JP5835952B2 - 摩擦攪拌接合用の回転接合ツール、ならびに、これを用いた摩擦攪拌接合方法 - Google Patents

摩擦攪拌接合用の回転接合ツール、ならびに、これを用いた摩擦攪拌接合方法 Download PDF

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Description

本発明は上部ショルダーと下部ショルダーからなる一対のショルダー間にプローブを設け、被接合部材同士を突合わせた突合わせ部を上部及び下部のショルダーによって挟み込み、回転するプローブによって接合部を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合用の回転接合ツール及びそれを用いた摩擦攪拌接合方法に関し、特に板厚が異なる被接合部材の突合わせ部を摩擦攪拌接合する回転接合ツール及びそれを用いた摩擦攪拌接合方法に関する。
図10に示すように、アルミニウム材からなる被接合部材1、1を摩擦攪拌接合する場合には、裏当て材2上に被接合部材1、1を載置して突合わせ、回転接合ツール3を回転させながら不図示のプローブを挿入すると共に不図示のショルダーを被接合部材1、1に押し付けて摩擦熱を発生させ、プローブにより突合わせ部を攪拌する。その際、この押付荷重に対処するため、被接合部材が裏当て材2にて支えられるようにして行なわれる。この裏当て材2は被接合部材1、1の裏面に密着させて設置するものであって高い剛性を必要とする。従来から摩擦攪拌接合では、こうした工具に代えてボビンツールと呼ばれる回転工具を用いた摩擦攪拌接合方法が提案されている。
図11(a)、(b)は、下記特許文献1に記載されるボビンツールを用いた摩擦攪拌接合を示すものである。この摩擦攪拌接合方法では、アルミニウム合金板からなる被接合部材1、1を端面同士にて突合わせ、回転接合ツール3によって摩擦攪拌接合される。具体的には、突合わせ部Jに沿って図11(b)に示すプローブ31が移動する。図11において、(b)は(a)のA−A断面図である。
プローブ31は、機械的攪拌により周囲の被接合部材を塑性流動化させる。上部回転体41と下部回転体42は、上下方向から被接合部材を挟み込んで、被接合部材を摩擦熱により加熱すると共に、可塑性ゾーンから材料が損なわれることを防いでいる。従って、この状態で回転接合ツール3が突合わせ部に沿って移動すると、被接合部材の軟化した材料は、塑性流動化して攪拌混練されつつ、移動するプローブ31の後方に流れる。そして、プローブ後方で互いに交じり合った被接合部材が接合される。
しかしながら、このようなボビンツール式の回転接合ツールは、上部回転体41と下部回転体42が材料を挟み込んで接合を行う。したがって、突合わせ部Jにおいて段差が生じるような板厚が異なる被接合部材による差厚テーラードブランク材の作製に際しては、薄板被接合部材では回転体が表面に接触せずに、可塑化した材料が外部へと流出してしまう入熱不足等が生じ、正常な接合ができない問題があった。
特許文献2には、被接合部材の厚さバラツキによる突合わせ部の段差が生じても健全な接合部を得るための回転接合ツールが記載されている。この回転接合ツールはショルダーがテーパー形状となっており、その表面には複数の螺旋溝が形成されている。ショルダー形状をテーパー形状とし、ショルダー先端を一定量材料内に押込むことで、板厚のバラツキにより生じる段差を吸収するものである。しかしながら、この回転接合ツールは、同厚の被接合部材の板厚バラツキを吸収するためのものであり、板厚が異なる被接合部材に対するものではない。このテーパー形状を差厚接合に適用した場合には、テーパーの角度を大きくしなければならず、両被接合部材へのショルダーの押込量が大きくなってしまう。その結果、厚板被接合部材に押込まれるショルダーの体積が大きくなって材料への入熱が過大となり、厚板被接合部材からのバリの増大と入熱過剰による強度低下が生じる問題があった。更に、薄板被接合部材へのショルダーの押込み量が大きくなると、薄板被接合部材からのバリの増大と共に接合部の板厚が減少してしまう問題もあった。
特許文献3には、突合わせ部に段差が生じる場合や、両被接合部材の上下面の摩擦係数が異なる場合においても、回転接合ツールの接合中に振動が発生することがない摩擦攪拌接合用工具が記載されている。上下のショルダー面には、半径方向と円周方向に形成された凹溝が複数設けられ、その凹溝によって区切られた各ブロックの表面が、回転方向及び/又は中心方向に傾斜している。これにより、突合わせ部に段差がある場合においても良好な接合が可能となるが、厚板が2.0mmと1.0mmの被接合部材同士の差厚接合に適用した場合には、段差が大き過ぎて良好な接合ができない問題があった。
特許文献4には、差厚接合又は異種金属接合用のボビンツールが記載されている。ショルダーに内蔵された圧力調整装置によりショルダー面を傾斜させることによって、突合わせ部に段差が生じる場合でも、回転中のショルダー面が常に両方の被接合部材に当接することができる。その結果、板厚が異なり突合わせ部に段差が生じるような場合でも、ボビンツールによって差厚接合が可能となる。しかしながら、ショルダー内部にはショルダー面に付与する圧力調整装置を設ける必要があるため、回転接合ツールが大型になり、また高価になる問題があった。更に、板厚差や材料種により圧力調整が必要となり、操作が非常に煩雑となり実用性に欠ける問題もあった。
特許第2712838号公報 特開2008−221338号公報 特許第4292192号公報 特開2009−018312号公報
本発明は、従来技術の上記問題に鑑みてなされたものであり、板厚が異なる被接合部材の摩擦攪拌接合において、制御が容易でコストも比較的廉価であり良好な接合強度を与える回転接合ツールと、操作が容易で良好な接合強度が得られる摩擦攪拌接合方法を提供することを目的とする。
本発明は請求項1において、板厚が異なる金属板からなる被接合部材の突合わせ部を摩擦攪拌接合するために用いられる回転接合ツールであって、略円柱状の上基部と;当該上基部の被接合部材側に設けられた上部ショルダーと;略円柱状の下基部と;当該下基部の被接合部材側に設けられた下部ショルダーと;前記上部ショルダーの表面と下部ショルダーの表面との間に接続され前記上基部及び下基部と同心に垂下したプローブと;が一体的に回転可能に構成されており、
前記上部ショルダー及び下部ショルダーの表面が突合わせ部に向けてそれぞれ凸曲面を成し、当該凸曲面において、その外周から中心に至り、かつ、当該回転接合ツールの回転によって可塑化した被接合部材が内部に流入するように設けられた1つ以上の溝が形成されており、
前記プローブが突合わせ部の突合わせ面に対して平行となるように前記被接合部材同士の突き合わせ部を前記上部ショルダーと下部ショルダーとで挟み込み、前記上基部及び下基部が被接合部材に接しない状態で回転しつつ前記プローブが突合わせ部に沿って移動し、
前記上部ショルダー及び下部ショルダーの凸曲面の曲率半径R (mm)、R (mm)が下記式(1)〜(4)の関係を満たし、かつ、前記上基部及び下基部の直径D (mm)、D (mm)が下記式(5)、(6)の関係を満たすことを特徴とする摩擦攪拌接合用の回転接合ツールとした。
[4t −f −{(4t −f +16f (t −T )} 1/2 ]/2f ≦g ≦[4t −f +{(4t −f +16f (t −T )} 1/2 ]/2f
の時、
(f +4t )/2f ≦R ≦{(g +f +20T }/2(g +f
(1)
であり、上記範囲外の場合は、
{(g +f +4T }/2(g +f )≦R ≦(f +20t )/2f
(2)
であり、
[4t −f −{(4t −f +16f (t −T )} 1/2 ]/2f ≦g ≦[4t −f +{(4t −f +16f (t −T )} 1/2 ]/2f
の時、
(f +4t )/2f ≦R ≦{(g +f +20T }/2(g +f
(3)
であり、上記範囲外の場合は、
{(g +f +4T }/2(g +f )≦R ≦(f +20t )/2f
(4)
であり、
≧2{(2R −g −f )(g +f )} 1/2 (5)
≧2{(2R −g −f )(g +f )} 1/2 (6)
であり、ここで、f :薄板接合部材における上部ショルダーの押込み量(mm)、g :上部ショルダー側における突合わせ面の段差(mm)、f :薄板接合部材における下部ショルダーの押込み量(mm)、g :下部ショルダー側における突合わせ面の段差(mm)、t:薄板接合部材の厚さ(mm)、T:厚板接合部材の厚さ(mm)である。
本発明は請求項において、前記上基部が径大の又は六角状の本体部を上部ショルダーとは反対側に備えるものとした。
本発明は請求項において、前記下基部が径大の又は六角状の本体部を下部ショルダーとは反対側に備えるものとした。
本発明は請求項において、板厚が異なる金属板からなる被接合部材を突合わせ、回転接合ツールを回転させつつ突合わせ部に沿って移動させて被接合部材を接合する摩擦攪拌接合方法であって、前記回転接合ツールが、略円柱状の上基部と;当該上基部の被接合部材側に設けられた上部ショルダーと;略円柱状の下基部と;当該下基部の被接合部材側に設けられた下部ショルダーと;前記上部ショルダーの表面と下部ショルダーの表面との間に接続され前記上基部及び下基部と同心に垂下したプローブと;が一体的に回転可能に構成されており、
前記上部ショルダー及び下部ショルダーの表面が突合わせ部に向けてそれぞれ凸曲面を成し、当該凸曲面において、その外周から中心に至り、かつ、当該回転接合ツールの回転によって可塑化した被接合部材が内部に流入するように設けられた1つ以上の溝が形成されており、
