JP4419343B2 - Fpdの保護膜用蒸着材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、PDP(Plasma Display Panel:プラズマディスプレイパネル)、PALC(Plasma Addressed Liquid Crystal display)等のFPD(Flat Panel Display)の保護膜を成膜するのに好適な蒸着材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ここ数年、液晶(Liquid Crystal Disply:以下、LCDという)をはじめとして、各種の平面ディスプレイの研究開発と実用化はめざましく、その生産も急増している。カラープラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)についても、その開発と実用化の動きが最近活発になっている。PDPは大型化し易く、ハイビジョン用大画面壁掛けテレビの最短距離にあり、既に対角40インチクラスのPDPの試作が進められている。このようなPDPを含むFPDでは、ガラス誘電体層が直接放電にさらされ、イオン衝撃のスパッタリングにより誘電体層表面が変化して、放電開始電圧が上昇していた。そのため、高い昇華熱を持つ種々の酸化物を保護膜とすることが行われる。
【0003】
従来、この保護膜を形成する方法として、電子ビーム蒸着法,スパッタリング法,イオンプレーティング法などの真空プロセスを用いてFPDの保護膜を形成する方法が知られている。電子ビーム蒸着法及びイオンプレーティング法では、保護膜を形成するための原料である蒸着材と、保護膜を形成させるFPDを真空容器内に設置し、高真空下において蒸着材を加熱、又は電子ビームやプラズマ等を用いて蒸発させ、その蒸気をFPDの表面に薄膜として凝着させている。
一方、PDPの保護膜は直接、放電空間に接しているため、放電特性に最も重要な役割を担うキーマテリアルであり、従来より2次電子放出能が高く、耐スパッタ性,光透過性及び絶縁性に優れた膜を形成すべく、保護膜を形成するための原料としてアルカリ土類金属酸化物を蒸着材として使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このアルカリ土類金属酸化物は蒸着材として使用される以前に大気中に曝されると、容易にCO2やH2Oと反応して変質することから、アルカリ土類金属酸化物からなる蒸着材を真空容器内部に設置した後、真空加熱下での長時間の脱ガス排気処理が必要であることが知られている。即ち、比較的長い時間をかけて脱ガス排気処理を行わないと、蒸着材の変質した表面から多量に生じるH2O,H2,O2,CO,CO2,N2等の不純物ガスが得られた保護膜の特性に不具合を生じさせることが知られている。
本発明の目的は、容器内部に設置した直後の脱ガス排気処理時間を短縮し得るFPDの保護膜用蒸着材及びその製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、特性が安定した均一な成膜が可能なFPDの保護膜用蒸着材及びその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、表面がフッ化物層12で覆われた多結晶体11,焼結体又は単結晶体により形成されたFPDの保護膜用蒸着材であって、多結晶体11,焼結体又は単結晶体が、MgO,CaO,SrO,BaO,又はアルカリ土類複合酸化物のいずれかにより形成され、フッ化物層12がガス状フッ素化剤とMgO,CaO,SrO,BaO,又はアルカリ土類複合酸化物のいずれかとの反応によって得られたことを特徴とする。
この請求項1に記載されたFPDの保護膜用蒸着材では、多結晶体11,焼結体又は単結晶体の表面がフッ化物層12により被覆されるため、この蒸着材10が大気中に長時間曝されても、多結晶体11,焼結体又は単結晶体が大気中のCO2ガスやH2Oガスと殆ど反応しない。この結果、容器内部にこの蒸着材10を設置した後に発生する有害物質の量は従来より抑制され、この有害物質を除去するために従来から行われている脱ガス排気処理を短縮又はそのガス処理工程を省くことが可能になり、FPDの製造コストを従来より低減できる。更にこの蒸着材によれば、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法等により保護膜をFPDに成膜する際に、H 2 O,H 2 ,O 2 ,CO,CO 2 ,N 2 等の不純物ガスが発生させることなく蒸発するので、高速安定性膜が可能となり、かつ膜の緻密性は向上し、特性が安定した均一な成膜が可能になる。
