JP4366722B2 - アルカリ蓄電池用水酸化ニッケル活物質 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、負極がカドミウム、水素吸蔵合金、亜鉛あるいは鉄等であるアルカリ蓄電池に用いる水酸化ニッケル活物質およびそれを用いたペースト式水酸化ニッケル正極板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の携帯電話、ビデオカメラあるいはヘッドホンステレオ等の種々の小型携帯機器の普及にともない、それらの電源としてアルカリ蓄電池は重要な役割を果たしている。アルカリ蓄電池の正極板には、従来、ニッケル粉末を穿孔鋼板に焼結してなる焼結基板に水酸化ニッケル活物質を含浸して製作される焼結式正極板が用いられてきた。しかしながら、焼結基板の多孔度が80%程度であることから、焼結式正極板の高容量化には限界があった。
【0003】
そこで、発泡ニッケル等の高多孔度の3次元多孔体の基板に、粉末状の水酸化ニッケル活物質と、種々の方法で添加したグラファイトや金属ニッケル、および水酸化コバルトあるいは金属コバルト等のコバルト化合物の導電剤等からなる活物質ペーストを充填して製作されるペースト式正極板の開発が進められており、高容量化が達成されている。
【0004】
ここで、コバルト化合物は、水酸化ニッケルとカルボキシメチルセルロース等の増粘剤を主体とするペースト中に混合する方法や、特開昭62−117267号公報に示すように水酸化ニッケル活物質を被覆する方法等により正極板に添加され、導電性の高いオキシ水酸化コバルトに電気化学的あるいは化学的に酸化され、導電剤として作用するものと考えられている。電気化学的に酸化する方法として、特開昭64−21864号公報に示すような化成充電時に小さい電流で充電する方法や、特開平8−315851号公報に示すように2段階で電流を変化させて充電する方法が提案されている。これらの方法を用いると、コバルト化合物の酸化は効率的におこなわれるが、化成時間が長くなる問題がある。また、活物質が導電性の低い水酸化ニッケルであるため正極板の充電効率が低いので、化成電流を大きくすると正極板から酸素ガスが発生して電池内圧が上昇する。とくに密閉型電池においては、電池内圧が上昇して安全弁の作動圧に達すると、安全弁が作動して電池の密閉系が崩れるという問題がある。
【0005】
また、特開昭60−254564号公報および特開平4−94058号公報には、水酸化ニッケルとコバルト化合物の他にオキシ水酸化ニッケルを含有させた正極板が提案されている。これらの正極板では、コバルト化合物はオキシ水酸化ニッケルによって、化学的にオキシ水酸化コバルトに酸化されるものと考えられている。この場合、コバルト化合物の大部分は導電性の高いオキシ水酸化コバルトに酸化されるものの、一部は導電性の低い四酸化三コバルト等に酸化されるため、導電性向上の効果が充分に得られなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ペースト式水酸化ニッケル正極板では、化成初期には正極板の導電性が低いため充電効率が低く、化成充電時に正極板から酸素ガスが発生して電池内圧が上昇する。とくに密閉型電池においては、電池内圧が安全弁の作動圧に達すると、安全弁が作動して密閉系が崩れるという問題がある。そのため、化成時の充電率を大きくすることができないので、化成時間が長くなり、製造コストが高くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、化成時の充電率を大きくして化成時間を短くすることの可能なアルカリ蓄電池用水酸化ニッケル活物質およびそれを用いたペースト式水酸化ニッケル正極板を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、2価を越えるコバルトを主体とする化合物とオキシ水酸化ニッケルと水酸化ニッケルとを含むアルカリ蓄電池用水酸化ニッケル活物質であって、前記水酸化ニッケルは前記2価を越えるコバルトを主体とする化合物で被覆されること、前記オキシ水酸化ニッケルは前記水酸化ニッケルの内部に含有されること、および、前記オキシ水酸化ニッケルの量が前記水酸化ニッケルの5wt%以上であることを特徴とするアルカリ蓄電池用水酸化ニッケル活物質である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の水酸化ニッケルを主体とする活物質は、その内部に導電性の高いオキシ水酸化ニッケルを含有するので、活物質自体の導電性が高いものである。さらに、本発明の活物質は、その表面が2価を越える導電性の高いコバルト化合物で被覆されているので、2価以下のコバルト化合物で被覆したものよりも導電性が高いものである。したがって、この活物質を用いた正極板の導電性が高くなるため、充電効率が向上し、化成充電時の充電率を大きくしても酸素ガス発生を抑制でき、電池の内圧上昇が小さくなる。そのため、化成時間を短縮することが可能となり、製造コストを小さくできるという、顕著な効果を有するものである。
