JP3954822B2 - アルカリ蓄電池用ニッケル極、アルカリ蓄電池用ニッケル極の製造方法及びアルカリ蓄電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ニッケル−水素蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池、ニッケル−亜鉛蓄電池等のアルカリ蓄電池、またこのアルカリ蓄電池の正極に使用するアルカリ蓄電池用ニッケル極及びその製造方法に係り、特に、多孔性の焼結基板の孔内に水酸化ニッケルを主体とする活物質を充填させたアルカリ蓄電池用ニッケル極を改善し、このアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用したアルカリ蓄電池において、高温環境下において充電させた場合においても、高い放電容量が得られるようにした点に特徴を有するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ニッケル−水素蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池に代表されるアルカリ蓄電池においては、その正極として、一般に水酸化ニッケルを活物質に用いたアルカリ蓄電池用ニッケル極が使用されていた。
【0003】
ここで、このようなアルカリ蓄電池用ニッケル極としては、芯金となる穿孔鋼鈑等にニッケル粉末を充填させて焼結させた多孔性の焼結基板に、硝酸ニッケル等のニッケル塩を化学的に含浸させた後、これをアルカリ水溶液で処理して、多孔性の焼結基板の孔内に、活物質である水酸化ニッケルを充填させた焼結式のニッケル極が一般に用いられていた。
【0004】
ここで、このような焼結式のニッケル極は、焼結基板の導電性が高く、また活物質の水酸化ニッケル粉末と焼結基板との密着性も良いため、集電性に優れ、高電流での充放電特性が優れているという利点があった。
【0005】
しかし、上記のような焼結式ニッケル極を正極に使用したアルカリ蓄電池を高温環境下において充電させると、正極における酸素過電圧が低くなり、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに酸化させる充電反応以外に、副反応として酸素発生反応が起こり、十分な放電容量が得られなくなるという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、多孔性の焼結基板の孔内に水酸化ニッケルを主体とする活物質を充填させたアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用したアルカリ蓄電池における上記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0007】
すなわち、この発明においては、多孔性の焼結基板の孔内に水酸化ニッケルを主体とする活物質を充填させたアルカリ蓄電池用ニッケル極を改善し、このアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用したアルカリ蓄電池において、高温環境下において充電させた場合においても、高い放電容量が得られるようにすることを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明におけるアルカリ蓄電池用ニッケル極においては、上記のような課題を解決するため、多孔性の焼結基板の孔内に活物質を充填させたアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記の活物質として、水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸が付着されたものを用いるようにしたのである。なお、上記のニオブ酸は、組成式Nb2 O5 ・nH2 Oで表される五酸化ニオブの水和物である。
【0009】
また、この発明におけるアルカリ蓄電池においては、上記のように水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸が付着された活物質を多孔性の焼結基板の孔内に充填させたアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いるようにしたのである。
【0010】
そして、上記のアルカリ蓄電池用ニッケル極のように、水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸が付着された活物質を用いると、上記のニオブ酸によって正極における酸素過電圧が高くなる。このため、このようなアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いたアルカリ蓄電池を高温環境下において充電させた場合に、正極において副反応の酸素発生反応が起こるのが抑制され、高い放電容量が得られるようになる。
