JP4423785B2 - 非水電解液およびそれを用いたリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池の過充電防止などの安全性およびサイクル特性、電気容量、保存特性などの電池特性にも優れたリチウム二次電池を提供することができる新規な非水電解液およびそれを用いたリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、リチウム二次電池は小型電子機器などの駆動用電源として広く使用されている。また、小型ビデオカメラ、携帯電話、ノート型パソコンなどの携帯用電子・通信機器のみならず、自動車用の電源としての期待も大きい。このリチウム二次電池は、主に正極、非水電解液および負極から構成されており、特に、LiCoO2などのリチウム複合酸化物を正極とし、炭素材料又はリチウム金属を負極としたリチウム二次電池が好適に使用されている。そして、そのリチウム二次電池用電解液の非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート類が好適に使用されている。
【0003】
しかしながら、電池のサイクル特性および保存特性などの電池特性について、さらに優れた特性を有する二次電池が求められている。従来のリチウム二次電池を、過酷な条件で充放電されたような場合、例えば長期にわたり4.3Vのように4.2Vを越える最大作動電圧まで充放電を繰り返したり、40℃を越える高温状態で長期にわたり充放電されるような場合には、徐々に容量低下がみられることが判明した。
この現象は、正極として、例えばLiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2などを用いたリチウム二次電池は、4.2Vを越える最大作動電圧まで充放電が繰り返されると、非水電解液中の溶媒が局部的に一部酸化分解し、該分解物が電池の望ましい電気化学的反応を阻害するために電池性能の低下を生じるものであり、これは正極材料と非水電解液との界面における溶媒の電気化学的酸化に起因するものと思われる。
【0004】
一方、このようなリチウム二次電池は、通常の作動電圧を上回るような過充電時に、正極からは過剰なリチウムが放出されると同時に、負極では過剰なリチウムの析出が生じて、デンドライトが生じる。そのため、正・負極の両極が化学的に不安定化する。正・負極の両極が化学的に不安定になると、やがては非水電解液中のカーボネート類と作用して分解し、急激な発熱反応が起こる。これによって、電池が異常に発熱し、電池の安全性が損なわれるという問題を生じる。このような状況は、リチウム二次電池のエネルギー密度が増加するほど重要な問題となる。
【0005】
このような問題を解決するため、電解液中に添加剤として少量の芳香族化合物を添加することによって、過充電に対して安全性を確保できるようにしたものが、例えば、特開平7−302614号公報において提案された。この特開平7−302614号公報では、電解液の添加剤として、分子量500以下で満充電時の正極電位よりも貴な電位に可逆性酸化還元電位を有するようなπ電子軌道を持つアニソール誘導体などを使用している。このようなアニソール誘導体は、電池内でレドックスシャトルすることにより、過充電に対して電池の安全性を確保している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平7−302614号公報に提案されたアニソール誘導体は、レドックスシャトルにより過充電に対して有効に作用するのに対して、サイクル特性や保存特性に悪影響を及ぼすという問題を生じた。提案されているアニソール誘導体は、40℃以上の高温や通常作動電圧で使用している場合に、局部的に少し高い電圧にさらされると充放電と共に徐々にアニソール誘導体が分解し、本来の電池特性が低下するという問題がある。したがって、通常の充放電と共に徐々にアニソール誘導体が分解して少なくなってしまうために、300サイクル後に過充電試験を行うと、安全を十分確保できないこともある。
【0007】
また、特開平9−106835号公報では、負極に炭素材料を用い、電解液の添加剤として、ビフェニル、3−R−チオフェン、3−クロロチオフェン、フランを約1〜4%使用して、電池の最大作動電圧を超える電圧でビフェニルなどが重合することによって、電池の内部抵抗を大きくして、過充電に対して電池の安全性を確保する方法が提案されている。前記公報や、特開平9−171840号公報、特開平10−321258号公報に提案されたビフェニル、3−R−チオフェン、3−クロロチオフェン、フランも同様に、過充電に対しては有効に作用するのに対して、特開平11−162512号公報において指摘されているように、4.1Vを越える電圧上限までサイクルが繰り返されたり、40℃以上の高温で長期間暴露される充放電状態では、サイクル特性などの電池特性を悪化させる傾向があり、添加量の増大に伴って、その傾向は顕著になるという問題点があることが記載されている。事実、通常使用時にビフェニルなどが酸化分解されるために、40℃以上の高温や通常作動電圧で使用している場合にも局部的に少し高い電圧にさらされると、徐々にビフェニルなどが分解して少なくなってしまうためにサイクル寿命が低下してしまう。更には、充放電と共に徐々にビフェニルなどが分解して少なくなってしまうために、300サイクル後に過充電試験を行うと、安全を十分確保できないこともある。
