JP4401111B2 - 鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤及びその製造法 - Google Patents

鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤及びその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤及びその製造に関するものであり、特に食品精製用製剤として有用な鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤及びその製造法に関する。より詳細には、食用油の精製もしくは繰返し使用により劣化した食用油の再生をはじめ、有害もしくは不要乃至は必要以上の鉄分を含有する濃縮調味液等の液状食品等の精製のために、特に鉄分低減剤として有用な製剤及びその製造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリカ・マグネシア系化合物としては、MgO−SiO−HO系の原料から、オートクレーブ等の密閉容器中、自生圧力下での水熱処理により次のようなケイ酸マグネシウム鉱物が合成されることが知られている。
【0003】
例えば、3MgO−4SiOの組成の共沈物を原料として、280℃で950psiの圧力下で168時間水熱処理すると、タルク型構造のケイ酸マグネシウムが生成することが報告されている(非特許文献1参照)。
【0004】
また、フェロシリコンダストの如き非晶質ケイ酸原料、苦土原料及び水から調製したスラリーを、9kg/cm未満の圧力下で水熱処理して低結晶性の撥水性を有するケイ酸マグネシウム水和物を製造する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
さらに、粘土鉱物の酸処理によって得られた活性ケイ酸或いは活性アルミノケイ酸とマグネシウム原料とを水熱処理して、特異な乳化性能を有し、且つ大きい比表面積と吸着能を有する合成層状フィロケイ酸マグネシウムを製造する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
一方、例えばケイ酸ナトリウムと硫酸マグネシウムの複分解反応(共沈反応)によって合成されるケイ酸マグネシウムが市販され、一般の吸着剤として使用されていることも知られている。
【0007】
また、使用済食用油の連続的使用方法として、酸化マグネシウムと白土よりなるシリカ・マグネシウム系ゲルに対し、珪藻土を20〜30重量%の割合で混合してなる吸着剤を、加熱調理後の食用油に対し0.5〜3.0重量%の割合で、食用油の使用毎に油温80〜120℃において混合し濾過する方法が提案されている(特許文献3参照)。但し、ここで言うシリカ・マグネシウム系ゲルを構成している白土とは、指定添加物の二酸化ケイ素(シリカ)とは別に既存添加物として認められている活性白土を指すものであり(非特許文献2)、後で詳述する本発明のシリカ・マグネシア系製剤とは明白に区別されるものである。
【0008】
さらに、食用油の脱酸と劣化油の再生のため、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、合成フィロケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素および活性白土から選択された脱酸剤を粒径50〜200μmに造粒したものを用いることも提案されている(特許文献4参照)。
【0009】
勿論、ごく常識的な方法として、国内で食品製造用に吸着剤やろ過助剤として指定されているもの、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、炭酸マグネシウム、酸性白土、活性白土、ケイソウ土、活性炭などを単一使用もしくは併用することによって、劣化食用油の再生が試みられたことは、上段の例を見るまでもなく明らかである(非特許文献3参照)。
【0010】
【非特許文献1】
JULIE CHI-SUN YANG, “Journal of The American
Ceramic Society”, 43,No.10(1960), 542-549.
【非特許文献2】
食品衛生研究会/編集,“食品衛生関係法規集”, 中央法規出版(1990),▲1▼406下,▲1▼4104上
【非特許文献3】
河端俊治・他/共編,“食品衛生事典”,中央法規(1979),434−435.
