JP4404052B2 - 摩擦攪拌接合方法 - Google Patents
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Description
摩擦攪拌接合による重ね継手の接合では、重ね面の表面酸化皮膜を剥離して界面を活性化することが重要になる。このためには塑性流動圧力を高くする必要がある。
本発明の目的は、従来技術よりも更に接合部の強度を高めることができる、重ね継手の摩擦攪拌接合方法を提供することにある。また、異種金属を接合可能な摩擦攪拌接合方法を提供することにある。
摩擦攪拌接合による重ね接合において、接合ツールを上板と下板の両方に圧入した場合には、接合部に下板にまで達する大きな穴があくという外観上からも好ましくない問題が生ずる。また、融点が大きく異なる材料例えばアルミニウムとニッケルを重ね接合する場合には、アルミニウムの融点は660℃、ニッケルの融点は1455℃であり、接合ツールがアルミニウムとニッケルの両方の金属に圧入されるため、両者の変形抵抗が大きく異なり、キャビティ欠陥が発生するという問題がある。本発明はこれらの問題を解決するための接合方法である。
第一の接合機構は、接合ツールを回転させながら一方の部材にのみ圧入して、接合ツールの外周に圧入された部材を塑性流動させて排出し、この排出により接合界面を活性化させることにより接合する方法である。そのためには、接合ツールの形状および塑性流動特性が重要である。
第一の接合機構に関する本発明では、大径のショルダの先端に小径の凸部を有する接合ツールを用いることで良好な結果を得た。この凸部は、できれば半球形状のように滑らかな曲面をしていることが望ましい。この凸部により塑性流動部の圧力を高くできるので、接合界面を活性化させる作用が大きくなる。また、この半球形状の凸部の周囲に半球形状の凹部を設けて、これらの凹凸により接合ツールと接合部材との接触面積を増加させることも塑性流動圧力の増加に有効である。また、ショルダの先端外周面に丸みをつけておくことが望ましい。さらに、先端がある曲率半径を有した接合ツールを用いても塑性流動圧力を高くできるので、接合界面を活性化させる作用が大きくなる。接合界面を活性化させる作用が大きくなると接合面積が増加して、接合強度が高くなる。
第二の接合機構は、接合ツールを回転させながら一方の部材にのみ圧入して接合する場合、接合ツールと上板表面との接触角を鋭角にして接合する方法である。この場合は、塑性流動金属の排出がほとんどないために、塑性流動圧力を非常に高くできる。このため、接合界面を活性化させる作用が大きくなる。この塑性流動は主として接合ツールの回転方向に生じる。
第二の機構に関する本発明では、先端が半球形状の接合ツールを一方の部材のみに圧入させて摩擦攪拌させて接合することによって接触角を鋭角にする。これにより、塑性流動の内部圧力が高くなるため、接合界面を活性化させる作用が大きくなる。
接合部材の重ね面に軟質金属をめっきしておくと、接合界面の表面酸化皮膜をより剥離し易くすることができる。接合部材の材質が炭素鋼のような場合には、この方法は極めて有効である。軟質金属としては、ニッケル,亜鉛,銅が特に有効である。
接合ツールの圧入側部材の表面に台形部材を設けるか或いは台形に加工しておくことにより、接合ツールの圧入によるくぼみが生じても接合強度の低下を防止することができる。
また、一方の部材の重ね面に溝部を設け、もう一方の部材の重ね面に突起部を設けて、前記溝に他方の突起部を嵌合し、その状態で接合するようにすれば、接合ツールと重ね面の距離を短くできる。この方法は、厚板を接合する場合に適する。
本発明は、接合ツールを部材に圧入させながらそのまま引抜き、これを繰り返すスポット接合にも適用できる。
本発明は接合ツールを圧入させたまま移動して連続的に接合することも可能である。
本発明の接合ツールによる摩擦攪拌接合方法によれば、重ね継手の接合界面に塑性流動を積極的に生じさせることができ、表面酸化皮膜を剥離排出して界面を活性化できる。これにより、接合強度の高い接合が可能である。また、異種金属の接合が可能である。
