JP4408997B2 - ポリエチレンテレフタレート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、ポリエチレンテレフタレートに関し、さらに詳しくは、アセトアルデヒドの含有量が少なく、かつ成形時にアセトアルデヒドの増加量の少ないポリエチレンテレフタレートに関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来、調味料、油、飲料、化粧品、洗剤などの容器の素材としては、充填内容物の種類およびその使用目的に応じて種々の樹脂が採用されている。
【0003】
これらのうちでポリエチレンテレフタレートは機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリヤー性に優れているので、特にジュース、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填用容器の素材として好適である。
【0004】
このようなポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とをエステル化した後、重縮合触媒の存在下で液相重縮合し、次いで固相重縮合して得ることができる。そしてこのポリエチレンテレフタレートは、例えば射出成形機械などの成形機に供給して中空成形体用プリフォームを成形し、このプリフォームを所定形状の金型に挿入し延伸ブロー成形したり、さらに熱処理(ヒートセット)して中空成形容器に成形される。
【0005】
ところが、従来のポリエチレンテレフタレートを成形して得た成形体では、成形時にアセトアルデヒドの含有量が増加し、このアセトアルデヒドがポリエチレンテレフタレート成形体中に残存するため、該成形体中に充填される内容物の風味、香りなどが著しく低下してしまうことがあった。
【0006】
本発明者らは、上記のような問題点を解決すべく鋭意検討したところ、重縮合触媒として特定の触媒を用い、得られたポリエチレンテレフタレートをリン酸エステル水溶液、有機溶媒などと接触させて得られるポリエチレンテレフタレートは、アセトアルデヒドの含有量が少なく、かつ成形時にアセトアルデヒドの含有量が増加しにくいことを見出して、本発明を完成するに至った。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、アセトアルデヒドの含有量が少なく、かつ成形時におけるアセトアルデヒドの増加量が少ないポリエチレンテレフタレートを提供することを目的としている。
【0008】
【発明の概要】
本発明に係るポリエチレンテレフタレートは、
固有粘度が0.50dl/g以上であり、
チタンハロゲン化物の加水分解により得られる重縮合触媒に由来するチタン原子を0.1〜200ppmの量で含み、
マグネシウム化合物からなる助触媒化合物に由来するマグネシウム原子を0.1〜500ppmの量で含み、
前記チタン原子と前記マグネシウム原子とのモル比(チタン原子/マグネシウム原子)が0.05〜50の範囲にあり、
アセトアルデヒドの含有量が4ppm以下であり、かつ該含有量をW0ppmとし、275℃の温度に加熱溶融して段付角板を成形した後のアセトアルデヒドの含有量をW1ppmとしたときに、W1−W0が10ppm以下であり、
ゲルマニウム原子の含有量が5ppm以下であることを特徴としている。
【0009】
本発明では、上記チタン原子が、チタンハロゲン化物の加水分解により得られる重縮合触媒に由来するものであることが好ましい。
【0010】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るポリエチレンテレフタレートについて具体的に説明する。
ポリエチレンテレフタレート
本発明に係るポリエチレンテレフタレートは、o-クロロフェノール中25℃で測定した固有粘度が、通常0.50dl/g以上、好ましくは0.50〜1.50dl/g、より好ましくは0.72〜1.0dl/gであることが望ましい。このポリエチレンテレフタレートの密度は、通常1.37g/cm3 以上、好ましくは1.37〜1.44g/cm3 、より好ましくは1.38〜1.43g/cm3、さらに好ましくは1.39〜1.42g/cm3 以上であることが望ましい。
【0011】
本発明に係るポリエチレンテレフタレートは、チタン原子をポリエチレンテレフタレートの重量に対して0.1〜200ppm、好ましくは0.5〜100ppm、より好ましくは1〜50ppmの量で含み、
ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛およびアンチモンから選ばれる金属原子Mをポリエチレンテレフタレートの重量に対して0.1〜500ppm、好ましくは0.5〜300ppm、より好ましくは1〜250ppmの量で含んでいる。
【0012】
上記金属原子Mとしてはマグネシウム、カルシウム、亜鉛が好ましく、特にマグネシウムが好ましい。金属原子Mは、ポリエチレンテレフタレート中に2種以上含まれていてもよく、その場合は2種以上の金属原子Mの含有量の合計が上記範囲である。
【0013】
また本発明に係るポリエチレンテレフタレートは、ゲルマニウム原子の含有量が5ppm以下であることが望ましい。
ポリエチレンテレフタレートに含まれる上記チタン原子は、後述するようなチタンハロゲン化物の加水分解により得られる重縮合触媒に由来するチタン原子であることが好ましく、上記金属原子Mは、後述するような助触媒化合物に由来する金属原子であることが好ましい。
【0014】
また、前記チタン原子と前記金属原子Mとのモル比(チタン原子/金属原子M)は、通常0.05〜50、好ましくは0.1〜30、より好ましくは0.2〜25の範囲にある。
【0015】
本発明において、ポリエチレンテレフタレート中のチタン原子および金属原子Mの含有量は、蛍光X線分析法により測定される。
本発明に係るポリエチレンテレフタレートは、アセトアルデヒドの含有量(W0ppm)が4ppm以下、好ましくは0.1〜3.5ppm、より好ましくは0.5〜3.0ppmの範囲にある。
【0016】
また本発明に係るポリエチレンテレフタレート(アセトアルデヒドの含有量がW0ppm)は、275℃の温度に加熱溶融して段付角板を成形した後のアセトアルデヒドの含有量をW1ppmとしたときに、W1−W0が10ppm以下、好ましくは9ppm以下であることが望ましい。
【0017】
このような本発明に係るポリエチレンテレフタレートは、アセトアルデヒドの含有量が少なく、かつ成形体に成形する際にアセトアルデヒドの含有量の増加が著しく抑制される。例えばこのポリエチレンテレフタレートから、ボトル等を成形した場合に、該ボトル中に充填される内容物の味、香りなどを低下させることが少ない。
【0018】
本発明では、ポリエチレンテレフタレートを成形体に成形する際のアセトアルデヒドの増加量は、ポリエチレンテレフタレートを段付角板に成形し、該段付角板中のアセトアルデヒドの量を測定することにより求める。段付角板は、以下のように製造される。
【0019】
まず原料としての予めアセトアルデヒドの含有量(x重量%)が測定された粒状ポリエチレンテレフタレート(ペレット状ポリエチレンテレフタレート)2kgを温度140℃、圧力10Torrの条件で16時間以上棚段式の乾燥器を用いて乾燥して、粒状ポリエチレンテレフタレートの水分を50ppm以下にする。
【0020】
次に、乾燥された粒状ポリエチレンテレフタレートを用い、名機製作所(株)製M−70A射出成形機で射出成形して、段付角板状成形物を得る。成形時には露点が−70℃の窒素をホッパー上部、スクリューフィーダーシュート部に各5ノルマル立方メートル/時間の割合でフィードし、成形はバレル設定温度275℃、成形機のC1/C2/C3/ノズル先の温度を260℃/290℃/290℃/300℃の各温度にして、金型冷却温度15℃の条件下で行う。
