以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるバルブ装置は、図示するところでは、筒型でしかも両ロッド型に形成された油圧緩衝器に具現化され、この油圧緩衝器は、たとえば、建築物の各階の床と天井との間に配設される制振ダンパとされる。
そして、この油圧緩衝器は、図示するところでは、シリンダ体1と、このシリンダ体1内に摺動可能に収装されながらシリンダ体1内に断面積を同一にする一対となる両方の油室、すなわち、図中で上方となる一方の油室R1と図中で下方となる他方の油室R2とを画成するピストン体2と、このピストン体2に基端が連結されながら各油室R1,R2の軸芯部を挿通してそれぞれシリンダ体1の閉塞端から先端を外部に突出させるロッド体3、すなわち、断面積を同一にして図中で上方となる一方のロッド体31と図中で下方となる他方のロッド体32とを有してなる。
そして、この油圧緩衝器にあって、ピストン体2は、上記の両方の油室R1,R2の連通を許容する減衰バルブ21,22を有し、シリンダ体1は、後述する制御バルブ5,6の配設を可能にするバルブマウント4を一体的に連設させ、このバルブマウント4は、図示するところでは、ポート(符示せず)だけを有しながらシリンダ体1に連結されるプレート部41と、このプレート部41に連結されて制御バルブ5,6およびチェックバルブ7,8を有するハウジング部42とからなる。
ところで、シリンダ体1は、この油圧緩衝器が両ロッド型とされることからいわゆる筒体からなり、図示するところでは、図中の下端側部にはシリンダ体1と同径となるサブシリンダ体11を同軸に連設させ、このサブシリンダ体11内に他方のロッド体32の図中で下端側となる先端側を導通させてこの他方のロッド体32の下端側がいわゆる他部に干渉することを回避させ、また、このサブシリンダ体11は、この油圧緩衝器のいわゆる取り付けを可能にするブラケット12を有している。
ピストン体2は、自身がシリンダ体1内に画成する両方の油室R1,R2の連通を許容する減衰バルブ、すなわち、言わば伸側用とされる減衰バルブ21と言わば圧側用とされる減衰バルブ22とを並列配置させている。
このとき、減衰バルブ21,22は、図示するところでは、上流側の圧力がクラッキング圧を超えると開放作動するように設定されていて、このクラッキング圧については任意に設定される。
ロッド体3は、図中で上方となる一方のロッド体31の先端にブラケット33を有し、このブラケット33を利用してのこの油圧緩衝器の取り付けを可能にしている。
それゆえ、この油圧緩衝器にあっては、上記したブラケット12,33を利用しての所望の場所への取り付けが、すなわち、設置が可能とされ、その設置場所での作動、すなわち、いわゆる伸縮作動が可能とされる。
そして、この油圧緩衝器にあっては、後述するバイパス路を無視すると、ピストン体2がシリンダ体1内を図中で上昇する場合を、たとえば、伸側作動時と仮定すると、一方の油室R1が減衰バルブ21を介して他方の油室R2に連通し、このとき、減衰バルブ21で所定の大きさの減衰力が発生される。
また、同じくこの油圧緩衝器にあって、ピストン体2がシリンダ体1内を図中で下降する場合を、たとえば、圧側作動時と仮定すると、他方の油室R2が減衰バルブ22を介して一方の油室R1に連通し、このとき、減衰バルブ22で所定の大きさの減衰力が発生される。
つぎに、この油圧緩衝器にあっては、ピストン体2に配設の減衰バルブ21,22を迂回して両方の油室R1,R2をシリンダ体1外で連通させるバイパス路(符示せず)を有している。
このとき、バイパス路は、いわゆる両端がシリンダ体1内の各油室R1,R2に対して、各油室R1,R2におけるいわゆるストロークエンド領域となる部位で連通している。
すなわち、ピストン体2がシリンダ体1内をいわゆる中立領域を超える大きいストロークで摺動してシリンダ体1の端部に接近するストロークエンド近傍に至るときにも、シリンダ体1に開穿された開口が閉塞されずして各油室R1,R2のバイパス路への連通が妨げられない。
一方、この発明において、バルブ装置は、高圧側と低圧側とを連通する通路中に配設される、すなわち、上記の二つとなる両方の油室R1,R2のシリンダ体1外での連通を可能にするバイパス路中に配設されるもので、外部からの推力の入力で移動してバイパス路を開放する制御バルブ5,6と、この制御バルブ5,6に対するバイパス路における作動油の流れを整流するチェックバルブ7,8と、制御バルブ5,6に推力を入力する入力手段9とを有してなる。
