JP2023030793A - 電池および電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】負極材料として炭素材料を用いた電池の容量を向上させること。【解決手段】正極、セパレータ、負極および電解液を備え、前記正極と前記負極とが前記セパレータを介して積層される、電池であって、前記負極は、負極活物質を含む負極合材層と、元素周期表第9族、第10族および第11族に属する遷移金属元素から選択される少なくとも1種の遷移金属元素を含む負極集電材と、を備え、前記負極集電材は、前記負極合材層の前記正極に対して反対側に接しており、前記負極と前記セパレータとの接触領域において、前記遷移金属元素が占める面積の割合は、5%以下であり、前記負極活物質は、炭素材料を含み、前記炭素材料は、900m2/g以上のBET比表面積を有し、前記炭素材料は、0.5nm以上5nm以下のガス吸着法で測定される平均細孔径を有し、前記電解液は、アルカリ水溶液である、電池。【選択図】図3

Description

本開示は、電池および電池の製造方法に関する。
現在、二次電池として最も貯蔵エネルギー密度が高いのは、リチウムイオン電池である。リチウムイオン電池は、携帯機器、ハイブリッド車、電気自動車等に使用されている。リチウムイオン電池において、負極活物質であるリチウムの酸化還元は非常に卑な電位で起こるため、高い電池電圧を得ることができる。その反面、リチウムは、極めて酸化されやすく、かつ酸化が起こった際の発熱量も大きい。また、リチウムは水との接触によっても酸化されるため、リチウムイオン電池では、水系の電解液が使用できず、有機溶媒系の電解液を使用する必要があるが、一般的に使用される有機溶媒系の電解液は、可燃性である。
また、リチウム電極の充電は溶液から固体が析出する反応であり、デンドライトと呼ばれるような針状の析出物が生じやすく、このデンドライトがショートの原因となり得る。このため、リチウムイオン電池では、還元生成されたリチウムをカーボン層間にインターカレートさせることで、デンドライトの生成を抑制している。ただし、大電流での充電によってこのインターカレートの生成速度が早くなると、カーボン表面にデンドライトが析出する可能性があるため、リチウムイオン電池では、大電流での充電は避ける必要がある。特に、充電末期では、極めてゆっくりとした充電を行なう必要があるため、充電に比較的長い時間がかかる。このように、リチウムイオン電池では、充電制御、温度検知等を入念に行なうための補機も含めたシステム全体のコストが高く、また、製造時の環境制御のための製造コストも嵩んでしまう。また、電池の廃棄またはリサイクルのコストも比較的高い。さらに、リチウムは、効率よく採取できる産地が限られており、資源が豊富ではなく、高価格である。
したがって、このようなリチウムイオン電池のデメリットが改善され、かつ高い性能を有する電池の提供が望まれる。特に、自然エネルギー、余剰電力等の電力貯蔵用、車載用等の大型電池では、貯蔵エネルギー密度の高さだけでなく、低価格であり、安全性が高く、かつ、廃棄またはリサイクルが容易であること等が求められる。しかし、これらの条件を十分満足する電池はないのが現状である。
リチウムイオン電池以外の代表的な二次電池としては、負極に水素吸蔵合金を用いたニッケル水素電池がある。ニッケル水素電池では、不燃性の水系電解液を使用することができ、高い安全性を担保することができる。しかし、電池電圧が低いため、ニッケル水素電池の貯蔵エネルギー密度はリチウムイオン電池に比べてかなり低い。また、負極の水素吸蔵合金に用いられるレアアース元素は高価であり、その産出量も少なく、産出国も限られることから、原料の安定供給の面での不安もある。
一方、ニッケル水素電池の水素吸蔵合金負極に代えて、別のタイプの負極活物質として鉄を使用することも可能である。なお、鉄は、以下の反応式(1)および(2)で示される反応により、それぞれ充電および放電が可能である。
〔充電〕 Fe(OH)+2e → Fe+2OH ・・・(1)
〔放電〕 Fe+2OH →Fe(OH)+2e ・・・(2)
また、別のタイプの負極活物質として亜鉛を使用することも可能である。なお、亜鉛は、以下の反応式(3)および(4)で示される反応により、それぞれ充電および放電が可能である。
〔充電〕 ZnO+HO+2e → Zn+2OH ・・・(3)
〔放電〕 Zn+2OH →ZnO+HO+2e ・・・(4)
鉄および亜鉛は、安価であり、豊富に存在する資源であり、原料供給の問題もない点では、電極活物質として理想的な物質である。また、鉄電極は、水素吸蔵合金電極に比較的近い酸化還元電位を示し、ニッケル水素電池と同様にアルカリ水溶液である水系電解液を適用できるため、安全である。一方、亜鉛の電極電位は水素の酸化還元電位よりも碑側であるため、熱力学的には水が還元され、水素が発生する可能性があるが、亜鉛の水素過電圧が高いために実際にはアルカリ水溶液である水系電解液を適用できるため、安全である。
また、鉄は上記の反応式(1)および(2)のような反応の場合、亜鉛は上記の反応式(3)および(4)のような反応の場合、それぞれ1原子当たり出し入れ可能な電子を2個有しており、潜在的には大きな理論容量を持つため、電圧の低さを容量の大きさによって補える可能性もある。
さらに、純粋な電池とは異なるが、比表面積の大きな炭素材料の電気二重層容量を利用し、それを負極としたハイブリッドキャパシタも提案されている。炭素も安価であり、地球上どこでも豊富に存在する資源である。また、キャパシタ電極は、電極と電解液との固液界面にそれぞれ負電荷および正電荷が配列して電気二重層を形成するもので、物質の酸化還元反応が起こるわけではない。したがって、キャパシタ電極には特定の酸化還元電位があるわけではなく、任意の電位にそれに応じた容量が存在するため、水の還元による水素発生が起こらない範囲に電位を調節して使用することができる。そのため、水系電解液を適用でき、安全である。さらに、固体内の物質拡散の過程が無いため、充放電速度が極めて速い。