【0011】
ここで、上記のように水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸を付着させるにあたり、水酸化ニッケルに対するニオブ酸の量が少ないと、正極における酸素過電圧を十分に高めることができず、高温環境下における充電時に酸素発生反応が生じて、高い放電容量が得られなくなる一方、水酸化ニッケルに対するニオブ酸の量が多くなり過ぎると、上記の焼結基板と水酸化ニッケルとの間に過剰な量のニオブ酸が介在し、正極における集電性が低下して、活物質の利用率が悪くなり、放電容量が低下する。このため、水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸を付着させるにあたっては、水酸化ニッケルに対するニオブ酸中のニオブの重量比率を0.05〜3重量%の範囲にすることが好ましい。
【0012】
また、上記のように水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸が付着された活物質を多孔性の焼結基板の孔内に充填させたアルカリ蓄電池用ニッケル極を製造するにあたっては、例えば、従来の場合と同様にして多孔性の焼結基板の孔内に水酸化ニッケルを充填させた後、水酸化ニッケルが充填された焼結基板を塩化ニオブ,オキシ塩化ニオブ,フッ化ニオブ及び臭化ニオブよりなる群から選択される少なくとも1種のニオブ塩の水溶液中に浸漬させて、水酸化ニッケルが充填された焼結基板に上記のニオブ塩を含浸させる。次いで、上記のようにニオブ塩が含浸された焼結基板を水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液中に浸漬させ、焼結基板に含浸されたニオブ塩をニオブ酸として水酸化ニッケルの粒子表面に析出させるようにする。
【0013】
また、水酸化ニッケルの粒子表面に付着させるニオブ酸の量を調整するにあたったは、水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸を析出させる上記のような操作を行う回数を変更させたり、水酸化ニッケルが充填された焼結基板を上記のニオブ塩の水溶液中に浸漬させる時間を変更させる等の方法を用いることができる。
【0014】
さらに、この発明におけるアルカリ蓄電池用ニッケル極においては、上記の水酸化ニッケルの粒子中に、コバルト,亜鉛,カドミウム,マンガン及びアルミニウムよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を固溶させることが好ましい。このようにすると、固溶させたこれらの元素の作用により、正極における酸素過電圧がさらに高くなり、高温環境下において充電させた場合に、正極において酸素発生反応が起こるのが一層抑制されて、さらに高い放電容量が得られるようになり、特に、コバルトと亜鉛とから選択される少なくとも1種の元素を固溶させた場合に、より高い放電容量が得られるようになる。
【0015】
ここで、水酸化ニッケルの粒子中に上記のような元素を固溶させるにあたり、その量が少ないと、正極における酸素過電圧を十分に高めることができず、高温環境下で充電させた後における放電容量を上記のように高めることができなくなる一方、その量が多くなり過ぎると、活物質の水酸化ニッケルの量が少なくなって、十分な放電容量が得られなくなる。このため、水酸化ニッケルに固溶させるこれらの元素の割合を、水酸化ニッケルに対して0.5〜10重量%の範囲にすることが好ましい。
【0016】
また、この発明におけるアルカリ蓄電池用ニッケル極においては、上記の水酸化ニッケルの粒子表面に、上記のニオブ酸の他に、カルシウム,コバルト,イットリウム及びイッテルビウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の水酸化物を付着させることが好ましい。このようにすると、水酸化ニッケルの粒子表面に付着させたこれらの水酸化物の作用により、正極における酸素過電圧がさらに高くなり、高温環境下において充電させた場合に、正極において酸素発生反応が起こるのが一層抑制されて、さらに高い放電容量が得られるようになり、特に、コバルトとイットリウムとから選択される少なくとも1種の元素の水酸化物を付着させた場合に、より高い放電容量が得られるようになる。
【0017】
ここで、水酸化ニッケルの粒子表面に上記のような元素の水酸化物を付着させるにあたり、その量が少ないと、正極における酸素過電圧を十分に高めることができず、高温環境下で充電させた後における放電容量を上記のように高めることができなくなる一方、その量が多くなり過ぎると、正極における電子伝導性が低下して、十分な放電容量が得られなくなる。このため、水酸化ニッケルの粒子表面に付着させる上記の水酸化物における元素の割合を、水酸化ニッケルに対して0.5〜5重量%の範囲にすることが好ましい。
【0018】