【特許文献1】
特開昭58―9812
【特許文献2】
特開昭61―10020
【特許文献3】
特開2001―207187号
【特許文献4】
特開2001―335793号
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
現在の、資源の有効利用や再利用等の見地、特に食品リサイクル法の推進の目的から、例えば、食品営業で揚油として繰返し使用されている油の劣化を抑えること、劣化により生じた有害成分や不要成分としての各種不純物を除去乃至は低減することにより、油の使用回数を増やしたり、途中における再精製により再利用できるようにすることは極めて有意義なことである。
また、このような繰返し使用により劣化した食用油から各種不純物を除去乃至は低減できる吸着剤を発明することは、上記目的を実現できる材料を提供する意味で極めて有意義なことである。
【0012】
しかしながら、国内で食品精製用の吸着剤やろ過助剤に使用し得るものとして指定されていない、例えば、上述した非特許文献1に記載されているケイ酸マグネシウム鉱物、一般の吸着剤として市販されている複分解法合成ケイ酸マグネシウム、さらに特許文献1、同2及び同4に記載されているケイ酸マグネシウム等は、現在の日本では、食品等の精製の目的には使用できないのが現状である。
【0013】
また、特許文献4に列挙されているもののうち、指定食品添加物でもある酸化マグネシウム等の強いアルカリ性物質の単一物または混合物を、劣化食用油の精製の目的で使用した場合、高温下で、油脂の加水分解を促進したり、遊離脂肪酸と造塩反応を引き起こしたりして、脂肪酸マグネシウム等の金属石鹸類が生成し、処理後の油中に溶解・移行して、油の風味を損ねる等の結果を招きかねないという不安も有する。
【0014】
[揚油の劣化と鉄分低減の重要性]
揚油として用いられる油は、一般に「天ぷら油」と呼ばれるものであり、業務用の場合は「白絞油」とも呼ばれる。また、家庭では生食油としての「サラダ油」を揚油として用いることも多い。これらは原料油も精製工程もほぼ同じであり、「天ぷら」の原料油としてはナタネ油と大豆油が主として用いられている。
一般の揚物の場合の適温は160〜180℃であるが、比較的低温のポテトチップから極端に高温の揚煎餅の場合等も含めると、130〜270℃が揚物の行われる温度範囲である。揚鍋中の油は、消費されるまでに長時間にわたってこのような高温に繰返しさらされるので、油中では酸化や加水分解を主にした種々の変化(劣化)が進行する。
【0015】
揚油の劣化の重要な原因に、熱酸化による酸化重合物、熱重合物、過酸化物、酸化分解物、熱分解物及び着色物質の生成、加水分解による遊離脂肪酸の生成、さらには揚鍋(フライ装置)の内壁面の材質や揚種の成分からの微量重金属分の溶出・移行がある。また、油の上記の酸化反応(劣化)や着色は、油に移行した酸化作用のある鉄や銅あるいはそれらの化合物によって、加熱による再使用時にもフライ後の保存時にも促進される。
【0016】
微量の金属、特に酸化作用のある重金属類が油の酸化を促進することはよく知られている。銅、鉄、マンガン、クロム、ニッケル、バナジウム等で、特に銅は極めて微量で油脂の酸化を促進し、鉄は銅に次いでその作用が強いと言われている。
【0017】
元来、油脂は精製工程を経るとこれら原料由来の重金属類も著しく減少している。例えば、C.D. Evans らの報告では、大豆油の場合、銅
0.1 ppm、鉄 5.6 ppm のものが、精製工程を経たサラダ油では銅 0.005 ppm、鉄 0.08 ppmに減少する。
【0018】
繰り返し使用時における重金属分の増加の大部分は、フライ装置の油と接する部分の金属材料及び/又は揚種から溶出・移行してくるものである。そのため、フライ装置等として銅製や真ちゅう製などを使用することは極めてよくないとされ、また、重金属の溶出はないが強度が小さい欠点のあるアルミニウム製も敬遠され、現実的には軟鋼製やステンレス鋼製のものが使われている。
【0019】
上述のように、実際に使われているフライ装置は鉄を主成分とする材質で出来ていることから、装置の油と接する部分から溶出・移行する微量重金属分は大部分が鉄分であると言える。
また、揚種から揚油への移行金属分は、野菜や山菜等からの天然由来の鉄分をはじめとする各種微量金属成分もあるが、畜肉、鯨肉、血合いを含む魚肉などの血液成分由来のヘム鉄に起因する鉄分が多くを占める。
【0020】
このように、繰返し使用により増加する揚油中の重金属類のうち、量的あるいは作用強度的に見て、熱酸化による酸化重合物、過酸化物、酸化分解物の生成など、揚油の劣化促進に最も悪影響を及ぼすものは鉄分であると考えることができる。
したがって、揚油の劣化抑制の実際的管理のためには、油中の鉄分を極力除去することが極めて重要である。
【0021】
