JP4436574B2 - アルカリ蓄電池用ニッケル極及びアルカリ蓄電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ニッケル−水素蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池等のアルカリ蓄電池及びこのようなアルカリ蓄電池の正極に使用するアルカリ蓄電池用ニッケル極に係り、特に、水酸化ニッケルからなる活物質粒子を含むペーストを導電性芯体に塗布し、これを乾燥させたアルカリ蓄電池用ニッケル極を改善して、高温環境下におけるアルカリ蓄電池の充放電サイクル特性を向上させた点に特徴を有するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ニッケル−水素蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池に代表されるアルカリ蓄電池においては、その正極として、一般に水酸化ニッケルを活物質に用いたアルカリ蓄電池用ニッケル極が使用されていた。
【0003】
ここで、このようなアルカリ蓄電池用ニッケル極においては、活物質として使用する水酸化ニッケルの導電性が低いため、一般に、芯金となる穿孔鋼鈑等にニッケル粉末を充填させて焼結させた焼結基板に、活物質である水酸化ニッケルを含浸させた焼結式のニッケル極が用いられていた。
【0004】
しかし、このような焼結式のニッケル極の場合、ニッケル粉末における粒子間の結合が弱く、基板における多孔度を高くすると、ニッケル粉末が脱落しやすくなるため、実用上、基板の多孔度を80%程度とするのが限界で、活物質の水酸化ニッケルを多く充填させることができず、容量の大きなアルカリ蓄電池を得ることが困難であった。
【0005】
また、上記の焼結式ニッケル極の場合、穿孔鋼板等の芯金を使用するため、一般に活物質の充填密度が小さく、さらに、焼結により形成されたニッケル粉末の細孔は10μm以下と小さいため、活物質を充填させるにあたっては、煩雑な工程を数サイクルも繰り返す溶液含浸法を用いなければならず、その生産性が悪い等の問題というもあった。
【0006】
このため、水酸化ニッケルからなる活物質粒子にメチルセルロース等の結合剤の水溶液を加えて混練させたペーストを、発泡ニッケル等の多孔度の大きい導電性芯体に塗布し、これを乾燥させたペースト式のアルカリ蓄電池用ニッケル極が用いられるようになった。
【0007】
ここで、このようなペースト式のアルカリ蓄電池用ニッケル極の場合、多孔度が95%以上の導電性芯体を用いることができ、導電性芯体に多くの活物質を充填させて、容量の大きなアルカリ蓄電池を得ることができると共に、導電性芯体に対して活物質を簡単に充填させることができ、生産性も向上した。
【0008】
しかし、このようなペースト式のアルカリ蓄電池用ニッケル極において、導電性芯体に多くの活物質を充填させるために、多孔度の大きい導電性芯体を用いると、この導電性芯体における集電性が悪くなって、活物質の利用率が低下するという問題があった。
【0009】
このため、近年においては、このようなペースト式のアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記の水酸化ニッケルからなる活物質粒子に、導電剤として、金属コバルト、コバルトの酸化物や水酸化物からなるコバルト化合物を添加し、充電により上記の金属コバルトやコバルト化合物をオキシ水酸化コバルトβ−CoOOHに酸化させ、これにより電極内における導電性を高めて、活物質の利用率を向上させることが行われるようになった。
【0010】
しかし、このように水酸化ニッケルからなる活物質粒子に、導電剤として金属コバルトやコバルト化合物を添加させた場合においても、このペースト式のアルカリ蓄電池用ニッケル極をアルカリ蓄電池の正極に用い、高温環境下において充放電を行うと、放電時における放電深度が深くなり、前記のように金属コバルトやコバルト化合物が酸化されたオキシ水酸化コバルトが水酸化コバルトに還元され、このように還元された水酸化コバルトがアルカリ蓄電池におけるアルカリ電解液中にHCoO2 -として溶解された後、これが活物質粒子の表面に析出するようになった。
【0011】
ここで、上記のように水酸化コバルトがアルカリ電解液中に溶解して析出する場合、その速度が早いため、上記のように高温環境下において充放電を何度も繰り返して行うと、水酸化コバルトが水酸化ニッケルからなる活物質粒子の表面に均一に析出されなくなって、水酸化コバルトが活物質粒子の表面において偏析すると共に、水酸化コバルトの一部が活物質粒子の細孔内に拡散し、これによりアルカリ蓄電池用ニッケル極における導電性が次第に低下し、高温環境下における充放電サイクル特性が悪くなるという問題があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、水酸化ニッケルからなる活物質粒子を含むペーストを導電性芯体に塗布し、これを乾燥させたアルカリ蓄電池用ニッケル極及びこのアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いたアルカリ蓄電池における上記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0013】
すなわち、この発明においては、上記のようなアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いたアルカリ蓄電池を、高温環境下において充放電させた場合において、このアルカリ蓄電池の放電容量が低下するのを抑制し、高温環境下における充放電サイクル特性を向上させることを課題とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明におけるアルカリ蓄電池用ニッケル極においては、上記のような課題を解決するため、水酸化ニッケルからなる活物質粒子を含むペーストを導電性芯体に塗布し、これを乾燥させたアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記の活物質粒子の表面に、ナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電剤を添加させると共にタンタル又はその化合物の粉末を添加させるようにしたのである。
【0015】