【0021】
段付角板状成形物の射出成形は、計量12秒、射出60秒となるように成形条件が調整された射出成形機に、乾燥された粒状ポリエチレンテレフタレートをホッパより供給して行う。また成形機内の溶融樹脂の滞留時間は約72秒とする。なお段付角板状成形物1個当りの重量は75gであり、アセトアルデヒド含有量の測定用試料は、射出成形開始後11個〜15個目のいずれか1個を用いて行なう。
【0022】
段付角板状成形物1は、図1に示すような形状を有しており、A部の厚みは約6.5mmであり、B部の厚みは約5mmであり、C部の厚みは約4mmである。このC部を用いて成形物のアセトアルデヒドの含有量を測定する。
【0023】
次に成形された段付角板状成形物のC部をチップ状に切断し、アセトアルデヒドの含有量測定用試料としてアセトアルデヒドの含有量(W1ppm)が測定される。
【0024】
段付角板成形前の粒状ポリエチレンテレフタレートおよび段付角板中に含まれるアセトアルデヒドの含有量は、以下のようにして測定される。
すなわち、ポリエチレンテレフタレート中に含有されるアセトアルデヒドの含有量は、試料(チップ)2gを冷却粉砕し、室温に戻した後1gを採取して容器に仕込み、この容器に内部標準液2ccを加えて密閉し、次いで、120℃のオーブン中で1時間アセトアルデヒドを抽出した後、氷冷し、上澄液5μリットルを島津製作所(株)製 GC−6A を用いて分析することにより決定される。
【0025】
本発明においては、上記のようなアセトアルデヒドの含有量には、
成形前のポリエチレンテレフタレートついて測定されるアセトアルデヒド含有量(W0ppm)と、ポリエチレンテレフタレートを275℃の成形温度で射出成形して得られた成形品について測定されるアセトアルデヒド含有量(W1ppm)とがある。そして、本発明においては上記のW1 およびW0 の値からW0 −W1 の値を算出する。
【0026】
アセトアルデヒドの含有量(W0ppm)が少なく、上記のようにして算出されたW0−W1 の値、すなわち成形時におけるアセトアルデヒドの増加量が10ppm以下であるポリエチレンテレフタレートを用いると、成形物に含まれるアセトアルデヒドの含有量が少ないので、悪臭あるいは異臭が発生したり、内容物の風味、香りが変化することの少ない成形物を得ることができる。
【0027】
上記のような特性を有する本発明に係るポリエチレンテレフタレートは、例えば以下のような方法で製造することができる。
本発明に係るポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを原料として製造することができる。また、このポリエチレンテレフタレートには20モル%以下の他のジカルボン酸および/または他のグリコールが共重縮合されていてもよい。
【0028】
テレフタル酸以外の共重縮合に用いられるジカルボン酸として具体的には、フタル酸、イソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などおよびこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0029】
エチレングリコール以外の共重縮合に用いられるグリコールとして具体的には、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコールなどの脂肪族グリコール;シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール;ビスフェノール類、ハイドロキノン、2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族ジオール類などおよびこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0030】
上記したようなテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを含む原料は、エステル化される。具体的にはまず、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを含むスラリーを調製する。
【0031】
このスラリーには、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体1モルに対して1.02〜1.4モル、好ましくは1.03〜1.3モルのエチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体が含まれる。このスラリーは、エステル化反応工程に連続的に供給される。
【0032】
エステル化反応は、好ましくは2個以上のエステル化反応器を直列に連結した装置を用いてエチレングリコールが還流する条件下で、反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら実施される。エステル化反応を行う際の反応条件は、第1段目のエステル化反応の温度が、通常240〜270℃、好ましくは245〜265℃であり、圧力が、通常0.2〜3kg/cm2G、好ましくは0.5〜2kg/cm2Gであり、また最終段目のエステル化反応の温度が通常250〜280℃、好ましくは255〜275℃であり、圧力が通常0〜1.5kg/cm2G、好ましくは0〜1.3kg/cm2Gである。
【0033】
エステル化反応を2段階で実施する場合には、第1段目および第2段目のエステル化反応条件がそれぞれ上記の範囲であり、3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段の1段前までエステル化反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。
【0034】
例えば、エステル化反応が3段階で実施される場合には、第2段目のエステル化反応の反応温度は、通常245〜275℃、好ましくは250〜270℃であり、圧力は、通常0〜2kg/cm2G、好ましくは0.2〜1.5kg/cm2Gである。これらのエステル化反応の反応率は、それぞれの段階においては、特に制限はないが、各段階におけるエステル化反応率の上昇と度合が滑らかに分配されることが好ましく、さらに最終段目のエステル化反応生成物においては通常90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。
【0035】
これらのエステル化工程によりエステル化物(低次縮合物)が得られ、このエステル化物の数平均分子量は、通常、500〜5000である。このようなエステル化反応は、テレフタル酸およびエチレングリコール以外の添加物を添加せずに実施することも可能であり、また後述する重縮合触媒の共存下に実施することも可能である。またトリエチルアミン、トリn-ブチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの第3級アミン;水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラn-ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムなどの水酸化第4級アンモニウム;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの塩基性化合物を少量添加して実施すると、ポリエチレンテレフタレートの主鎖中のジオキシエチレンテレフタレート成分単位の割合を比較的低水準に保持できるので好ましい。