【0010】
また、本発明の活物質中のオキシ水酸化ニッケルは、活物質内部にのみ存在する、すなわちオキシ水酸化ニッケルが活物質表面に存在しないものであり、水酸化ニッケルを被覆したコバルト化合物は2価を越えるものであるので、化成初期から良好な導電性を示すものである。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の詳細を実施例を用いて説明する。
【0012】
(実験1)
(実施例1)1.5Mの硫酸ニッケル水溶液のpHが一定に保たれるように攪拌しながら、アルカリ性水溶液を徐々に供給して水酸化ニッケルを沈殿させ、濾過・洗浄・乾燥して平均粒径が約8μmの水酸化ニッケルを得た。つぎに、この粉末100gを2M水酸化ナトリウム水溶液に分散させて撹拌し、ペルオキソ二硫酸カリウム30wt%水溶液500mlを添加した後、精製水にて充分に洗浄後乾燥して、平均粒径が約8μmのオキシ水酸化ニッケルに変換した。
【0013】
ついで、このオキシ水酸化ニッケルを1.5Mの硫酸ニッケル水溶液中に投入し、pHが一定に保たれるように攪拌しながら、アルカリ性水溶液を徐々に供給して、前記オキシ水酸化ニッケルに水酸化ニッケルの層を成長させ、濾過・洗浄・乾燥して、内部にのみオキシ水酸化ニッケルが存在する平均粒径が約15μmの水酸化ニッケルを得た。この物質を化学分析した結果、オキシ水酸化ニッケルの量は水酸化ニッケルの約15wt%であった。
【0014】
つぎに、この粉末に精製水を加えて分散させ、pHが10に保たれるように水酸化ナトリウム溶液を加え、攪拌しながら10wt%硫酸コバルト水溶液を加え、濾過・洗浄・乾燥して、表面層が水酸化コバルトで被覆された、内部にオキシ水酸化ニッケルを含有する水酸化ニッケル活物質を得た。被覆した水酸化コバルトは2価であり、その水酸化ニッケル活物質に対する割合は10wt%とした。さらに、この粉末を、100℃で空気中で熱処理して、被覆した2価の水酸化コバルトを酸化させて2価を越える状態とした。
【0015】
このようにして得た前記の2価を越える水酸化コバルトで被覆された内部にのみオキシ水酸化ニッケルが存在する水酸化ニッケル活物質を、0.4wt%カルボキシメチルセルロース水溶液に分散させてペーストを調製した。多孔度95%の発泡ニッケル(住友電工製、商品名セルメット)にペーストを充填・乾燥・プレスすることにより、本発明によるペースト式水酸化ニッケル正極板Aを製作した。
【0016】
この正極板A3枚と、正極より充分大きな容量をもち化成処理によって部分充電済みの公知のペースト式カドミウム負極板4枚と、親水性を付与したポリプロピレン製セパレータと、電解液として7M水酸化カリウムを主体とする水溶液を用いて、公称容量600mAhの角型ニッケル−カドミウム電池A(以下、本発明電池A)を製作した。この電池に使用した安全弁の作動圧は、4kg/cm2である。
【0017】
(比較例1)1.5M硫酸ニッケル水溶液のpHが一定に保たれるように攪拌しながら、アルカリ性水溶液を徐々に供給して水酸化ニッケルを沈殿させ、濾過・洗浄・乾燥して平均粒径が約15μmの水酸化ニッケルを得た。
【0018】
つぎに、この粉末に精製水を加えて分散させ、pHが10に保たれるように水酸化ナトリウム溶液を加え、攪拌しながら10wt%硫酸コバルト水溶液を加え、濾過・洗浄・乾燥して、水酸化コバルトで被覆された水酸化ニッケル活物質を得た。被覆した水酸化コバルトは2価であり、その水酸化ニッケル活物質に対する割合は10wt%とした。
【0019】
この活物質を用いた他は実施例1と同様の方法にて正極板Bを作製し、さらに比較電池Bを製作した。
【0020】
(比較例2)実施例1に示した、2価の水酸化コバルトで被覆された内部にオキシ水酸化ニッケルを含有する水酸化ニッケル活物質を用いた他は実施例1と同様の方法にて正極板Cを作製し、さらに比較電池Cを製作した。
【0021】
