JP4059357B2 - 水素化物二次電池とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、正極の活物質としてペ─スト式水酸化ニツケルを用いた水素化物二次電池とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水素吸蔵合金を用いた水素化物二次電池は、多量の水素を吸蔵、放出する能力を有し、アルカリ水溶液中でも電気化学的に水素の吸蔵、放出を行うことが可能であり、ニツケル極を正極に用いた場合、次式のように電池反応が起こる。負極の反応式中、MはLaNi5 系やTi−Ni系などの水素吸蔵合金である。
【0003】
正極および負極の反応式において、充電では、反応は右に進み、アルカリ水溶液中の水を電気分解して、水素を吸蔵し、水酸基を生じ、この水酸基と正極であるNi(OH)2 とが反応して、NiOOHとなり、水を生じる。また、放電の場合は、反応は左に進み、上記と逆の反応となる。つまり、負極では充電で水素の吸蔵が起こり、放電で水素の放出となる。
【0004】
ニツケル極としては、特開平1−227363号公報などに開示のように、高容量化や低価格化のために、空孔率が95%以上、孔径が数μm〜100μm程度の導電性多孔基材を用い、これに水酸化ニツケルを主体とする活物質スラリ─を担持させる、いわゆるペ─スト式が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ペ─スト式電極は、焼結式電極に比べて孔径が大きいため、活物質の集電体までの距離が長く、利用率や負荷特性に劣る。「湯浅時報」No.65,第28頁(1988年)には、正極中にニツケル粉末、コバルト粉末またはコバルト化合物粉末などの導電助剤を加えて利用率を向上させることが提案されているが、この種の電池のさらなる高容量化のためには、活物質である水酸化ニツケル自体の利用率を向上させることが必要である。
【0006】
本発明は、上記従来の事情にてらして、ペ─スト式ニツケル正極の利用率を向上させるとともに、サイクル特性にすぐれる水素化物二次電池を提供することを第一の目的とする。また、最近の二次電池の使用環境に伴い、高温下での信頼性が強く望まれているため、上記特性のほか、高温時の貯蔵特性にすぐれる水素化物二次電池を提供することを第二の目的とする。さらに、これらの特性に加え、高温保存後でも保存前の放電容量をほぼ維持させることができる、回復率の大きい水素化物二次電池を提供することを第三の目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的に対して、鋭意検討したところ、ペ─スト式電極に用いられる従来の水酸化ニツケル粉末は、一般に、硫酸ニツケル水溶液に水酸化ナトリウムを加えて水酸化ニツケルの沈殿物を得、これを水洗、乾燥してつくられているが、このものは通常数μm〜数10μm程度の粒子径を有して、粒度分布の幅が広く、しかも、粒子径の大きなものは球状であるが、小さなものはダンゴ状のいびつな形状を有しており、そのために、水酸化ニツケルの理想的な利用率は110%程度であるにもかかわらず、実際には95〜100%程度までの利用率しか得られていないことが判明した。
【0008】
本発明者らは、この知見をもとにさらに検討を加えた結果、水酸化ニツケル粉末の上記製造に際して反応、水洗、乾燥、粉砕などの諸条件を適宜選択すると、粒度分布が狭くてかつ粒子径の小さいものまで球状を呈するような特定の水酸化ニツケル粉末が得られ、これを正極の活物質として使用すると、利用率が飛躍的に向上し、サイクル特性にすぐれる高容量の水素化物二次電池が得られること、また上記活物質からなる正極中に特定の導電助剤を添加すると、高温時の貯蔵特性の改善を図れたり、あるいは高温保存後でも保存前の放電容量をほぼ維持できる、良好な回復率が得られることを見い出した。
【0009】
すなわち、本発明(請求項1〜3)は、水酸化ニツケルを活物質とする正極と水素吸蔵合金よりなる負極とアルカリ水溶液よりなる電解液とセパレータを有する水素化物二次電池において、上記の水酸化ニツケルは、コバルトおよび亜鉛を固溶しており、粒度が2〜40μm、平均粒径が8±2μmの粉末で、この粉末は平均粒径以上の粒子が球状でかつ平均粒径以下の粒子の95重量%以上も球状であり、BET吸着法による比表面積が5〜20 m 2 /g、細孔容積が0.015〜0.030 cc /g、平均細孔半径が25〜50Åであることを特徴とする水素化物二次電池に係るものである。
【0010】
また、本発明(請求項4〜6)は、正極中に、導電助剤として、コバルトと酸素の原子比が1:0.90〜1:0.99のコバルト酸化物を含む上記水素化物二次電池(請求項4)、同じく、金属コバルトおよびコバルトと酸素の原子比が1:0.90〜1:0.99のコバルト酸化物の混合物からなり、かつ金属コバルトのコバルト量(Co1)とコバルト酸化物のコバルト量(Co2)との合計量中、前者のコバルト量(Co1)が10〜85重量%であるものを含む上記水素化物二次電池(請求項5)に係るものである。
【0011】
