度が中心硬度より5〜20だけ高く、かつポリブタジエン、共架橋剤、有機過酸化物および充填材を必須成分として含有するゴム組成物を加熱成形して形成され、
該外層コア(2)が、厚さ0.3〜2.0mmおよびJIS-C硬度による表面硬度75〜90を有し、該表面硬度が該内層コアの中心硬度より10〜35だけ高く、かつポリブタジエン、共架橋剤、有機過酸化物および充填材を必須成分として含有するゴム組成物を加熱成形して形成され、および
該カバー(3)が熱可塑性樹脂を基材樹脂として含有し、最外層カバーが厚さ1.5〜2.5mmおよびショアD硬度による表面硬度64〜72を有する
ことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボールに関する。
【0011】
以下、図1を用いて本発明のゴルフボールについて更に詳しく説明する。図1は、本発明のゴルフボールの1つの態様を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明のゴルフボールは内層コア(1)と該内層コア上に形成された外層コア(2)とから成るコア(4)と、該コアを被覆する1層以上のカバー(3)とから成る。但し、図1では説明をわかりやすくするため、1層のカバー(3)を有するゴルフボールとした。
【0012】
上記コア(4)は内層コア(1)および外層コア(2)共に、ポリブタジエンに共架橋剤、有機過酸化物および充填材を必須成分として配合したゴム組成物を加熱加圧成形して製造することを必要とする。ポリブタジエンは、従来からソリッドゴルフボールのコアに用いられているものであればよいが、特にシス-1,4-結合少なくとも40%以上、好ましくは80%以上を有するいわゆるハイシスポリブタジエンゴムが好ましく、所望により上記ポリブタジエンゴムには、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)等を配合してもよい。
【0013】
共架橋剤としては、アクリル酸またはメタクリル酸等のような炭素数3〜8個のα,β‐不飽和カルボン酸の、亜鉛、マグネシウム塩等の一価または二価の金属塩、またはそれらとアクリルエステルやメタクリルエステルとのブレンド等が挙げられるが、高い反発性を付与するアクリル酸亜鉛が好適である。配合量はポリブタジエン100重量部に対して、5〜70重量部、好ましくは5〜65重量部、より好ましくは5〜50重量部、更に好ましくは10〜40重量部である。70重量部より多いと硬くなり過ぎて打球感が悪くなり、5重量部未満では、適当な硬さにするために有機過酸化物の量を増加しなければならず反発が悪くなり飛距離が低下する。
【0014】
有機過酸化物としては、例えばジクミルパーオキサイド、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド等が挙げられ、ジクミルパーオキサイドが好適である。配合量はポリブタジエン100重量部に対して0.2〜7.0重量部、好ましくは0.5〜5.0重量部である。0.2重量部未満では軟らかくなり過ぎて反発が悪くなり飛距離が低下する。7.0重量部を越えると適切な硬さにするためにα,β-不飽和カルボン酸の金属塩の量を減少しなければならず反発が悪くなり飛距離が低下する。
【0015】
充填材としては、ソリッドゴルフボールのコアに通常配合されるものであればよく、例えば無機充填材、具体的には、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等が挙げられ、高比重金属充填材、例えばタングステン粉末、モリブデン粉末等およびそれらの混合物と併用してもよい。配合量は、それぞれポリブタジエン100重量部に対して3〜50重量部、好ましくは10〜30重量部である。3重量部未満では重量調整が難しく、50重量部を越えるとゴムの重量分率が小さくなり反発が低くなり過ぎる。
【0016】
更に本発明のゴルフボールのコアには、老化防止剤またはしゃく解剤、その他ソリッドゴルフボールのコアの製造に通常使用し得る成分を適宜配合してもよい。配合量は、ポリブタジエン100重量部に対して、老化防止剤は0.1〜1.0重量部、しゃく解剤は0.1〜5.0重量部であることが好ましい。
【0017】
本発明のゴルフボールに用いられるコアの製造方法を、図2〜図3を用いて説明する。図2は、本発明のゴルフボールに用いられる外層コア成形用金型の1つの態様の概略断面図である。図3は、本発明のゴルフボールに用いられるコア成形用金型の1つの態様の概略断面図である。まず、上記内層コア用ゴム組成物を、押出機を用いて円筒状の未加硫内層コアに成形する。次いで、図2に示すような半球状キャビティを有する半球状金型(5)と内層コアと同形の半球凸部を有する中子金型(6)とを用いて、上記外層用ゴム組成物を、例えば120〜160℃で2〜30分間加熱プレスして、加硫半球殻状外層コア(7)を成形する。続いて、図3に示すような上下2つのコア用金型(8)を用いて、上記未加硫内層コア(9)を上記半球殻状外層コア(7)2個で挟んで、例えば140〜180℃で10〜60分間一体加硫成形して、内層コア(1)と該内層コア上に形成された外層コア(2)とから成るコア(4)を形成する。