食用油の原料油中に含まれる天然由来の微量の重金属類や繰り返し使用により増加した重金属類、特に酸化・分解作用のある鉄分等を除去することによって、人体に有害な過酸化物や、酸化重合物、鉄化合物等からなる着色物質の生成を抑制したり、揚種から発生する水または水蒸気との接触で起こる油の加水分解により生成し、風味に悪影響の大きい遊離脂肪酸を吸着・除去することによって、油を精製もしくは再生することの意義は極めて大きい。また、劣化食用油中に既に含まれている他の有害乃至は不要な成分も同時に吸着・除去できれば更に意義深いことである。
【0022】
従って、食品営業上、繰返し使用により増加した揚油中の鉄分を、吸着剤の使用等により途中で除去乃至は低減することは、解決すべき極めて重要な課題である。
【0023】
ところが、吸着剤の一つとして、その成分上も極めて安全と思われる前記ケイ酸マグネシウムの群は、このような用途にも国内では使用できないのが現状である。
また、食用油の精製や再生を考えた場合、上記非特許文献1に記載されている合成鉱物は、結晶質であるが故に比表面積が小さく、本質的に吸着能が小さいため、このような用途には性能面からも不適当である。特許文献2に記載の合成層状フィロケイ酸マグネシウムも、天然の層状粘土鉱物の酸処理物をケイ酸原料としているが故に、不純物として鉄分を多く含み、肝腎の鉄分吸着能の点でも不満足であり、従って、食用油の精製や食用油の再生などの用途には、特性の点でいずれも不満足である。
【0024】
従って、本発明の主な目的は、日本国内で食品添加物として認定されているものからなり、鉄分の吸着・除去能に優れ、特に食用油の精製や繰返し使用された食用油の再生などの用途に使用される食品精製用製剤として有用な鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤及びその製造方法を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、シリカ成分とマグネシア成分とを、下記式:
R=Sw/Mw
式中、Swは、SiO換算でのシリカ成分の含有量であり、
Mwは、MgO換算でのマグネシア成分の含有量である、
で表される重量比(R)が1.3≦R≦3.0の範囲となる割合で含有し、且つシリカ成分とマグネシア成分との少なくとも一部が、マグネシア成分層をシリカ成分層がサンドイッチした三層構造を形成しており、20μg(Fe)/g以上の鉄分吸着能を有していることを特徴とする鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤が提供される。
本発明によれば、また、(A)二酸化ケイ素と(B)酸化マグネシウムもしくはその水和物とを、下記式:
R=Sw/Mw
式中、Swは、SiO換算での二酸化ケイ素の量であり、
Mwは、MgO換算での酸化マグネシウムもしくはその水和物の量である、
で表される重量比(R)が1.3≦R≦3.0の範囲となるように、水の存在下で、少なくとも1時間以上かけて100℃以下の温度で混合し熟成する工程と、熟成後、水分を除去する工程とからなることを特徴とする鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤の製造方法が提供される。
【0026】
本発明の鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤においては、
1.前記重量比(R)が1.9<R<2.1であること、
2.粉末法X線回折像において、回折角2θ(Cu−Kα線)が20±1度、35±1度及び61±1度に前記三層構造に基づくピークを示すこと、
2.比表面積が480m/g以上であること、
3.食用油(特に劣化食用油)の再生処理に使用すること、
が好ましい。
【0027】
【発明の実施形態】
本発明の鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤は、実質上、食品製造用の吸着剤やろ過助剤として認可されているシリカ成分とマグネシア成分とから形成されており、原料であるシリカ(二酸化ケイ素)粒子とマグネシア(酸化マグネシウム)粒子とが、水中で、溶解はしないがナノオーダーの単位粒子(ナノ粒子)として分散し、均一混合されており、それぞれのナノ粒子同士が原子の交換や組み換えを伴うような化学結合(原子間結合)を生成することなく合体して緊密に複合化した製剤である。従って、食用油の精製や繰返し使用により劣化した食用油の再生など、広く食品精製の用途に有効に使用し得るものである。
【0028】
[シリカ・マグネシア系製剤におけるナノ複合化と構造]
本発明においては、シリカ(A)とマグネシアもしくはその水和物(B)とを、水分の存在下で均質に混合して水性スラリーとなし、次いで熟成を行い、さらに、水分を除去することにより、目的とするシリカ・マグネシア系製剤を得ることができる。
【0029】
すなわち、水分の存在下、例えば水中での均質混合により、原料の一つであるシリカ(二酸化ケイ素)がコロイド粒子乃至微細凝集粒子(1次乃至2次粒子)まで解れる。他方のマグネシア(酸化マグネシウム)は、水中に投入されて撹拌もしくは粉砕されると、溶解は殆ど起こらないが、水和により、その結晶(もしくは新たに生成した水和物の結晶)の一部分或いは全部が崩壊もしくは剥離して、マグネシウム水和物(水酸化マグネシウム)からなる単層もしくは2層以上が積層した微細な薄板層状粒子となって水中に分散される。