まず、バイパス路は、シリンダ体1に一体的に連設されるバルブマウント4に、すなわち、図示するところでは、プレート部41およびハウジング部42に形成され、ハウジング部42が一対とされながらそれぞれ両方の油室R1,R2間の相反する方向の連通を許容するように並列配置とされる制御バルブ5,6と、このバイパス路における作動油の流れ方向を制御する、すなわち、整流するチェックバルブ7,8とを有している。
このとき、バイパス路の本来的な機能を鑑みると、これがバルブマウント4に形成されるのはともかくとして、このバルブマウント4がシリンダ体1に保持されることは、この発明のバルブ装置にあって、言わば好ましい。
すなわち、後述するが、この発明のバルブ装置にあって、バイパス路に配設される制御バルブ5,6は、入力手段9を介してであるが、油圧緩衝器の伸縮位置に依存して開閉作動することを要件としているから、少なくとも、この制御バルブ5,6を有するバルブマウント4にあっては、これがシリンダ体1の一部に擬制されて良く、したがって、この観点からして、バルブマウント4は、シリンダ体1に一体的に連設されてシリンダ体1に保持されるのが好ましい。
つぎに、制御バルブ5,6は、図示するところでは、油圧緩衝器におけるロッド体3のシリンダ体1に対する出没に追従する入力手段9からの入力によって開放作動して言わば一方の油室を他方の油室に連通させる。
すなわち、たとえば、制御バルブ5にあっては、シリンダ体1内に一方のロッド体31が没入する油圧緩衝器の圧側作動時に入力手段9からの入力によって開放状態に切り換えられ、他方の油室R2がこの開放された制御バルブ5を介して一方の油室R1に連通し、このとき、制御バルブ6は、チェックバルブ7の介在もあって、自らの状態において遮断状態に維持され、その限りにおいてバイパス路を閉鎖する。
そして、制御バルブ6にあっても、シリンダ体1内から一方のロッド体31が突出する言わば伸側作動時に入力手段9からの入力によって開放状態に切り換えられ、一方の油室R1がこの開放された制御バルブ6を介して他方の油室R2に連通し、このとき、制御バルブ5は、上記したところと同様に、チェックバルブ8の介在もあって、自らの状態において遮断状態に維持され、その限りにおいてバイパス路を閉鎖する。
なお、チェックバルブ7,8についてだが、上記したように、たとえば、油圧緩衝器の圧側作動によって制御バルブ5が開放作動するときに油室R2の作動油が制御バルブ6に流入することをチェックバルブ7が阻止し、制御バルブ5がいわゆる戻るようになるとき、すなわち、油圧緩衝器が伸側作動に反転することで油室R1から流出される作動油が未だ遮断状態になっていない制御バルブ5に流入する状況になるときにチェックバルブ8がこれを阻止して、制御バルブ5を所定の閉鎖状態に維持するように機能すると共に、油圧緩衝器において減衰バルブ21のみが作動し、所定の大きさの減衰力を発生させる。
そして、油圧緩衝器の伸側作動によって制御バルブ6が開放作動するときに油室R1の作動油が制御バルブ5に流入することをチェックバルブ8が阻止し、制御バルブ6がいわゆる戻るようになるとき、すなわち、油圧緩衝器が圧側作動に反転することで油室R2から流出される作動油が未だ遮断状態になっていない制御バルブ6に流入する状況になるときにチェックバルブ7がこれを阻止して、制御バルブ6を所定の閉鎖状態に維持するように機能すると共に、油圧緩衝器において減衰バルブ22のみが作動し、所定の大きさの減衰力を発生させる。
以上からすると、この発明にあっては、制御バルブ5,6によってバイパス路を開閉することで、油圧緩衝器で発生される減衰力の高低調整が可能とされるのはもちろんであるが、チェックバルブ7,8の協働もあって、図2に示すような減衰力の変位特性が得られる。
ここで、制御バルブ5,6は、バルブマウント4におけるハウジング部42内に収容される入力軸51,61と、弁体52,62と、基軸53,63と、弁体附勢バネ54,64とを有してなる。
入力軸51,61は、対向する入力手段9からの推力をハウジング部42から外部に突出する図中で上下端となる先端に入力させるもので、図示するところでは、前記したロッド体3と軸線方向を同じにするスプールからなる。
そして、この入力軸51,61は、入力手段9に対向することになる先端部をハウジング部42の外部に突出させて大気中におくとし、このとき、図示しないが、先端部における軸長の長短調整を可能にして、入力手段9に対する間隔の調整を、すなわち、後述する不感帯ストロークL1,L2の長短調整を可能にしても良い。
なお、図示するところにあって、入力軸51,61には、後述する弁体52,62の前方において変位に応じた流量制御を実現する油路としての切り溝51a,61aが一本または複数本形成されている。