【0036】
次いで得られたエステル化物は、液相重縮合工程に供給される。この液相重縮合工程では、重縮合触媒の存在下に減圧下で、得られるポリエチレンテレフタレートの融点以上の温度に加熱し、この際生成するグリコールを系外に留去させてエステル化物を重縮合する。
【0037】
このような液相での重縮合反応は、1段階で行っても、複数段階に分けて行ってもよい。複数段階で行う場合、重縮合反応条件は、第1段階目の重縮合の反応温度が、通常、250〜290℃、好ましくは260〜280℃であり、圧力が、通常、500〜20Torr、好ましくは200〜30Torrであり、また最終段階の重縮合反応の温度が通常265〜300℃、好ましくは270〜295℃であり、圧力が通常10〜0.1Torr、好ましくは5〜0.5Torrである。
【0038】
重縮合反応を2段階で実施する場合には、第1段目および第2段目の重縮合反応条件はそれぞれ上記の範囲であり、3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段目の1段前までの重縮合反応の反応条件は上記1段目の反応条件と最終段目の反応条件との間の条件である。
【0039】
例えば、重縮合反応が3段階で実施される場合には、第2段目の重縮合反応の反応温度は通常260〜295℃、好ましくは270〜285℃であり、圧力は通常、50〜2Torr、好ましくは40〜5Torrの範囲である。これらの重縮合反応工程の各々において到達される固有粘度(IV)は特に制限はないが、各段階における固有粘度の上昇の度合が滑らかに分配されることが好ましい。
【0040】
また、最終段目の重縮合反応器から得られるポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、通常0.35〜0.80dl/g、好ましくは0.45〜0.75dl/g、さらに好ましくは0.55〜0.75dl/gの範囲であることが望ましい。固有粘度は、ポリエチレンテレフタレート1.2gをo-クロロフェノール15cc中に加熱溶解した後、冷却して25℃で測定された溶液粘度から算出される。
【0041】
このポリエチレンテレフタレートの密度は、通常1.33〜1.35g/cm3であることが望ましい。ポリエチレンテレフタレートの密度は、四塩化炭素およびヘプタンの混合溶媒を用いた密度勾配管により、23℃の温度で測定される。
【0042】
上記のような重縮合反応は、重縮合触媒の存在下に実施され、安定剤の存在下に実施されることが好ましい。
重縮合触媒としては、チタンハロゲン化物の加水分解により得られる加水分解物などのチタン化合物を用いることができる。なお、チタンハロゲン化物を加水分解する際には、チタン以外の他の元素から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物またはこの化合物の前駆体(以下「他の元素の化合物」ということがある。)を共存させてもよい。
【0043】
加水分解物の調製に用いられるチタンハロゲン化物は、チタン原子とハロゲン原子との結合が少なくとも1つ以上分子内に存在する化合物であり、具体的には四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタンなどの四ハロゲン化チタン;三塩化チタンなどの三ハロゲン化チタン;二塩化チタンなどの二ハロゲン化物および一ハロゲン化チタンが挙げられる。
【0044】
チタンハロゲン化物を加水分解する方法としては、特に限定されず、例えば▲1▼水中にチタンハロゲン化物を添加する方法、▲2▼チタンハロゲン化物中に水を添加する方法、▲3▼水中にチタンハロゲン化物の蒸気を含んだガスを通じる方法、▲4▼チタンハロゲン化物中に水蒸気を含んだガスを通じる方法、▲5▼チタンハロゲン化物を含んだガスと水蒸気を含んだガスとを接触させる方法などが挙げられる。
【0045】
上記のように加水分解方法は特に限定されないが、いずれの場合でもチタンハロゲン化物に大過剰の水を作用させて加水分解を完全に進行させることが必要である。加水分解を完全に進行させず、得られた加水分解物が特公昭51-19477項公報に記載されているような部分加水分解物となる場合には、重縮合速度が充分でないことがある。
【0046】
加水分解を行う温度は、通常100℃以下、特に0〜70℃の範囲であることが好ましい。
チタンハロゲン化物の加水分解時に共存させてもよい他の元素の化合物としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ケイ素、スズ、アンチモンおよびリン(以下これらの元素を「他の元素」という。)からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物またはこの化合物の前駆体が挙げられる。上記他の元素の化合物としては、例えば、水酸化物などが挙げられる。
【0047】
これらの他の元素の化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
チタンハロゲン化物を他の元素の化合物の共存下に加水分解するには、例えばチタンハロゲン化物と他の元素の化合物との混合物を加水分解する。
【0048】
チタンハロゲン化物と、他の元素の化合物との混合物を加水分解する方法としては特に限定されず、例えば▲1▼他の元素の化合物が溶解または懸濁した水中にチタンハロゲン化物を添加する方法、▲2▼水中にチタンハロゲン化物と他の元素の化合物との混合物を添加する方法、▲3▼チタンハロゲン化物と他の元素の化合物との混合物中に水を添加する方法、▲4▼チタンハロゲン化物中に他の元素の化合物が溶解または懸濁した水を添加する方法、▲5▼他の元素の化合物が溶解または懸濁した水中にチタンハロゲン化物の蒸気を含んだガスを通じる方法、▲6▼水中にチタンハロゲン化物の蒸気および他の元素の化合物の蒸気を含んだガスを通じる方法、▲7▼チタンハロゲン化物と他の元素の化合物との混合物中に水蒸気を含んだガスを通じる方法、▲8▼チタンハロゲン化物中に水蒸気と他の元素の化合物の蒸気を含んだガスを通じる方法、▲9▼チタンハロゲン化物を含んだガスと他の元素の化合物の蒸気を含んだガスと水蒸気を含んだガスを接触させる方法などが挙げられる。
【0049】
加水分解の際には、チタンハロゲン化物中のチタン(Ti)と、他の元素の化合物中の他の元素(E)とのモル比(E/Ti)は、1/50〜50/1の範囲であることが望ましい。また加水分解を行う温度は、通常100℃以下、好ましくは0〜70℃の範囲であることが好ましい。
【0050】
チタンハロゲン化物またはチタンハロゲン化物と他の元素の化合物との混合物を加水分解する際には、チタンハロゲン化物の加水分解により発生するハロゲン化水素によって液性が酸性を呈する。この酸性によって加水分解が完結しないことがあるので塩基を添加して中和してもよい。ここで用いられる塩基としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムなどの元素の周期表第1、2族元素の水酸化物、あるいは炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどの元素の周期表第1、2族元素の炭酸(水素)化合物、尿素、塩基性有機化合物が挙げられる。中和の終点はpHが4以上が好ましく、また中和は、70℃以下で行うことが好ましい。
【0051】
上記加水分解により得られる加水分解物は、この段階ではオルソチタン酸とも呼ばれる含水水酸化物のゲルまたは他の元素を含む含水複合水酸化物ゲルである。この含水水酸化物ゲルまたは含水複合水酸化物ゲルは、このまま重縮合触媒として用いることができるが、脱水乾燥して固体状の加水分解物(固体状含チタン化合物)とすることが好ましい。なお、この乾燥により水酸基の一部が除去されることがある。