そこで、このような過酷な条件においても、長期にわたり優れたサイクル特性を有し、しかも過充電防止などの安全性に優れた非水電解液、およびそれを用いたリチウム二次電池の提供が望まれている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、前記のようなリチウム二次電池用電解液に関する課題を解決し、過酷な条件下において長期にわたり電池のサイクル特性に優れ、さらに保存特性などの電池特性および過充電防止などの安全性に優れたリチウム電池を構成することができるリチウム二次電池用の非水電解液、およびそれを用いたリチウム二次電池を提供することを目的として、鋭意検討の結果、電解液中に特定のジスルフィド誘導体を少量添加することにより、サイクル特性が向上することを見出し、さらに、非水電解液中に特定のジスルフィド誘導体と共にシクロヘキシルベンゼンを添加することにより、さらにサイクル特性が向上すると共に、過充電防止効果を有することを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明は、非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液において、該非水電解液中に、下記式(I)または式(II)、
【0010】
【化5】
【0011】
【化6】
【0012】
(ただし、式中、X1、X2はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数7〜15のアラルキル基、炭素数2〜7のアシル基、炭素数1〜7のアルカンスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基、炭素数2〜7のエステル基を示す。また、X3、X4はそれぞれ独立してF、Cl、Br、I、CF3、CCl3、CBr3を示す。)で表されるジスルフィド誘導体から選ばれる少なくとも1種以上が0.001〜5重量%、およびシクロヘキシルベンゼンが0.1〜5重量%含有されていることを特徴とする非水電解液に関する。
また、本発明は、正極、負極および非水電溶媒に電解質が溶解されている電解液からなるリチウム二次電池において、該非水電解液中に、下記式(I)または式(II)、
【0013】
【化7】
【0014】
【化8】
【0015】
(ただし、式中、X1、X2はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数7〜15のアラルキル基、炭素数2〜7のアシル基、炭素数1〜7のアルカンスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基、炭素数2〜7のエステル基を示す。また、X3、X4はそれぞれ独立してF、Cl、Br、I、CF3、CCl3、CBr3を示す。)で表されるジスルフィド誘導体から選ばれる少なくとも1種以上が0.001〜5重量%、およびシクロヘキシルベンゼンが0.1〜5重量%含有されていることを特徴とするリチウム二次電池に関する。
【0016】
本発明において、前記ジスルフィド誘導体と共に、前記シクロヘキシルベンゼンを含有した非水電解液は、ジスルフィド誘導体やシクロヘキシルベンゼンを全く添加しない非水電解液に比べて、上限電圧が4.2Vより高電圧及び/又は40℃以上の高温状態の充放電という過酷な条件において、サイクル特性が飛躍的に向上する特異的かつ予期し得ない効果を示す。この作用機構は、推測の域を脱しないが、充電時に正極材料表面の電位が過度に上昇した微小な過電圧部分において、電池内の非水溶媒より前にジスルフィド誘導体が正極上で酸化分解し、薄い分解被膜を形成し、溶媒の酸化分解を未然に防ぐものと推定される。なお、5重量%を越えて過度にジスルフィド誘導体を添加すると、充電時に正極上で酸化分解する添加剤量が増大し、電池特性を損なうような厚い分解被膜を電極上に形成してしまうため、ジスルフィド誘導体を全く添加しない非水電解液よりもサイクル特性などの電池特性を悪化させるものと考えられる。
【0017】
さらに、前記ジスルフィド誘導体と共に前記シクロヘキシルベンゼンを含有させることにより、過酷な条件下においても、長期間にわたってサイクル特性を向上させることができる。その理由としては、充電時に正極材料表面の電位が過度に上昇した微小な過電圧部分において、電池内の非水溶媒電解液より前に該ジスルフィド誘導体が優先的に酸化分解して、溶媒の酸化分解を未然に防ぐものと推定される。このようにして、電池の正常な反応を損なうことなく電解液およびシクロヘキシルベンゼンの分解を抑制する効果を有するものと考えられる。その結果、過充電防止作用を有する前記シクロヘキシルベンゼンは、通常使用時に酸化分解されることがない。したがって、300サイクル後に過充電試験を行っても、シクロヘキシルベンゼンが分解して安全を十分確保する効果を有するものと考えられる。
【0018】
さらに、非水電解液中に含有される前記ジスルフィド誘導体およびシクロヘキシルベンゼンは、40℃以上の高温や通常作動電圧で充放電を繰り返しても、前記有機溶媒が分解することがない。これにより、電池の過充電防止などの安全性に優れているだけではなく、サイクル特性、電気容量、保存特性などの電池特性にも優れたリチウム二次電池を提供することができるものと考えられる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の非水電解液は、リチウム二次電池の構成部材として使用される。二次電池を構成する非水電解液以外の構成部材については特に限定されず、従来使用されている種々の構成部材を使用できる。
【0020】