また、上記のように水酸化ニッケルの粒子表面に、ニオブ酸の他に、上記の元素の水酸化物を付着させるにあたっては、様々な方法を用いることができ、ニオブ酸と上記の各元素の水酸化物とをそれぞれ別個に付着させる他、ニオブ酸と上記の各元素の水酸化物とを混合させて付着させるようにしてもよい。
【0019】
【実施例】
以下、この発明に係るアルカリ蓄電池用ニッケル極及びこのアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に用いたアルカリ蓄電池について、実施例を挙げて具体的に説明すると共に、この実施例におけるアルカリ蓄電池においては、高温環境下において充電させた場合にも、高い放電容量が得られることを、比較例を挙げて明らかにする。なお、この発明におけるアルカリ蓄電池用ニッケル極及びアルカリ蓄電池は、下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0020】
(実施例A1)
実施例A1のアルカリ蓄電池においては、下記のステップ1〜3により、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0021】
ステップ1(焼結基板の作製)
カルボニルニッケル粉末と、結着剤のカルボキシメチルセルロースと、水とを混練してスラリーを調製し、このスラリーを厚さ50μmのパンチングメタルに塗布し、乾燥させた後、これを水素雰囲気中おいて900°Cで20分間焼成して、多孔度が約85%、平均孔径が10μm、厚さが0.65mmの焼結基板を作製した。
【0022】
ステップ2(焼結基板の孔内への水酸化ニッケルの充填)
上記の焼結基板を比重1.5の硝酸ニッケルNi(NO3 )2 水溶液に浸漬させた後、25重量%の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬させ、この操作を6回繰り返して、焼結基板の孔内に水酸化ニッケルの粒子を充填した。
【0023】
ステップ3(水酸化ニッケルの粒子表面へのニオブ酸の添加)
上記のように孔内に水酸化ニッケルの粒子が充填された焼結基板を、0.1モル/リットルの濃度の塩化ニオブNbCl5 水溶液に30分間浸漬させた後、60°Cで30分間乾燥し、次いで30重量%の水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬させた後、60°Cで30分間乾燥させる操作を1回行って、上記の水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸が付着されたアルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0024】
ここで、上記のようにして得たアルカリ蓄電池用ニッケル極において、水酸化ニッケルに対するニオブ酸中のニオブNbの重量比率を、ICP(Inductively Coupled Plasma Emission Spectrometry)により求めたところ、0.2重量%であった。
【0025】
そして、上記のアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用する一方、負極に一般に用いられているペースト式カドミウム極を用いた。また、セパレータにはポリアミド不織布を用い、アルカリ電解液としては、30重量%の水酸化カリウム水溶液を用い、AAサイズで容量が約1000mAhになった図1に示すような実施例A1のアルカリ蓄電池を作製した。
【0026】
ここで、上記のアルカリ蓄電池においては、図1に示すように、上記の正極1と負極2との間にセパレータ3を介在させ、これらをスパイラル状に巻いて電池缶4内に収容させた後、この電池缶4内に上記のアルカリ電解液を注液して封口し、正極1を正極リード5を介して正極蓋6に接続させると共に、負極2を負極リード7を介して電池缶4に接続させ、電池缶4と正極蓋6とを絶縁パッキン8により電気的に分離させるようにした。
【0027】
また、正極蓋6と正極外部端子9との間にコイルスプリング10を設け、電池の内圧が異常に上昇した場合には、このコイルスプリング10が圧縮されて電池内部のガスが大気中に放出されるようにした。
【0028】
(比較例1)
比較例1においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、上記の実施例A1のアルカリ蓄電池用ニッケル極の作製におけるステップ1及びステップ2を行う一方、ステップ3を行わないようにし、焼結基板の孔内に水酸化ニッケルの粒子が充填されただけで、水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸が付着されていないアルカリ蓄電池用ニッケル極を用いるようにした。
【0029】