つぎに、弁体52,62は、入力軸51,61の基端に直列されながら、すなわち、図示するところでは、一体に連設されながら入力軸51,61の後退によるその後退時にバイパス路を開放するもので、図示するところでは、ポペットからなり、したがって、この弁体52,62がスプールからなる場合に比較して、バイパス路における作動油の漏れを効果的に阻止する。
そして、弁体52,62たるポペットの上流側に上記の切り溝51a,61aが形成されるから、この切り溝51a,61aを介しての作動油の流れが利用されることで、ストロークに応じた流量制御が可能になり、たとえば、図2の特性図における符号Xで示す領域における波形をコントロールでき、また、この波形のコントロールを要しない場合でも、弁体52,62が急激に開閉することがなくいわゆるショックを緩和できる。
なお、上記の弁体52,62については、これがスプールからなるとしても良く、また、スプールからなるとするとき、これにポペットを直列させるとしても良い。
そして、基軸53,63は、弁体52,62に直列されながら、すなわち、図示するところでは、弁体52,62の後端に一体に連設されながら軸径を入力軸51,61と同一にして後端を大気中に連通させている。
それゆえ、このバルブ装置にあって、基軸53,63の後端が大気中に連通する一方で同径の入力軸51,61の先端が同じく大気中におかれるから、弁体52,62が後述する弁体附勢バネ54,64のバネ力によってのみ前進状態に維持され、すなわち、バイパス路を閉鎖する状態に維持される。
また、弁体附勢バネ54,64は、図示するところでは、ハウジング部42に形成された容室部分(符示せず)に収装されたコイルスプリングからなるが、このとき、各弁体附勢バネ54,64における附勢力は、極端に大小されない限りにおいて、いわゆる同一性が要求されない。
そして、この弁体附勢バネ54,64にあっては、入力手段9からの推力が入力されるときに、収縮して基軸53,63の後退、すなわち、弁体52,62の後退を許容して、この弁体52,62を介してのバイパス路における作動油の流れを許容する。
ところで、この弁体附勢バネ54,64におけるバネ力についてであるが、上記したように、この発明の制御バルブ5,6にあっては、弁体52,62たるポペットを挟むことになる入力軸51,61と基軸53,63との間におけるいわゆる軸力が同じになる。
それゆえ、この弁体52,62をいわゆるバルブシート部に着座させてバイパス路を閉鎖状態に維持するについては、制御バルブ5,6が作動するときのフリクションに勝るバネ力を具有する弁体附勢バネ54,64とされて良く、したがって、弁体附勢バネ54,64についてはこれがコイルスプリングからなるとき、いわゆる軽微なコイルスプリングで足りる。
一方、入力手段9は、基本的には、前記したロッド体3の動きに同期するように形成されるもので、図示するところでは、図中で上方となる一方のロッド体31に連結されるアーム部材91と、このアーム部材91に連結されながら長短調整可能に形成されるジョイント92と、このジョイント92に連結される入力本体部93とを有している。
このとき、アーム部材91は、一方のロッド体31を横切る方向に延在され、ジョイント92は、アーム部材91の図中で右端となる先端から図中で下方に向けて、すなわち、バルブマウント4におけるハウジング部42に向けて垂設され、入力本体部93は、ジョイント92の下端に連結されてバルブマウント4におけるハウジング部42を言わば囲うような体勢下に近隣している。
すなわち、入力本体部93は、図示するところでは、制御バルブ5,6が入力軸51,61をロッド体3の軸線方向にあって互いに反対の方向に突出させる、すなわち、バルブマウント4におけるハウジング部42の上下端から突出させるから、この各入力軸51,61の先端に対向する入力部93a,93bを有すべくいわゆる横向きほぼ角U字状に形成されている。
そして、この入力部93a,93bは、制御バルブ5,6における入力軸51,61の先端との間に不感帯ストロークL1,L2を有しながらこの入力軸51,61の先端に対向している。
それゆえ、この入力手段9にあっては、たとえば、一方のロッド体31がシリンダ体1内に没入するときに、上記した不感帯ストロークL1以上にロッド体31がシリンダ体1内に没入するまでは、入力部93aが制御バルブ5における入力軸51の先端に干渉せず、したがって、制御バルブ5は、これが開放作動しない。