上記のように、鉄電極、亜鉛電極およびキャパシタ電極は、価格、安全性、資源の豊富さ、潜在容量の大きさ、充放電速度の速さ等から本来は理想的な二次電池用の電極である(例えば、特許文献1:特開2006-080335号公報)。
しかし、鉄電極は、充放電反応に対する活性が低く、活物質利用率も低いため、現状ではほとんど実用化されていない。鉄の酸化物(水酸化物)はアルカリ水溶液での溶解度が低いため、上記反応式(1)および(2)のような反応が進行するためには、大きなサイズの酸素イオン、水酸化物イオン等が鉄の酸化物(水酸化物)の固体の中で移動する必要がある。電解液に溶解せず、安定で緻密な構造をとる鉄の酸化物(水酸化物)内では、物質の移動速度が遅く、電極活性は低くなってしまう。従って、特に鉄の酸化物(水酸化物)粒子の集合体である電極の内部深くまで反応が浸透することが難しく、潜在容量が大きいにも関わらず、利用率が低くなってしまう。
また、亜鉛電極は、酸化状態の亜鉛がジンケートイオン(Zn(OH) 2-)のような形でアルカリ電解液に溶解しやすい。すなわち、亜鉛電極の充放電反応は、溶解析出反応として起こり、電極の形態を維持するのが難しく、亜鉛が電極から離脱したり、生成した金属亜鉛のデンドライトがセパレータを貫通することでショートを起こすといった問題がある。このように、亜鉛電極は形態が不安定であるため電池として十分な耐久性が得られない。
さらに、キャパシタ電極は、炭素表面に蓄積された電荷のみを使用するため、通常の電池電極と比べて容量が著しく小さい。炭素の比表面積を増大させるのには限界があり、電気二重層容量の改良は難しい。また、キャパシタ電極に使用する炭素材料は、活性炭等の比表面積の大きなものを用いる必要があるが、比表面積の大きな炭素材料は嵩密度は低く、体積は大きくなり、電池の実用上重要な体積当たりの容量(容量密度)が著しく小さくなってしまう。
特開2006-080335号公報
本発明者らは、特定の構成を有するキャパシタ電極を使用した電池をアルカリ電解液中で充電することで、水の還元によって生じた水素が炭素に多量に吸着し、電極内に容量として蓄積、すなわち容量が増加することを見出した。また、キャパシタ電極が鉄または亜鉛を含むことで、さらに容量が増加することも見出した。
本開示は、負極材料として炭素材料を用いた電池の容量を向上させることを目的とする。
〔1〕 正極、セパレータ、負極および電解液を備え、
前記正極と前記負極とが前記セパレータを介して積層される、電池であって、
前記負極は、負極活物質を含む負極合材層と、元素周期表第9族、第10族および第11族に属する遷移金属元素から選択される少なくとも1種の遷移金属元素を含む負極集電材と、を備え、
前記負極集電材は、前記負極合材層の前記正極に対して反対側に接しており、
前記負極と前記セパレータとの接触領域において、前記遷移金属元素が占める面積の割合は、5%以下であり、
前記負極活物質は、炭素材料を含み、
前記炭素材料は、900m/g以上のBET比表面積を有し、
前記炭素材料は、0.5nm以上5nm以下のガス吸着法で測定される平均細孔径を有し、
前記電解液は、アルカリ水溶液である、電池。
〔2〕 前記炭素材料の容量が100mAh/g以上である、〔1〕に記載の電池。
〔3〕 前記炭素材料の表面に水素原子が吸着している、〔1〕または〔2〕に記載の電池。
〔4〕 前記負極合材層は、鉄および亜鉛の少なくとも一種の金属、および、鉄および亜鉛の少なくとも一種の金属を含む金属化合物を有し、
前記金属および前記金属化合物の少なくとも一部は、前記炭素材料の細孔の内表面に存在する、〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の電池。
〔5〕 前記炭素材料中の炭素原子に対する、前記金属中および前記金属化合物中の金属原子のモル比は、0.1以上0.7以下である、〔4〕に記載の電池。
〔6〕 〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載の電池の製造方法であって、
前記炭素材料、導電材およびポリテトラフルオロエチレンを混錬し、前記ポリテトラフルオロエチレンのフィブリル化によって結着した混錬物を成形する工程を含む、電池の製造方法。
〔7〕 前記混錬物に対する前記ポリテトラフルオロエチレンの質量比は、1質量%以上20質量%以下である、〔6〕に記載の電池の製造方法。
〔8〕 〔4〕または〔5〕に記載の電池の製造方法であって、
鉄イオンおよび亜鉛イオンの少なくとも一種の金属イオンを含む溶液に前記炭素材料を浸漬し、前記炭素材料の細孔の内表面に前記金属イオンが存在する状態で、前記溶液にアルカリを加える工程を含む、電池の製造方法。
〔9〕 前記溶液中の前記金属イオンの濃度は、1mol/L以上である、〔8〕に記載の電池の製造方法。
〔10〕 前記溶液に前記炭素材料を浸漬した状態で3時間以上経過した後に、前記溶液にアルカリを加える、〔8〕または〔9〕に記載の電池の製造方法。
〔11〕 前記溶液に前記炭素材料を浸漬した状態で超音波を照射した後に、前記溶液にアルカリを加える、〔8〕から〔10〕のいずれか一項に記載の電池の製造方法。
電池の負極材料として上記のような炭素材料を用いることにより、水の還元によって生じた水素がガスとして離脱するのではなく、炭素に多量に吸着し、電極内に容量として蓄積することができる。この吸着した水素は可逆的に放電することも可能であり、電気二重層容量以外に酸化還元容量が発現し、電池の容量は大幅に増加する。この電解水素の吸着は、水素ガスの離脱を抑制する性質が強く、水素過電圧の非常に大きな炭素の特性を活かすことによって実現するものであるため、負極とセパレータとの接触領域における炭素以外の水素過電圧の小さな金属成分の露出を排除する必要がある。
