JP2001048966A - ポリエチレンテレフタレートおよび中空成形体 - Google Patents

ポリエチレンテレフタレートおよび中空成形体

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JP2001048966A JP11228860A JP22886099A JP2001048966A JP 2001048966 A JP2001048966 A JP 2001048966A JP 11228860 A JP11228860 A JP 11228860A JP 22886099 A JP22886099 A JP 22886099A JP 2001048966 A JP2001048966 A JP 2001048966A
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Takayuki Onoki
隆 行 小野木
Seiji Noda
田 誠 司 野
Hideshi Hori
秀 史 堀
Junichi Imuda
淳 一 伊牟田
Katsuyuki Sakai
井 勝 幸 酒
Shoji Hiraoka
岡 章 二 平
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Abstract

(57)【要約】 【課題】金型汚れを発生させにくいポリエチレンテレフ
タレートおよびこのポリエチレンテレフタレートから得
られる中空成形体を提供すること。 【解決手段】ポリエチレンテレフタレートは、固有粘度
が0.50dl/g以上であり、チタン原子を0.1〜
200ppmの量で含み、ベリリウム、マグネシウム、
カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アル
ミニウム、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛および
アンチモンから選ばれる金属原子Mを0.1〜500p
pmの量で含み、前記チタン原子と前記金属原子Mとの
モル比(チタン原子/金属原子M)が0.05〜50の
範囲にあり、環状三量体の含有量が0.5重量%以下で
あり、かつ該含有量をx重量%とし、290℃の温度に
加熱溶融して段付角板を成形した後の環状三量体の含有
量の増加量をy重量%としたときに、xとyとが y≦−0.2x+0.2 を満たす。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、ポリエチレンテレフタレ
ートおよび中空成形体に関し、さらに詳しくは、成形時
に金型汚れが発生しにくいポリエチレンテレフタレート
およびこのポリエチレンテレフタレートから得られる中
空成形体に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】従来、調味料、油、飲料、化粧
品、洗剤などの容器の素材としては、充填内容物の種類
およびその使用目的に応じて種々の樹脂が採用されてい
る。
【0003】これらのうちでポリエチレンテレフタレー
トは機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリヤー性
に優れているので、特にジュース、清涼飲料、炭酸飲料
などの飲料充填用容器の素材として好適である。
【0004】このようなポリエチレンテレフタレート
は、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、
エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体と
をエステル化した後、重縮合触媒の存在下で液相重縮合
し、次いで固相重縮合して得ることができる。そしてこ
のポリエチレンテレフタレートは、例えば射出成形機械
などの成形機に供給して中空成形体用プリフォームを成
形し、このプリフォームを所定形状の金型に挿入し延伸
ブロー成形したり、さらに熱処理(ヒートセット)して
中空成形容器に成形される。
【0005】ところが、上記したような製造方法で得ら
れる従来公知のポリエチレンテレフタレートには、環状
三量体などのオリゴマー類が含まれており、この環状三
量体などのオリゴマー類がブロー成形金型内面や金型の
ガス排気口、排気管などに付着して金型汚れが発生した
り、あるいはまた該オリゴマー類が射出成形機のベント
部に付着することがあった。
【0006】このような金型汚れは、得られるボトルの
表面肌荒れや白化の原因となる。もしボトルが白化して
しまうと、そのボトルは廃棄しなければならない。この
ため従来公知のポリエチレンテレフタレートを用いてボ
トルを成形する際には、金型汚れを頻繁に除去しなけれ
ばならず、ボトルの生産性が著しく低下してしまうとい
う大きな問題点があった。
【0007】本発明者らは、上記のような現状に鑑み、
成形時に金型汚れを発生させにくいポリエチレンテレフ
タレートを得るべく鋭意研究したところ、成形時に金型
汚れが発生する主な原因は、ポリエチレンテレフタレー
トの成形時に環状三量体などのオリゴマー類が多量に生
成してポリエチレンテレフタレート中に含まれる環状三
量体などのオリゴマー類の総量が増加してしまうことに
あること見出すと共に、固相重縮合工程を経て得られる
ポリエチレンテレフタレートを水などと接触させること
により成形時の環状三量体などのオリゴマー量の増加を
著しく抑制できることを見出した(特開平5−9799
0号公報、特開平8−283393号公報等参照)。
【0008】その後も本発明者らは、成形時におけるオ
リゴマーの生成量がさらに少なく、金型汚れを発生させ
にくいポリエチレンテレフタレートを得るべく鋭意研究
したところ、ポリエチレンテレフタレートをエステル化
工程、液相重縮合工程および固相重縮合工程を経て製造
する際に、重縮合触媒として特定の触媒を用い、かつ固
相重縮合工程を経て得られたポリエチレンテレフタレー
トをリン酸エステル水溶液、有機溶媒などと接触させる
と、得られるポリエチレンテレフタレートは、環状三量
体の含有量が少なく、しかも成形時に環状三量体などの
オリゴマーの増加を抑制することができ、金型汚れを発
生させにくいことを見出して本願発明を完成するに至っ
た。
【0009】
【発明の目的】本発明は、上記のような従来技術に伴う
問題点を解決しようとするものであって、金型汚れを発
生させにくいポリエチレンテレフタレートおよびこのよ
うなポリエチレンテレフタレートから得られる環状三量
体の含有量の少ない中空成形体を提供することを目的と
している。
【0010】
【発明の概要】本発明に係るポリエチレンテレフタレー
トは、固有粘度が0.50dl/g以上であり、チタン
原子を0.1〜200ppmの量で含み、ベリリウム、
マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウ
ム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、マンガン、コバ
ルト、亜鉛、ゲルマニウムおよびアンチモンから選ばれ
る金属原子Mを0.1〜500ppmの量で含み、前記
チタン原子と前記金属原子Mとのモル比(チタン原子/
金属原子M)が0.05〜50の範囲にあり、環状三量
体の含有量が0.5重量%以下であり、かつ該含有量を
x重量%とし、290℃の温度に加熱溶融して段付角板
を成形した後の環状三量体の含有量の増加量をy重量%
としたときに、xとyとが y≦−0.2x+0.2 を満たすことを特徴としている。
【0011】本発明では、上記チタン原子が、チタンハ
ロゲン化物の加水分解により得られる重縮合触媒に由来
するものであることが好ましい。本発明に係る中空成形
体は、上記ポリエチレンテレフタレートから得られ、環
状三量体含有量が0.6重量%以下であることを特徴と
している。
【0012】本発明に係るポリエチレンテレフタレート
は、成形時に金型汚れが発生しにくい。本発明に係る中
空成形体は、環状三量体含有量が少なく、したがって外
観が良好である。
【0013】
【発明の具体的説明】以下、本発明に係るポリエチレン
テレフタレートおよび中空成形体について具体的に説明
する。
【0014】ポリエチレンテレフタレート 本発明に係るポリエチレンテレフタレートは、o-クロロ
フェノール中25℃で測定した固有粘度が、通常0.5
0dl/g以上、好ましくは0.50〜1.50dl/
g、より好ましくは0.72〜1.0dl/gであるこ
とが望ましい。このポリエチレンテレフタレートの密度
は、通常1.37g/cm3 以上、好ましくは1.37
〜1.44g/cm3 、より好ましくは1.38〜1.
43g/cm3、さらに好ましくは1.39〜1.42
g/cm3 以上であることが望ましい。
【0015】本発明に係るポリエチレンテレフタレート
は、チタン原子をポリエチレンテレフタレートの重量に
対して0.1〜200ppm、好ましくは0.5〜10
0ppm、より好ましくは1〜50ppmの量で含み、
ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウ
ム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、マン
ガン、コバルト、亜鉛およびアンチモンから選ばれる金
属原子Mをポリエチレンテレフタレートの重量に対して
0.1〜500ppm、好ましくは0.5〜300pp
m、より好ましくは1〜250ppmの量で含んでい
る。
【0016】上記金属原子Mとしてはマグネシウム、カ
ルシウム、亜鉛が好ましく、特にマグネシウムが好まし
い。金属原子Mは、ポリエチレンテレフタレート中に2
種以上含まれていてもよく、その場合は2種以上の金属
原子Mの含有量の合計が上記範囲である。
【0017】また本発明に係るポリエチレンテレフタレ
ートは、ゲルマニウム原子の含有量が5ppm以下であ
ることが望ましい。ポリエチレンテレフタレートに含ま
れる上記チタン原子は、後述するようなチタンハロゲン
化物の加水分解により得られる重縮合触媒に由来するチ
タン原子であることが好ましく、上記金属原子Mは、後
述するような助触媒化合物に由来する金属原子であるこ
とが好ましい。
【0018】また、前記チタン原子と前記金属原子Mと
のモル比(チタン原子/金属原子M)は、通常0.05
〜50、好ましくは0.1〜30、より好ましくは0.