第2図は第1の実施例における接合中の斜視図である。
第3図は第1の実施例における接合中の接合方向の断面図である。
第4図は第1の実施例における接合後の接合部の断面図である。
第5図は第1の実施例における接合部の塑性流動状態の模式図である。
第6図は第1の実施例における接合部のせん断強度を示すグラフである。
第7図は第1の実施例における接合中の断面図である。
第8図は従来法の接合中の断面図である。
第9図は接合ツールの形状の一例を示す断面図である。
第10図は接合ツール形状の他の例を示す断面図である。
第11図は第2の実施例における接合前の断面図である。
第12図は第2の実施例における接合部の断面図である。
第13図は第3の実施例における接合前の断面図である。
第14図は第3の実施例における接合部の断面図である。
第15図は第4の実施例における接合後の上面図である。
第16図は第5の実施例における接合中の断面図である。
第17図は第6の実施例における接合中の断面図である。
第18図は第7の実施例における接合中の断面図である。
第19図は第8の実施例における接合中の断面図である。
第20図は第9の実施例における接合中の断面図である。
本実施例の上板4の材質はJIS規格A1050−H24の工業用純アルミニウムであり、下板5の材質はニッケルである。なお、板厚はそれぞれ0.4mmである。また、接合ツール1の材質は工具鋼であり、ショルダ3の直径は5mmで、高さ0.1mmの凸部2を設けている。この接合ツール1を18,000rpmで回転させて上板4に圧入した状態で、接合速度400mm/minで移動させることにより接合する。なお、接合ツール1の回転軸の後進角は2.5°とした。
第5図は接合部の塑性流動状態の模式図を示す。接合ツール1の圧入により、接合部には圧入方向に大きな荷重が作用する。また、接合部は接合ツール1と上板4との摩擦熱により高温になっている。そのため、高圧・高温の状態で接合部の両端に向かって塑性流動が起こる。この塑性流動により、接合部の上板4と下板5の接合界面6にはせん断応力が働き、接合界面の表面酸化皮膜が剥離されて、両者が金属的に接合される。また、くぼみ7に相当する金属が排出金属8となる。
上板4および下板5の材質であるが、同種金属でも異種金属でも接合可能である。特に、アルミニウム,鉛,錫,マグネシウムなどのように融点が低い金属同士またはこれらを一方の部材とする異種金属の接合に適する。融点が大きく異なる金属を接合する場合には、接合温度が高いと両者のあいだに厚い反応層が生じやすい。このような場合には、上板4を低融点金属にして接合することが好ましく、これにより反応層の厚さを最小限にできる。アルミニウムとニッケルの接合など融点が大きく異なる金属の接合には、この方法は特に有効である。さらに、上板4がアルミニウムで下板5が炭素鋼の場合には、炭素鋼の表面にニッケルめっきを施すことも有効である。ニッケルは軟質金属で塑性変形しやすく、表面の酸化皮膜が剥離しやすいからである。他にも、亜鉛めっき,銅めっきも同様の効果が得られる。
また、ショルダ3の直径であるが、上板4の板厚および材質に依存する。本実施例では上板の板厚0.4mmに対して、ショルダの直径が5mmであり、板厚の12.5倍である。このように板厚に対してショルダの直径を大きくすることで、接合ツール1を押圧する荷重が大きくなるため、塑性流動圧力も大きくなり、接合面の表面酸化皮膜をより剥離しやすくできる。ショルダの直径は、接合ツールを挿入する側の板厚の8〜20倍とすることが望ましい。
第6図に接合部のせん断強度を示す。接合部の試験片の幅は5mmとした。また、くぼみ7が生じるために、せん断強度は破断荷重を上板4もしくは下板5の母材の板厚から算出した断面積で割った値を用いた。本発明のせん断強度は155〜165N/mm2であるのに対し、従来法では120〜130N/mm2である。この理由を次に説明する。