【0052】
加水分解物の乾燥は常圧または減圧下、固相状態または水よりも高沸点の液相に懸濁した状態で行うことができ、乾燥温度は特に限定されないが、30℃以上350℃未満であることが好ましい。なお乾燥の前に含水水酸化物ゲルまたは含水複合水酸化物ゲルを水洗したり、乾燥後に固体状含チタン化合物を水洗することによって水溶性の成分を除去してもよい。また乾燥は速やかに行うことが好ましい。
【0053】
このようにして得られた固体状含チタン化合物は、その組成は共存させる他の元素の有無や量、水洗の有無、乾燥方法、乾燥の程度によって異なるが、水酸基(OH)とチタン(Ti)とのモル比(OH/Ti)が通常0.09を超えて4未満、好ましくは0.1〜3、より好ましくは0.1〜2の範囲にあることが重縮合活性の点で望ましい。水酸基とチタンとのモル比は、付着水分および加熱脱離水分の測定により求めることができる。
【0054】
水酸基とチタンとのモル比は、具体的には以下のようにして求める。
固体状含チタン化合物中の水酸基含量を求めるには、まずカールフィッシャー水分計により付着水分量を測定する。次に、熱重量分析により600℃まで加熱することにより加熱脱離水分量を測定する。600℃まで加熱することにより付着水分が脱離し、水酸基は水として脱離するものと考えられるため、加熱脱離水分量から付着水分量を差し引いた値より水酸基含有量を求める。固体状含チタン化合物中のチタン含有量は、高周波プラズマ発光分析装置により求める。上記チタン含有量と水酸基含有量とからOH/Ti比を求める。
【0055】
この固体状含チタン化合物は、重縮合反応が行われる温度、例えば約280℃においても水酸基が残留する。
また固体状含チタン化合物が他の元素を含む場合は、該化合物中のチタン(Ti)と、他の元素(E)とのモル比(E/Ti)が、1/50〜50/1、好ましくは1/40〜40/1、さらに好ましくは1/30〜30/1であることが好ましい。
【0056】
含水水酸化物ゲルまたは含水複合水酸化物ゲル固体状含チタン化合物は、塩素含量が通常0〜10000ppm、好ましくは0〜100ppmである。
このような含水水酸化物ゲル、含水複合水酸化物ゲルおよび固体状含チタン化合物(重縮合触媒)は、助触媒化合物と併用される。
【0057】
助触媒化合物は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモンおよびリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物であり、具体的には、これらの元素の酢酸塩などの脂肪酸塩、これらの元素の炭酸塩、これらの元素の硫酸塩、これらの元素の硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、これらの元素のアセチルアセトナート塩、これらの元素の酸化物などが挙げられるが、酢酸塩または炭酸塩が好ましい。
【0058】
また、リン化合物としては、元素の周期表第1族、第2族、周期表上第4周期の遷移金属、ジルコニウム、ハフニウムおよびアルミニウムから選ばれる少なくとも1種の金属のリン酸塩、亜リン酸塩が挙げられる。
【0059】
助触媒化合物としてより具体的には、
アルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウムなどの脂肪酸アルミニウム塩、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミニウムのアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸アルミニウムまたは炭酸アルミニウムが好ましい。
【0060】
バリウム化合物としては、酢酸バリウムなどの脂肪酸バリウム塩、炭酸バリウム、塩化バリウム、バリウムのアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸バリウムまたは炭酸バリウムが好ましい。
【0061】
コバルト化合物としては、酢酸コバルトなどの脂肪酸コバルト塩、炭酸コバルト、塩化コバルト、コバルトのアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸コバルトまたは炭酸コバルトが好ましい。
【0062】
マグネシウム化合物としては、酢酸マグネシウムなどの脂肪酸マグネシウム塩、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、マグネシウムのアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸マグネシウムまたは炭酸マグネシウムが好ましい。
【0063】
マンガン化合物としては、酢酸マンガンなどの脂肪酸マンガン塩、炭酸マンガン、塩化マンガン、マンガンのアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸マンガンまたは炭酸マンガンが好ましい。
【0064】
ストロンチウム化合物としては、酢酸ストロンチウムなどの脂肪酸ストロンチウム塩、炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、ストロンチウムのアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸ストロンチウムまたは炭酸ストロンチウムが好ましい。
【0065】
亜鉛化合物としては、酢酸亜鉛などの脂肪酸亜鉛塩、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、亜鉛のアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸亜鉛または炭酸亜鉛が好ましい。
【0066】
アンチモン化合物としては、二酸化アンチモン、酢酸アンチモンなどが挙げられる。
リン化合物のうちリン酸塩としては、リン酸リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸ストロンチウム、リン酸二水素ストロンチウム、リン酸水素二ストロンチウム、リン酸ジルコニウム、リン酸バリウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛などが挙げられる。このうち、特にリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましく使用される。
【0067】
また、リン化合物のうち亜リン酸塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4周期の遷移金属、ジルコニウム、ハフニウム、およびアルミニウムから選ばれる少なくとも1種の金属の亜リン酸塩が使用され、具体的には、亜リン酸リチウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸ストロンチウム、亜リン酸ジルコニウム、亜リン酸バリウム、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛などが挙げられる。このうち、特に亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウムが、好ましく使用される。
【0068】
助触媒化合物としては、これらのなかでも炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウムなどのマグネシウム化合物;炭酸カルシウム、酢酸カルシウムなどのカルシウム化合物;塩化亜鉛、酢酸亜鉛などの亜鉛化合物が好ましい。助触媒化合物として、マグネシウム化合物を用いると透明性に優れたポリエチレンテレフタレートが得られる。