前記プローブが突合わせ部の突合わせ面に対して平行となるように前記被接合部材同士の突き合わせ部を前記上部ショルダーと下部ショルダーとで挟み込み、前記上基部及び下基部が被接合部材に接しない状態で回転しつつ前記プローブが突合わせ部に沿って移動し、
前記上部ショルダー及び下部ショルダーの凸曲面の曲率半径R (mm)、R (mm)が下記式(1)〜(4)の関係を満たし、かつ、前記上基部及び下基部の直径D (mm)、D (mm)が下記式(5)、(6)の関係を満たすことを特徴とする摩擦攪拌接合方法とした。
[4t −f −{(4t −f +16f (t −T )} 1/2 ]/2f ≦g ≦[4t −f +{(4t −f +16f (t −T )} 1/2 ]/2f
の時、
(f +4t )/2f ≦R ≦{(g +f +20T }/2(g +f
(1)
であり、上記範囲外の場合は、
{(g +f +4T }/2(g +f )≦R ≦(f +20t )/2f
(2)
であり、
[4t −f −{(4t −f +16f (t −T )} 1/2 ]/2f ≦g ≦[4t −f +{(4t −f +16f (t −T )} 1/2 ]/2f
の時、
(f +4t )/2f ≦R ≦{(g +f +20T }/2(g +f
(3)
であり、上記範囲外の場合は、
{(g +f +4T }/2(g +f )≦R ≦(f +20t )/2f
(4)
であり、
≧2{(2R −g −f )(g +f )} 1/2 (5)
≧2{(2R −g −f )(g +f )} 1/2 (6)
であり、ここで、f :薄板接合部材における上部ショルダーの押込み量(mm)、g :上部ショルダー側における突合わせ面の段差(mm)、f :薄板接合部材における下部ショルダーの押込み量(mm)、g :下部ショルダー側における突合わせ面の段差(mm)、t:薄板接合部材の厚さ(mm)、T:厚板接合部材の厚さ(mm)である。
本発明は請求項において、前記上基部が径大の又は六角状の本体部を上部ショルダーとは反対側に備えるものとした。
本発明は請求項において、前記下基部が径大の又は六角状の本体部を下部ショルダーとは反対側に備えるものとした。
本発明に係る回転接合ツールは、板厚が異なる被接合部材の摩擦攪拌接合に用いられ、制御が容易でコストも比較的廉価であり良好な接合強度を与える。また、本回転接合ツールを用いる摩擦攪拌接合方法では、容易な操作を可能とし良好な接合強度が得られる。
本発明に係る回転接合ツールを示す正面図である。 本発明に係る回転接合ツールのショルダー表面の平面図である。 回転接合ツールを突合わせ部に挿入した状態を表わす説明図である。 厚板中に押し込まれるショルダーの体積を求めるための説明図である。 厚板と薄板を突き合わせた状態を表わす斜視図である。 回転接合ツールを回転させながら突合わせ面に押入する前の状態を表わす斜視図である。 回転接合ツールを突合わせ部に挿入する状態を表わす斜視図である。 挿入した回転接合ツールを移動させて接合を実施している状態を表わす斜視図である。 回転接合ツールを回転させながら突合わせ部から抜き取っている状態を表わす斜視図である。 従来の摩擦攪拌接合方法を説明する斜視図である。 従来の摩擦攪拌接合方法を説明する斜視図(a)及び正面図(b)である。
A.被接合部材
本発明に係る摩擦攪拌接合に適用できる金属板からなる被接合部材としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金などの材料が挙げられる。また、一方の被接合部材と他方の被接合部材が、同一組成の金属材料であっても、異なる組成の金属材料であってもよい。なお、アルミニウム合金としては、1000系合金、2000系合金、3000系合金、5000系合金、6000系合金、7000系合金などが好適に用いられる。被接合部材の形状や寸法は特に制限されるものではないが、本発明は、板厚の異なる被接合部材同士の接合に関し、薄板側の板厚は0.8mm以上で、厚板側の板厚は4.0mm以下が好ましく、厚板と薄板の板厚比(厚板の板厚/薄板の板厚)は2.2以下が望ましい。これは、厚板と薄板の板厚比と上下に形成される段差の関係が以下の式(7)が成り立つ時、本発明の式(1)〜(4)が成り立つためである。
1,2>(f1,2/5)(T/t)−f1,2 (7)
B.回転接合ツール
図1(a)に示すように、本発明に係る回転接合ツール3は、略円柱状の上基部33と、上基部33の被接合部材側(図中下側)に設けられた上部ショルダー32と、略円柱状の下基部35と、下基部35の被接合部材側(図中上側)に設けられた下部ショルダー34とを含み、更に、上部ショルダー32の表面と下部ショルダー34の表面との間に接続されたプローブ31を含む。プローブ31は、上基部33と下基部35と同心に垂下している。上基部33、上部ショルダー32、下基部35、下部ショルダー34及びプローブ31は、一体的に回転可能である。
両ショルダーの直径は先端側ほど短くなり、それぞれ上基部33、下基部35と接する部分で最大となる。これらショルダーの最大直径は、それぞれ基部33、下基部35の直径に等しい。上基部の直径は上記式(5)を、下基部の直径は上記式(6)の関係を満たす。
上部ショルダー32と下部ショルダー34の表面は、突合わせ部に向けてそれぞれ凸曲面を成す。上部ショルダー32の凸曲面の曲率半径Rは、上記式(1)または(2)を満たし、下部ショルダー34の凸曲面の曲率半径Rは、上記式(3)または(4)を満たす。また、これら凸曲面には、その外周から中心に至り、かつ、回転接合ツールの回転によって可塑化した被接合部材が内部に流入するように設けられた1つ以上の溝が形成されている。
プローブ31が突合わせ部の突合わせ面に対して平行となるように被接合部材同士の突き合わせ部が上部ショルダーと下部ショルダーとによって挟み込まれる。上基部33及び下基部35が被接合部材に接しない状態で回転しつつ、プローブ31が突合わせ部に沿って移動する。
本発明に係る回転接合ツール3を、図1(b)に示す形状としてもよい。この回転接合ツール3では、上基部33が径大の本体部330を上部ショルダー32とは反対側に備える。また、下基部35が六角状の本体部350を下部ショルダー34とは反対側に備える。上基部33と上部ショルダー32を一体の成形体とし、螺合等により本体部330に取り外し可能とするものである。取り外し可能なので、上部ショルダー32の洗浄、ならびに、プローブ31の取り付けや取り外しが容易となる。また、本体部350、下基部35及び下部ショルダー34を一体の成形体とすることにより、これら一体成形体を六角レンチによってプローブ31から容易に取り外し可能となる。なお、図1(b)では、上方の本体部を径大とし、下方の本体部を六角状とする例を示す。これに代えて、上方の本体部を六角状とし、下方の本体部を径大としてもよい。更に、両方の本体部を径大としてもよく、或いは、両方の本体部を六角状としてもよい。以下においては、図1(a)に示す回転接合ツール3を用いた場合について説明する。
プローブ31は略円柱状を成す。また、プローブ31は、上部ショルダー32の表面と下部ショルダー34の表面との間に接続されており、上部ショルダー32の表面から下部ショルダー34の表面に向かって、上基部33と下基部35と同心に垂下する。プローブ31の長さは、薄板側被接合部材の板厚よりも短い。プローブ31の半径はプローブの材料によるが、薄板側被接合部材の厚さの2倍程度が好ましい。プローブ31の外周面において、可塑化した被接合部材の流動がより活発になるように攪拌翼としてネジ溝を設けてもよい。可塑化した被接合部材の流動をより活発にするには、ネジ溝に加えて、プローブ31の側面を2〜4面程度面取りした多平面体としてもよい。更に、このような多平面体とする場合に、ネジ溝が切ってある各面のネジ溝の向きを、右ネジ、左ネジと交互になるようにするのが好ましい。図1(b)に示すような上下ショルダーを用いるボビンツールでは、このような形態が特に好ましい。両ショルダー32、34及びプローブ31は、接合される被接合部材よりも硬い金属材料、例えば、工具鋼などから形成される。
図2に示すように、上部ショルダー32と下部ショルダー34の表面にはその外周から中心に至り、且つ、回転によって可塑化した被接合材料が内部に流入するように設けられた1つ以上の溝がそれぞれ設けられている。図2(a)に、上部ショルダー32の渦状溝36、37がプローブ31の周囲を回るように示され、図2(b)に、下部ショルダー34の渦状溝38、39がプローブ31の周囲を回るように示される。上基部の上方から見た際に回転接合ツールを反時計回りに回転させて用いる場合には、上部ショルダー32の渦状溝36、37は時計回りに形成され、下部ショルダー34の渦状溝38、39は反時計回りに形成される。これとは反対に、上基部の上方から見た際に回転接合ツールを時計回りに回転させて用いる場合には、上部ショルダー32の渦状溝36、37は反時計回りに形成され、下部ショルダー34の渦状溝38、39は時計回りに形成される。
図3に示すように、接合される2つの被接合部材として、板厚Tの厚板被接合部材11(以下、単に「厚板11」と記す)と板厚tの薄板被接合部材12(以下、単に「薄板12」と記す)が用いられる。厚板11の側面と薄板12の側面を突合わせ面として、これらが密着するように突合わせて突合わせ部を形成する。プローブ31は、突合わせ部において突合わせ面に対して平行となる。