非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液に含有される前記式(I)で表されるジスルフィド誘導体において、X1、X2はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基のような炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。アルキル基はイソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基のような分枝アルキル基でもよく、シクロプロピル基、シクロヘキシル基のようなシクロアルキル基でもよい。また、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基のようなアルケニル基でもよく、エチニル基、2−プロピニル基のようなアルキニル基でもよい。また、フェニル基、p−トリル基などのアリール基や、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基でもよい。また、アセチル基、プロピオニル基、アクリロイル基、ベンゾイル基などのアシル基でもよく、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基などのスルホニル基でもよい。さらに、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などのエステル基でもよい。
また、前記式(II)で表されるジスルフィド誘導体において、X3、X4はF、Cl、Br、Iのようなハロゲン原子、あるいは、CF3、CCl3、CBr3のようなハロゲン原子を含有した置換基が好ましい。
【0021】
前記一般式(I)で表されるジスルフィド誘導体の具体例としては、例えば、ビス(4−メトキシフェニル)ジスルフィド〔X1、X2=メチル基〕、ビス(3−メトキシフェニル)ジスルフィド〔X1、X2=メチル基〕、ビス(2−メトキシフェニル)ジスルフィド〔X1、X2=メチル基〕、ビス(4−エトキシフェニル)ジスルフィド〔X1、X2=エチル基〕、ビス(4−イソプロポキシフェニル)ジスルフィド〔X1、X2=イソプロピル基〕、ビス(4−シクロヘキシルオキシフェニル)ジスルフィド〔X1、X2=シクロヘキシル基〕、ビス(4−アリルオキシフェニル)ジスルフィド〔X1、X2=アリル基〕、ビス〔4−(2−プロピニルオキシ)フェニル〕ジスルフィド〔X1、X2=2−プロピニル基〕、ビス(4−フェノキシフェニル)ジスルフィド〔X1、X2=フェニル基〕、ビス(4−アセトキシフェニル)ジスルフィド〔X1、X2=アセチル基〕、ビス(4−ベンゾイルオキシフェニル)ジスルフィド〔X1、X2=ベンゾイル基〕、ビス(4−メタンスルホニルオキシフェニル)ジスルフィド〔X1、X2=メタンスルホニル基〕、ビス(4−ベンゼンスルホニルオキシフェニル)ジスルフィド〔X1、X2=ベンゼンスルホニル基〕、ビス(4−メトキシカルボニルオキシフェニル)ジスルフィド〔X1、X2=メトキシカルボニル基〕、ビス(4−フェノキシカルボニルオキシフェニル)ジスルフィド〔X1、X2=フェノキシカルボニル基〕などが挙げられる。
また、前記一般式(II)で表されるジスルフィド誘導体の具体例としては、例えば、ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド〔X3、X4=F〕、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド〔X3、X4=Cl〕、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド〔X3、X4=Br〕、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド〔X3、X4=I〕、ビス(4−トリフルオロメチルフェニル)ジスルフィド〔X3、X4=CF3〕、ビス(4−トリクロロメチルフェニル)ジスルフィド〔X3、X4=CCl3〕、ビス(4−トリブロモメチルフェニル)ジスルフィド〔X3、X4=CBr3〕が挙げられる。
【0022】
非水電解液中に含有される前記ジスルフィド誘導体の含有量は、過度に多いと上限電圧が4.2Vより高電圧及び/又は40℃以上の高温状態の充放電において電池性能が低下する。また、過度に少ないと期待した十分な電池性能が得られない。したがって、その含有量は非水電解液の重量に対して0.001〜5重量%、好ましくは0.001〜1重量%、更に好ましくは、0.01〜0.7重量%、最も好ましくは0.03〜0.5重量%の範囲が長期間にわたってサイクル特性が向上するのでよい。
【0023】
また、非水電解液中に含有されるシクロヘキシルベンゼンの含有量は、過度に多いと非水電解液の電導度などが変わり電池性能が低下することがあり。また、過度に少ないと期待した分解被膜が形成されず、期待した過充電に対する電池特性が得られないので、非水電解液の重量に対して0.1〜5重量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、0.5〜3重量%の範囲である。
【0024】
本発明で使用される非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ジメチルビニレンカーボネート(DMVC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)などの環状カーボネート類や、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、メチルイソプロピルカーボネート(MiPC)、メチルブチルカーボネート(MBC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジブチルカーボネート(DBC)などの鎖状カーボネート類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類、プロピオン酸メチル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸オクチルなどのエステル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類が挙げられる。
【0025】
