JP4417822B2 - 緩衝器 - Google Patents

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Description

この発明は、緩衝器に関し、特にピストン変位に依存した減衰特性を備えた緩衝器の改良に関する。
一般的に緩衝器は、車両、機器、構造物に作用する振動を減衰させるものであるが、たとえば、ストロークエンドで高減衰力を発生させると緩衝器の最伸長時や最圧縮時のピストンとシリンダ端部とが干渉するときの衝撃を緩和が可能となったり、また、構造物の振動を抑制する制振装置として柱梁間に介装される場合であれば、ストローク中心では高減衰力を発生させつつ、柱や梁に蓄積される弾性エネルギーの消散を目的としてストロークエンドで低減衰力を発生させるほうが有利となったりすることもある。
このように、緩衝器の用途によって、緩衝器にピストン変位に依存した減衰特性をもたせることで、その用途に最適となる場合があり、このような緩衝器は種々開発されるに至っている。
そして、この種緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入したピストンと、シリンダ内にピストンで区画した2つの圧力室と、ピストンに連結されたロッドと、作動油が2つの圧力室を交流する際に作動油に流れに対し抵抗を与える減衰バルブと、シリンダ両端側内周に軸方向に沿って設けた一対の溝と、ピストンに設けられピストンがシリンダに対し所定量変位したときに、すなわち、所定のストローク範囲で上記溝に対向するバイパスポートとを備えて構成され、上記所定のストローク範囲となると、バイパスポートが溝に対向してバイパス路が形成され、2つの圧力室をこの溝およびバイパスポートで形成されるバイパス路を介して連通するようにしている。
したがって、この緩衝器によれば、ピストン中立位置近傍では、減衰バルブのみを介して作動油が上記2つの圧力室を交流することなり、高減衰力を発生するが、ピストンがシリンダに対し変位してストロークエンドに近づくと、作動油は、減衰バルブのみならずバイパス路をも介して2つの圧力室を交流することになるので、緩衝器は、低減衰力を発生するようになるのである(たとえば、特許文献1参照)。
他方、ピストンを貫くスプールに溝を設けてバイパス路を形成するものもあり、この緩衝器では、ピストン中立位置近傍で低減衰力を発生し、ストロークエンド近傍で高減衰力を発生する(たとえば、特許文献2参照)。
特開2003−322193号公報(第4頁左欄第6行目から同第46行目まで,図1および図3) 特開2004−11733号公報(第5頁第6行目から同第10行目まで,図1)
しかしながら、上記した従来緩衝器にあっては、機能上問題があるわけではないが、以下の弊害がある。
この種緩衝器にあっては、ピストン変位、すなわち、所定のストローク範囲で発生減衰力を変化させるようにしていることから、適用する車両、機器、構造物に緩衝器を取付けた際、丁度ピストン中立位置がシリンダの中央に配置される取付長(以下、「基準取付長」という)となるように設定する必要がある。
つまり、緩衝器の取付長が基準取付長とならないと、緩衝器を取付けた際のピストンの中立位置がシリンダに対し左右にぶれてしまうことになり、上記ストローク範囲が左右にぶれてしまうことになる。
そうすると、たとえば、緩衝器が低減衰力を発生しなくてはならない場面にあっても、上記ぶれによってバイパス路を形成できず低減衰力を発生できなくなったり、逆に、所定のストローク範囲でないのにバイパス路の形成がされてしまったりといった事が起こりえることになる。
したがって、従来緩衝器にあっては、上述の通り、厳密な取付長の管理が必要となるが、車両等の取付部位には、寸法公差等がある場合があり、設定通りの取付長の実現が困難である場合もあり、その取付部位への取付作業が非常に煩雑となる危惧がある。