そして、ロッド体31がシリンダ体1内に没入するストロークが上記の不感帯ストロークL1以上になると、入力部93aが制御バルブ5における入力軸51をバルブマウント4におけるハウジング部42内に没入させ、したがって、制御バルブ5にあってはポペット52が弁体附勢バネ54のバネ力に抗していわゆる後退して開放作動する。
そしてまた、上記の作動は、他方のロッド体32がシリンダ体1内に没入するときにも、入力手段9において反対側の入力部93bが制御バルブ6における入力軸61に対して同様に作動し、したがって、制御バルブ6も上記の制御バルブ5と同様の作動をする。
なお、入力本体部93は、いわゆる中間部に調整部93cを有し、上記した不感帯ストロークL1,L2、すなわち、入力手段9と制御バルブ5,6との間に出現する間隔の長短調整を可能にしている。
つぎに、入力手段9にあって、入力部93a,93bは、制御バルブ5,6における入力軸51,61の先端に不感帯ストロークL1,L2を維持した状態で対向する入力規制機構10を有している。
そして、この入力規制機構10は、制御バルブ5,6における入力軸51,61の先端に対向するプッシュ部材101と、このプッシュ部材101を背後側から附勢する附勢手段102とを有してなる。
このとき、プッシュ部材101が制御バルブ5,6における入力軸51,61の先端に対して不感帯ストロークL1,L2を有して対向し、そして、この入力規制機構10にあって、プッシュ部材101は、背後側の軸芯部にスライドロッド103を連設させ、このスライドロッド103の言わば後端側は、入力部93a,93bを貫通する状態にして、この入力部93a,93bに連結されている。
一方、附勢手段102は、コイルスプリングからなる附勢バネとされ、上記のスライドロッド103の外周に介装された状態にして、プッシュ部材101と入力部93a,93bとの間に挟持されている。
ところで、この入力規制機構10にあって、附勢手段102たる附勢バネのバネ力は、制御バルブ5,6における弁体附勢バネ54,64のバネ力と、制御バルブ5,6の作動時における摩擦力との合力に勝る。
したがって、この入力手段9にあって、プッシュ部材101が言わば前進して制御バルブ5,6における入力軸51,52に当接されるときには、入力軸51,61を弁体附勢バネ54,64のバネ力と、制御バルブ5,6の作動時における摩擦力との合力に打ち勝って後退させる。
このとき、プッシュ部材101は、附勢手段102たる附勢バネによって附勢されているために、見掛け上では、入力部93a,93bと一体となって前進することになり、ロッド体3と同じ作動になる。
したがって、この入力規制機構10にあっては、たとえば、プッシュ部材101が制御バルブ5,6における入力軸51,61の先端に当接され、また、このとき、制御バルブ5,6における動きが規制されている場合には、附勢手段102たる附勢バネを収縮させて後退する。
すなわち、制御バルブ5,6において弁体52,62たるポペットの後退が機械的に阻止される状態になると、あるいは、入力軸51,61がバルブマウント4におけるハウジング部42に完全に没入された状態になると、入力軸51,61の後退が停止されるので、以降のプッシュ部材101の変動たる言わば前進も阻止され、附勢手段102たる附勢バネが収縮される。
それゆえ、この発明における入力手段9にあっては、油圧緩衝器におけるシリンダ体1内へのロッド体3の没入時に制御バルブ5,6を開放作動させてバイパス路を開放させると共に、この入力手段9を構成する入力規制機構10にあっては、バイパス路を開放した制御バルブ5,6をさらに開放作動させるようにする推力の入力を停止する。
すなわち、制御バルブ5,6における作動ストロークが停止された以降も引き続きプッシュ部材101がハウジング部42に押し付けられる状況になると、あたかもプッシュ部材101が附勢手段12たる附勢バネのバネ力に打ち勝って後退するような状況が現出され、このとき、油圧緩衝器におけるロッド体3は、さらなる伸縮作動が可能とされる。
それゆえ、以上のように形成された入力手段9にあっては、たとえば、一方のロッド体31がシリンダ体1内に没入するときに、上記した不感帯ストロークL1以上にロッド体31がシリンダ体1内に没入するまでは、入力規制機構10におけるプッシュ部材101が制御バルブ5における入力軸51の先端に干渉せず、したがって、制御バルブ5は、これが開放作動しない。
そして、一方のロッド体31がシリンダ体1内に没入するストロークが上記の不感帯ストロークL1以上になると、入力規制機構10におけるプッシュ部材101が制御バルブ5における入力軸51の先端に当接し、この入力軸51をバルブマウント4におけるハウジング部42内に没入させ、したがって、制御バルブ5は、これが開放作動する。