2〜25の範囲にある。
【0019】本発明において、ポリエチレンテレフタレ
ート中のチタン原子および金属原子Mの含有量は、蛍光
X線分析法により測定される。本発明に係るポリエチレ
ンテレフタレートは、環状三量体(下記式で示されるエ
チレンテレフタレートの環状三量体)
【0020】
【化1】
【0021】の含有量(x重量%)が5重量%以下、好
ましくは0.45重量%以下である。また本発明に係る
ポリエチレンテレフタレート(環状三量体の含有量がx
重量%)は、290℃の温度に加熱溶融して段付角板を
成形した後の環状三量体の含有量の増加量をy重量%と
したときに、xとyとが y≦−0.20x+0.20 好ましくは y≦−0.20x+0.18 より好ましくは y≦−0.20x+0.16 を満たすことが望ましい。
【0022】このような本発明に係るポリエチレンテレ
フタレートは、環状三量体の含有量が少なく、しかも成
形体に成形する際に環状三量体の含有量の増加が著しく
抑制され、成形時にポリエチレンテレフタレート中に含
まれる環状三量体の量が少ないため、金型汚れが発生し
にくい。例えばこのポリエチレンテレフタレートを射出
成形機械などの成形機に供給して中空成形体用プリフォ
ームを成形し、このプリフォームを所定形状の金型に挿
入し延伸ブロー成形した後ヒートセットして中空成形容
器を成形する際に、環状三量体が増加しにくく、成形時
にポリエチレンテレフタレート中に含まれる環状三量体
の量が少ないため、金型汚れが発生しにくい。
【0023】本発明では、ポリエチレンテレフタレート
を成形体に成形する際の環状三量体の増加量は、ポリエ
チレンテレフタレートを段付角板に成形し、該段付角板
中の環状三量体の量を測定することにより求める。段付
角板は、以下のように製造される。
【0024】まず原料としての予め環状三量体の含有量
(x重量%)が測定された粒状ポリエチレンテレフタレ
ート(ペレット状ポリエチレンテレフタレート)2kg
を温度140℃、圧力10Torrの条件で16時間以上棚
段式の乾燥器を用いて乾燥して、粒状ポリエチレンテレ
フタレートの水分を50ppm以下にする。
【0025】次に、乾燥された粒状ポリエチレンテレフ
タレートを用い、名機製作所(株)製M−70A射出成
形機で射出成形して、段付角板状成形物を得る。成形時
には露点が−70℃の窒素をホッパー上部、スクリュー
フィーダーシュート部に各5ノルマル立方メートル/時
間の割合でフィードし、成形はバレル設定温度290
℃、成形機のC1/C2/C3/ノズル先の温度を260
℃/290℃/290℃/300℃の各温度にして、金
型冷却温度15℃の条件下で行う。
【0026】段付角板状成形物の射出成形は、計量12
秒、射出60秒となるようにして、乾燥された粒状ポリ
エチレンテレフタレートをホッパより射出成形機に供給
して行う。また成形機内の溶融樹脂の滞留時間は約72
秒とする。なお段付角板状成形物1個当りの重量は75
gであり、環状三量体の測定用試料は、射出成形開始後
11個〜15個目のいずれか1個を用いて行なう。
【0027】段付角板状成形物1は、図1に示すような
形状を有しており、A部の厚みは約6.5mmであり、
B部の厚みは約5mmであり、C部の厚みは約4mmで
ある。このC部を用いて成形物の環状三量体の含有量を
調べる。
【0028】次に成形された段付角板状成形物のC部を
チップ状に切断し、環状三量体の含有量測定用試料とし
て環状三量体の含有量(z重量%)が測定される。段付
角板成形前の粒状ポリエチレンテレフタレートおよび段
付角板中に含まれる環状三量体の含有量は、以下のよう
にして測定される。
【0029】すなわち所定量のポリエチレンテレフタレ
ートをo-クロロフェノールに溶解した後、テトラヒドロ
フランで再析出して濾過して線状ポリエチレンテレフタ
レートを除く。次いで得られた濾液を液クロマトグラフ
ィー(島津製作所製 LC7A)に供給してポリエチレ
ンテレフタレート中に含まれる環状三量体の含有量を求
め、この値を測定に用いたポリエチレンテレフタレート
量で割って、ポリエチレンテレフタレート中に含まれる
環状三量体の含有量とする。
【0030】ポリエチレンテレフタレートを290℃の
温度に加熱溶融して段付角板を成形した後の環状三量体
の含有量の増加量(y重量%)は、z(重量%)−x
(重量%)の値である。
【0031】本発明に係るポリエチレンテレフタレート
は、例えば以下のような方法で製造することができる。
本発明に係るポリエチレンテレフタレートは、テレフタ
ル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリ
コールまたはそのエステル形成性誘導体とを原料として
製造することができる。また、このポリエチレンテレフ
タレートには20モル%以下の他のジカルボン酸および
/または他のグリコールが共重縮合されていてもよい。
【0032】テレフタル酸以外の共重縮合に用いられる
ジカルボン酸として具体的には、フタル酸、イソフタル
酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン
酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸などの芳香族ジカ
ルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デ
カンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘ
キサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などおよ
びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0033】エチレングリコール以外の共重縮合に用い
られるグリコールとして具体的には、トリメチレングリ
コール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコ
ール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコ
ール、ドデカメチレングリコールなどの脂肪族グリコー
ル;シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコー
ル;ビスフェノール類、ハイドロキノン、2,2-ビス(4-
β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、1,3-ビス
(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒド
ロキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族ジオール類など
およびこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0034】上記したようなテレフタル酸またはそのエ
ステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはその
エステル形成性誘導体とを含む原料は、エステル化され
る。具体的にはまず、テレフタル酸またはそのエステル
形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステ
ル形成性誘導体とを含むスラリーを調製する。
【0035】このスラリーには、テレフタル酸またはそ
のエステル形成性誘導体1モルに対して1.02〜1.
