JP3731455B2 - 水素吸蔵合金電極 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はニッケル水素蓄電池用水素吸蔵合金電極に関するものである。詳しくは初期活性化が速やかで、高率放電特性、酸素ガス吸収能および耐食性に優れた水素吸蔵合金電極であって、生産性、高率放電特性、過充電時の内圧上昇抑制機能およびサイクル性能に優れたニッケル水素蓄電池を提供せんとするものである。
【0002】
【従来の技術】
水素吸蔵合金を負極材料として用いるニッケル水素蓄電池は低公害性で高エネルギー密度であり、正極及び負極の電極反応が溶解/析出反応を伴わないため長寿命が期待されることから、ニッケルカドミウム電池に代わる電源としてポータブル機器などに広く用いられている。
【0003】
一般的に、水素吸蔵合金電極は充放電初期の活性化に手間を要する。即ち、製造直後に於いては容量が小さく、所定の放電容量を発揮するまでには数サイクルの充放電の繰り返しを必要とする。この原因は主として水素吸蔵合金を空気中に放置しておくだけで酸化されるため、合金粉末表面が非導電性の不活性被膜に覆われるためである。該被膜は合金粉末同士の接触および粉末と電解液との接触を妨げる。このような電極においては電子伝導と電極反応が共に阻害されるので、製造直後に於いて電極が有するはずの本来の性能が発揮されない。従来、電極本来の容量を発揮する迄に少なくとも数サイクルの充放電を必要とし、該充放電を活性化工程と称する。
【0004】
従来のニッケル水素蓄電池においては、活性化工程において負極は本来の容量を発揮しない。従って負極が示す容量は正極に比べ小さい。この場合、充電過程で負極が過充電になり、負極で水素ガスが発生する。密閉型電池においてガスが発生すると内圧上昇が起こる。該内圧上昇は電池の早期寿命を招く原因となる。
【0005】
前記従来の水素吸蔵合金電極の欠点を改良するため、例えば特開平7−29568号公報には水素吸蔵合金粉末を高温のアルカリ溶液で処理する方法が開示されている。本公報によれば、水素吸蔵合金粉末を、例えば水酸化リチウムを含む煮沸状態のアルカリ水溶液中に浸漬処理することにより、表面の阻害物質を溶出除去するものである。本処理によって水素吸蔵合金粉末表面の電子伝導性および活性が改良され活性化が速やかにできると共に、電池に組み込んだ時に正極と負極の容量のアンバランスも解消される。しかし、アルカリ水溶液中への浸漬処理法では、合金粉末表面に新たに金属水酸化物の層が生成するため電極反応が阻害され、高率放電が低下する欠点があった。また、アルカリ水溶液浸漬処理は後工程として水洗を必要とする。従って工程が煩雑であり且つ大形の設備を必要とした。
【0006】
密閉形ニッケル水素蓄電池においては、充電末期において正極で酸素ガスが発生し、該酸素ガスを負極で吸収する方式が採用されている。近年急速充電の要求が高まっているが、急速充電を行うと、通常の充電に比べて酸素ガスの発生が助長される。発生した酸素ガスは速やかに吸収されなければならなず、負極の酸素ガス吸収能が重要な特性となる。前記水素吸蔵合金粉末表面に生成した被膜は負極の酸素ガス吸収能を低下させる。前記公報に開示されているアルカリ水溶液を用いた処理は、負極の酸素ガス吸収能を高めるのにも有効であるが、水素吸蔵合金単独での酸素ガス吸収能には限界があった。
【0007】
そこで、例えば特開平2−256161公報には水素吸蔵合金の表面に貴金属や金属酸化物もしくは水酸化物を配した電極が提案されている。このような電極は酸素ガスの吸収能に優れるとされ、金属酸化物や水酸化物としてセリウム(Ce)を含む希土類元素の酸化物もしくは水酸化物が挙げられている。酸素ガス吸収能の向上は、これら添加物の酸素還元反応に対する触媒作用によってもたらされるとしている。しかし、前記金属酸化物や水酸化物を含有する水素吸蔵合金電極は電導性が低いため、高率放電特性が劣る。また、後述の如く金属酸化物や水酸化物の酸素還元反応に対する触媒作用は必ずしも十分ではなかった。従って、金属酸化物や水酸化物を含有する従来の水素吸蔵合金に対して、高率放電特性および酸素ガス吸収能において更なる向上が必要であった。