第7図に本発明の接合中の断面図を示す。せん断強度は上板接合部厚さ12に依存する。接合部の中央にはくぼみ7が生じるがせん断強度の低下の原因にはならない。
第8図に従来法の接合中の断面図を示す。接合ツール1は円柱形状である。この接合ツール1では、接合部の両端に向かって塑性流動を生じさせ、その結果として排出金属8を生じさせるためには、接合ツール1を上板4の表面より深く圧入しなければならない。そのため、接合部が均一にくぼみ、上板接合部厚さ12が小さくなる。そのため、せん断強度が本発明より低くなる。
第9図及び第10図に接合ツールの形状の例を示す。第9図の接合ツール1はツール端部10が曲面になっており、これにより排出金属8がばりとなってとれることを防止する効果がある。さらに、凸部2の周囲に凹部20を設けることによって塑性流動圧力を高くすることができる。第10図は接合ツール1のツール端部10が傾斜し傾斜面になっている。このツール形状は、排出金属8の排出を抑制する効果があり、そのため、塑性流動圧力を大きくする作用がある。
従来形状の曲面を有していない接合ツールでは、接触角は90°であるが、上記本発明においてはおよそ10°である。この接触角を5〜20°とすることにより、塑性流動圧力を高くし、強度の高い接合が可能となる。
Claims (14)
- 複数の部材を重ね合せ、接合ツールを回転させながら一方の部材側に圧入して摩擦攪拌を生じさせて接合する重ね継手の摩擦攪拌接合方法において、前記接合ツールとしてショルダの先端に小径の凸部を有する接合ツールを用い、前記接合ツールの凸部は半球形状であり、該接合ツールの凸部および前記ショルダを一方の部材のみに圧入するようにしたことを特徴とする重ね継手の摩擦攪拌接合方法。
- 請求項1において、前記凸部のまわりのショルダに凹部を設けたことを特徴とする重ね継手の摩擦攪拌接合方法。
- 請求項1において、前記接合ツールの前記ショルダの先端外周面を傾斜させて傾斜面にしたことを特徴とする重ね継手の摩擦攪拌接合方法。
- 請求項1において、前記接合ツールの前記ショルダの先端外周面に丸みをつけたことを特徴とする重ね継手の摩擦攪拌接合方法。
- 請求項1〜4の少なくともいずれかにおいて、前記接合ツールを一方の部材に圧入して、この圧入により前記接合ツールの外周に部材を排出させる塑性流動により、接合界面を活性化させて接合することを特徴とする重ね継手の摩擦攪拌接合方法。
- 請求項1〜5の少なくともいずれかにおいて、前記接合ツールを前記部材に圧入して、部材を摩擦攪拌したのち引抜いてスポット接合することを特徴とする重ね継手の摩擦攪拌接合方法。
- 請求項1〜6の少なくともいずれかにおいて、前記接合ツールを前記部材に圧入した状態で、前記接合ツールを接合方向に移動することを特徴とする重ね継手の摩擦攪拌接合方法。
- 請求項1〜7の少なくともいずれかにおいて、複数の部材の重ね面に軟質金属をめっきしたことを特徴とする重ね継手の摩擦攪拌接合方法。
- 請求項8において、前記軟質金属はニッケル,亜鉛,銅のいずれかであることを特徴とする重ね継手の摩擦攪拌接合方法。
- 請求項1〜9のいずれかにおいて、前記接合ツールを圧入する部材側の表面に台形部材を設け、接合ツールの圧入によるへこみを防止したことを特徴とする重ね継手の摩擦攪拌接合方法。
- 請求項1〜10のいずれかにおいて、一方の部材には重ね面に溝を設け、他方の部材には重ね面に前記溝に嵌合される突起部を設け、前記溝に前記突起部を嵌合して接合することを特徴とする重ね継手の摩擦攪拌接合方法。
- 請求項1〜11のいずれかにおいて、前記接合ツールは、ツールの先端部の軸方向に対する断面形状が台形形状となっていることを特徴とする重ね継手の摩擦攪拌接合方法。
- 請求項1〜12のいずれかにおいて、前記複数の部材は異種金属よりなることを特徴とする重ね継手の摩擦攪拌接合方法。
- 請求項13において、前記接合ツールを低融点側の部材に圧入することを特徴とする重ね継手の摩擦攪拌接合方法。
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