JP2022115451A - 鉄-炭素複合材料、その製造方法、負極およびニッケル水素電池 - Google Patents

鉄-炭素複合材料、その製造方法、負極およびニッケル水素電池 Download PDF

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Abstract

【課題】大気下で安定であり、かつ、充電時の水素ガスの発生を抑制することのできる、鉄を含むニッケル水素電池の負極用の材料を提供すること。【解決手段】表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含む、鉄-炭素複合材料。【選択図】図1

Description

本開示は、鉄-炭素複合材料、その製造方法、負極およびニッケル水素電池に関する。
これまで、負極として水素吸蔵合金を用い、正極として水酸化ニッケルを用いた、ニッケル水素電池(ニッケル金属水素化物電池)が開発されてきた(例えば、特許文献1:特開2018-045942号公報参照)。上記電池の負極に用いられる水素吸蔵合金としては、希土類元素Mを含むMNi等のAB型合金が使用されている。しかし、負極に希土類元素を含むため、負極材料が高価であり、資源量も少ないという問題がある。また、充電時において水素ガスが発生する可能性があった。
一方、ニッケル水素電池用の負極(負極活物質)に、比較的安価で豊富な資源である鉄を使用することも原理的には可能である。なお、負極に鉄を用いた電池は充放電電圧が鉄には、潜在的には大きな理論容量を持つという利点もある。しかし、鉄は上記の水素吸蔵合金よりもイオン化傾向が大きい(酸化還元電位が低い)ため、鉄とHOから水酸化鉄と水素ガスが生じる反応が起こりやすく、鉄を用いた負極を使用したニッケル水素電池では、充電時において水素ガスが発生する可能性がより大きくなる。このため、現状では、負極に鉄を用いた電池は、ほとんど実用化されていない。
なお、水素雰囲気下で、鋼鉄製のボールを用いてグラファイトを粉砕することで、Fe-C-H化合物(水素が吸着した鉄-炭素化合物)を得る方法が提案されている(非特許文献1:H. Miyaoka et al., Anomalous hydrogen absorption on non-stoichiometric iron-carbon compound, J. Alloys Compd., 507, 547-550, 2010)。このFe-C-H化合物は、鉄の水素脆性により、炭素中にナノスケールの鉄が分散されたものであると考えられる。Fe-C-H化合物は、その中に含まれる鉄の量が約15質量%であり、水素の量が約6質量%であるため、従来の水素吸蔵合金に比べて多くの水素を貯蔵できる材料として期待された。
特開2018-045942号公報
H. Miyaoka et al., Anomalous hydrogen absorption on non-stoichiometric iron-carbon compound, J. Alloys Compd., 507, 547-550, 2010
しかしながら、非特許文献1の材料(Fe-C-H化合物)は大気下で不安定であり、発火の可能性があり、ニッケル水素電池の負極への応用は困難であった。
本開示は、大気下で安定であり、かつ、充電時の水素ガスの発生を抑制することのできる、鉄を含むニッケル水素電池の負極用の材料を提供することを目的とする。
〔1〕 表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含む、鉄-炭素複合材料。
〔2〕 表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含む鉄-炭素複合材料の製造方法であって、
炭素材料を、水素ガス雰囲気下で、鉄を含有するボールを用いたボールミルによって粉砕することで、鉄、炭素および水素を含有するFe-C-H化合物を作製する、第1工程と、
前記Fe-C-H化合物を酸化することにより、表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含む鉄-炭素複合材料を作製する、第2工程と、を含む、製造方法。
〔3〕 表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含む鉄-炭素複合材料の製造方法であって、