4モル、好ましくは1.03〜1.3モルのエチレング
リコールまたはそのエステル形成性誘導体が含まれる。
このスラリーは、エステル化反応工程に連続的に供給さ
れる。
【0036】エステル化反応は、好ましくは2個以上の
エステル化反応器を直列に連結した装置を用いてエチレ
ングリコールが還流する条件下で、反応によって生成し
た水を精留塔で系外に除去しながら実施される。エステ
ル化反応を行う際の反応条件は、第1段目のエステル化
反応の温度が、通常240〜270℃、好ましくは24
5〜265℃であり、圧力が、通常0.2〜3kg/c
2G、好ましくは0.5〜2kg/cm2Gであり、ま
た最終段目のエステル化反応の温度が通常250〜28
0℃、好ましくは255〜275℃であり、圧力が通常
0〜1.5kg/cm2G、好ましくは0〜1.3kg
/cm2Gである。
【0037】エステル化反応を2段階で実施する場合に
は、第1段目および第2段目のエステル化反応条件がそ
れぞれ上記の範囲であり、3段階以上で実施する場合に
は、第2段目から最終段の1段前までエステル化反応の
反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応
条件の間の条件である。
【0038】例えば、エステル化反応が3段階で実施さ
れる場合には、第2段目のエステル化反応の反応温度
は、通常245〜275℃、好ましくは250〜270
℃であり、圧力は、通常0〜2kg/cm2G、好まし
くは0.2〜1.5kg/cm2Gである。これらのエ
ステル化反応の反応率は、それぞれの段階においては、
特に制限はないが、各段階におけるエステル化反応率の
上昇と度合が滑らかに分配されることが好ましく、さら
に最終段目のエステル化反応生成物においては通常90
%以上、好ましくは93%以上に達することが望まし
い。
【0039】これらのエステル化工程によりエステル化
物(低次縮合物)が得られ、このエステル化物の数平均
分子量は、通常、500〜5000である。このような
エステル化反応は、テレフタル酸およびエチレングリコ
ール以外の添加物を添加せずに実施することも可能であ
り、また後述する重縮合触媒の共存下に実施することも
可能である。またトリエチルアミン、トリn-ブチルアミ
ン、ベンジルジメチルアミンなどの第3級アミン;水酸
化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラn-ブチルア
ンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムな
どの水酸化第4級アンモニウム;炭酸リチウム、炭酸ナ
トリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの塩基性
化合物を少量添加して実施すると、ポリエチレンテレフ
タレートの主鎖中のジオキシエチレンテレフタレート成
分単位の割合を比較的低水準に保持できるので好まし
い。
【0040】次いで得られたエステル化物は、液相重縮
合工程に供給される。この液相重縮合工程では、重縮合
触媒の存在下に減圧下で、得られるポリエチレンテレフ
タレートの融点以上の温度に加熱し、この際生成するグ
リコールを系外に留去させてエステル化物を重縮合す
る。
【0041】このような液相での重縮合反応は、1段階
で行っても、複数段階に分けて行ってもよい。複数段階
で行う場合、重縮合反応条件は、第1段階目の重縮合の
反応温度が、通常、250〜290℃、好ましくは26
0〜280℃であり、圧力が、通常、500〜20Tor
r、好ましくは200〜30Torrであり、また最終段階
の重縮合反応の温度が通常265〜300℃、好ましく
は270〜295℃であり、圧力が通常10〜0.1To
rr、好ましくは5〜0.5Torrである。
【0042】重縮合反応を2段階で実施する場合には、
第1段目および第2段目の重縮合反応条件はそれぞれ上
記の範囲であり、3段階以上で実施する場合には、第2
段目から最終段目の1段前までの重縮合反応の反応条件
は上記1段目の反応条件と最終段目の反応条件との間の
条件である。
【0043】例えば、重縮合反応が3段階で実施される
場合には、第2段目の重縮合反応の反応温度は通常26
0〜295℃、好ましくは270〜285℃であり、圧
力は通常、50〜2Torr、好ましくは40〜5Torrの範
囲である。これらの重縮合反応工程の各々において到達
される固有粘度(IV)は特に制限はないが、各段階に
おける固有粘度の上昇の度合が滑らかに分配されること
が好ましい。
【0044】また、最終段目の重縮合反応器から得られ
るポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、通常0.
35〜0.80dl/g、好ましくは0.45〜0.7
5dl/g、さらに好ましくは0.55〜0.75dl
/gの範囲であることが望ましい。固有粘度は、ポリエ
チレンテレフタレート1.2gをo-クロロフェノール1
5cc中に加熱溶解した後、冷却して25℃で測定され
た溶液粘度から算出される。
【0045】このポリエチレンテレフタレートの密度
は、通常1.33〜1.35g/cm 3であることが望
ましい。ポリエチレンテレフタレートの密度は、四塩化
炭素およびヘプタンの混合溶媒を用いた密度勾配管によ
り、23℃の温度で測定される。
【0046】上記のような重縮合反応は、重縮合触媒の
存在下に実施され、安定剤の存在下に実施されることが
好ましい。重縮合触媒としては、チタンハロゲン化物の
加水分解により得られる加水分解物などのチタン化合物
を用いることができる。なお、チタンハロゲン化物を加
水分解する際には、チタン以外の他の元素から選ばれる
少なくとも1種の元素の化合物またはこの化合物の前駆
体(以下「他の元素の化合物」ということがある。)を
共存させてもよい。
【0047】加水分解物の調製に用いられるチタンハロ
ゲン化物は、チタン原子とハロゲン原子との結合が少な
くとも1つ以上分子内に存在する化合物であり、具体的
には四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタンなど
の四ハロゲン化チタン;三塩化チタンなどの三ハロゲン
化チタン;二塩化チタンなどの二ハロゲン化物および一
ハロゲン化チタンが挙げられる。
【0048】チタンハロゲン化物を加水分解する方法と
しては、特に限定されず、例えば水中にチタンハロゲ
ン化物を添加する方法、チタンハロゲン化物中に水を
添加する方法、水中にチタンハロゲン化物の蒸気を含
んだガスを通じる方法、チタンハロゲン化物中に水蒸
気を含んだガスを通じる方法、チタンハロゲン化物を
含んだガスと水蒸気を含んだガスとを接触させる方法な
どが挙げられる。
【0049】上記のように加水分解方法は特に限定され
ないが、いずれの場合でもチタンハロゲン化物に大過剰
の水を作用させて加水分解を完全に進行させることが必
要である。加水分解を完全に進行させず、得られた加水
分解物が特公昭51-19477項公報に記載されてい
るような部分加水分解物となる場合には、重縮合速度が
充分でないことがある。
【0050】加水分解を行う温度は、通常100℃以
下、特に0〜70℃の範囲であることが好ましい。チタ
ンハロゲン化物の加水分解時に共存させてもよい他の元
素の化合物としては、ベリリウム、マグネシウム、カル
シウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イ
ットリウム、ランタン、ジルコニウム、ハフニウム、バ
ナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タ
ングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロ
ジウム、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、ホウ素、ア
ルミニウム、ガリウム、ケイ素、スズ、アンチモンおよ
びリン(以下これらの元素を「他の元素」という。)か
らなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物ま
たはこの化合物の前駆体が挙げられる。上記他の元素の
化合物としては、例えば、水酸化物などが挙げられる。
【0051】これらの他の元素の化合物は、1種単独で
または2種以上組み合わせて用いることができる。チタ
ンハロゲン化物を他の元素の化合物の共存下に加水分解
するには、例えばチタンハロゲン化物と他の元素の化合
物との混合物を加水分解する。
【0052】チタンハロゲン化物と、他の元素の化合物
との混合物を加水分解する方法としては特に限定され
ず、例えば他の元素の化合物が溶解または懸濁した水
中にチタンハロゲン化物を添加する方法、水中にチタ
ンハロゲン化物と他の元素の化合物との混合物を添加す
る方法、チタンハロゲン化物と他の元素の化合物との
混合物中に水を添加する方法、チタンハロゲン化物中
に他の元素の化合物が溶解または懸濁した水を添加する
方法、他の元素の化合物が溶解または懸濁した水中に
チタンハロゲン化物の蒸気を含んだガスを通じる方法、
水中にチタンハロゲン化物の蒸気および他の元素の化
合物の蒸気を含んだガスを通じる方法、チタンハロゲ
ン化物と他の元素の化合物との混合物中に水蒸気を含ん