【0069】
これらの助触媒化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
このような助触媒化合物は、上記重縮合触媒中のチタン(含チタン加水分解物が他の元素を含む場合は、チタンおよび他の元素)(I)と、助触媒化合物中の金属原子(II)とのモル比〔(II)/(I)〕で、1/50〜50/1、好ましくは1/40〜40/1、より好ましくは1/30〜30/1の範囲の量で用いられることが望ましい。なお、リン酸塩や亜リン酸塩などのリン化合物を使用する場合は、リン化合物に含まれる金属原子換算である。
【0070】
重縮合反応に必要に応じて用いられる安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリn-ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸エステル類;トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類;メチルアッシドホスフェート、イソプロピルアッシドホスフェート、ブチルアッシドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェートなどの酸性リン酸エステルおよびリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸などのリン化合物が用いられる。
【0071】
これらの重縮合触媒または安定剤の使用割合は、テレフタル酸とエチレングリコールとの混合物の重量に対して、重縮合触媒の場合には重縮合触媒中の金属の重量として、通常0.0005〜0.2重量%、好ましくは0.001〜0.05重量%の範囲であり、また安定剤は、安定剤中のリン原子の重量として、通常0.001〜0.1重量%、好ましくは0.002〜0.02重量%の範囲である。これらの重縮合触媒および安定剤の供給方法は、エステル化反応工程の段階において供給することもできるし、重縮合反応工程の第1段目の反応器に供給することもできる。
【0072】
本発明のポリエチレンテレフタレートには、上述のようにテレフタル酸以外のジカルボン酸やエチレングリコール以外のジオールが20モル%以下の量で含まれていてもよいが、特に好ましくいポリエチレンテレフタレートは、下記一般式
【0073】
【化1】
Figure 0004408997
【0074】
で表わされるエチレンテレフタレート成分単位の含有率が、95.0〜99.0モル%の範囲にあり、下記一般式
【0075】
【化2】
Figure 0004408997
【0076】
で表わされるジオキシエチレンテレフタレート成分単位の含有率が、1.0〜5.0モル%の範囲にあることが望ましい。このようにして、最終重縮合反応器から得られたポリエチレンテレフタレートは、通常、溶融押出成形法によって粒状(チップ状)に成形される。
【0077】
このような粒状ポリエチレンテレフタレートは、通常2.0〜5.0mm、好ましくは2.2〜4.0mmの平均粒径を有することが望ましい。このようにして液相重縮合工程を経た粒状ポリエチレンテレフタレートは、通常固相重縮合工程に供給される。
【0078】
粒状ポリエチレンテレフタレートは、固相重縮合を行う場合の温度より低い温度に加熱して予備結晶化を行った後、固相重縮合工程に供給してもよい。
このような予備結晶化工程は、粒状ポリエチレンテレフタレートを乾燥状態で、例えば120〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度に、1分〜4時間加熱することによって行ってもよく、あるいは粒状ポリエチレンテレフタレートを水蒸気雰囲気下、水蒸気含有不活性ガス雰囲気下または水蒸気含有空気雰囲気下で、例えば120〜200℃の温度に1分間以上加熱することによって行ってもよい。
【0079】
このような粒状ポリエチレンテレフタレートが供給される固相重縮合工程は、少なくとも1段からなり、重縮合温度が通常190〜230℃、好ましくは195〜225℃であり、圧力が通常、1kg/cm2 G〜10Torr、好ましくは常圧ないし100Torrの条件下で、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で固相重縮合反応が実施される。これらの不活性ガスの中では窒素ガスが好ましい。
【0080】
このようして得られたポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、通常0.50dl/g以上、好ましくは0.50〜1.50dl/g、より好ましくは0.72〜1.0dl/gであることが望ましい。このポリエチレンテレフタレートの密度は、通常1.37g/cm3 以上、好ましくは1.37〜1.44g/cm3 、より好ましくは1.38〜1.43g/cm3、さらに好ましくは1.39〜1.42g/cm3 以上であることが望ましい。
【0081】
また上記のような重縮合触媒および助触媒化合物の存在下に重縮合して得られたポリエチレンテレフタレートは、アセトアルデヒドの含有量が少なく、このようなポリエチレンテレフタレートのアセトアルデヒド含有量は、通常4ppm以下、好ましくは0.1〜3.5ppm、より好ましくは0.5〜3.0ppmの範囲にあることが望ましい。
【0082】
本発明では、上記のようなポリエチレンテレフタレートの製造工程において、反応が終了したポリエチレンテレフタレートに対して以下のいずれかの処理を行う。反応が終了したポリエチレンテレフタレートとは、反応後さらに固有粘度を増加させないポリエチレンテレフタレートであり、例えば液相重縮合工程を経たポリエチレンテレフタレートまたは固相重縮合工程を経たポリエチレンテレフタレートである。このポリエチレンテレフタレートは、通常粒状であるが、粉状、ストランド状であってもよい。
(1)ポリエチレンテレフタレートと、亜リン酸水溶液、次亜リン酸水溶液、リン酸エステル水溶液、亜リン酸エステル水溶液または次亜リン酸エステル水溶液(以下これらを「リン含有水溶液」という。)とを接触させるリン含有水溶液処理。
(2)ポリエチレンテレフタレートと、有機溶媒とを接触させる有機溶媒処理。
(3)ポリエチレンテレフタレートと、リン酸の有機溶媒溶液、亜リン酸の有機溶媒溶液、次亜リン酸の有機溶媒溶液、リン酸エステルの有機溶媒溶液、亜リン酸エステルの有機溶媒溶液または次亜リン酸エステルの有機溶媒溶液(以下これらを「リン含有有機溶媒溶液」という。)とを接触させるリン含有有機溶媒溶液処理。
【0083】
上記いずれかの処理が行われるポリエチレンテレフタレートは、通常粒状であるが、粉状、ストランド状であってもよい。
以下、上記各処理について順次説明する。
【0084】
リン含有水溶液処理
リン含有水溶液処理は、ポリエチレンテレフタレートと、亜リン酸水溶液、次亜リン酸水溶液、リン酸エステル水溶液、亜リン酸エステル水溶液または次亜リン酸エステル水溶液とを接触させる。
【0085】
ここでリン酸エステルとしては、例えばモノメチルホスフェート、ジメチルホスフェート、トリメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、ジエチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどが挙げられ、亜リン酸エステルとしては、例えばメチルホスファイト、ジメチルホスファイト、トリメチルホスファイト、エチルホスファイト、ジエチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどが挙げられ、次亜リン酸エステルとしては、例えば次亜リン酸メチル、次亜リン酸トリメチルなどが挙げられる。これらのなかではリン酸エステルが好ましい。