そしてまた、上記の作動は、他方のロッド体32がシリンダ体1内に没入するときにも、入力手段9において言わば反対側のプッシュ部材101が制御バルブ6における入力軸61に対して同様に作動し、したがって、制御バルブ6も上記の制御バルブ5と同様の作動をする。
なお、附勢手段102たる附勢バネは、図示するところでは、イニシャル荷重を固定としているが、これに代えて、イニシャル荷重の調整を可能にするように形成されても良い。
以上のように、この発明のバルブ装置にあっては、シリンダ体1に対してロッド体3が出没するいわゆる伸縮作動時にその伸縮量が上記した不感帯ストロークL1,L2を超えるとき、言わば対応する制御バルブ5,6が開放作動してバイパス路を連通状態に切り換える。
それゆえ、このことからすれば、この発明のバルブ装置にあって、上記の不感帯ストロークL1,L2を同一にするときには、油圧緩衝器がいわゆる中立状態にある。
すなわち、油圧緩衝器を任意の場所に設置するとき、その設置場所におけるいわゆる設置間隔が区々となり、したがって、油圧緩衝器にあって、シリンダ体1内でピストン体2を完全な中央部に位置決めることが、すなわち、中立状態にすることが事実上困難であるとしても、上記の不感帯ストロークL1,L2を同一にするように調整作業をすることで、シリンダ体1に対するピストン体2のいわゆる中立状態を現出することが可能になる。
そして、このとき、シリンダ体1内でピストン体2が完全な中立状態にないとしても、多くの場合に、そのズレは、いわゆる許容差よりは大きくなるであろうがいたずらに大きくなることはないから、不感帯ストロークL1,L2を同一にするように調整することで、油圧緩衝器が中立状態にあると擬制しても問題はないと言い得る。
以上からすれば、この発明にあっては、油圧緩衝器を設置する際に、バルブ装置における中立状態を視認しながら確実に現出することが可能になり、従来凡そこの種の油圧緩衝器を設置するのにあって、いわゆる中立状態の現出が容易でなく、したがって、油圧緩衝器の設置に手間を要していたことに比較して、迅速な設置作業の実現が可能になる。
そして、この発明のバルブ装置にあって、入力手段9の作動で制御バルブ5,6が開放作動するが、入力手段9の作動が重要視されるのはそれによって制御バルブ5,6の開放作動が要請される場面であって、その要請が無くなった後は、入力手段9の関与が停止される。
すなわち、制御バルブ5,6にあって、たとえば、30m/mを移動することでバイパス路を開放する設定の場合には、以降の制御バルブ5,6の移動は言わば無意味になる。
そこで、制御バルブ5,6が設定量を移動するまでは、入力手段9が関与するが、以降は入力手段9が関与せず、すなわち、入力手手段9からの推力が制御バルブ5,6に入力されないように配慮している。
具体的には、図示するところでは、入力規制機構10で具現化されるもので、制御バルブ5,6が一定量を移動した以降のさらなる移動は、入力機構10における附勢手段102たる附勢バネの収縮によるプッシュ部材101の後退によるとしている。
それゆえ、この発明のバルブ装置における入力手段9にあっては、機械的に作動が停止された制御バルブ5,6に対して必要以上の推力を入力しないから、制御バルブ5,6にいわゆる無理をかけず、バルブ装置における作動性を恒久的に保障し易くなる。
また、この発明のバルブ装置にあって、制御バルブ5,6における開放作動ストローク、すなわち、言わば有効ストロークが保障されることで足りるから、制御バルブ5,6のコンパクト化、すなわち、バルブ装置のコンパクト化を可能にし得る。
なお、上記したところでは、入力手段9のいわゆる関与回避が、制御バルブ5,6におけるストロークエンドに基づくとするが、制御バルブ5,6の有効ストロークを保障する限りには、制御バルブ5,6がバルブマウント4に当接されることによっても良い。
図3は、この発明によるバルブ装置の他の実施形態を具現化した油圧緩衝器を示すが、その構成が前記した図1に示すところと同様となるところについては、図中に同一の符号を付するのみとして、以下の説明において、要する場合を除き、その説明を省略する。
特に、油圧緩衝器の構成、バルブマウント4を有することおよびこのバルブマウント4がバイパス路とチェックバルブ7,8を有すること、さらに、入力手段9を有することについては、図1の実施形態と同様である。
それに対して、この実施形態では、バルブマウント4に形成のバイパス路中に配設される制御バルブ20については、入力手段9による外部からの推力の入力で摺動してバイパス路を開放するスプールからなる。