さらに、本発明(請求項7)は、上記の水素化物二次電池の製造方法として、水酸化ニッケルを活物質とする正極と水素吸蔵合金よりなる負極とアルカリ水溶液よりなる電解液とセパレータを有する水素化物二次電池の製造方法において、上記の水酸化ニツケルとして、コバルトおよび亜鉛を固溶しており、粒度が2〜40μm、平均粒径が8±2μmであって、平均粒径以上の粒子が球状でかつ平均粒径以下の粒子の95重量%以上も球状であり、BET吸着法による比表面積が5〜20 m 2 /g、細孔容積が0.015〜0.030 cc /g、平均細孔半径が25〜50Åである粉末を使用し、この水酸化ニツケル粉末を含むペースト中に、導電助剤として、金属コバルトおよびコバルトと酸素の原子比が1:0.90〜1:0.99のコバルト酸化物の混合物からなり、かつ金属コバルトのコバルト量(Co1)とコバルト酸化物のコバルト量(Co2)との合計量中、前者のコバルト量(Co1)が10〜85重量%であるものを添加し、このペーストを導電性多孔基材に担持させ、乾燥したのち、圧縮成形し、この圧縮成形後にアルカリ水溶液中に浸漬する工程を付加し、かつこのアルカリ水溶液中の浸漬処理を、35〜87℃のアルカリ水溶液中に0.2〜2.4時間浸漬処理して行うことにより、正極を作製することを特徴とする水素化物二次電池の製造方法に係るものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる水酸化ニツケルは、マイクロトラツプ法により測定される粒度が2〜40μm、平均粒径が8±2μmの粉末であつて、この粉末はSEM(走査型電子顕微鏡)による観察で平均粒径以上の粒子が球状でかつ平均粒径以下の粒子の95重量%以上も球状である、つまり、従来のものに比べて、粒度分布の幅が狭くて均一な粒子からなり、かつ粒径の大きいものだけでなく粒径の小さい粒子までもが球状であることを特徴とする。
【0014】
従来のように小さい粒子が均一な球状とならずダンゴ状となる水酸化ニツケル粉末では、結晶性が低いため、電気化学的反応の効率が悪くなり、そのぶん正極の利用率が低くなる。これに対して、本発明の上記水酸化ニツケル粉末は結晶性が高く、電気化学的反応の効率が良くなり、正極の利用率が向上するとともに、粒度分布が狭いため、上記反応が各粒子で均一に起こりやすく、これも利用率の向上や長寿命化に寄与しているものと考えられる。
【0015】
本発明の水酸化ニツケル粉末は、硫酸ニツケル水溶液に通常コバルトや亜鉛を溶解させた硫酸溶液を混合し、これを5〜20℃に保持し、水酸化ナトリウムを加えてpHが11〜12となるように調整して、水酸化ニツケルの沈澱物を得、この沈澱物を吸引ろ過し、80〜110℃で乾燥したのち、所定粒度に粉砕し、さらに水洗後80〜110℃で乾燥することにより、調製することができる。この方法は、従来の調製方法と比べると、大きくは、低温(5〜20℃)で水酸化ニツケルを調製している点で異なつている。
【0016】
このように調製される水酸化ニツケル粉末は、BET吸着法により測定される細孔半径が従来の水酸化ニツケル粉末と同じ7〜8Åにピ─クを有するとともに、5〜6Åの範囲にもピ─クを有するという特異な性状を示し、通常、7〜8Åのピ―クの強度(la)と上記の5〜6Åのピ―クの強度(lb)との比(la:lb)が100:50以上となるものである。
【0017】
また、通常は、BET吸着法により測定される比表面積が5〜20m2/g、BET吸着法により測定される細孔容積が0.015〜0.030cc/g、平均細孔半径が25〜50Åの範囲に入つている。BET吸着法により測定される比表面積は、窒素吸着法(ユアサアイオニクス、オ─トソ─プ1)で1〜100Å、試料1g、測定時間127分、吸着側での測定値である。
【0018】
本発明の水酸化ニツケル粉末は、固溶金属として、Zn、Co、Mgなどを用いることにより、正極の充電受入れ性が向上し、より高い水酸化ニツケルの利用率を達成することができるため、好ましい。ここで、上記固溶金属の固溶量としては、水酸化ニツケル[Ni(OH)2 ]に対して、それら固溶金属の合計量が5重量%以下となるようにするのがよい。
【0019】
本発明において、正極は、上記の水酸化ニツケル粉末とカルボキシメチルセルロ―ス、ポリテトラフルオロエチレンなどのバインダとを混練し、このペ─ストをニツケル発泡体などの導電性多孔基材に担持させ、乾燥したのち、圧縮成形することにより、作製される。その際、上記のペ―スト中に、導電助剤として、金属コバルトまたはコバルト酸化物のいずれかひとつを添加し、また必要に応じてニツケル粉末などの他の導電助剤を添加して、上記の圧縮成形後にアルカリ水溶液中に浸漬する工程を付加するのが望ましい。
【0020】
本発明者らの研究により、上記の水酸化ニツケル粉末と組み合わせて使用する導電助剤として、不活性ガス融解−赤外線吸着法(LECO社製:TC436)により測定される、コバルトと酸素の原子比が1:0.90〜1:0.99となる特定のコバルト酸化物を、上記の水酸化ニツケル粉末に対して、コバルト換算で通常15〜50重量%の範囲で用いるようにすると、上記水酸化ニツケルからなる活物質の利用率が一段と向上するとともに、高温時の貯蔵特性が改善され、サイクル特性のさらなる改善を図れることを見い出した。
【0021】