【0008】
水素吸蔵合金粉末は導電性が低く、また電極の活物質として使用した場合、作用面積が小さい欠点がある。このため水素吸蔵合金電極を負極とするニッケル水素蓄電池は高率放電特性が劣る欠点があった。電極の導電性を向上させる為の手段として、特開昭53−103541号公報には水素吸蔵合金粉末へのカーボンブラック添加が提案されているが十分な効果が得られない。特公昭58−46827号公報には合金粉末にNi粉末を添加して焼結する方法、また特開昭61−64069号公報には合金表面をNiで被覆する方法が提案されているが、本発明電極のように水素吸蔵合金粉末以外に金属の酸化物又は水酸化物粉末を含む電極に適用するには不適であった。前記の如く、金属の酸化物や水酸化物を含有する水素吸蔵合金電極の電導性は更に低く、該電導性の低さに応じて高率放電特性が低下する。該欠点は水素吸蔵合金粉末そのものの改良のみでは困難であり、別の解決手段が必要とされながら、従来有効な提案が成されていなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記従来の水素吸蔵合金電極およびそれを負極とするニッケル水素蓄電池の問題点に鑑みて成されたものであり、初期活性化が速やかで、高率放電特性、酸素ガス吸収能および耐食性に優れた水素吸蔵合金電極を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記問題を解決するために、水素吸蔵合金電極が水素吸蔵合金粉末を主成分とし、ニッケル(Ni)粉末とBET法で求めた比表面積が50m2/g以上であるセリウム(Ce)の酸化物または水酸化物の少なくとも一種から成る粉末を含有することを特徴とする。ここでいうCeの酸化物にはCeとCe以外の金属元素を含む複合酸化物も該当する。
【0011】
本発明の水素吸蔵合金電極に含有される、Ni粉末は導電剤として作用し、水素吸蔵合金粉末の導電性の不足を補う。また同粉末は水素の酸化還元の触媒作用を有する。同粉末の表面は水素が電気化学的に酸化還元される場となり、電極の作用面積の増大効果をもたらす。その結果、電極の活物質利用率および高率放電特性が向上する。前記Ni粉末の作用を高めるには、同粉末の大きさが小さく比表面積が大きい方が良い。後述するように、Ni粉末の平均粒径は2μm以下が望ましい。またNi粉末の比表面積は1m2/g以上が望ましい。
【0012】
水素吸蔵合金電極中のNi粉末の含有比率が低いと、前記Ni粉末の作用が発揮されなくなる。またNi粉末自信は水素の吸蔵、放出機能を有していないので、電極中のNi粉末の含有比率が高いと合金電極の単位容積および単位重量当たりの容量が低下する。Ni粉末が十分にその作用を発揮し電極の容量低下を避けるには、電極中のNi粉末の含有比率が適当な値に設定することが望ましい。後述の如く、該含有比率は0.5〜5重量%、更には1〜5重量%が望ましい。
【0013】
Ceの酸化物および水酸化物は、酸素の還元反応の触媒作用を有する。後述の如く、本発明に係る水素吸蔵合金電極を構成する水素吸蔵合金にもCeが含まれる場合がある。該Ceは一旦アルカリ電解液中に溶出した後、合金表面にCe(OH)3 として析出すると考えられるが、酸素還元反応の触媒として顕著な作用を示さない。このことは該触媒作用が、Ceの酸化物または水酸化物が有する比表面積の大きさに大きく依存している為である。本発明に適用されるCeの酸化物または水酸化物の比表面積は50m2/g以上である。さらには、粒子表面に細孔を有し、その平均孔径が50nm以下である場合に顕著な作用を示す。前記の水素吸蔵合金中に含まれ、一旦アルカリ電解液中に溶解した後合金表面に析出したCe(OH)3 は比表面積が小さいために触媒作用を示さないと推定される。
【0014】