また、回転接合ツールの上基部33及び下基部35は厚板11及び薄板12に接触しておらず、上部及び下部のショルダー32、34には1つ以上の溝がそれぞれ形成されている。これにより、上部及び下部のショルダー32と34により押込まれた厚板11側において可塑化した金属が、上部ショルダー32に設けられた溝の内部に流入し、下部ショルダー34に設けられた溝の内部に流入する。これら内部に流入した被接合部材は、バリとして外部に排出されることが防止される。更に、上部及び下部のショルダー32、34は、それぞれ一定面積において薄板12に接すると共に、厚板11ともその一定面積又は全面を接する。これにより、被接合部材である厚板11と薄板12に対して、両ショルダーから適切な入熱量を加えることができる。このように、上部及び下部のショルダー32、34に設けた溝、ならびに、上部及び下部のショルダー32、34が厚板11及び薄板12と所定面積でそれぞれ接触することにより、接合部においてトンネル欠陥等の接合不良が防止され、良好な接合材を得ることができる。
回転接合ツールの構造は、上記式(1)〜(4)を満たすのが好ましい。式(1)〜(4)を満たすことにより、図3に示すように、上部ショルダー32と下部ショルダー34が薄板12側に一定面積接すると共に、厚板11側においても上部ショルダー32と下部ショルダー34の一定面積又は全面が接触し、回転接合ツール3の上基部33と下基部35が厚板11及び薄板12に接触することなく押込まれる。また、被接合部材に対して適切な入熱量を与えるための凸曲面の曲率半径(R1、R)を決定することができる。
また、上基部33の直径D、下基部35の直径Dをそれぞれ上記式(5)、(6)から決定すれば、図3に示すように、上部及び下部のショルダー32、34と厚板11の接触面の投影面の半径rL1、rL2が、2T<rL1<4.5T、2T<rL2<4.5Tの範囲になる。また、上部及び下部のショルダー32、34と薄板12の接触面の投影面の半径rs1、rs2が2t<rs1<4.5t、2t<rs2<4.5tの範囲になる。これらの条件は、本発明者らにより研究及び実験に基づき得られたもので、薄板12の厚さ
が0.8mm以上で、厚板11の板厚が4.0mm以下であり、厚板と薄板の板厚比(厚板の板厚/薄板の板厚)は2.2以下が望ましい。これは、厚板と薄板の板厚比と上下に形成される段差の関係が以下の式(7)が成り立つ時、本発明の式(1)〜(4)が成り立つためである。
1,2>(f1,2/5)(T/t)−f1,2 (7)
この範囲内では健全な接合が可能となるショルダーの接触面積の範囲である。ただし、押込み量f、fは薄板12の板厚tの1/10以下になるように設定することが望ましい。これを超える押込み量は、バリの量を増加させ接合安定性が減少する。
C.式(1)〜(6)の解析
以下に式(1)〜(6)の詳細な説明を示す。図3よりrLlとRの関係は以下のようになる。
cosθ=R−(g+f)、Rsinθ=rLl
ここで、sinθ+cosθ=1であることから、
(1/R )(R−g−f+(rLl /R )=1
−2R(g+f)+(g+f+rLl =R
=[{(g+f+rLl }/2(g+f)] (8)
また、rslとRの関係は以下のようになる。
cosψ=R−f、Rsinψ=rsl
先と同様に、以下の式が導かれる。
=(f +rsl )/2f (9)
ここで、rLlとrslは、上述のようにt及びTとの関係で実験的に得られるものであり、2T≦rLl≦4.5T、2t≦rsl≦4.5tであるから、上記式(8)、(9)から下記式が得られる。
[{(g+f+4T}/2(g+f)]≦R≦[{(g+f+20T}/2(g+f)]
{(f +4t)/2f}≦R≦{(f +20t)/2f
ここで、上記2式を満足する範囲はgの大きさによって変化するため、以下のようになる。
[4t−f −{(4t−f +16f (t−T)}1/2]/2f≦g≦[4t−f +{(4t−f +16f (t−T)}1/2]/2f
の時、
(f +4t)/2f≦R≦{(g+f+20T}/2(g+f
(1)
となり、上記範囲外の場合は、
{(g+f+4T}/2(g+f)≦R≦(f +20t)/2f
(2)
となり、上記式(1)、(2)が導かれる。
以上の範囲からRを決定すると、図3から分かるように、ショルダーの直径はrLlの2倍であることから、以下の式(5)になる。
(1/R )(R−g−f+(rLl /R )=1
Ll =R −(R−g−f
Ll =(2R−g−f)(g+f
2rLl=2{(2R−g−f)(g+f)}1/2
よって、押込み量fの時に両板11、12に対して共にショルダーの凸曲面のみで接触するためには、基部33の直径をDとして以下のようになる。
≧2{(2R−g−f)(g+f)}1/2 (5)
また、下部ショルダーも同様であり、上記式(3)、(4)が得られる。
[4t−f −{(4t−f +16f (t−T)}1/2]/2f≦g≦[4t−f +{(4t−f +16f (t−T)}1/2]/2f
の時、
(f +4t)/2f≦R≦{(g+f+20T}/2(g+f
(3)
となり、上記範囲外の場合は、
{(g+f+4T}/2(g+f)≦R≦(f +20t)/2f
(4)
でなる。
また、下基部の直径Dについても、上基部と同様に以下の式(6)が得られる。
≧2{(2R−g−f)(g+f)}1/2 (6)
D.ショルダー端面に形成される溝
また、図2(a)、(b)に示すように、厚板及び薄板の可塑化した金属が上部ショルダー32に設けられた溝36、37と、下部ショルダー34に設けられた溝38、39の内部に流入し、バリとして外部に排出されることが抑制される。すなわち、厚板及び薄板の金属は、接合中に上部及び下部のショルダー32、34との摩擦により加熱され可塑化し、上部及び下部のショルダー32及び34が押込まれることにより溝36、37及び38、39のそれぞれ内部に流入し、溝内に適宜保持されて接合部位に留まる。溝としては、図示のような渦状溝に限定されるものではなく、非渦状溝あっても良い。また、渦状溝としては、図示するようなアルキメデスの螺旋曲線を2つ組合せたものに限られるものではなく、フェルマーの螺旋、インボリュート曲線のように、中心から外方へ緩やかな曲線状に旋回しているものであればよい。また、同様の効果が得られるヘリングボーン溝を設けても良い。この溝の断面形状は、加工する工具により、角型、U字型、半円型等が可能であるが、これらに限定されるものではない。前述のような溝を1つ以上組合せることによって、接合中に可塑化した被接合部材の金属を効果的にショルダー内に留めることができる。
次に、上記溝について具体的な事例を示す。前述のように、溝36、37及び38、39を設ける目的は、ショルダーが被接合部材の突合わせ部に押込まれることによって厚板及び薄板から押し出される可塑化した金属をバリとして排出させないためである。
まず、上部ショルダー32が厚板11中に押し込まれる体積Vg1を、図3、4に基づいて求める。不図示の微小体積dVは、次式で表される。
dV=(1/2)π{R −(R−r)}dr=(1/2)πr(2Rr−r)dr
これを積分して、
g1=∫dV=(1/2)∫πr(2R−r)dr=(1/2)g {R−(g/3)}が得られる。この式で、第2番目の∫では0からgまで積分する。なお、g+g=T−tで表される。ここで、渦状溝の体積がこのVg1よりも大きければ、バリ発生を防止することができる。
D−1.アルキメデスの螺旋曲線による渦状溝
以下では、渦状溝の具体例として、アルキメデスの螺旋曲線を2本用いた場合について示す。なお、本発明はこの具体例に限定されるものではない。図2(a)に示す螺旋状溝36、37は、図3に基づき下記式により表すことができる。
(渦状溝36)
=r+{(r−r)/2Nπ}θ・・・渦状溝36内縁曲線
'=r+h+{(r−r)/2Nπ}θ・・・渦状溝36外縁曲線
(渦状溝37)
=−[r+{(r−r)/2Nπ}θ]・・・渦状溝37内縁曲線、
'=−[r+h+{(r−r)/2Nπ}θ]・・・渦状溝37外縁曲線
ここで、r、r'、r、r'については、図示していない。また、N:渦周回数、h:溝幅、r:上部ショルダー径、r:プローブ径である。
また、図2(a)に示す渦状溝36と37の間隔δは、下記式で表される。
δ=r+{(r−r)/2Nπ}2nπ−r−h−{(r−r)/2Nπ}(2n−1)π={(r−r)/2N}−h
−r=2N(δ+h)
N={(r−r)/2(δ+h)} (10)
上記のnは任意の整数であり、0<n≦Nである。
ここで、渦状溝34と35は同一形状なので、両渦状溝の微小面積dSは以下となる。
dS=2×(1/2)(r'dθ−r dθ)={(r+h)−r }dθ=h(2r+h)dθ
ここで、渦状溝の深さをdとすると、溝の体積Vは以下となる。
V=d∫ds=d∫h(2r+h)dθ=dh∫[2r+{(r−r)/Nπ}θ+h]dθ=dh[2rθ+hθ+{(r−r)/2Nπ}θ]=2dhNπ(2r+h+r−r)=2dhNπ(r+r+h)、この式で、全て積分範囲は0から2Nπまでである。
そこで、回転ツールが1回転するときに渦状溝に巻き込まれる体積VがVg1よりも大きくなるように、V>Vg1とすると、
>{g (3R−g)}/{12hN(r+r+h)} (11)
となり、式(10)、(11)を用いて、実際の加工が可能となるような溝を選択することができる。実際の加工では溝の幅と間隔はコスト等を考慮すると、h≧0.5mm、δ≧0.5mmであり、式(10)から周回数Nが1以上になるように、h、δ、Nを決定し、式(11)から溝の深さdを決定する。
但し、この時のdも実際の加工におけるコスト等の制限があり、その範囲を満たすようなdとなるように式(10)を満たす範囲でh、δ、Nを決定する。図2(a)に示す渦状溝36、37は時計回りであるが、溝の寸法を決定する上では反時計回りでも構わない。また、下部ショルダー34の溝38、39についても同様となる。
D−2.フェルマーの螺旋曲線による渦状溝
次に、フェルマーの螺旋についても検討する。フェルマーの螺旋曲線は下記式で表される。
(渦状溝36)