【0018】
本発明では、内層コア(1)の直径を30〜39.5mm、好ましくは32.5〜38.5mm、より好ましくは32.5〜38.0mm、更に好ましくは32.5〜36.5mmとするが、30mmより小さいと、外層コアまたはカバーを所望の厚さより厚くする必要があり、その結果、打球感が硬く悪いものとなる。また内層コアの直径が39.5mmより大きいと、得られるゴルフボールとしての外剛内柔の効果が薄れて打出角が低くなる。
【0019】
また、本発明では、内層コアのJIS-C硬度による中心硬度を55〜70、好ましくは59〜67、より好ましくは62〜66とするが、55より小さいと、打球感が重くなるとともに、軟らかくなり過ぎて反発性能が低下し、飛距離が低下する。また、70より大きいと、硬い芯のある悪い打球感となってしまい、反発性は有するものの打出角が低くなって飛距離が低下する。特に、打撃時に低ヘッドスピードのゴルファーにとっては、そのような影響が大きくなる。
【0020】
更に本発明では、内層コアの中心からの距離15mmの位置でのJIS‐C硬度が中心硬度より5〜20、好ましくは5〜15だけ高いことを要件とするが、5より小さいと、打出角が低くなって飛距離が低下する。また、上記硬度差が20より大きくなると、反発性能が低下し、打球感が重く悪くなる。上記内層コアの中心からの距離15mmの位置でのJIS‐C硬度は、60〜90、好ましくは65〜85、より好ましくは70〜80である。60より小さいと打球感が重くなるとともに、軟らかくなり過ぎて反発性能が低下し、90より大きいと打球感が硬くて悪くなる。尚、内層コアの中心硬度および中心からの距離15mmの位置での硬度とは、上記のように内層コアと外層コアを一体加硫成形して形成したコアを、通常2等分切断し、コアの中心および中心からの距離15mmの位置で測定した硬度を意味する。
【0021】
本発明では、外層コア(2)の厚さを0.3〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.8mm、更に好ましくは1.3〜1.8mmとするが、0.3mmより小さいと、内層コアとの硬度差はあるものの、それによる効果が薄れ、高打出角化および高反発化にロスが生じる。よって、外層コア(2)の厚さの下限については、0.4mm以上、更に0.5mm以上とするのがよい。2.0mmより大きいと、反発特性は向上するが打出角が低くなり、また打球感も硬く悪いものとなる。特に、打撃時に低ヘッドスピードのゴルファーや、あるいはミドルアイアンからショートアイアンクラブ等での打撃時には、そのような影響が大きく、打出角が低くなって飛距離が低下する。よって、外層コア(2)の厚さの上限については、1.8mm以下、更に1.5mm以下とするのがよく、この上限規定は前記下限規定のいずれとも組み合わせて、上下限の好ましい範囲を定めることができる。
【0022】
更に、本発明では、外層コアのJIS-C硬度による表面硬度を75〜90、好ましくは79〜88、より好ましくは82〜86とするが、75より小さいと、打出角が低く、反発性能も低下し、飛距離が低下する。90より大きいと、硬くなり過ぎて打球感が悪くなる。加えて、本発明では、外層コアの表面硬度が内層コアの中心硬度より10〜35、好ましくは15〜30だけ高いことを要件とするが、10より小さいと、高打出角化および高反発化の効果が薄れて飛距離が低下する。また、上記硬度差が35より大きくなると、打球感が重くなったり、或いは硬くなって悪くなる。ここで、外層コアの表面の硬度とは、上記のように内層コアと外層コアを一体加硫成形して形成した2層構造を有するコアの表面硬度を意味する。
【0023】
前述のように、本発明の外層コア(2)は、内層コア(1)と同様にポリブタジエン、共架橋剤、有機過酸化物および充填材を必須成分として含有するゴム組成物を加熱成形して形成されることを要件とする。このように、外層コア(2)が、アイオノマー樹脂、熱可塑性エラストマー、ジエン系共重合体等の熱可塑性樹脂から構成されるのではなく、上記ゴム組成物の加熱成形体から構成されることによって、反発特性が向上し、打球感が良好となる。また、内層コア(1)と外層コア(2)との両層が同様の加硫ゴム組成物から成るために、両層間の優れた密着性により耐久性も向上する。更に、周知の通り、ゴムは樹脂に比較して、常温以下の低温領域での性能低下が小さいため、それを用いた本発明の外層コアは低温反発特性が優れる。