前記の比表面積、平均孔径を満たす為には、元の材料が上記の比表面積、平均孔径を有しアルカリ電解液に対して不溶または難溶性の粉末を添加するのが良い。化合物にはハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩等種々あるが、アルカリ水溶液に不溶または難溶性の物として、Ceの酸化物、水酸化物、蓚酸塩等がある。中でもCeの酸化物、水酸化物は顕著な触媒作用を示す。具体例としてはCe、CeO2、Ce23、Ce(OH)3 、Ce(OH)4 、やCeを含む複合酸化物Cexyz(M:Ce以外の金属元素で、例えばZr、Al、Pr)等がある。これらが高い触媒作用を示すのは、同粉末の比表面積、平均孔径が上記の条件を満たしているためと考えられる。本発明に係る水素吸蔵合金電極は、酸素の還元反応に対して高い触媒作用を示す物質を含有し、従来の電極に比べてはるかに高い酸素吸収能を示す。
【0015】
Ceの酸化物、および水酸化物は何れも導電性が低い。従ってこれらCeの酸化物または水酸化物を含む水素吸蔵合金電極は高率放電特性が劣る欠点がある。該電極の導電性を維持するためには導電剤の存在が不可欠である。Ceの酸化物および水酸化物のいずれかを一種含む水素吸蔵電極においては、Ni粉末を共に含有する場合に高い高率放電特性が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係る水素吸蔵合金電極は、主成分たる水素吸蔵合金粉末とNi粉末およびCeの化合物、特に酸化物または水酸化物の中から選ばれた少なくとも一種を含む粉末との混合物である。主成分たる水素吸蔵合金粉末の組成は特に限定されるものではない。一例を示すと、MmNi3.6Co0.75 Al0.29 Mn0.36 (Mm:ミッシュメタルでLa、Ce、Pr、Ndの中から選択された少なくとも一種以上を含む複合物を示す)である。該水素吸蔵合金粉末の平均粒径は30〜50μmである。
【0017】
前記Ni粉末は電極の導電剤および水素の酸化還元触媒として機能する。導電剤として機能するためには、水素吸蔵合金粉末の繋ぎ役でなければならない。そのためにはNi粉末の粒径は十分に小さいことが要求される。後述の如く、Ni粉末の粒径は2μm以下が良い。さらに好ましくは0.1〜1μmである。また水素の酸化還元触媒としての機能を発揮するためには比表面積が大きいことが望ましい。後述の如く、その比表面積は1m2/g以上が良い。水素吸蔵合金電極中のNi粉末の含有量は0.5〜5重量%が好ましい。0.5重量%以下であると十分な効果が得られず、5重量%を超えると電極の単位容積および単位重量あたりの容量が低下する。
【0018】
また、本発明に係る水素吸蔵合金電極に含まれるCeまたはCe化合物は、電池内で発生した酸素ガスが水素吸蔵合金内に貯えられた水素と反応して水分子が生成する際の触媒として機能する。従ってCeまたはCe化合物は水素吸蔵合金の表面に均一に分散していなければならない。そのためにはCeの酸化物または水酸化物粉末の粒子サイズは十分に小さいことが望ましい。後述の如く、該粉末の平均粒径は5μmが望ましく、さらには0.01〜2μmであることが望ましい。水素吸蔵合金電極中に含まれるCeの酸化物または水酸化物の添加量が0.1重量%未満であると十分な効果が得られない。また、5重量%を超えると電極の単位容積および単位重量あたりの容量低下を招くので好ましくない。
【0019】
極板表面に存在するCe酸化物または水酸化物は、高い酸素ガス還元触媒能を示す。酸化Ceを例に取ると,その反応式は下記の通りである。
Ce23+1/2O2 2CeO2
2CeO2+2M−H→Ce23+H2O (M:水素吸蔵合金)