【0007】
請求項2に係る発明は、MgO,CaO,SrO,BaO,又はアルカリ土類複合酸化物のいずれかの多結晶体11,焼結体又は単結晶体を形成する工程と、その多結晶体11,焼結体又は単結晶体をガス状フッ素化剤にて表面処理することにより多結晶体11,焼結体又は単結晶体の表面にフッ化物層12を形成する工程とを含むFPDの保護膜用蒸着材の製造方法である。
この請求項2に記載されたFPDの保護膜用蒸着材の製造方法では、大気中に長時間曝されても大気中のCO2ガスやH2Oガスと殆ど反応しない蒸着材を比較的容易に得ることができる。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明であって、ガス状フッ素化剤がフッ素ガス、フッ化水素ガス、BF3、SbF5又はSF4のいずれかであるFPDの保護膜用蒸着材の製造方法である。
この請求項3に記載されたFPDの保護膜用蒸着材の製造方法では、多結晶体11,焼結体又は単結晶体の表面にフッ化物層12を比較的容易に形成することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明のFPDの保護膜用蒸着材10は、表面がフッ化物層12で覆われた多結晶体11により形成される。多結晶体11は、MgO,CaO,SrO,BaO,又はアルカリ土類複合酸化物のいずれかの粉末を用いて形成される。多結晶体11を得る方法は、特に限定しないが、粉末を成型し、焼結させる(焼結体)方法が一般的に広く知られている。図1には表面がフッ化物層12で覆われた多結晶体11により形成された保護膜用蒸着材10を示すが、本発明のFPDの保護膜用蒸着材10は、表面がフッ化物層12で覆われた単結晶体により形成しても良い。単結晶体の作製方法は特に限定しないが、アーク溶融法が一般的に広く知られている(J.Chem.Phys.35[8].p.3752-6.(1971))。
【0010】
一方フッ化物層12は、多結晶体11を形成するMgO,CaO,SrO,BaO,又はアルカリ土類複合酸化物のいずれかと、ガス状フッ素化剤との反応によって得ることができる。ガス状フッ素化剤としては反応性の高さや汎用性の観点からフッ素ガス、フッ化水素ガス、BF3、SbF5又はSF4のいずれか、特にフッ素ガス又はフッ化水素ガスを用いることが好ましい。またフッ化物層12の厚さはMgO等のCO2ガスやH2Oガスとの反応阻止向上と、MgO等とガス状フッ素化剤との反応時間とのバランスにより決定され、好ましくは0.1nm〜100μmの範囲内、更に好ましくは1nm〜1μmの範囲内に形成される。フッ化物層12の厚さを0.1nm〜100μmの範囲内に限定したのは、100μmを越えると、MgO等とガス状フッ素化剤との反応時間が長くなって作業性が悪くなるためである。
【0011】
次にこのFPDの保護膜用蒸着材10の製造方法を説明する。
このFPDの保護膜用蒸着材10の製造方法は、MgO,CaO,SrO,BaO,又はアルカリ土類複合酸化物のいずれかの粉末を用いて多結晶体11を形成する工程と、その多結晶体11をガス状フッ素化剤にて表面処理することによりその多結晶体11の表面にフッ化物層12を形成する工程とを含む。
【0012】
[1]多結晶体11の形成
ここでは、多結晶体11を得る方法として、焼結により得る方法を示すが、本発明の内容を限定するものではない。多結晶体11を形成する工程では、先ずMgO,CaO,SrO,BaO,又はアルカリ土類複合酸化物のいずれかの粉末を所定量準備する。この準備する粉末の平均粒径は0.01〜100μmの範囲内にあることが好ましい。粉末の平均粒径が0.01μm未満では、粉末が細かすぎて凝集するため、粉末のハンドリングが悪くなり、高濃度スラリーを調製することが困難となるためであり、100μmを越えると、微細構造の制御が難しく、緻密な多結晶体11が得られないからである。またMgO等の粉末の平均粒径を上記範囲に限定すると、焼結助剤を用いなくても所望の多結晶体11が得られる利点もある。
【0013】
次に、それらのいずれかの粉末とバインダと有機溶媒とを混合してスラリーを調製する。この時のスラリーの濃度は40〜70重量%であることが好ましく、70重量%を越えると上記スラリーが非水系であるため、安定した造粒が難しい問題点があり、40重量%未満では均一な組織を有する緻密な多結晶体11が得られいないからである。即ち、スラリー濃度を上記範囲に限定すると、スラリーの粘度が200cps以下となり、例えばスプレードライヤによる粉末の造粒を安定して行うことができ、更には成形体の密度が高くなって緻密な多結晶体11の製造が可能になる。