だガスを通じる方法、チタンハロゲン化物中に水蒸気
と他の元素の化合物の蒸気を含んだガスを通じる方法、
チタンハロゲン化物を含んだガスと他の元素の化合物
の蒸気を含んだガスと水蒸気を含んだガスを接触させる
方法などが挙げられる。
【0053】加水分解の際には、チタンハロゲン化物中
のチタン(Ti)と、他の元素の化合物中の他の元素
(E)とのモル比(E/Ti)は、1/50〜50/1
の範囲であることが望ましい。また加水分解を行う温度
は、通常100℃以下、好ましくは0〜70℃の範囲で
あることが好ましい。
【0054】チタンハロゲン化物またはチタンハロゲン
化物と他の元素の化合物との混合物を加水分解する際に
は、チタンハロゲン化物の加水分解により発生するハロ
ゲン化水素によって液性が酸性を呈する。この酸性によ
って加水分解が完結しないことがあるので塩基を添加し
て中和してもよい。ここで用いられる塩基としては、ア
ンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸
化マグネシウムなどの元素の周期表第1、2族元素の水
酸化物、あるいは炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウ
ム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどの元素の周期
表第1、2族元素の炭酸(水素)化合物、尿素、塩基性
有機化合物が挙げられる。中和の終点はpHが4以上が
好ましく、また中和は、70℃以下で行うことが好まし
い。
【0055】上記加水分解により得られる加水分解物
は、この段階ではオルソチタン酸とも呼ばれる含水水酸
化物のゲルまたは他の元素を含む含水複合水酸化物ゲル
である。この含水水酸化物ゲルまたは含水複合水酸化物
ゲルは、このまま重縮合触媒として用いることができる
が、脱水乾燥して固体状の加水分解物(固体状含チタン
化合物)とすることが好ましい。なお、この乾燥により
水酸基の一部が除去されることがある。
【0056】加水分解物の乾燥は常圧または減圧下、固
相状態または水よりも高沸点の液相に懸濁した状態で行
うことができ、乾燥温度は特に限定されないが、30℃
以上350℃未満であることが好ましい。なお乾燥の前
に含水水酸化物ゲルまたは含水複合水酸化物ゲルを水洗
したり、乾燥後に固体状含チタン化合物を水洗すること
によって水溶性の成分を除去してもよい。また乾燥は速
やかに行うことが好ましい。
【0057】このようにして得られた固体状含チタン化
合物は、その組成は共存させる他の元素の有無や量、水
洗の有無、乾燥方法、乾燥の程度によって異なるが、水
酸基(OH)とチタン(Ti)とのモル比(OH/T
i)が通常0.09を超えて4未満、好ましくは0.1
〜3、より好ましくは0.1〜2の範囲にあることが重
縮合活性の点で望ましい。水酸基とチタンとのモル比
は、付着水分および加熱脱離水分の測定により求めるこ
とができる。
【0058】水酸基とチタンとのモル比は、具体的には
以下のようにして求める。固体状含チタン化合物中の水
酸基含量を求めるには、まずカールフィッシャー水分計
により付着水分量を測定する。次に、熱重量分析により
600℃まで加熱することにより加熱脱離水分量を測定
する。600℃まで加熱することにより付着水分が脱離
し、水酸基は水として脱離するものと考えられるため、
加熱脱離水分量から付着水分量を差し引いた値より水酸
基含有量を求める。固体状含チタン化合物中のチタン含
有量は、高周波プラズマ発光分析装置により求める。上
記チタン含有量と水酸基含有量とからOH/Ti比を求
める。
【0059】この固体状含チタン化合物は、重縮合反応
が行われる温度、例えば約280℃においても水酸基が
残留する。また固体状含チタン化合物が他の元素を含む
場合は、該化合物中のチタン(Ti)と、他の元素
(E)とのモル比(E/Ti)が、1/50〜50/
1、好ましくは1/40〜40/1、さらに好ましくは
1/30〜30/1であることが好ましい。
【0060】含水水酸化物ゲルまたは含水複合水酸化物
ゲル固体状含チタン化合物は、塩素含量が通常0〜10
000ppm、好ましくは0〜100ppmである。こ
のような含水水酸化物ゲル、含水複合水酸化物ゲルおよ
び固体状含チタン化合物(重縮合触媒)は、助触媒化合
物と併用される。
【0061】助触媒化合物は、ベリリウム、マグネシウ
ム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、
アルミニウム、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、
ゲルマニウム、アンチモンおよびリンからなる群より選
ばれる少なくとも1種の元素の化合物であり、具体的に
は、これらの元素の酢酸塩などの脂肪酸塩、これらの元
素の炭酸塩、これらの元素の硫酸塩、これらの元素の硝
酸塩、塩化物などのハロゲン化物、これらの元素のアセ
チルアセトナート塩、これらの元素の酸化物などが挙げ
られるが、酢酸塩または炭酸塩が好ましい。
【0062】また、リン化合物としては、元素の周期表
第1族、第2族、周期表上第4周期の遷移金属、ジルコ
ニウム、ハフニウムおよびアルミニウムから選ばれる少
なくとも1種の金属のリン酸塩、亜リン酸塩が挙げられ
る。
【0063】助触媒化合物としてより具体的には、アル
ミニウム化合物としては、酢酸アルミニウムなどの脂肪
酸アルミニウム塩、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウ
ム、アルミニウムのアセチルアセトナート塩などが挙げ
られ、特に酢酸アルミニウムまたは炭酸アルミニウムが
好ましい。
【0064】バリウム化合物としては、酢酸バリウムな
どの脂肪酸バリウム塩、炭酸バリウム、塩化バリウム、
バリウムのアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特
に酢酸バリウムまたは炭酸バリウムが好ましい。
【0065】コバルト化合物としては、酢酸コバルトな
どの脂肪酸コバルト塩、炭酸コバルト、塩化コバルト、
コバルトのアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特
に酢酸コバルトまたは炭酸コバルトが好ましい。
【0066】マグネシウム化合物としては、酢酸マグネ
シウムなどの脂肪酸マグネシウム塩、炭酸マグネシウ
ム、塩化マグネシウム、マグネシウムのアセチルアセト
ナート塩などが挙げられ、特に酢酸マグネシウムまたは
炭酸マグネシウムが好ましい。
【0067】マンガン化合物としては、酢酸マンガンな
どの脂肪酸マンガン塩、炭酸マンガン、塩化マンガン、
マンガンのアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特
に酢酸マンガンまたは炭酸マンガンが好ましい。
【0068】ストロンチウム化合物としては、酢酸スト
ロンチウムなどの脂肪酸ストロンチウム塩、炭酸ストロ
ンチウム、塩化ストロンチウム、ストロンチウムのアセ
チルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸ストロン
チウムまたは炭酸ストロンチウムが好ましい。
【0069】亜鉛化合物としては、酢酸亜鉛などの脂肪
酸亜鉛塩、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、亜鉛のアセチルアセト
ナート塩などが挙げられ、特に酢酸亜鉛または炭酸亜鉛
が好ましい。
【0070】アンチモン化合物としては、二酸化アンチ
モン、酢酸アンチモンなどが挙げられる。リン化合物の
うちリン酸塩としては、リン酸リチウム、リン酸二水素
リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸ナトリウム、
リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リ
ン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カ
リウム、リン酸ストロンチウム、リン酸二水素ストロン
チウム、リン酸水素二ストロンチウム、リン酸ジルコニ
ウム、リン酸バリウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜
鉛などが挙げられる。このうち、特にリン酸ナトリウ
ム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウ
ム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水
素二カリウムが好ましく使用される。
【0071】また、リン化合物のうち亜リン酸塩として
は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4周期
の遷移金属、ジルコニウム、ハフニウム、およびアルミ
ニウムから選ばれる少なくとも1種の金属の亜リン酸塩
が使用され、具体的には、亜リン酸リチウム、亜リン酸
ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸ストロンチウ
ム、亜リン酸ジルコニウム、亜リン酸バリウム、亜リン
酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛などが挙げられる。この
うち、特に亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウムが、
好ましく使用される。
【0072】助触媒化合物としては、これらのなかでも
炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウムなどのマグネシウ
ム化合物;炭酸カルシウム、酢酸カルシウムなどのカル
シウム化合物;塩化亜鉛、酢酸亜鉛などの亜鉛化合物が
好ましい。助触媒化合物として、マグネシウム化合物を
用いると透明性に優れたポリエチレンテレフタレートが
得られる。
【0073】これらの助触媒化合物は、1種単独でまた
は2種以上組み合わせて用いることができる。このよう
な助触媒化合物は、上記重縮合触媒中のチタン(含チタ
ン加水分解物が他の元素を含む場合は、チタンおよび他
の元素)(I)と、助触媒化合物中の金属原子(II)と
のモル比〔(II)/(I)〕で、1/50〜50/1、
好ましくは1/40〜40/1、より好ましくは1/3
0〜30/1の範囲の量で用いられることが望ましい。
なお、リン酸塩や亜リン酸塩などのリン化合物を使用す
る場合は、リン化合物に含まれる金属原子換算である。
【0074】重縮合反応に必要に応じて用いられる安定
剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホス
フェート、トリn-ブチルホスフェート、トリオクチルホ
スフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジル
ホスフェートなどのリン酸エステル類;トリフェニルホ
スファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニ
ルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類;メ
チルアッシドホスフェート、イソプロピルアッシドホス
フェート、ブチルアッシドホスフェート、ジブチルホス
フェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフ
ェートなどの酸性リン酸エステルおよびリン酸、亜リン
酸、次亜リン酸、ポリリン酸などのリン化合物が用いら
れる。
【0075】これらの重縮合触媒または安定剤の使用割
合は、テレフタル酸とエチレングリコールとの混合物の
重量に対して、重縮合触媒の場合には重縮合触媒中の金
属の重量として、通常0.0005〜0.2重量%、好
ましくは0.001〜0.05重量%の範囲であり、ま
た安定剤は、安定剤中のリン原子の重量として、通常
0.001〜0.1重量%、好ましくは0.002〜
0.02重量%の範囲である。これらの重縮合触媒およ
び安定剤の供給方法は、エステル化反応工程の段階にお
いて供給することもできるし、重縮合反応工程の第1段
目の反応器に供給することもできる。
【0076】本発明のポリエチレンテレフタレートに
は、上述のようにテレフタル酸以外のジカルボン酸やエ
チレングリコール以外のジオールが20モル%以下の量
で含まれていてもよいが、特に好ましくいポリエチレン
テレフタレートは、下記一般式
【0077】
【化2】
【0078】で表わされるエチレンテレフタレート成分
単位の含有率が、95.0〜99.0モル%の範囲にあ
り、下記一般式
【0079】
【化3】
【0080】で表わされるジオキシエチレンテレフタレ
ート成分単位の含有率が、1.0〜5.0モル%の範囲
にあることが望ましい。このようにして、最終重縮合反
応器から得られたポリエチレンテレフタレートは、通
常、溶融押出成形法によって粒状(チップ状)に成形さ
れる。
【0081】このような粒状ポリエチレンテレフタレー
トは、通常2.0〜5.0mm、好ましくは2.2〜
4.0mmの平均粒径を有することが望ましい。このよ
うにして液相重縮合工程を経た粒状ポリエチレンテレフ
タレートは、通常固相重縮合工程に供給される。
【0082】粒状ポリエチレンテレフタレートは、固相
重縮合を行う場合の温度より低い温度に加熱して予備結
晶化を行った後、固相重縮合工程に供給してもよい。こ
のような予備結晶化工程は、粒状ポリエチレンテレフタ
レートを乾燥状態で、例えば120〜200℃、好まし
くは130〜180℃の温度に、1分〜4時間加熱する
ことによって行ってもよく、あるいは粒状ポリエチレン
テレフタレートを水蒸気雰囲気下、水蒸気含有不活性ガ
ス雰囲気下または水蒸気含有空気雰囲気下で、例えば1
20〜200℃の温度に1分間以上加熱することによっ
て行ってもよい。
【0083】このような粒状ポリエチレンテレフタレー
トが供給される固相重縮合工程は、少なくとも1段から
なり、重縮合温度が通常190〜230℃、好ましくは
195〜225℃であり、圧力が通常、1kg/cm2
G〜10Torr、好ましくは常圧ないし100Torrの条件
下で、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガスなどの不活性
ガス雰囲気下で固相重縮合反応が実施される。これらの
不活性ガスの中では窒素ガスが好ましい。
【0084】このようして得られたポリエチレンテレフ
タレートの固有粘度は、通常0.50dl/g以上、好
ましくは0.50〜1.50dl/g、より好ましくは
0.72〜1.0dl/gであることが望ましい。この
ポリエチレンテレフタレートの密度は、通常1.37g
/cm3 以上、好ましくは1.37〜1.44g/cm
3 、より好ましくは1.38〜1.43g/cm3、さ
らに好ましくは1.39〜1.42g/cm3 以上であ
ることが望ましい。
【0085】また上記のような重縮合触媒および助触媒
化合物の存在下に重縮合して得られたポリエチレンテレ
フタレートは、環状三量体の含有量が少なく、このよう
なポリエチレンテレフタレートの環状三量体含有量は、
通常0.5重量%以下、好ましくは0.45重量%以下
であることが望ましい。
【0086】本発明では、上記のようなエステル化工
程、液相重縮合工程および固相重縮合工程を経て得られ
たポリエチレンテレフタレートに対して以下のいずれか
の処理を行う。 (1)ポリエチレンテレフタレートと、亜リン酸水溶
液、次亜リン酸水溶液、リン酸エステル水溶液、亜リン
酸エステル水溶液または次亜リン酸エステル水溶液(以
下これらを「リン含有水溶液」という。)とを接触させ
るリン含有水溶液処理。 (2)ポリエチレンテレフタレートと、有機溶媒とを接
触させる有機溶媒処理。 (3)ポリエチレンテレフタレートと、リン酸の有機溶
媒溶液、亜リン酸の有機溶媒溶液、次亜リン酸の有機溶
媒溶液、リン酸エステルの有機溶媒溶液、亜リン酸エス
テルの有機溶媒溶液または次亜リン酸エステルの有機溶
媒溶液(以下これらを「リン含有有機溶媒溶液」とい
う。)とを接触させるリン含有有機溶媒溶液処理。
【0087】上記いずれかの処理が行われるポリエチレ
ンテレフタレートは、通常粒状であるが、粉状、ストラ
ンド状であってもよい。以下、上記各処理について順次
説明する。
【0088】リン含有水溶液処理 リン含有水溶液処理は、ポリエチレンテレフタレート
と、亜リン酸水溶液、次亜リン酸水溶液、リン酸エステ
ル水溶液、亜リン酸エステル水溶液または次亜リン酸エ
ステル水溶液とを接触させる。
【0089】ここでリン酸エステルとしては、例えばモ
ノメチルホスフェート、ジメチルホスフェート、トリメ
チルホスフェート、モノエチルホスフェート、ジエチル
ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホ
スフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニル
ホスフェート、トリクレジルホスフェートなどが挙げら
れ、亜リン酸エステルとしては、例えばメチルホスファ
イト、ジメチルホスファイト、トリメチルホスファイ
ト、エチルホスファイト、ジエチルホスファイト、トリ
エチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフ
ェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、ト
リスノニルフェニルホスファイトなどが挙げられ、次亜
リン酸エステルとしては、例えば次亜リン酸メチル、次
亜リン酸トリメチルなどが挙げられる。これらのなかで
はリン酸エステルが好ましい。
【0090】ポリエチレンテレフタレートと接触させる
リン含有水溶液は、リン原子換算の濃度が、10ppm
以上、好ましくは10〜100000ppm、より好ま
しくは100〜70000ppm、特に好ましくは10
00〜50000ppmであることが望ましい。
【0091】リン含有水溶液の濃度が上記範囲にある
と、得られたポリエチレンテレフタレートを成形する際
に、環状三量体の含有量が増加する割合を低減する効果
が高く、かつ経済的である。
【0092】ポリエチレンテレフタレートとリン含有水
溶液との接触は、連続方式、バッチ方式のいずれでも行
うことができる。ポリエチレンテレフタレートとリン含
有水溶液とをバッチ方式で接触させる場合は、例えばサ
