JP4416256B2 - 超音波撮像装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療診断に用いられる超音波診断装置や、物体を非破壊検査する非破壊検査装置などの生体や物品の内部構造を検査する超音波撮像装置に係り、特に生体や物品の内部が超音波の伝播速度の異なる構造をしていても、高画質の画像を得ることができる超音波撮像装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リニア走査型超音波撮像装置は、複数の超音波配列振動子に対し口径を形成するために口径選択スイッチにより同時に駆動する配列振動子群を選択して超音波の送受信を行う。そして、その口径を順次移動し、生体や物体の内部を超音波ビームでリニア走査する。また、セクタ走査型超音波撮像装置では、口径移動は行わずに超音波ビームを偏向して生体や物体の内部を走査する。リニア方式及びセクタ方式のいずれにおいても、超音波の送信には,生体又は物体内にフォーカス点を設定し、そのフォーカス点へ口径を形成する超音波振動子群から放射された超音波が同時に到達するように、各振動子へ供給される駆動パルスを遅延制御することが行われる。
【0003】
この遅延制御を行うために送波遅延回路が設けられており、選ばれた口径内の各振動子に対し送波遅延回路により超音波を収束させるために送波回路によって生成された駆動パルスが遅延されて出力され、超音波ビームが放射される。
【0004】
被検体からの反射エコーは,受信口径として選択された複数の超音波振動子によって受信され、送受分離回路を介して複数の超音波振動子に連なる受波回路に入力され、増幅され良好なダイナミックレンジを有した信号とされ、複数のアナログデジタルコンバータによりデジタル信号に変換される。その信号はデジタル遅延部と加算回路とから成るデジタル整相部によって受信口径を形成する全ての振動子へ同時に反射エコーが到達したものとされ,加算され出力される。この出力が受信ビーム信号を形成する。その出力は、信号処理部により、対数圧縮,フィルタリング,γ補正などを施され,座標変換,補間等のスキャン変換をして表示される。
【0005】
ここで述べた送波遅延及び受波遅延のための遅延データは、各振動子からフォーカス点までの距離を媒体中の超音波の伝播速度で割り算をして時間に変換した値である。しかし、検査される媒体の組織は均一ではなく、肥満体の人や筋肉質の人によって体内を超音波が伝播する速度は様々な値である。したがって、現状は生体内を伝播する超音波の音速の平均的な値を仮定して遅延データを装置に設定している。
【0006】
個人差によって音速が大きく仮定音速と異なると、その場合には理想的なフォーカスが行われず鮮明な画像が得られなくなる。
【0007】
生体組織中における超音波伝播速度の推定方法の例としては、例えば特開平6-269447号公報がある。これは、超音波が伝播する媒質を、音速を含む様々な係数によって仮定し、伝播する波形の変形を仮定した媒質係数による理論式によって算出し、実測した波形と照合させることで媒質音速を含む係数を推定する方法である。
【0008】
音速修正により、最適フォ−カシングを行う超音波診断装置の例としては、例えば特開平2-274235号公報がある。これは、コンソールから操作者が媒質音速を設定してフォーカスを変更するものである。 また、断層像上のフォ−カスの合っていない領域で自動的にフォ−カスを合わせることができる超音波診断装置の例としては、例えば特願平4-252576号公報がある。これは、人体を不均一媒質とみなし、被検体である生体に応じて遅延時間調節を行うものである。この方法によると、自動的に最適なフォーカスに変更することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平6-269447号公報に開示されている技術は、媒質を仮定しなければならず、演算方法が複雑である上に、実測波形との照合をせねばならず演算に時間がかかるという難点を有している。また、特開平2-274235号公報に開示されている技術は、自動で音速を推定する方法ではないため,ユーザーに大きな負担が生じるとともに正確性に欠けるという課題を有している。さらに、特願平4-252576号公報に開示された技術は、媒質音速推定に着目したものではないため、超音波ビームの走査領域全体に対しては良好な画像が得られない等の解決を望まれている課題があった。