【0086】
ポリエチレンテレフタレートと接触させるリン含有水溶液は、リン原子換算の濃度が、10ppm以上、好ましくは10〜100000ppm、より好ましくは100〜70000ppm、特に好ましくは1000〜50000ppmであることが望ましい。
【0087】
リン含有水溶液の濃度が上記範囲にあると、得られたポリエチレンテレフタレートを成形する際に、アセトアルデヒドの含有量が増加する割合を低減する効果が高く、かつ経済的である。
【0088】
ポリエチレンテレフタレートとリン含有水溶液との接触は、連続方式、バッチ方式のいずれでも行うことができる。
ポリエチレンテレフタレートとリン含有水溶液とをバッチ方式で接触させる場合は、例えばサイロ型の処理装置を用いることができる。具体的には、サイロにポリエチレンテレフタレートとリン含有水溶液とを入れ、ポリエチレンテレフタレートをリン含有水溶液に浸漬させる。また、回転可能な筒型容器にポリエチレンテレフタレートとリン含有水溶液を入れ、ポリエチレンテレフタレートをリン含有水溶液に浸漬させ、筒型容器を回転させながら接触させて、接触処理をさらに効率的にすることもできる。
ポリエチレンテレフタレートとリン含有水溶液とを連続で接触させる場合は、例えば塔型の処理装置を用い、塔型の処理装置の上部からポリエチレンテレフタレートを連続的に入れ、並流または向流でリン含有水溶液を塔型の処理装置に連続的に供給し、ポリエチレンテレフタレートをリン含有水溶液に浸漬させて接触させる。
【0089】
ポリエチレンテレフタレートとリン含有水溶液との接触温度は、通常0〜100℃、好ましくは10〜95℃の範囲であり、接触時間は通常5分〜10時間、好ましくは30分〜6時間であることが望ましい。
【0090】
ポリエチレンテレフタレートとリン含有水溶液とを接触させた後は、ポリエチレンテレフタレートとリン含有水溶液とを分離し、粒状振動篩機、シモンカーターなどの水切り装置で水切りし、乾燥する。リン含有水溶液と接触させたポリエチレンテレフタレートの乾燥は、通常用いられるポリエチレンテレフタレートの乾燥方法を用いることができる。
【0091】
ポリエチレンテレフタレートを連続的に乾燥する方法としては、上部よりポリエチレンテレフタレートを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパー型の通気乾燥機が通常使用される。乾燥ガス量を減らし効率的に乾燥する方法としては、回転ディスク型加熱方式の連続乾燥機を用いる方法があり、この方法では少量の乾燥ガスを通気しながら、回転ディスクや外部ジャケットに加熱蒸気、加熱媒体などを供給しポリエチレンテレフタレートを間接的に加熱乾燥することにより乾燥する。
【0092】
ポリエチレンテレフタレートをバッチ方式で乾燥する方法としては、ダブルコーン型回転乾燥機を用いる方法があり、この方法では、減圧下でもしくは減圧下少量の乾燥ガスを通気しながら、または大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥する。乾燥ガスとしては大気空気でも差し支えないが、ポリエチレンテレフタレートの加水分解による分子量低下を防止する点からは乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
【0093】
上記のようにポリエチレンテレフタレートとリン含有水溶液とを接触させると、成形する際にアセトアルデヒドの増加量が少なく、固有粘度の低下が少ないポリエチレンテレフタレートが得られる。これはポリエチレンテレフタレートとリン含有水溶液とを接触させると、ポリエチレンテレフタレート中の重縮合触媒が失活するためであると推定される。
【0094】
有機溶媒処理
有機溶媒処理は、ポリエチレンテレフタレートと、有機溶媒とを接触させる。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、クミルアルコール、イソプロピルアルコール、イソプロピルベンジルアルコールなどの炭素原子数が1〜18、好ましくは1〜10のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾキノンなどの炭素原子数が3〜15、好ましくは3〜9のケトン類;ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカンなどの炭素原子数が5〜16、好ましくは5〜10の飽和炭化水素が挙げられる。これらのなかではイソプロパノールまたはアセトンが好ましい。
【0095】
ポリエチレンテレフタレートと有機溶媒との接触は、連続方式、バッチ方式のいずれでも行うことができる。
ポリエチレンテレフタレートと有機溶媒とをバッチ方式で接触させる場合は、例えばサイロ型の処理装置を用いることができる。具体的には、サイロにポリエチレンテレフタレートと有機溶媒とを入れ、ポリエチレンテレフタレートを有機溶媒に浸漬させる。また、回転可能な筒型容器にポリエチレンテレフタレートと有機溶媒を入れ、ポリエチレンテレフタレートを有機溶媒に浸漬させ、筒型容器を回転させながら接触させて、接触処理をさらに効率的にすることもできる。
【0096】
ポリエチレンテレフタレートと有機溶媒とを連続で接触させる場合は、例えば塔型の処理装置を用い、塔型の処理装置の上部からポリエチレンテレフタレートを連続的に入れ、並流または向流で有機溶媒を塔型の処理装置に連続的に供給し、ポリエチレンテレフタレートを有機溶媒に浸漬させて接触させる。
【0097】
ポリエチレンテレフタレートと有機溶媒との接触温度は、用いる有機溶媒の沸点にもよるが、通常0〜100℃、好ましくは10〜95℃の範囲であり、接触時間は通常3分〜5時間、好ましくは30分〜4時間であることが望ましい。
【0098】
ポリエチレンテレフタレートと有機溶媒とを接触させた後は、ポリエチレンテレフタレートと有機溶媒とを分離し、粒状振動篩機、シモンカーターなどの水切り装置で水切りし、乾燥する。有機溶媒と接触させたポリエチレンテレフタレートの乾燥は、通常用いられるポリエチレンテレフタレートの乾燥方法を用いることができる。
【0099】
ポリエチレンテレフタレートを乾燥する方法としては、上記リン含有水溶液処理と同様の連続的に乾燥する方法、バッチ方式で乾燥する方法が挙げられる。
リン含有有機溶媒溶液処理
リン含有有機溶媒溶液処理は、ポリエチレンテレフタレートと、リン酸の有機溶媒溶液、亜リン酸の有機溶媒溶液、次亜リン酸の有機溶媒溶液、リン酸エステルの有機溶媒溶液、亜リン酸エステルの有機溶媒溶液または次亜リン酸エステルの有機溶媒溶液とを接触させる。
【0100】
ここでリン酸エステル、亜リン酸エステル、次亜リン酸エステルとしては、上記リン含有水溶液処理に用いられるものと同様のリン酸エステル、亜リン酸エステル、次亜リン酸エステルが挙げられる。これらのなかではリン酸エステルが好ましい。
【0101】
リン含有有機溶媒溶液に用いられる有機溶媒としては、上記有機溶媒処理に用いられるものと同様の炭素原子数が1〜18、好ましくは1〜10のアルコール類;炭素原子数が3〜15、好ましくは3〜9のケトン類;炭素原子数が5〜16、好ましくは5〜10の飽和炭化水素が挙げられる。これらのなかではイソプロパノールまたはアセトンが好ましい。
【0102】
ポリエチレンテレフタレートと接触させるリン含有有機溶媒溶液は、リン原子換算の濃度が、10ppm以上、好ましくは10〜100000ppm、より好ましくは100〜70000ppm、特に好ましくは1000〜50000ppmであることが望ましい。