また、特に緩衝器の両端にボールジョイントを備え、ボールジョイントの球体に対しシリンダもしくはロッドを回転させることでボールジョイント間の距離を微調整可能なものもあるが、特に、構造物の制振や免震用途に使用される緩衝器にあっては緩衝器自体が大型で、搭載スペースも狭いことから、緩衝器を取付部位に取付けたまま上記微調整を行うことができず、一旦緩衝器を取付部位に仮止めして、取付長を計測し、その後、緩衝器を取付部位から取り外して、上記微調整を行って、再び取付部位に緩衝器を取付けるといった作業が行われているのが実情であり、緩衝器の取付作業が非常に不便であった。
そこで、本発明は上記弊害を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、位置依存型の緩衝器にあってもその取付作業を容易ならしめることである。
上記した目的を達成するために、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されるピストンと、シリンダ内に上記ピストンで区画した2つの圧力室と、ピストンに連結されたロッドと、2つの圧力室に連通された中空部を有するハウジングと、ハウジングの中空部内に移動自在に挿入されるスプールと、スプールに形成され所定のストローク範囲内で一方の圧力室に連通される溝と、他方の圧力室に連通されるとともに少なくとも上記所定のストローク範囲内で溝に連通される通路とを備えて、所定のストローク範囲内で減衰力を変化させる緩衝器において、中空部はランド部を備え、スプールはランド部に摺接し、通路は、一方および他方の圧力室に夫々連通される連通路と、ランド部から開口し連通路に接続する連絡路と、連通路の途中であって連絡路との接続部を境にして両側に互いに対向あるいは互い背中合わせに設けた一対の逆止弁とを備えてなるとする
本発明の緩衝器によれば、スプールの位置によって減衰力を変化させる所定のストローク範囲を調節することができるのであり、緩衝器の取付長が基準取付長とならなくとも、つまり、ピストン中立位置が緩衝器を取付部位に取付けた際にシリンダの中央からずれた位置となっても、スプールの位置を調整することによって減衰力を変化させる所定のストローク範囲を、取付長が基準取付長である場合と同様に設定することができる。
したがって、本発明にあっては、取付長を厳密に基準取付長となるようにしなくてはならない従来緩衝器に比較して、緩衝器の取付作業を、飛躍的に簡易および容易ならしめることができるのである。
また、大きな力を必要とせずに上記スプール位置の調整を行うことができるので、特に、緩衝器が大型な場合や、搭載スペースが狭い場合にあっても、緩衝器を取付部位に取付けた状態で調整作業を完結することができ、その位置調整作業も非常に容易となる。
さらに、緩衝器の取付作業時に緩衝器を一旦圧縮した状態に維持しておかなければならない場面にあっても、スプールの位置を調整して減衰力を低くするように設定しておけば、圧縮状態の維持が非常に楽になるので、この点でも取付作業を容易にすることが可能である。
以下に、図示した一実施の形態に基づいて、この発明を説明する。図1は、第1の実施の形態における緩衝器の断面図である。図2は、第1の実施の形態における緩衝器が基準取付長より短かい取付長で取付けられた状態を示す縦断面図である。図3は、第1の実施の形態における緩衝器の減衰特性を示す図である。図4は、第1の実施の形態の変形例における緩衝器の縦断面図である。図5は、第2の実施の形態における緩衝器の縦断面図である。
第1の実施の形態における緩衝器D1は、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されたピストン2と、ピストン2に連結されたロッド3と、シリンダ1内にピストン2で区画された2つの圧力室R1,R2と、ハウジング10と、スプール20とを備えており、いわゆる両ロッド型の緩衝器として構成され、図示するところでは、この緩衝器D1は、構造物の制振装置に具現化されている。
以下、詳細に説明すると、シリンダ1は筒状に形成され、また、シリンダ1内にピストン2により区画された各圧力室R1,R2内には、作動油等の液体が充填されている。
また、ピストン2には、各圧力室R1,R2を連通する流路4,5が設けられており、さらに、この流路4の途中には、液体の圧力室R2から圧力室R1へ通過を阻止し圧力室R1から圧力室R2へ通過を許容しつつ液体の流れに抵抗を与える減衰バルブ6が、流路5の途中には、液体の圧力室R1から圧力室R2へ通過を阻止し圧力室R2から圧力室R1へ通過を許容しつつ液体の流れに抵抗を与える減衰バルブ7が夫々設けられている。