そして、この発明におけるアルカリ蓄電池用ニッケル極のように、水酸化ニッケルからなる活物質粒子の表面に、ナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電剤を添加させると、この導電剤により電極内における集電性が高くなり、活物質の利用率が向上する。
【0016】
また、この発明におけるアルカリ蓄電池用ニッケル極のように、水酸化ニッケルからなる活物質粒子の表面ナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電剤を添加又は被覆させると共に、タンタル又はその化合物の粉末を添加させると、このアルカリ蓄電池用ニッケル極をアルカリ蓄電池の正極に用い、このアルカリ蓄電池を高温環境下において充放電させた場合において、放電時に上記のコバルト又はその化合物からなる導電剤が水酸化コバルトに還元されたとしても、この水酸化コバルトがアルカリ電解液中に溶解して析出する速度が遅くなり、水酸化コバルトが活物質粒子の表面において偏析するのが防止されると共に、水酸化コバルトの一部が活物質粒子の細孔内に拡散するのも抑制され、高温環境下における充放電サイクル特性が向上する。
【0017】
ここで、この発明におけるアルカリ蓄電池用ニッケル極において、水酸化ニッケルから活物質粒子の表面に添加又は被覆させる導電剤としては、ナトリウム含有コバルト酸化物を用いる必要がある。またこのような導電剤により電極内における集電性を高めるためには、このような導電剤を水酸化ニッケルからなる活物質粒子の表面に単に添加させるよりも、活物質粒子の表面を被覆するように導電剤の層を設けるようにすることが好ましい。
【0018】
そして、上記の導電剤として、ナトリウム含有コバルト酸化物を用いると、このナトリウム含有コバルト酸化物が金属コバルトや他のコバルト化合物に比べて導電性が高いため、水酸化ニッケルからなる活物質の利用率がさらに向上すると共に、高温での放電時に、このナトリウム含有コバルト酸化物が水酸化コバルトに還元されてアルカリ電解液中に溶解することが少なくなり、高温環境下における充放電サイクル特性がさらに向上する。なお、このナトリウム含有コバルト酸化物の化学的構造は定かではないが、極めて高い電気伝導性を有することから、コバルト酸化物とナトリウムとの単なる混合物ではなく、コバルト酸化物の結晶中にナトリウムが挿入された構造になった層間化合物であると考えられる。
【0019】
ここで、水酸化ニッケルからなる活物質粒子の表面に、上記のような導電剤の層を設けるにあたっては、水酸化ニッケル粉末に対して、金属コバルト粉末や水酸化コバルト粉末や一酸化コバルト粉末を加え、これを不活性ガス雰囲気中において、圧縮磨砕粉砕機により乾式混合するメカニカルチャージ法によって形成することができる。
【0020】
また、水酸化ニッケルからなる活物質粒子の表面に水酸化コバルトの層を形成するにあたっては、硫酸コバルト等のコバルト塩水溶液に水酸化ニッケル粉末を添加し、これを撹拌しながら水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を滴下してpHを11程度にし、その後、撹拌しながら所定時間反応させて、水酸化コバルトを水酸化ニッケル粒子の表面に析出させることにより形成することもできる。
【0021】
また、水酸化ニッケルからなる活物質粒子の表面にオキシ水酸化コバルトの層を形成するにあたっては、例えば、上記のようにして水酸化ニッケルからなる活物質粒子の表面に水酸化コバルト層を形成した後、これを40℃程度に加熱した過酸化水素水と反応させて、水酸化コバルトを酸化させることにより形成することができる。
【0022】
また、水酸化ニッケルからなる活物質粒子の表面にナトリウム含有コバルト酸化物の層を形成するにあたっては、例えば、活物質粒子の表面に金属コバルト層や水酸化コバルト層や一酸化コバルト層やオキシ水酸化コバルト層を形成し、その後、これに水酸化ナトリウム水溶液を添加し、酸素存在下において50〜200℃の温度で加熱処理することによって形成することができる。
【0023】
ここで、上記のように加熱処理する温度を50〜200℃にするのは、加熱処理する温度が50℃未満の場合には、電気伝導性の低いCoHO2 が析出する一方、加熱処理する温度が200℃を超えた場合には、電気伝導性の低い四酸化三コバルトCo3 O4 が析出し、何れの場合にも導電性の高い導電層が得られなくなるためである。なお、活物質粒子の表面にオキシ水酸化コバルトの粒子を添加させたり、オキシ水酸化コバルトの層を形成した場合には、50℃未満の温度で加熱処理してもCoHO2 が析出することはないが、ナトリウムが含有されにくくなって導電性の高い導電層が得られなくなる。ここで、上記のように加熱処理する時間については特に限定されず、使用する水酸化ナトリウムの濃度や加熱処理する温度等によって適宜変更させるようにし、一般的には0.5〜10時間加熱処理させるようにする。
【0024】
また、上記のように導電剤が添加された活物質粒子の表面に、タンタル又はその化合物の粉末を添加させるにあたって、その添加量が少なくなると、高温環境下において充放電サイクル特性が低下するのを十分に抑制することができなくなる一方、その添加量が多くなり過ぎると、アルカリ蓄電池用ニッケル極中における水酸化ニッケルの割合が少なくなって放電容量が減少する。このため、水酸化ニッケルからなる活物質粒子の表面に上記の導電層が形成された全体の重量に対して、添加させたタンタル又はその化合物の粉末中におけるタンタル元素の量が0.2〜4.0重量%の範囲になるようにすることが好ましい。なお、上記のタンタルの化合物としては、例えば、Ta2 O5 やTa2 O5 ・nH2 O等を用いることができる。
【0025】
また、上記のタンタルやその化合物の粉末の粒径が大きくなると、導電層が形成された活物質粒子の表面に対して接触するタンタルやその化合物の粉末の面積が少なくなって、十分な効果が得られなくたるため、タンタルやその化合物の粉末として、平均粒径が100μm以下のものを用いることが好ましい。
【0026】
さらに、この発明におけるアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記の水酸化ニッケルからなる活物質粒子中に、亜鉛,コバルト,カルシウム,マグネシウム,アルミニウム,マンガン,イットリウム及びイッテルビウムよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を固溶させ、上記の水酸化ニッケルにおけるニッケルとこの元素との総量に対するこの元素の割合を10原子%以下にすると、固溶させた元素の作用により、アルカリ電解液中におけるカリウムイオン等が活物質である水酸化ニッケルの結晶中にインターカレーションされるのが抑制され、アルカリ電解液のドライアウトによる充放電容量の低下が抑制されるようになる。