【0103】
リン含有有機溶媒溶液の濃度が上記範囲にあると、得られたポリエチレンテレフタレートを成形する際に、アセトアルデヒドが増加する量を低減する効果が高く、かつ経済的である。
【0104】
ポリエチレンテレフタレートとリン含有有機溶媒溶液との接触は、連続方式、バッチ方式のいずれでも行うことができる。
ポリエチレンテレフタレートとリン含有有機溶媒溶液とをバッチ方式で接触させる場合は、例えばサイロ型の処理装置を用いることができる。具体的には、サイロにポリエチレンテレフタレートとリン含有有機溶媒溶液とを入れ、ポリエチレンテレフタレートをリン含有有機溶媒溶液に浸漬させる。また、回転可能な筒型容器にポリエチレンテレフタレートとリン含有有機溶媒溶液を入れ、ポリエチレンテレフタレートをリン含有有機溶媒溶液に浸漬させ、筒型容器を回転させながら接触させて、接触処理をさらに効率的にすることもできる。
【0105】
ポリエチレンテレフタレートとリン含有有機溶媒溶液とを連続で接触させる場合は、例えば塔型の処理装置を用い、塔型の処理装置の上部からポリエチレンテレフタレートを連続的に入れ、並流または向流でリン含有有機溶媒溶液を塔型の処理装置に連続的に供給し、ポリエチレンテレフタレートをリン含有有機溶媒溶液に浸漬させて接触させる。
【0106】
ポリエチレンテレフタレートとリン含有有機溶媒溶液との接触温度は、用いる有機溶媒にもよるが、通常0〜100℃、好ましくは0〜95℃の範囲であり、接触時間は通常5分〜10時間、好ましくは30分〜6時間であることが望ましい。
【0107】
ポリエチレンテレフタレートとリン含有有機溶媒溶液とを接触させた後は、ポリエチレンテレフタレートとリン含有有機溶媒溶液とを分離し、粒状振動篩機、シモンカーターなどの水切り装置で水切りし、乾燥する。リン含有有機溶媒溶液と接触させたポリエチレンテレフタレートの乾燥は、通常用いられるポリエチレンテレフタレートの乾燥方法を用いることができる。
【0108】
ポリエチレンテレフタレートを乾燥する方法としては、上記リン含有水溶液処理と同様の連続的に乾燥する方法、バッチ方式で乾燥する方法が挙げられる。
上記処理のなかでは、リン含有水溶液処理およびリン含有有機溶媒溶液処理が好ましく、特にリン含有水溶液処理が好ましい。
【0109】
上記のようにポリエチレンテレフタレートにリン含有水溶液処理、有機溶媒処理またはリン含有有機溶媒溶液処理を施すことによって、成形時にアセトアルデヒドが増加するのを抑制することができる。このようにポリエチレンテレフタレートに上記いずれかの処理を施すことによって、成形時にポリエチレンテレフタレート中に含まれるアセトアルデヒドの増加を抑制できるのは、ポリエチレンテレフタレートに上記いずれかの処理を施すことによって、ポリエチレンテレフタレート中に含まれる重縮合触媒が失活し、したがって成形時に加熱されても分解反応あるいはエステル交換反応がほとんど進行せず、このため生成するアセトアルデヒドの量が少なくなるのであろうと考えられる。
【0110】
上記のようにして処理が施されたポリエチレンテレフタレートは、成形時におけるアセトアルデヒドの増加が著しく抑制される。このことは、前述したような方法で処理されたポリエチレンテレフタレートを275℃の温度に加熱溶融して段付角板を成形した後のアセトアルデヒドの含有量を測定することにより確かめられる。
【0111】
本発明に係るポリエチレンテレフタレートは、アセトアルデヒドの含有量が少なく、成形時にアセトアルデヒドの増加量が少ない。したがってアセトアルデヒド含有量の少ないボトルあるいはフィルム、シートなどの成形品を得ることができる。なおアセトアルデヒドの含有量の多い成形品を飲食物の容器として用いた場合には、悪臭あるいは異臭の原因となったり、内容物の風味、香りが変化する。またアセトアルデヒドの含有量が多いポリエチレンテレフタレートから製造される写真用フィルムは、かぶりなどを起こしやすい。
【0112】
【発明の効果】
本発明に係るポリエチレンテレフタレートでは、アセトアルデヒドの含有量が少なく、しかも成形時に生成するアセトアルデヒドの量が少ない。このため、得られるポリエチレンテレフタレート成形品中に含まれるアセトアルデヒドの量が少ない。したがって、ボトルをはじめとしてフィルム、シート形成用などに原料として本発明に係るポリエチレンテレフタレートを使用して飲食物の容器としての成形品を製造した場合に、その中に充填される内容物の風味や香りを損ねることがない。
【0113】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0114】
【実施例1】
固体状チタン化合物の調製
1000mlガラス製ビーカーに脱イオン水500mlを秤取し、氷浴にて冷却した後攪拌しながら四塩化チタン5gを滴下した。塩化水素の発生が止まったら氷浴より取り出し、攪拌しながら25%アンモニア水を滴下し、液のpHを8にした。生成したチタン水酸化物の沈殿は2500回転、15分間の遠心沈降で上清と分離した。その後、得られたチタン水酸化物の沈殿を脱イオン水で5回洗浄した。洗浄後の固液分離は2500回転、15分間の遠心沈降で行った。洗浄後のチタン水酸化物を70℃、10Torr、18時間の減圧乾燥で水分を除去し、固体状チタン化合物を得た。得られた固体状チタン化合物は重縮合触媒と使用する前に10ミクロン程度の粒子に粉砕した。
【0115】
このようにして得られた固体状チタン化合物の付着水分量をカールフィッシャー水分計により測定したところ、6.7重量%の水分を含有していることがわかった。また熱重量測定により加熱減量を測定したところ、280℃までに当初重量の7.50重量%、280℃から600℃までにさらに2.17重量%が減量し、この減量は水分および窒素化合物の脱離によるものであることが分かった。触媒に含まれる窒素は1.3重量%であり、塩素は14ppmしか含まれていないことから、窒素は塩化アンモニウムに由来するものではなく、アンモニアに由来するものであると考えられる。これらのことから、得られた固体状チタン化合物はチタン対水酸基がモル比で1:0.15であることがわかった。なお、窒素は微量全窒素分析装置(化学発光法)で、塩素はクロマトグラフィーで分析し、それぞれアンモニア、塩化水素として脱離するとして計算した。
【0116】
ポリエステルの製造
定常運転時に33500重量部の反応液が滞留する反応器内に、6458重量部/時の高純度テレフタル酸と2615重量部/時のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを連続的に供給し、攪拌下、窒素雰囲気で260℃、0.9kg/cm2 Gに維持された条件下にエステル化反応を行った。さらにエステル化反応の際には上記のようにして調製した固体状チタン化合物をチタン原子として、0.187重量部/時および酢酸マグネシウムをマグネシウム原子として、0.187重量部/時を供給した。このエステル化反応では、水とエチレングリコールとの混合液が留去された。
【0117】
エステル化反応物(低次縮合物)は、平均滞留時間が3.5時間になるように制御して、連続的に系外に抜き出した。
上記で得られたエチレングリコールとテレフタル酸との低次縮合物の数平均分子量は、600〜1300(3〜5量体)であった。
【0118】
低次縮合物中の液相重縮合反応をリン酸トリブチル0.831重量部/時を供給しながら280℃、1Torrの条件下で行った。
ポリエチレンテレフタレートの極限粘度(IV)が0.65dl/gに達するまでに要した滞留時間は(液相重合時間)は95分であった。
【0119】
さらに、この液相重合により得られたポリエチレンテレフタレートは、窒素雰囲気下約170℃で2時間結晶化を行った後、塔型の固相重合機に充填し、窒素雰囲気下210℃で14時間固相重合を行った。