既述のように、従来でも、正極中にコバルト化合物を添加して正極の導電率を向上させることが知られ、その中には、酸化コバルト(CoO)を添加することも検討されていたが、この化合物は一般に表面が酸化されやすく、アルカリ溶液に不溶解なCo3 O4 に変化しやすい。Co3 O4 が酸化コバルトの表面に形成されると、電池内で充電時に水酸化ニツケルの粒子をつなぎとめる作用をするコバルトのネツトワ─クに必要なCoO→Co(OH)2 →CoOOHの変化が起こらず、導電助剤としての役割を果たさなくなる。とくに、高温環境に電池を保存した場合、この傾向が顕著となり、所定の電池容量が得られず、またサイクル特性が劣化するという問題を生じやすい。
【0022】
これを防ぐため、酸化コバルトを不活性ガス中で保存する必要があり、また所定の電池容量を得るために、コバルトが酸化されるぶんだけ活物質を余分に充填する必要があり、容量密度の低下とともに、生産性やコスト面で問題が生じる。これを解決するため、水酸化ニツケルの表面にコバルトの薄層を設けることも検討されたが、水素化物二次電池の高容量化やサイクル特性の向上のためには、利用率のさらなる向上が必要で、とくに最近の二次電池の使用環境により高温でも貯蔵特性にすぐれ、活物質である水酸化ニツケルと相互作用を起こさない安定化の要求を満足する新規な導電助剤が望まれている。
【0023】
本発明に使用する前記のコバルト酸化物は、この要望に応えうるものであり、コバルトと酸素の原子比でコバルトの方が高く、コバルト酸化物中にコバルトが多く含まれる構成となつていることから、コバルトとコバルト酸化物では優先的にコバルトの方が酸化を受け、酸化コバルトの酸化がそれだけ抑制され、電池内でアルカリに不溶解なCo3 O4 の生成が少なくなる。その結果、導電助剤としての前記役割が最大限に発揮され、活物質の利用率が向上し、高温貯蔵後でもすぐれたサイクル特性が得られるものと思われる。
【0024】
前記のコバルト酸化物に代えて、酸素の原子比がコバルト1に対し0.99より大きくなるコバルト酸化物を用いると、酸化コバルトの表面がCo3 O4 に変化するため、導電助剤としての役割を果たすコバルト分が減少し、正極中にコバルトのネツトワ─クが十分にできず、活物質の利用率が低下する。また、酸素の原子比がコバルト1に対し0.90未満となるコバルト酸化物を使用すると、この酸化物の作製に長時間を要し、生産性やコスト面で不利となり、また電池内でCoOOHに変化する際に電解液中の水を多く消費したり、高温貯蔵時にコバルト表面から酸化されてCo3 O4 に変化しやすく、十分な利用率が得られず、高温貯蔵後のサイクル特性が低下しやすい。
【0025】
本発明に用いる前記のコバルト酸化物は、コバルトと酸素の原子比が1:0.90〜1:0.99の範囲となるように設定できれば、種々の方法で調製することができる。代表的な例としては、コバルト炭酸塩をアルゴンガス雰囲気中200〜400℃で1〜3時間焼成し、ついで、塩化水素ガスを含むアルゴンガス雰囲気中800〜1,000℃で7〜12時間加熱したのち、真空雰囲気中600〜800℃で1〜3時間加熱処理する方法が挙げられる。
【0026】
このようにして調製されるコバルト酸化物は、SEMによる観察では、従来の酸化コバルト(CoO)粉末に比べて、非常に微粒子であり、これが正極で緻密なコバルトのネツトワ─クを形成することを可能とし、導電性の付与に一段と好結果をもたらすものと思われる。また、このコバルト酸化物は、上記微粒子状の粉末として、通常、BET吸着法による比表面積が10〜20m2/g、BET吸着法により測定される細孔容積が0.015〜0.030cc/g、平均細孔半径が20〜40Åである。なお、BET吸着法により測定される比表面積は、窒素吸着法(ユアサアイオニクス、オ─トソ─プ1)で1〜100Å、試料1g、測定時間127分、吸着側での測定値である。
【0027】
また、本発明者らは、前記の水酸化ニツケル粉末と併用する導電助剤として、上記特定のコバルト酸化物と金属コバルトを組み合わせて使用することにより、高温保存後でも保存前の放電容量をほぼ維持させることができる、回復率の大きい水素化物二次電池が得られることを見い出した。
【0028】
すなわち、金属コバルトは一般に表面が酸化されやすく、酸化コバルトと同様にアルカリ水溶液に不溶解なCo3 O4 に変化しやすい。このため、金属コバルトのみを使用した場合、電池内で充電時に水酸化ニツケルの粒子をつなぎとめる作用をするコバルトのネツトワ─クに必要なCoO→Co(OH)2 →CoOOHの変化が起こらず、導電助剤としての役割を果たさなくなり、とくに高温下でこの減少が顕著となる。
【0029】
また、金属コバルトのみからなる正極をアルカリ水溶液に浸漬してもその溶解速度が遅いため、正極中で十分なコバルトのネツトワ―クを形成できない。さらに、保存中に正極の電位が下がると、コバルトが電解液中に再溶解し、コバルトのネツトワ―クが破壊され、高温保存後に容量劣化、つまり保存前の放電容量の回復率が劣る問題がある。導電助剤として、金属コバルトとともに、コバルト酸化物を併用したときでも、コバルト酸化物が空気中の酸素により金属コバルトと同様にCo3 O4 に変化するため、上記と同じ問題があつた。
【0030】