この減衰バルブ6は、バネ(付示せず)で閉じ方向に附勢された常閉型の減衰バルブであって、流路4の上流側の圧力をパイロット圧としており、パイロット圧が所定の圧力(クラッキング圧)以上になると、このパイロット圧により弁体(図示せず)に作用する推力が上記バネ力に打ち勝って開くことができるものであり、減衰バルブ6が開くときのクラッキング圧は、任意に設定される。
なお、減衰バルブ7については、減衰バルブ6と同様の構成であるので、その説明を省略することとする。
また、シリンダ1の図1中左端には、筒8が連設され、この筒8の左端には、ボールジョイントB1が連結され、シリンダ1は、このボールジョイントB1を介して構造物の柱や梁である取付部位A1に取付けられる。
他方、ロッド3の図1中右端にも、上述した筒8に連結されているものと同様のボールジョイントB2が設けられており、ロッド3は、このボールジョイントB2を介して構造物の柱や梁である取付部位A2に取付けられる。
なお、筒8には、その内外を連通する孔(図示せず)が穿設されており、ロッド3が筒8へ進退する際に、上記孔を介して外気が筒8に流入もしくは排出されるのでロッド3の進退を妨げられない。
転じて、ハウジング10は、内部に中空部11を備えて筒状に形成されてシリンダ1の側部に固定されており、また、中空部11の途中には、ランド部12が設けられるともに、このランド部12の中間には環状溝13が設けられている。
そして、この中空部11の両端は、それぞれ、シリンダ1の両端側に設けた圧力室R1に連通されるポートaと、圧力室R2に連通するポートbとに接続されている。
さらに、この中空部11内には、スプール20がその外周をランド部12の内周に摺接させつつ挿入されている。
したがって、中空部11内は、このスプール20とランド部12によって、圧力室R1に連通される空間cと、圧力室R2に連通される空間dとに仕切られている。
またさらに、ハウジング10の肉厚には、環状溝13と圧力室R1もしくは圧力室R2を選択的に連通する通路Lが設けられており、この通路Lは、具体的には、圧力室R1と圧力室R2とを連通する連通路14と、この連通路14と環状溝13の底部とを連通する連絡路15と、連通路14の途中であって、連絡路15との接続部を境にして両側に互いに対向するように設けた一対の逆止弁16,17とで構成されている。
他方、スプール20には、中央部近傍に、溝21が設けられており、このスプール20のハウジング10に対する図1中左右方向の移動により、溝21がランド部12の軸方向長さの範囲内に位置する場合には、上記空間cと空間dは、溝21に連通することはないので、圧力室R1と圧力室R2はこの中空部11を介して連通されることはないが、スプール20が図1中左方向に移動して溝21がランド部12の図1中左端を越えると、空間cと連絡路15とが溝21および環状溝13を介して連通し、逆に、スプール20が図1中右方向に移動して溝21がランド部12の図1中右端を越えると、空間dと連絡路15とが溝21および環状溝13を介して連通するようになっている。
なお、溝21の軸方向長さは、環状溝13の軸方向幅と同じ長さに設定されている。
また、スプール20の図1中右端には、このスプール20を取付部位A2から突設されたボルト25に螺着することが可能なように、螺子孔22が設けられている。
そして、この螺子孔22をボルト25に螺着し、ナット26で固定することで、ハウジング10に対するスプール20の位置決めが行われ、スプール20をボルト25に対して回動させることにより、ハウジング10に対して、図1中左右方向に移動させることができるようになっている。
したがって、上記スプール20は、取付部位A2に連結されるので、同じく取付部位A2に連結されるロッド3と連繋されることとなり、シリンダ1に対しロッド3と同期して図1中左右方向に移動することができる。
