JP4412877B2 - アルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法およびこの製造方法にて得られた正極活物質を用いたアルカリ蓄電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法とその製造方法にて得られる正極活物質を用いたアルカリ蓄電池に関連するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯機器の普及に伴って小型二次電池の需要が高まってきたが、その中でも水酸化ニッケルを主体とした正極を用い、アルカリ水溶液を電解液として用いるニッケル・カドミウム蓄電池やニッケル・水素蓄電池等のアルカリ蓄電池は、高容量、高信頼性、低コストの二次電池として多くの需要を得ている。
【0003】
アルカリ蓄電池用の正極には、大別して焼結式と非焼結式の二つがある。前者はパンチングメタル等の芯材とニッケル粉末とを焼結させて得た多孔度80%程度のニッケル焼結基板に、硝酸ニッケル水溶液等のニッケル塩溶液を含浸し、続いてアルカリ水溶液に含浸する等して多孔質ニッケル焼結基板中に水酸化ニッケルを生成させて作製するものである。この正極は基板の多孔度をこれ以上大きくすることが困難であるため、水酸化ニッケル量を増加することができず、高容量化には限界がある。
【0004】
後者の非焼結式正極としては、例えば特開昭50−36935号公報に開示されたように、三次元的に連続した多孔度95%程度の発泡ニッケル基板に、水酸化ニッケル粒子を保持させるものが提案されており、現在、高容量のアルカリ蓄電池の正極として広く用いられている。この非焼結式正極では高容量化の観点から、嵩密度が大きい球状の水酸化ニッケル粒子が使用される。また、放電特性や充電受け入れ性、寿命特性の向上のために、上記の水酸化ニッケル粒子にコバルト、カドミウム、亜鉛等の金属元素を一部固溶させて用いるのが一般的である。
【0005】
また、このような水酸化ニッケル粒子とともに発泡ニッケル基板に保持させる導電剤としては、水酸化コバルト、一酸化コバルトのような2価のコバルト酸化物等が提案されている(例えば特開平7−77129号公報)。これら2価のコバルト酸化物は、初充電において導電性を有するβ−オキシ水酸化コバルトへと電気化学的に酸化され、これが水酸化ニッケル粒子と基板骨格とをつなぐ導電ネットワークとして機能する。この導電ネットワークの存在によって、非焼結式正極では高密度に充填した活物質の利用率を大幅に高めることが可能となり、焼結式正極に比べて高容量化が図られる。
【0006】
しかし、上記構成の非焼結式正極やこれを用いたアルカリ蓄電池においても、コバルトによる導電ネットワークの集電性能は完全なものではなく、水酸化ニッケル粒子の利用率には上限があった。さらに上記正極では、電池を過放電あるいは短絡状態で放置したり、長期の保存や高温下での保存等を行うと、その後の充放電で正極容量が低下するという欠点があった。これは、上記したような電池内の電気化学的なコバルトの酸化反応では、2価のコバルト酸化物を完全にβ−オキシ水酸化コバルトへ変化させることができず、導電ネットワークの機能低下が起こりやすいためである。
【0007】
こうしたコバルトによる導電ネットワークの不完全さを改善する手段として、特開平8−148146号公報では、水酸化コバルトの被覆層を有する水酸化ニッケル固溶体粒子を、電池外においてアルカリ水溶液と酸素(空気)との共存下で加熱処理(酸化)し、結晶構造の乱れた2価よりも価数の大きいコバルト酸化物の被覆層に改質する手法が開示されている。この場合には、あらかじめ水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル固溶体粒子を作製しておくことによるコバルトの分散性向上等の理由により、使用するコバルト量を少なくできるという利点もある。一方、特開平9−73900号公報では、この際の製造方法に関して、アルカリ水溶液を含んだ水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル粒子を、流動造粒装置等の中で流動させるかあるいは分散させながら加熱する方法が開示されている。このような処理を行うと、凝集による粒子塊の発生等のトラブルを少なくできるという利点がある。
【0008】
しかし、上記公報に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質では、被覆層を形成するコバルト種の酸化状態は未だ完全なものとは言い難く、改良の余地が残されていた。これは、アルカリ共存下での水酸化コバルトの酸化の進行が、周囲の温度や共存させるアルカリ水溶液の濃度だけでなく、周囲の水分や酸素量にも大きく影響を受け、これらの制御なしには十分に高次な状態にまで酸化させることができないためである。
【0009】
ここで、水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル粒子をアルカリ水溶液の共存雰囲気下で酸化する場合、被覆層を形成する水酸化コバルトの反応機構として、次の2つのプロセスが考えられる。
1つ目は、水酸化コバルトが被覆層表面に存在するアルカリ水溶液に式1:
Co(OH)2 + OH- → HCoO2 - + H2O
の反応によりコバルト錯イオン(HCoO2 -)として溶解し、これが酸素に触れることで、式2:
HCoO2 - + 1/2H2O + 1/4O2 → CoOOH + OH-
の反応により酸化され、高次コバルト酸化物として水酸化ニッケル粒子上に析出するプロセスである。
【0010】
2つ目は、水酸化コバルトがアルカリと酸素が共存する雰囲気下で、水を生成しながら、式3:
Co(OH)2 + OH- → CoOOH + H2O + e-
のように固相反応的に(つまり溶解を伴わずに)酸化して高次コバルト酸化物になるプロセスである。この場合、酸素は式4:
1/4O2 + 1/2H2O + e- → OH-
の反応により消費される。
【0011】
以上の2つのプロセスについて詳しく考察すると、まず1つ目のプロセスの進行は、水酸化コバルトのアルカリ水溶液への溶解性に依存する(式1)。しかし、例えば濃度30重量%のKOH水溶液で60℃程度においてもこの溶解度は数百ppmにすぎず、溶解速度もさほど大きくない。従って反応速度を高めるためには雰囲気を高温にする必要がある。しかしながらここで高温にした際、周囲の湿度が低すぎる等の理由でアルカリ水溶液が蒸発して乾燥枯渇すると、式1の錯イオンの生成が不能となり、反応が停止する。一方、式2の酸化反応では、生じたコバルト錯イオンが十分に酸素(空気)に触れることが重要で、周囲酸素が欠乏するような環境で高温になると、式5:
HCoO2 - + 1/6O2 → 1/3Co3O4 + OH-
の副反応により、導電性の乏しい低次コバルト酸化物(Co3O4、Co価数:2.67)が生成する。
【0012】
2つ目のプロセスであるが、アルカリ共存下で水酸化コバルトを加熱すると式3の機構により高次のコバルト酸化物が生成する。このとき酸素共存下では式4の反応が同時に起こり、式3の反応は連続的に進行する。この反応を円滑に進めるためには、反応系を高温にすること、OH-濃度を高くすること(式3)、O2濃度を高くすること(式4)、および生成した水を反応系より適度に除去することがポイントになる。ここで水の除去が過剰になる(つまり乾燥させすぎる)と、アルカリ種からのOH-イオンの生成が不能となるため式3の反応が停止する。また逆に、水の除去が不十分になると、水酸化コバルト近傍のO2濃度が相対的に下がるために式4の反応が十分に進まず、結果として式3の代わりに式6:
Co(OH)2 + 2/3OH- → 1/3Co3O4 + 4/3H2O + 2/3e-
の副反応により、導電性の乏しい低次コバルト酸化物(Co3O4)が生成する。
【0013】
以上のように何れのプロセスにおいても、処理時の水と酸素(空気)の制御が重要となる。上記観点から、水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル粒子のアルカリ共存雰囲気での酸化を最も効率的に進行させるには、適量のアルカリ水溶液を表面に持つことでファニキュラ状態(化学工学上の分類で、粒子表面に液が十分に存在しており且つ通気性を有した湿潤状態)となった粒子に対して、高温下で水と酸素の量をうまく制御しながら処理を施さなければならない。