通常の希土類元素の価数は3価であるが、Ceは放電時4価となることができる。このために、前記の式で示したように、自らが3価/4価の可逆的酸化還元を繰り返すことによって酸素が還元される。このように本発明の水素吸蔵合金電極は酸素ガス吸収能に優れているので、該電極を負極とする密閉形アルカリ蓄電池は内圧上昇抑止効果を有する。また、同時に合金の酸化も抑制できる。触媒性能は比表面積に依存するため、Ceの酸化物または水酸化物のBET法で求めた比表面積は50m2/g以上が良い。さらに該Ceの酸化物または水酸化物粉末が有する表面細孔の平均孔径は50nm以下、さらには5nm以下の方が高い触媒作用が得られる。孔径は例えば窒素吸着等温線の測定データから求められる。
【0020】
Ceを含む水素吸蔵合金電極は他の希土類元素を含む水素吸蔵合金電極よりも高い耐食性を示す。これはCeの防触効果による。該防触効果は前記のようにCe自らが3価/4価の酸化還元を繰り返し水素吸蔵合金の酸化を防ぐ作用を有すること、および合金表面に極薄いCeの不動態層が形成されるためにもたらされる効果である。従って本発明に係る水素吸蔵合金電極およびそれを用いたニッケル水素蓄電池においては長寿命が期待できる。合金の腐食は電解液消費と放電リザーブ量の増大(充電リザーブ量の減少を防ぐ)を引き起こすため、内圧上昇抑止効果、サイクル特性低下の原因になる。合金の耐食性を増すことは、内圧上昇抑止効果およびサイクル特性の向上につながる。
【0021】
前記の如くCeを含むと水素吸蔵合金の耐食性が増す。このため合金表面において新たな活性点の出現が遅れ、初期の放電特性が低下する。しかしながら、導電剤のNi粉末を添加することによって導電性が保たれ、かつNi粉末が電極反応場ともなるため、初期活性化、低温高率放電特性を向上させることができる。前記の如く導電性を十分に保つためには、Ni粉末の平均粒径は2μm以下が好ましい。又Ni粉末を合金表面に有する水素吸蔵合金電極においては、Ni粉末の触媒作用により過充電時に発生した水素ガスの吸収反応が促進されるため、内圧上昇が抑制される。高い作用を得るには、Ni粉末の比表面積は大きい方が好ましく、具体的には1m2/g以上であることが望ましい。
【0022】
【実施例】
(水素吸蔵合金電極作製)
以下に実施例に基づき本発明を説明する。尚前記Ceの酸化物や水酸化物は何れも本発明にとって有効であるが、以下の実施例は代表的な化合物であるCeO2を例に採って説明する。平均粒径が約50μmで式MmNi3.6Co0.75 Al0.29 Mn0.36 (MmはLa、Ce、Pr、Ndから成る)で示される水素吸蔵合金100重量部とBET法で求めた比表面積が約80m2/g、平均孔径20nmのCeO21重量部、比表面積2m2/gで平均粒径の異なる4種類のNi粉末3重量%から成る混合物に増粘剤(メチルセルロース)を溶解した水溶液を加えて、更に、結着剤(スチレンブタジエンゴム)2重量部を加え、ペースト状にしたものを穿孔鋼鈑の両面に塗布して乾燥した後、所定の厚さにプレスした。前記Ni粉末として平均粒径が0.75、2、5、10μmの4種類を適用し、得られた電極をそれぞれA1、A2、A3、A4とする。更に平均粒径が0.75μmのNi粉末の含有量を0、0.1、0.5、1、5重量%の5水準の電極を作製した。得られた電極をB1、B2、B3、B4、B5とする。
【0023】
平均粒径0.5μm、平均孔径20nmのCeO2の含有比率を1重量%に固定し、比表面積が1、30、50、80m2/gの4水準のCeO2を適用して電極を作製した。該電極をそれぞれC1、C2、C3、C4とする。更に平均粒径が0.2、1、5、10μmの4水準のCeO2を適用した電極を作製した。該電極をD1、D2、D3、D4とする。更にCeO2の添加量を0、0.01、0.1、5、10重量%と変更した以外は電極Aと同様に作製し、得られた電極をE1、E2、E3、E4、E5とする。
【0024】
(単極試験)
これら電極の特性を評価するため該電極を負極とし、該負極に対して過剰の容量(負極容量の4倍)を有する正極と組み合わせて開放形セルを試作した。正極にはCo5重量%、Zn5重量%を含むシンター式ニッケル極を用いた。電解液は、6.8NのKOHと0.8NのLiOHを含む水溶液とした。試作した電池を温度20℃において充放電サイクル試験に供した。充電は、レートが0.1C(電流密度5mA/cm2)で負極の容量に対して150%実施、放電は、レートが0.2C(電流密度10mA/cm2)、終止は負極の電位が−0.6V(vs. Hg/HgO)となる条件で実施した。