つづいて、上述のように構成された緩衝器D1の作用について説明する。上記緩衝器D1は、上記したように取付部位A1,A2間に介装されるが、この取付部位A1,A2間の間隔が緩衝器D1を取付けた際にピストン2がシリンダ1に対し中央に配置されないような場合を想定する。
たとえば、図2に示すように、緩衝器D1の基準取付長より取付部位A1,A2間の間隔が狭い場合、緩衝器D1と取付けた際にピストン2中立位置がシリンダ1に対し図1中左よりになる。
この場合、スプール20をボルト25に対して回動させて、スプール20の溝21の軸方向の両端がハウジング10のランド部12に形成した環状溝13の両端に突合するように位置決めする。
なお、この位置決めに際しては、あらかじめ、スプール20の溝21の軸方向の両端がハウジング10のランド部12に形成した環状溝13の両端に突合するときのスプール20の図2中左端とハウジング10の左端との距離もしくはスプール20の図2中右端とハウジング10の右端との距離を測っておいて、実際の緩衝器D1を取付ける際に、上記計測された距離を目安に位置決めするとよいし、スプール20に目印を付けておいてもよい。
そうしておいてから、スプール20をナット26でボルト25に固定してスプール20が位置決めされた後に取付部位A2に対して動く事がないようにしておく。
この状態で、たとえば、ピストン2がシリンダ1に対し図2中左へ移動すると、減衰バルブ6が開いて液体が流路4を通過して圧力室R1から圧力室R2へ移動する。
このとき、緩衝器D1は、液体が減衰バルブ6通過する時に生じる圧力損失に見合った減衰力を発生することになる。
そして、ピストン2がさらに移動しつづけて、ランド部12の左端から溝21の左端までの距離H1以上に変位すると、溝21が圧力室R1と連通するようになる。
すると、圧力室R1内の圧力は圧力室R2内の圧力より大きいことから、溝21内に流入する液体は、連通路14に設けた逆止弁17を押し開いて連絡路15および連通路14を介して圧力室R2内へ流入するようになる。
すなわち、ピストン2の左方への変位が距離H1以上となると、上記溝21と通路Lで構成されるバイパス路が形成され、上記2つの圧力室R1,R2がこのバイパス路を介して連通されるようになる。
したがって、圧力室R1内の液体は、流路4のみならずバイパス路をも介して圧力室R2内へ移動するようになるので、ピストン2の変位が距離H1以下であるときよりも緩衝器D1の発生する減衰力は低くなる。
つまり、この実施の形態の場合、ピストン2が左へ変位する場合における所定のストローク範囲の始まりは、上記溝21の左端とランド部12の左端との距離H1で設定され、他方、ストローク範囲の終わりは溝21の軸方向の長さで設定されることになる。
なお、溝21の軸方向長さをピストン2の移動許容長さより長く設定しておくと、所定のストローク範囲を上記距離H1からストロークエンドまでとすることが可能となる。
さらに、ピストン2が上記所定のストローク範囲内まで変位してから、ピストン2が逆に図2中右方へ移動すると、今度は圧力室R2内の圧力が圧力室R1内の圧力より大きくなるので、液体は逆止弁17を押し開くことができないのでバイパス路は形成されない。
したがって、液体は、流路5を介して圧力室R2から圧力室R1内に流入し、減衰バルブ7を通過することになるので、ピストン2が左へ変位した後に右側へ変位する場合には、高減衰力を発生することになる。
他方、ピストン2がシリンダ1に対し図2中右へ移動すると、減衰バルブ7が開いて液体が流路5を通過して圧力室R2から圧力室R1へ移動する。
このとき、緩衝器D1は、液体が減衰バルブ7通過する時に生じる圧力損失に見合った減衰力を発生することになる。
そして、ピストン2がさらに移動しつづけて、ランド部12の右端から溝21の右端までの距離H2以上に変位すると、溝21が圧力室R2と連通するようになる。
すると、圧力室R2内の圧力は圧力室R1内の圧力より大きいことから、溝21内に流入する液体は、連通路14に設けた逆止弁16を押し開いて連絡路15および連通路14を介して圧力室R1内へ流入するようになる。
すなわち、ピストン2の右方への変位が距離H2以上となると、上記溝21と通路Lで構成されるバイパス路が形成され、上記2つの圧力室R1,R2がこのバイパス路を介して連通されるようになる。