そして、このようなアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用する以外は、上記の実施例A1の場合と同様にして、AAサイズで容量が約1000mAhになった比較例1のアルカリ蓄電池を作製した。
【0030】
次に、上記の実施例A1及び比較例1の各アルカリ蓄電池について、それぞれ25℃の温度条件で、充電電流100mAで16時間充電した後、放電電流1000mAで1.0Vまで放電し、これを1サイクルとして5サイクルの充放電を行い、実施例A1及び比較例1の各アルカリ蓄電池における5サイクル目の放電容量Q5を求めた。
【0031】
そして、上記の実施例A1のアルカリ蓄電池における5サイクル目の放電容量Q5を100とし、比較例1のアルカリ蓄電池における放電容量Q5の相対指数を求め、これを容量指数として下記の表1に示した。
【0032】
また、上記のように5サイクルの充放電を行った実施例A1及び比較例1の各アルカリ蓄電池について、それぞれ60℃の高温条件下において、充電電流100mAで16時間充電した後、25℃の温度条件で放電電流1000mAで1.0Vまで放電し、6サイクル目の放電容量Q6を求めた。
【0033】
そして、実施例A1及び比較例1の各アルカリ蓄電池について、5サイクル目の放電容量Q5に対する6サイクル目の放電容量Q6の比率R(%)=(Q6/Q5)×100を算出し、その結果を下記の表1に示した。なお、この比率Rの値が大きいと、高温で充電した場合における放電容量の低下が少ないことを意味する。
【0034】
【表1】
【0035】
この結果から明らかなように、水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸を付着させたアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用した実施例A1のアルカリ蓄電池は、水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸を付着させていないアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用した比較例1のアルカリ蓄電池に比べて、高温で充電した場合において放電容量が低下するのが少なくなっていた。
【0036】
(実施例A2〜A7)
実施例A2〜A7においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、それぞれ上記の実施例A1のアルカリ蓄電池用ニッケル極の作製におけるステップ1及びステップ2を行って、焼結基板の孔内に水酸化ニッケルの粒子を充填させた。
【0037】
そして、上記の実施例A1のアルカリ蓄電池用ニッケル極の作製におけるステップ3において、焼結基板の孔内に充填された水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸を付着させるにあたり、その条件を変更した
【0038】
ここで、実施例A2,A3では、孔内に水酸化ニッケルの粒子が充填された焼結基板を0.1モル/リットルの濃度の塩化ニオブ水溶液に浸漬させる時間を変更し、下記の表2に示すように、実施例A2では5分間、実施例A3では10分間にし、それ以外は、上記の実施例A1の場合と同様にして、水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸が付着されたアルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0039】
また、実施例A4〜A7では、孔内に水酸化ニッケルの粒子が充填された焼結基板を0.1モル/リットルの濃度の塩化ニオブ水溶液に30分間浸漬させた後、60°Cで30分間乾燥し、次いで30重量%の水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬させた後、60°Cで30分間乾燥させる操作の回数を変更し、下記の表2に示すように、実施例A4では上記の操作回数を3回、実施例A5では上記の操作回数を5回、実施例A6では上記の操作回数を8回、実施例A7では上記の操作回数を10回にし、それ以外は、上記の実施例A1の場合と同様にして、水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸が付着されたアルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0040】
ここで、上記のようにして作製した各アルカリ蓄電池用ニッケル極について、水酸化ニッケルに対するニオブ酸中のニオブNbの重量比率を、ICP(Inductively Coupled Plasma Emission Spectrometry)により求めたところ、下記の表2に示すように、実施例A2では0.01重量%、実施例A3では0.05重量%、実施例A4では0.6重量%、実施例A5では1重量%、実施例A6では3重量%、実施例A7では4重量%であった。
【0041】