イロ型の処理装置を用いることができる。具体的には、
サイロにポリエチレンテレフタレートとリン含有水溶液
とを入れ、ポリエチレンテレフタレートをリン含有水溶
液に浸漬させる。また、回転可能な筒型容器にポリエチ
レンテレフタレートとリン含有水溶液を入れ、ポリエチ
レンテレフタレートをリン含有水溶液に浸漬させ、筒型
容器を回転させながら接触させて、接触処理をさらに効
率的にすることもできる。
【0093】ポリエチレンテレフタレートとリン含有水
溶液とを連続で接触させる場合は、例えば塔型の処理装
置を用い、塔型の処理装置の上部からポリエチレンテレ
フタレートを連続的に入れ、並流または向流でリン含有
水溶液を塔型の処理装置に連続的に供給し、ポリエチレ
ンテレフタレートをリン含有水溶液に浸漬させて接触さ
せる。
【0094】ポリエチレンテレフタレートとリン含有水
溶液との接触温度は、通常0〜100℃、好ましくは1
0〜95℃の範囲であり、接触時間は通常5分〜10時
間、好ましくは30分〜6時間であることが望ましい。
【0095】ポリエチレンテレフタレートとリン含有水
溶液とを接触させた後は、ポリエチレンテレフタレート
とリン含有水溶液とを分離し、粒状振動篩機、シモンカ
ーターなどの水切り装置で水切りし、乾燥する。リン含
有水溶液と接触させたポリエチレンテレフタレートの乾
燥は、通常用いられるポリエチレンテレフタレートの乾
燥方法を用いることができる。
【0096】ポリエチレンテレフタレートを連続的に乾
燥する方法としては、上部よりポリエチレンテレフタレ
ートを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパー型
の通気乾燥機が通常使用される。乾燥ガス量を減らし効
率的に乾燥する方法としては、回転ディスク型加熱方式
の連続乾燥機を用いる方法があり、この方法では少量の
乾燥ガスを通気しながら、回転ディスクや外部ジャケッ
トに加熱蒸気、加熱媒体などを供給しポリエチレンテレ
フタレートを間接的に加熱乾燥することにより乾燥す
る。
【0097】ポリエチレンテレフタレートをバッチ方式
で乾燥する方法としては、ダブルコーン型回転乾燥機を
用いる方法があり、この方法では、減圧下でもしくは減
圧下少量の乾燥ガスを通気しながら、または大気圧下で
乾燥ガスを通気しながら乾燥する。乾燥ガスとしては大
気空気でも差し支えないが、ポリエチレンテレフタレー
トの加水分解による分子量低下を防止する点からは乾燥
窒素、除湿空気が好ましい。
【0098】上記のようにポリエチレンテレフタレート
とリン含有水溶液とを接触させると、成形する際に環状
三量体の増加量が少なく、固有粘度の低下が少ないポリ
エチレンテレフタレートが得られる。これはポリエチレ
ンテレフタレートとリン含有水溶液とを接触させると、
ポリエチレンテレフタレート中の重縮合触媒が失活する
ためであると推定される。
【0099】有機溶媒処理 有機溶媒処理は、ポリエチレンテレフタレートと、有機
溶媒とを接触させる。有機溶媒としては、メタノール、
エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノ
ール、ペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノ
ール、オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアル
コール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フ
ェニルエチルアルコール、クミルアルコール、イソプロ
ピルアルコール、イソプロピルベンジルアルコールなど
の炭素原子数が1〜18、好ましくは1〜10のアルコ
ール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブ
チルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾ
キノンなどの炭素原子数が3〜15、好ましくは3〜9
のケトン類;ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、
オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ト
リデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン
などの炭素原子数が5〜16、好ましくは5〜10の飽
和炭化水素が挙げられる。これらのなかではイソプロパ
ノールまたはアセトンが好ましい。
【0100】ポリエチレンテレフタレートと有機溶媒と
の接触は、連続方式、バッチ方式のいずれでも行うこと
ができる。ポリエチレンテレフタレートと有機溶媒とを
バッチ方式で接触させる場合は、例えばサイロ型の処理
装置を用いることができる。具体的には、サイロにポリ
エチレンテレフタレートと有機溶媒とを入れ、ポリエチ
レンテレフタレートを有機溶媒に浸漬させる。また、回
転可能な筒型容器にポリエチレンテレフタレートと有機
溶媒を入れ、ポリエチレンテレフタレートを有機溶媒に
浸漬させ、筒型容器を回転させながら接触させて、接触
処理をさらに効率的にすることもできる。
【0101】ポリエチレンテレフタレートと有機溶媒と
を連続で接触させる場合は、例えば塔型の処理装置を用
い、塔型の処理装置の上部からポリエチレンテレフタレ
ートを連続的に入れ、並流または向流で有機溶媒を塔型
の処理装置に連続的に供給し、ポリエチレンテレフタレ
ートを有機溶媒に浸漬させて接触させる。
【0102】ポリエチレンテレフタレートと有機溶媒と
の接触温度は、用いる有機溶媒の沸点にもよるが、通常
0〜100℃、好ましくは10〜95℃の範囲であり、
接触時間は通常3分〜5時間、好ましくは30分〜4時
間であることが望ましい。
【0103】ポリエチレンテレフタレートと有機溶媒と
を接触させた後は、ポリエチレンテレフタレートと有機
溶媒とを分離し、粒状振動篩機、シモンカーターなどの
水切り装置で水切りし、乾燥する。有機溶媒と接触させ
たポリエチレンテレフタレートの乾燥は、通常用いられ
るポリエチレンテレフタレートの乾燥方法を用いること
ができる。
【0104】ポリエチレンテレフタレートを乾燥する方
法としては、上記リン含有水溶液処理と同様の連続的に
乾燥する方法、バッチ方式で乾燥する方法が挙げられ
る。上記のようにポリエチレンテレフタレートと有機溶
媒とを接触させると、成形する際に環状三量体の増加量
が少ないポリエチレンテレフタレートが得られる。これ
はポリエチレンテレフタレートと有機溶媒とを接触させ
ると、ポリエチレンテレフタレート中の重縮合触媒が失
活するためであると推定される。
【0105】リン含有有機溶媒溶液処理 リン含有有機溶媒溶液処理は、ポリエチレンテレフタレ
ートと、リン酸の有機溶媒溶液、亜リン酸の有機溶媒溶
液、次亜リン酸の有機溶媒溶液、リン酸エステルの有機
溶媒溶液、亜リン酸エステルの有機溶媒溶液または次亜
リン酸エステルの有機溶媒溶液とを接触させる。
【0106】ここでリン酸エステル、亜リン酸エステ
ル、次亜リン酸エステルとしては、上記リン含有水溶液
処理に用いられるものと同様のリン酸エステル、亜リン
酸エステル、次亜リン酸エステルが挙げられる。これら
のなかではリン酸エステルが好ましい。
【0107】リン含有有機溶媒溶液に用いられる有機溶
媒としては、上記有機溶媒処理に用いられるものと同様
の炭素原子数が1〜18、好ましくは1〜10のアルコ
ール類;炭素原子数が3〜15、好ましくは3〜9のケ
トン類;炭素原子数が5〜16、好ましくは5〜10の
飽和炭化水素が挙げられる。これらのなかではイソプロ
パノールまたはアセトンが好ましい。
【0108】ポリエチレンテレフタレートと接触させる
リン含有有機溶媒溶液は、リン原子換算の濃度が、10
ppm以上、好ましくは10〜100000ppm、よ
り好ましくは100〜70000ppm、特に好ましく
は1000〜50000ppmであることが望ましい。
【0109】リン含有有機溶媒溶液の濃度が上記範囲に
あると、得られたポリエチレンテレフタレートを成形す
る際に、環状三量体が増加する量を低減する効果が高
く、かつ経済的である。
【0110】ポリエチレンテレフタレートとリン含有有
機溶媒溶液との接触は、連続方式、バッチ方式のいずれ
でも行うことができる。ポリエチレンテレフタレートと
リン含有有機溶媒溶液とをバッチ方式で接触させる場合
は、例えばサイロ型の処理装置を用いることができる。
具体的には、サイロにポリエチレンテレフタレートとリ
ン含有有機溶媒溶液とを入れ、ポリエチレンテレフタレ
ートをリン含有有機溶媒溶液に浸漬させる。また、回転
可能な筒型容器にポリエチレンテレフタレートとリン含
有有機溶媒溶液を入れ、ポリエチレンテレフタレートを
リン含有有機溶媒溶液に浸漬させ、筒型容器を回転させ
ながら接触させて、接触処理をさらに効率的にすること
もできる。
【0111】ポリエチレンテレフタレートとリン含有有
機溶媒溶液とを連続で接触させる場合は、例えば塔型の
処理装置を用い、塔型の処理装置の上部からポリエチレ
ンテレフタレートを連続的に入れ、並流または向流でリ
ン含有有機溶媒溶液を塔型の処理装置に連続的に供給
し、ポリエチレンテレフタレートをリン含有有機溶媒溶