=(r θ/2Nπ)1/2・・・渦状溝36内縁曲線
'=(r θ/2Nπ)1/2+h・・・渦状溝36外縁曲線
(渦状溝37)
=−(r θ/2Nπ)1/2・・・渦状溝37内縁曲線
'=−(r θ/2Nπ)1/2−h・・・渦状溝37外縁曲線
ここで、r、r'、r、r'、N、h、rは、上記アルキメデスの螺旋曲線についてのものと同じである。
また、渦状溝1と2の間隔δは、下記式で表される。
δ=(r (n+π)/2Nπ)1/2−(r n/2Nπ)1/2−h
ここで、nは任意の整数であり、0<n≦Nである。これらの渦状溝では、渦状溝34と35の間隔δは一定でなく外側に進むにつれ狭まっていくことから、n+π=2Nπの時にδ>0となるため、
h≦(r /2Nπ)1/2{(2Nπ)1/2−(2(N−1)π)1/2} (12)
となる。さらに、上記アルキメデスの螺旋の場合と同じように、渦状溝の微小面積dSは下記式で表される。
dS=2×(1/2)(r'dθ−r dθ)={(r+h)−r }dθ=h(2r+h)dθ
同様に、渦状溝の深さをdとすると溝の体積Vは以下となる。
V=d∫ds=d∫h(2r+h)dθ=dh∫{(r θ/Nπ)1/2+h}dθ=dh[{(2r /Nπ)1/2}{(2/3)θ3/2}+hθ]=dh{(8/3)Nπr+2Nπh}=(2/3)dhNπ(4r+3h)、この式で、全て積分範囲は0から2Nπまでである。
そこで、回転工具が1回転するときに渦状溝に巻き込まれる体積VがVg1よりも大きくなるように、V>Vg1とすると、
>{g (3R−g)}/{2hN(4r+3h)} (13)
となり、式(12)、(13)を用いて、実際の加工が可能となるような溝を選択することができる。実際の加工では溝の幅はコスト等を考慮すると、h≧0.5mm、δ≧0.5mmであり、式(12)から周回数Nが1以上になるように、h、δ、Nを決定し、式(13)から溝の深さdを決定する。
但し、この時のdも実際の加工におけるコスト等の制限があり、その範囲を満たすようなdとなるように式(12)を満たす範囲でh、δ、Nを決定する。図2(a)に示す渦状溝36、37は時計回りであるが、溝の寸法を決定する上では反時計回りでも構わない。また、下部ショルダー34の溝38、39についても同様となる。
E.摩擦攪拌接合方法
次に、本発明に係る摩擦攪拌接合方法について説明する。ここでは、板厚が異なる板状部材に直線状に接合し繋ぎ合せる場合について説明する。
図5に示すように、接合される二つの被接合部材として、厚板11、薄板12を用意する。突合わせ面11a、12aが密着するように突き合せて突合わせ部Jを形成する。両板材を表面と裏面それぞれに任意の段差g、gが形成されるように不図示のクランプなどにより接合中動かないように固定する。
図6に示すように、回転接合ツール3を図中矢印の方向に回転させながら、図中矢印の方向に進行させ、図7に示すように、厚板11と薄板12の突合わせ部Jに回転接合ツール3のプローブ31を端部より進入させ、上部ショルダー32と下部ショルダー34を突合わせ部Jの厚板11と薄板12に押し付ける。この際、プローブ31は、突合わせ面11aと12aと平行に挿入される。
その後、図8に示すように、回転接合ツール3を図中の矢印で示す接合方向に移動させる。薄板12を回転接合ツール3の回転方向と接合方向が一致する側(前進側)に、厚板11をその反対側(後退側)になるようにして移動させる。上部ショルダー32及び下部ショルダー34は回転した状態で、厚板11と薄板12にそれぞれ接触する。これにより、厚板11と薄板12は加熱され軟化し、塑性流動する。塑性流動した金属は、両ショルダー32、34の凸曲面によって上下から挟まれ外部への飛散が防止される。また、プローブ31は、回転した状態で厚板11と薄板12と接触することで両板材を塑性流動させると共に、両板材を攪拌する役割を担う。このようにして、厚板11と薄板12の突合わせ部Jが摩擦攪拌接合される。次に、図9に示すように、接合長全長に渡って摩擦攪拌接合した後、そのまま同方向に進行し回転接合ツール3を厚板11と薄板12の突合わせ部Jの端部から押し出して摩擦攪拌接合工程を終了させ、接合部が形成される。なお、図6〜9に示す回転接合ツール3は、図1(a)のものである。
なお、回転接合ツール3の回転速度は、回転接合ツール3の寸法・形状、厚板11と薄板12の材質や板厚に応じて設定されるものであるが、多くの場合、500rpm〜3000rpmの範囲で設定される。
本発明に係る摩擦攪拌接合によれば、厚板11を後退側に、薄板12を前進側に配置し、回転接合ツール3の上部及び下部のショルダー内部に圧力調整装置を設けることなく、板厚が異なる厚板11と薄板12を摩擦攪拌接合することが可能となり、良好な差厚接合部材を簡便な方法で得ることができる。
なお、本発明上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、回転接合ツールの回転方向と接合方向が一致する前進側に厚板11を配置し、その反対側である後退側に薄板12を配置しても良い。但し、この場合は発生するバリの量が多くなることがある。
また、上記実施形態では被接合部材として板材を用いたが、突合わせ部において表面に湾曲した段差がある押出材同士を接合することも可能である。この場合においても、本発明に係る摩擦攪拌接合用の回転接合ツールを用い、本発明に係る摩擦攪拌接合方法を実施することができる。
図10に示すような従来の方法に比べて、本発明に係るボビン式の摩擦攪拌接合方法では、回転接合ツールの上部と下部のショルダー内部にショルダー表面を上下に変動させるような圧力調整装置を設ける必要がない。接合条件のパラメーターは通常のボビン式の摩擦攪拌接合と同じであるので、ショルダー内部の圧力調整装置の制御は不要である。さらに、回転接合ツールの設計も簡便である。
また、回転接合ツールの凸曲面が厚板及び薄板のそれぞれに対して任意の面積にて接触させることができる。その結果、厚板及び薄板のそれぞれに対して適切な入熱量を与えることが可能となり、従来方法のような複雑な機構なしに良好な接合が可能となる。
本発明に係るボビン式の摩擦攪拌接合方法によって接合されるテーラードブランク板材は、様々な金属からなる厚板と薄板が突合わせ面に沿って、未接合部や、空孔などのトンネル欠陥等がない健全で良好な接合部により強固に接合される。従って、自動車のテーラードブランク板材として用いることにより、十分な剛性を確保しつつ軽量化することができ、さらに成形時に屑が発生することが有効に抑制される。
以下において、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1〜9
被接合部材の厚板として厚さ2.0mmのアルミニウム合金A6022−T4板材と、薄板として厚さ1.0mmのアルミニウム合金A6022−T4板材を用いた。これら板材をボビン式の摩擦攪拌接合方法によって差厚接合した。母材として使用したA6022−T4板材の引張強度はJIS Z 2241に従って測定したところ236MPaであった。
先ず、板厚2.0mmと薄板1.0mmの組合せにおいて、上部ショルダー表面の曲率半径R、下部ショルダー表面の曲率半径Rの範囲を上記式(1)〜(4)から求めた。 ここで、厚板側の板厚T=2.0mm、上基部側の突合わせ面の段差g=1.0mm、下基部側の突合わせ面の段差g=0.0mmであり、押込み量f及びfは薄板側の板厚の1/10になるように共にf=f=0.1mmとすると、式(1)、(3)が成り立つ範囲は0.3≦g1,2≦39.6であるから、R、Rの範囲は式(1)、(4)より、20.1≦R≦36.9、80.1≦R≦100.1となる。
実施例では、上部ショルダー表面の曲率半径Rとして、上記範囲内にある3種類のR=21、28、36mmと、下部ショルダー表面の曲率半径Rとして、上記範囲内にある3種類のR=81、90、100mmのショルダー凸曲面を有する回転接合ツールを使用した。それぞれの曲率半径における上基部の直径D、下基部の直径Dを上記式(5)、(6)から計算すると、上記各Rに対応して、上基部直径D≧13.4、15.5、17.7mmとなる。また、上記各Rに対応して、下基部直径D≧8.1、8.5、8.9mmとなる。これにより、上記各Rに対応して、D=14、16、18mmとし、上記各Rに対応して、全てD=9mmとした。
ショルダーに設けられる溝には、上記アルキメデスの曲線を用いた。プローブ半径は薄板の板厚の2倍のr=2.0mmとした。アルキメデスの曲線からなる渦状溝を2本設け、R=21、28、36mm、R=81、90、100mmにおいて、r=D/2、r=2.0mmである。それぞれの渦形状について計算する。
=21mmの場合、溝幅hをh=0.7、1.0、2.0mmの3条件、それぞれの溝の周回数を2.0、1.5、1.0とする。これら条件における溝間隔を式(10)から計算すると、全て0.5mm以上であり、実際の加工に問題がないことが確認できた。また、各条件の溝深さdを式(11)から計算すると、d>0.38、0.34、0.24mmとなり、全てd=0.4mmとした。
=28mmの場合、溝幅hをh=0.7、1.0、1.5mmの3条件、それぞれの溝の周回数を2.0、1.5、1.0とする。これら条件の溝間隔を式(10)から計算すると全て0.5mm以上と問題ないことが確認できた。次に溝深さdを式(11)から計算すると、d>0.46、0.42、0.40mmとなり、全てd=0.5mmと決定した。
=36mmの場合、溝幅hをh=0.5、0.8、1.0mmの3条件、それぞれの溝の周回数を2.5、2.0、1.5とする。これら条件の溝間隔を式(10)から計算すると全て0.5mm以上であり、問題ないことが確認できた。次に溝深さdを式(11)から計算すると、d>0.62、0.47、0.5mmとなり、それぞれd=0.7、0.5、0.6mmと決定した。