【0025】
各電極について前記活性化が速やかに進むか否か、また所定の容量が得られるか否かを1サイクル目および10サイクル目の容量を指標として評価した。前記試験条件で充放電を繰り返したときの1サイクル目と10サイクル目の水素吸蔵合金1g当たりの放電容量を表1と表2に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0003731455
【0027】
【表2】
Figure 0003731455
【0028】
表1に示した結果によれば、Ni粉末を含まない電極B1に比べるとNi粉末を含有する何れの電極も1サイクル目、10サイクル目共に高い容量を示している。電極A1〜A4を比較すると水素吸蔵合金電極に含まれるNi粉末の平均粒径が大きくなると1サイクル目および10サイクル目の放電容量が小さくなる傾向がある。平均粒径が2μmであれば10サイクル目で所定の容量である290mAh/gに近い値を示す。これと比較してNi粉末の平均粒径が5、10μmの場合には1サイクル目、10サイクル目共に容量が低い。
【0029】
A1、B2〜B4を比較すると、Ni粉末の含有比率が0.1重量%では1サイクル目、10サイクル目共に容量が低い。これに対してNi粉末の含有比率0.5重量%では容量向上の効果が認められる。さらに含有比率が1重量%以上に於いて顕著な効果が認められ、10サイクル目で所定の容量に近い値を示している。これらの結果は、平均粒径が2μmのNi粉末を0.5重量%以上、さらに望ましくは1重量%含有する電極に於いては、その導電性が向上したことにより、化成が速やかになったことおよび水素吸蔵合金の利用率が向上したことを示すものである。
【0030】
表2に示した結果に於いて電極C1〜C4の結果を比較すると、電極に含有されるCeO2の比表面積が変わっても1サイクル目、10サイクル目共に容量に殆ど差が無く、10サイクル目で所定の容量をを示している。また電極C4、D1〜D4を比較するとCeO2の平均粒径が変わっても容量に殆ど差が無いことを示している。
【0031】
また、電極C4、E1〜E5を比較するとCeO2の含有比率が1重量%以下では10サイクル目において所定の容量を示す。また、CeO2の含有比率が5重量%では含有比率1重量%の場合に比べ容量が若干低い。これに対して、含有比率10重量%では1サイクル目、10サイクル目ともに容量が顕著に低下する。これはCeO2の含有比率が多くなると、電極の導電性が低下し活性化が妨げられることに起因するものと考えられる。
【0032】
(密閉形電池作製)
次いで、前記電極A1〜E5を負極に適用した密閉形ニッケル水素蓄電池を試作し、その特性を調査した。図1は試作電池の断面図である。Co3重量%、Zn3重量%を固溶し、表面が水酸化Coで被服された水酸化ニッケル粉末をニッケル製発泡基板に充填したペースト式ニッケル極を正極3とし、該正極の容量に対し1.6倍の容量を有する前記負極4およびセパレータ5とを組み合わせた捲回式極群を作製した。該極群の正極3の上端部に正極集電端子9、負極4の下端部に負極集電端子(隠れて見えない)を抵抗溶接した後、この極群を円筒状金属ケース2に収納し前記と同一組成を有するアルカリ水溶液からなる電解液を2ml注液した後、封口板7を挿入した。次いで、ガスケット6を介して金属ケース2の開口部2aを金属製蓋体兼正極端子で封口した。試作電池は何れも容量が1300mA、サイズはAAである。
【0033】
(密閉形電池試験)
前記試作電池を低温下での高率放電試験に供した。温度20℃においてレート0.5Cで負極容量の115%充電した電池を温度−20℃においてレート1C、終止電圧1.0Vでの放電試験を実施した。得られた放電容量を温度20℃、レート0.2Cの放電で得られる放電容量に対する比率で評価した。