本発明者らは、上記高温保存後の回復率を改善するため、前記の水酸化ニツケルを用いて検討を行つたところ、その導電助剤として、金属コバルトとともに、前記した特定のコバルト酸化物、つまりコバルトと酸素の原子比が1:0.90〜1:0.99となるコバルト酸化物を併用することにより、上記高温保存後の回復率を大きく改善できることを見い出したものである。
【0031】
ここで、上記のコバルト酸化物は、コバルトを酸素より僅かに多く含むため、コバルトがコバルト酸化物の酸化(Co3 O4 への変化)を防ぎ、またアルカリ水溶液中での溶解、析出が金属コバルトより速いため、短時間でより均一なコバルトのネツトワ―クを正極中に形成することができる。その結果、金属コバルト単独よりもコバルト酸化物を併用した方が、正極は高い電圧を保つことができ、高温保存下での容量低下を抑制できるものと考えられる。
【0032】
上記のコバルト酸化物と金属コバルトとの使用割合は、金属コバルトのコバルト量(Co1)とコバルト酸化物のコバルト量(Co2)との合計量中、前者のコバルト量(Co1)が10〜85重量%、好ましくは20〜80重量%となるようにするのがよい。前者のコバルト量(Co1)が10重量%未満となつても、また85重量%を超えても、高温保存下で放電容量が低下して、回復率の改良効果に乏しいものとなる。また、上記のコバルト酸化物と金属コバルトとの合計量としては、活物質である水酸化ニツケル粉末に対して、コバルト換算で通常5〜20重量%の範囲とするのが望ましい。
【0033】
本発明において、前記水酸化ニツケル粉末を活物質として含むペ―スト中に、導電助剤として、金属コバルトまたはコバルト酸化物のいずれかひとつを添加する場合は、既述のとおり、圧縮成形後にアルカリ水溶液中に浸漬する工程を付加するが、この浸漬処理は、常法に準じて行うことができ、その条件は、導電助剤の種類や必要とする性能に応じて、適宜設定できる。
【0034】
導電助剤が、上記した金属コバルトと特定のコバルト酸化物とからなる場合、アルカリ水溶液中の浸漬処理の条件が高温保存下での放電容量の回復率に大きく影響する。温度が低すぎたり、時間が短すぎると、金属コバルトやコバルト酸化物の溶解,析出が十分に起こりにくいため、また温度が高すぎたり、時間が長くなりすぎると、活物質の脱落が生じやすくなるため、いずれも高い回復率が得られない。アルカリ水溶液の温度を35〜87℃、好ましくは40〜83℃とし、この水溶液への浸漬時間を0.2〜2.4時間、好ましくは0.25〜2.2時間としたとき、上記回復率にとくに好結果が得られる。
【0035】
このように作製される正極に対して、水素吸蔵合金よりなる負極を使用し、この正負両極とさらにこれらを分離するナイロン不織布などのセパレ―タを電池缶内に装填するとともに、電解液として水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水溶液にLiOHなどの電解質を溶解させたアルカリ水溶液を注入することにより、本発明の水素化物二次電池が得られる。
【0036】
負極に用いる水素吸蔵合金としては、Mm(La,Ce,Nd,Pr)−Ni系、Ti−Ni系、Ti−NiZr(Ti2-x Zrx V4-y Niy )1-z Crz 系(x=0〜1.5、y=0.6〜3.5、z=0.2以下)、Ti−Mn系、Zr−Mn系などの各種合金が挙げられる。これらの水素吸蔵合金は、通常は、カルボキシメチルロ─ス、ポリテトラフルオロエチレンなどのバインダと混練してペ─ストとされ、これをニツケル発泡体基材などに担持させ、乾燥したのち、圧縮成形することにより、シ―ト状に成形される。
【0037】
【実施例】
つぎに、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。以下、部とあるのは重量部を意味する。また、以下の実施例で用いたタイプA,Bの水酸化ニツケル粉末は下記の合成例1,2により、また以下の実施例で用いたタイプCのコバルト酸化物は、下記の合成例3により、それぞれ得たものである。
【0038】
<合成例1>
硫酸ニツケル50重量%の水溶液10Kgと、コバルト2g、亜鉛4gをそれぞれ溶解させた硫酸溶液5Kgを混合し、この混合溶液を10〜15℃に保持し、撹拌しながら水酸化ナトリウム500gを加えて、pH11〜12になるように調整した。得られた水酸化ニツケルの沈澱物を吸引ろ過し、90〜95℃で乾燥したのち、粉砕して、粒度が2〜40μmになるように調製した。この粉末を水洗し、90〜95℃で乾燥して、コバルトと亜鉛が水酸化ニツケルの内部に均一に固溶した水酸化ニツケル粉末(タイプA)を得た。
【0039】
このタイプAの水酸化ニツケル粉末は、ICP法(発光分光分析法、日本ジヤ─レル・アツシユICP727、シングルモ─ド)による測定で、コバルト含有量が1重量%、亜鉛含有量が2重量%であつた。この水酸化ニツケル粉末について、SEM(倍率1,000倍)により観察した結果は、図1に示されるとおりであり、平均粒径以上の粒子が球状でかつ平均粒径以下の粒子の95重量%以上も球状であつた。
【0040】