一方、上記のように、比表面積の大きな炭素材料は嵩密度および容量密度は低い。しかし、鉄および亜鉛の少なくとも一種の金属、および、鉄および亜鉛の少なくとも一種の金属を含む金属化合物が炭素材料の細孔の内表面に存在することで、充放電がスムーズに行われるようになり、酸化還元容量はさらに増加する。
本開示によれば、負極材料として炭素材料を用いた電池の容量を向上させることができる。
図1は、本開示の電池の蓄電要素の一例を示す概略断面図である。 図2は、本開示の電池の構成の一例を示す概略図である。 図3(a)は、実施例1および比較例1の電池の放電電圧曲線を示す図である。図3(b)は、実施例2および比較例2の電池の放電電圧曲線を示す図である。 図4は、実施例2の電池の0Vまでの放電電圧曲線を示す図である。 図5は、実施例3の電池における負極の炭素材料単体での容量の測定結果を示す図である。 図6は、実施例2、4~6および比較例3の電池の放電電圧曲線を示す図である。 図7は、実施例2、7および比較例4の放電電圧曲線を示す図である。
以下、本開示における実施形態が説明される。ただし、以下の説明は、特許請求の範囲を限定しない。
<電池>
本開示の電池は、例えば、携帯機器用電池、車載用電池、電力貯蔵用電池などに使用することができる。電池は、一次電池でもよく、二次電池でもよい。
図2は、本開示の電池の構成の一例を示す概略図である。
電池60は、外装体50を含む。外装体50は、円筒形のケースである。外装体50は、金属製である。ただし、外装体50は、任意の形態を有し得る。外装体50は、例えば、角形のケースであってもよい。外装体50は、例えば、アルミラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。外装体50は、例えば、樹脂製であってもよい。
外装体50は、蓄電要素40と電解液とを収納している。蓄電要素40は、正極20、負極10、およびセパレータ30を含む。図示される蓄電要素40は、巻回型である。
図1は、本開示の蓄電要素の一例を示す概略断面図である。蓄電要素40は、例えば、積層型であってもよい。図示される蓄電要素40は、正極20と負極10とがセパレータ30を介して積層される。
《負極》
負極10は、シート状である。負極10は、例えば、10μm~1mmの厚さを有していてもよい。負極10は、正極20に比して低い電位を有する。負極10は、負極活物質を含む負極合材層12と、元素周期表第9族、第10族および第11族に属する遷移金属元素から選択される少なくとも1種の遷移金属元素を含む負極集電材と、を備える。負極集電材11は、負極合材層12の正極20に対して反対側に接している。負極とセパレータとの接触領域において、遷移金属元素が占める面積の割合は、5%以下である。負極活物質は、炭素材料を含む。炭素材料は、900m/g以上のBET比表面積を有し、かつ、0.5nm以上5nm以下のガス吸着法で測定される平均細孔径を有する。
負極合材層12は、負極活物質を主成分として含み、負極活物質は、炭素材料を含む。ここで、「主成分として含む」とは、例えば、負極合材層12の全量に対して負極活物質の含有量が50質量%より多いことである。負極合材層12中の負極活物質の含有率は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。負極活物質は、実質的に炭素材料のみからなっていてもよい。
炭素材料は、特に制限されないが、導電性および水素吸着性の観点から、黒鉛系材料であることが好ましい。具体的には、賦活処理によって比表面積を大きくした一般的に活性炭と呼ばれるカーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレンまたはこれらの混合物等が挙げられ、活性炭が主に使用される。炭素材料は、一部が酸化された状態になっていてもよく、不純物を含んでいてもよい。負極合材層12中の炭素材料の含有率は、例えば、70質量%以上90質量%以下であり、75質量%以上85質量%以下であることが好ましい。
炭素材料は、900m/g以上のBET比表面積を有する。炭素材料のBET比表面積が900m/g以上の場合、十分量の容量を充放電することができる。炭素材料のBET比表面積は、1000m/g以上であることが好ましく、3000m/g以上であることがより好ましい。
本明細書における「BET比表面積」は、ガス吸着法により測定される吸着等温線において、BET多点法により算出される比表面積を示す。吸着質ガスは窒素ガスである。1つの測定対象について、BET比表面積は3回以上測定される。3回以上の結果の算術平均が、測定対象のBET比表面積とみなされる。
炭素材料は、0.5nm以上5nm以下のガス吸着法で測定される平均細孔径を有する。炭素材料の平均細孔径が0.5nm未満の場合、電解液が浸透しにくく、電池の機能が低下する可能性がある。炭素材料の平均細孔径が5nmを超える場合、BET比表面積が小さくなり、充放電容量が減少する。炭素材料の平均細孔径は、0.8nm以上4nm以下であることが好ましく、1nm以上3nm以下であることがより好ましい。
本明細書における「平均細孔径」は、以下の式(5)を用いて求められる。
D=4V/A・・・式(5)
上記式(1)中、「D」は平均細孔径を、「V」はガス吸着法により求められる全細孔容積を、「A」はBET比表面積を示す。また、全細孔容積Vは、窒素の吸着等温線の相対蒸気圧が0.990の吸着量から求められる。
炭素材料の表面には水素原子が吸着している。負極表面で水が還元されて生成した原子状水素は、負極表面に吸着するか、水素分子を形成して水素ガスとして脱離する。水素過電圧の小さな物質表面では水素ガスとして脱離しやすく、脱離してガス状となった水素は電池の容量増加に寄与することができない。一方、炭素は水素過電圧が非常に大きいため、炭素に吸着している水素はガスとして脱離しにくく、電池の容量増加に寄与することができる。また、炭素の細孔径が小さい場合も水素ガスとしての脱離を抑制することに寄与する。