これらの非水溶媒は、1種類で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。非水溶媒の組み合わせは特に限定されないが、例えば、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせ、環状カーボネート類とラクトン類との組み合わせなど種々の組み合わせが挙げられる。
【0026】
さらに、本発明で使用される非水溶媒としては、例えば、メチル 2−プロピニルカーボネート、メタンスルホン酸2−プロピニル、2−ブチン−1,4−ジオール ジメチルジカーボネート、1,3−プロパンスルトン、ジビニルスルホンおよび1,4−ブタンジオールジメタンスルホネートから選ばれる少なくとも1種以上が0.01〜10重量%含有されると、さらにサイクル特性を改善する効果があるので好ましい。
【0027】
本発明で使用される電解質としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiC(SO2CF3)3、LiPF4(CF3)2、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(CF3)3、LiPF3(iso−C3F7)3、LiPF5(iso−C3F7)などが挙げられる。これらの電解質は、一種類で使用してもよく、二種類以上組み合わせて使用してもよい。これら電解質は、前記の非水溶媒に通常0.1〜3M、好ましくは0.5〜1.5Mの濃度で溶解されて使用される。
【0028】
本発明の非水電解液は、例えば、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを混合し、これに前記の電解質を溶解し、前記ジスルフィド誘導体および前記シクロヘキシルベンゼンを溶解することにより得られる。
【0029】
例えば、正極活物質としてはコバルトまたはニッケルを含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。このような複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiCo1-xNixO2(0.01<x<1)、LiMn2O4などが挙げられる。また、LiCoO2とLiMn2O4、LiCoO2とLiNiO2、LiMn2O4とLiNiO2のように適当に混ぜ合わせて使用しても良い。
【0030】
正極は、前記の正極活物質をアセチレンブラック、カーボンブラックなどの導電剤およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの結着剤と混練して正極合剤とした後、この正極材料を集電体としてのアルミニウムやステンレス製の箔やラス板に圧延して、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製される。
【0031】
負極(負極活物質)としては、リチウム金属やリチウム合金、またはリチウムを吸蔵・放出可能な炭素材料〔熱分解炭素類、コークス類、グラファイト類(人造黒鉛、天然黒鉛など)、有機高分子化合物燃焼体、炭素繊維〕、または複合スズ酸化物などの物質が使用される。特に、格子面(002)の面間隔(d002)が0.335〜0.340nm(ナノメーター)である黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが好ましい。なお、炭素材料のような粉末材料はエチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの結着剤と混練して負極合剤として使用される。
【0032】
リチウム二次電池の構造は特に限定されるものではなく、単層又は複層の正極、負極、セパレータを有するコイン型電池やポリマー電池、さらに、ロール状の正極、負極およびロール状のセパレータを有する円筒型電池や角型電池などが一例として挙げられる。なお、セパレータとしては公知のポリオレフィンの微多孔膜、織布、不織布などが使用される。
【0033】
本発明におけるリチウム二次電池は、最大作動電圧が4.2Vより大きい場合にも長期間にわたり、優れたサイクル特性を有しており、特に最大作動電圧が4.3Vのような場合にも優れたサイクル特性を有している。カットオフ電圧は、2.0V以上とすることができ、さらに2.5V以上とすることができる。電流値については特に限定されるものではないが、通常0.1〜3Cの定電流放電で使用される。また、本発明におけるリチウム二次電池は、−40〜100℃と広い温度範囲で充放電することができ、特に従来サイクル特性の低下が大きくなる40℃以上の高温での使用においても、高いサイクル特性を有しており、使用環境温度が40〜60℃となるような高温タイプのリチウム二次電池として好適に使用できる。
【0034】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
実施例1
〔電解液の調製〕
EC/PC/DEC(容量比)=30/5/65の非水溶媒を調製し、これにLiPF6を1Mの濃度になるように溶解して非水電解液を調製した後、さらに前記ジスルフィド誘導体としてビス(4−メトキシフェニル)ジスルフィドを非水電解液に対して0.2重量%、およびシクロヘキシルベンゼン(CHB)を3重量%となるように加えた。
【0035】
〔リチウム二次電池の作製および電池特性の測定〕
LiCoO2(正極活物質)を90重量%、アセチレンブラック(導電剤)を5重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を5重量%の割合で混合し、これに1−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリー状にしてアルミ箔上に塗布した。その後、これを乾燥し、加圧成形して正極を調製した。人造黒鉛(負極活物質)を95重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を5重量%の割合で混合し、これに1−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリー状にして銅箔上に塗布した。その後、これを乾燥し、加圧成形して負極を調製した。そして、ポリプロピレン微多孔性フィルムのセパレータを用い、上記の電解液を注入して18650サイズの円筒型電池(直径18mm、高さ65mm)を作製した。電池には、圧力開放口および内部電流遮断装置を設けた。