【0027】
また、この発明におけるアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記のようにナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された活物質粒子の表面に対して、タンタルやタンタル化合物の粉末の他に、イットリウム,イッテルビウム,カルシウム,アルミニウム,エルビウム,ガドリニウム,ツリウム,ルテチウム,亜鉛,ニオブ及びタングステンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素又はその化合物の粉末を添加させると、高温環境下における充放電サイクル特性がより一層向上されるようになる。
【0028】
また、この発明におけるアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記のような活物質粒子を含むペーストを塗布させる導電性芯体としては、例えば、ニッケル発泡体、フェルト状金属繊維体、パンチングメタル等を用いることができる。
【0029】
また、上記のようなアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用したアルカリ蓄電池としては、負極に水素吸蔵合金電極を用いたニッケル−水素蓄電池、負極にカドミウム電極を用いたニッケル−カドミウム蓄電池、負極に亜鉛電極を用いたニッケルー亜鉛蓄電池等が挙げられる。
【0030】
【実施例】
以下、この発明に係るアルカリ蓄電池用ニッケル極及びこのアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いたアルカリ蓄電池について実施例を挙げて具体的に説明すると共に、この実施例におけるアルカリ蓄電池においては、高温での充放電サイクル特性が向上することを比較例を挙げて明らかにする。なお、この発明におけるアルカリ蓄電池用ニッケル極及びアルカリ蓄電池は、下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0031】
(実施例1)
実施例1においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、26.25gの硫酸コバルトを溶解させた1リットルの硫酸コバルト水溶液に、活物質である水酸化ニッケルの粉末を100g加え、これを撹拌しながら10重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えて、この溶液のpHを11に調整しながら1時間撹拌を続けた後、沈殿物を濾取し、この沈殿物を水洗した後、真空乾燥させて、活物質である水酸化ニッケル粒子の表面に水酸化コバルトの層が形成された粉末を得た。
【0032】
次いで、水酸化ニッケル粒子の表面に水酸化コバルトの層が形成された粉末と、25重量%の水酸化ナトリウム水溶液とを1:10の重量比で混合し、これを90℃で5時間加熱処理した後、これを水洗し、60℃で乾燥させて、活物質である水酸化ニッケル粒子の表面にナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された粉末を得た。
【0033】
ここで、このようにして活物質である水酸化ニッケル粒子の表面にナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層を形成した場合、活物質である水酸化ニッケル粒子に対する導電層中におけるコバルト元素の量は4重量%であった。
【0034】
また、上記のナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層中におけるナトリウムの量を調べるため、上記の場合とほぼ同様に、水酸化コバルト粉末と25重量%の水酸化ナトリウム水溶液とを1:10の重量比で混合し、これを90℃で5時間加熱処理した後、これを水洗し、60℃で乾燥させてナトリウム含有コバルト酸化物を作製し、このナトリウム含有コバルト酸化物について原子吸光分析によりナトリウムの量を求めたところ、ナトリウム含有コバルト酸化物中におけるナトリウム元素の量は1重量%であり、また酸化還元滴定により求めたコバルトの価数は3.1であった。
【0035】
そして、上記のようにして水酸化ニッケル粒子の表面にナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された粉末に対して、タンタル化合物である平均粒径が1μmのTa2 O5 粉末を100:2.4の重量比で混合させ、この混合物100重量部に対して、結着剤として1重量%のメチルセルロース水溶液を20重量部加え、これを混練してペーストを調製し、このペーストを導電性芯体である発泡ニッケル(多孔度95%、平均孔径200μm)に充填し、これを乾燥させ、加圧成型して、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。なお、このアルカリ蓄電池用ニッケル極においては、上記のようにナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された水酸化ニッケル粒子全体の重量に対して、Ta2 O5 粉末中におけるタンタル元素の量が2重量%になっていた。
【0036】
次に、上記のようにして作製したアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用する一方、負極に一般に用いられているペースト式カドミウム極を、セパレータにポリアミド不織布を、アルカリ電解液に30重量%の水酸化カリウム水溶液を使用し、図1に示すようなAAサイズのアルカリ蓄電池を作製した。
【0037】
ここで、アルカリ蓄電池を作製するにあたっては、図1に示すように、上記の正極1と負極2との間にセパレータ3を介在させ、これらをスパイラル状に巻いて電池缶4内に収容させた後、この電池缶4内に上記のアルカリ電解液を注液して封口し、正極1を正極リード5を介して正極蓋6に接続させると共に、負極2を負極リード7を介して電池缶4に接続させ、電池缶4と正極蓋6とを絶縁パッキン8により電気的に分離させるようにした。
【0038】