炭素材料および鉄粉を、水素ガス雰囲気下で、鉄を含有するボールを用いたボールミルによって粉砕することで、鉄、炭素および水素を含有するFe-C-H化合物を作製する、第1工程と、
前記Fe-C-H化合物を酸化することにより、表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含む鉄-炭素複合材料を作製する、第2工程と、を含む、製造方法。
〔4〕 前記第2工程は、酸素を含まない雰囲気下で、前記Fe-C-H化合物をアルカリ溶液と混合することにより実施される、〔2〕または〔3〕に記載の製造方法。
〔5〕 〔2〕~〔4〕のいずれかに記載の製造方法によって製造された、鉄-炭素複合材料。
〔6〕 ニッケル水素電池の負極の材料として用いられる、〔1〕または〔5〕に記載の鉄-炭素複合材料。
〔7〕 〔1〕または〔5〕に記載の鉄-炭素複合材料を含む、ニッケル水素電池用の負極。
〔8〕 〔7〕に記載の負極と、正極と、電解液と、を備える、ニッケル水素電池。
〔9〕 前記正極は水酸化ニッケルを含む、〔8〕に記載のニッケル水素電池。
ニッケル水素電池の負極材料として、鉄-炭素複合材料を用いることにより、鉄によって発生する水素ガスを炭素が吸着することにより、ニッケル水素電池における充電時の水素ガスの発生を抑制することができる。そして、鉄-炭素複合材料が表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含むことにより、該鉄-炭素複合材料は、大気下で安定なものとなる。
なお、資源量が豊富で希土類元素を含まない鉄-炭素複合材料を負極材料として用いることにより、負極材料のコストを削減できる。
本開示によれば、大気下で安定であり、かつ、充電時の水素ガスの発生を抑制することのできる、鉄を含むニッケル水素電池の負極用の材料を提供することができる。
図1は、実施例1で作製された鉄-炭素複合材料のX線回折強度曲線を示す図である。 図2は、参考例1で作製されたFe-C-H化合物のX線回折強度曲線を示す図である。 図3は、ニッケル水素電池の構成の一例を示す概略図である。
以下、本開示における実施形態が説明される。ただし、以下の説明は、特許請求の範囲を限定しない。
<鉄-炭素複合材料>
本開示において、鉄-炭素複合材料は、表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含む。例えば、鉄-炭素複合材料は、表面の少なくとも一部が鉄の酸化物で被覆されている。本開示の鉄-炭素複合材料は大気下で安定であることが本発明者らにより確認されているが、鉄-炭素複合材料の表面が鉄の酸化物で被覆されていることが、安定化(不活性化)の一要因であると推測される。
鉄-炭素複合材料は、多孔質材料であることが好ましい。鉄-炭素複合材料のBET比表面積は、好ましくは100m/g以上であり、より好ましくは200m/g以上である。
また、鉄-炭素複合材料においては、炭素材料中に鉄の粒子が分散された状態で存在することが好ましい。これにより、鉄によって発生する水素ガスをより確実に炭素が吸着することができ、ニッケル水素電池における充電時の水素ガスの発生をより確実に抑制することができる。
<鉄-炭素複合材料の製造方法>
本開示に係る鉄-炭素複合材料の製造方法は、少なくとも以下の第1工程および第2工程を含む。
(第1工程)
第1工程では、炭素材料を、水素ガス雰囲気下で、鉄を含有するボールを用いたボールミルによって粉砕することで、鉄、炭素および水素を含有するFe-C-H化合物を作製する。
上記第1工程において、炭素材料としては、炭素を含む材料であれば特に限定されないが、例えば、グラファイトパウダー、活性炭、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバーなどを用いることができる。
炭素材料の形状は、特に限定されないが、好ましくは粉体である。この場合の炭素材料の平均粒子径(D50)は、好ましくは1~100μmであり、より好ましくは5~30μmである。なお、ここでいう平均粒子径(D50)とは、JIS Z 8825に準拠したレーザー回折散乱式粒度分布測定装置で測定される体積頻度粒度分布測定により求められる積算50%の粒径(D50)である。
鉄を含有するボールとしては、例えば、鋼鉄製ボールなどを用いることができる。
ボールミルとしては、例えば、フリッチェ遊星型ボールミル、振動ミルなどを用いることができる。
上記第1工程は、具体的には、例えば、非特許文献1に開示される方法により実施することができる。