【0010】
本発明の第1の目的は、素早く媒質音速を求め、この音速に対応した遅延時間を用いて遅延時間制御ができる超音波撮像装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、操作者が媒質音速を入力することなく自動的に媒質に適合した音速によるフォーカシングが可能な操作性の優れた超音波撮像装置を提供することにある。
【0012】
そして,本発明の第3の目的は、超音波ビームの走査領域全体にわたって、すなわち画像の全体にわたって均質でよりシャープなフォーカスがなされた画像を得ることができる超音波撮像装置を提供することにある。
【0013】
さらに、本発明の第4の目的は、推定した音速を可視化して操作者へ提供することができる超音波撮像装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、被検体へ超音波を送信しそれによるエコーを受信する複数の振動子を内蔵した超音波探触子と、超音波探触子の前記複数の振動子から出力される各エコー信号をデジタル信号に変換する手段と、デジタル化された各エコー信号の整相を行うデジタル整相手段と、デジタル整相手段の出力信号を加算し受信ビーム信号を形成する受信ビーム信号形成手段と、前記受信ビーム信号形成手段の受信ビーム信号を画像処理し画像として表示する表示手段とを有した超音波撮像装置であって、前記デジタル整相手段の出力信号を用いて被検体内における超音波の伝播速度を求める手段を備え、前記超音波伝播速度を求める手段は、前記デジタル整相手段から出力される複数の振動子のエコー信号から遅延時間誤差を演算する遅延時間誤差演算手段と、複数の伝播音速に対応した遅延時間誤差データを記憶する記憶手段と、前記遅延時間誤差演算手段の出力と前記記憶手段に記憶された遅延時間誤差データとを比較することにより超音波伝播速度を選択決定する音速選択部と、を備え、さらに、前記求められた超音波伝播速度に対応した遅延データを前記デジタル整相手段へ供給する手段備え、前記デジタル整相手段は前記遅延データを用いて前記整相を行うことを特徴としている。
【0018】
また、本発明は前記目的を達成するために、被検体へ超音波を送信しそれによるエコーを受信する複数の振動子を内蔵した超音波探触子と、超音波探触子の前記複数の振動子から出力される各エコー信号をデジタル信号に変換する手段と、デジタル化された各エコー信号の整相を行うデジタル整相手段と、デジタル整相手段の出力信号を加算し受信ビーム信号を形成する手段と、前記受信ビーム信号を画像処理し画像として表示する表示手段と、を有した超音波撮像装置であって、 前記デジタル整相手段の出力信号を用いて前記デジタル整相手段に設定された遅延時間誤差データの誤差を演算により求める手段と、前記演算により求められた遅延時間誤差から補正遅延時間誤差データを求め前記デジタル整相手段へ供給する手段と、補正遅延時間誤差データの設定により得られた前記デジタル整相手段の出力信号を用いて被検体内における超音波の伝播速度を求める手段と、前記求められた超音波伝播速度に対応した遅延データを前記デジタル整相手段へ供給する手段と、を備え、前記デジタル整相手段は前記遅延データを用いて前記整相を行うことを特徴としている。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面により詳細に説明する。図は超音波撮像装置の構成を示すブロック図である。図において、1は超音波振動子から超音波を送信するために超音波振動子を駆動するためのパルス信号を発生する送波パルス回路、2は送波パルス回路1から出力されたパルス信号を駆動されるそれぞれの超音波振動子に対応して設定された遅延時間を与えて出力する送波遅延回路、3は超音波送信時には信号を送波パルス回路側から超音波振動子側へ通過させ、受信時には信号を超音波振動子側から受信回路側へ通過させる送受分離(回路)、4は超音波探触子に配列状に設けられた超音波振動子群から送受信に寄与する振動子群(口径)を選択する振動子選択SW(スイッチ回路)、5は前記配列状超音波振動子を備えた超音波探触子である。
【0024】