【0014】
この課題を改善する提案として、特開平11−97008号公報では、酸化条件を制御することによって被覆層を形成するコバルト種は価数が3価よりも高次なγ−オキシ水酸化コバルトまで酸化されるという点、そして、この活物質を用いた正極の利用率や耐過放電性能等が、酸化が不十分な活物質を用いた場合に比べて飛躍的に向上する点が開示された。ここで、このγ−オキシ水酸化コバルトは結晶内にアルカリカチオン(K+あるいはNa+)を多量に含有するといった特徴も併せ持つ。
【0015】
ところで、近年、コバルト被覆層へコバルト以外の異種元素を分散することで、コバルト被覆層を改質し、より高性能のコバルト被覆水酸化ニッケル粒子を得る提案も数多くなされている。
例えば、特開平10−21909号公報では、水酸化ニッケル粒子の表面を水酸化イットリウムと水酸化コバルトとの共晶で被覆することで、充放電サイクルの初期はもとより、長期にわたって高い活物質利用率を発現することが開示されている。
【0016】
また、特開平11−260360号公報では、水酸化ニッケル粒子表面の少なくとも一部を、イッテルビウムを含有するコバルト化合物層で被覆することで、利用率および高温雰囲気下での充電効率を向上できることが開示されている。
また、特開2001−185137号公報では、水酸化ニッケル粒子の表面をコバルトとイットリウム等の異種元素との混晶物で被覆した後、アルカリ水溶液の存在下における酸化剤による酸化あるいは空気酸化を行うことによって、コバルト価数が3.0価を超える混晶物の被覆層を有するニッケル価数が2.0〜2.3価の高次水酸化ニッケルが得られ、この正極活物質が高利用率を示すことが開示されている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らによる検討の結果、特開平10−21909号公報および特開平11−260360号公報に開示されている水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル粒子は、被覆層である水酸化コバルトと異種元素との共晶物あるいは混晶物が水酸化コバルト単体に比べて高密度成長させることが困難であり、それらを被覆した水酸化ニッケル粒子自体も嵩高くなるため、充填性に課題を有することが明らかになった。また、被覆層である水酸化コバルトと異種元素との共晶物あるいは混晶物が、水酸化コバルト単体に比べて空気中にて導電性に乏しい低次コバルト酸化物(Co3O4)に酸化され易いため、空気中にて長期保管できないという課題も有していることが明らかになった。すなわち、それらを被覆した水酸化ニッケル粉末を空気中にて長期保管した場合、被覆層が低次コバルト酸化物に酸化され易く、生成した低次コバルト酸化物は比較的アルカリ水溶液中でも安定であり、電池内での電気化学的な酸化においても、高導電性のβ−オキシ水酸化コバルトに酸化され難く、正極活物質間の導電性が低下し、利用率が減少することになる。
【0018】
また、特開2001−185137号公報に開示されているコバルト被覆水酸化ニッケル粒子では、酸化処理前の活物質粉末が前述同様に嵩高いため、従来に比べて酸化条件の制御が困難になるといった課題を有することが明らかになった。また、水酸化コバルトと異種元素との共晶物あるいは混晶物が多量の水和水を含有していることも明らかになっており、このことも酸化条件の制御の難しさに影響していると考えられる。さらに、酸化処理前の活物質粉末の被覆層が前述同様に空気中にて導電性に乏しい低次コバルト酸化物に酸化され易いため、空気中にて長期保管できず、被覆後直ちに高次コバルト酸化物まで酸化しなければならないといった取扱いの不便さも有していた。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するものであり、利用率および高温雰囲気下での充電効率に優れ、かつ充填性にも優れたアルカリ蓄電池用正極活物質の低コストかつ効率的な製造方法を提供するものである。また、この製造方法にて作製される正極活物質を用いた高容量かつ高温使用時においても優れた充放電特性を有するアルカリ蓄電池を提供するものである。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の製造方法は、水酸化コバルトにて被覆された水酸化ニッケルを主成分とする固溶体粒子と、イットリウム、スカンジウム、ランタノイドおよびカルシウムから選ばれる少なくとも一種の酸化物粒子と、アルカリ水溶液とを撹拌混合し、粒子表面がアルカリ水溶液で濡れた湿潤粒子にする第1工程と、前記湿潤粒子を酸素存在下で撹拌混合しながら加熱処理を行い、乾燥まで導く第2工程とを備え、水酸化コバルトにて被覆された水酸化ニッケルを主成分とする固溶体粒子は、その平均粒径が5〜20μmであり、かつBET比表面積が5〜15m 2 /gであり、第1工程にて混合する上記少なくとも一種の酸化物粒子は、その平均粒径が0.2〜8.0μmであり、かつBET比表面積が3〜60m 2 /gであることを特徴とするものである。
【0021】
前記の第1工程において、水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル粒子は、その表面がアルカリ水溶液で均一に濡れた湿潤粒子となり、同時にイットリウム等の酸化物粒子はアルカリ水溶液によってゲル状の水酸化物に変化する。続く第2工程において、水酸化コバルト被覆層は式1、式2および式3の反応によって高次コバルト酸化物に酸化されるが、この際、ゲル状のイットリウム等の水酸化物はその被覆層中に拡散していく。最終的には、被覆層中に拡散したイットリウム等の水酸化物は脱水し、酸化物として被覆層中に均一に分散することになる。すなわち、イットリウム等の酸化物が均一に分散した高次コバルト酸化物に被覆された水酸化ニッケル粒子が作製されることとなる。
【0022】
本発明の製造方法では、特開平10−21909号公報、特開平11−260360号公報、特開2001−185137号公報に開示されているような、高密度成長が困難である水酸化コバルトと異種元素との共晶物あるいは混晶物の被覆層を作製する過程を含まない。高密度成長が可能な水酸化コバルト単体にて被覆された水酸化ニッケル粒子とイットリウム等の酸化物粒子を使用するため、高密度かつ充填性に優れた異種元素を含有する高次コバルト酸化物にて被覆された水酸化ニッケル粒子が得られる。原料である水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル粒子は、空気中でも比較的酸化され難いため酸化処理前の長期保管も可能であり、少量の水和水しか含有しないため酸化条件の制御も簡便であり、生産性の向上が図られる。また、既存の水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル粒子をそのまま使用でき、活物質製造コストの上昇を抑制できるという利点も併せ持つ。
【0023】
ここで、特開平11−73954号公報において、水酸化ニッケルと、コバルト化合物または金属コバルトと、イットリウム等の異種元素の化合物と、アルカリ水溶液とを混合し、その混合物を酸素存在下で加熱処理するという本発明と類似の製造方法が開示されている。しかし、上記製造方法は高次コバルト化合物層を水酸化ニッケル粒子と異種元素化合物粒子の両方の表面に析出させるというものであり、異種元素をコバルト被覆層中に分散させるものではないという点で本発明の製造方法とは根本的に異なる。さらに上記製造方法は、コバルト化合物粉末を使用するため酸化条件の制御が非常に困難であるといった課題も有している。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法は、水酸化コバルトにて被覆された水酸化ニッケルを主成分とする固溶体粒子と、イットリウム、スカンジウム、ランタノイドおよびカルシウムから選ばれる少なくとも一種の酸化物粒子と、アルカリ水溶液とを撹拌混合し、粒子表面がアルカリ水溶液で濡れた湿潤粒子にする第1工程と、前記湿潤粒子を酸素存在下で撹拌混合しながら加熱処理を行い、乾燥まで導く第2工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0025】