第1工程で原料として用いられる炭素材料は、本実施形態の効果が奏される範囲内で、鉄等の他の材料と一緒に粉砕されてもよい。すなわち、例えば、第1工程において、炭素材料および鉄粉を、水素ガス雰囲気下で、鉄を含有するボールを用いたボールミルによって粉砕することで、鉄、炭素および水素を含有するFe-C-H化合物を作製してもよい。
(第2工程)
第2工程においては、Fe-C-H化合物を酸化することにより、表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含む鉄-炭素複合材料を作製する。
Fe-C-H化合物の酸化は、燃焼に至らない程度の緩徐な酸化工程により実施されることが好ましい。
具体的には、第2工程は、酸素を含まない雰囲気下で、Fe-C-H化合物をアルカリ溶液と混合する(接触させる)ことにより実施されることが好ましい。この場合、より確実に、表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含む鉄-炭素複合材料を作製することができる。酸素を含まない雰囲気としては、特に限定されないが、Arガス等の不活性ガス雰囲気などが挙げられる。なお、鉄のみをアルカリ溶液と反応させると、燃焼が生じてしまうことが知られている。
この場合に用いられるアルカリ溶液としては、特に限定されないが、pH14以上のアルカリ溶液であることが好ましく、例えば、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などを用いることができる。このアルカリ溶液により、Fe-C-H化合物中の鉄が酸化されることで、表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含む鉄-炭素複合材料を作製できると考えられる。
第2工程で用いるアルカリ溶液の量は、Fe-C-H化合物を十分に酸化できる量であれば特に限定されないが、例えば、Fe-C-H化合物の量に対して、質量比で、1~20倍であることが好ましく、2~10倍であることがより好ましい。より具体的には、例えば、アルカリ溶液が水酸化カリウム水溶液(濃度:6~8規定、27~34質量%)である場合、水酸化カリウム水溶液の量は、Fe-C-H化合物の量に対して、質量比で、1~10倍であることが好ましく、3~5倍であることがより好ましい。この場合、より確実に、表面に鉄の水酸化物を含む鉄-炭素複合材料を得ることができる。
さらに、上記炭素材料をミリングしながら、アルカリ溶液と混合する(アルカリ処理ミリングを行う)ことがより好ましい。この場合、より確実に、表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含む鉄-炭素複合材料を作製することができる。なお、アルカリ処理ミリングも、酸素を含まない雰囲気下で実施される。
アルカリ処理ミリングは、例えば、遊星ボールミリング装置などを用いて実施できる。
アルカリ処理ミリングの時間は、特に限定されないが、好ましくは1~20時間であり、より好ましくは5~15時間である。
なお、Fe-C-H化合物を酸素を含む雰囲気下で酸化させることも原理的には可能である。ただし、Fe-C-H化合物を大気に曝すと燃焼してしまうため、酸素の含有量が十分に低い気体を用いたりする等の燃焼(激しい酸化)が起こらないような条件で酸化を実施する必要がある。
(その他の工程)
なお、上記の第2工程によって得られた鉄-炭素複合材料について、通常は、さらに、洗浄工程(第3工程)、および、洗浄工程後の乾燥工程(第4工程)が実施される。
第3工程(洗浄工程)は、例えば、第2工程によって得られた鉄-炭素複合材料を大気中にてミリング容器から取り出して、イオン交換水で洗浄することにより実施できる。例えば、洗浄された鉄-炭素複合材料に対して、吸引ろ過を用いてイオン交換水を除去し、再度洗浄を行う操作を繰り返してもよい。この操作の繰り返しは、例えば、廃液がpH8になるまで実施してもよい。
第4工程(乾燥工程)は、例えば、第3工程で洗浄された鉄-炭素複合材料を室温で真空引きすることにより実施できる。
このようにして、ニッケル水素電池の負極の材料として用いることのできる鉄-炭素複合材料を製造することができる。
<負極>
本開示のニッケル水素電池用の負極は、上述の鉄-炭素複合材料を含む。
上記の鉄-炭素複合材料は、負極において負極活物質として用いられる。すなわち、負極を構成する負極活物質は、鉄-炭素複合材料を含む。ただし、負極活物質は、上記の鉄-炭素複合材料以外に導電剤などの添加剤を含んでいてもよい。充放電反応には電子のやり取りが必要であるため、負極活物質がさらに導電剤を含むことで反応活性を向上できる。