【0024】
次いで、上記コア(4)上には1層以上のカバー(3)を被覆する。本発明では、カバー(3)のうち、最外層カバーの厚さを1.5〜2.5mm、好ましくは1.8〜2.3mmとするが、1.5mmより小さいと反発性や耐久性が低下し、2.5mmより大きいと打球感が硬くて悪くなる。また本発明では、最外層カバーのショアD硬度による表面硬度を64〜72、好ましくは65〜71とするが、64より小さいと、低打出角および高スピン量となるとともに反発性能が低下して飛距離が低下する。また、上記最外層カバー表面硬度が72より大きくなると、打球感が硬くて悪くなる。
【0025】
本発明のカバー(3)は熱可塑性樹脂、特に通常ゴルフボールのカバーに用いられるアイオノマー樹脂を基材樹脂として含有する。上記アイオノマー樹脂としては、エチレンとα,β‐不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、またはエチレンとα,β‐不飽和カルボン酸とα,β‐不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものである。上記のα,β‐不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸とメタクリル酸が好ましい。また、α,β‐不飽和カルボン酸エステル金属塩としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n‐ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルが好ましい。上記エチレンとα,β‐不飽和カルボン酸との共重合体中や、エチレンとα,β‐不飽和カルボン酸とα,β‐不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、錫、ジルコニウム、カドミウムイオン等が挙げられるが、特にナトリウム、亜鉛、マグネシウムイオンが反発性、耐久性等からよく用いられ好ましい。
【0026】
上記アイオノマー樹脂の具体例としては、それだけに限定されないが、ハイミラン1555、1557、1605、1652、1702、1705、1706、1707、1855、1856(三井デュポンポリケミカル社製)、サーリン8945、サーリン9945、サーリンAD8511、サーリンAD8512、サーリンAD8542(デュポン社製)、IOTEK 7010、8000(エクソン(Exxon)社製)等を例示することができる。これらのアイオノマーは、上記例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。
【0027】
更に、本発明のカバー(3)の好ましい材料の例としては、上記のようなアイオノマー樹脂のみであってもよいが、アイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体等の1種以上とを組合せて用いてもよい。上記熱可塑性エラストマーの具体例として、例えば東レ(株)から商品名「ペバックス」で市販されている(例えば、「ペバックス2533」)ポリアミド系熱可塑性エラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル」で市販されている(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)ポリエステル系熱可塑性エラストマー、武田バーディシュ(株)から商品名「エラストラン」で市販されている(例えば、「エラストランET880」)ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0028】
上記ジエン系ブロック共重合体は、ブロック共重合体または部分水添ブロック共重合体の共役ジエン化合物に由来する二重結合を有するものである。その基体となるブロック共重合体とは、少なくとも1種のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1種の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとから成るブロック共重合体である。また、部分水添ブロック共重合体とは、上記ブロック共重合体を水素添加して得られるものである。ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、p‐t‐ブチルスチレン、1,1‐ジフェニルスチレン等の中から1種または2種以上を選択することができ、スチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、1,3‐ペンタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン等の中から1種または2種以上を選択することができ、ブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。上記ジエン系ブロック共重合体の具体例としては、例えばダイセル化学工業(株)から商品名「エポフレンド」市販されているもの(例えば、「エポフレンドA1010」)が挙げられる。