したがって、圧力室R2内の液体は、流路5のみならずバイパス路をも介して圧力室R1内へ移動するようになるので、ピストン2の変位が距離H2以下であるときよりも緩衝器D1の発生する減衰力は低くなる。
つまり、この実施の形態の場合、ピストン2が右へ変位する場合における所定のストローク範囲の始まりは、上溝21の右端とランド部12の右端の距離H2で設定され、他方、ストローク範囲の終わりは溝21の軸方向の長さで設定されることになる。
さらに、ピストン2が上記所定のストローク範囲内まで変位してから、ピストン2が逆に図2中左方へ移動すると、今度は圧力室R1内の圧力が圧力室R2内の圧力より大きくなるので、液体は逆止弁16を押し開くことができないのでバイパス路は形成されない。
したがって、液体は、流路4を介して圧力室R1から圧力室R2内に流入し、減衰バルブ6を通過することになるので、ピストン2が右へ変位した後に左側へ変位する場合には、高減衰力を発生することになり、緩衝器の左右への作動を一巡すると、この緩衝器D1の減衰特性は、図3に示すようなヒステリシスループを描くことになり、この緩衝器D1は、ピストン変位に依存した減衰特性を有した、いわゆる、位置依存型の緩衝器として機能する。
さらに、スプール20が位置決められる位置によって、距離H1および距離H2を変化させることが可能であるので、バイパス路が形成される位置の調整によって減衰力を変化させる所定のストローク範囲を調節することが可能であり、緩衝器D1の左右の作動時に発生する減衰特性を異ならしめることも可能となる。
無論、距離H1と距離H2とを同じになるようにスプール20を位置決めれば、緩衝器D1の左右の作動時に発生する減衰特性を同じにできる。
なお、逆止弁16,17の向きを逆にする、すなわち、連通路14の途中であって、逆止弁16,17を連絡路15との接続部を境にして両側に互いに背中合わせとなるように設ける場合には、所定のストローク範囲は、ピストン2が緩衝器の左右側に移動した後、ピストン変位が逆となるときに、上記したバイパス路が形成されるように設定することができる。
つまり、この緩衝器D1にあっては、スプール20の位置によって所定のストローク範囲を調節することができるのであり、取付長が基準取付長とならなくとも、要するに、ピストン中立位置が緩衝器D1を取付部位A1,A2に取付けた際にシリンダ1の中央からずれた位置となっても、スプール20の位置を調整することによって減衰力を変化させる所定のストローク範囲を、取付長が基準取付長である場合と同様に設定することができる。
したがって、本発明にあっては、取付長を厳密に基準取付長となるようにしなくてはならない従来緩衝器に比較して、取付部位A1,A2への緩衝器D1の取付作業を、飛躍的に簡易および容易ならしめることができるのである。
また、大きな力を必要とせずに上記スプール位置の調整を行うことができるので、特に、緩衝器が大型な場合や、搭載スペースが狭い場合にあっても、緩衝器を取付部位に取付けた状態で調整作業を完結することができ、その位置調整作業も非常に容易となる。
さらに、緩衝器の取付作業時に緩衝器を一旦圧縮した状態に維持しておかなければならない場面にあっても、スプールの位置を調整して減衰力を低くするように設定しておけば、圧縮状態の維持が非常に楽になるので、この点でも取付作業を容易にすることが可能である。
なお、環状溝13を設けずとも所定のストローク範囲を設定することができるが、ランド部12に環状溝13を設けておくことで、溝21が環状溝13にラップしている時には、通路Lと溝21とが連通している状態となるので、所定のストローク範囲をその分広く設定することが可能となる。
また、スプール20に形成される溝21は、どのような形状とされても良いし、また、ピストン変位に応じて減衰力を可変とするべくその深さや開口面積を溝21の軸方向で変化させてもよい。
さらに、本実施の形態にあっては、取付部位A2にボルト25を設けているが、たとえば、図4に示すように、ロッド3の先端側にボルト25を設けてスプール20を位置決めしてもよい。この場合は、特に、緩衝器D1をボールジョイントのように取付部位に揺動を許容するような継手を用いて取付ける際、ロッド3の軸線と、スプール20の軸線がずれることがなくなり、これにより、スプール30の円滑な移動が保障される利点がある。