また、マイクロトラツプ法により粒度分布を調べた結果は、図4に示されるとおりであり、粒度が2〜40μm、平均粒径が9.2μmであつた。さらに、BET吸着法により細孔半径を測定した結果は、図7の曲線−7aに示されるとおりであり、7〜8Åのピ─クのほかに、5〜6Åにもピ─クを有し、7〜8Åのピ─クの強度(la)と5〜6Åのピ─クの強度(lb)の比(la:lb)は100:83であつた。また、BET吸着法による比表面積は5m2/g、細孔容積は0.015cc/g、平均細孔半径は25Åであつた。
【0041】
<合成例2>
コバルトを2g、亜鉛を10gとした以外は、合成例1と同様にして、水酸化ニツケル粉末(タイプB)を得た。ICP法による測定で、コバルト含有量は1重量%、亜鉛含有量は5重量%であつた。この水酸化ニツケル粉末について、SEM(倍率1,000倍)により観察した結果は、図2に示されるとおりであり、平均粒径以上の粒子が球状でかつ平均粒径以下の粒子の95重量%以上も球状であつた。
【0042】
また、マイクロトラツプ法により粒度分布を調べた結果は、図5に示されるとおりであり、粒度が2〜40μm、平均粒径が7.2μmであつた。さらに、BET吸着法により細孔半径を測定した結果は、図7の曲線−7bに示されるとおりであり、7〜8Åのピ─クのほかに、5〜6Åにもピ─クを有し、7〜8Åのピ─クの強度(la)と5〜6Åのピ─クの強度(lb)の比(la:lb)は100:70であつた。また、BET吸着法による比表面積は20m2/g、細孔容積は0.030cc/g、平均細孔半径は50Åであつた。
【0043】
<合成例3>
コバルト炭酸塩(純度90重量%)を、アルゴン雰囲気中300℃で2時間焼成したのち、塩化水素ガスを含むアルゴン雰囲気中950℃で10時間加熱し、さらに真空中700℃で2時間加熱処理して、コバルト酸化物(タイプC)を得た。この酸化物について、不活性ガス融解−赤外線吸着法(昇温速度6℃/秒、3,000℃まで)により、コバルトと酸素の原子比を測定したところ、Co:Oの原子比は1:0.95であつた。また、このコバルト酸化物はSEM観察で非常に微粒子であることが確認された。さらに、BET吸着法による比表面積は16m2/g、BET吸着法による細孔容積は0.022cc/g、平均細孔半径は28.8Åであつた。
【0044】
実施例1
市販のMm(La、Ce、Nd、Pr)、Ni、Co、Mn、AlおよびMo(いずれも純度99.9重量%以上)の各試料を、Mm(La:0.32原子%、Ce:0.48原子%、Nd:0.15原子%、Pr:0.04原子%)、Ni:3.55原子%、Co:0.75原子%、Mn:0.4原子%、Al:0.3原子%、Mo:0.04原子%の組成になるように、高周波溶解炉によつて加熱溶解し、水素吸蔵合金を得た。この合金を耐圧容器中で10-4Torrまで真空引きを行い、アルゴンガスで3回パ─ジを行つたのち、水素圧力14Kg/cm2 で24時間保持し、水素を排気し、さらに400℃で加熱し、水素を完全に放出することにより、20〜100μmの粉末を得た。
【0045】
この合金粉末100部に、3重量%のカルボキシメチルセルロ─ス水溶液50部、60重量%のポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)分散剤溶液5部、カルボニルニツケル粉末10部を混合し、ペ─ストを調製した。このペ─ストをニツケル発泡体基材に充填担持させ、乾燥後、圧縮成形した。その後、所定サイズに裁断して、負極シ─トとした。
【0046】
これとは別に、タイプAの水酸化ニツケル粉末100部に、ニツケル粉末10部、コバルト粉末10部、2重量%のカルボキシメチルセルロ─ス水溶液5部、60重量%のPTFE分散剤溶液5部を混合し、ペ─ストとした。このペ─ストをニツケル発泡体基材に充填担持させ、80℃で2時間乾燥後、1トン/cm2 で圧縮成形して、シ─ト状とした。これを80℃のアルカリ水溶液に2時間浸漬したのち、80℃の温水で2時間水洗し、さらに80℃で1時間乾燥後、圧縮成形し、所定サイズに裁断して、正極シ─トとした。
【0047】
上記の負極シ―トと正極シ─トをナイロン不織布製のセパレ─タを介して捲回し、単3サイズの電極缶に入れ、これに電解液(30重量%水酸化カリウム水溶液1リツトルにLiOHを17g溶解させたアルカリ水溶液)を注入した。樹脂製封口体に正極タブをスポツト溶接し、負極の最外周部分は缶の側面に接触させたのち、密封した。これを60℃で17時間保存し、0.1C(120mA)で15時間充電し、0.2C(220mA)で1.0Vまで放電した。このサイクルを放電容量が一定になるまで繰り返し、水素化物二次電池を作製した。
【0048】
実施例2
正極の水酸化ニツケル粉末として、タイプBの水酸化ニツケル粉末を用いた以外は、実施例1と同様にして、水素化物二次電池を作製した。
【0049】
比較例1
正極の水酸化ニツケル粉末として、市販の水酸化ニツケル粉末を用いるとともに、正極シ―トの作製時にアルカリ水溶液への浸漬処理を行わなかつた以外は、実施例1と同様にして、水素化物二次電池を作製した。
【0050】
なお、用いた市販の水酸化ニツケル粉末について、SEM(倍率1,000倍)により観察した結果は、図3に示されるとおりであり、平均粒径以上の粒子は球状であつたが、平均粒径以下の粒子はダンゴ状でいびつな形状であつた。また、マイクロトラツプ法により粒度分布を調べた結果は、図6に示されるとおりであり、粒度が0.4〜96μm、平均粒径が12μmで、粒度分布幅の広いものであつた。さらに、BET吸着法により細孔半径を測定した結果は、図7の曲線−7cに示されるとおりであり、7〜8Åにピ─クがみられたが、5〜6Åにピ─クはみられなかつた。また、BET吸着法による比表面積は20m2/g、細孔容積は0.030cc/g、平均細孔半径は35Åであつた。