6は受波回路で、被検体内から反射した超音波が振動子で電気信号に変換されてエコー信号となって出力された微弱な信号を増幅する回路、7は受波回路6から出力されたアナログのエコー信号をデジタル信号に変換するA/D変換器(ADC)、8はADC7から出力されたデジタルエコー信号を遅延制御するデジタル遅延部、9はデジタル遅延部8から出力されたエコー信号を加算して超音波受信ビーム信号を形成する加算回路、10は加算回路から出力された信号を画像化する前段の処理を行う信号処理部で、入力信号に対し対数圧縮,フィルタリング,γ補正を施すもの、11は表示部で,信号処理部10から出力された信号を超音波ビームの位置に対応させて順次記憶するとともに、超音波の走査と表示のための走査との変換を行って出力し、画像を表示器へ表示する表示部である。12はADC7におけるサンプリング信号を発生するサンプリング信号発生器、13は送波遅延回路2及びデジタル遅延部8へ遅延データを供給する遅延制御部、14は上記構成要件を統括して制御する中央演算ユニット(CPU)である。
【0025】
次に、図の構成になる超音波撮像装置の動作を説明する。先ず、操作者は検査に入る前に装置に対する初期設定を行う。この初期設定において、操作者は被検者の検査部位を特定し、検査部位の体表からの深さを推定し、送波のフォーカス深度を設定する。この設定されたフォーカス深度に対応して、装置に設定された生体の超音波伝播速度の平均値で求められた送波遅延データ(Dt)がCPU14によって特定され、または演算によって求められ遅延制御部13を介して超音波の送信時に送波遅延回路2へ供給される。なお、このとき操作者によって音速を装置へ手動入力することができるように、音速入力器をコンソールに設け、入力した音速値で初期設定をするようにしても良い。
【0026】
少なくとも、以上の初期設定を行った後、操作者が超音波探触子5を被検者の検査部位の体表に当て、超音波スキャンの開始指令を操作器から入力する。すると、探触子の口径選択,送波遅延データ(Dt)の設定がなされるとともに、前記平均音速によってデジタル遅延部8の受信時の遅延データ(Dr)が設定され、スキャンが開始となる。スキャンが開始されると、送波パルス回路1から駆動パルスが出力され、送波遅延回路2で探触子の口径を形成する超音波振動子の各々に個別に対応して各々の遅延時間が上記した如く与えられて駆動パルスは送受分離回路3を介して振動子選択スイッチ回路(マルチプレクサ回路)4に入力される。振動子選択SW4では入力した駆動パルスが遅延時間に対応した各振動子へ出力されるように接続切換えがなされており、振動子選択SW4から出力された駆動パルスによって探触子が駆動される。
【0027】
探触子の選択された振動子群は遅延時間の小さい順に駆動され、超音波を送信する。駆動された振動子群から生体内へ送信された超音波は先に初期設定された送波フォーカス点へそれらの波面が同じ位相を持って同時に到達するように生体内を伝播して行く。そして、伝播の過程で生体内に音響インピーダンスの異なる組織が存在すると、その境界面でその1部を反射し、反射波(エコー)が探触子方向へ戻ってくる。エコーは生体内の浅い部位から深い部位へと送信された超音波が伝播して行くのに応じて順次探触子方向へ戻る。
【0028】
これらのエコーは送信時に駆動された振動子またはそれらより小口径から大口径の振動子群へと時間と共に切換選択される振動子群で受信され、電気信号(エコー信号)に変換される。振動子で電気信号化されたエコー信号は振動子選択SW4及び送受分離3を介して受波回路6において振動子の各素子ライン(チャンネル)毎に個別に増幅処理され、チャンネル毎にADCへ入力される。ADCはサンプリング信号発生手段12によって発生されたサンプリング信号に対応したタイミングで入力したエコー信号を各チャンネル毎にデジタル信号に変換する。そしてデジタル化されたエコー信号はデジタル遅延部8へ入力する。
【0029】
デジタル遅延部8はチャンネル毎にデジタル遅延回路を有して構成され、CPU14によって制御される遅延制御部13より供給された前記受信遅延データによって入力したエコー信号に対し遅延制御し、被検体内のある点(受信ビーム上の各点)から反射したエコーは各チャンネルにおいて同一時刻に出現したように時相を揃えて加算回路9へ出力する。
【0030】
加算回路9はデジタル遅延部から出力された各チャンネル毎のエコー信号を加算して、超音波受信ビーム信号を形成して出力する。これらのデジタル遅延制御と加算の結果は、従来からこの技術分野において周知のダイナミックフォーカス方式で受信したエコービームを形成する。そして受信ビーム信号は信号処理部10において、対数圧縮,フィルタリング処理及びγ補正等の画像信号化前処理を施され、表示部11へ出力される。表示部11は、入力したビーム信号をメモリに一旦記憶する。