炭素材料に対してスムーズに電子の受け渡しを行うことおよび電極の構造を安定的に支持することから、負極10は金属製の負極集電材11を含む。負極集電材11は、元素周期律表第9族、第10族および第11族に属する遷移金属元素から選択される少なくとも1種の遷移金属元素を含み、耐アルカリ性の観点からニッケルを使用することが好ましい。
しかし、負極10が負極集電材11を含む場合、充電時に該遷移金属部分から優先的に水素ガスの脱離が起こり、炭素材料における十分な量の水素の吸着が起こらなくなる。また、いったん脱離した水素は再度負極10に吸着しない。このように、負極10における該遷移金属部分の露出を抑制する必要があり、特に負極10とセパレータ30との接触領域において、遷移金属元素が占める面積の割合を5%以下にする必要がある。これは、負極集電材11を、負極合材層12の正極20に対して反対側に設けることで抑制することができる。
本開示の炭素材料の容量は、100mAh/g以上であり、200mAh/g以上であってもよい。ここで、「容量」とは、炭素材料単体の電極に対して充電可能な容量を意味する。該容量は、炭素材料単体の電極をアルカリ電解液中で充電し、電極内に蓄積された容量以外の容量、すなわち水素ガス発生に使用された容量をガス捕集によって求め、全体の供給電気量から水素ガス発生に使用された容量を差し引くことによって求めることができる。また、簡易的には、いったん充電したキャパシタ電極を放電し、適当な放電終止電位(電圧)での容量として求めてもよい。
負極合材層12は、鉄および亜鉛の少なくとも一種の金属、および、鉄および亜鉛の少なくとも一種の金属を含む金属化合物を有していることが好ましく、金属および金属化合物の少なくとも一部は、炭素材料の細孔の内表面に存在する。負極合材層12中の金属および金属化合物が炭素材料の細孔の内表面に存在することで、充放電容量が増加する。また、負極合材層12中に含まれている金属および金属化合物の全てが炭素材料の細孔の内表面に存在することが好ましい。なお、負極合材層12は、上記金属または金属化合物のどちらか一方のみを含んでいてもよい。
鉄について上述の式(1)および(2)の充放電反応が進行するためには、大きなサイズの酸素イオン、水酸化物イオン等が鉄の酸化物(水酸化物)の中で移動する必要がある。しかし、安定で緻密な構造をとる鉄の酸化物(水酸化物)内では物質の移動速度が遅く、通常のサイズの鉄の酸化物(水酸化物)粒子の内部深くまで反応が浸透するのが難しい。従って、本開示のように細孔径が0.5nm以上5nm以下の炭素材料であれば、炭素材料の細孔の内表面に存在する鉄の酸化物(水酸化物)はサイズに制約があり、酸素イオン、水酸化物イオン等が長距離移動する必要がなくなるため、充放電反応活性が高くなり、結果として充放電容量が増加する。
また、上述のように、亜鉛の充放電反応は溶解析出反応として起こり、電極の形態が維持し難く、亜鉛の電極からの離脱やデンドライト生成の問題がある。しかし、本開示のように、炭素材料の細孔の内表面に存在する亜鉛は放電により酸化された場合も溶解して電極から離脱することが起こりにくい。また、溶出したとしても、充電で還元析出する際に再び炭素材料の細孔の内表面に取り込まれ、負極外で析出したり、デンドライトを形成する可能性が低くなる。したがって、安定的に充放電容量を維持できるようになり、結果として充放電容量が増加する。
炭素材料中の炭素原子に対する上記金属中および金属化合物中の金属原子のモル比は、0.1以上0.7以下であることが好ましい。炭素材料中の炭素原子に対する金属中および金属化合物中の金属原子のモル比が0.1未満である場合、充放電容量が増加しない可能性がある。また、炭素材料中の炭素原子に対する金属中および金属化合物中の金属原子のモル比が0.7を超える場合、炭素材料の細孔の内表面に入ることのできない金属が増加する。その結果、鉄の場合には充放電活性の低いものが増加することでかえって充放電容量が減少する可能性があり、亜鉛の場合には電極からの離脱やデンドライトの生成の問題を引き起こす可能性がある。
金属化合物である鉄化合物としては、酸化鉄や水酸化鉄等が挙げられるが、これらに限定されず、例えば、鉄と炭酸イオン等の陰イオンとの塩等や、水和水含むものでもよい。また、鉄以外の金属元素を含んでいてもよい。
金属化合物である亜鉛化合物としては、酸化亜鉛や水酸化亜鉛等が挙げられるが、これらに限定されず、例えば、水和水を含むものでもよい。また、亜鉛以外の金属元素を含んでいてもよい。
本開示の負極合材層12は、炭素材料以外に導電材、バインダ等を含んでいてもよい。
充放電反応には電子のやり取りが必要であるため、負極合材層12が導電材を含むことで反応活性を向上できる。導電材としては、例えば、ニッケル、銅、黒鉛等が挙げられる。ニッケル、銅等については、導電材として機能するためには金属状態である必要がある。ニッケル、銅のような金属の導電剤は、元素周期表において第10族、第11族に属する遷移金属の導電剤であり、本開示に基づきセパレータとの接触領域において占める面積の割合を5%以下にする必要がある。黒鉛は、電導性を有するものであれば特に限定されず、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン等も適用可能である。負極合材層12中の導電材の含有率は、例えば、1質量%以上20質量%以下であり、5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
バインダは、負極活物質と負極集電材とを結合する。バインダは、任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられ、水素吸着性の観点から、PTFEであることが好ましい。負極合材層12中の導電材の含有率は、例えば、1質量%以上20質量%以下であり、5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
本開示は、負極活物質に特徴を有するものであり、負極と組み合わせる正極、セパレータ等には特に制限はない。