【0051】
上記の実施例1,2および比較例1の各水素化物二次電池について、正極の利用率、充電容量および電池容量を調べた。結果を表1に示した。なお、正極の利用率は、電池作製後、60℃で17時間保存したのち、0.1C(120mA)で15時間充電し、0.2C(220mA)で1.0Vまで放電する充放電サイクルを繰り返し、放電容量が一定になるまでこれを繰り返したのちの正極活物質に対する容量を、利用率としたものである。
【0052】
表1
【0053】
また、上記の実施例1,2および比較例1の各水素化物二次電池について、サイクル特性(1C×1.2時間充電−1C放電を繰り返し、電池電圧が1.0Vに低下するまでのサイクル数)を調べ、その結果を図8に示した。なお、図8中、曲線−8aは実施例1の水素化物二次電池、曲線−8bは実施例2の水素化物二次電池、曲線−8cは比較例1の水素化物二次電池である。
【0054】
上記の結果から、本発明の実施例1,2の水素化物二次電池は、表1に示すように、正極利用率が、従来の水酸化ニツケル粉末を用いた比較例1の水素化物二次電池に比べて、10%程度高く、電池容量が高くなつており、また、図8に示すように、サイクル特性も改善されていることがわかる。
【0055】
実施例3
タイプAの水酸化ニツケル粉末100部に、ニツケル粉末10部、タイプCのコバルト酸化物10部(コバルト換算)、2重量%のカルボキシメチルセルロ─ス水溶液5部、60重量%のPTFE分散剤溶液5部を混合し、ペ─ストとした。これをニツケル発泡体基材に充填担持させ、80℃で2時間乾燥後、1トン/cm2 で圧縮成形して、シ─ト状とした。これを80℃のアルカリ水溶液に2時間浸漬処理したのち、80℃の温水で2時間水洗し、さらに80℃で1時間乾燥後、圧縮成形し、所定サイズに裁断して、正極シ─トとした。この正極シ─トと、実施例1で作製した負極シ―トとを組み合わせ、実施例1と同様にして、水素化物二次電池を作製した。
【0056】
実施例4
正極の水酸化ニツケル粉末として、タイプAの水酸化ニツケル粉末に代えて、タイプBの水酸化ニツケル粉末を用いた以外は、実施例3と同様にして、水素化物二次電池を作製した。
【0057】
比較例2
正極の水酸化ニツケル粉末として、タイプAの水酸化ニツケル粉末に代えて、市販の水酸化ニツケル粉末を用いるとともに、正極の導電助剤として、タイプCのコバルト酸化物に代えて、市販の酸化コバルト(CoO)を用い、正極シ―トの作製時にアルカリ水溶液への浸漬処理を行わなかつた以外は、実施例3と同様にして、水素化物二次電池を作製した。
【0058】
なお、用いた市販の酸化コバルト(CoO)について、不活性ガス融解−赤外線吸着法によりコバルトと酸素の原子比を測定したところ、Co:Oの原子比はほぼ1:1であつた。また、この酸化コバルトはSEM観察でタイプCのコバルト酸化物に比べて大きな粒子を有し、全体に不均一であることが確認された。さらに、BET吸着法による比表面積は5m2/g、BET吸着法による細孔容積は0.01cc/g、平均細孔半径は10Åであつた。
【0059】
上記の実施例3,4および比較例2の各水素化物二次電池について、正極の利用率、充電容量および電池容量を、前記同様に調べた。結果を表2に示した。
【0060】
表2
【0061】
また、上記の実施例3,4および比較例2の各水素化物二次電池について、60℃で40日間放置したのち、サイクル特性(1C×1.2時間充電−1C放電を繰り返し、電池電圧が1.0Vに低下するまでのサイクル数)を調べ、その結果を図9に示した。なお、図9中、曲線−9aは実施例3の水素化物二次電池の結果、曲線−9bは実施例4の水素化物二次電池の結果、曲線−9cは比較例2の水素化物二次電池の結果である。
【0062】
上記の結果から、本発明の実施例3,4の水素化物二次電池は、表2に示すように、正極利用率が、従来の水酸化ニツケル粉末および酸化コバルトを用いた比較例2の水素化物二次電池に比べて、10%以上も高く、電池容量がかなり高くなつているとともに、図9に示すように、高温貯蔵後においてもすぐれたサイクル特性を示すものであることがわかる。
【0063】
実施例5
タイプAの水酸化ニツケル粉末100部に、ニツケル粉末10部、表3に記載の金属コバルトとタイプCのコバルト酸化物の混合物10部(コバルト換算)、2重量%のカルボキシメチルセルロ─ス水溶液5部、60重量%のPTFE分散剤溶液5部を混合し、ペ─スト状の正極合剤を調製した。これをニツケル発泡体基材に充填担持させ、80℃で2時間乾燥後、1トン/cm2 で圧縮成形して、シ─ト状とした。これを80℃のアルカリ水溶液に2時間浸漬処理したのち、80℃の温水で2時間水洗し、さらに80℃で1時間乾燥後、圧縮成形し、所定サイズに裁断して、正極シ─トとした。これと実施例1で作製した負極シ―トとを組み合わせ、実施例1と同様にして、水素化物二次電池を作製した。
【0064】
表3
【0065】
実施例6