【0031】
上記超音波の送受信とその信号処理が超音波振動子の選択切換え又は超音波ビームの方向偏向を伴って繰り返して行われ、その受信信号は順次表示部11へ取り込まれ、前記送受信の繰り返し毎に入力してくるビーム信号で画像が形成される。その画像化されたメモリ内の記憶内容はCRT表示器の走査に同期して読み出される。これにより、生体内が超音波走査により画像化され表示される。
【0032】
以上の超音波の送受信によって取得したデータを用いて、遅延制御13は次回の超音波スキャン時のフォーカス用遅延データを求める。この遅延制御13の構成とその動作を次に説明する。
【0033】
図1は図に示す超音波撮像装置のデジタル遅延部8へ接続される遅延制御部13の詳細な構成を示すブロック図である。図1において、82はデジタル遅延部8へ遅延データを供給するデジタル遅延データ発生部、131はデジタル遅延部8で遅延制御されて出力された複数のエコー信号から遅延誤差を演算により求める遅延誤差演算部である。
【0034】
以上の構成を採用することにより、CPU14を介して遅延時間誤差演算部131の演算結果をデジタル遅延データ発生部82へフィードバックして次回の超音波送受信時の遅延制御を行えば、遅延精度が向上して良好な画像を取得することができることとなる。しかし、遅延時間誤差演算部131における演算は、試し打ちで取得したデータにノイズ等を原因とする予期せぬ信号データが混入していたりすると、正確な補正値を算出することは困難となる。したがって、遅延時間誤差演算部131の出力は目安程度のものと考えざるを得ないこととなる。
【0035】
そこで、本発明の実施形態の超音波撮像装置は、さらに、予め複数の媒質音速に対応した複数の遅延時間群を蓄えておく例えばROMから成る音速対応遅延誤差時間記部132と、遅延誤差演算部131で得た遅延時間誤差データと音速対応遅延時間誤差部132の記憶値とを照合し、検査しようとしている被検体の音速に最も近い音速に対応した遅延時間誤差データを出力する遅延時間比較部133と、音速対応遅延時間記記部132に蓄えた各遅延時間群がいかなる媒質音速に対応するものかを記録しておく音速データ記録部135と、遅延時間比較部133が出力した遅延時間の記録場所から遅延時間記録部を参照し媒質音速を選択する媒質音速選択部134と、を設けた構成となっている。
【0036】
遅延時間誤差演算部は図2に示すように、デジタル遅延回路8−1から8−Mの出力のうち、隣接する2つのチャンネルの出力を入力して遅延時間誤差を検出する(M−1)個の遅延時間誤差検出回路(誤差検出)131aと、この誤差検出の出力データを分布データに形成する遅延時間誤差分布データ形成(回路)131bとからなっている。
【0037】
ここで音速対応遅延時間誤差記憶部132には、ある基準となる音速,例えば前述の平均音速の各チャンネルにおける遅延時間誤差を基準として、その基準音速に対し所定の音速差ずつ音速を変えた場合の遅延時間誤差データを予め演算により求めテーブル状にして記憶しておくと良い。このときの記憶データの状態を視認できるようにグラフ化したものを図に示す。図において横軸は、チャンネル番号を、縦軸は遅延時間誤差を、グラフ中の複数の線は音速をパラメータとして表わしたチャンネルと遅延時間誤差の関係をしめしたものであり、送受信に寄与する超音波振動子のチャンネル数をM個としている。なお、図に示す例はリニアスキャンの場合である。図において、基準音速Voにおいて遅延時間誤差は各チャンネルにおいて一定の値ゼロを持った直線となるようにする。これは本発明が、基準音速Voを想定して試し打ちを行って、それに対して遅延時間の誤差がどれ位かを求める方法を採用している理由による。図を参照すると、基準音速Voより速い音速の場合には遅延時間誤差の分布は中央の振動子(M/2)を中心に下向きに凸となり、基準音速より遅い音速の場合には遅延時間誤差の分布は上向きに凸となる。このように音速対応遅延時間誤差記憶部132に記憶する内容を、基準音速とその差に対応するデータとすることは記憶媒体の記憶容量を低減することに寄与する。
【0038】
このように、音速対応遅延時間誤差記憶部132と遅延時間比較部133と音速データ記憶部135と媒質音速選択部134とを追加することにより、本発明の実施例の超音波撮像装置は、一般にいう適応像再生のための遅延時間補正のみならず、超音波伝播媒質の音速推定を可能とする。