また、正極蓋6と正極外部端子9との間にコイルスプリング10を設け、電池の内圧が異常に上昇した場合には、このコイルスプリング10が圧縮されて電池内部のガスが大気中に放出されるようにした。
【0039】
(実施例2)
実施例2においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、上記の実施例1の場合と同様にして、活物質である水酸化ニッケル粒子の表面にナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された粉末を得た後、この粉末に対して平均粒径が1μmのTa粉末を100:2の重量比で混合させるようにし、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にしてアルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0040】
そして、このようにして作製したアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いる以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例2のアルカリ蓄電池を作製した。
【0041】
(実施例3)
実施例3においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、上記の実施例1の場合と同様にして、活物質である水酸化ニッケル粒子の表面にナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された粉末を得た後、この粉末に対して、平均粒径が1μmのTa2 O5 粉末と平均粒径が1μmのTa粉末とを100:1.27:1の重量比で混合させるようにし、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にしてアルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。なお、このアルカリ蓄電池用ニッケル極においても、ナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された水酸化ニッケル粒子全体の重量に対するタンタル元素の量が2重量%になっていた。
【0042】
そして、このようにして作製したアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いる以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例3のアルカリ蓄電池を作製した。
【0043】
(比較例1)
比較例1においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、上記の実施例1の場合と同様にして活物質である水酸化ニッケル粒子の表面にナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された粉末を得た後、この粉末にTa2 O5 粉末を加えないようにし、この粉末100重量部に対して、結着剤として1重量%のメチルセルロース水溶液を20重量部加え、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にしてアルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0044】
そして、このようにして作製したアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いる以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例1のアルカリ蓄電池を作製した。
【0045】
次に、上記のようにして作製した実施例1〜3及び比較例1の各アルカリ蓄電池について、それぞれ25℃の温度条件下において、充電電流100mAで16時間充電した後、放電電流1000mAで1.0Vまで放電し、これを1サイクルとして3サイクルの充放電を行い、実施例1〜3及び比較例1の各アルカリ蓄電池における3サイクル目の放電容量を求めた。
【0046】
そして、上記の実施例1のアルカリ蓄電池における3サイクル目の放電容量を100とし、実施例1〜3及び比較例1の各アルカリ蓄電池における放電容量の相対指数を容量特性として下記の表1に示した。
【0047】
また、上記のように3サイクルの充放電を行った実施例1〜3及び比較例1の各アルカリ蓄電池について、それぞれ60℃の高温条件下において、充電電流500mAで2時間充電した後、放電電流500mAで1.0Vまで放電し、これを1サイクルとする充放電サイクル試験を行い、その放電容量が60℃の高温条件下における1サイクル目の放電容量の80%以下に低下するまでのサイクル数を求めた。
【0048】
そして、上記の実施例1のアルカリ蓄電池におけるサイクル数を100として、実施例1〜3及び比較例1の各アルカリ蓄電池におけるサイクル数の相対指数を充放電サイクル特性として下記の表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
この結果から明らかなように、活物質である水酸化ニッケル粒子の表面にナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層を形成すると共にタンタル又はその化合物の粉末を添加させたものを用いたアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用した実施例1〜3の各アルカリ蓄電池は、比較例1のアルカリ蓄電池に比べて、高温条件下における充放電サイクル特性が著しく向上していた。
【0051】
(実施例A1〜A6)
実施例A1〜A6においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたって、上記の実施例1の場合と同様にして、活物質である水酸化ニッケル粒子の表面にナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された粉末を得た後、このように導電層が形成された粉末に対して平均粒径が1μmのTa2 O5 粉末を混合させるにあたり、導電層が形成された上記の粉末と平均粒径が1μmのTa2 O5 粉末との重量比を、実施例A1では100:0.012、実施例A2では100:0.06、実施例A3では100:0.24、実施例A4では100:3.6、実施例A5では100:4.8、実施例A6では100:6.1にし、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、各アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0052】