前記第1工程では、水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル粒子は、その表面がアルカリ水溶液で均一に濡れた湿潤粒子となり、同時にイットリウム等の酸化物粒子はアルカリ水溶液によってゲル状の水酸化物に変化する。続く第2工程において、水酸化コバルト被覆層は式1、式2および式3の反応によって高次コバルト酸化物に酸化されるが、その際、ゲル状のイットリウム等の水酸化物はその被覆層中に拡散していく。最終的には、被覆層中に拡散したイットリウム等の水酸化物は脱水し、酸化物として被覆層中に均一に分散することになる。すなわち、イットリウム等の酸化物が均一に分散した高次コバルト酸化物にて被覆された水酸化ニッケル粒子が作製されることとなる。なお、粒子をファニキュラ状態にするのに必要なアルカリ水溶液の量は、粒子の物性によって変化するが、当業者であればその量を容易に選択可能である。
【0026】
前記第1工程にて混合するアルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液および/または水酸化カリウム水溶液であって、その濃度は40重量%よりも大きいことが好ましい。本発明で用いる酸化反応は、アルカリ水溶液の沸点近くで起こるため、アルカリ水溶液中の水の蒸発速度は大きい。しかしながら、本発明の酸化反応の1つ目のプロセスとしては、水酸化コバルトがアルカリ水溶液に溶解してコバルト錯イオンが生成し(式1)、さらにこの錯イオンが酸素と反応して高次コバルト酸化物になるものである(式2)。従って、処理に際しては、ある程度の量のアルカリ水溶液が高温下で粒子表面に存在していなければならない。換言すると、高温であっても、アルカリ水溶液の蒸発が早いと反応を十分に進めることができない。この観点より、アルカリ水溶液の濃度が高いほど沸点が上昇して蒸発速度が遅くなるため、処理に適すると言える。また、2つ目の酸化プロセスを考えた場合にも、OH-濃度が高い方が酸化は良く進むため(式3)、やはりアルカリ水溶液の濃度は高い方が良い。以上の観点より、使用するアルカリ水溶液の濃度は40重量%よりも大きいものが適する。
【0027】
前記第2工程における加熱温度は、90〜130℃であることが好ましい。酸化反応の速度は温度によって大きく影響を受けるが、設定温度が90℃未満であると酸化の進行が遅く、1バッチあたりに数時間もの時間を要することとなる。また同時に、酸化処理装置内壁での粒子の付着等も生じ易いことから、好ましくない。一方、130℃を超える温度では反応が激しく起こりすぎて、被覆層内部の水酸化ニッケル粒子に損傷を与える。以上の観点より、加熱設定温度は90〜130℃とすることが好ましい。
【0028】
さらに、前記第2工程において補助加熱手段としてマイクロ波照射を用いると、より効率的に酸化反応を進行させることができる。同加熱方法は、湿潤粒子へのマイクロ波照射によって誘導体(この場合はアルカリ水溶液)に分子レベルで振動を与え、分子の衝突・摩擦熱によって加熱する手法である。前記第2工程において、補助加熱手段としてマイクロ波照射を行うことにより、加熱むらをほとんど生ずることなく湿潤粒子を迅速に所定温度まで昇温することができる。さらに、マイクロ波照射による粒子の加熱は、アルカリ水溶液で濡れている粒子表面の水酸化コバルト被覆層部分から起こるため、他の加熱手段に比べて被覆層部分の酸化効率が高くなり、被覆層の水酸化コバルトは3価を超える高次コバルト酸化物まで酸化される。
【0029】
前記水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル固溶体粒子において、その水酸化コバルト被覆量は、水酸化ニッケル固溶体粒子に対して5〜12重量%であることが好ましい。正極利用率は水酸化ニッケル粒子へのコバルト被覆量によって大きく変化するが、被覆量が5重量%未満であると十分な導電ネットワークが形成できず、正極利用率の低下が顕著となる。一方、被覆量が12重量%を超えると正極利用率はもはや増大せずに、水酸化ニッケル量の減少による正極容量の低下が顕著となる。以上の観点より、水酸化コバルト被覆量は、水酸化ニッケル固溶体粒子に対して5〜12重量%であることが好ましい。
【0030】
前記水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル固溶体粒子は、その平均粒径が5〜20μmであり、かつBET比表面積が5〜15m2/gである。平均粒径が5μm未満の場合は、所定のアルカリ水溶液によって粒子をファニキュラ状態に到らすことが困難となり、被覆層を高次コバルト酸化物まで酸化できない。また、粒子嵩密度が低下するため高容量の正極を得ることができない。平均粒径が20μmを超える場合は、粒子が大き過ぎて水酸化コバルトが均一に被覆されないため、良好な導電ネットワークが形成できず、利用率の低下を生じる。また、BET比表面積については、これが過大あるいは過小となると粒子の濡れ性が大きく変化するため、所定のアルカリ水溶液によって粒子をファニキュラ状態に到らすことが困難となり、被覆層を高次コバルト酸化物まで酸化できない。以上の観点より、水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル固溶体粒子は、その平均粒径が5〜20μmであり、かつBET比表面積が5〜15m2/gである。
【0031】
前記第1工程にて混合するイットリウム、スカンジウム、ランタノイドおよびカルシウムから選ばれる少なくとも一種の酸化物粒子の混合量は、水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル固溶体粒子に対して0.1〜3.0重量%であることが好ましい。前記酸化物粒子の混合量が0.1重量%未満であると、前記酸化物の添加効果(高温雰囲気下での充電効率の向上)が確認できない。一方、混合量が3.0重量%を超えても前記添加効果はそれ以上向上せず、コバルト被覆層近傍の低導電性化合物(Y2O3等)の増大による高率放電特性の低下が顕著となる。以上の観点より、酸化物粒子の混合量は、水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル固溶体粒子に対して0.1〜3.0重量%、さらには0.5〜1.0重量%であることが好ましい。
【0032】
前記第1工程にて混合するイットリウム、スカンジウム、ランタノイドおよびカルシウムから選ばれる少なくとも一種の酸化物粒子は、その平均粒径が0.2〜8.0μmであり、かつBET比表面積が3〜60m2/gである。前記酸化物粒子は複数の金属を含む複合酸化物でもよい。また、1種の酸化物粒子を単独で用いてもよく、複数の酸化物粒子を組み合わせて用いてもよい。平均粒径が上記範囲外、あるいはBET比表面積が60m2/gを超える場合は、粒子の濡れ性が大きく変化するため、所定のアルカリ水溶液によって粒子をファニキュラ状態に到らすことが困難となる。その結果、水酸化コバルト被覆層の酸化、あるいは酸化物粒子のコバルト酸化物被覆層中への拡散が困難になる。この観点から、前記酸化物粒子は、その平均粒径が0.2〜8.0μm、さらには1.0〜4.0μmであり、かつBET比表面積が3〜60m2/g、さらには3〜30m2/gであることが好ましい。
【0033】
前記水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル固溶体粒子において、内部の水酸化ニッケル粒子は、コバルト、亜鉛、カドミウム、カルシウム、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、チタン、イットリウムおよびランタノイドから選ばれる少なくとも一種の元素を含有することが好ましい。原料粉末として上記固溶体粒子を用いることで、充電時の膨化が抑制され、充放電サイクルに伴う容量劣化の少ないアルカリ蓄電池用正極活物質が得られる。
【0034】
本発明の製造法にて作製した正極活物質を適用した好適なアルカリ蓄電池用非焼結式正極としては、導電性芯体に活物質を含有するペーストを塗布し、乾燥してなるペースト式正極等が挙げられる。このときの導電性芯体の具体例としては、ニッケル発泡体、フェルト状金属繊維多孔体、波板加工芯材、バリ付穿孔芯材、パンチングメタル等が挙げられる。
【0035】
本発明の製造法にて作製した正極活物質を用いた好適なアルカリ蓄電池の具体例としては、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、およびニッケル・亜鉛蓄電池等が挙げられる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、詳細に説明する。