【0039】
以下、本発明の実施形態による超音波撮像装置の本発明に係わる部分の原理説明と動作説明を行う。先ず、デジタル遅延部8で媒質の超音波伝播速度を生体の平均音速として仮定し、送波遅延回路2へ平均音速による送波遅延データを設定し上記試し打ちの超音波スキャンを行う。この平均音速に対応する受信遅延データ(Dr)をデジタル遅延データ発生部82からデジタル遅延部8へ供給しデジタル遅延部8から1つの受信ビームを形成するエコー信号を取得し、遅延誤差演算部131の各チャンネル毎にエコー信号を入力する。遅延誤差演算部131は隣接チャンネル,例えば、1CHと2CH,2CHと3CH,…、(M−1)CHとMCHのように隣接チャンネル同士のエコー信号を遅延誤差検出回路、例えば前述の特開平4−252576号公報に開示されている相関法による遅延時間検出回路を用いて各チャンネル間の遅延時間誤差(ΔDn)を算出し、ΔD1,ΔD2,…,ΔDmから成る遅延時間誤差データ群を分布状データとして求める。このように遅延時間誤差データを分布状データとして求める目的は、前述の予期せぬノイズ等によるデータによる誤差を防止するためである。なお、遅延誤差演算部131による遅延誤差の算出は、探触子により超音波ビームの位置又は方向を変更して生体内を走査したときの全走査領域にわたっての受信ビームに対して行っても良いし、特に検査対象臓器が存在する関心領域を定めてその領域の受信ビームについてのみ行わせるようにしても良い。
【0040】
次に、前記遅延時間誤差データの分布から生体内の超音波伝播速度を求める。音速対応遅延時間誤差記憶部132には,複数の考え得る音速に対応した遅延時間誤差データが音速をパラメータとして蓄えてある。この音速対応遅延時間誤差記憶部132の記憶内容も各チャンネル対応の遅延時間分布データとして音速対応で記憶させておく。そして遅延誤差演算部131と音速対応遅延時間誤差記憶部132の記憶内容を遅延時間比較部133へ入力し比較し、遅延誤差演算部131の出力データの分布が音速対応遅延時間誤差記憶部132の記憶内容のどれと良く一致するかを比較選択する。このとき、比較対照である音速対応遅延時間誤差記憶部132にある遅延時間分布は離散的な音速値での遅延時間分布を記録してあるので、想定した音速の値があまり多くなく粗い場合には、しばしば音速対応遅延時間誤差記憶部132に記録してある遅延時間分布と遅延誤差演算部131の出力データの分布とが一致せずにその中間値と成ることがあり得る。
【0041】
このような場合を想定すると、遅延時間比較部133の内部の比較部後段に、音速対応遅延時間誤差記憶部132に記録されている遅延時間誤差データのうち遅延誤差演算部131の出力に近い値を2つ選び出して、それらを用いて内挿法又は外挿法による補間演算を行える演算回路を追加し、その演算結果を音速の決定のために用いると良い。なお、媒質音速を十分な細かさで想定し、音速対応遅延時間誤差記憶部132に蓄えておけばこのような補間処理は必要なくなる。遅延時間比較部133での比較作業を簡便に行うために、複数ある超音波信号の入力に対する遅延時間誤差分布が2次凹面で近似できることを利用する方法は扱う情報量を少なくできるため有用である。さらに、遅延時間誤差分布の階差を求め、階差遅延時間列に対して1次直線を当てはめるようにすると扱う情報量がさらに減少するので有用である。
【0042】
次に、遅延誤差演算部131の出力と一致した記憶遅延時間誤差データを媒質音速選択部134に入力し、遅延時間分布に対応する音速値を音速データ記憶部135から参照することによって音速を求める。
【0043】
このようにして求めた音速の精度を向上するためには、受信した超音波信号が十分な強さを持っている必要があるが、送信周波数と同じ周波数である基本波と超音波媒体によって発生した高調波信号とを扱うような装置構成では、一般的に基本波の強度よりも高調波のほうが弱い。そこで、高調波でも音速推定を精度よく行うために基本波の場合の信号増幅率に対して高調波ではより大きな増幅率とし、信号減弱分を補償すれば有用である。同様に、超音波媒体が送波周波数や通過パス長によって減弱の程度が異なることがわかっているならば既知の補償値によって信号を増幅することは効果がある。
【0044】