導電剤としては、例えば、ニッケル、銅、コバルト、ビスマス、黒鉛などが挙げられる。ニッケル、銅、コバルト、ビスマス等については、導電剤として機能するためには金属状態である必要がある。黒鉛は、電導性を有するものであれば特に限定されず、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェンなども適用可能である。これらの導電剤は、導電性の改善のみならず、充電時に還元、生成する金属状の鉄を安定化させる働きも有する。
導電剤は、鉄-炭素複合材料と混合するだけでもよいが、理想的には鉄-炭素複合材料の調製の過程で導電剤が導入されることによって、より細かなレベルで鉄-炭素複合材料との接触が可能となる。ここで、ニッケル、銅、コバルト、ビスマス等については、必ずしも金属の状態で配合する必要はなく、塩、酸化物、水酸化物などの化合物の状態で配合しておけば、電池組み立て後に充電された際に、還元されて金属状態となり得る。
上記の鉄-炭素複合材料を用いて、一般的な方法で負極を作製することができる。
例えば、鉄-炭素複合材料の粉末、導電剤、およびバインダー(SBRラテックス、ポリフッ化ビニリデン等)を含むペーストを、金属箔、パンチングメタルシートなどの金属基材に塗布したり、金属多孔質体に充填したりすることで、電極(負極)を作製することができる。
本開示の負極は、水酸化ニッケルを正極活物質として使用したニッケル水素電池などに適用できる。以下、本開示の負極を用いたニッケル水素電池の一例を説明する。
<ニッケル水素電池>
本開示のニッケル水素電池(以下、「電池」と略記する場合がある)は、例えば、携帯機器用電池、車載用電池、再生可能エネルギー発電の蓄電池などに使用することができる。電池は、一次電池でもよく、二次電池でもよい。以下に、ニッケル水素(Ni-H)電池の構成の一例が図面を参照して説明される。
図3は、ニッケル水素電池の構成の一例を示す概略図である。
電池1は、ニッケル水素電池である。電池1は、筐体2を含む。筐体2は、円筒形のケースである。筐体2は、金属製である。ただし、筐体2は、任意の形態を有し得る。筐体2は、例えば、角形のケースであってもよい。筐体2は、例えば、アルミラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。筐体2は、例えば、樹脂製であってもよい。
筐体2は、蓄電要素10と電解液とを収納している。蓄電要素10は、正極11、負極12、およびセパレータ13を含む。図示される蓄電要素10は、巻回型である。蓄電要素10は、帯状の電極が渦巻状に巻回されることにより形成されている。蓄電要素10は、例えば、積層型であってもよい。蓄電要素10は、例えば、枚葉状の電極が積層されることにより形成されていてもよい。
《負極》
負極12は、シート状である。負極12は、例えば、10μm~1mmの厚さを有していてもよい。負極12は、正極11に比して低い電位を有する。負極12は、負極活物質として上述の鉄-炭素複合材料を含む。負極12は、実質的に鉄-炭素複合材料(負極活物質)のみからなっていてもよい。
負極12は、負極活物質に加えて、集電材およびバインダ等をさらに含んでいてもよい。集電材は、例えば、パンチングメタル、金属箔、多孔質金属シート等を含んでいてもよい。集電材は、例えば、Ni製であってもよい。
例えば、集電材に、負極活物質およびバインダが塗着されることにより、作製され得る。バインダは、集電材と負極活物質とを結合する。バインダは、任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびアクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の負極活物質に対して、例えば0.1質量部から10質量部であってもよい。
《正極》
正極11は、シート状である。正極11は、例えば、10μm~1mmの厚さを有していてもよい。正極11は、負極12に比して高い電位を有する。正極11は、正極活物質を含む。正極活物質は、任意の成分を含み得る。正極活物質としては、例えば、水酸化ニッケル、二酸化マンガン、酸化銀などが挙げられる。正極活物質は、好ましくは水酸化ニッケルである。