この18650電池を用いて、サイクル試験するために、高温(45℃)下、1.45A(1C)の定電流で4.25Vまで充電した後、終止電圧4.25Vとして定電圧下に合計3時間充電した。次に1.45A(1C)の定電流下、終止電圧2.7Vまで放電し充放電を繰り返した。初期放電容量は、1M LiPF6+EC/PC/DEC(容量比)=30/5/65を電解液として用いた場合(比較例1)と比較して同等であった。300サイクル後の電池特性を測定したところ、初期放電容量を100%としたときの放電容量維持率は84.3%であった。また、高温保存特性も良好であった。さらに、サイクル試験を300回繰り返した18650電池を用いて、常温(20℃)下、満充電状態から2.9A(2C)の定電流で続けて充電することにより、過充電試験を行った。この時、電流遮断時間は16分、電流遮断後の電池の最高表面温度は79℃であった。18650サイズの円筒型電池の材料条件および電池特性を表1に示す。
【0036】
実施例2
ジスルフィド誘導体としてビス(4−エトキシフェニル)ジスルフィドを非水電解液に対して0.3重量%使用し、シクロヘキシルベンゼンを2重量%使用したほかは実施例1と同様にして、18650サイズの円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0037】
実施例3
ジスルフィド誘導体としてビス(4−クロロフェニル)ジスルフィドを非水電解液に対して0.2重量%使用し、シクロヘキシルベンゼンを2重量%使用したほかは実施例1と同様にして、18650サイズの円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0038】
比較例1
ジスルフィド誘導体およびシクロヘキシルベンゼンを全く添加しなかったほかは実施例1と同様に実施例1と同様にして、18650サイズの円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0039】
参考例1
シクロヘキシルベンゼンを全く使用しなかったほかは実施例1と同様にして、18650サイズの円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0040】
参考例2
ジスルフィド誘導体を全く使用しなかったほかは実施例1と同様にして、18650サイズの円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0041】
実施例4
負極活物質として、人造黒鉛に代えて天然黒鉛を使用したほかは実施例1と同様にして、18650サイズの円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0042】
実施例5
正極活物質として、LiCoO2に代えてLiNi0.8Co0.2O2を使用したほかは実施例1と同様に、18650サイズの円筒型電池を作製し、電池性能を測定した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および電池特性を表1に示す。
【0043】
参考例3
ジスルフィド誘導体を全く使用しなかったほかは実施例5と同様に、18650サイズの円筒型電池を作製し、電池性能を測定した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および電池特性を表1に示す。
【0044】
参考例4
シクロヘキシルベンゼンを全く使用しなかったほかは実施例5と同様に、18650サイズの円筒型電池を作製し、電池性能を測定した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および電池特性を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
実施例6〜12
表2に示す条件のほかは、実施例1と同様に、18650サイズの円筒型電池を作製し、電池性能を測定した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および電池特性を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
なお、本発明は記載の実施例に限定されず、発明の趣旨から容易に類推可能な様々な組み合わせが可能である。特に、上記実施例の溶媒の組み合わせは限定されるものではない。更には、上記実施例は18650サイズの円筒型電池に関するものであるが、本発明は角型、アルミラミネート型、コイン型の電池にも適用される。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、電池の過充電防止などの安全性およびサイクル特性、電気容量、保存特性などの電池特性にも優れたリチウム二次電池を提供することができる。
Claims (2)
- 非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液において、該非水電解液中に、下記式(I)または式(II)、
- 正極、負極および非水電溶媒に電解質が溶解されている非水電解液からなるリチウム二次電池において、該非水電解液中に、下記式(I)または式(II)、
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