媒質音速選択部134によって選択された音速データは、CPU14へフィードバックされ、次回に行われる検査のための超音波スキャンにおけるデジタル遅延部8の遅延データの生成に供され、またCPU14を介して表示部12へ供給され、表示部12の表示画面へ図5(a)に符号200を付してV=1,500と記してあるように数値表示される。
【0045】
遅延誤差演算部131において遅延誤差を求める際に、深度方向とと方位方向との両方向に広がる広い領域を走査して取得したデータを用いると、複数の遅延誤差データを得ることができる。この方法では求められた音速が複数の領域で異なる値として出力される。これらを全て検査時のスキャンに対して用いることも可能ではあるが、領域全体の代表的な単一の音速を、または注目領域を代表する単一の音速を使用した方が有用な場合がしばしばある。例えば、全領域を代表する音速を求め、それによる補正遅延データを用いれば全領域にわたって平均的にシャープな画像が得られ、そして注目領域のみに対して音速を求め、それによる補正遅延データを用いれば注目領域のみがよりシャープにフォーカシングされた画像が得られる。これらのいずれかを選択的に用いることも、両方を併せて用いることもできるので、目的によって使用すれば良い。
【0046】
全領域を代表する音速を求めるためには、媒質音速選択部134に複数の領域からもっとも確からしい推定値を返していると推測できる領域を選択する回路構成を付加すると有用である。例えば、遅延誤差演算部131から出力される遅延時間誤差分布が傾きθを持つ場合にはビームが高エコーの対象物に対してフォーカスを行うようになっているために本来のビーム方向からずれた方向にビームが通過することが予想できる。このような遅延誤差を返す領域の速度は選択しにくくし、また音速対応遅延時間誤差記憶部132に記録してある遅延時間誤差分布と上記の媒質に適応した遅延時間誤差D'との差異の絶対値dが大きいほど選択しにくくするので、受信信号の強さAが大きい領域のみを選択して代表的な音速を求めると良い。
【0047】
すなわち、複数の領域で求まった音速から代表的な1つの音速を選択するための評価係数Kは、K=A /α+β/d +γ/θ として、Kが最大の領域の音速を選択すれば良い。ここで、α、β、γは任意の値であり、各評価項に対して適当な重み付けを行うものである。
【0048】
また、特定領域の音速を求める場合に、注目部位が動くものを含んでいる場合、例えば、人体では心臓の拍動等による体動があるが、このような場合には同じ場所に複数回超音波を続けて送信し、各受信信号による遅延誤差情報を平均した値によって音速を推定すると体動などに影響されにくく安定した音速推定が可能となるので有用である。また、心臓弁などの特に動きの速いものについては、上記に加えて心電と同期させて遅延誤差情報を取得すれば音速を精度良く求めることができる。
【0049】
以上述べた遅延誤差演算方法としては、隣接チャンネル間で相関処理により位相差を検出する方法や、隣接チャンネル間の整相後の信号に受信中心周波数を複素乗算し差周波成分のみ取り出し、その実部と虚部を除算してtanθより位相差を出す方法、さらに、表示画像において注目領域を設定しその領域のヒストグラムや、信号強度が最大になる様に、各チャンネルの遅延時間を変化させながら収束させて求める方法等がある。上記実施形態における遅延誤差演算部131は、これらは前記文献等で公知となっているので、詳細な説明は省略するが、以上の公知のどの方法であっても良い。
【0050】
本発明は種々の変形が可能である。例えば、前述した実施形態では,音速を求めて遅延データを作り直して画像化したが、他の実施形態として、まず撮像領域全体を平均音速で補正をして画像を良くした後、関心領域についてのみさらに上記実施形態により音速補正を実行しても良い。これによれば、画像全体の画を向上させた上に、さらに関心領域は全体領域よりもさらに鮮明な画像とすることが可能である。
【0051】
また,求めた音速の表示方法として、上記実施形態では音速を数値で表示する例を説明したが、超音波ビームを深度方向とと方位方向との両方向に走査して音速を求めると、複数の領域で音速が求められる。これらの求められた音速の分布を可視化して表示すると、生体内の形態的な変化に至らずともその組織が病理的変化の過程にある状況が観察できる可能性があり有用である。その表示態様としては、様々な態様が考えられるが音速マップとして表示することが有用と考えられる。
【0052】