《実施例1》
(i)原料粉末の調製
原料となる水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル固溶体粒子は、周知の以下の手法を用いて合成した。
まず、硫酸ニッケルを主成分とし、硫酸コバルトおよび硫酸亜鉛を所定量だけ含有させた水溶液に、アンモニア水溶液で溶液pHを調整しながら水酸化ナトリウム水溶液を徐々に滴下しながら攪拌を行い、球状の水酸化ニッケル固溶体粒子を析出させる方法を用いた。この析出した水酸化ニッケル固溶体粒子を水洗、乾燥した後、硫酸コバルト水溶液中に投入し、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加え、35℃でpH=12を維持するように調整しながら攪拌を続けて固溶体粒子表面に水酸化コバルトを析出させた。ここで水酸化コバルトの被覆量については、水酸化ニッケル固溶体粒子に対する比率が7.0重量%となるように調整した。作製した水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル固溶体粒子は水洗した後、真空乾燥を行った。以下これを粉末Aと表記する。なお、この粉末Aは平均粒径が10.4μm、BET比表面積が10.6m2/g、タップ密度が2.1g/cm3であった。
【0037】
(ii)第1工程
上記粉末Aと酸化イットリウム粉末を撹拌混合機能および加熱機能を備えた酸化処理装置内に投入し、濃度45重量%の水酸化ナトリウム水溶液の適量を滴下しながら撹拌混合を行った。ここで、酸化イットリウム粉末は、平均粒径が3.8μm、BET比表面積が3.2m2/gのものを使用し、粉末Aに対して1.0重量%を投入した。この第1工程にて、粉末Aはその表面がほぼ均一に濡れた湿潤粒子となった。
【0038】
(iii)第2工程
引き続き、撹拌混合を継続しながら酸化処理装置内が110℃になるまで加熱し、その後は110℃で一定となるように制御しながら、湿潤粒子がほぼ完全乾燥するまで加熱および撹拌混合を継続した。こうして得られたコバルト酸化物被覆水酸化ニッケル固溶体粒子は水洗した後、乾燥を行った。以下これを粉末Bと表記する。こうして得られた粉末Bは、平均粒径が10.3μm、BET比表面積が10.2m2/g、タップ密度が2.2g/cm3であった。また、そのコバルト酸化物被覆層中にイットリウムを含有していることを透過電子顕微鏡(TEM)の観察より確認した。
【0039】
《比較例1》
第1工程で、酸化イットリウム粉末を投入しないこと以外、実施例1と同様の第1工程および第2工程を行い、粉末Aに酸化処理を施した後、水洗、乾燥を行った。以下これを粉末Cと表記する。この粉末Cは平均粒径が10.3μm、BET比表面積が9.7m2/g、タップ密度が2.2g/cm3であった。
【0040】
《比較例2》
実施例1で得た水酸化ニッケル固溶体粒子を硝酸コバルトと硝酸イットリウムの混合水溶液中に投入し、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加え、35℃でpH=12を維持するように調整しながら攪拌を続けて水酸化ニッケル固溶体粒子表面に水酸化コバルトと水酸化イットリウムの混晶物を析出させた。ここで水酸化コバルトの被覆量については、水酸化ニッケル固溶体粒子に対する比率が7.0重量%となるように調整した。また、水酸化イットリウムの被覆量については、水酸化ニッケル固溶体粒子に対する比率がY2O3換算で1.0重量%となるように調整した。作製したイットリウム混晶水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル固溶体粒子は水洗した後、真空乾燥を行った。以下これを粉末Dと表記する。なお、この粉末Dは平均粒径が11.0μm、BET比表面積が14.2m2/g、タップ密度が1.8g/cm3であった。
【0041】
第1工程で、粉末Aの代わりに粉末Dを用い、酸化イットリウム粉末を投入しないこと以外、実施例1と同様の第1工程および第2工程を行い、粉末Dに酸化処理を施した後、水洗、乾燥を行った。以下これを粉末Eと表記する。なお、この粉末Eは平均粒径が10.8μm、BET比表面積が12.8m2/g、タップ密度が2.0g/cm3であった。また、そのコバルト酸化物被覆層中にイットリウムを含有していることを透過電子顕微鏡(TEM)の観察より確認した。
【0042】
《比較例3》
実施例1で得た水酸化ニッケル固溶体粒子、水酸化コバルト粉末(平均粒径0.1μm)、酸化イットリウム粉末(平均粒径1.0μm)を酸化処理装置内に投入し、実施例1と同様の第1工程および第2工程を行い、酸化処理を施した後、水洗、乾燥を行った。ここで、水酸化コバルト粉末および酸化イットリウム粉末の投入量は、前記水酸化ニッケル固溶体粒子に対してそれぞれ7.0重量%、1.0重量%となるように調整した。以下これを粉末Fと表記する。この粉末Fは平均粒径が11.0μm、BET比表面積が15.3m2/g、タップ密度が1.9g/cm3であった。
【0043】
[活物質の物性]
こうして得られた粉末A〜Fについて、ヨウ素還元滴定にてコバルト平均価数を算出した。ここで、各粉末のニッケル平均価数は2.0価と仮定した。また、粉末B、C、E、Fについて、各粉末を2t/cm2の圧力で加圧成型してペレットを作製し、交流4端子法にて粉体導電率を測定した。以上の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
粉末Bが粉末Cとほぼ同等のBET比表面積、タップ密度の値を示すのに対し、粉末E、FはBET比表面積が大きく、タップ密度が小さくなる傾向がある。水酸化コバルトと水酸化イットリウムの混晶物が水酸化コバルト単体に比べて嵩高いため、粉末Dは粉末Aに比べてBET比表面積が大きく、タップ密度が小さくなる。酸化処理後も原料粉末のその物性を反映して、粉末Eは粉末Cに比べてBET比表面積が大きく、タップ密度が小さくなるものと考えられる。また、粉末Fに関しては、水酸化コバルトの微粉末を機械的に混合しながら水酸化ニッケル表面に結合させる手法であるため被覆層表面が粗くなり、遊離したコバルト酸化物微粒子も存在しているため、さらにBET比表面積が大きく、タップ密度が小さくなるものと考えられる。一方、粉末Bは、粉末Cと同一の原料粉末である粉末Aから作製されるため、BET比表面積が小さく、タップ密度の大きい、充填性に優れた活物質粉末となる。
【0046】
また、粉末Bが粉末Cに比べて、コバルト平均価数、粉体導電率ともに高い値を示すのに対し、粉末E、Fは何れも低価数、低導電率になる傾向がある。粉末Dの被覆層である水酸化コバルトと水酸化イットリウムの混晶物は多量の水和水を含有する。酸化処理時にはこの水和水が脱水して水酸化コバルト被覆層近傍に水が生成し、O2濃度が低下するために式4の反応が阻害され、式3の反応が進行し難くなる。結果として水酸化コバルト被覆層の酸化が抑制され、粉末Eは粉末Cに比べて、コバルト平均価数、粉体導電率ともに低い値になるものと考えられる。また、粉末Fに関しては、嵩高い水酸化コバルトの微粉末を使用するため、粒子の混合物を湿潤状態にするためには多量の水酸化ナトリウム水溶液が必要となる。従って、多量の水を含有する水酸化コバルト粒子を酸化することとなり、粉末Eの場合よりもさらに式3の反応が進行し難くなるものと考えられる。結果として式6の副反応により、導電性の乏しいCo3O4が生成してしまい、粉末Eよりもさらにコバルト平均価数、粉体導電率ともに低い値になるものと考えられる。
【0047】
一方、粉末Bは、粉末Cと同一の原料粉末である粉末Aから作製されるため、粉末Cとほぼ同一の酸化条件にて容易に処理を施すことができる。酸化イットリウム粉末を混合する分、湿潤状態にするためには水酸化ナトリウム水溶液を若干多く必要とするが、粉末Eの場合の様にコバルト平均価数、粉体導電率の低下は生じず、むしろ粉末Cよりもコバルト平均価数、粉体導電率ともに優れた活物質粉末となる。これは、酸化処理が以下の機構で進行するためと考えられる。まず第1工程において、粉末Aは、その表面が水酸化ナトリウム水溶液で均一に濡れた湿潤粒子となり、同時に酸化イットリウム粉末は水酸化ナトリウム水溶液によってゲル状の水酸化イットリウムに変化する。続く第2工程において、水酸化コバルト被覆層は式1、式2および式3の反応によって高次コバルト酸化物に酸化され、同時にゲル状の水酸化イットリウムはその被覆層中に拡散していく。被覆層中に拡散したゲル状の水酸化イットリウムは脱水して酸化イットリウムに変化し、この際、被覆層近傍に水が生成するが、すでに被覆層は高次コバルト酸化物まで酸化されており悪影響を受けることはない。むしろ、高次コバルト酸化物被覆層中に拡散したゲル状の水酸化イットリウムがナトリウムを含有しているため、被覆層がさらに高次(特開平11−97008号公報記載のγ−CoOOH)まで酸化されるのではないかと推察している。