また、スプール30の位置決めおよび固定については、ボルトによらず他の方法を用いるとしてもよい。
つづいて、図5に示した第2の実施の形態における緩衝器D2について説明する。なお、上記した実施の形態の緩衝器D1における部材と同様の部材には同一の符号を付するのみとして、以下、その詳しい説明を省略し、主として第2の実施の形態における緩衝器D2の第1の実施の形態における緩衝器D1と異なる部分について説明することとする。
この緩衝器D2は、シリンダ1内に移動自在に挿入されたスプール30と、スプール30が挿入される孔35を備えたピストン34とを備えるかわりに、第1の実施の形態における緩衝器D1にあったようなハウジング10は省略されている。
以下、この異なる部分について詳細に説明すると、スプール30には、第1の実施の形態と同様に溝31が形成されており、このスプール30は、シリンダ1の両端部を貫いてシリンダ1に対して移動自在とされている。
また、スプール30の一端には、螺子部32が形成され、この螺子部32をシリンダ1の端部に設けたソケット33に捩じ込むことにより、ピストン34に対し軸方向に移動および位置決めが行えるようになっており、緩衝器D2の左右への作動時に、スプール30は、シリンダ1に連携されているから、ピストン34に対しシリンダ1に同期して移動する。
さらに、ピストン34には、上記スプール30が挿入される孔35が設けられており、スプール30が上記孔35に摺動自在に挿入されている。
また、ピストン34には、通路L1が形成され、この通路L1は、圧力室R1と圧力室R2とに連通される連通路37と、孔35の中間部に形成の環状溝36の底部と連通路37とに連通される連絡路38と、連通路37の途中であって、連絡路38を境として両側に互いに背中合わせに設けられた一対の逆止弁39,40とを備えて構成されている。
すなわち、第1の実施の形態のハウジング10の役割を本実施の形態においてはピストン34に担わせているのであり、孔35自体が第1の実施の形態における中空部11およびランド部12として機能していることになる。
そして、この緩衝器D2では、ピストン34がシリンダ1に対して変位して溝31がいずれかの圧力室R1,R2に連通されると、上記溝31と通路L1とでバイパス路が形成されることになる。
具体的には、ピストン34が左方向に変位する場合、溝31の右端からピストン34の右端との距離H3を超えて変位すると、液体は、逆止弁39を押し開いて環状溝36および溝31を介して圧力室R1から圧力室R2へ移動し、逆に、溝31の左端からピストン34の左端との距離H4を超えて変位すると、液体は、逆止弁40を押し開いて環状溝36および溝31を介して圧力室R2から圧力室R1へ移動することができるようになる。
そして、この緩衝器D2にあっても、第1の実施の形態と同様に、ピストン34がいずれの方向に変位しても、変位の方向が変わると、少なくともピストン中立位置まで戻るまでは、バイパス路が形成されないようになっている。
つまり、この緩衝器D2にあっても、第1の実施の形態における緩衝器D1と同様に、概ね図3に示したヒステリシスループを持った減衰特性を発生する。
そして、この緩衝器D2にあっては、スプール30とピストン34との位置関係によってバイパス路が形成される位置を調整でき、減衰力を変化させる所定のストローク範囲を調節することが可能で、緩衝器D2にあっても、取付長が基準取付長とならない場合にあっても、すなわち、ピストン中立位置がシリンダ1の中央にならなくても、スプール30の位置を調整することによって減衰力を変化させる所定のストローク範囲を、取付長が基準取付長である場合と同様に設定することができる。
したがって、第1の実施の形態と同様に、取付長を厳密に基準取付長となるようにしなくてはならない従来緩衝器に比較して、取付部位A1,A2への緩衝器D2の取付作業を、飛躍的に簡易および容易ならしめることができるのである。