この音速マップ表示方法の例としては図5(b)に示すような音速マップ像を作成し、図5(a)に示す超音波画像(断層像)と音速マップ像とを表示器の画面に同時に並べて表示する方法、または、超音波画像と音速マップ像を選択的に表示器の画面に別個に表示する方法、さらに超音波画像と音速マップをオーバーラップさせて表示する方法の他に、超音波画像の輝度値に対して音速マップで輝度変調を掛けて表示する方法、超音波画像を白黒とし音速マップ像に色変調をかけて表示する方法、音速マップの値を通常画像の画素に対するオフセットとして扱い音速分布を重畳して表示する、等さまざまな方法があるが、利用目的に応じて適宜選択的に、又は併用することができる。当然であるが、複数の音速を数値として画面に表示する方法や、複数の音速から上記の方法により選び出した代表音速値を値として表示するのも有用である。なお、音速マップ像を表示するときは、マップ像の近傍にマップ像のコントラストまたは色相を表わすスケール300を表示すると、医師がマップ像を観察する手助けとなる。
【0053】
また、本発明は、超音波画像診断装置などで用いられているBモードの白黒画像だけではなくカラー画像(カラーフローマッピング像)にも適用すれば、白黒像とカラー像との位置関係を精度よく表示することができ、白黒像とドプラ像とに適用すればドプラ信号取得域の位置合わせ精度を向上でき、Mモード像に適用すれば距離精度を向上できるので有用である。ほかにも、白黒画像を例えば薄く表示しておいて画質を向上させたときの画像を通常のコントラストで表示するなどすると画質改善の程度がわかり、受波整相回路を2系統ないしは時分割処理によって複数系統とみなせる構成とすれば一方には通常のフォーカスを与え他方には改善したフォーカスを与えて同時に画像を観測できるので画質向上の程度を比較できるので有用である。
【0054】
さらに、瞬間的な送波エネルギを増やさずに総エネルギを増やして良好な反射信号を観測する技術である符号化送受信では複雑に交番する送波波形を用いるため、上記で説明した従来の一般的な遅延誤差推定方法では間違った推定値となりやすいと推察できるが、このような場合には通常の送受信を行い、上記の音速推定を行ってフォーカス精度を向上した後、符号化送受信を行えば通常の場合と同様に精度を向上できるので有用である。
【0055】
本実施例では、1次元配列振動子による2次元断層像を得る場合について記したが、それに限る物ではなく、リングアレーや、2次元配列振動子を用いた2次元画像や3次元画像を計測し表示する装置においても同様に処理でき、同様の効果を得ることができる。
【0056】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、媒質を仮定することなくより簡便な演算によってすばやく媒質音速求めることができ、媒質音速による遅延時間誤差データを用いて超音波撮像を行うことができる。また、操作者が媒質音速を入力することなく装置が自動的に媒質に適合した音速を求めるので装置の操作性を向上することができる。さらに、本発明によれば、超音波走査領域全体にわたって均質でよりシャープな画像を得ることができる。また、装置が自動的に求めた音速を表示するので、操作者は音速値によって音速を知ることができ、音速の体内における分布をも知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の超音波撮像装置における遅延制御部の一構成例を示すブロック図。
【図2】本発明における遅延誤差演算部の一構成例を示すブロック図。
【図3】本発明の超音波撮像装置の概略構成を示すブロック図。
【図4】音速対応遅延時間誤差記憶部の記憶内容を可視化するための図。
【図5】音速分布の表示態様を説明する図。
【符号の説明】
5 超音波探触子、7 ADC、8 デジタル遅延部、9 加算回路、11 表示部、13 遅延制御部、14 CPU、82 遅延データ発生部、131 遅延時間誤差演算部、131a 遅延時間誤差検出回路、131b 遅延時間誤差分布データ形成回路、132 音速対応遅延時間誤差記憶部、133 遅延時間比較部、134 音速選択部、135 音速データ記憶部

Claims (11)

  1. 被検体へ超音波を送信しそれによるエコーを受信する複数の振動子を内蔵した超音波探触子と、
    超音波探触子の前記複数の振動子から出力される各エコー信号をデジタル信号に変換する手段と、
    デジタル化された各エコー信号の整相を行うデジタル整相手段と、
    デジタル整相手段の出力信号を加算し受信ビーム信号を形成する受信ビーム信号形成手段と、