【0014】
また粉末とバインダと有機溶媒との湿式混合、特に粉末と分散媒である有機溶媒との湿式混合は、湿式ボールミル又は撹拌ミルにより行われる。湿式ボールミルでは、ZrO2製ボールを用いる場合には、直径5〜10mmの多数のZrO2製ボールを用いて8〜24時間、好ましくは20〜24時間湿式混合される。ZrO2製ボールの直径を5〜10mmと限定したのは、5mm未満では混合が不十分となることからであり、10mmを越えると不純物が増大する不具合があるからである。また混合時間が最長24時間と長いのは、長時間連続混合しても不純物の発生が少ないからである。一方、湿式ボールミルにおいて、鉄芯入りの樹脂製ボールを用いる場合には、直径10〜15mmのボールを用いることが好ましい。
【0015】
撹拌ミルでは、直径1〜3mmのZrO2製ボールを用いて0.5〜1時間湿式混合される。ZrO2製ボールの直径を1〜3mmと限定したのは、1mm未満では混合が不十分となることからであり、3mmを越えると不純物が増える不具合があるからである。また混合時間が最長1時間と短いのは、1時間を越えると原料の混合のみならず粉砕の仕事をするため、不純物の発生の原因となり、また1時間もあれば十分に混合できるからである。
【0016】
次に上記スラリーを噴霧乾燥して平均粒径が50〜300μm、好ましくは50〜200μmの造粒粉末を得た後、この造粒粉末を所定の型に入れて所定の圧力で成形する。ここで、造粒粉末の平均粒径を50〜300μmと限定したのは、50μm未満では成形性が悪い不具合があり、300μmを越えると成形体密度が低く強度も低い不具合があるからである。上記噴霧乾燥はスプレードライヤを用いて行われることが好ましい。またペレットの成形には、メカニカルプレス法、タブレットマシン法又はブリケットマシン法のいずれかの金型プレス法を用いて行われることが好ましい。
【0017】
図2に一例としてメカニカルプレス法に使用されるメカニカルプレス装置13を示す。この装置13は、円筒状の型13aと、この型13aに下方から挿入される下ポンチ13bと、型13aに上方から挿入される上ポンチ13cとを備える。この装置13で造粒粉末14を成形するには、先ず円筒状の型13aに円柱状の下ポンチ13bを下方から挿入した状態で造粒粉末14を上記型13a内に投入し(図2(a))、上ポンチ13cを型13aに上方から挿入して造粒粉末14の圧密を行う(図2(b))。次に上ポンチ13cを抜いた後、下ポンチ13bによりペレット状の成形体16を突上げてこの成形体16を取出す(図2(c))。また上記メカニカルプレス法によるプレス圧力は300〜2000kg/cm2、好ましくは500〜1000kg/cm2である。プレス圧を上記範囲に限定したのは、300kg/cm2未満では所定の密度が得られず、2000kg/cm2を越えると割れや欠けの原因となる層状の亀裂(ラミネーション)が発生するからである。また高圧プレスを用いると、高強度の金型を必要とし成形装置が大型化するため、成形コストが上昇し好ましくない。この原料粉末にはバインダが混合されているため、比較的小さな圧力でも十分に強度が高くかつ密度の大きい成形体16を得ることができる。
【0018】
更にペレット状の成形体16を所定の温度で焼結する。焼結する前に成形体16を350〜620℃の温度で脱脂処理することが好ましい。この脱脂処理は成形体16の焼結後の色むらを防止するために行われ、時間をかけて十分に行うことが好ましい。焼結は1500℃〜1700℃の温度で行うことが好ましい。焼結温度を1500℃〜1700℃に限定したのは、1500℃未満では緻密な焼結体が得られず、1700℃を越えると粒成長が著しく速く、特性が低下するからである。また、成形体を不活性ガス雰囲気中で焼結する場合には、不活性ガスとしてアルゴンガスを用いることが好ましい。このようにして相対密度が95%以上の緻密な多結晶体11が得られる。
【0019】
[2]フッ化物層12の形成
次に、上述したようにして得られた多結晶体11の表面にフッ化物層12を形成する。このフッ化物層12の形成は、その多結晶体11をガス状フッ素化剤雰囲気中(温度10〜100℃)に0.1〜120分間保持して多結晶体11の表面を改質し、多結晶体11の表面にフッ化物層12を形成する。上記ガス状フッ素化剤としてはフッ素ガス、フッ化水素ガス、BF3、SbF5又はSF4のいずれか、特にフッ素ガス又はフッ化水素ガスを用いることが好ましく、このガス状フッ素化剤の圧力は好ましくは1〜760Torr、更に好ましくは10〜300Torrの範囲内に設定される。ガス状フッ素化剤の圧力を1〜760Torrの範囲内に限定したのは反応進行度、即ちフッ化物層12の厚さの制御を容易にするためである。