そして、上記のように作製した各アルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用する以外は、上記の実施例A1の場合と同様にして、AAサイズで容量が約1000mAhになった実施例A2〜A7の各アルカリ蓄電池を作製した。
【0042】
次いで、上記の実施例A2〜A7の各アルカリ蓄電池についても、上記の実施例A1の場合と同様にして、5サイクル目の放電容量Q5を求めた。そして、上記の実施例A1のアルカリ蓄電池における5サイクル目の放電容量Q5を100とし、実施例A2〜A7の各アルカリ蓄電池における放電容量Q5の相対指数を求め、これを容量指数として下記の表2に示した。
【0043】
さらに、上記のように5サイクルの充放電を行った実施例A2〜A7の各アルカリ蓄電池についても、上記の実施例A1の場合と同様に、それぞれ60℃の高温条件下において、充電電流100mAで16時間充電した後、25℃の温度条件で放電電流1000mAで1.0Vまで放電し、6サイクル目の放電容量Q6を求め、5サイクル目の放電容量Q5に対する6サイクル目の放電容量Q6の比率R(%)を算出し、その結果を下記の表2に示した。
【0044】
【表2】
【0045】
この結果から明らかなように、水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸を付着させたアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用した実施例A2〜A7の各アルカリ蓄電池も、上記の実施例A1のアルカリ蓄電池と同様に、水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸を付着させていないアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用した比較例1のアルカリ蓄電池に比べて、高温で充電した場合において放電容量が低下するのが少なくなっていた。特に、水酸化ニッケルに対するニオブ酸中のニオブNbの重量比率が0.05〜3重量%の範囲になった実施例A1,A3〜A6のアルカリ蓄電池においては、高温での充電後における放電容量の低下が一層少なくなっていた。
【0046】
(実施例B1〜B6)
実施例B1〜B6においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、上記の実施例A1のアルカリ蓄電池用ニッケル極の作製におけるステップ2において、ステップ1で作製した焼結基板の孔内に水酸化ニッケルの粒子を充填させるにあたり、水酸化ニッケルの粒子にコバルトCo,亜鉛Zn,カドミウムCd,マンガンMn,アルミニウムAlから選択される少なくとも1種の元素を固溶させるようにした。
【0047】
ここで、実施例B1〜B6においては、前記の実施例A1のステップ2において焼結基板を浸漬させる比重1.5の硝酸ニッケル水溶液に代え、実施例B1では硝酸ニッケルと硝酸コバルトとが12.7:1の重量比になった比重1.5の水溶液を、実施例B2では硝酸ニッケルと硝酸亜鉛とが13.6:1の重量比になった比重1.5の水溶液を、実施例B3では硝酸ニッケルと硝酸カドミウムとが18.8:1の重量比になった比重1.5の水溶液を、実施例B4では硝酸ニッケルと硝酸マンガンとが12.0:1の重量比になった比重1.5の水溶液を、実施例B5では硝酸ニッケルと硝酸アルミニウムとが5:1の重量比になった比重1.5の水溶液を、実施例B6では硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸亜鉛とが32.0:1:2.5の重量比になった比重1.5の水溶液を用い、それ以外は、上記の実施例A1の場合と同様にして、各アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0048】
ここで、上記のように作製した各アルカリ蓄電池用ニッケル極において、水酸化ニッケルに対する固溶された各元素の重量比率を、ICP(Inductively Coupled Plasma Emission Spectrometry)により求め、その結果を表3に示した。なお、水酸化ニッケルに対するニオブ酸中のニオブNbの重量比率は、上記の実施例A1と同じ0.2重量%であった。
【0049】
そして、上記のように作製した各アルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用する以外は、上記の実施例A1の場合と同様にして、AAサイズで容量が約1000mAhになった実施例B1〜B6の各アルカリ蓄電池を作製した。
【0050】
次いで、上記の実施例B1〜B6の各アルカリ蓄電池についても、上記の実施例A1の場合と同様にして、5サイクル目の放電容量Q5を求めた。そして、上記の実施例A1のアルカリ蓄電池における5サイクル目の放電容量Q5を100とし、実施例B1〜B6の各アルカリ蓄電池における放電容量Q5の相対指数を求め、これを容量指数として下記の表3に示した。