【0029】
上記の熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体等の配合量は、カバー用の基材樹脂100重量部に対して、1〜60重量部、好ましくは1〜35である。1重量部より少ないとそれらを配合することによる打球時の衝撃低下等の効果が不十分となり、60重量部より多いとカバーが軟らかくなり過ぎて反発性が低下したり、またアイオノマーとの相溶性が悪くなって耐久性が低下しやすくなる。
【0030】
本発明に用いられるカバーには、上記樹脂以外に必要に応じて、種々の添加剤、例えば二酸化チタン等の顔料、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を添加してもよい。
【0031】
上記カバー(3)を被覆する方法についても、特に限定されるものではなく、通常のカバーを被覆する方法で行うことができる。カバー用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてコアを包み、130〜170℃で1〜5分間加圧成形するか、または上記カバー用組成物を直接コア上に射出成形してコアを包み込む方法が用いられる。そして、カバー成形時に、必要に応じて、ボール表面にディンプルを形成し、また、カバー成形後、ペイント仕上げ、スタンプ等も必要に応じて施し得る。
【0032】
本発明では、高い反発特性と高打出角化の実現により、低ヘッドスピードでの打撃時やアイアンクラブでの打撃時においても優れた飛行性能を有し、かつ良好な打球感を有するマルチピースソリッドゴルフボールを提供する。
【0033】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0034】
(i)内層コア用球状未加硫成形物の作製
以下の表1および2(実施例)並びに表3および4(比較例)に示した配合の内層コア用ゴム組成物を混練し、押出成形して円筒状の未加硫成形物を得た。
【0035】
(ii)外層コア用半球殻状加硫成形物の作製
以下の表1および2(実施例)並びに表3および4(比較例)に示した配合の外層コア用ゴム組成物を混練し、図2に示すような金型(5、6)内で、同表に示す加硫条件により加熱プレスすることによって、外層コア用の半球殻状加硫成形物(7)を得た。
【0036】
(iii)コアの作製
(a)実施例1〜12および比較例1〜7用コア
上記(i)で作製した内層コア用未加硫成形物(9)を、(ii)で作製した2つの外層コア用半球殻状加硫成形物(7)で挟んで、図3に示すような金型(8)内で、以下の表1および2(実施例)並びに表3および4(比較例)に示す加硫条件により加熱プレスすることによって、2層構造を有するコア(4)を作製した。得られたコア(4)の表面硬度を測定し、その結果を外層コアのJIS-C硬度による表面硬度として表8および9(実施例)並びに表10および11(比較例)に示した。更に、内層コアの直径および硬度(中心および中心からの距離15mmの位置)並びに外層コアの厚さを測定し、その結果を同表に示した。それらの結果から、内層コアの中心からの距離15mmの位置と中心との硬度差、外層コアの表面と内層コアの中心との硬度差を計算し、同表に示した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
*:表3に記載
(注1)JSR(株)製のハイシスポリブタジエンゴム
(1,4‐シス‐ポリブタジエン含量:96%)
【0041】
(b)比較例8〜11用コア
上記(i)で作製した内層コア用未加硫成形物(9)上に、表5に示した配合の外層コア用組成物を直接射出成形することにより、2層構造を有するコア(4)を作製した。得られたコア(4)の表面硬度を測定し、その結果を外層コアの表面硬度として表11に示した。更に、内層コアの直径および硬度(中心および中心からの距離15mmの位置)並びに外層コアの厚さを測定し、その結果を同表に示した。それらの結果から、内層コアの中心からの距離15mmの位置と中心との硬度差、外層コアの表面と内層コアの中心との硬度差を計算し、同表に示した
【0042】
【表5】
【0043】
(iv)カバー用組成物の調製