液に浸漬させて接触させる。
【0112】ポリエチレンテレフタレートとリン含有有
機溶媒溶液との接触温度は、用いる有機溶媒にもよる
が、通常0〜100℃、好ましくは0〜95℃の範囲で
あり、接触時間は通常5分〜10時間、好ましくは30
分〜6時間であることが望ましい。
【0113】ポリエチレンテレフタレートとリン含有有
機溶媒溶液とを接触させた後は、ポリエチレンテレフタ
レートとリン含有有機溶媒溶液とを分離し、粒状振動篩
機、シモンカーターなどの水切り装置で水切りし、乾燥
する。リン含有有機溶媒溶液と接触させたポリエチレン
テレフタレートの乾燥は、通常用いられるポリエチレン
テレフタレートの乾燥方法を用いることができる。
【0114】ポリエチレンテレフタレートを乾燥する方
法としては、上記リン含有水溶液処理と同様の連続的に
乾燥する方法、バッチ方式で乾燥する方法が挙げられ
る。上記処理のなかでは、リン含有水溶液処理およびリ
ン含有有機溶媒溶液処理が好ましく、特にリン含有水溶
液処理が好ましい。
【0115】上記のようにして処理が施されたポリエチ
レンテレフタレートは、中空成形体などへの成形時にお
ける環状三量体の増加が著しく抑制される。このこと
は、前述したような方法で処理されたポリエチレンテレ
フタレートを290℃の温度に加熱溶融して段付角板を
成形した後の環状三量体の含有量を測定することにより
確かめられる。
【0116】上記のようにポリエチレンテレフタレート
に、リン含有水溶液処理、有機溶媒処理またはリン含有
有機溶媒溶液処理を施すことによって、該ポリエチレン
テレフタレートを290℃の温度に加熱溶融して段付角
板を成形した際に増加する環状三量体量を抑制すること
ができる。
【0117】このようにポリエチレンテレフタレートに
リン含有水溶液処理、有機溶媒処理またはリン含有有機
溶媒溶液処理を施すことによって、成形時にポリエチレ
ンテレフタレート中に含まれる環状三量体の増加を抑制
できるのは、上記いずれかの処理を施すことによって、
ポリエチレンテレフタレート中に含まれる重縮合触媒た
とえばチタン化合物重縮合触媒が速やかに失活し、した
がって成形時に加熱されても、ポリエチレンテレフタレ
ートは分解反応あるいはエステル交換反応がほとんど進
行せず、このため生成する環状三量体の量が少なくなる
のであろうと考えられる。
【0118】上記のような処理をした環状三量体の含有
量が少ないポリエチレンテレフタレートから、例えば射
出成形により成形体を成形した場合、成形時にポリエチ
レンテレフタレート中に含まれる環状三量体の量が少な
く、したがって、環状三量体が金型内面や金型のガス排
気口、排気管などに付着して金型汚れが発生することが
少なく、かつ環状三量体が射出成形機のベント部に付着
することが少ない。
【0119】中空成形体 本発明に係る中空成形体は、上述したような固有粘度が
0.50dl/g以上であり、チタン原子の含有量、金
属原子Mの含有量およびチタン原子/金属原子M比が特
定の範囲にあり、環状三量体の含有量が0.5重量%以
下であり、かつ該含有量と段付角板を成形した後の環状
三量体含有量の増加量とが特定の関係を満たすポリエチ
レンテレフタレートから製造され、環状三量体の含有量
が0.6重量%以下、好ましくは0.10〜0.55重
量%より好ましくは0.15〜0.50重量%の範囲に
ある。
【0120】中空成形体の環状三量体の含有量の測定
は、中空成形体から採取した試料を用い、上述したよう
な方法で行われる。本発明に係る中空成形体は、従来公
知の方法により製造することができる。具体的には、ま
ず上記のようなポリエチレンテレフタレートからプリフ
ォームを製造する。該プリフォームは従来公知の方法、
例えば射出成形、押出成形などによって製造することが
できる。プリフォーム形成時のポリエチレンテレフタレ
ートの加熱温度は、例えば90〜110℃であることが
好ましい。次いで、プリフォームを延伸適正温度まで加
熱し、延伸ブロー成形して中空成形体を製造する。
【0121】上記のような環状三量体の含有量が少なく
特定の処理をしたポリエチレンテレフタレートから、中
空成形体を成形した場合、成形時に生成する環状三量体
の量が少なく、したがって、このポリエチレンテレフタ
レートを射出成形機などの成形機に供給して中空成形体
用プリフォームを成形し、このプリフォームを所定形状
の金型に挿入し延伸ブロー成形した後ヒートセットして
中空成形体を成形する際に、環状三量体が金型に付着す
ることによる金型汚れが発生しにくい。
【0122】本発明に係る中空成形体は、上記のような
環状三量体の含有量が少なく特定の処理をしたポリエチ
レンテレフタレートから得られるので、成形時に生成す
る環状三量体の量が少なく、したがって、この中空成形
体は、環状三量体の含有量が少なく、表面肌荒れや白化
(汚れ)が少ない。
【0123】
【発明の効果】本発明に係るポリエチレンテレフタレー
トでは、環状三量体の含有量が少なく、しかも成形時に
生成する環状三量体の量が少ない。このため、成形時に
ポリエチレンテレフタレート中に含まれる環状三量体の
量が少なく、金型汚れが発生しにくい。したがって、成
形品を製造する際に頻繁に洗浄を行う必要がなく、ボト
ルなどの中空成形体やフィルム、シートなどの成形品の
生産性を向上させることができ、しかも得られる中空成
形体やフィルム、シートの白化(汚れ)を防止すること
ができる。
【0124】本発明に係る中空成形体は、上記のような
ポリエチレンテレフタレートから得られるので、中空成
形体中の環状三量体の含有量が少なく、表面肌荒れや白
化(汚れ)が少ない。
【0125】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0126】
【実施例1】固体状チタン化合物の調製 1000mlガラス製ビーカーに脱イオン水500ml
を秤取し、氷浴にて冷却した後攪拌しながら四塩化チタ
ン5gを滴下した。塩化水素の発生が止まったら氷浴よ
り取り出し、攪拌しながら25%アンモニア水を滴下
し、液のpHを8にした。生成したチタン水酸化物の沈
殿は2500回転、15分間の遠心沈降で上清と分離し
た。その後、得られたチタン水酸化物の沈殿を脱イオン
水で5回洗浄した。洗浄後の固液分離は2500回転、
15分間の遠心沈降で行った。洗浄後のチタン水酸化物
を70℃、10Torr、18時間の減圧乾燥で水分を
除去し、固体状チタン化合物を得た。得られた固体状チ
タン化合物は重縮合触媒と使用する前に10ミクロン程
度の粒子に粉砕した。
【0127】このようにして得られた固体状チタン化合
物の付着水分量をカールフィッシャー水分計により測定
したところ、6.7重量%の水分を含有していることが
わかった。また熱重量測定により加熱減量を測定したと
ころ、280℃までに当初重量の7.50重量%、28
0℃から600℃までにさらに2.17重量%が減量
し、この減量は水分および窒素化合物の脱離によるもの
であることが分かった。触媒に含まれる窒素は1.3重
量%であり、塩素は14ppmしか含まれていないこと
から、窒素は塩化アンモニウムに由来するものではな
く、アンモニアに由来するものであると考えられる。こ
れらのことから、得られた固体状チタン化合物はチタン
対水酸基がモル比で1:0.15であることがわかっ
た。なお、窒素は微量全窒素分析装置(化学発光法)
で、塩素はクロマトグラフィーで分析し、それぞれアン
モニア、塩化水素として脱離するとして計算した。
【0128】ポリエステルの製造 定常運転時に33500重量部の反応液が滞留する反応
器内に、6458重量部/時の高純度テレフタル酸と2
909重量部/時のエチレングリコールとを混合して調
製されたスラリーを連続的に供給し、攪拌下、窒素雰囲
気で260℃、0.9kg/cm2 Gに維持された条件
下にエステル化反応を行った。さらにエステル化反応の
際には上記のようにして調製した固体状チタン化合物を
チタン原子として、0.187重量部/時および酢酸マ
グネシウムをマグネシウム原子として、0.187重量
部/時の割合で供給した。このエステル化反応では、水
とエチレングリコールとの混合液が留去された。
【0129】エステル化反応物(低次縮合物)は、平均
滞留時間が3.5時間になるように制御して、連続的に
系外に抜き出した。上記で得られたエチレングリコール
とテレフタル酸との低次縮合物の数平均分子量は、60
0〜1300(3〜5量体)であった。
【0130】低次縮合物中の液相重縮合反応にリン酸ト
リブチル0.831重量部/時を供給しながら280
℃、1Torrの条件下で行った。ポリエチレンテレフ
タレートの極限粘度(IV)が0.55dl/gに達す
るまでに要した滞留時間は(液相重合時間)は87分で
あった。
【0131】さらに、この液相重合により得られたポリ
エチレンテレフタレートは、窒素雰囲気下約170℃で
2時間結晶化を行った後、塔型の固相重合機に充填し、
窒素雰囲気下210℃で25時間固相重合を行った。
【0132】このようにして得られたポリエチレンテレ
フタレートのチタン原子含有量は24ppmであり、マ
グネシウム原子含有量は24ppmであり、チタン原子
/マグネシウム原子モル比は0.5であり、固有粘度は
0.760dl/gであり、密度が1.40g/cm3
であり、環状状三量体含有量が0.3重量%であった。
【0133】上記のポリエチレンテレフタレート2.5