正極11は、実質的に正極活物質のみからなっていてもよい。正極11は、正極活物質に加えて、集電材、導電材およびバインダ等をさらに含んでいてもよい。集電材は、例えば、多孔質金属シート等を含んでいてもよい。集電材は、例えば、Ni製である。
例えば、集電材に、正極活物質、導電材およびバインダが塗着されることにより、正極11が形成され得る。導電材は、電子伝導性を有する。導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、カーボンブラック、Co、酸化コバルト等を含んでいてもよい。導電材の配合量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。バインダは、集電材と正極活物質とを結合する。バインダは、任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)等を含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。
《セパレータ》
セパレータ13は、シート状である。セパレータ13は、正極11と負極12との間に配置されている。セパレータ13は、正極11と負極12とを物理的に分離している。セパレータ13は、例えば、50~500μmの厚さを有していてもよい。セパレータ13は、多孔質である。セパレータ13は、例えば、延伸多孔膜、不織布等を含んでいてもよい。セパレータ13は、電気絶縁性である。セパレータは、例えば、ポリオレフィン製、ポリアミド製等であってもよい。
《電解液》
電解液は、特に限定されないが、水系電解液であることが好ましい。水系電解液としては、例えば、アルカリ水溶液等を好適に用いることができる。アルカリ水溶液は、例えば、水と、水に溶解したアルカリ金属水酸化物と、を含む。アルカリ金属水酸化物は、例えば、1~20mоl/Lの濃度を有していてもよい。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)などが挙げられる。
以下、本開示における実施例が説明される。ただし、以下の説明は、特許請求の範囲を限定しない。
(実施例1)
本実施例では、負極材料として上記の鉄-炭素複合材料を用いて、ニッケル水素電池の試験セルを作製した。
まず、非特許文献1(H. Miyaoka et al., Anomalous hydrogen absorption on non-stoichiometric iron-carbon compound, J. Alloys Compd., 507, 547-550, 2010)に記載の方法に従って、鉄、炭素および水素を含有するFe-C-H化合物を作製した。具体的には、グラファイトパウダー(99.9995%,Alfa Aesor)300mgと鋼鉄製ボール20個をミリング容器に入れ、容器内を真空引きした後、容器内を1MPaの水素ガスで満たした。その後、フリッチェ遊星型ボールミルを用いて、容器内のグラファイトパウダーを80時間粉砕することで、Fe-C-H化合物を調製した。
次に、Arガスで満たされたグローブボックス内で、Fe-C-H化合物を含むミリング容器に、8N KOH溶液を1mL加えて、遊星ボールミリング装置で容器内のFe-C-H化合物に対して12時間のミリングを行った。大気中にて、ミリング容器から試料(Fe-C-H化合物)を取り出した。該試料に対して、イオン交換水による洗浄と、吸引ろ過によるイオン交換水の除去とを繰り返し、イオン交換水の廃液がpH8になるまでこれらの洗浄操作を繰り返した。その後、試料に対して、室温での真空引きにより一晩乾燥を行った。これにより、大気下で安定化した鉄-炭素複合材料(BET比表面積:500m/g)が作製された。
得られた鉄-炭素複合材料84質量%と、カーボンブラック粉末10質量%と、SBRラテックス6質量%とを加えて、ペーストを調製した。該ペーストを、直径20mmの円板状に打ち抜いたニッケル多孔質体の片面に塗布し、乾燥した後、27MPaの圧力でプレスすることにより、電極(負極)を作製した。なお、1つの負極中に含まれる負極活物質の量は、約0.1gであった。
このようにして作製され負極は、セパレータおよび正極と組み合わせて、市販の電池容器(タクミ技研、フラットセル(圧力センサー付き))にセットされた。セパレータとしては、通常のニッケル水素電池に使用されるスルホン化処理されたポリプロピレン製不織布(円形、直径23mm)を用いた。正極としては、通常のニッケル水素電池に使用される水酸化ニッケル極(水酸化ニッケルが充填されたニッケル多孔質体。直径20mmの円板状。)を用いた。