以下の表6(実施例)および表7(比較例)に示した配合の材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は押出機のダイの位置で150〜260℃に加熱された。得られたカバー用組成物のショアD硬度を測定し、その結果を表8および9(実施例)並びに表10および11(比較例)に示した。試験方法は後述の通り行った。
【0044】
【表6】
【0045】
【表7】
【0046】
(注2)三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、ショアD硬度=61、曲げ剛性率=300MPa
(注3)三井デュポンポリケミカル(株)製の亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、、ショアD硬度=63、曲げ剛性率=215MPa
(注4)三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、ショアD硬度=62、曲げ剛性率=310MPa
(注5)三井デュポンポリケミカル(株)製の亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、、ショアD硬度=62、曲げ剛性率=150MPa
(注6)三井デュポンポリケミカル(株)製の亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、、ショアD硬度=60、曲げ剛性率=270MPa
(注7)三井デュポンポリケミカル(株)製の亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸-アクリル酸イソブチル三元共重合体系アイオノマー樹脂、ショアD硬度=54、曲げ剛性率=87MPa
(注8)デュポン社製のナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、ショアD硬度=63、曲げ剛性率=270MPa
(注9)デュポン社製の亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、ショアD硬度=61、曲げ剛性率=220MPa
(注10)デュポン社製のマグネシウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、ショアD硬度=44、曲げ剛性率=35MPa
(注11)アトケム(ATOCHEM)社製のポリエーテルアミド系熱可塑性エラストマー
(注12)ダイセル化学工業(株)製のエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)構造のブロック共重合体、JIS-A硬度=67、スチレン/ブタジエン=40/60(重量比)、エポキシ含量約1.5〜1.7重量%
【0047】
(実施例1〜12および比較例1〜11)
上記のカバー用組成物を、上記のように得られた2層構造を有するコア(4)上に直接射出成形することにより、表8および9(実施例)並びに表10および11(比較例)に示すカバー厚さを有するカバー層(3)を形成し、表面にペイントを塗装して、直径42.7mmを有するゴルフボールを作製した。得られたゴルフボールのボール初速度、打出角、スピン量、飛距離および打球感を測定または評価し、その結果を表8および9(実施例)並びに表10および11(比較例)に示した。試験方法は後述の通り行った。
【0048】
(試験方法)
▲1▼カバーのショアD硬度
コアのまわりにカバーを被覆したゴルフボールにおいて、その表面の硬度をASTM-D 224Dに規定されるスプリング式硬度計ショアD型を用いて23℃の環境下で測定する。
【0049】
▲2▼飛行性能
ツルーテンパー社製スイングロボットにアイアン5番クラブ(I#5)を取付け、ゴルフボールをヘッドスピード30m/秒で打撃し、ボール初速、打出角(打ち出された時のゴルフボールの発射角度)、飛距離としてキャリー(落下点までの距離)を測定し、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによってスピン量を求めた。
【0050】
▲3▼打球感
プロおよびトップアマのゴルファー10人によるドライバーでの実打テストで評価する。評価基準は以下の通りである。
評価基準
◎ … 10人中10人が打球感が良好と答え、非常に軟らかい
○ … 10人中9〜8人が打球感が良好と答え、軟らかい
△ … 10人中7〜4人が打球感が良好と答え、普通
△H … 10人中7〜4人が打球感が良好と答え、少し硬い
△W … 10人中7〜4人が打球感が良好と答え、少し重い
×H … 10人中3人以下が打球感が良好と答え、少し硬い
×W … 10人中3人以下が打球感が良好と答え、少し重い
【0051】
(試験結果)
【表8】
【0052】
【表9】
【0053】
【表10】
【0054】
【表11】
【0055】