【0034】
また、15サイクル経過後これらの電池に電池内部圧力測定用センサーを取り付けて、過充電に供した時の電池内圧測定を行った。充電は、温度20℃においてレート1Cで200%実施した。
【0035】
更に、15サイクルの試験終了後、水素吸蔵合金の腐蝕状態を調べるため、負極のXRD測定を行った。セルを解体して得た負極を水洗し測定に供した。測定にはCo管球を使用し、測定電圧40KV、測定電流30mAとした。XRD測定におけるMm(OH)3の(201)面の回折強度から合金腐食生成物量を求めた。
【0036】
前記試作電池F〜Jを充放電サイクル寿命試験に供した。試験は温度20℃にて実施した。充電はレート1Cで115%行った。放電はレート1Cで終止電圧1Vとした。容量が初期容量の80%に低下したところで、サイクル寿命と判定した。密閉型ニッケル水素蓄電池の試験結果を表3と表4に示す。
【0037】
【表3】
Figure 0003731455
【0038】
【表4】
Figure 0003731455
【0039】
表3および表4に示した結果によれば、電極B1、B2のようにNi紛末の含有比率が0.1重量%以下では1C放電での放電容量が極端に低い。電極B3に示す如くNi紛末の含有比率は0.5重量%以上が望ましく、更には電極B4の如く1重量%以上が望ましい。また、電極E5の如くCeO2含有量が10重量%と大きいと、1C放電での放電容量は低い。これらの結果はCeO2が負極の電子電導を阻害するのに対して、Ni粉末が共存すると負極の導電性が向上するためである。さらにNi粉末は水素吸蔵合金負極の電極反応の触媒作用を有すること、およびNi粉末の表面でも電極反応が生じるため、電極の作用面積を拡大する効果があるためと考えられる。
【0040】
表3に示した如く、電極B1、B2のようにNi粉末の含有比率が0.1重量%以下では過充電時の電池内圧上昇が大である。電極B3のように含有比率が0.5重量%以上で内圧上昇抑制効果が認められるが、顕著な効果が認められるのは電極B4のようにNi粉末の含有比率が1重量%以上の場合である。また電極A3、A4のようにNi粉末の平均粒径が5μm以上でも電池内圧上昇が若干大きくなる傾向がある。本電池内圧の上昇はNi粉末の含有比率が低かったり、Ni粉末の平均粒径が大きい場合、過充電時に負極で発生する水素ガスの量が多いことと、水素ガス吸収能が低い為と考えられる。
【0041】
更に表4の極E1、E2のようにCeO2の含有比率が0.01重量%以下の場合、過充電時の電池内圧上昇が大きい。また、CeO2の比表面積が50m2/g以上である電極C3、C4に比べ、電極C1、C2のようにCeO2の比表面積が30m2/g以下の場合には過充電時の電池内圧が高くなる傾向がある。前記の如くCeO2は正極で発生した酸素ガスの吸収反応の触媒として作用する。CeO2の含有比率や比表面積が小さかったりすると、その触媒作用が不十分である。その為酸素ガスの吸収が追いつかず内圧が上昇する。
【0042】
表3に示した如く、電極B1、B2のようにNi粉末の含有比率が0.1重量%以下の場合、水素吸蔵合金電極中の腐蝕生成物比率が大である。これは同電極の導電性が低く合金の利用が悪い為に腐蝕が進行したものである。さらに表4に示した如く、電極E1、E2のようにCeO2の含有比率小さいもの、電極C1のようにCeO2の比表面積が小さいものおよび電極D4のようにCeO2の平均粒径が大きいものは腐蝕生成物比率が大である。CeO2の含有比率小さいものおよびCeO2の比表面積が小さいものはCeO2の酸素ガス吸収反応の触媒作用が不足した結果であり、平均粒径が大きいCeO2は電極内での分散が悪く触媒としての働きが悪い為と考えられる。
【0043】