【0051】
さらに、上記のように5サイクルの充放電を行った実施例B1〜B6の各アルカリ蓄電池についても、上記の実施例A1の場合と同様に、それぞれ60℃の高温条件下において、充電電流100mAで16時間充電した後、25℃の温度条件で放電電流1000mAで1.0Vまで放電し、6サイクル目の放電容量Q6を求め、5サイクル目の放電容量Q5に対する6サイクル目の放電容量Q6の比率R(%)を算出し、その結果を下記の表3に示した。
【0052】
【表3】
【0053】
この結果から明らかなように、水酸化ニッケルの粒子にコバルトCo,亜鉛Zn,カドミウムCd,マンガンMn,アルミニウムAlから選択される少なくとも1種の元素を固溶させると共に、この水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸を付着させたアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用した実施例B1〜B6の各アルカリ蓄電池においては、上記の実施例A1のアルカリ蓄電池よりもさらに高温での充電後における放電容量の低下が少なくなっていた。特に、水酸化ニッケルの粒子にコバルトCoと亜鉛Znとから選択される少なくとも1種の元素を固溶させた実施例B1,B2及びB6のアルカリ蓄電池においては、高温での充電後における放電容量の低下が一層少なくなっていた。
【0054】
(実施例C1〜C5)
実施例C1〜C5においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製するにあたり、上記の実施例A1の場合と同じステップ1〜3を行って、焼結基板の孔内に充填された水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸を付着させた後、さらにこの水酸化ニッケルの粒子表面に、カルシウムCa,コバルトCo,イットリウムY及びイッテルビウムYbよりなる群から選択される少なくとも1種の元素の水酸化物を付着させるようにした。
【0055】
ここで、水酸化ニッケルの粒子表面に上記のような元素の水酸化物を付着させるにあたり、実施例C1では0.12モル/リットルの濃度の硝酸カルシウム水溶液を、実施例C2では0.08モル/リットルの濃度の硝酸コバルト水溶液を、実施例C3では0.05モル/リットルの濃度の硝酸イットリウム水溶液を、実施例C4では0.03モル/リットルの濃度の硝酸イッテルビウム水溶液を、実施例C5では0.08モル/リットルの濃度の硝酸コバルト水溶液と0.05モル/リットルの濃度の硝酸イットリウム水溶液との混合溶液を用いた。
【0056】
そして、水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸を付着させた焼結基板を、それぞれ上記の水溶液中に30分間浸漬させた後、60°Cで30分間乾燥し、次いで30重量%の水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬させた後、60°Cで30分間乾燥させる操作を4回繰り返して行い、水酸化ニッケルの粒子表面に、ニオブ酸の他に、下記の表4に示す元素の水酸化物が付着された各アルカリ蓄電池用ニッケル極を作製した。
【0057】
ここで、上記のように作製した各アルカリ蓄電池用ニッケル極において、水酸化ニッケルに対して、付着された上記の各水酸化物における各元素の重量比率を、ICP(Inductively Coupled Plasma Emission Spectrometry)により求め、その結果を表4に示した。なお、水酸化ニッケルに対するニオブ酸中のニオブNbの重量比率は、上記の実施例A1と同じ0.2重量%であった。
【0058】
そして、上記のように作製した各アルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用する以外は、上記の実施例A1の場合と同様にして、AAサイズで容量が約1000mAhになった実施例C1〜C5の各アルカリ蓄電池を作製した。
【0059】
次いで、上記の実施例C1〜C5の各アルカリ蓄電池についても、上記の実施例A1の場合と同様にして、5サイクル目の放電容量Q5を求めた。そして、上記の実施例A1のアルカリ蓄電池における5サイクル目の放電容量Q5を100とし、実施例C1〜C5の各アルカリ蓄電池における放電容量Q5の相対指数を求め、これを容量指数として下記の表4に示した。
【0060】
さらに、上記のように5サイクルの充放電を行った実施例C1〜C5の各アルカリ蓄電池についても、上記の実施例A1の場合と同様に、それぞれ60℃の高温条件下において、充電電流100mAで16時間充電した後、25℃の温度条件で放電電流1000mAで1.0Vまで放電し、6サイクル目の放電容量Q6を求め、5サイクル目の放電容量Q5に対する6サイクル目の放電容量Q6の比率R(%)を算出し、その結果を下記の表4に示した。