【0048】
[ニッケル・水素蓄電池の特性]
粉末Bに、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を0.1重量%、バインダーとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を0.2重量%と適量の純水とを加えて混合分散させ、活物質スラリーとした。この活物質スラリーを厚さ1.3mmの発泡ニッケル多孔体基板に充填し、80℃の乾燥機内で乾燥させた後、ロールプレスにより厚さ約0.7mmに圧延し、さらにこれを所定の大きさに切断加工してニッケル正極を作製した。
【0049】
この正極と水素吸蔵合金を主体とした負極、親水化処理を施したポリプロピレン不織布セパレータ、水酸化カリウム濃度が7.0規定、水酸化リチウム濃度が1.0規定である2成分系アルカリ電解液を用い、公知の方法によりAAサイズのニッケル・水素蓄電池Bを作製した。
【0050】
また、粉末Bの代わりに、粉末E、Fを用いたこと以外、電池Bと同様にして、それぞれ電池E、Fを作製した。さらに、粉末Cを用い、粉末Cに対して1.0重量%のY2O3を添加したこと以外、電池Bと同様にして、電池Cを作製した。
ここで、これら4種の電池は、使用した各粉末の充填性が異なるため、正極の充填密度に差違が生じ、電池容量にばらつきが生じた。ニッケルの1電子反応を基準とした時の各電池の理論容量は、電池B、Cが1500mAh、電池E、Fが1400mAhであった。
【0051】
これら4種の電池を、20℃の一定温度で、まず充電レート0.1CmAで15時間充電し、次いで放電レート0.2CmAで電池電圧が1.0Vになるまで放電させるサイクルを5サイクル繰り返し、5サイクル目の放電容量を測定し、放電容量C1とした。
【0052】
次に、50℃の一定温度にて充電レート0.1CmAで15時間充電し、3時間の休止の後、20℃の一定温度にて放電レート0.2CmAで電池電圧が1.0Vになるまで放電させた時の放電容量を測定し、放電容量C2とした。
理論容量に対する放電に寄与した活物質の割合を示す指標として、次式で定義される活物質利用率を求めた。また、高温での充電効率を示す指標として、次式で定義される50℃充電効率を求めた。
活物質利用率(%)={放電容量C1/理論容量}×100
50℃充電効率(%)={放電容量C2/放電容量C1}×100
【0053】
さらに、20℃の一定温度で、充電レート0.1CmAで15時間充電し、次いで放電レート0.2CmAで電池電圧が1.0Vになるまで放電させた後、直ちに電池を分解して放電後の各正極粉末を採取した。この採取した各正極粉末についてヨウ素還元滴定を行い、放電後の各正極粉末のニッケル平均価数を算出した。ここで、各粉末のコバルト平均価数は表1の値であると仮定してニッケル平均価数を算出した。
【0054】
以上の充放電試験結果を利用率、50℃充電効率、放電後ニッケル平均価数として表2に示す。また、各電池の20℃一定温度での放電曲線を図1に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
電池Bにおいて、電池Cに比べて優れた利用率、50℃充電効率を示した。表1より粉末Bがコバルト平均価数、粉体導電率ともに非常に優れた値を示すことから、正極中においてきわめて良好な導電ネットワークが形成されており、高利用率を示すことが示唆される。実際、放電後正極粉末のニッケル価数は電池Cに比べて低い値を示し、このことは粉末Bがより深くまで放電可能であることを意味している。また、充電時の酸素発生過電圧の増大に効果を有するイットリウムがコバルト被覆層中に均一に分散していることから、単に酸化イットリウム粉末を添加している電池Cよりも、50℃充電効率が向上するものと考えられる。
【0057】
電池Eに関しては、電池Cに比べて50℃充電効率は優れた値を示すが、常温での利用率は若干しか向上しない。表1より粉末Eは粉末Cに比べて、コバルト平均価数、粉体導電率ともに若干低い値を示し、放電後の正極粉末のニッケル価数は電池Cとほぼ同等の値を示すことから、正極中の導電ネットワークは電池Cとほぼ同等あるいは若干劣るものと考えられる。若干の利用率向上は、常温でも被覆層中のイットリウムによって充電受け入れ性が向上しているためと推察される。しかしながら、前述したように粉末Eは充填性が劣るため、電池Cに比べて正極充填密度が減少し、結果として図1に示すように放電容量は小さくなってしまう。なお、50℃充電効率の向上は、前述同様、イットリウムがコバルト被覆層中に分散性良く存在しているためと考えられる。
【0058】
電池Fに関しては、電池Cに比べて利用率が減少する。表1より粉末Fは粉末Cに比べて、コバルト平均価数、粉体導電率ともに低い値を示しており、放電し難い正極になっていると考えられる。放電後の正極粉末のニッケル価数も電池Cに比べて高い値を示しており、十分放電できていないことを示唆している。さらに、前述したように粉末Fは充填性も劣るため、結果として図1に示すように電池Fの電池容量はきわめて小さなものとなる。なお、50℃充電効率は、酸化イットリウム粉末が電池Cと同様に正極活物質の粒子間に存在するため、電池Cと同等になる。
【0059】
《実施例2》
実施例1に記載の粉末Aを大気中にて1ヶ月間放置した。1ヶ月放置後の粉末Aは、若干、褐色がかった色に変色した。以下これを粉末Gと表記する。なお、この粉末Gは平均粒径が10.3μm、BET比表面積が10.3m2/g、タップ密度が2.2g/cm3であった。次に、この粉末Gを用いて実施例1に記載の第1工程および第2工程と同様にして酸化処理を施した後、水洗、乾燥を行った。以下これを粉末Hと表記する。こうして得られた粉末Hは平均粒径が10.3μm、BET比表面積が9.8m2/g、タップ密度が2.2g/cm3であった。また、そのコバルト酸化物被覆層中にイットリウムを含有していることを透過電子顕微鏡(TEM)の観察より確認した。
【0060】
《比較例4》
比較例2に記載の粉末Dを大気中にて1ヶ月間放置した。1ヶ月放置後の粉末Dは、茶褐色に変色した。以下これを粉末Iと表記する。なお、この粉末Iは平均粒径が11.1μm、BET比表面積が13.8m2/g、タップ密度が1.8g/cm3であった。次に、この粉末Iを用いて、酸化イットリウム粉末を投入しないこと以外はすべて実施例1に記載の第1工程および第2工程と同様にして酸化処理を施した後、水洗、乾燥を行った。以下これを粉末Jと表記する。こうして得られた粉末Jは平均粒径が11.0μm、BET比表面積が12.9m2/g、タップ密度が1.9g/cm3であった。また、そのコバルト酸化物被覆層中にイットリウムを含有していることを透過電子顕微鏡(TEM)の観察より確認した。
【0061】
[活物質の物性]
粉末G〜Jについて、実施例1に記載と同様の方法にてコバルト平均価数を算出した。また、粉末H、Jについて、実施例1に記載と同様の方法にて粉体導電率を測定した。以上の結果を表3に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
粉末Aを大気中にて1ヶ月放置した粉末Gについては、コバルト平均価数は放置前に比べてほとんど上昇せず、それを酸化処理した粉末Hも、粉末Aを放置せずに酸化処理した粉末Bとほぼ同等のコバルト平均価数、粉体導電率の値を示す。このことは、本発明の製造方法では、使用する粉末Aの水酸化コバルト被覆層が空気中で長期保管した場合でも比較的酸化され難いため、長期保管後に酸化処理を施しても、コバルト平均価数、粉体導電率ともに優れた活物質粉末を得ることができることを意味している。
【0064】