まず、バルブマウント4に形成されるバイパス路は、一方の油室R1に連通する一方の連通路41と、他方の油室R2に連通する他方の連通路42と、一方の連通路41に連通する一方の容室43と、他方の連通路42に連通する他方の容室44と、この二つとなる容室43,44を画成する一対となるランド部45,46の間に形成される環状溝47と、上記の両方の連通路41,42に連通しながら環状溝47に連通する連通路48とからなり、この連通路48にチェックバルブ7,8を配設している。
制御バルブ20は、図示するところでは、バルブマウント4に出没可能に収装されたスプールからなり、このスプールにおける本体部201の中央部に形成の切り溝202端からランド部46端まで(スプールの切り溝202端から容室44端まで)がオーバーラップL11と同じとされ、また、スプールの切り溝202端からランド部45端まで(スプールの切り溝202b端から容室43端まで)がオーバーラップL21と同じとされ、したがって、上記の環状溝47は、図示しないが、この各ランド部45,46を切り溝202がいわゆる跨ぐようになるときにバイパス路を開放する。
そして、このチェックバルブ7,8についてだが、図示するところでは、バイパス路が閉鎖状態にあるときの油圧緩衝器の伸長作動時に一方の油室R1からの作動油がバイパス路たる連通路48を介して他方の油室R2に流入することをチェックバルブ7が阻止する。
また、上記と逆に、バイパス路が閉鎖状態にあるときの油圧緩衝器の収縮作動時に他方の油室R2からの作動油がバイパス路たる連通路48を介して一方の油室R1に流入することをチェックバルブ8が阻止する。
そしてまた、バイパス路が開放状態にあるときには、油圧緩衝器の伸長作動時に油室R1からの作動油が容室43、環状溝47および連通路48を介して油室R2に流入することをチェックバルブ8が許容し、油圧緩衝器の収縮作動時に油室R2からの作動油が容室44、環状溝47および連通路48を介して油室R1に流入することをチェックバルブ7が許容する。
そしてさらに、たとえば、伸長作動していた油圧緩衝器が収縮作動に反転して、スプールがいわゆる戻るようになるとき、油室R2からの作動油が言わば未だ閉鎖されていないバイパス路を介して油室R1に流入することをチェックバルブ8が阻止し、油圧緩衝器におけるピストン体2が有する減衰バルブ22のみが作動して、所定の大きさの減衰力が発生される。
また、上記と逆に、収縮作動していた油圧緩衝器が伸長作動に反転して、スプールがいわゆる戻るようになるとき、油室R1からの作動油が言わば未だ閉鎖されていないバイパス路を介して油室R2に流入することをチェックバルブ7が阻止し、油圧緩衝器におけるピストン体2が有する減衰バルブ21のみが作動して、所定の大きさの減衰力が発生される。
以上のことからすると、この実施形態にあっても、制御バルブ20によってバイパス路を開閉することで、油圧緩衝器で発生される減衰力の高低調整が可能とされるのはもちろんのこと、チェックバルブ7,8の協働もあって、前記した図2に示すような減衰力の変位特性が得られる。
ところで、制御バルブ20たるスプールは、図中で上端部となる本体部201の一端部にバルブマウント4との間に弁体附勢バネSの配在下にスプールの有効ストロークV1を出現させる一方のストッパ部203を有すると共に、図中で上下端部となる本体部201の他端部にバルブマウント4との間に弁体附勢バネSの配在下にスプールの有効ストロークV2を出現させる他方のストッパ部204を有している。
ちなみに、弁体附勢バネSは、言わば上下の一対とされていわゆるバランスバネとされるもので、図示するところでは、コイルバネからなり、その限りにおいては、上下で同じバネ力とされている。
それゆえ、この制御バルブ20たるスプールにあっては、これが図中で上下方向となるその軸線方向に摺動し、本体部201に形成の切り溝202がランド部45あるいはランド部46をいわゆる跨ぐ状態になるときには、前記したように一方の容室43と環状溝47との連通、あるいは、他方の容室44と環状溝47との連通を許容すると共に、上記の有効ストロークV1,V2を移動すると、ストッパ部203,204がバルブマウント4に当接してそれ以上の移動が阻止される。
なお、上記した制御バルブ20たるスプールにあっては、図中で上下端部となる両端部がその軸長の変更を可能にしているが、これが軸長の変更を不能にする固定型に設定されても良い。