本開示の負極活物質は、水酸化ニッケルを正極活物質として使用したニッケル―炭素電池、ニッケル―鉄(炭素)電池およびニッケル―亜鉛(炭素)電池、マンガン酸化物を正極活物質としたマンガン―炭素電池、マンガン―鉄(炭素)電池およびマンガン―亜鉛(炭素)電池、空気中の酸素を正極活物質とした空気―炭素電池、空気―鉄(炭素)電池および空気―亜鉛(炭素)電池等に適用することができる。
《電解液》
電解液は、アルカリ水溶液である。アルカリ水溶液は、例えば、水と、水に溶解したアルカリ金属水酸化物と、を含む。アルカリ金属水酸化物は、例えば、1~20mоl/Lの濃度を有していてもよい。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)等が挙げられる。
《正極》
正極20は、シート状である。正極20は、例えば、10μm~1mmの厚さを有していてもよい。正極20は、負極10に比して高い電位を有する。正極20は、正極活物質を含む。正極活物質は、任意の成分を含み得る。正極活物質としては、例えば、水酸化ニッケル、二酸化マンガン、酸化銀などが挙げられる。
正極20は、実質的に正極活物質のみからなっていてもよい。正極20は、正極活物質に加えて、正極集電材、導電材およびバインダ等をさらに含んでいてもよい。正極集電材は、例えば、多孔質金属シート等を含んでいてもよい。集電材は、例えば、ニッケル製である。
導電材は、電子伝導性を有する。導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、カーボンブラック、コバルト、酸化コバルト等を含んでいてもよい。導電材の配合量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。バインダは、正極集電材と正極活物質とを結合する。バインダは、任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。
《セパレータ》
セパレータ30は、シート状である。セパレータ30は、正極20と負極10との間に配置されている。セパレータ30は、正極20と負極10とを物理的に分離している。セパレータ30は、例えば、20~500μmの厚さを有していてもよい。セパレータ30は、多孔質である。セパレータ30は、例えば、延伸多孔膜、不織布等を含んでいてもよい。セパレータ30は、電気絶縁性である。セパレータ30は、例えば、ポリオレフィン製、ポリフェニレンサルファイド(PPS)製、ポリビニルアルコール(PVA)製等であってもよい。
<電池の製造方法>
《負極の製造》
本開示の炭素材料を含む負極は以下のような一般的な方法で製造することができる。例えば、炭素材料の粉末、導電材およびバインダ(SBRラテックス、ポリフッ化ビニリデン等)を含むペーストを、パンチングメタルシート、金属メッシュ等の金属基材に塗布したりすることで負極を作製することができる。
また、炭素材料の粉末、導電材およびPTFEを混錬し、PTFEのフィブリル化によって結着した混錬物をシート状に成形し、金属基材と組み合わせて負極を作製することもできる。PTFEは疎水性が高く、水素ガスとの親和性が高いことから、吸着した水素を安定させることに寄与する。
混錬物に対するPTFEの質量比は、例えば、1質量%以上20質量%以下である。混錬物に対するPTFEの質量比が1質量%未満の場合、結着性が不十分となる。混錬物に対するPTFEの質量比が20質量%を超える場合、電極の導電性低下を招くとともに、活物質充填量を減少させ、ひいては容量を減少させる。混錬物に対するPTFEの質量比は、5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
本開示の炭素材料と、鉄および亜鉛の少なくとも一種の金属、および、鉄および亜鉛の少なくとも一種の金属を含む金属化合物を含む負極は、以下のような方法で製造することができる。鉄イオンおよび亜鉛イオンの少なくとも一種の金属イオンを含む溶液に炭素材料を浸漬し、炭素材料の細孔内の表面に金属イオンが存在する状態で、溶液にアルカリを加える。この時、鉄イオンを含む溶液としては、例えば、溶媒に硫酸鉄、塩化鉄、酢酸鉄等の鉄の塩を溶かしたものを使用することができる。亜鉛イオンを含む溶液としては、例えば、溶媒に硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛の塩を溶かしたものを使用することができる。これらの塩は、溶媒に溶かせるものであれば、特に限定されない。また、溶媒は鉄イオンや亜鉛イオンを溶解できるものおよび炭素材料の細孔内に浸潤することができるものである必要があり、例えば、水やアルコール等を使用することができる。溶媒がアルコールであったり、アルコールを含む場合、細孔内への浸潤が容易となる。
アルカリとしては、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、アンモニア(NH)等を使用することができる。これらのアルカリを金属の塩に加えた場合、酸化鉄、水酸化鉄、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等が炭素材料の細孔内に析出し、細孔内の表面に固定化される。また、炭素材料の細孔内に鉄イオンが存在する状態で、溶液に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を加えると、炭酸鉄が析出し、細孔内の表面に固定化される。使用するアルカリは所望の鉄や亜鉛の化合物が生成するのであれば特に限定されず、固形の状態で加えても、溶液として加えてもよい。また、例えば、鉄イオンまたは亜鉛イオンを含む溶液を炭素にしみ込ませておき、それをアルカリ溶液に浸漬させてもよい。
溶液の金属イオンの濃度は、1mol/L以上であることが好ましい。このようにすることで、炭素材料の細孔内の表面に存在する金属の量を多くすることができる。