一方、粉末Dを大気中にて1ヶ月放置した粉末Iについては、コバルト平均価数は放置前に比べて上昇しており、水酸化コバルト被覆層が長期保管によって酸化されていることが分かる。被覆層である水酸化コバルトと水酸化イットリウムの混晶物が空気中にて酸化され易く、時間経過に伴って低次コバルト酸化物(Co3O4)に酸化されたためと考えられる。また、粉末Iを酸化処理した粉末Jでは、粉末Dを放置せずに酸化処理した粉末Eに比べて、コバルト平均価数、粉体導電率ともに低い値を示した。長期放置にてコバルト被覆層中に生成した低導電性の低次コバルト酸化物(Co3O4)がアルカリ雰囲気下でも比較的安定であり、高導電性の高次コバルト酸化物に酸化されないためと考えられる。
【0065】
[ニッケル・水素蓄電池の特性]
粉末H、Jを用いて、実施例1に記載と同様の方法にてAAサイズのニッケル・水素蓄電池を作製した。以下、粉末H、Jに対応するこれらの電池を、それぞれ電池H、Jと表記する。なお、粉末H、Jの充填性が異なるため、正極の充填密度に差違が生じ、ニッケルの1電子反応を基準とした時の各電池の理論容量は、電池Hが1500mAh、電池Jが1400mAhとなった。
【0066】
これらの電池を、20℃の一定温度で、まず充電レート0.1CmAで15時間充電し、次いで放電レート0.2CmAで電池電圧が1.0Vになるまで放電させるサイクルを5サイクル繰り返し、5サイクル目の放電容量を測定し、実施例1と同様に利用率を算出した。また、放電終了後、直ちに各電池を分解して放電後の正極粉末を採取した。この採取した正極粉末についてヨウ素還元滴定を行い、放電後の正極粉末のニッケル平均価数を算出した。ここで、各粉末のコバルト平均価数は表3の値であると仮定してニッケル平均価数を算出した。
【0067】
以上の充放電試験結果を利用率、放電後ニッケル平均価数として表4に示す。また、各電池の放電曲線を図2に示す。なお、表4、図2ともに原料粉末を放置せずに酸化処理を施した粉末B、Eを用いて作製した電池B、Eの結果も併記する。
【0068】
【表4】
【0069】
電池Hに関しては、電池Bとほぼ同等の優れた利用率を示した。また、放電後正極粉末のニッケル価数も電池Bと同様に低い値を示し、深くまで放電できていることを表している。表3より粉末Hが粉末Bと同等の高いコバルト平均価数、粉体導電率を示すことから、正極中においてきわめて良好な導電ネットワークが形成されているためと考えられる。
【0070】
電池Jに関しては、電池Eに比べて顕著な利用率の減少が確認された。放電後正極粉末のニッケル価数も電池Eに比べて上昇しており、十分放電できていないことを示唆している。表3より粉末Jは粉末Eに比べて、コバルト平均価数、粉体導電率ともに低い値を示しており、放電し難い正極になっていると考えられる。
【0071】
以上の結果から、本発明の製造方法によって、利用率および高温雰囲気下での充電効率に優れ、かつ高密度充填が可能なイットリウム分散コバルト酸化物被覆水酸化ニッケル粉末を効率的に製造できることが明らかとなった。また、本発明の製造方法に用いる原料粉末は空気中でも比較的酸化され難いため、長期保管後の原料粉末を用いても、優れた活物質粉末が得られることも明らかとなった。
【0072】
《実施例3》
混合する水酸化ナトリウム水溶液の濃度を、35、40、45、48重量%と変化させること以外はすべて実施例1に記載の第1工程および第2工程と同様にして酸化処理粉末を作製した。これらの酸化処理粉末について実施例1に記載と同様の方法にてコバルト平均価数、粉体導電率を測定した。結果を表5に示す。また、各酸化処理粉末を用いて実施例1に記載と同様の方法にてニッケル・水素蓄電池を作製し、充放電評価を行った。図3に水酸化ナトリウム水溶液濃度と活物質利用率の関係を示す。
【0073】
【表5】
【0074】
表5より、第1工程にて混合する水酸化ナトリウム水溶液の濃度を40重量%よりも大きくした場合に、コバルト平均価数、粉体導電率ともに高い値を示し、被覆層が高次コバルト酸化物まで酸化されていることが分かる。また、利用率もその結果に対応して、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を40重量%よりも大きくした場合に高い値を示していることが図3より分かる。
【0075】
この結果は以下のように推察される。酸化反応プロセスの1つは式1、式2で示されるように、水酸化コバルトが水酸化ナトリウム水溶液に溶解してコバルト錯イオンが生成し、この錯イオンが酸素と反応して高次コバルト酸化物になる反応である。従って、酸化処理の際にはある程度の量の水酸化ナトリウム水溶液が高温下で被覆層表面に存在していなければならない。しかし、酸化処理は水酸化ナトリウム水溶液の沸点近くで行われるため、水酸化ナトリウム水溶液の濃度が低く、その蒸発が早いと反応を十分に進めることができない。逆に水酸化ナトリウム水溶液の濃度が高いほど沸点が上昇し、その蒸発速度が遅くなるため、酸化処理に適すると言える。また、式3で表される酸化反応の2つ目のプロセスを考えた場合にも、OH-濃度が高い方が酸化が促進されるため、やはり水酸化ナトリウム水溶液の濃度は高い方が酸化処理に適すると考えられる。
【0076】
本実施例の検討結果からは、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を40重量%よりも大とした場合に、被覆層が高次コバルト酸化物まで充分に酸化され、その結果として高利用率を発現することが分かった。
以上より、本発明の製造方法での酸化処理に使用する水酸化ナトリウム水溶液の濃度は40重量%よりも大きいものが適することが明らかとなった。
【0077】
《実施例4》
第2工程における加熱温度を、70、90、110、130、140℃と変化させること以外はすべて実施例1に記載の第1工程および第2工程と同様にして酸化処理粉末を作製した。これらの酸化処理粉末について実施例1に記載と同様の方法にてコバルト平均価数、粉体導電率を測定した。結果を表6に示す。また、各酸化処理粉末を用いて実施例1に記載と同様の方法にてニッケル・水素蓄電池を作製し、充放電評価を行った。図4に酸化処理温度と活物質利用率の関係を示す。
【0078】
【表6】
【0079】
表6より、70〜140℃の温度範囲にて酸化処理を行った何れの場合も、良好なコバルト平均価数、粉体導電率の値を示し、被覆層が高次コバルト酸化物まで酸化されていることが分かる。しかし図4に示すように、利用率に関しては140℃で酸化処理した粉末にて顕著な低下が見られた。140℃で酸化処理した粉末でも良好なコバルト平均価数、粉体導電率の値を示すことから、この低下はコバルト酸化物被覆層に起因するものではなく、処理温度が高温すぎて被覆層内部の水酸化ニッケル粒子が損傷を受けたためと考えられる。また、70℃で酸化処理した場合は、コバルト平均価数、粉体導電率、利用率ともに良好な粉末が得られるものの、酸化処理に数時間もの時間を要することが明らかになった。これは、酸化反応の速度が処理温度によって影響を受け、処理温度が低いほど酸化反応の進行が遅くなるためである。
以上より、本発明の製造方法での酸化処理時の加熱温度は90〜130℃が適することが明らかとなった。
【0080】
《実施例5》
第2工程において、補助加熱手段としてマイクロ波照射を行うこと以外はすべて実施例1に記載の第1工程および第2工程と同様にして酸化処理粉末を作製した。以下これを粉末Kと表記する。この粉末Kについて実施例1に記載と同様の方法にてコバルト平均価数、粉体導電率を測定した。さらに、粉末Kを用いて実施例1に記載と同様の方法にてニッケル・水素蓄電池を作製し、充放電評価を行った。以上の結果を粉末Bの値と比較して表7に示す。
【0081】
【表7】
【0082】
表7より、粉末Kが粉末Bに比べてコバルト平均価数、粉体導電率、利用率ともに向上することが分かる。マイクロ波照射による加熱は、水酸化ナトリウム水溶液で濡れている粒子表面の水酸化コバルト被覆層部分から起こるため、被覆層の酸化反応がより効率的に進行したためと考えられる。また、マイクロ波照射を行うことにより、加熱むらをほとんど生じることなく、迅速に所定温度まで昇温することができ、酸化処理時間の短縮が図られるという利点も併せ持つ。
以上より、第2工程において補助加熱手段としてマイクロ波照射を用いるとさらに好ましいことが明らかとなった。
【0083】
《実施例6》
原料粉末の水酸化コバルト被覆量を、水酸化ニッケル固溶体粒子に対して、3、5、7、12、14重量%と変化させること以外はすべて実施例1に記載の第1工程および第2工程と同様にして酸化処理粉末を作製した。これらの酸化処理粉末について実施例1に記載と同様の方法にてコバルト平均価数、粉体導電率を測定した。結果を表8に示す。また、各酸化処理粉末を用いて実施例1に記載と同様の方法にてニッケル・水素蓄電池を作製し、充放電評価を行った。図5に水酸化コバルト被覆量と活物質利用率の関係を示す。