また、大きな力を必要とせずに上記スプール位置の調整を行うことができるので、特に、緩衝器が大型な場合や、搭載スペースが狭い場合にあっても、緩衝器を取付部位に取付けた状態で調整作業を完結することができ、その位置調整作業も非常に容易となる。
そして、緩衝器の取付作業時に緩衝器を一旦圧縮した状態に維持しておかなければならない場面にあっても、スプールの位置を調整して減衰力を低くするように設定しておけば、圧縮状態の維持が非常に楽になるので、この点でも取付作業を容易にすることが可能である。
さらに、この第2の実施の形態における緩衝器D2にあっては、ハウジングの役割をピストン34に担わせることができるので、シリンダ1の側方にスプールが挿入されるハウジングをわざわざ設ける必要がなくなるので、緩衝器D2をコンパクトにすることが可能であり、スプール30とロッド3との軸ずれの心配もない。
なお、所定のストローク範囲長については、溝31の軸方向長さと環状溝36の軸方向幅で設定でき、所定のストローク範囲の始まりは、ピストン34の軸方向幅と溝31の軸方向長さの設定によって任意に設定することができる。
また、上記した各実施の形態において、実際の取付長におけるピストン中立位置近傍において、緩衝器に高減衰力を発生させ、ストロークエンドでは低減衰力を発生させるようにしているが、上記したスプールに形成される溝の軸方向長さ、ランド部あるいはピストンの軸方向長さ、環状溝の軸方向長さ等の設定により、ピストン中立位置近傍で緩衝器に低減衰力を発生させるとともに、ストロークエンドで高減衰力を発生させることも可能である。
さらに、スプールに設けられる溝は、1つだけでなく、複数円周方向に沿って、あるいは、軸方向に間隔を空けて設けてもよい。
またさらに、本実施の形態においては、緩衝器が制振装置として使用される場面を想定して説明しているが、本発明の緩衝器は、構造物以外に車両、機器等に使用可能であることは当然である。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
第1の実施の形態における緩衝器の断面図である。 第1の実施の形態における緩衝器が基準取付長より短かい取付長で取付けられた状態を示す縦断面図である。 第1の実施の形態における緩衝器の減衰特性を示す図である。 第1の実施の形態の変形例における緩衝器の縦断面図である。 第2の実施の形態における緩衝器の縦断面図である。
符号の説明
1 シリンダ
2,34 ピストン
3 ロッド
4,5 流路
6,7 減衰バルブ
8 筒
10 ハウジング
11 中空部
12 ランド部
13,36 環状溝
14,37 連通路
15,38 連絡路
16,17,39,40 逆止弁
20,30 スプール
21,31 溝
22 螺子孔
25 ボルト
26 ナット
32 螺子部
33 ソケット
35 孔
A1,A2 取付部位
B1,B2 ボールジョイント
a,b ポート
c,d 空間
D1,D2 緩衝器
L,L1 通路
R1,R2 圧力室

Claims (2)

  1. シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されるピストンと、シリンダ内に上記ピストンで区画した2つの圧力室と、ピストンに連結されたロッドと、2つの圧力室に連通された中空部を有するハウジングと、ハウジングの中空部内に移動自在に挿入されるスプールと、スプールに形成され所定のストローク範囲内で一方の圧力室に連通される溝と、他方の圧力室に連通されるとともに少なくとも上記所定のストローク範囲内で溝に連通される通路とを備えて、所定のストローク範囲内で減衰力を変化させる緩衝器において、中空部はランド部を備え、スプールはランド部に摺接し、通路は、一方および他方の圧力室に夫々連通される連通路と、ランド部から開口し連通路に接続する連絡路と、連通路の途中であって連絡路との接続部を境にして両側に互いに対向あるいは互い背中合わせに設けた一対の逆止弁とを備えてなることを特徴とする緩衝器。
  2. ランド部に環状溝を形成し、連絡路は環状溝に連通されてなる請求項1に記載の緩衝器。
    Figure 0004417822
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