ここで、上記のようにして作製した各アルカリ蓄電池用ニッケル極において、ナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された水酸化ニッケル粒子全体の重量に対するタンタル元素の量を求めた結果、下記の表2に示すように、実施例A1では0.01重量%、実施例A2では0.05重量%、実施例A3では0.2重量%、実施例A4では3重量%、実施例A5では4重量%、実施例A6では5重量%になっていた。
【0053】
そして、上記のようにして作製した各アルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用い、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例A1〜A6の各アルカリ蓄電池を作製した。
【0054】
次に、上記のようにして作製した実施例A1〜A6の各アルカリ蓄電池についても、上記の実施例1の場合と同様にして、25℃の温度条件下において充放電を繰り返して行い、3サイクル目の放電容量を求め、その後、60℃の高温条件下において充放電を繰り返して行い、放電容量が60℃の高温条件下における1サイクル目の放電容量の80%以下に低下するまでのサイクル数を求めた。
【0055】
そして、上記の実施例1のアルカリ蓄電池における3サイクル目の放電容量及びサイクル数を100とし、実施例A1〜A6の各アルカリ蓄電池における放電容量及びサイクル数の相対指数を容量特性及び充放電サイクル特性として、下記の表2に示した。
【0056】
【表2】
【0057】
この結果、ナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された水酸化ニッケル粒子全体の重量に対するタンタル元素の量が0.2〜4.0重量%の範囲になったアルカリ蓄電池用ニッケル極を用いた実施例1,A3〜A5のアルカリ蓄電池は、タンタル元素の量が0.05重量%以下になったアルカリ蓄電池用ニッケル極を用いた実施例A1,A2のアルカリ蓄電池に比べて高温条件下における充放電サイクル特性が優れており、またタンタル元素の量が5重量%になったアルカリ蓄電池用ニッケル極を用いた実施例A6のアルカリ蓄電池に比べて容量特性が優れていた。
【0058】
(実施例B1〜B6)
実施例B1〜B6においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、上記の実施例1の場合と同様にして、活物質である水酸化ニッケル粒子の表面にナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された粉末を得た後、このように導電層が形成された粉末に対してTa2 O5 粉末を100:2.4の重量比になるように混合させるにあたり、平均粒径が異なるTa2 O5 粉末を用いるようにし、下記の表3に示すように、平均粒径が、実施例B1では0.1μm、実施例B2では10μm、実施例B3では20μm、実施例B4では50μm、実施例B5では100μm、実施例B6では150μmになったTa2 O5 粉末を用い、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、各アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0059】
そして、上記のようにして作製した各アルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用い、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例B1〜B6の各アルカリ蓄電池を作製した。
【0060】
次に、上記のようにして作製した実施例B1〜B6の各アルカリ蓄電池についても、上記の実施例1の場合と同様にして、25℃の温度条件下において充放電を繰り返して行い、3サイクル目の放電容量を求め、その後、60℃の高温条件下において充放電を繰り返して行い、放電容量が60℃の高温条件下における1サイクル目の放電容量の80%以下に低下するまでのサイクル数を求めた。
【0061】
そして、上記の実施例1のアルカリ蓄電池における3サイクル目の放電容量及びサイクル数を100とし、実施例B1〜B6の各アルカリ蓄電池における放電容量及びサイクル数の相対指数を容量特性及び充放電サイクル特性として、下記の表3に示した。
【0062】
【表3】
【0063】
この結果、ナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された水酸化ニッケル粒子に対して、平均粒径が100μm以下のTa2 O5 粉末を添加させたアルカリ蓄電池用ニッケル極を用いた実施例1,B1〜B5のアルカリ蓄電池は、平均粒径が150μmのTa2 O5 粉末を添加させたアルカリ蓄電池用ニッケル極を用いた実施例B6のアルカリ蓄電池に比べて、高温条件下における充放電サイクル特性が優れていた。
【0064】
(実施例C1〜C6)
実施例C1においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、水酸化ニッケルの粉末に対してナトリウム含有コバルト酸化物の粉末を90:10の重量比で混合させたものに、平均粒径が1μmのTa2 O5 粉末を100:2.4の重量比で混合させ、この混合物100重量部に対して、結着剤として1重量%のメチルセルロース水溶液を20重量部加え、これを混練してペーストを調製し、このペーストを導電性芯体である発泡ニッケル(多孔度95%、平均孔径200μm)に充填し、これを乾燥させ、加圧成型して、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0065】
参考例C2においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、水酸化ニッケルの粉末に対して水酸化コバルトの粉末を90:10の重量比で混合させたものに、平均粒径1μmのTa2O5粉末を100:2.4の重量比で混合させ、その後は、上記の実施例C1の場合と同様にして、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0066】