【0084】
【表8】
【0085】
表8および図5より、水酸化コバルトが5重量%以上被覆された原料粉末を用いた場合、コバルト平均価数、粉体導電率、利用率ともに良好な値を示すことが分かる。被覆量が3重量%の粉末では粉体導電率および利用率の顕著な低下が見られるが、この低下は被覆量が少なすぎて十分な導電ネットワークが形成できないためと考えられる。また、被覆量が5〜12重量%の範囲では利用率が徐々に増加するが、12重量%を超えるともはや利用率は増大せず、むしろ、水酸化ニッケル量の減少による正極容量の低下が顕著になる。さらに、被覆層であるコバルト酸化物の一部が剥離して、酸化処理装置内壁へ付着するという問題も生じた。
以上より、本発明の製造方法にて使用する原料粉末の水酸化コバルト被覆量は、水酸化ニッケル固溶体粒子に対して、5〜12重量%が適することが明らかとなった。
【0086】
《実験例1》
原料粉末の平均粒径を、3、5、10、20、24μmと変化させること以外はすべて実施例1に記載の第1工程および第2工程と同様にして酸化処理粉末を作製した。これらの酸化処理粉末について実施例1に記載と同様の方法にてコバルト平均価数、粉体導電率を測定した。結果を表9に示す。また、各酸化処理粉末を用いて実施例1に記載と同様の方法にてニッケル・水素蓄電池を作製し、充放電評価を行った。図6に原料粉末の平均粒径と活物質利用率の関係を示す。なお、平均粒径3μmおよび24μmの原料粉末を用いたニッケル・水素蓄電池は、参考例である。
【0087】
【表9】
【0088】
表9および図6より、5〜20μmの平均粒径を有する原料粉末を用いて酸化処理を行った場合、コバルト平均価数、粉体導電率、利用率ともに良好な値を示すことが分かる。一方、平均粒径が3μmあるいは24μmの原料粉末を用いた場合では、粉体導電率、利用率ともに低下が確認された。一般的に平均粒径が小さくなると比表面積は大きくなる傾向があり、平均粒径が3μmの場合も比表面積が大きいために、所定の水酸化ナトリウム水溶液ではファニキュラ状態の湿潤粒子に到らすことが困難である。そのために酸化処理時に被覆層の酸化が進行し難く、コバルト平均価数および粉体導電率が低下し、利用率も減少したものと考えられる。さらにこの場合、粉末の嵩密度が低下するために充填性も低下するという問題もある。平均粒径が24μmの場合は、粒子が大きすぎて水酸化コバルトが均一に被覆されないため、良好な導電ネットワークを形成できず、粉体導電率が低下し、利用率も低下したものと考えられる。
【0089】
次に、原料粉末のBET比表面積を、3、5、10、15、18m2/gと変化させること以外はすべて実施例1に記載の第1工程および第2工程と同様にして酸化処理粉末を作製した。これらの酸化処理粉末について実施例1に記載と同様の方法にてコバルト平均価数、粉体導電率を測定した。結果を表10に示す。また、各酸化処理粉末を用いて実施例1に記載と同様の方法にてニッケル・水素蓄電池を作製し、充放電評価を行った。図7に原料粉末のBET比表面積と活物質利用率の関係を示す。なお、BET比表面積3m 2 /gおよび18m 2 /gの原料粉末を用いたニッケル・水素蓄電池は、参考例である。
【0090】
【表10】
【0091】
表10および図7より、5〜15m2/gのBET比表面積を有する原料粉末を用いて酸化処理を行った場合、コバルト平均価数、粉体導電率、利用率ともに良好な値を示すことが分かる。一方、BET比表面積が3m2/gあるいは18m2/gの原料粉末を用いた場合は、コバルト平均価数、粉体導電率、利用率ともに低下が見られる。この結果は、原料粉末の比表面積が過大あるいは過小になると粒子の濡れ性が大きく変化するため、前述同様に水酸化コバルト被覆層の酸化が抑制されたためと考えられる。さらにBET比表面積が18m2/gの原料粉末を用いた場合は、被覆層であるコバルト酸化物の一部が剥離して、酸化処理装置内壁へ付着するという現象も見られた。
以上より、本発明の製造方法にて使用する原料粉末は、その平均粒径が5〜20μm、BET比表面積が5〜15m2/gであるものが適することが明らかとなった。
【0092】
《実施例7》
第1工程での酸化イットリウム粉末の混合量を、粉末Aに対して、0.05、0.1、0.5、1.0、3.0、5.0重量%と変化させること以外はすべて実施例1に記載の第1工程および第2工程と同様にして酸化処理粉末を作製した。これらの酸化処理粉末について実施例1に記載と同様の方法にてコバルト平均価数、粉体導電率を測定した。結果を表11に示す。また、各酸化処理粉末を用いて実施例1に記載と同様の方法にてニッケル・水素蓄電池を作製し、充放電評価を行った。図8に酸化イットリウム混合量と50℃充電効率の関係を示す。
【0093】
【表11】
【0094】
図8より、酸化イットリウム粉末を0.1重量%以上混合して酸化処理を行った場合、良好な高温充電効率を示すことが分かる。混合量が0.05重量%の場合は酸化イットリウム粉末を混合しない場合(電池Cの場合)と同等の高温充電効率しか示さず、酸化イットリウムの添加効果が確認できなかった。混合量が0.1〜3.0重量%の範囲では高温充電効率は徐々に向上するが、3.0重量%を超えるとそれ以上の向上は見られなくなる。むしろ、5.0重量%添加した場合には、高率放電特性が顕著に低下するという問題が生じた。表11より、酸化イットリウム粉末を5.0重量%混合して酸化処理を行った粉末にて粉体導電率の低下が確認されることから、コバルト被覆層中において低導電性の酸化イットリウムが増大したために、粉体導電率が低下し、高率放電特性も低下したものと考えられる。
以上より、本発明の製造方法にて使用する酸化イットリウムの混合量は、粉末Aに対して0.1〜3.0重量%が適することが明らかとなった。
【0095】
《実験例2》
第1工程にて混合する酸化イットリウム粉末の平均粒径を、0.1、0.2、1.0、4.0、8.0、16.0μmと変化させること以外はすべて実施例1に記載の第1工程および第2工程と同様にして酸化処理粉末を作製した。これらの酸化処理粉末について実施例1に記載と同様の方法にてコバルト平均価数、粉体導電率を測定した。結果を表12に示す。また、各酸化処理粉末を用いて実施例1に記載と同様の方法にてニッケル・水素蓄電池を作製し、充放電評価を行った。図9に酸化イットリウム粉末の平均粒径と活物質利用率の関係を示す。なお、平均粒径0.1μmおよび16.0μmの酸化イットリウム粉末を用いたニッケル・水素蓄電池は、参考例である。
【0096】
【表12】
【0097】
表12および図9より、0.2〜8.0μmの平均粒径を有する酸化イットリウム粉末を用いて酸化処理を行った場合、コバルト平均価数、粉体導電率、利用率ともに良好な値を示すことが分かる。一方、平均粒径が0.1μmあるいは16.0μmの酸化イットリウム粉末を用いた場合では、粉体導電率、利用率ともに低下が確認された。平均粒径が0.1μmの場合は、酸化イットリウム粉末が非常に嵩高くなり、ゲル状の水酸化イットリウムに変化させるためには多量の水酸化ナトリウム水溶液が必要となる。そのため、酸化処理時に水酸化コバルト被覆層近傍に過剰の水が存在し、O2濃度が低下するために式4の反応が阻害され、式3の反応が進行し難くなる。結果として水酸化コバルト被覆層の酸化が抑制され、コバルト平均価数、粉体導電率ともに低い値となり、利用率も低下するものと考えられる。一方、平均粒径が16.0μmの場合は、粒径が大き過ぎるため、ゲル状の水酸化イットリウムに変化し難いものと考えられる。結果としてイットリウムがコバルト酸化物被覆層中に十分に拡散せず、低導電性の酸化イットリウムとして被覆層表面に付着するため、粉体導電率が低下し、利用率も低下したものと考えられる。
【0098】
次に、第1工程にて混合する酸化イットリウム粉末のBET比表面積を、3、10、30、60、90m2/gと変化させること以外はすべて実施例1に記載の第1工程および第2工程と同様にして酸化処理粉末を作製した。これらの酸化処理粉末について実施例1に記載と同様の方法にてコバルト平均価数、粉体導電率を測定した。結果を表13に示す。また、各酸化処理粉末を用いて実施例1に記載と同様の方法にてニッケル・水素蓄電池を作製し、充放電評価を行った。図10に酸化イットリウム粉末のBET比表面積と活物質利用率の関係を示す。なお、BET比表面積90m 2 /gの酸化イットリウム粉末を用いたニッケル・水素蓄電池は、参考例である。