電池容器内にはアルカリ電解液(6規定(6N)の水酸化カリウム水溶液)0.2mLが注入された。正極容量は約70mAhであり、負極容量よりも正極容量を過剰にしている。実用電池では正極容量を負極容量よりも少なくし、正極容量支配とするが、本実施例では負極の性能に注目しているため、負極容量に対して正極容量を過剰にし、負極容量支配とした。
このようにして、上記の負極を備える、実施例2のニッケル水素電池(試験セル)を組み立てた。
(参考例1:Fe-C-H化合物)
実施例1の途中までの工程と同様にして、Fe-C-H化合物を作製した。すなわち、グラファイトパウダー(99.9995%,Alfa Aesor)300mgと鋼鉄製ボール20個をミリング容器に入れ、容器内を真空引きした後、容器内を1MPaの水素ガスで満たした。その後、フリッチェ遊星型ボールミルを用いて、容器内のグラファイトパウダーを80時間粉砕することで、Fe-C-H化合物を調製した。
このFe-C-H化合物は、不安定であり、大気下で発火することが確認されたため、電池の負極として利用できなかった。
(比較例1)
比較例1では、負極材料として水素吸蔵合金を用いて、ニッケル水素電池の試験セルを作製した。
まず、アーク溶解炉を用いて、アルゴンガス雰囲気下で、所定の比率でLa、Ce、Pr、Nd、Ni、Co、MnおよびAlを含む混合物を溶解することにより、AB型の水素吸蔵合金(La0.24Ce0.54Pr0.054Nd0.16Ni3.99Co0.60Mn0.36Al0.053)を作製した。
次に、得られた水素吸蔵合金を鉄-炭素複合材料の代わりに用いて、実施例1と同様にして負極を作製し、ニッケル水素電池(試験セル)を作製した。
(実施例2)
水素雰囲気下、グラファイト、および、鉄粉(粒径3~5μm、鉄粉の配合比率:50質量%)の混合物を鋼鉄製ボールでミリングした。その後、ミリングされた混合物に対して、水酸化カリウム水溶液処理、洗浄ろ過(pH:8)、および、乾燥を行うことにより、該混合物を不活性化することにより、実施例2の鉄-炭素複合材料を得た。得られた鉄-炭素複合材料中のFeの含有率は58質量%であり、BET比表面積は330m/gであった。
得られた鉄-炭素複合材料を用いて、実施例1と同様にして負極を作製し、ニッケル水素電池(試験セル)を作製した。
(実施例3)
グラファイトと鉄粉の混合物における鉄粉の配合比率を80質量%とした点以外は、実施例2と同様にして、実施例1の鉄-炭素複合材料を得た。得られた鉄-炭素複合材料中のFeの含有率は83質量%であり、BET比表面積は220m/gであった。
得られた鉄-炭素複合材料を用いて、実施例1と同様にして負極を作製し、ニッケル水素電池(試験セル)を作製した。
〔評価〕
実施例1~3および比較例1の試験セルについて、閉鎖された容器内で、1.6mA/cmの電流を流して0.1Cで定電流充放電を行った。なお、「C」は電流レートの単位である。「1C」は、1時間の充電により、SOC(充電率:State of Charge)が0%から100%に到達する電流レートを示す。SOCは、電池の充電容量に対する充電量の比率である。放電終止電圧は0.8Vとした。
上記の充放電の際に、試験セル(電池)の放電容量(mAh/g)を測定した。なお、放電容量は、放電終止時(電圧:0.8V)における電池の容量(負極を構成する鉄-炭素複合材料1gあたりの容量)である。
また、充電時に充電電圧が1.5~1.6Vに達した時点において、電池の内圧を圧力センサーにより測定して、水素ガス発生の有無を評価した。なお、圧力センサーによる内圧の測定値が0.005MPa未満であった場合、水素ガス発生「無し」と評価し、0.005MPa以上であった場合、水素ガス発生「有り」と評価した。
表1に、上記評価における「充電時の水素発生の有無」および「放電容量」の評価結果が示される。
Figure 2022115451000002
表1に示される結果(充電時の水素発生の有無)から、負極に水素吸蔵合金を用いた比較例1の試験セルでは、充電時に水素が発生するのに対して、負極に鉄-炭素複合材料を用いた実施例1~3の試験セルでは、充電時の水素ガスの発生が起こらないことが分かる。
また、表1に示される結果(放電容量)から、本開示のニッケル水素電池に相当する実施例1~3の電池(試験セル)では、上記の鉄-炭素複合材料を負極材料として用いることにより、従来の水素吸蔵合金を負極に用いた比較例1の電池よりも放電容量が大きくなることが分かる。なお、比較例1の電池の放電容量は、水素発生無しでは0となる。