参考例C3においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、水酸化ニッケルの粉末に対して一酸化コバルトの粉末を90:10の重量比で混合させたものに、平均粒径1μmのTa2O5粉末を100:2.4の重量比で混合させ、その後は、上記の実施例C1の場合と同様にして、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0067】
参考例C4においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、水酸化ニッケルの粉末に対して金属コバルトの粉末を90:10の重量比で混合させたものに、平均粒径1μmのTa2O5粉末を100:2.4の重量比で混合させ、その後は、上記の実施例C1の場合と同様にして、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0068】
参考例C5においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、40℃の水1リットルに対して100gの水酸化コバルトと40gの過酸化水素水とを加え、これを攪拌させて反応させた後、沈殿物を水洗し、乾燥させてオキシ水酸化コバルトの粉末を得た。
【0069】
そして、水酸化ニッケルの粉末に対して上記のオキシ水酸化コバルトの粉末を90:10の重量比で混合させたものに、平均粒径が1μmのTa2 O5 粉末を100:2.4の重量比で混合させ、その後は、上記の実施例C1の場合と同様にして、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0070】
参考例C6においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、上記の実施例1の場合と同様にして、活物質である水酸化ニッケル粒子の表面に水酸化コバルトの層が形成された粉末を得た後、これに対して水酸化ナトリウム水溶液による処理を行わないようにし、水酸化ニッケル粒子の表面に水酸化コバルトの層が形成された粉末と平均粒径1μmのTa2O5粉末を100:2.4の重量比で混合させ、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0071】
そして、上記のように作製した各アルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用い、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例C1、参考例C2〜C6の各アルカリ蓄電池を作製した。
【0072】
次に、上記のようにして作製した実施例C1、参考例C2〜C6の各アルカリ蓄電池についても、上記の実施例1の場合と同様にして、25℃の温度条件下において充放電を繰り返して行い、3サイクル目の放電容量を求め、その後、60℃の高温条件下において充放電を繰り返して行い、放電容量が60℃の高温条件下における1サイクル目の放電容量の80%以下に低下するまでのサイクル数を求めた。
【0073】
そして、上記の実施例1のアルカリ蓄電池における3サイクル目の放電容量及びサイクル数を100とし、実施例C1、参考例C2〜C6の各アルカリ蓄電池における放電容量及びサイクル数の相対指数を容量特性及び充放電サイクル特性として、下記の表4に示した。
【0074】
【表4】
【0075】
この結果、水酸化ニッケル粒子の表面にナトリウム含有コバルト酸化物の層が形成された粉末にTa2O5粉末を添加させたアルカリ蓄電池用ニッケル極を用いた実施例1のアルカリ蓄電池が、実施例C1、参考例C2〜C6の各アルカリ蓄電池に比べて、容量特性や高温条件下における充放電サイクル特性が優れていた。
【0076】
(実施例D1〜D12)
実施例D1〜D12においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、上記の実施例1の場合と同様にして、活物質である水酸化ニッケル粒子の表面にナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された粉末を得た後、このように導電層が形成された粉末100重量部に対して、平均粒径が1μmのTa2 O5 粉末を2.4重量部加えると共に、実施例D1ではY2 O3 粉末を1.27重量部、実施例D2ではYb2 O3 粉末を1.14重量部、実施例D3ではCa(OH)2 粉末を1.84重量部、実施例D4ではAl(OH)3 粉末を2.89重量部、実施例D5ではEr2 O3 粉末を1.14重量部、実施例D6ではGd2 O3 粉末を1.15重量部、実施例D7ではTm2 O3 粉末を1.14重量部、実施例D8ではLu2 O3 粉末を1.14重量部、実施例D9ではZnO粉末を1.24重量部、実施例D10ではNb2 O5 粉末を1.43重量部、実施例D11ではWO3 粉末を1.26重量部、実施例D12ではY2 O3 粉末を0.63重量部とNb2 O5 粉末を0.72重量部の割合で加えるようにした。
【0077】
ここで、上記のように水酸化ニッケル粒子の表面にナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された粉末に対してTa2 O5 粉末と上記の各化合物の粉末とを混合させた場合、導電層が形成された水酸化ニッケル粒子全体の重量に対するTa2 O5 粉末中におけるタンタル元素Taの量は2重量%になっていた。
【0078】
また、導電層が形成された水酸化ニッケル粒子全体の重量に対して、上記のように加えた各化合物中におけるイットリウムY,イッテルビウムYb,カルシウムCa,アルミニウムAl,エルビウムEr,ガドリニウムGd,ツリウムTm,ルテチウムLu,亜鉛Zn,ニオブNb,タングステンWの各元素(M1)の量は、下記の表5に示すように、実施例D1〜D11においては各元素(M1)の量がそれぞれ1重量%であり、また実施例D12においてはイットリウムY及びニオブNbの各元素の量がそれぞれ0.5重量%で、合計で1重量%になっていた。
【0079】
そして、それ以外については、上記の実施例1の場合と同様にして、各アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製し、このようにして作製した各アルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用い、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例D1〜D12の各アルカリ蓄電池を作製した。