炭素材料の平均細孔径は小さく、金属イオンが十分に細孔内に浸潤するには時間がかかるため、溶液に炭素材料を浸漬した状態で3時間以上経過した後に、溶液にアルカリを加えることが好ましい。浸漬時間が3時間未満の場合、金属化合物が細孔外に析出し、鉄化合物の場合には容量に寄与しなかったり、亜鉛化合物の場合には負極からの離脱やデンドライト生成の問題を起こす可能性がある。
また、溶液に炭素を浸漬した状態で超音波を照射することが好ましい。超音波を照射することで、金属イオンの細孔内への浸潤を促進することができる。超音波の照射時間は、特に限定されないが、例えば、3分間以上照射してもよい。
さらに、溶液に炭素材料を浸漬した状態で加温することで、金属イオンの細孔内への浸潤を促進することができる。溶液の温度は、例えば30℃以上100℃以下に加温してもよい。
《正極の製造》
正極は一般的な方法で製造することができる。例えば、正極集電材に、正極活物質、導電材およびバインダが塗着されることにより、正極が形成され得る。
《蓄電要素の製造》
蓄電要素は任意の形態を有し得る。蓄電要素は、例えば、積層型であってもよいし、巻回型であってもよい。例えば、セパレータが準備される。1枚のセパレータが使用されてもよいし、2枚のセパレータが使用されてもよい。例えば、セパレータ、負極、セパレータおよび正極がこの順序で積層されることにより積層体が形成され得る。巻回型の場合には、積層体が渦巻状に巻回されることにより、蓄電要素が形成され得る。
《電池の製造》
電池の製造方法は、蓄電要素と電解液とを含む電池を製造することを含む。例えば、外装体を準備し、外装体に蓄電要素を組み込み、電解液を注入することで電池が製造される。
以下、本開示における実施例が説明される。ただし、以下の説明は、特許請求の範囲を限定しない。
(実施例1)
本実施例は、負極活物質として上記の炭素材料を使用した電池の一例である。
炭素材料として、活性炭(ATエレクトロード(株)社製、電気二重層キャパシタ用電極材AP11-0010)を使用した。この活性炭のBET比表面積は1100±200m/gであり、平均細孔径は1.8nmであった。BET比表面積および平均細孔径の測定には、ガス吸着量測定装置(マイクロトラックベル(株)社製、BELSORP-MAX)を用いた(以下の実施例および比較例においても同様)。
次に、この活性炭を負極活物質として用いて電極(負極)を作製した。具体的には、活性炭粉末84質量%、カーボンブラック粉末(キシダ化学)10質量%、PTFE6質量%(シグマアルドリッチ)を混錬し、PTFEのフィブリル化によって結着した混錬物を直径20mmの円形シート状に成形した。円形シートは片面に負極集電材としてニッケル製メッシュ(直径20mm)を合わせて、34MPaの圧力でプレスして負極とした。負極中に含まれる活性炭質量は0.1gであった。
このようにして作製した負極は、通常のニッケル水素電池に使用されるスルホン化処理されたポリプロピレン製不織布(円形、直径23mm)と、通常のニッケル水素電池に使用される水酸化ニッケル極(ニッケル多孔質体に水酸化ニッケルが充填されたもの、円板状、直径20mm)と組み合わせて、市販の電池容器(タクミ技研、フラットセル)にセットした。この時、負極は、ニッケル製メッシュの付いている面が負極合材層の正極に対して反対側(背面)に接するようにセットしており、負極とセパレータとの接触領域におけるニッケル製メッシュの露出はない。すなわち、負極とセパレータとの接触領域において、ニッケルが占める面積の割合は0%である。
電池内にはアルカリ電解液(KOH27wt%、NaOH3wt%、LiOH1wt%)を0.3mL注入した。正極容量は約35mAhであり、負極容量よりも正極容量を過剰にしている。実用電池では正極容量を負極容量よりも少なくし、正極容量支配とするが、本実施例では負極の性能が直接現れるよう負極容量に対して正極容量を過剰にし、負極容量支配とした。電池は25℃の恒温槽中で、活性炭質量1g当たり60mAの電流で定電流充放電を行った。放電終止電圧は0.8Vとした。
(実施例2)
炭素材料として、石油コークスのアルカリ賦活によって活性炭を作製した。具体的には、石油コークスに対して重量比で5倍の含水水酸化カリウム(水分約15%)を加えてよく混合し、400℃で30分間脱水した後、800℃で100分間賦活することにより作製した。この活性炭のBET比表面積は3000m/gであり、平均細孔径は2.1nmであった。それ以外の点は、実施例1と同様に負極および電池を作製し、電池試験を行った。
(実施例3)
炭素材料として、実施例2と同様の活性炭を使用し、実施例1と同様に負極を作製した。ただし、ニッケル製メッシユは円形シートの中央に配し、負極とセパレータとの接触領域における露出をなくし、かつ、どちらの面からも正極と反対側になるようにした。また、ニッケル製メッシュには樹脂で被覆された銅のリード線を取り付け、取付部も樹脂で覆い、遷移金属成分の負極とセパレータとの接触領域における露出をなくした。このようにして作製した負極を30質量%の水酸化カリウム水溶液に浸漬し、ニッケル板を正極として、25℃の恒温槽中で、活性炭質量1g当たり60mAの電流で定電流充電を行った。充電時に発生する水素ガスはガスビュレットで捕集し、充電総電気量から水素ガス発生のために消費された電気量を差し引くことによって、電極に充電された容量を求めた。活性炭以外にはほとんど充電される容量はないため、この電極に充電された容量はほぼすべて活性炭単体に充電された容量とみなすことができる。
(実施例4)
本実施例では、負極活物質が炭素材料および鉄化合物を含み、鉄化合物の少なくとも一部が炭素材料の細孔内に存在する電池を作製した。濃度1mol/Lの硫酸鉄(II)7水和物(キシダ化学)の水溶液に、実施例2と同様の活性炭を浸漬した。3時間浸漬した後、上記水溶液に3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液をpHが10を超えるまで滴下し、鉄イオンを酸化鉄または水酸化鉄として析出させ、固形分を濾別、温水洗浄、乾燥することによって負極活物質を作製した。この時、活性炭1mol当たりの鉄原子のモル比は0.2であった。このようにして作製した負極活物質を使用して実施例1と同様に負極および電池を作製し、電池試験を行った。