【0099】
【表13】
【0100】
表13および図10より、3〜60m2/gのBET比表面積を有する酸化イットリウム粉末を用いて酸化処理を行った場合、コバルト平均価数、粉体導電率、利用率ともに良好な値を示すことが分かる。BET比表面積が90m2/gの酸化イットリウム粉末を用いた場合は、コバルト平均価数、粉体導電率、利用率ともに低下が見られる。この結果は、酸化イットリウム粉末の比表面積が過大であるため、ゲル状の水酸化イットリウムに変化させるには多量の水酸化ナトリウム水溶液が必要となり、前述同様に水酸化コバルト被覆層の酸化が抑制されたためと考えられる。
以上より、本発明の製造方法にて使用する酸化イットリウム粉末は、その平均粒径が0.2〜8.0μm、BET比表面積が3〜60m2/gであるものが適することが明らかとなった。
【0101】
《実施例8》
第1工程において、酸化イットリウム粉末の代わりに、同じ平均粒径、BET比表面積を有する酸化スカンジウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウムおよび酸化カルシウムを用いたこと以外はすべて実施例1に記載の第1工程および第2工程と同様にして酸化処理粉末を作製した。これらの酸化処理粉末について実施例1に記載と同様の方法にてコバルト平均価数、粉体導電率を測定した。また、各酸化処理粉末を用いて実施例1に記載と同様の方法にてニッケル・水素蓄電池を作製し、充放電評価を行った。以上の結果を酸化イットリウムを用いた粉末Bの値と比較して表14に示す。
【0102】
【表14】
【0103】
表14より、酸化イットリウム粉末の代わりに、酸化スカンジウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウムまたは酸化カルシウムを用いて酸化処理を行ったいずれの場合も、コバルト平均価数、粉体導電率、利用率ともに良好な値を示すことが分かる。この結果は、酸化イットリウム粉末の代わりに、酸化スカンジウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウムまたは酸化カルシウムを用いて酸化処理を行っても、実施例1記載の粉末Bの場合と同様の反応機構で、被覆層が良好な高次コバルト酸化物に酸化された結果と考えられる。
【0104】
以上より、本発明の製造方法にて使用する酸化物粉末としては、酸化イットリウム粉末に限定されるものではなく、スカンジウム、ランタノイドおよびカルシウムから選ばれる酸化物粉末を使用した場合にも同様の効果が得られることが明らかとなった。
【0105】
なお、本実施例中では、酸化処理時に使用するアルカリ水溶液として水酸化ナトリウム水溶液のみを記述したが、これに限定されるものではなく、水酸化カリウム水溶液、あるいは水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの2成分系水溶液を使用しても同様の効果が得られることを確認した。
また、本実施例中では、酸化処理に使用する原料粉末としてコバルトおよび亜鉛の固溶体粒子のみを記述したが、固溶元素の種類はこれに限定されるものでなく、コバルト、亜鉛、カドミウム、カルシウム、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、チタン、イットリウムおよびランタノイドから選ばれる少なくとも一種の元素を含有する水酸化ニッケル粒子すべてにおいて、同様の効果が得られることを確認した。
【0106】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の製造方法によって、利用率および高温雰囲気下での充電効率に優れ、かつ充填性にも優れたアルカリ蓄電池用正極活物質を効率的に提供することが可能である。また、本発明の製造方法は、既存の原料粉末をそのまま使用できるため活物質製造コストの上昇を抑制でき、原料粉末の長期保管も可能であるため生産性の向上も図られる。その結果、高容量かつ高温使用時においても優れた充放電特性を有するアルカリ蓄電池を低価格にて製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電池B、C、EおよびFの放電容量と電池電圧との関係を示す図である。
【図2】電池B、E、HおよびJの放電容量と電池電圧との関係を示す図である。
【図3】第1工程で用いる水酸化ナトリウム水溶液の濃度と活物質利用率との関係を示す図である。
【図4】第2工程における加熱温度と活物質利用率との関係を示す図である。
【図5】水酸化ニッケルを被覆する水酸化コバルト量と活物質利用率との関係を示す図である。
【図6】原料粉末の平均粒径と活物質利用率との関係を示す図である。
【図7】原料粉末のBET比表面積と活物質利用率との関係を示す図である。
【図8】第1工程で用いる酸化イットリウム粉末の混合量と50℃充電効率との関係を示す図である。
【図9】第1工程で用いる酸化イットリウム粉末の平均粒径と活物質利用率との関係を示す図である。
【図10】第1工程で用いる酸化イットリウム粉末のBET比表面積と活物質利用率との関係を示す図である。
Claims (9)
- 水酸化コバルトにて被覆された水酸化ニッケルを主成分とする固溶体粒子と、イットリウム、スカンジウム、ランタノイドおよびカルシウムから選ばれる少なくとも一種の酸化物粒子と、アルカリ水溶液とを撹拌混合し、粒子表面がアルカリ水溶液で濡れた湿潤粒子にする第1工程と、前記湿潤粒子を酸素存在下で撹拌混合しながら加熱処理を行い、乾燥まで導く第2工程からなり、
前記水酸化コバルトにて被覆された水酸化ニッケルを主成分とする固溶体粒子は、その平均粒径が5〜20μmであり、かつBET比表面積が5〜15m 2 /gであり、
前記第1工程にて混合する前記少なくとも一種の酸化物粒子は、その平均粒径が0.2〜8.0μmであり、かつBET比表面積が3〜60m 2 /gであるアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法。 - 前記第1工程にて混合するアルカリ水溶液が水酸化ナトリウム水溶液および/または水酸化カリウム水溶液であって、その濃度が40重量%よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法。
- 前記第2工程における加熱温度が90〜130℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法。
- 前記第2工程における補助加熱手段としてマイクロ波照射を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法。
- 前記水酸化コバルトにて被覆された水酸化ニッケルを主成分とする固溶体粒子において、その水酸化コバルトの被覆量が水酸化ニッケルを主成分とする固溶体粒子に対して5〜12重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法。
- 前記第1工程にて混合するイットリウム、スカンジウム、ランタノイドおよびカルシウムから選ばれる少なくとも一種の酸化物粒子の混合量が水酸化コバルトにて被覆された水酸化ニッケルを主成分とする固溶体粒子に対して0.1〜3.0重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法。
- 前記水酸化コバルトにて被覆された水酸化ニッケルを主成分とする固溶体粒子が、コバルト、亜鉛、カドミウム、カルシウム、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、チタン、イットリウムおよびランタノイドから選ばれる少なくとも一種の元素を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法により製造されたアルカリ蓄電池用正極活物質。
- 請求項8に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質を主成分とする正極、水素吸蔵合金あるいはカドミウム酸化物を主成分とする負極、セパレータ、アルカリ電解液、およびこれらを収納する電池ケースからなるアルカリ蓄電池。
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