正極の水酸化ニツケル粉末として、タイプAの水酸化ニツケル粉末に代えて、タイプBの水酸化ニツケル粉末を用いた以外は、実施例5と同様にして、水素化物二次電池を作製した。
【0066】
比較例3
正極の水酸化ニツケル粉末として、タイプAの水酸化ニツケル粉末に代えて、比較例1と同じ市販の水酸化ニツケル粉末を用い、また正極の導電助剤として、タイプCのコバルト酸化物に代えて、市販のコバルト酸化物(コバルトと酸素の原子比が1:0.85)を用いるとともに、金属コバルトと上記コバルト酸化物(金属コバルト換算)の混合比(重量比)を50:50とした以外は、実施例5と同様にして、水素化物二次電池を作製した。
【0067】
上記の実施例5,6の各水素化物二次電池について、正極の利用率を前記同様に調べた。この結果を図10に示した。図10中、曲線−10aは実施例5の水素化物二次電池の結果、曲線−10bは実施例6の水素化物二次電池の結果である。なお、比較例3の水素化物二次電池について同様に調べたところ、利用率は90%であつた。この図10から明らかなように、本発明の実施例5,6の水素化物二次電池は、高い正極利用率が得られていることがわかる。
【0068】
つぎに、実施例5の水素化物二次電池につき、保存特性(放電容量の回復率)を下記の方法で調べた。この結果を図11に示した。なお、実施例6および比較例3の水素化物二次電池について、上記同様に保存特性を調べたが、実施例6は実施例5とほぼ同じであり、比較例3は回復率が80%であつた。
【0069】
<保存特性(放電容量の回復率)の測定>
放電済みの水素化物二次電池を60℃,40日間保存し、その後1C(1.2A)で1.2時間充電し、1C(1.2A)で1.0Vまで放電する充放電サイクルを行い、初期の放電容量に対する100サイクル目の放電容量を測定した。放電容量の回復率は、高温保存後の100サイクル目の放電容量(H1)の高温保存を行わなかつた電池の100サイクル目の放電容量(H0)に対する比率、つまり(H1/H0)×100(%)として、求めた。
【0070】
図11から明らかなように、本発明の実施例5の水素化物二次電池は、金属コバルトとコバルト酸化物とを、金属コバルトのコバルト量(Co1)とコバルト酸化物のコバルト量(Co2)との合計量中、前者のコバルト量(Co1)が10〜87重量%となるように混合したとき、約90%以上の高い回復率が得られ、とくに60重量%前後では99%もの回復率が得られている。これに対し、コバルト量(Co1)が10重量%未満および87重量%を超えると、回復率の顕著な向上効果がみられず、100重量%(金属コバルト単独)または0重量%(コバルト酸化物単独)では、86%程度の回復率しか得られない。
【0071】
実施例7
正極シ─トの作製に際し、金属コバルトとタイプCのコバルト酸化物(コバルト換算量)との混合比(重量比)を60:40とし、かつアルカリ水溶液への浸漬温度を30〜90℃(浸漬時間は2時間)に変更した以外は、実施例5と同様にして、正極シ─トを作製した。この正極シ─トを用いて、実施例5と同様にして、水素化物二次電池を作製した。
【0072】
この電池について、前記と同様に保存特性を調べた。結果を図12に示す。この図から、浸漬温度が35〜87℃では90%以上の回復率が得られ、80℃で99%もの回復率を示した。一方、30℃の低温では回復率が85%程度となるが、これは金属コバルトやコバルト酸化物の溶解,析出が十分に起こらないためと思われ、また90℃の高温でも87%程度の低い回復率となるが、これはアルカリ水溶液の温度が高すぎ、活物質の脱落が生じるためと思われる。
【0073】
実施例8
正極シ─トの作製に際し、金属コバルトとタイプCのコバルト酸化物(コバルト換算量)との混合比(重量比)を60:40とし、かつアルカリ水溶液への浸漬時間を0〜2.5時間(浸漬温度は80℃)に変更した以外は、実施例5と同様にして、正極シ─トを作製した。この正極シ─トを用いて、実施例5と同様にして、水素化物二次電池を作製した。
【0074】
この電池について、前記と同様に保存特性を調べた。結果を図13に示す。この図から、浸漬時間が0.2〜2.4時間では90%以上の回復率が得られ、2時間の浸漬処理で99%もの回復率を示した。これに対し、0.1時間以下では回復率が70%以下と低くなるが、これは低温の場合と同様に金属コバルトやコバルト酸化物の溶解,析出が十分に起こらないためと思われる。また、浸漬時間が2.5時間になると回復率が大分低下してくるが、これは長時間の浸漬処理により活物質の脱落が生じるためと思われる。
【0075】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、水酸化ニツケル粉末として特定性状のものを用いたことにより、ニツケル正極の利用率が向上し、サイクル特性の改善された高容量の水素化物二次電池を提供できる。また、上記の水酸化ニツケル粉末に対して、導電助剤として特定のコバルト酸化物を用いたことにより、高温時の貯蔵特性を改善することができ、さらに上記導電助剤として金属コバルトと特定のコバルト酸化物を併用したことにより、高温保存後でも保存前の放電容量をほぼ維持できる、回復率の大きい水素化物二次電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1,3,5,7,8で用いたタイプAの水酸化ニツケル粉末の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡(倍率1,000倍)写真である。