ところで、上記の制御バルブ20たるスプールの移動は、図示する実施形態にあっても、入力手段9によって具現化されるのはもちろんで、この入力手段9は、ロッド体3における一方のロッド体31に連結されて制御バルブ20たるスプールの上端に対向する一方のアーム部材91と、ロッド体3における他方のロッド体32に連結されて制御バルブ20たるスプールの下端に対向する他方のアーム部材94とを有し、この各アーム部材91,94のいわゆる先端部に駆動部としての入力規制機構10をそれぞれ有している。
このとき、一方のアーム部材91は、シリンダ体1のいわゆる外に配在されているが、他方のアーム部材94は、サブシリンダ体11に形成されたスリット状の開口11aを挿通して言わば先端側がサブシリンダ体11のいわゆる外に突出している。
それゆえ、この油圧緩衝器にあっては、他方のロッド体32に連設された他方のアーム部材94がサブシリンダ体11に開穿のスリット状の開口11aを挿通するから、ロッド体3のシリンダ体1に対するいわゆる回転止めが具現化される。
ここで、この図3におけるバルブ装置の作動を説明すると、まず、図3に示す状態では、油圧緩衝器においてシリンダ体1内のピストン体2が中立位置にあり、バルブマウント4内において制御バルブ20たるスプールが中立状態にある。
そして、この状態において、スプールにおけるバルブマウント4外に突出する一方のストッパ部203とバルブマウント4との間に出現するスプールの有効ストロークV1と、他方のストッパ部204とバルブマウント4との間に出現するスプールの有効ストロークV2とが同じになる。
そこで、たとえば、油圧緩衝器が収縮作動する状況になると、スプールがバルブマウント4内に没入するように下降し、このとき、スプールの移動ストロークが後述する不感帯ストロークL1以上になるまでは、スプールが開放作動しないから、バイパス路が閉鎖された状態にあり、したがって、油圧緩衝器にあっては、他方の油室R2が減衰バルブ22を介して一方の油室R1に連通する。
そして、スプールの移動ストロークが不感帯ストロークL1以上になると、スプールの本体部201に形成の切り溝202が図中で下方となるランド部46を跨ぎ、バイパス路を形成する他方の容室44が環状溝47と連通する状況になり、バルブマウント4内においてバイパス路が開放される。
それゆえ、油圧緩衝器にあっては、他方の油室R2がこの開放されたバイパス路を介して、すなわち、他方の連通路42、他方の容室44、環状溝47、チェックバルブ7および一方の連通路41を介して一方の油室R1に連通し、この限りにおいて、それまで発生されていた高い減衰力が低くなる。
ちなみに、スプールの下降に伴う一方のストッパ部203の下降時には、この一方のストッパ部203とバルブマウント4との間に介装されている弁体附勢バネSが収縮する。
そして、油圧緩衝器において収縮作動が続行されて、スプールの下降が続行される状況になると、スプールの下降が一方のストッパ部203のバルブマウント4への当接で阻止されると、以降は、入力手段9における入力規制機構10でその動きが吸収される。
すなわち、入力規制機構10にあっては、附勢手段102たる附勢バネが収縮してプッシュ部材101を後退させ、油圧緩衝器における収縮作動に伴う外力、すなわち、推力のスプールへの入力を回避する。
上記したところに対して、いわゆる中立状態から油圧緩衝器が伸長作動する状況になると、スプールがバルブマウント4内から突出するように上昇し、このとき、スプールの移動ストロークが後述する不感帯ストロークL2以上になるまでは、スプールが開放作動しないから、バイパス路が閉鎖された状態にあり、したがって、油圧緩衝器にあっては、一方の油室R1が減衰バルブ21を介して他方の油室R2に連通する。
そして、スプールの移動ストロークが不感帯ストロークL2以上になると、スプールの本体部201に形成の切り溝202が図中で上方となるランド部45を跨ぎ、バイパス路を形成する一方の容室43が環状溝47と連通する状況になり、バルブマウント4内においてバイパス路が開放される。
それゆえ、油圧緩衝器にあっては、一方の油室R1がこの開放されたバイパス路を介して、すなわち、一方の連通路51、一方の容室53、環状溝57、チェックバルブ8および他方の連通路52を介して他方の油室R2に連通し、この限りにおいて、それまで発生されていた高い減衰力が低くなる。
そして、油圧緩衝器において伸長作動が続行されて、スプールの上昇が続行される状況になると、スプールの上昇が他方のストッパ部204のバルブマウント4への当接で阻止されると、以降は、入力手段9における入力規制機構10が言わばその動きを吸収する。
すなわち、入力規制機構10にあっては、前記したように、附勢手段102たる附勢バネが収縮してプッシュ部材101を後退させ、油圧緩衝器における収縮作動に伴う外力、すなわち、推力のスプールへの入力を回避する。