【0120】
このようにして得られたポリエチレンテレフタレートのチタン原子含有量は25ppmであり、マグネシウム原子含有量は25ppmであり、チタン原子/マグネシウム原子モル比は0.5であり、固有粘度は0.85dl/gであり、密度が1.40g/cm3であり、アセトアルデヒド含有量が1.0ppmであった。
【0121】
上記のポリエチレンテレフタレート2.5kgをステンレス容器内で0.0695重量%のリン酸トリメチル水溶液4kgに含浸させた。そのまま常温で4時間保持した後、粒状ポリエチレンテレフタレートとリン酸トリメチル水溶液とを分離し、水切りした後、160℃、5時間窒素気流下で乾燥した。得られたポリエチレンテレフタレートのアセトアルデヒド含有量は1.0ppmであった。このポリエチレンテレフタレートを上記した方法で成型した段付き角板のアセトアルデヒド含有量は9.0ppmであり、成形前後のアセトアルデヒド含有量の差は8.0ppmであり、固有粘度は0.821dl/gであった。
【0122】
【実施例2】
実施例1で用いたものと同様の粒状ポリエチレンテレフタレート2.5kgをステンレス容器内で0.0695重量%のリン酸トリメチル水溶液4kgに浸漬した。次に、ポリエチレンテレフタレートおよびリン酸トリメチル水溶液が入ったステンレス製容器を外部より加熱し、内温を95℃にコントロールし、4時間保持して加熱処理を行った後、粒状ポリエチレンテレフタレートとリン酸トリメチル水溶液とを分離し、水切りした後、160℃、5時間窒素気流下で乾燥した。得られたポリエチレンテレフタレートを用いて上記した方法で成型した段付き角板のアセトアルデヒド含有量は9.5ppmであり、成形前後のアセトアルデヒド含有量の差は8.5ppmであり、固有粘度は0.802dl/gであった。
【0123】
【比較例1】
実施例1で用いたものと同様の粒状ポリエチレンテレフタレートにリン含有水溶液との接触処理をせずに、上記した方法で段付き角板を成型した。この段付き角板のアセトアルデヒド含有量は20pmであり、成形前後のアセトアルデヒド含有量の差は19ppm、固有粘度は0.833dl/gであった。
【0124】
【比較例2】
リン酸トリメチル水溶液に代えて、同濃度のリン酸水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして粒状ポリエチレンテレフタレートを処理した。得られたポリエチレンテレフタレートを用いて上記した方法で成型した段付き角板のアセトアルデヒド含有量は13ppmであり、成形前後のアセトアルデヒド含有量の差は12ppmであり、固有粘度は0.814dl/gであった。
【0125】
【実施例3】
定常運転時に33500重量部の反応液が滞留する反応器内に6329重量部/時の高純度テレフタル酸と129重量部のイソフタル酸と2615重量部/時のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを連続的に供給し、、攪拌下、窒素雰囲気で260℃、0.9kg/cm2 Gに維持された条件下にエステル化反応を行った。さらにエステル化反応の際には実施例1と同様にして調製した固体状チタン化合物をチタン原子として、0.112重量部/時および酢酸マグネシウムをマグネシウム原子として、0.187重量部/時を供給した。このエステル化反応では、水とエチレングリコールとの混合液が留去された。
【0126】
エステル化反応物(低次縮合物)は、平均滞留時間が3.5時間になるように制御して、連続的に系外に抜き出した。
上記で得られたエチレングリコールとテレフタル酸との低次縮合物の数平均分子量は、600〜1300(3〜5量体)であった。
【0127】
低次縮合物中の液相重縮合反応をリン酸トリブチル0.831重量部/時を供給しながら280℃、1Torrの条件下で行った。
ポリエチレンテレフタレートの極限粘度(IV)が0.65dl/gに達するまでに要した滞留時間は(液相重合時間)は115分であった。
【0128】
さらに、その液相重合によるポリエチレンテレフタレートは、窒素雰囲気下約170℃で2時間結晶化を行った後、塔型の固相重合機に充填し、窒素雰囲気下210℃で17時間固相重合を行った。
【0129】
このようにして得られたポリエチレンテレフタレートのチタン原子含有量は15ppm、マグネシウム原子含有量は25ppmであり、チタン原子/マグネシウム原子モル比は0.3であり、固有粘度は0.83dl/gであり、密度が1.40g/cm3であり、アセトアルデヒド含有量が0.9ppmであった。
【0130】
上記のポリエチレンテレフタレート2.5kgをステンレス容器内で0.0695重量%のリン酸トリメチル水溶液4kgに含浸させた。そのまま常温で4時間保持した後、粒状ポリエチレンテレフタレートとリン酸トリメチル水溶液とを分離し、水切りした後、160℃、5時間窒素気流下で乾燥した。得られたポリエチレンテレフタレートのアセトアルデヒド含有量は0.8ppmであった。このポリエチレンテレフタレートを上記した方法で成型した段付き角板のアセトアルデヒド含有量は8.2ppmであり、成形前後のアセトアルデヒド含有量の差は7.4ppmであり、固有粘度は0.819dl/gであった。
【0131】
【実施例4】
実施例3で固相重合したポリエチレンテレフタレートをステンレス容器内で95℃のイソプロパノールに浸漬し、4時間加熱、保持した。
【0132】
ポリエチレンテレフタレートとイソプロパノールを分離した後、160℃、5時間窒素気流下で乾燥した。得られたポリエチレンテレフタレートのアセトアルデヒド含有量は0.9ppmであった。このポリエチレンテレフタレートを上記した方法で成型した段付き角板のアセトアルデヒド含有量は9.5ppmであり、成形前後のアセトアルデヒド含有量の差は8.6ppmであり、固有粘度は0.810dl/gであった。
【0133】
【実施例5】
実施例3で固相重合したポリエチレンテレフタレートをステンレス容器内でリン酸トリブチルのイソプロパノール溶液(リン酸トリブチル0.0695重量%)に浸漬し、2時間加熱、保持した。
【0134】
ポリエチレンテレフタレートとイソプロパノール溶液を分離した後、160℃、5時間窒素気流下で乾燥した。得られたポリエチレンテレフタレートのアセトアルデヒド含有量は0.7ppmであった。このポリエチレンテレフタレートを上記した方法で成型した段付き角板のアセトアルデヒド含有量は8.2ppmであり、成形前後のアセトアルデヒド含有量の差は7.5ppmであり、固有粘度は0.808dl/gであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】段付角板状成形物の斜視図である。

Claims (1)

  1. 固有粘度が0.50dl/g以上であり、
    チタンハロゲン化物の加水分解により得られる重縮合触媒に由来するチタン原子を0.1〜200ppmの量で含み、
    マグネシウム化合物からなる助触媒化合物に由来するマグネシウム原子を0.1〜500ppmの量で含み、
    前記チタン原子と前記マグネシウム原子とのモル比(チタン原子/マグネシウム原子)が0.05〜50の範囲にあり、
    アセトアルデヒドの含有量が4ppm以下であり、かつ該含有量をW0ppmとし、275℃の温度に加熱溶融して段付角板を成形した後のアセトアルデヒドの含有量をW1ppmとしたときに、W1−W0が10ppm以下であり、
    ゲルマニウム原子の含有量が5ppm以下であることを特徴とするポリエチレンテレフタレート。
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