kgをステンレス容器内で0.0695重量%のリン酸
トリメチル水溶液4kgに含浸させた。そのまま常温で
4時間保持した後、粒状ポリエチレンテレフタレートと
リン酸トリメチル水溶液とを分離し、水切りした後、1
60℃、5時間窒素気流下で乾燥した。得られたポリエ
チレンテレフタレートの環状三量体含有量は0.30重
量%(x重量%)であった。このポリエチレンテレフタ
レートを上記した方法で成型した段付き角板の環状三量
体含有量は0.35重量%であり、成形前後の環状三量
体含有量の差は0.05重量%(y重量%)であり、−
0.2x+0.2の値は0.14であり、固有粘度は
0.825dl/gであった。
【0134】
【実施例2】実施例1で用いたものと同様の粒状ポリエ
チレンテレフタレート2.5kgをステンレス容器内で
0.0695重量%のリン酸トリメチル水溶液4kgに
浸漬した。次に、ポリエチレンテレフタレートおよびリ
ン酸トリメチル水溶液が入ったステンレス製容器を外部
より加熱し、内温を95℃にコントロールし、4時間保
持して加熱処理を行った後、粒状ポリエチレンテレフタ
レートとリン酸トリメチル水溶液とを分離し、水切りし
た後、160℃、5時間窒素気流下で乾燥した。得られ
たポリエチレンテレフタレートの環状3量体含有量は
0.30重量%(x重量%)であった。このポリエチレ
ンテレフタレートを用いて上記した方法で成型した段付
き角板の環状三量体含有量は0.33重量%(x重量
%)であり、成形前後の環状三量体含有量の差は0.0
3重量%(y重量%)であり、−0.20x+0.2の
値は0.134であり、固有粘度は0.811dl/g
であった。
【0135】
【比較例1】実施例1で用いたものと同様の粒状ポリエ
チレンテレフタレートにリン含有水溶液との接触処理を
せずに、上記した方法で段付き角板を成型した。この段
付き角板の環状三量体含有量は0.52重量%(x重量
%)であり、成形前後の環状三量体含有量の差は0.2
2重量%(y重量%)であり、−0.2x+0.2の値
は0.096であり、固有粘度は0.833dl/gで
あった。
【0136】
【実施例3】定常運転時に33500重量部の反応液が
滞留する反応器内に、6329重量部/時の高純度テレ
フタル酸と129重量部のイソフタル酸と2615重量
部/時のエチレングリコールとを混合して調製されたス
ラリーを連続的に供給し、攪拌下、窒素雰囲気で260
℃、0.9kg/cm2 Gに維持された条件下に、エス
テル化反応を行った。さらにエステル化反応の際には実
施例1と同様にして調製した固体状チタン化合物をチタ
ン原子として、0.112重量部/時および酢酸マグネ
シウムをマグネシウム原子として、0.187重量部/
時を供給した。このエステル化反応では、水とエチレン
グリコールとの混合液が留去された。
【0137】エステル化反応物(低次縮合物)は、平均
滞留時間が3.5時間になるように制御して、連続的に
系外に抜き出した。上記で得られたエチレングリコール
とテレフタル酸との低次縮合物の数平均分子量は、60
0〜1300(3〜5量体)であった。
【0138】低次縮合物中の液相重縮合反応をリン酸ト
リブチル0.831重量部/時を供給しながら280
℃、1Torrの条件下で行った。ポリエチレンテレフ
タレートの極限粘度(IV)が0.58dl/gに達す
るまでに要した滞留時間は(液相重合時間)は100分
であった。
【0139】さらに、その液相重合によるポリエチレン
テレフタレートは、窒素雰囲気下約170℃で2時間結
晶化を行った後、塔型の固相重合機に充填し、窒素雰囲
気下210℃で22時間固相重合を行った。
【0140】このようにして得られたポリエチレンテレ
フタレートのチタン原子含有量は15ppm、マグネシ
ウム原子含有量は25ppmであり、チタン原子/マグ
ネシウム原子モル比は0.3であり、固有粘度は0.8
2dl/gであり、密度が1.40g/cm3であり、
環状3量体含有量が0.40重量%であった。
【0141】上記のポリエチレンテレフタレート2.5
kgをステンレス容器内で0.0695重量%のリン酸
トリメチル水溶液4kgに含浸させた。そのまま常温で
4時間保持した後、粒状ポリエチレンテレフタレートと
リン酸トリメチル水溶液とを分離し、水切りした後、1
60℃、5時間窒素気流下で乾燥した。得られたポリエ
チレンテレフタレートの環状三量体含有量は0.40重
量%(x重量%)であった。このポリエチレンテレフタ
レートを上記した方法で成型した段付き角板の環状三量
体含有量は0.48重量%であり、成形前後の環状三量
体含有量の差は0.08重量%(y重量%)であり、−
0.2x+0.2の値は0.104であり、固有粘度は
0.805dl/gであった。
【0142】
【実施例4】実施例3で固相重合したポリエチレンテレ
フタレートをステンレス容器内で95℃のイソプロパノ
ールに浸漬し、4時間加熱、保持した。
【0143】ポリエチレンテレフタレートとイソプロパ
ノールを分離した後、160℃、5時間窒素気流下で乾
燥した。得られたポリエチレンテレフタレートの環状三
量体含有量は0.40重量%(x重量%)であった。こ
のポリエチレンテレフタレートを上記した方法で成型し
た段付き角板の環状三量体含有量は0.46重量%であ
り、成形前後の環状三量体含有量の差は0.06重量%
(y重量%)であり、−0.20x+0.14であり、
固有粘度は0.810dl/gであった。
【0144】
【比較例2】実施例2で用いたものと同様の粒状ポリエ
チレンテレフタレートにリン酸トリメチル水溶液との接
触処理をせずに、上記した方法で段付き角板を成型し
た。この段付き角板の環状三量体含有量は0.57重量
%(x重量%)であり、成形前後の環状三量体含有量の
差は0.17重量%(y重量%)であり、−0.2x+
0.2の値は0.086であり、固有粘度は0.811
dl/gであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で環状三量体含有量の測定に用いられる
段付き角板状成形体を示す斜視図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 堀 秀 史 山口県玖珂郡和木町和木六丁目1番2号 三井化学株式会社内 (72)発明者 伊牟田 淳 一 山口県玖珂郡和木町和木六丁目1番2号 三井化学株式会社内 (72)発明者 酒 井 勝 幸 山口県玖珂郡和木町和木六丁目1番2号 三井化学株式会社内 (72)発明者 平 岡 章 二 山口県玖珂郡和木町和木六丁目1番2号 三井化学株式会社内 Fターム(参考) 4J029 AA03 AB04 AB07 AC01 AD01 AD10 AE18 BA03 CB06A HA01 HB01 HB02 JA061 JA091 JA093 JA121 JA123 JA161 JA201 JA231 JA233 JA251 JA283 JA301 JA303 JB161 JC031 JC051 JC091 JC731 JF021 JF031 JF071 JF121 JF123 JF131 JF133 JF141 JF143 JF151 JF153 JF161 JF163 JF181 JF183 JF221 JF223 JF231 JF233 JF263 JF283 JF321 JF331 JF341 JF343 JF361 JF363 JF371 JF373 JF423 JF433 JF471 JF473 JF513 JF541 JF543 JF563 JF571 JF573 JF583 KB05 KD01 KD07 KE03 KE05 KE12 KF02 KF04 KF07 KH03 KH08

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】固有粘度が0.50dl/g以上であり、 チタン原子を0.1〜200ppmの量で含み、 ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウ
    ム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、マン
    ガン、コバルト、亜鉛およびアンチモンから選ばれる金
    属原子Mを0.1〜500ppmの量で含み、 前記チタン原子と前記金属原子Mとのモル比(チタン原
    子/金属原子M)が0.05〜50の範囲にあり、 環状三量体の含有量が0.5重量%以下であり、かつ該
    含有量をx重量%とし、290℃の温度に加熱溶融して
    段付角板を成形した後の環状三量体の含有量の増加量を
    y重量%としたときに、xとyとが y≦−0.2x+0.2 を満たすことを特徴とするポリエチレンテレフタレー
    ト。
  2. 【請求項2】上記チタン原子が、チタンハロゲン化物の
    加水分解により得られる重縮合触媒に由来する請求項1
    に記載のポリエチレンテレフタレート。
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載のポリエチレンテ
    レフタレートから得られ、環状三量体含有量が0.6重
    量%以下であることを特徴とする中空成形体。
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