=81mmの場合、溝幅hをh=0.5mm、溝の周回数を1.0とする。この時の溝間隔を式(10)から計算すると0.5mm以上であり、問題ないことが確認できた。次に溝深さdを式(11)から計算するとd>0となる。よって、全てd=0.25mmと決定した。
=90mmの場合、溝幅hをh=0.5mm、溝の周回数を1.0とする。この条件の溝間隔を式(10)から計算すると全て0.5mm以上と問題ない。溝深さdを式(11)から計算すると、全てd>0となるため、全てd=0.25mmと決定した。
=100mmの場合、溝幅hをh=0.5mm、溝の周回数を1.0とする。この条件の溝間隔を式(10)から計算すると全て0.5mm以上と問題ない。溝深さdを式(11)から計算すると、全てd>0となるため、全てd=0.25mmと決定した。
以下、これらの曲率半径を有する上部ショルダーと下部ショルダーを組み合わせた回転接合ツールを回転接合ツール1〜9とした。各実施例における組合せを表1にまとめた。
Figure 0005835952
プローブの側面は90°毎に0.5mm切削し、4面を平面とし、その他の面にはネジ溝を切り、略八角形とした(8面)。各面におけるネジの向きは、交互に右ネジ、左ネジとなるようにした。プローブの長さは、薄板の板厚から、上部ショルダーと下部ショルダーの押込み量を差し引いた0.8mmとした。
接合する厚板と薄板は、幅150mm、長さ400mmにそれぞれ切断し、長辺同士を突合わせ接合して、突合わせ後の形状が幅300mm、長さ400mmとなるようにした。
上記9種類の回転接合ツール1〜9を用いて、回転速度:1500rpm、接合速度:700mm/分の条件で、厚板と薄板を摩擦攪拌接合した。接合中、回転接合ツールは両板材のいずれの側にも、かつ、接合方向の前後にも傾けていない。また、回転接合ツールは上方から見て反時計回りに回転させ、回転接合ツールの回転方向と接合方向が一致する側(前進側)に薄板を、回転接合ツールと接合方向が反対になる側(後退側)に厚板を配置した。
このようにして摩擦攪拌接合された接合材の継手強度を測定するために、各接合材からJIS 5号型の試験片を切り出して試料とした。この試料は、接合線が試験片の中心に位置するようにし、引張試験における引張方向と接合線が垂直となるように切り出されたものである。各試験片について、常温で、JIS Z 2241に従って引張試験を行い、引張強度を測定した。この引張強度を継手強度とした。また、母材強度に対する継手強度の比を継手効率とした。継手強度と継手効率を表4に示す。
Figure 0005835952
比較例1〜9
実施例1〜9で用いたのと同じ厚板と薄板を被接合部材として用い、実施例とは異なる下記の9種類の回転接合ツールを用いて摩擦攪拌接合試験を行った。
上述のように上記式(1)〜(4)から求められたR、Rの範囲は、20.1≦R≦36.9、80.1≦R≦100.1である。比較例として、この範囲外である上部ショルダーの凸曲面の曲率半径R=15mm、40mm、下部ショルダーの凸曲面の曲率半径R=40mm、150mmを組み合わせた回転接合ツール10〜13を用いた(比較例1〜4)。
それぞれの曲率半径における上基部及び下基部の直径D、Dを上記式(5)、(6)から計算すると、R=15mmでは上基部直径D>11.3であるから、D=12mmとし、R=40mmでは上基部直径D>18.6であるから、D=20mmとした。また、R=40mmでは下基部の直径D>5.7であるから、D=8mmとし、R=150mmでは下基部の直径D>10.9であるから、D=12mmとした。
更に比較例5〜8では、R、Rについては上記R、Rの範囲(20.1≦R≦36.9、80.1≦R≦100.1)を満たすR=21、36mm、R=81、100mmとしたが、上基部及び下基部の直径D、Dがそれぞれ、D=12mm、16mm、D=8mm、8mmとして上記式(5)、(6)を満たさない回転接合ツール14〜17を用いた。各比較例における組合せを表1にまとめた。
ショルダーに設けられる溝には、実施例と同様にアルキメデスの曲線を用いた。アルキメデスの曲線からなる渦状溝を2本設け、回転接合ツール10〜17において、r=D/2、r=2.0mmとした。ここで、R=15mm、D=12mmの場合は溝幅h=1.0mm、周回数をN=1として、式(10)から溝間隔δを計算すると、δ=1.0mmとなり、R=40mm、D=20mmの場合は溝幅h=1.0mm、周回数をN=2.0とすると、δ=1.0mmとなり、実際のツールの加工上に問題が無いことが確認できた。また、溝の深さdを式(11)から計算すると、R=15mm、D=12mmの場合は、d>0.41mmであり、R=40mm、D=20mmの場合は、d>0.38mmとなることから、両方共にd=0.5mmと決定した。
一方、R=40mm、D=8mmの場合は溝幅をh=0.5mm、周回数をN=1として、式(10)から溝間隔δを計算すると、δ=0.5mmとなり、R=150mm、D=12mmの場合は溝幅h=1.0mm、周回数をN=1.0とすると、δ=1.0mmとなり、実際のツールの加工上に問題が無いことが確認できた。また、溝の深さdを式(11)から計算すると、R=40mm、D=8mmの場合とR=150mm、D=12mmの場合は共にd>0mmとなることから、両方共にd=0.25mmと決定した。
更に、R=21mm、D=12mmの場合は溝幅h=1.0mm、周回数をN=1として、式(10)から溝間隔δを計算すると、δ=1.0mmとなり、R=36mm、D=16mmの場合は溝幅h=1.5mm、周回数をN=1とすると、δ=1.5mmとなり、実際のツールの加工上に問題が無いことが確認できた。また、溝の深さdを式(11)から計算すると、R=21mm、D=12mmの場合は、d>0.57mmであり、R=36mm、D=16mmの場合は、d>0.52mmとなることから、両方共d=0.6mmと決定した。
一方、R=81mm、D=8mmの場合は溝幅をh=0.5mm、周回数をN=1.0として、式(10)から溝間隔δを計算すると、δ=0.5mmとなり、R=100mm、D=8mmの場合も溝幅h=0.5mm、周回数をN=1.0とすると、δ=0.5mmとなり、実際のツールの加工上に問題が無いことが確認できた。また、溝の深さdを式(11)から計算すると、R=81mm、D=8mmの場合、R=100mm、D=8mmの場合は共に、d>0mmとなることから、d=0.25mmと決定した。
更に比較例9では、上記(1)〜(4)式から求めたR、Rの範囲(20.1≦R≦36.9、80.1≦R≦100.1)を満たし、かつ、上記式(5)、(6)を満たすR=21mmでD=14mm、R=81mmでD=9mmとし、両ショルダー表面に溝が設けられていない回転接合ツール18を用いた。
実施例1〜9と同じ条件で、比較例1〜9の摩擦攪拌接合試験を行った。得られた接合材についても実施例1〜9と同様にして、継手強度を測定し継手効率を求めた。結果を表4に示す。
表4から明らかなように、実施例1〜9では、継手強度が母材強度とほぼ同等で何れも薄板側で破断し、継手効率が98%以上となり高強度の接合材が得られた。このように、本発明において規定されるショルダー構造を有する回転接合ツールを用いて接合された被接合部材は、良好な継手特性を有することが明確になった。
一方、比較例1〜9では何れも継ぎ手効率が95%以下であり、薄板側の母材又は接合部にて破断し、高強度の接合材は得られなかった。
具体的には、比較例1では、上部ショルダー及び下部ショルダーの凸曲面の曲率半径が共に小さ過ぎたため、薄板材及び厚板材への入熱が不十分となった。その結果、内部欠陥が発生して継手強度が劣った。
比較例2では、上部ショルダーの凸曲面の曲率半径が小さ過ぎたため上部ショルダーからの入熱が不足する共に、下部ショルダーの凸曲面の曲率半径が大き過ぎたため下部ショルダーからの入熱が過大となった。その結果、上部及び下部のショルダーからの入熱バランスに欠け、内部欠陥が発生して継手強度が劣った。
一方、比較例3は、上部ショルダーの凸曲面の曲率半径が大き過ぎたため上部ショルダーからの入熱が過大となると共に、下部ショルダーの凸曲面の曲率半径が小さ過ぎたため下部ショルダーからの入熱が不足した。その結果、上部及び下部のショルダーからの入熱バランスに欠け、内部欠陥が発生して継手強度が劣った。
比較例4では、上部ショルダー及び下部ショルダーの凸曲面の曲率半径が共に大き過ぎたため、薄板材及び厚板材への入熱が過大となった。その結果、熱影響部が大きくなり継手強度が劣った。
比較例5〜8では、押込み量、板厚さ及び曲率半径に対して、上基部及び下基部の直径が小さ過ぎたため、厚板側に基部が接触してバリが多く発生した。その結果、接合部への被接合部材の流動が不十分となり接合部における板厚が減少したため、継手強度が劣った。
比較例9では、上部及び下部のショルダーの凸曲面に渦状溝が形成されていないため、両ショルダーにより押出された被接合部材が全てバリとなった。その結果、接合部における板厚が減少したため、継手強度が劣った。
実施例10〜18
被接合部材の厚板として厚さ1.7mmのアルミニウム合金A5182−O板材と、薄板として厚さ0.8mmのアルミニウム合金A5182−O板厚を用いた。これら板材をボビン式の摩擦撹拌接合方法によって差厚接合した。母材として使用したA5182−O板材の引張強度はJIS
Z 2241に従って測定したところ274MPaであった。