(実施例5)
活性炭を30分浸漬する点以外は、実施例4と同様に負極活物質を作製した。このようにして作製した負極活物質を使用して実施例1と同様に負極および電池を作製し、電池試験を行った。
(実施例6)
活性炭を30分浸漬する点、活性炭を浸漬した状態で、超音波洗浄器(アズワンMCS-2、発振周波数40kHz)を用いて3分間超音波を照射する点以外は、実施例4と同様に負極活物質を作製した。このようにして作製した負極活物質を使用して実施例1と同様に負極および電池を作製し、電池試験を行った。
(実施例7)
本実施例では、負極活物質が炭素材料および亜鉛化合物を含み、亜鉛化合物の少なくとも一部が炭素材料の細孔内に存在する電池を作製した。濃度1mol/Lの硫酸亜鉛7水和物(キシダ化学)の水溶液に、実施例2と同様の活性炭を浸漬した。3時間浸漬した後、上記水溶液に3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液をpHが10を超えるまで滴下し、亜鉛イオンを酸化亜鉛または水酸化亜鉛として析出させ、固形分を濾別、温水洗浄、乾燥することによって負極活物質を作製した。この時、活性炭1mol当たりの亜鉛原子のモル比は0.2であった。
このようにして作製した負極活物質を使用した点、ニッケル製メッシュではなく錫メッキを施した銅メッシュ(直径20mm)を使用した点以外は、実施例1と同様に負極を作製した。また、電池容器の負極側の内部を錫メッキした点以外は、実施例1と同様に電池を作製し、電池試験を行った。
(比較例1)
比較例1として、負極集電材が負極合材層の正極に対して反対側に接していない電池の例を示す。炭素材料として、実施例1と同様の活性炭を使用した。
活性炭粉末90質量%、カーボンブラック粉末(キシダ化学)10質量%を混合し、この粉末混合物に1.5質量%のカルボキシメチルセルロース・ナトリウム塩(CMCNa塩)(キシダ化学)を加え、ペーストを調製した。この時、粉末混合物とCMCNa塩水溶液の混合比は質量比で4:6であった。ペーストを、直径20mmの円板状に打ち抜いたニッケル多孔質体(住友電気工業、セルメット(R))に充填し、乾燥後、34MPaの圧力でプレスすることにより負極を作製した。負極中に含まれる活性炭質量は0.06gであった。このようにして作製した負極を使用して、実施例1と同様に電池を作製し、電池試験を行った。なお、負極とセパレータとの接触領域において、ニッケル多孔質体が占める面積の割合は5%よりも多かった。
(比較例2)
比較例2として、炭素材料として、実施例2と同様の活性炭を使用した点以外は比較例1と同様に負極および電池を作製し、電池試験を行った。
(比較例3)
比較例3として、負極活物質が鉄化合物を含むが炭素材料を含まない電池の例を示す。負極活物質は、濃度1mol/Lの硫酸鉄(II)7水和物(キシダ化学)の水溶液に3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液をpHが10を超えるまで滴下し、鉄イオンを酸化鉄または水酸化鉄として析出させ、固形分を濾別、温水洗浄、乾燥することによって作製した。
このようにして作製した負極活物質を使用した以外の点は、実施例1と同様に負極および電池を作製し、電池試験を行った。
(比較例4)
比較例4として、負極活物質が亜鉛化合物を含むが炭素材料を含まない電池の例を示す。負極活物質は、濃度1mol/Lの硫酸亜鉛7水和物(キシダ化学)の水溶液に3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液をpHが10を超えるまで滴下し、亜鉛イオンを酸化亜鉛または水酸化亜鉛として析出させ、固形分を濾別、温水洗浄、乾燥することによって作製した。
このようにして作製した負極活物質を使用した以外の点、ニッケル製メッシュではなく錫メッキを施した銅メッシュ(直径20mm)を使用した点以外は、実施例1と同様に負極を作製した。また、電池容器の負極側の内部を錫メッキした点以外の点は、実施例1と同様に電池を作製し、電池試験を行った。
図3(a)および(b)に、実施例1、2および比較例1、2の電池試験における放電電圧曲線の結果が示される。なお、図3の横軸に示される容量は、電池容量を負極活物質である活性炭1g当たりの容量に換算した値である(図4および5においても同様である。)。
図3に示される結果から、実施例1および2の電池は大きな容量を示しており、実施例2では0.8Vで放電を終えても100mAh/g以上の大きな容量を示していることがわかる。
図4に、実施例2の電池試験において0Vまで放電した放電電圧曲線の結果が示される。図4に示される結果から、実施例2の電池において負極、ひいてはその中の活物質である炭素材料は200mAh/g以上の容量を示すことがわかる。
図5に、実施例3の電池における炭素材料単体の容量の測定結果が示される。図5に示される結果から、炭素材料単体に充電される容量は200mAh/g以上であることがわかる。
図3~5の結果から、本開示の電池は大きな容量を示しており、100mAh/gまたは200mAh/g以上の容量に到達することも可能になることがわかる。これらの容量は電気二重層の形成による容量よりもはるかに大きく、容量が炭素材料よりも水素過電圧の小さな金属の表層露出によって大きな影響を受けるという事実から、本開示における電池の容量の増大は、水の還元によって生じた水素が炭素材料に吸着して起こっているものと考えられる。
図6に、実施例2、4~6および比較例3の電池試験における放電電圧曲線の結果が示される。なお、図6の横軸に示される容量は、電池容量を電池体積1cc当たりの容量密度に換算した値である(図7においても同様である。)。