【図2】実施例2,4,6で用いたタイプBの水酸化ニツケル粉末の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡(倍率1,000倍)写真である。
【図3】比較例1〜3で用いた市販の水酸化ニツケル粉末の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡(倍率1,000倍)写真である。
【図4】上記タイプAの水酸化ニツケル粉末の粒度分布図である。
【図5】上記タイプBの水酸化ニツケル粉末の粒度分布図である。
【図6】上記市販の水酸化ニツケル粉末の粒度分布図である。
【図7】上記タイプA,Bの水酸化ニツケル粉末と上記市販の水酸化ニツケル粉末の細孔半径を示す特性図である。
【図8】実施例1,2の水素化物二次電池と比較例1の水素化物二次電池のサイクル特性を示す特性図である。
【図9】実施例3,4の水素化物二次電池と比較例2の水素化物二次電池の高温貯蔵後のサイクル特性を示す特性図である。
【図10】実施例5,6の水素化物二次電池の正極の利用率を示す特性図である。
【図11】実施例5の水素化物二次電池の放電容量の回復率を示す特性図である。
【図12】実施例7の水素化物二次電池の放電容量の回復率を示す特性図である。
【図13】実施例8の水素化物二次電池の放電容量の回復率を示す特性図である。
【符号の説明】
7a タイプAの水酸化ニツケル粉末
7b タイプBの水酸化ニツケル粉末
7c 市販の水酸化ニツケル粉末
8a 実施例1の水素化物二次電池
8b 実施例2の水素化物二次電池
8c 比較例1の水素化物二次電池
9a 実施例3の水素化物二次電池
9b 実施例4の水素化物二次電池
9c 比較例2の水素化物二次電池
10a 実施例5の水素化物二次電池
10b 実施例6の水素化物二次電池
Claims (7)
- 水酸化ニツケルを活物質とする正極と水素吸蔵合金よりなる負極とアルカリ水溶液よりなる電解液とセパレータを有する水素化物二次電池において、上記の水酸化ニツケルは、コバルトおよび亜鉛を固溶しており、粒度が2〜40μm、平均粒径が8±2μmの粉末で、この粉末は平均粒径以上の粒子が球状でかつ平均粒径以下の粒子の95重量%以上も球状であり、BET吸着法による比表面積が5〜20 m 2 /g、細孔容積が0.015〜0.030 cc /g、平均細孔半径が25〜50Åであることを特徴とする水素化物二次電池。
- 水酸化ニツケル粉末は、細孔半径が少なくとも7〜8Åのピークと5〜6Åのピークを有するとともに、7〜8Åのピークの強度(la)と5〜6Åのピークの強度(lb)との比(la:lb)が100:50以上である請求項1に記載の水素化物二次電池。
- 正極中に、導電助剤として、金属コバルトまたはコバルト酸化物のいずれかひとつを含ませてなる請求項1に記載の水素化物二次電池。
- 導電助剤は、コバルトと酸素の原子比が1:0.90〜1:0.99のコバルト酸化物である請求項3に記載の水素化物二次電池。
- 導電助剤は、金属コバルトおよびコバルトと酸素の原子比が1:0.90〜1:0.99のコバルト酸化物の混合物からなり、かつ金属コバルトのコバルト量(Co1)とコバルト酸化物のコバルト量(Co2)との合計量中、前者のコバルト量(Co1)が10〜85重量%である請求項3に記載の水素化物二次電池。
- コバルトと酸素の原子比が1:0.90〜1:0.99のコバルト酸化物は、BET吸着法による比表面積が10〜20m2/g、細孔容積が0.015〜0.030cc/g、平均細孔半径が20〜40Åの粉末である請求項4または5に記載の水素化物二次電池。
- 水素化ニッケルを活物質とする正極と水素吸蔵合金よりなる負極とアルカリ水溶液よりなる電解液とセパレータを有する水素化物二次電池の製造方法において、上記の水酸化ニツケルとして、コバルトおよび亜鉛を固溶しており、粒度が2〜40μm、平均粒径が8±2μmであって、平均粒径以上の粒子が球状でかつ平均粒径以下の粒子の95重量%以上も球状であり、BET吸着法による比表面積が5〜20 m 2 /g、細孔容積が0.015〜0.030 cc /g、平均細孔半径が25〜50Åである粉末を使用し、この水酸化ニツケル粉末を含むペースト中に、導電助剤として、金属コバルトおよびコバルトと酸素の原子比が1:0.90〜1:0.99のコバルト酸化物の混合物からなり、かつ金属コバルトのコバルト量(Co1)とコバルト酸化物のコバルト量(Co2)との合計量中、前者のコバルト量(Co1)が10〜85重量%であるものを添加し、このペーストを導電性多孔基材に担持させ、乾燥したのち、圧縮成形し、この圧縮成形後にアルカリ水溶液中に浸漬する工程を付加し、かつこのアルカリ水溶液中の浸漬処理を、35〜87℃のアルカリ水溶液中に0.2〜2.4時間浸漬処理して行うことにより、正極を作製することを特徴とする水素化物二次電池の製造方法。
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