表1に示される放電電圧は、例えば、実施例1については、電池電圧が1.4Vから0.8Vとなるまで放電を行ったことを意味し、比較例1については、水素発生無しでは放電不可であることを意味する。
〔X線回折強度測定による表面組成分析〕
実施例1で作製された鉄-炭素複合材料、および、参考例1で作製されたFe-C-H化合物について、X線回折強度測定による表面組成分析を行った。
X線回折強度の測定については、株式会社リガク製のX線回折装置(XRD)「RINT2500V」を用いてX線回折強度曲線を得た。なお、参考例1については、大気中で燃焼してしまうため、カプトンフィルムで被覆した状態でX線回折強度を測定した。
図1に、実施例1で作製された鉄-炭素複合材料のX線回折強度曲線を示す。また、図2は、参考例1で作製されたFe-C-H化合物のX線回折強度曲線を示す。
図1に示される結果から、実施例1で作製された鉄-炭素複合材料の表面には、微量の鉄の酸化物(FeOおよびFe)が存在していることが分かる。鉄-炭素複合材料のX線回折でピークを示す2θの値が、FeOおよびFeのX線回折でピークを示す2θの値(粉末回折データベース)と対応しているためである。
これに対して、参考例1のFe-C-H化合物では、80時間ミリングを行ったことにより、グラファイトがアモルファスになり、Feの存在はX線回折強度曲線からは確認できなかったが(図2参照)、別途、エネルギー分散型X線分析(EDS)を実施することにより、Feの存在が確認された。
これらの結果から、実施例1で負極に用いられる鉄-炭素複合材料は、その表面に鉄の酸化物が形成されることにより、充電時の水素の発生が抑制されたと考えられる。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。特許請求の範囲の記載によって確定される技術的範囲は、特許請求の範囲と均等の意味におけるすべての変更を包含する。特許請求の範囲の記載によって確定される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の範囲内におけるすべての変更を包含する。
1 電池、10 蓄電要素、11 正極、12 負極、13 セパレータ、2 筐体。

Claims (9)

  1. 表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含む、鉄-炭素複合材料。
  2. 表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含む鉄-炭素複合材料の製造方法であって、
    炭素材料を、水素ガス雰囲気下で、鉄を含有するボールを用いたボールミルによって粉砕することで、鉄、炭素および水素を含有するFe-C-H化合物を作製する、第1工程と、
    前記Fe-C-H化合物を酸化することにより、表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含む鉄-炭素複合材料を作製する、第2工程と、を含む、製造方法。
  3. 表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含む鉄-炭素複合材料の製造方法であって、
    炭素材料および鉄粉を、水素ガス雰囲気下で、鉄を含有するボールを用いたボールミルによって粉砕することで、鉄、炭素および水素を含有するFe-C-H化合物を作製する、第1工程と、
    前記Fe-C-H化合物を酸化することにより、表面の少なくとも一部に鉄の酸化物を含む鉄-炭素複合材料を作製する、第2工程と、を含む、製造方法。
  4. 前記第2工程は、酸素を含まない雰囲気下で、前記Fe-C-H化合物をアルカリ溶液と混合することにより実施される、請求項2または3に記載の製造方法。
  5. 請求項2~4のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された、鉄-炭素複合材料。
  6. ニッケル水素電池の負極の材料として用いられる、請求項1または5に記載の鉄-炭素複合材料。
  7. 請求項1または5に記載の鉄-炭素複合材料を含む、ニッケル水素電池用の負極。
  8. 請求項7に記載の負極と、正極と、電解液と、を備える、ニッケル水素電池。
  9. 前記正極は水酸化ニッケルを含む、請求項8に記載のニッケル水素電池。
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