以上の結果より、内層コアの直径、中心硬度および硬度分布、外層コアの厚さおよび表面硬度、コアの硬度分布、並びにカバーの厚さおよび硬度を特定範囲に規定した実施例1〜12の本発明のゴルフボールは、比較例1〜11のゴルフボールに比べて、アイアン5番クラブによる打撃時においても打出角が高く、飛距離が大きく、非常に良好な打球感を有することがわかった。
【0056】
比較例1のゴルフボールは内層コアの中心硬度が高いため、打球感が硬くて悪く、打出角が低くて飛距離が小さい。比較例2のゴルフボールは内層コアの中心からの距離15mmの位置と中心との硬度差が小さいため、打出角が低くて飛距離が小さい。比較例3のゴルフボールは内層コアの中心硬度が高いため、打球感が悪く、打出角が低くて飛距離が小さく、また外層コアの表面と内層コアの中心との硬度差が小さいため、打出角が低くて飛距離が小さい。比較例4のゴルフボールは外層コアの表面硬度が低いために、打出角が低くて飛距離が小さい。
【0057】
比較例5のゴルフボールは最外層のカバー硬度が小さいため、低打出角および高スピン量となって飛距離が小さい。比較例6のゴルフボールは外層コアの厚さが大きいため、打出角が低くて飛距離が小さく、また打球感も硬くて悪い。比較例7のゴルフボールは最外層のカバー硬度が小さいため、低打出角および高スピン量となって飛距離が小さい。比較例8のゴルフボールは、外層コアがゴム組成物ではなくて熱可塑性樹脂から成るため打球感が硬くて悪く、また最外層のカバー硬度が小さいため、低打出角および高スピン量となって飛距離が小さい。また、比較例8は比較例7とは外層コアがゴムと樹脂の違いのみであるが、それと比べても、打球感が硬くて悪く、また飛距離が小さい。
【0058】
比較例9は、コアは比較例8と同様に熱可塑性樹脂から成り、カバー配合のみ異なって最外層のカバー硬度が更に小さいため、打球感が重くて悪く、また低打出角および高スピン量となって飛距離が非常に小さい。比較例10および11のゴルフボールは、外層コアがゴム組成物ではなくて熱可塑性樹脂から成るため打球感が硬くて悪く、また反発性が低くてボール初速が小さく、飛距離が短い。
【0059】
【発明の効果】
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、内層コアの直径、中心硬度および硬度分布、外層コアの厚さおよび表面硬度、コアの硬度分布、並びにカバーの厚さおよび硬度を特定範囲に規定することにより、高打出角化の実現により、低ヘッドスピードでの打撃時や、アイアンクラブでの打撃時においても優れた飛行性能を有し、かつ良好な打球感を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のゴルフボールの1つの態様の概略断面図である。
【図2】 本発明のゴルフボールの外層コア成形用金型の1つの態様の概略断面図である。
【図3】 本発明のゴルフボールのコア成形用金型の1つの態様の概略断面図である。
【符号の説明】
1 … 内層コア
2 … 外層コア
3 … カバー
4 … コア
5 … 半球状金型
6 … 中子金型
7 … 半球殻状外層コア
8 … コア成形用金型
9 … 未加硫内層コア
Claims (3)
- 内層コア(1)および外層コア(2)から成るコア(4)と該コア上に形成された1層以上のカバー(3)とから成るマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、
該内層コア(1)が、直径30〜39.5mm及びJIS−C硬度による中心硬度55〜70を有し、中心からの距離15mmの位置のJIS−C硬度が中心硬度より6〜11だけ高く、かつポリブタジエン、共架橋剤、有機過酸化物および充填材を必須成分として含有するゴム組成物を加熱成形して形成され、
該外層コア(2)が、厚さ0.5〜1.7mmおよびJIS−C硬度による表面硬度75〜90を有し、該表面硬度が該内層コアの中心硬度より10〜35だけ高く、かつポリブタジエン、共架橋剤、有機過酸化物および充填材を必須成分として含有するゴム組成物を加熱成形して形成され、および
該カバー(3)が熱可塑性樹脂を基材樹脂として含有し、最外層カバーが厚さ1.5〜2.5mmおよびショアD硬度による表面硬度64〜72を有する
ことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。 - 前記内層コアが中心硬度59〜67を有する請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- 前記カバーが1層である請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
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