表3および表4に示した如く水素吸蔵合金の腐蝕生成物の大きい電極はサイクル寿命が短い傾向にある。合金腐蝕は電解液消費と放電リザーブ量の増大(充電リザーブ量の減少)を引き起こすため内圧上昇、早期寿命の原因になる。合金の腐蝕を防止することは、電池の特性向上につながるところから重要である。合金が腐蝕すれば電極の性能が劣化するのは当然の帰結である。以上詳述したところの本発明で規定しているNi粉末およびセリウムの酸化物または水酸化物の少なくとも一種の化合物を規定量含有する電極はいずれも合金の腐蝕が抑制され良好なサイクル性能を示している。
【0044】
以上、単極試験および密閉型ニッケル水素蓄電池の試験結果よれば、Ni粉末とCeO2粉末を共に含有する水素吸蔵合金電極は活性化が速やかに進み、同電極を負極に適用した密閉形ニッケル水素蓄電池は活性化工程が速やかで、高率放電特性、電池内圧上昇抑制機能、サイクル寿命に優れる。水素吸蔵合金電極中に含有されるNi粉末は平均粒径が2μm以下で、含有比率は0.5重量%以上が良く、更には1重量%以上が望ましい。表には記してないが、Ni粉末の含有比率が5重量%を超えても効果は変わらないばかりか、電極の容量が低下することとなり好ましく無い。前記実施例では比表面積が2m2/gのNi粉末を適用した。詳述は省くが、Ni粉末は電極反応の場を提供すると共に水素吸収反応の触媒として作用する。従ってNi粉末の比表面積は大きいほうが望ましく、我々の知見では1m2/g以上であることが望ましい。
【0045】
前記の如く、水素吸蔵合金電極中に含有されるCeの酸化物あるいは水酸化物の比表面積は50m2/gが良い。またその含有比率は0.1〜5重量%が望ましく、平均粒径は5μm以下が望ましい。前記実施例では平均孔径20nmの細孔を有するCeO2を適用した。CeO2が酸素吸収反応の触媒として機能するためには表面に細孔を有し比表面積が大きい方が良い。詳述は省くが、我々の知見によればCeO2が嵩高く無く、かつ触媒として機能するためには細孔の平均孔径が50nm以下であることが望ましい。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の請求項1によれば、Ni粉末およびセリウム酸化物または水酸化物の少なくとも一種から選ばれた粉末を含有する水素吸蔵合金電極は、初期活性化が速やかで高率放電特性、酸素ガス吸収能、耐食性において優れている。また、本発明の請求項2によれば、高率放電特性がさらに高められ、過充電時に発生する水素ガス吸収能にも優れている。請求項3によれば、セリウム酸化物または水酸化物の酸素ガス吸収反応に対する触媒作用の発揮が顕著である。本発明に係る水素吸蔵合金電極を適用することにより、初期活性化が短時間で済み、過充電時にも内圧上昇が抑制されて安全であり、高率放電特性、サイクル特性に優れた密閉形ニッケル水素蓄電池が実現される。
【0047】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る円筒形ニッケル水素蓄電池の1実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
4 水素吸蔵合金電極

Claims (3)

  1. 水素吸蔵合金粉末を主成分とし、平均粒径が2μm以下のニッケル粉末を1〜5重量%含有し、且つ、平均粒径が5μm以下であってBET法で求めた比表面積が50m2/g以上であるセリウムの酸化物または水酸化物の少なくとも一種から選ばれた粉末を0.1〜5重量%含有することを特徴とする水素吸蔵合金電極。
  2. 前記ニッケル粉末の含有比率が3〜5重量%であることを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金電極。
  3. 前記セリウムの酸化物およびまたは水酸化物の粉末の平均粒径が0.5μm以下であって、その含有比率が1〜5重量%であることを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金電極。
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