以上の電池を、25℃において1/3CmA(200mA)で3時間36分間初充電したときの電池内圧を、圧力センサーを用いて測定した。電池A、BおよびCの電池内圧の推移を、図1に示す。本発明電池Aの内圧上昇は小さいのに対し、比較電池BおよびCは内圧上昇が大きく安全弁が作動した。本発明電池Aでは、内圧上昇が小さいため、初充電レートを大きくして、化成時間の短縮が可能であることがわかる。
【0022】
つぎに、電池の安全弁が作動しない条件として、0.1CmA(60mA)で12時間の条件で初充電をおこなった。その後、0.2CmA(120mA)で1Vまで放電し、さらに、1CmA(600mA)で1.2時間充電し、1CmA(600mA)で1Vまで放電するという充放電を5サイクルおこなった。5サイクル目の放電特性の比較を、図2に示す。図2より、本発明電池Aの容量は、比較電池BおよびCを上回ることがわかる。
【0023】
(実験2)水酸化ニッケルの内部に存在するオキシ水酸化ニッケルの含有量を限定するために、実施例1に準じて、平均粒径の異なる種々のオキシ水酸化ニッケルを製作し、かつ、酸化剤として作用させるペルオキソ二硫酸カリウム水溶液の添加量を調整して、内部に存在するオキシ水酸化ニッケルの含有量の異なる本発明の水酸化ニッケル活物質を製作した。これらの活物質を用いて、実施例1に準じて正極板および電池を製作し、前記と同様の試験をおこなった。試験の結果を、表1に示す。
【0024】
【表1】
このように、オキシ水酸化ニッケルの含有量が3wt%以下の場合には安全弁が作動したが、5wt%以上の場合には安全弁の作動には至らなかった。よって、オキシ水酸化ニッケルの含有量を5wt%以上とすると、電池内圧の上昇が抑制される効果が大きいことがわかった。
【0025】
なお、実施例に示した本発明による正極板では、水酸化ニッケルをオキシ水酸化コバルトに変換するための酸化剤としてペルオキソ二硫酸カリウムを用いたが、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム等を用いても同様の効果が得られた。被覆した水酸化コバルトの酸化方法は本実施例に記載したものによらず、過マンガン酸カリウム等の酸化剤を用いたり、陽極酸化等の公知の方法を用いることが可能である。また、本発明は、水酸化ニッケルおよびオキシ水酸化ニッケルにコバルト、カドミウム、亜鉛等を共沈させて正極板の種々の性能を向上させる手段を妨げるものではない。
【0026】
また、言うまでもなく、本発明によるペースト式正極板の効果はニッケル・カドミウム電池に限定されるものではなく、負極に水素吸蔵合金、亜鉛あるいは鉄等を用いたアルカリ蓄電池においても有効である。
【0027】
【発明の効果】
本発明によるアルカリ蓄電池用水酸化ニッケル活物質およびそれを用いたペースト式水酸化ニッケル正極板を用いると、電池の化成時の充電率を大きくすることができるので、化成時間を短縮でき、製造コストを下げることができるため、その工業的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】各電池の化成充電時の電池内圧の推移の比較を示した図である。
【図2】各電池の放電特性の比較を示した図である。
Claims (3)
- 2価を越えるコバルトを主体とする化合物とオキシ水酸化ニッケルと水酸化ニッケルとを含むアルカリ蓄電池用水酸化ニッケル活物質であって、前記水酸化ニッケルは前記2価を越えるコバルトを主体とする化合物で被覆されること、前記オキシ水酸化ニッケルは前記水酸化ニッケルの内部に含有されること、および、前記オキシ水酸化ニッケルの量が前記水酸化ニッケルの5wt%以上であることを特徴とするアルカリ蓄電池用水酸化ニッケル活物質。
- 2価のコバルトを主体とする化合物とオキシ水酸化ニッケルとを含む水酸化ニッケルを空気中で熱処理する工程を含むアルカリ蓄電池用水酸化ニッケル活物質の製造方法であって、前記水酸化ニッケルは前記2価のコバルトを主体とする化合物で被覆されること、前記オキシ水酸化ニッケルは前記水酸化ニッケルの内部に含有されること、および、前記オキシ水酸化ニッケルの量は前記水酸化ニッケルの5wt%以上であることを特徴とするアルカリ蓄電池用水酸化ニッケル活物質の製造方法。
- 請求項1に記載のアルカリ蓄電池用水酸化ニッケル活物質を用いた正極板を備えたことを特徴とするアルカリ蓄電池。
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