なお、この図3に示す実施形態において、収縮作動時の不感帯ストロークL1(符示せず)は、図3中に示すスプールの本体部201に形成の切り溝202におけるオーバーラップL11とプッシュ部材101とスプール201の間における隙間L12との和であり、また、同じく伸長作動時の不感帯ストロークL2(符示せず)は、同じく切り溝202におけるオーバーラップL21とプッシュ部材101とスプール201の間における隙間L22との和である。
以上のように、この発明のバルブ装置にあっては、シリンダ体1に対してロッド体3が出没するいわゆる伸縮作動時にその伸縮量が上記した不感帯ストロークL1,L2を超えるとき、バルブマウント内で制御バルブ20が開放作動して、バイパス路を連通状態に切り換える。
それゆえ、このことからすれば、前記した図1に示す実施形態の場合と同様に、この発明のバルブ装置にあって、不感帯ストロークL1,L2が同一になるとき、油圧緩衝器がいわゆる中立状態にあると推定でき、また、油圧緩衝器を設置する際に、迅速な設置作業を実現できる。
そして、この図3に示すバルブ装置にあっても、前記した図1に示すバルブ装置と同様に、入力手段9の作動で制御バルブ20たるスプールが開放作動するのはもちろんであるが、入力手段9の作動が重要視されるのはそれによってスプールの開放作動が要請される場面であって、その要請が無くなった後は、入力手段9の関与が停止される。
具体的には、図示するところでは、スプールにおいて、これが一定量を移動したら、さらなる移動は、スプールが保持するストッパ部203,204のバルブマウント4に対する当接で機械的にこれが阻止されるとしている。
それゆえ、この発明のバルブ装置における入力手段にあっても、機械的に作動が停止されたスプールに対して必要以上の推力を入力しないから、スプールにいわゆる無理をかけず、バルブ装置における作動性を恒久的に保障し易くなる。
また、この発明のバルブ装置にあって、スプールにおける開放作動ストローク、すなわち、言わば有効ストロークが保障されることで足りるから、スプールのコンパクト化、すなわち、バルブ装置のコンパクト化を可能にし得る。
なお、上記したところでは、入力手段9のいわゆる関与回避が、スプールにおけるストロークエンドに基づくとするが、スプールの有効ストロークを保障する限りには、スプールがバルブマウント4内で、たとえば、ランド部45,46に当接することによっても良い。
前記したところは、この発明によるバルブ装置を装備する油圧緩衝器が建築物における制振ダンパとされる場合を例にしているが、この発明が意図するところからすれば、この油圧緩衝器が建築物以外の、たとえば、鉄道車両や機器類の制振用として利用されるとしても良い。
そして、前記したところでは、この発明が両ロッド型の油圧緩衝器に具現化されるとしたが、この発明が意図するところからすれば、この発明が片ロッド型の油圧緩衝器に具現化されても良く、さらには、凡そ気体以外のいわゆる収縮しないとされる流体を利用する緩衝器であれば、その具現化が可能になる。
また、前記した図1に示すところでは、制御バルブ5,6が図中での左右方向に油圧緩衝器に並列する態勢に配設されて奥行き寸法を短くしているが、この発明が意図するところからすれば、図示しないが、並列する制御バルブ5,6が油圧緩衝器に重ねられるように配設されて幅寸法を狭くするとしても良い。
さらに、前記したところでは、この発明によるバルブ装置を装備する油圧緩衝器にあって、バルブマウント4がシリンダ体1に一体に保持されてなる場合を例にして説明したが、この発明にあっては、バルブマウント4がシリンダ体1と分離されていても、油圧緩衝器における中立状態の実現が可能になる。
すなわち、油圧緩衝器を所定の位置に設置するについて、先に、シリンダ体1を大まかに看て中立状態にあると言える状況で設置場所に設置し、爾後に、シリンダ体1から分離されているバルブマウント4を移動して、不感帯ストロークL1,L2を言わば左右で同一にすれば、この油圧緩衝器における中立状態を実現し得る。
そしてまた、この発明によるバルブ装置では、制御バルブ5,6の具体化にあって、これが一軸に形成されるのではなく、二軸に形成されるから、これがバルブマウント4に装備される場合や、あるいは、シリンダ体1内に装備される場合を考慮すると、バルブマウント4の小型化を妨げ易くなったり、あるいは、シリンダ体1内への装備性を不利にし易くなったりする不具合の招来を回避できる点で有利となる。
もっとも、この発明が意図するところからすれば、図示しないが、制御バルブ5,6の具現化にあって、これがいわゆる一軸に直列配置されるとしても良い。