【0080】
次に、上記のようにして作製した実施例D1〜D12の各アルカリ蓄電池についても、上記の実施例1の場合と同様にして、25℃の温度条件下において充放電を繰り返して行い、3サイクル目の放電容量を求め、その後、60℃の高温条件下において充放電を繰り返して行い、放電容量が60℃の高温条件下における1サイクル目の放電容量の80%以下に低下するまでのサイクル数を求めた。
【0081】
そして、上記の実施例1のアルカリ蓄電池における3サイクル目の放電容量及びサイクル数を100とし、実施例D1〜D12の各アルカリ蓄電池における放電容量及びサイクル数の相対指数を容量特性及び充放電サイクル特性として、下記の表5に示した。
【0082】
【表5】
【0083】
この結果、ナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された水酸化ニッケル粒子に対してTa2 O5 粉末と一緒にY2 O3 粉末等を添加させたアルカリ蓄電池用ニッケル極を用いた実施例D1〜D12の各アルカリ蓄電池は、上記の実施例1のアルカリ蓄電池よりさらに高温条件下における充放電サイクル特性が優れていた。
【0084】
(実施例D1.1〜D1.6)
実施例D1.1〜D1.6においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、上記の実施例1の場合と同様にして、活物質である水酸化ニッケル粒子の表面にナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された粉末を得た後、このように導電層が形成された粉末に、上記の実施例D1の場合と同様に、平均粒径が1μmのTa2 O5 粉末と一緒にY2 O3 粉末を混合させるようにした。
【0085】
ここで、この実施例D1.1〜D1.6においては、上記のように導電層が形成された粉末に対して、平均粒径が1μmのTa2 O5 粉末と一緒にY2 O3 粉末を混合させるにあたり、これらの添加量を上記の実施例D1の場合と変更し、導電層が形成された水酸化ニッケル粒子全体の重量に対するタンタル元素及びイットリウム元素の量を、下記の表7に示すように、実施例D1.1ではタンタル元素Taとイットリウム元素Yの量がそれぞれ0.05重量%で合計量が0.1重量%、実施例D1.2ではタンタル元素Taとイットリウム元素Yの量がそれぞれ0.1重量%で合計量が0.2重量%、実施例D1.3ではタンタル元素Taとイットリウム元素Yの量がそれぞれ0.5重量%で合計量が1重量%、実施例D1.4ではタンタル元素Taとイットリウム元素Yの量がそれぞれ1重量%で合計量が2重量%、実施例D1.5ではタンタル元素Taとイットリウム元素Yの量がそれぞれ2重量%で合計量が4重量%、実施例D1.6ではタンタル元素Taとイットリウム元素Yの量がそれぞれ3重量%で合計量が6重量%になるようにした。
【0086】
そして、それ以外については、上記の実施例1の場合と同様にして、各アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製し、このようにして作製した各アルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用い、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例D1.1〜D1.6の各アルカリ蓄電池を作製した。
【0087】
次に、上記のようにして作製した実施例D1.1〜D1.6の各アルカリ蓄電池についても、上記の実施例1の場合と同様にして、25℃の温度条件下において充放電を繰り返して行い、3サイクル目の放電容量を求め、その後、60℃の高温条件下において充放電を繰り返して行い、放電容量が60℃の高温条件下における1サイクル目の放電容量の80%以下に低下するまでのサイクル数を求めた。
【0088】
そして、上記の実施例1のアルカリ蓄電池における3サイクル目の放電容量及びサイクル数を100とし、実施例D1.1〜D1.6の各アルカリ蓄電池における放電容量及びサイクル数の相対指数を容量特性及び充放電サイクル特性として、下記の表6に示した。
【0089】
【表6】
【0090】
この結果、ナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された水酸化ニッケル粒子に対してTa2 O5 粉末とY2 O3 粉末とを添加させるにあたり、導電層が形成された水酸化ニッケル粒子に対するタンタル元素Taとイットリウム元素Yとの合計量が0.1重量%以下になると、高温条件下における充放電サイクル特性が低下し、またタンタル元素Taとイットリウム元素Yとの合計量が6重量%以上になると、容量特性が低下した。
【0091】
このため、ナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電層が形成された水酸化ニッケル粒子に対してTa2 O5 粉末とY2 O3 粉末とを添加させる場合、導電層が形成された水酸化ニッケル粒子に対するタンタル元素Taとイットリウム元素Yとの合計量を0.2〜4重量%の範囲にすることが好ましかった。
【0092】
(実施例E1〜E11)
実施例E1〜E11においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、167gの硫酸ニッケルに対して、実施例E1では硫酸アルミニウムを9.71g、実施例E2では硫酸マンガンを8.6g、実施例E3では硫酸コバルトを8.8g、実施例E4では硫酸亜鉛を9.20g、実施例E5では硝酸カルシウムを9.30g、実施例E6では硫酸マグネシウムを6.83g、実施例E7では硫酸イットリウムを13.04g、実施例E8では硫酸イッテルビウムを17.98g、実施例E9では硫酸マンガンを18.0g、実施例E10では硫酸マンガンを22.2g、実施例E11では硫酸マンガンを4.2gと硫酸コバルトを4.28g加えるようにした。
【0093】
そして、これらを溶解させた5リットルの各水溶液に、5重量%のアンモニア水溶液と10重量%の水酸化ナトリウム水溶液とを同時に滴下し、pHを11に保持しながらこれらを反応させた後、沈殿物を濾取し、これを水洗し、乾燥させて、水酸化ニッケル中にAl,Mn,Co,Zn,Ca,Mg,Y,Ybの各元素(M2)が固溶された水酸化ニッケル粉末を得た。