先ず、板厚1.7mmと薄板0.8mmの組合せにおいて、上部ショルダー表面の曲率半径R、下部ショルダー表面の曲率半径Rの範囲を上記式(1)〜(4)から求めた。ここで、厚板側の板厚T=1.7mm、上基部側の突合せ面の段差g及び下基部側の突合せ面の段差はそれぞれ、g=0.9mm、g=0mm、押込み量f及びfは共に薄板側の板厚の1/10以下であるf=f=0.08mmとすると、式(1)、(3)が成り立つ範囲は0.3≦g1,2≦31.6であるから、R、Rの範囲は式(1)、(4)より、16.0≦R≦30.0、72.3≦R≦80.0となる。
実施例では、上部ショルダー表面の曲率半径Rとして、上記範囲内にある3種類のR=17、23、29mmと、下部ショルダー表面の曲率半径Rとして、上記範囲内にある3種類のR=73、76、80mmのショルダー凸曲面を有する回転接合ツールを使用した。それぞれの曲率半径における上基部の直径D、下基部の直径Dを上記式(5)、(6)から計算すると、上記各Rに対応して、上基部直径D≧11.4、13.3、15.0mmとなる。また上記各Rも同様に、下基部直径D≧6.8、7.0、7.2mmとなる。これにより、上記各R、Rに対応して、D=12、14、16mm、Dは全てD=8.0mmとした。
ショルダーに設けられる溝には、上記アルキメデスの曲線を用いた。プローブ半径は薄板の板厚の2倍のr=1.6mmとした。アルキメデスの曲線からなる渦状溝を2本設け、それぞれの渦形状について計算する。
=17mmの場合、溝幅hをh=0.5、1.0、1.5mmの3条件、それぞれの溝の周回数を2.0、1.4、1.0とする。これら条件における溝間隔を式(10)から計算すると全て0.5mm以上であり、問題無い事が確認できた。次に溝深さdを式(11)から計算すると、d>0.42、0.28、0.25mmとなり、それぞれd=0.5、0.4、0.3mmとした。
=23mmの場合、溝幅をh=0.5、1.0、1.5mmの3条件、それぞれの溝の周回数を2.5、1.5、1.0とする。これら条件の溝間隔を式(10)から計算すると全て0.5mm以上であり、問題ない事が確認できた。次に溝深さdを式(11)から計算すると、d>0.40、0.32、0.30mmとなり、全てd=0.5mmと決定した。
=29mmの場合、溝幅hをh=1.0、1.5、2.0mmの3条件、それぞれの溝の周回数を2.0、1.5、1.0とする。これら条件の溝間隔を式(10)から計算すると全て0.5mm以上であり、問題ない事が確認できた。次に溝深さdを式(11)から計算すると、d>0.27、0.23、0.25mmとなり、全てd=0.3mmと決定した。
=73mmの場合、溝幅hをh=0.5mm、周回数を1.0とした。この条件の溝間隔を式(10)から計算すると0.5mm以上と問題ないことが確認できた。次に溝深さdを式(11)から計算すると、d>0となり、全てd=0.25mmと決定した。
=76、80mmの場合も同様に溝幅hをh=0.5mm、周回数を1.0とした。先と同様で溝間隔は問題ない。溝深さも同様に全てd=0.25mmと決定した。各実施例における組合せを表2にまとめた。
Figure 0005835952
プローブの側面は90°毎に0.5mm切削して4面を平面とし、その他の面にはネジ溝を切り、略八角形とした(8面)。各面におけるネジの向きは、交互に右ネジ、左ネジとなるようにした。プローブの長さは、薄板の板厚から、上部ショルダーと下部ショルダーの押込み量を差し引いた0.64mmとした。
接合する厚板と薄板は、幅150mm、長さ400mmにそれぞれ切断し、長辺同士を突合わせ接合して、突合せ後の形状が幅300mm、長さ400mmとなるようにした。
上記9種類の回転接合ツール19〜27を用いて、回転速度:1000rpm、接合速度:300mm/分の条件で、厚板と薄板を摩擦撹拌接合した。接合中、回転接合ツールは両板材のいずれの側にも、かつ、接合方向の前後にも傾けていない。また、回転接合ツールは上方から見て反時計回りに回転させ、回転接合ツールの回転方向と接合方向が一致する側(前進側)に薄板を、回転接合ツールの回転方向と接合方向が反対になる側(後退側)に厚板を配置した。
このようにして摩擦撹拌接合された接合材の継手強度を測定するために、各接合材からJIS
5号型の試験片を切り出して試料とした。この試料は、接合線が試験片の中心に位置するようにし、引張試験における引張方向と接合線が垂直となるように切り出されたものである。各試験片について、常温で、JIS
Z 2241に従って引張試験を行い、引張強度を測定した。この引張強度を継手強度とした。また、母材強度に対する継手強度の比を継手効率とした。継手強度と継手効率を表5に示す。
Figure 0005835952
比較例10〜15
実施例10〜15で用いたものと同じ厚板と薄板を被接合部材として用い、実施例とは異なる下記の6種類の回転接合ツールを用いて摩擦撹拌接合試験を行った。
上述のように上記式(1)〜(4)から求められたR、Rの範囲は、16.0≦R≦30.0、72.3≦R≦80.0である。比較例として、この範囲外である上部ショルダーの凸曲面の曲率半径R=14mm、40mm、同様に下部ショルダーの凸曲面の曲率半径R=65mm、90mmを組み合わせた回転接合ツール28〜31を用いた(比較例10〜13)。上記の各基部直径はD≧10.3mm、17.6mm、D≧6.4mm、7.6mmであるから、それぞれD=12mm、18mm、D=7.2mm、8.0mmとした。
更に比較例14では、R,Rについては上記R、Rの範囲(16.0≦R≦30.0、72.3≦R≦80.0)を満たすR=23mm、R=76mmとしたが、上基部及び下基部の直径D、Dがそれぞれ、D=12mm、D=6.0mmと上記式(5)(6)を満たさない回転接合ツール32を用いた。各比較例における組合せを表2にまとめた。
ショルダーに設けられる溝には、実施例と同様にアルキメデスの曲線を用いた。プローブ半径は薄板の板厚の2倍のr=1.6mmとした。アルキメデスの曲線からなる渦状溝を2本設け、回転接合ツール28〜31についてそれぞれの渦形状について計算する。
=14mmの場合、溝幅hをh=0.9、1.5mmの2条件、それぞれの溝の周回数を1.5、1.0とする。これら条件における溝間隔を式(10)から計算すると全て0.5mm以上であり、問題ない事が確認できた。次に溝深さdを式(11)から計算すると、それぞれd>0.24、0.20mmとなり、両方共d=0.3mmとした。
=40mmの場合、溝幅hをh=1.0、2.0mmの2条件、それぞれの溝の周回数を2.0、1.0とする。これら条件における溝間隔を式(10)から計算すると全て0.5mm以上であり、問題ない事が確認できた。次に溝深さdを式(11)から計算すると、それぞれd>0.35、0.32mmとなり、全て0.4mmと決定した。
=65mmの場合、溝幅hをh=0.5mm、溝の周回数を1.0とする。本条件における溝間隔を式(10)から計算すると、0.5mm以上で問題ない事が確認できた。溝深さdを式(11)から求めると、d>0mmとなり、0.3mmと決定した。
=90mmの場合、溝幅hをh=0.5mm、溝の周回数を1.0とする。本条件の溝間隔を式(10)から計算すると、0.5mm以上と問題ないことが確認できた。溝深さdを式(11)から求めると、d>0mmとなり、0.3mmと決定した。
=23mm、D=12mmの場合、溝幅hをh=1.0mm、溝の周回数をN=1とする。本条件における溝間隔を式(10)から計算すると、0.5mm以上であり加工に問題ない。さらに溝深さdを式(11)から計算すると、d>0.53mmとなり、d=0.6mmと決定した。
更に、R=76mm、D=6.0mmの場合、溝幅hをh=0.5mm、溝の周回数をN=0.7とする。本条件における溝間隔を式(10)から計算すると、0.5mm以上と問題ないことが確認できる。溝深さdを式(11)から求めると、d>0となり、d=0.25mmと決定した。
さらに比較例15で、上記(1)〜(4)式から求めたR、Rの範囲(16.0≦R≦30.0、72.3≦R≦80.0)を満たし、かつ、上記式(5)、(6)を満たすR=23mm、D=14mm、R=76mm、D=8.0mmとし、両ショルダー表面に溝が設けられていない回転接合ツール33を用いた。
各比較例における組合せを表2にまとめた。
実施例10〜18と同じ条件で、比較例10〜15の摩擦撹拌接合を行った。得られた接合材についても実施例10〜18と同様にして、継手強度を測定し継手効率を求めた。その結果を表5に示す。
表5から明らかなように、実施例10〜18では、継手強度が母材強度と同じで何れも薄板側で破断し、継手効率が100%となり、高強度の接合材が得られた。このように、本発明において規定されるショルダー構造を有する回転接合ツールを用いて接合された被接合部材は、良好な継手特性を有することが明らかになった。
一方、比較例10〜15ではいずれも継手効率が93%以下であり、薄板側の母材または接合部にて破断し、高強度の接合材は得られなかった。
具体的には、比較例10では、上部ショルダー及び下部ショルダーの凸曲面の曲率半径が共に小さ過ぎたため、薄板材及び厚板材への入熱が不十分になった。その結果、内部欠陥が発生して継手強度が劣った。
比較例11では、上部ショルダーの凸局面の曲率半径が小さ過ぎたため上部ショルダーからの入熱が不足すると共に、下部ショルダーの凸曲面の曲率半径が大き過ぎたため下部ショルダーからの入熱が過大となった。その結果、上部及び下部のショルダーからの入熱バランスに欠け、内部欠陥が発生して継手強度が劣った。
一方、比較例12は、上部ショルダーの凸曲面の曲率半径が大き過ぎたため上部ショルダーからの入熱が過大となると共に、下部ショルダーの凸曲面の曲率半径が小さ過ぎたため下部ショルダーからの入熱が不足した。その結果、上部及び下部のショルダーからの入熱バランスが悪くなり、内部欠陥が発生して継手強度が劣った。