【0020】
フッ化物層12の形成は、多結晶体11を真空中又は不活性ガス中で形成し、この多結晶体11を大気に暴露させることなくガス状フッ素化剤にて表面処理することが好ましい。しかし、多結晶体11を大気に暴露した場合には、その多結晶体11を大気中で焼成して多結晶体11を活性化させ、ガス状フッ素化剤にて表面処理することにより多結晶体11の表面にフッ化物層12を形成することが好ましい。この場合の多結晶体11の大気中での焼成温度は250〜550℃、好ましくは350〜450℃であり、焼成時間は0.1〜24時間、好ましくは0.2〜1時間である。上記範囲の温度及び時間で焼成することにより多結晶体11が活性化される。このような処理を施すことにより、多結晶体11の表面にFPDに有害なMgO等の炭酸塩(MgCO3等)や水酸化物(Mg(OH)2等)が生成されても、多結晶体11を大気中で焼成することにより多結晶体11が活性化され、多結晶体11の表面のMgO等の炭酸塩(MgCO3等)や水酸化物(Mg(OH)2等)がCO2及びH2Oとして除去される。この状態で多結晶体11の表面にフッ化物層12を形成することにより、多結晶体11の表面がフッ化物層12により保護され、MgO等の炭酸塩(MgCO3等)や水酸化物(Mg(OH)2等)の生成を防止或いは抑制することができる。
【0021】
このように製造されたFPDの保護膜用蒸着材10では、多結晶体11の表面がフッ化物層12により被覆されるため、この蒸着材10が大気中に長時間曝されても、多結晶体11が大気中のCO2ガスやH2Oガスと殆ど反応しない。この結果、真空成膜容器内部にこの蒸着材10を設置した後行われる脱ガス排気処理を従来より短縮することが可能になり、FPDの製造コストを低減できる。
また、この蒸着材10では多結晶体11の表面が変質しないことから、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法等により保護膜をFPDに成膜する際に、H2O,H2,O2,CO,CO2,N2等の不純物ガスを発生させることなく蒸着材10が蒸発するので、高速安定性膜が可能となり、かつ膜の緻密性は向上する。また上記蒸着材10を用いて成膜した基板をPDPに組み込んだとき、放電時の耐スパッタ性を向上できる。従って、上記保護膜はAC型PDPの保護膜の成膜に好適であり、また高機能セラミック材料の保護膜などにも適用できる。
【0022】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。ここでは、多結晶体を用いた例を示すが、単結晶体でも同様であり、発明内容を限定するものではない。
<比較例1〜29>
表3及び表4の材料欄に示すMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物若しくは希土類酸化物,又はアルカリ土類酸化物及び希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末を準備した。この粉末にバインダとしてのポリビニールブチラールと分散剤としてのエタノールを添加し、撹拌ミルで1時間湿式混合し、濃度が50%の混合スラリーに調製した。この混合スラリーをスプレードライヤで噴霧乾燥して造粒することにより造粒粉末を得た。この造粒粉末を金型(内径が6mmで深さが3mmの金型)に充填し、メカニカルプレスで成形して成形体を作製した。この成形体を大気雰囲気中、1650℃に昇温し、焼結炉(広築社製)で3時間焼結することにより直径が約5mmの多結晶体11を得た。これらの多結晶体11単体から成り、フッ化物層12を有しない蒸着材を比較例1〜29とした。
【0023】
<実施例1〜29>
比較例1〜29と同一の手順により比較例1〜29と同一の複数種類の多結晶体11を得た。これら複数種類の多結晶体11を、圧力が35TorrのHFガス雰囲気中(温度25℃)に10分間保持してそれぞれの多結晶体11の表面を改質し、多結晶体11の表面にフッ化物層12をそれぞれ形成した。このように多結晶体11の表面がフッ化物層12で覆われた蒸着材10を実施例1〜29とした。この実施例1〜29におけるそれぞれの多結晶体11の材料を表1及び表2に示す。
【0024】
<比較試験1>
比較例1〜29及び実施例1〜29におけるそれぞれの蒸着材10が得られた時点でその重量を測定し、その後7日間大気中に放置し、7日後の重量を再び測定し、重量の増加率(%)を計算した。この結果を表1〜表4に示す。
<比較試験2>