【0094】
ここで、水酸化ニッケル中におけるニッケルNiと、固溶されたAl,Mn,Co,Zn,Ca,Mg,Y,Ybの各元素(M2)との総量に対する各元素(M2)の割合は、下記の表7に示すように、実施例E1〜E8では何れも5原子%、実施例E9では10原子%、実施例E10では12原子%、実施例E11ではMnが2.5原子%とCoが2.5原子%になっていた。
【0095】
そして、上記の各元素(M2)が固溶された水酸化ニッケル粉末を用いる以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、各アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製し、このようにして作製した各アルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用い、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例E1〜E11の各アルカリ蓄電池を作製した。
【0096】
次に、上記のようにして作製した実施例E1〜E11の各アルカリ蓄電池についても、上記の実施例1の場合と同様にして、25℃の温度条件下において充放電を繰り返して行い、3サイクル目の放電容量を求め、その後、60℃の高温条件下において充放電を繰り返して行い、放電容量が60℃の高温条件下における1サイクル目の放電容量の80%以下に低下するまでのサイクル数を求めた。
【0097】
そして、上記の実施例1のアルカリ蓄電池における3サイクル目の放電容量及びサイクル数を100とし、実施例E1〜E11の各アルカリ蓄電池における放電容量及びサイクル数の相対指数を容量特性及び充放電サイクル特性として、下記の表7に示した。
【0098】
【表7】
【0099】
この結果、アルカリ蓄電池用ニッケル極に上記の各元素(M2)が固溶された水酸化ニッケル粉末を用いた実施例E1〜E11の各アルカリ蓄電池は、上記の実施例1のアルカリ蓄電池よりさらに高温条件下における充放電サイクル特性が優れていた。しかし、M2(本実施例ではMn)の固溶量が多くなった実施例E10のアルカリ蓄電池においては容量特性が低下していた。
【0100】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明においては、水酸化ニッケルからなる活物質粒子を含むペーストを導電性芯体に塗布し、これを乾燥させたアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記の活物質粒子の表面に、ナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電剤を添加又は被覆させると共にタンタル又はその化合物の粉末を添加させるようにしたため、上記の導電剤により電極内における集電性が高くなって、活物質の利用率が向上すると共に、高温環境下において充放電させた場合において、放電時に導電剤として用いたコバルト又はその化合物が水酸化コバルトに還元されたとしても、上記のタンタル又はその化合物の作用により、この水酸化コバルトがアルカリ蓄電池におけるアルカリ電解液中に溶解して析出する速度が遅くなり、水酸化コバルトが活物質粒子の表面において偏析するのが防止されると共に、水酸化コバルトの一部が活物質粒子の細孔内に拡散するのも抑制されるようになった。
【0101】
この結果、このようなアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いたアルカリ蓄電池においては、十分な電池容量が得られると共に、高温環境下において充放電サイクル特性が著しく向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例及び比較例において作製したアルカリ蓄電池の概略断面図である。
【符号の説明】
1 正極(ニッケル極)
2 負極
Claims (6)
- 水酸化ニッケルからなる活物質粒子を含むペーストを導電性芯体に塗布し、これを乾燥させたアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記の活物質粒子の表面に、ナトリウム含有コバルト酸化物からなる導電剤を添加又は被覆させると共に、タンタル又はその化合物の粉末を添加させたことを特徴とするアルカリ蓄電池用ニッケル極。
- 請求項1に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極において、水酸化ニッケルからなる活物質粒子の表面に上記の導電剤が添加又は被覆された全体の重量に対して、添加させたタンタル又はその化合物の粉末中におけるタンタル元素の量が0.2〜4.0重量%の範囲である。
- 請求項1又は2に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極において、前記のタンタル又はその化合物の粉末の平均粒子径が100μm以下である。
- 請求項1〜3の何れか1項に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極において、前記の水酸化ニッケルからなる活物質粒子中に、亜鉛、コバルト、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、マンガン、イットリウム及びイッテルビウムよりなる群から選択される少なくとも1種の元素が固溶され、上記の水酸化ニッケルにおけるニッケルとこの元素との総量に対して、この元素の割合が10原子%以下になっている。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極において、前記のタンタル又はその化合物の粉末の他に、イットリウム、イッテルビウム、カルシウム、アルミニウム、エルビウム、ガドリニウム、ツリウム、ルテチウム、亜鉛、ニオブ及びタングステンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素又はその化合物の粉末が添加されている。
- 請求項1〜5の何れか1項に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いたことを特徴とするアルカリ蓄電池。
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