比較例13では、上部ショルダー及び下部ショルダーの凸曲面の曲率半径が共に大き過ぎたため、薄板材及び厚板材への入熱が過大となった。その結果、熱影響部が大きくなり継手強度が劣った。
比較例14では、押込み量、板厚及び曲率半径に対して、上基部及び下基部の直径が小さ過ぎたため、厚板側に基部が接触してバリが多く発生した。その結果、接合部への被接合部材の流動が不十分となり接合部における板厚が減少したため、継手強度が劣った。
比較例15では、上部及び下部ショルダーの凸曲面に渦状溝が形成されていないため、両ショルダーによって押出された被接合部材が全てバリとなった。その結果、接合部における板厚が減少したため、継手強度が劣った。
実施例19〜27
被接合部材の厚板として厚さ3.0mmのアルミニウム合金A5052―O板材と、薄板として厚さ1.0mmのアルミニウム合金A5052−O板材を用いた。これら板材をボビン式の摩擦撹拌接合方法により差厚接合した。母材として使用したA5052−O板材の引張強度はJIS
Z 2241に従って測定したところ197MPaであった。
厚板3.0mmと薄板1.0mmの組合せにおいて、上部ショルダー表面の曲率半径R、下部ショルダー表面の曲率半径Rの範囲を上記式(1)〜(4)から求めた。上記基部側の突合せ面の段差g及び下基部側の突合せ面の段差gはそれぞれ、g=1.0mm、g=1.0mmとし、押込み量をそれぞれ薄板材の板厚の1/10以下であるf=f=0.1mmとすると、式(1)、(3)が成り立つ範囲は0.8≦g1,2≦39.1であるから、R、Rの範囲は式(1)、(3)より、20.1≦R1,2≦82.4となる。
実施例では、上部及び下部ショルダー表面の曲率半径として、上記範囲内にある3種類のR=R=21、50、80mmのショルダー凸曲面を有する回転接合ツールを使用した。それぞれの曲率半径における上基部の直径D及び下基部の直径Dを上記式(5)(6)から計算すると、D1,2≧13.4、20.9、26.4mmとなる。よって、上記各R1,2に対応して、D1,2=14、21、27mmとした。
ショルダーに設けられる溝には、アルキメデスの曲線を用いた。プローブ半径は薄板の板厚の2倍のr=2.0mmとした。ショルダー表面に2本設けるアルキメデスの曲線からなる渦状溝の形状について計算する。
=R=21mmの場合、溝幅hをh=0.7、1.0、2.0mmの3条件、それぞれの溝の周回数を2.0、1.5、1.0とする。これら条件における溝間隔を式(10)から計算すると全て0.5mm以上であり、加工上の問題は無い。次に溝深さdを式(11)から計算すると、d>0.38、0.34、0.24mmとなり、それぞれd=0.4、0.4、0.3mmと決定した。
=R=50mmの場合、溝幅hをh=1.0、1.5、2.0mmの3条件、それぞれの溝の周回数を2.5、2.0、1.5とする。これら条件における溝間隔を式(10)から計算すると全て0.5mm以上であり、加工上の問題は無い。次に溝深さdを式(11)から計算すると、d>0.37、0.30、0.29mmとなり、それぞれd=0.4、0.4、0.3mmと決定した。
=R=80mmの場合、溝幅hをh=1.0、1.0、1.5mmの3条件、それぞれの溝の周回数を3.0、2.5、2.0とする。これら条件における溝間隔を式(10)から計算すると全て0.5mm以上であり、加工上の問題は無い。次に溝深さdを式(11)から計算すると、d>0.40、0.48、0.39mmとなり、全てd=0.5mmと決定した。各実施例における組合せを表3にまとめた。
Figure 0005835952
プローブの側面は90°毎に0.5mm切削して4面を平面とし、その他の面にはネジ溝を切り、略八角形とした(8面)。各面におけるネジの向きは、交互に右ネジ、左ネジ
となるようにした。プローブの長さは薄板の板厚から、上部ショルダーと下部ショルダーの押込み量を差し引いた0.8mmとした。
接合する厚板と薄板は、幅150mm、長さ400mmにそれぞれ切断し、長辺同士を突合わせ接合して、接合後の形状が幅300mm、長さ400mmになるようにした。
上記9種類の回転接合ツール34〜42を用いて、回転速度:1000rpm、接合速度:300mm/分の条件で、厚板と薄板を摩擦撹拌接合した。接合中、回転接合ツールは両板材のいずれかの側にも、且つ接合方向の前後にも傾けていない。また、回転接合ツールは上方から見て反時計回りに回転させ、回転接合ツールの回転方向と接合方向が一致する側(前進側)に薄板を、回転接合ツールの回転方向と接合方向が反対になる側(後退側)に厚板を配置した。
このようにして摩擦撹拌接合された接合材の継手強度を測定するために、各接合材からJIS 5号型の試験片を切り出して試料とした。この試料は、接合線が試験片の中心に位置するようにし、引張試験における引張方向と接合線が垂直となるように切り出されたものである。各試験片について、常温で、JIS
Z 2241に従って引張試験を行い、引張強度を測定した。この引張強度を継手強度とした。また、母材強度に対する継手強度の比を継手効率とした。継手強度と継手効率を表6に示す。
Figure 0005835952
比較例16〜24
実施例19〜27で用いたものと同じ厚板と薄板を被接合部材として用い、実施例とは異なる下記の9種類の回転接合ツールを用いて摩擦撹拌接合試験を行った。
上述のように上記式(1)、(3)から求められたR、Rの範囲は、20.1≦R1,2≦82.4である。比較例として、この範囲外である上部ショルダーの凸曲面の曲率半径R1,2=17mm、85mmを組合せた回転接合ツール43〜46を用いた(比較例16〜19)。
それぞれの曲率半径における上基部及び下基部の直径D、Dを上記式(5)、(6)から計算すると、R1,2=17mmでは上基部と下基部の直径D1,2はD1,2≧12.0であるから、D1,2=12mmとし、R1,2=85mmでは上基部と下基部の直径D1,2はD1,2≧27.3であるから、D1,2=28mmとした。
更に比較例20〜23のR、Rについて上記R、Rの範囲(20.1≦R1,2≦82.4)を満たすR=R=21、80mmとしたが、上基部及び下基部の直径D1,2をそれぞれD1,2=12、24mmとして、上記式(5)(6)を満たさない回転接合ツール50〜53を用いた。各比較例における組合せを表3にまとめた。
ショルダーに設けられる溝は2本設け、実施例と同様にアルキメデスの曲線を用いた。このアルキメデスの曲線からなる渦状溝の形状を計算する。
1,2=17mmの場合、溝幅hをh=0.5、1.0の2条件、溝の周回数をそれぞれ1.5、1.0とした。これら条件の溝間隔を式(10)から計算すると全て0.5mm以上と問題ないことが確認できた。次に溝深さdを式(11)から計算するとそれぞれ、d>0.65、0.46mmとなり、それぞれd=0.7、0.5mmとした。
また、R1,2=85mmの場合、溝幅hをh=1.0、1.5の2条件、それぞれの溝周回数を3.0、2.0とした。これら条件の溝間隔を式(10)から計算すると全て0.5mm以上と問題ないことが確認できた。次に溝深さdを式(11)から計算するとそれぞれ、d>0.42、0.40mmとなり、全てd=0.5mmと決定した。
1,2=21mm、D1,2=12mmの場合、溝幅hをh=1.0mm、溝の周回数をN=1とした。この条件の溝間隔を式(10)から計算すると0.5mm以上であり問題ない。次に溝深さdを式(11)から計算するとd>0.57mmであるから、d=1.0mmとした。
1,2=80mm、D1,2=24mmの場合、溝幅hをh=1.0mm、溝の周回数をN=2とした。この条件の溝間隔を式(10)から計算すると0.5mm以上であり問題ない。次に溝深さdを式(11)から計算するとd>0.66mmであるから、d=1.0mmとした。
更に比較例24では、上記式(1)〜(4)から求めたR、Rの範囲(20.1≦R1,2≦82.4)を満たし、且つ、上記式(5)、(6)を満足するR=R=21mmでD=D=14mmとし、両ショルダー表面に溝が設けられていない回転接合ツール51を用いた。
実施例19〜27と同じ条件で比較例16〜24の摩擦撹拌接合試験を行った。得られた接合材についても実施例19〜27と同様にして、継手強度を測定し継手効率を求めた。その結果を表6に示す。
表6から明らかなように、実施例19〜27では、継手強度が母材強度と同じで何れも薄板側で破断し、継手効率が100%となり、高強度の接合材が得られた。このように、本発明において規定されるショルダー構造を有する回転接合ツールを用いて接合された被接合部材は良好な継手特性を持つことが明らかになった。
一方、比較例16〜24では何れも継手効率が93%以下であり、薄板側の接合部にて破断し、高強度接合材は得られなかった。
具体的には、比較例16では、上部ショルダー及び下部ショルダーの凸曲面の曲率半径が共に小さ過ぎたため、薄板材及び厚板材への入熱が不十分となった。その結果、内部欠陥が発生して継手強度が劣った。
比較例17では、上部ショルダーの凸曲面の曲率半径が小さ過ぎたため上部ショルダーからの入熱が不足すると共に、下部ショルダーの凸曲面の曲率半径が大き過ぎたため下部ショルダーからの入熱が過大となった。その結果、上部及び下部のショルダーからの入熱バランスに欠け、内部欠陥が発生して継手強度が劣った。
比較例18では、上部ショルダーの凸曲面の曲率半径が大き過ぎたため上部ショルダーからの入熱は過大となると共に、下部ショルダーの凸曲面の曲率半径が小さ過ぎたため下部ショルダーからの入熱は不足した。その結果、入熱バランスが悪くなり、内部欠陥が発生したて継手強度が低くとなった。
比較例19では、上部ショルダー及び下部ショルダーの凸曲面の曲率半径が共に大き過ぎたため、薄板及び厚板材への入熱が過大となった。その結果、接合部の板厚が減少して継手強度が低下してしまった。