    前記受信ビーム信号形成手段の受信ビーム信号を画像処理し画像として表示する表示手段とを有した超音波撮像装置であって、
    前記デジタル整相手段の出力信号を用いて被検体内における超音波の伝播速度を求める手段を備え、
    前記超音波伝播速度を求める手段は、前記デジタル整相手段から出力される複数の振動子のエコー信号から遅延時間誤差を演算する遅延時間誤差演算手段と、
    複数の伝播音速に対応した遅延時間誤差データを記憶する記憶手段と、
    前記遅延時間誤差演算手段の出力と前記記憶手段に記憶された遅延時間誤差データとを比較することにより超音波伝播速度を選択決定する音速選択部と、を備え、
    さらに、前記求められた超音波伝播速度に対応した遅延データを前記デジタル整相手段へ供給する手段備え、
    前記デジタル整相手段は前記遅延データを用いて前記整相を行うことを特徴とする超音波撮像装置。
  2. 前記記憶手段には、複数の超音波振動子のチャンネルに対応した遅延時間誤差が音速をパラメータとして複数の遅延時間分布として記憶されていることを特徴とする請求項に記載の超音波撮像装置。
  3. 前記記憶手段に記憶された複数の遅延時間分布に対応する超音波伝播速度を記憶する音速データ記憶手段を備え、前期音速選択部は選択決定した遅延時間誤差データに対応する音速を前記音速データ記憶手段に記憶される音速データと照らし合わせて求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波撮像装置。
  4. 前記音速選択部によって求められた音速データを前記表示手段の表示画面へ表示させる手段を備えたことを特徴とする請求項に記載の超音波撮像装置。
  5. 前記遅延時間誤差演算手段は、前記デジタル整相手段の複数の出力信号についての深度方向のある一部分の出力信号を用いて遅延時間誤差を演算することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の超音波撮像装置。
  6. 前記遅延時間誤差演算手段は、前記デジタル整相手段の複数の出力信号についての深度方向の全領域の出力信号を用いて遅延時間誤差を演算するとともに、この演算をある超音波走査領域を形成する複数の受信ビームの各々について行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の超音波撮像装置。
  7. 前記デジタル整相手段の複数の出力信号についての深度方向の全領域の出力信号を用いて演算された遅延時間誤差を音速データの分布に変換し、前記表示手段の表示画面へ音速分布画像として表示させる手段を備えたことを特徴とする請求項に記載の超音波撮像装置。
  8. 前記音速分布画像へ音速の差に応じた色相を付与して表示することを特徴とする請求項に記載の超音波撮像装置。
  9. 前記音速分布画像を超音波断層像と共に前記表示手段の表示画面へ表示することを特徴とする請求項に記載の超音波撮像装置。
  10. 前記音速分布画像と超音波断層像とを重畳して表示することを特徴とする請求項に記載の超音波撮像装置。
  11. 被検体へ超音波を送信しそれによるエコーを受信する複数の振動子を内蔵した超音波探触子と、
    超音波探触子の前記複数の振動子から出力される各エコー信号をデジタル信号に変換する手段と、
    デジタル化された各エコー信号の整相を行うデジタル整相手段と、
    デジタル整相手段の出力信号を加算し受信ビーム信号を形成する手段と、前記受信ビーム信号を画像処理し画像として表示する表示手段と、を有した超音波撮像装置であって
    前記デジタル整相手段の出力信号を用いて前記デジタル整相手段に設定された遅延時間誤差データの誤差を演算により求める手段と、
    前記演算により求められた遅延時間誤差から補正遅延時間誤差データを求め前記デジタル整相手段へ供給する手段と、
    補正遅延時間誤差データの設定により得られた前記デジタル整相手段の出力信号を用いて被検体内における超音波の伝播速度を求める手段と、
    前記求められた超音波伝播速度に対応した遅延データを前記デジタル整相手段へ供給する手段と、を備え、
    前記デジタル整相手段は前記遅延データを用いて前記整相を行うことを特徴とする超音波撮像装置。
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