【0061】
【表4】
【0062】
この結果から明らかなように、水酸化ニッケルの粒子表面に、ニオブ酸の他に、カルシウムCa,コバルトCo,イットリウムY及びイッテルビウムYbよりなる群から選択される少なくとも1種の元素の水酸化物を付着させたアルカリ蓄電池用ニッケル極を正極に使用した実施例C1〜C5の各アルカリ蓄電池においては、上記の実施例A1のアルカリ蓄電池よりもさらに高温での充電後における放電容量の低下が少なくなっていた。特に、水酸化ニッケルの粒子表面に、ニオブ酸の他に、コバルトCoとイットリウムYとから選択される少なくとも1種の元素の水酸化物を付着させた実施例C2,C3及びC5のアルカリ蓄電池においては、高温での充電後における放電容量の低下が一層少なくなっていた。
【0063】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明においては、アルカリ蓄電池用ニッケル極において、多孔性の焼結基板の孔内に充填させる活物質として水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸を付着させたものを用いるようにすると共に、このように水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸が付着された活物質を用いたアルカリ蓄電池用ニッケル極をアルカリ蓄電池の正極に使用するようにしたため、上記のニオブ酸によって正極における酸素過電圧が高くなり、このアルカリ蓄電池を高温環境下において充電させた場合においても、正極において副反応の酸素発生反応が起こるのが抑制され、高い放電容量が得られるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例及び比較例において作製したアルカリ蓄電池の概略断面図である。
【符号の説明】
1 正極(アルカリ蓄電池用ニッケル極)
2 負極
3 セパレータ
4 電池缶
Claims (9)
- 多孔性の焼結基板の孔内に活物質が充填されてなるアルカリ蓄電池用ニッケル極において、上記の活物質が水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸が付着されてなることを特徴とするアルカリ蓄電池用ニッケル極。
- 上記の水酸化ニッケルに対するニオブ酸中のニオブの重量比率が0.05〜3重量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極。
- 上記の水酸化ニッケルの粒子に、コバルト,亜鉛,カドミウム,マンガン及びアルミニウムよりなる群から選択される少なくとも1種の元素が固溶されていることを特徴とする請求項1又は2に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極。
- 上記の水酸化ニッケルの粒子に、コバルトと亜鉛とから選択される少なくとも1種の元素が固溶されていることを特徴とする請求項3に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極。
- 上記の水酸化ニッケルの粒子表面に、上記のニオブ酸の他に、カルシウム,コバルト,イットリウム及びイッテルビウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の水酸化物が付着されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極。
- 上記の水酸化ニッケルの粒子表面に、上記のニオブ酸の他に、コバルトとイットリウムとから選択される少なくとも1種の元素の水酸化物が付着されていることを特徴とする請求項5に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極。
- 多孔性の焼結基板の孔内に水酸化ニッケルの粒子を充填させる工程と、水酸化ニッケルが充填された焼結基板にニオブ塩を含浸させる工程と、上記のニオブ塩を焼結基板に充填された水酸化ニッケルの粒子表面にニオブ酸として析出させる工程とを有することを特徴とするアルカリ蓄電池用ニッケル極の製造方法。
- 上記のニオブ塩が、塩化ニオブ,オキシ塩化ニオブ,フッ化ニオブ及び臭化ニオブよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項7に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極の製造方法。
- 正極と負極とアルカリ電解液とを備えるアルカリ蓄電池において、正極に上記の請求項1〜5の何れか1項に記載したアルカリ蓄電池用ニッケル極を用いたことを特徴とするアルカリ蓄電池。
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