比較例20〜23では、押込み量、板厚及び曲率半径に対して、上基部及び下基部の直径が小さ過ぎたため、厚板側に基部が接触してバリが多く発生した。その結果、接合部への被接合部材の流動が不十分となり接合部における板厚が減少したため、継手強度が劣った。
比較例24では、上部及び下部ショルダーの凸曲面に渦状溝が形成されていないため、両ショルダーによって押出された被接合部材が全てバリとなった。その結果、接合部における板厚が減少したため、継手強度が劣った。
本発明により、板厚が異なる被接合部材の摩擦攪拌接合において、制御が容易でコストも比較的廉価であり良好な接合強度を与える回転接合ツールが得られ、それを用いて操作が容易で良好な接合強度が得られる摩擦攪拌接合方法が達成される。
1・・・被接合部材
11・・・厚板被接合部材(厚板)
12・・・薄板被接合部材(薄板)
11a・・・厚板被接合部材の突合わせ面
12a・・・薄板被接合部材の突合わせ面
2・・・裏当て材
3・・・回転接合ツール
31・・・プローブ
32・・・上部ショルダー
33・・・上基部
34・・・下部ショルダー
35・・・下基部
330・・・径大の本体部
350・・・六角状の本体部
36、37、38、39・・・(渦状)溝
5・・・摩擦攪拌接合工具
51・・・上部回転体
52・・・上部ショルダー
53・・・下部回転体
54・・・下部ショルダー
・・・薄板接合部材における上部ショルダーの押込み量(mm)
・・・薄板接合部材における下部ショルダーの押込み量(mm)
・・・上部ショルダーにおける突合わせ面の段差
・・・下部ショルダーにおける突合わせ面の段差
h・・・溝幅
J・・・突合わせ部
N・・・渦周回数
r・・・図4における原点Oからの距離(変数)
・・・ショルダーと厚板の接触面の投影面の半径
L1・・・上部ショルダーと厚板の接触面の投影面の半径
L2・・・下部ショルダーと厚板の接触面の投影面の半径
・・・プローブ径
・・・ショルダーと薄板の接触面の投影面の半径
s1・・・上部ショルダーと薄板の接触面の投影面の半径
s2・・・下部ショルダーと薄板の接触面の投影面の半径
R・・・図4におけるショルダーの凸曲面の曲率半径
・・・上部ショルダーの凸曲面の曲率半径
・・・下部ショルダーの凸曲面の曲率半径
t・・・薄板接合部材の厚さ
T・・・厚板接合部材の厚さ
δ・・・渦状溝の間隔
θ・・・図3において、回転接合ツールを押込量f押込んだ際に、上部ショルダー表面と厚板表面の接点と上部ショルダーの曲面の中心を結んだ線分と突合わせ面がなす角度
ψ・・・図3において、回転接合ツールを押込量f押込んだ際に、上部ショルダー表面と薄板表面の接点と上部ショルダーの曲面の中心を結んだ線分と突合わせ面がなす角度
θ・・・図3において、回転接合ツールを押込量f押込んだ際に、下部ショルダー表面と厚板表面の接点と上部ショルダーの曲面の中心を結んだ線分と突合わせ面がなす角度
ψ・・・図3において、回転接合ツールを押込量f押込んだ際に、下部ショルダー表面と薄板表面の接点と上部ショルダーの曲面の中心を結んだ線分と突合わせ面がなす角度

Claims (6)

  1. 板厚が異なる金属板からなる被接合部材の突合わせ部を摩擦攪拌接合するために用いられる回転接合ツールであって、略円柱状の上基部と;当該上基部の被接合部材側に設けられた上部ショルダーと;略円柱状の下基部と;当該下基部の被接合部材側に設けられた下部ショルダーと;前記上部ショルダーの表面と下部ショルダーの表面との間に接続され前記上基部及び下基部と同心に垂下したプローブと;が一体的に回転可能に構成されており、
    前記上部ショルダー及び下部ショルダーの表面が突合わせ部に向けてそれぞれ凸曲面を成し、当該凸曲面において、その外周から中心に至り、かつ、当該回転接合ツールの回転によって可塑化した被接合部材が内部に流入するように設けられた1つ以上の溝が形成されており、
    前記プローブが突合わせ部の突合わせ面に対して平行となるように前記被接合部材同士の突き合わせ部を前記上部ショルダーと下部ショルダーとで挟み込み、前記上基部及び下基部が被接合部材に接しない状態で回転しつつ前記プローブが突合わせ部に沿って移動し、
    前記上部ショルダー及び下部ショルダーの凸曲面の曲率半径R (mm)、R (mm)が下記式(1)〜(4)の関係を満たし、かつ、前記上基部及び下基部の直径D (mm)、D (mm)が下記式(5)、(6)の関係を満たすことを特徴とする摩擦攪拌接合用の回転接合ツール。
    [4t −f −{(4t −f +16f (t −T )} 1/2 ]/2f ≦g ≦[4t −f +{(4t −f +16f (t −T )} 1/2 ]/2f
    の時、
    (f +4t )/2f ≦R ≦{(g +f +20T }/2(g +f
    (1)
    であり、上記範囲外の場合は、
    {(g +f +4T }/2(g +f )≦R ≦(f +20t )/2f
    (2)
    であり、
    [4t −f −{(4t −f +16f (t −T )} 1/2 ]/2f ≦g ≦[4t −f +{(4t −f +16f (t −T )} 1/2 ]/2f
    の時、
    (f +4t )/2f ≦R ≦{(g +f +20T }/2(g +f
    (3)
    であり、上記範囲外の場合は、
    {(g +f +4T }/2(g +f )≦R ≦(f +20t )/2f
    (4)
    であり、
    ≧2{(2R −g −f )(g +f )} 1/2 (5)
    ≧2{(2R −g −f )(g +f )} 1/2 (6)
    であり、ここで、f :薄板接合部材における上部ショルダーの押込み量(mm)、g :上部ショルダー側における突合わせ面の段差(mm)、f :薄板接合部材における下部ショルダーの押込み量(mm)、g :下部ショルダー側における突合わせ面の段差(mm)、t:薄板接合部材の厚さ(mm)、T:厚板接合部材の厚さ(mm)である。
  2. 前記上基部が径大の又は六角状の本体部を上部ショルダーとは反対側に備える、請求項1に記載の摩擦攪拌接合用の回転接合ツール。
  3. 前記下基部が径大の又は六角状の本体部を下部ショルダーとは反対側に備える、請求項1又は2に記載の摩擦攪拌接合用の回転接合ツール。
  4. 板厚が異なる金属板からなる被接合部材を突合わせ、回転接合ツールを回転させつつ突合わせ部に沿って移動させて被接合部材を接合する摩擦攪拌接合方法であって、前記回転接合ツールが、略円柱状の上基部と;当該上基部の被接合部材側に設けられた上部ショルダーと;略円柱状の下基部と;当該下基部の被接合部材側に設けられた下部ショルダーと;前記上部ショルダーの表面と下部ショルダーの表面との間に接続され前記上基部及び下基部と同心に垂下したプローブと;が一体的に回転可能に構成されており、
    前記上部ショルダー及び下部ショルダーの表面が突合わせ部に向けてそれぞれ凸曲面を成し、当該凸曲面において、その外周から中心に至り、かつ、当該回転接合ツールの回転によって可塑化した被接合部材が内部に流入するように設けられた1つ以上の溝が形成されており、
    前記プローブが突合わせ部の突合わせ面に対して平行となるように前記被接合部材同士の突き合わせ部を前記上部ショルダーと下部ショルダーとで挟み込み、前記上基部及び下基部が被接合部材に接しない状態で回転しつつ前記プローブが突合わせ部に沿って移動し、
    前記上部ショルダー及び下部ショルダーの凸曲面の曲率半径R (mm)、R (mm)が下記式(1)〜(4)の関係を満たし、かつ、前記上基部及び下基部の直径D (mm)、D (mm)が下記式(5)、(6)の関係を満たすことを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
    [4t −f −{(4t −f +16f (t −T )} 1/2 ]/2f ≦g ≦[4t −f +{(4t −f +16f (t −T )} 1/2 ]/2f
    の時、
    (f +4t )/2f ≦R ≦{(g +f +20T }/2(g +f
    (1)
    であり、上記範囲外の場合は、
    {(g +f +4T }/2(g +f )≦R ≦(f +20t )/2f
    (2)
    であり、
    [4t −f −{(4t −f +16f (t −T )} 1/2 ]/2f ≦g ≦[4t −f +{(4t −f +16f (t −T )} 1/2 ]/2f
    の時、
    (f +4t )/2f ≦R ≦{(g +f +20T }/2(g +f
    (3)
    であり、上記範囲外の場合は、
    {(g +f +4T }/2(g +f )≦R ≦(f +20t )/2f
    (4)
    であり、
    ≧2{(2R −g −f )(g +f )} 1/2 (5)
    ≧2{(2R −g −f )(g +f )} 1/2 (6)
    であり、ここで、f :薄板接合部材における上部ショルダーの押込み量(mm)、g :上部ショルダー側における突合わせ面の段差(mm)、f :薄板接合部材における下部ショルダーの押込み量(mm)、g :下部ショルダー側における突合わせ面の段差(mm)、t:薄板接合部材の厚さ(mm)、T:厚板接合部材の厚さ(mm)である。
  5. 前記上基部が径大の又は六角状の本体部を上部ショルダーとは反対側に備える、請求項4に記載の摩擦攪拌接合方法。
  6. 前記下基部が径大の又は六角状の本体部を下部ショルダーとは反対側に備える、請求項4又は5に記載の摩擦攪拌接合方法。
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