次に、7日間大気中に放置された比較例1〜29及び実施例1〜29におけるそれぞれの蒸着材10を用い、電子ビーム蒸着法によりガラス基板21に成膜した。なお、保護膜24の成膜条件は、真空成膜容器内部に蒸着材10を設置した後に蒸着材を加熱しながら脱ガス排気処理を10分間実施し、その後加速電圧が15kV、蒸着圧力が1×10-2Pa、蒸着距離が600mmの条件で成膜した。
これらガラス基板20上の膜の成膜速度及び相対密度を以下の方法で測定した。即ち、成膜速度(Å/sec)は得られた膜の断面を高分解能SEMにより観察して、膜厚(Å)を求め、成膜時間(sec)で除して算出した。相対密度(%)は、材料の真密度(g/cm3)との比より算出した。蒸着材が2成分の単純な混合物で構成される場合(例えばMgO+CaO)、A成分とB成分の存在比を求め、A成分(真密度αg/cm3)がX、B成分(真密度βg/cm3)が(1−X)の場合膜の真密度を{Xα+(1−X)β}(g/cm3)として算出した。これらの結果を表1〜表4に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】
表1〜表4から明らかなように、比較例1〜29に比較してその比較例1〜29に対応する実施例1〜29の重量増加率は著しく低いことが判る。蒸着材の重量は、多結晶体が大気中にのCO2やH2Oと反応して変質することにより増加するため、重量増加率が高い比較例1〜29における蒸着材の表面はかなり変質したものと解される。一方、実施例1〜29における蒸着材の重量増加率は著しく低いので、その多結晶体の変質の程度が比較例1〜29に比較して低いことが判る。これは多結晶体の表面をフッ化物層で覆ったことに起因するものと考えられる。
また、実施例1〜29の成膜速度は比較例1〜29に比較して高く、かつ相対密度も高いことが判る。これは、保護膜24の成膜に際に、実施例1〜29の蒸着材10は比較例1〜29の蒸着材に比較して不純物ガスの発生が少ないことに起因していると考えられる。これにより本発明の蒸着材を用いて保護膜が形成されたFPDでは、膜の耐スパッタ性が高くなり、その寿命が向上することが判る。
【0030】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、多結晶体の表面をフッ化物層で覆ったので、大気中に長時間曝されても多結晶体が大気中のCO2ガスやH2Oガスと反応することはない。この結果、真空成膜容器内部にこの蒸着材を設置した後の蒸着材からの有害物質の発生は従来より抑制され、この有害物質を除去するために従来から行われている脱ガス排気処理を短縮又は脱ガス処理工程を省くことが可能になり、FPDの製造コストを低減できる。
また、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法等により保護膜をFPDに成膜する際に、H2O,H2,O2,CO,CO2,N2等の不純物ガスを発生させることなく蒸着材か蒸発するので、高速安定性膜が可能となり、かつ膜の緻密性は向上し、特性が安定した均一な成膜が可能になる。
更に上記蒸着材を用いてFPDを製造すれば、FPDの製造工数を大幅に低減できるので、安価にFPDを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蒸着材の断面図。
【図2】メカニカルプレス法により多結晶体を成形する工程図。
【符号の説明】
10 蒸着材
11 多結晶体
12 フッ化物層
Claims (3)
- 表面がフッ化物層(12)で覆われた多結晶体(11),焼結体又は単結晶体により形成されたFPDの保護膜用蒸着材であって、
前記多結晶体(11),焼結体又は単結晶体が、MgO,CaO,SrO,BaO,又はアルカリ土類複合酸化物のいずれかにより形成され、
前記フッ化物層(12)がガス状フッ素化剤とMgO,CaO,SrO,BaO,又はアルカリ土類複合酸化物のいずれかとの反応によって得られたことを特徴とするFPDの保護膜用蒸着材。 - MgO,CaO,SrO,BaO,又はアルカリ土類複合酸化物のいずれかの多結晶体(11),焼結体又は単結晶体を形成する工程と、
前記多結晶体(11),焼結体又は単結晶体をガス状フッ素化剤にて表面処理することにより前記多結晶体(11),焼結体又は単結晶体の表面にフッ化物層(12)を形成する工程と
を含むFPDの保護膜用蒸着材の製造方法。 - ガス状フッ素化剤がフッ素ガス、フッ化水素ガス、BF3、SbF5又はSF4のいずれかである請求項2記載のFPDの保護膜用蒸着材の製造方法。
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