図6の結果から、実施例4の鉄化合物を含む電池は、実施例2の鉄化合物を含まない電池と比べて、容量密度が大幅に向上している。これは、活性炭の嵩密度が低いために容量密度が低くなるという問題が解決されたものと考えられる。また、比較例3の鉄化合物のみを含む電池は、実施例4の活性炭および鉄化合物を含む電池と比べて、容量が大幅に低下している。これらの結果より、鉄化合物のみでは大きな容量は得られず、活性炭と鉄化合物が共存することで、大きな容量が得られることがわかる。
実施例4と5の電池では、鉄イオンを含む溶液に活性炭を浸漬する時間がそれぞれ3時間と30分で異なる。図6の結果から、実施例5の電池は、実施例4の電池と比べて、容量が大幅に低下している。この結果より、浸漬時間を長くすることで活性炭の細孔に鉄イオンが十分浸潤し、容量が増加することがわかる。
実施例5と6の電池では、活性炭を浸漬した状態で鉄イオンを含む溶液に3分間超音波を照射しているか否かが異なる。図6の結果から、実施例6の超音波照射を行った電池は、実施例5の超音波照射を行っていない電池と比べて、容量が大幅に向上している。この結果より、超音波照射を行うことで、鉄イオンの活性炭細孔への浸潤を促進し、容量が増加することがわかる。
図7に、実施例2、7および比較例4の電池試験における放電電圧曲線の結果が示される。図7の結果から、実施例7の亜鉛化合物を含む電池は、実施例2の亜鉛化合物を含まない電池と比べて、容量が大幅に向上している。この結果より、活性炭と亜鉛化合物が共存することで、大きな容量が得られることがわかる。
また、比較例4の亜鉛化合物のみを含む電池は、実施例7の活性炭および亜鉛化合物を含む電池とほとんど同じ容量を示している。しかし、実施例7の電池は充放電の繰り返しによりショートを起こすことはなかったが、比較例4の電池は充放電を繰り返すと初期(充放電2~3サイクル目)に必ずショートを起こした。比較例4では、デンドライトが生成し、セパレータを貫通したと考えられる。この結果より、活性炭の細孔に亜鉛イオンが浸潤することで、ショートを起こさずに大きな容量が得られることがわかる。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。特許請求の範囲の記載によって確定される技術的範囲は、特許請求の範囲と均等の意味におけるすべての変更を包含する。特許請求の範囲の記載によって確定される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の範囲内におけるすべての変更を包含する。
10 負極、11 負極集電材、12 負極合材層、20 正極、21 正極集電材、22 正極合材層、30 セパレータ、40 蓄電要素、50 外装体、60 電池。

Claims (11)

  1. 正極、セパレータ、負極および電解液を備え、
    前記正極と前記負極とが前記セパレータを介して積層される、電池であって、
    前記負極は、負極活物質を含む負極合材層と、元素周期表第9族、第10族および第11族に属する遷移金属元素から選択される少なくとも1種の遷移金属元素を含む負極集電材と、を備え、
    前記負極集電材は、前記負極合材層の前記正極に対して反対側に接しており、
    前記負極と前記セパレータとの接触領域において、前記遷移金属元素が占める面積の割合は、5%以下であり、
    前記負極活物質は、炭素材料を含み、
    前記炭素材料は、900m/g以上のBET比表面積を有し、
    前記炭素材料は、0.5nm以上5nm以下のガス吸着法で測定される平均細孔径を有し、
    前記電解液は、アルカリ水溶液である、電池。
  2. 前記炭素材料の容量が100mAh/g以上である、請求項1に記載の電池。
  3. 前記炭素材料の表面に水素原子が吸着している、請求項1または請求項2に記載の電池。
  4. 前記負極合材層は、鉄および亜鉛の少なくとも一種の金属、および、鉄および亜鉛の少なくとも一種の金属を含む金属化合物を有し、
    前記金属および前記金属化合物の少なくとも一部は、前記炭素材料の細孔の内表面に存在する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電池。
  5. 前記炭素材料中の炭素原子に対する、前記金属中および前記金属化合物中の金属原子のモル比は、0.1以上0.7以下である、請求項4に記載の電池。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電池の製造方法であって、
    前記炭素材料、導電材およびポリテトラフルオロエチレンを混錬し、前記ポリテトラフルオロエチレンのフィブリル化によって結着した混錬物を成形する工程を含む、電池の製造方法。
  7. 前記混錬物に対する前記ポリテトラフルオロエチレンの質量比は、1質量%以上20質量%以下である、請求項6に記載の電池の製造方法。
  8. 請求項4または請求項5に記載の電池の製造方法であって、
    鉄イオンおよび亜鉛イオンの少なくとも一種の金属イオンを含む溶液に前記炭素材料を浸漬し、前記炭素材料の細孔の内表面に前記金属イオンが存在する状態で、前記溶液にアルカリを加える工程を含む、電池の製造方法。
  9. 前記溶液中の前記金属イオンの濃度は、1mol/L以上である、請求項8に記載の電池の製造方法。
  10. 前記溶液に前記炭素材料を浸漬した状態で3時間以上経過した後に、前記溶液にアルカリを加える、請求項8または請求項9に記載の電池の製造方法。
  11. 前記溶液に前記炭素材料を浸漬した状態で超音波を照射した後に、前記溶液にアルカリを加える、請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の電池の製造方法。
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