【0030】
これらの微細粒子が均質に分散したスラリーから水分が除去され、固形分濃度が上昇していくと、シリカの粒子(A)とマグネシア水和物の層状の粒子(B)とが徐々に或いは急激に接近し、それらは互いに反対極性の電荷を帯びていることから、層状の粒子Bの表面に粒子Aが層状且つ面状に配向し、次いで行われる水の除去(脱水)により微粒子同士が緊密に接合し、結果として、マグネシア層状粒子表面部分にシリカ粒子が配向・接合した微小な層構造が形成されるのである。
【0031】
微小層構造の形成に至るナノ複合化の度合いは、製剤中のシリカ成分とマグネシア成分の重量比(R)によって異なる。例えば、R=2付近のところでは、多くの複合粒子で、シリカ成分層がマグネシア成分層をサンドイッチした微小な三層構造が形成されていると考えられる。
【0032】
図1の模式図に示すように、上記重量比が2未満(R<2)で、比較的マグネシアリッチのところ(i)では、上記三層構造を形成するに至っている接合部分(図1の○で囲んだ部分)は少なく、マグネシア成分層の片面だけにシリカ粒子が配向吸着乃至は接合したもの、両面ともシリカが僅かしか吸着されていないもの、あるいは、完全には単層にまで剥離していず、部分的に複数層に積層(図1の□で囲んだ部分)したマグネシア水和物の層状粒子となっているもの等、幾つかの形態の複合粒子が混在している状態と言える。
【0033】
重量比が2付近(R≒2)では、前述したように、シリカ成分層がマグネシア成分層をサンドイッチした三層構造の形成にちょうどよい重量比となっており、模式的には図1の(ii)に示すような微小三層構造を多く有する複合構造になっていると考えられる。
【0034】
さらに、重量比が2を越えて(2<R)、比較的シリカリッチのところ(iii)では、上記三層構造を形成してあまりある多くのシリカの微粒子が、全体にわたる非晶質なマトリックス相を形成しており、その中に、部分的に細分化された極微小の三層構造粒子が、恰も非晶質なマトリックス相全体に吸収されるように希薄に分散している状態と考えられる。
【0035】
これら三様の製剤のナノ複合状態に対する上記の推論は、それらの製剤の粉末法X線回折像によっても裏づけられる(図2参照)。
すなわち、R<2の領域で、シリカがより少ないところでは、マグネシアの水和により生成し、複数層以上に積層している水酸化マグネシウムの微細層状結晶の面指数(001)、(101)及び(110)に基づく3強線が、それぞれ回折角2θ(Cu−Kα線)で18.5度、38度及び51度付近に現れ、前述の微小三層構造に基づくピークについては、シリカが少ないところでは35度付近に低強度で丘状のラインが僅かに現れるだけであるが、シリカの混合量が増えるにしたがって、2θで20度、35度及び61度付近の3箇所に、それぞれ低強度で幅広のピークが現れた。また、当然のこととして、シリカの混合量の増加につれて、18.5度、38度及び51度付近のピーク(水酸化マグネシウムの結晶に基因)は弱くなり、Rが1.5以上ぐらいになると消失した。
【0036】
シリカの混合量が増えて、R=2付近のところでは、前述の微小三層構造を形成しているナノ複合粒子が大部分となり、2θで20度、35度及び61度付近の3箇所に低強度で幅広のピーク(該三層構造に基因)が認められ、水酸化マグネシウム等の結晶に基づくピークは認められない(例えば、図2の実施例5)。
【0037】
シリカの混合量がさらに増えて、2<Rの領域では、前述の微小三層構造を形成しているナノ複合粒子とその構造形成に与らない余剰のシリカからなる非晶質なマトリックス相からなり、Rが7.5以下ぐらいのところまでは、2θで20度、35度及び61度付近の3箇所に低強度で幅広のピーク(該三層構造に基因)が認められるが、Rが10以上ぐらいのところでは、それらのピークはほとんど認められず、2θが22度付近に低強度で幅広のアモルファスライン(シリカマトリックス相の非晶質構造に基因)のみが認められた。
【0038】
本発明において、シリカ成分とマグネシア成分とを、下記式:
R=Sw/Mw
式中、Swは、SiO換算でのシリカ成分の含有量であり、
Mwは、MgO換算でのマグネシア成分の含有量である、
で表される重量比(R)が、1.3≦R≦3.0、特に1.9<R<2.1の範囲となる割合で含有していることが極めて重要である。即ち、後述する実施例及び比較例の結果から明らかな通り、マグネシア成分或いはシリカ成分が必要以上に多いと、鉄分に対する吸着能が低下してしまい、特に繰り返し使用後の食用油からの鉄分の除去を目的とする用途には不適当となってしまう。
【0039】
前述したように食品油脂中の重金属成分、特に鉄と銅は微量でも品質劣化の原因になると言われている。食用油の精製もしくは再生のためには、油中の鉄分等を除去することによって、繰返し使用時の有害な酸化物の生成や加熱着色を抑制することが重要である。本発明の製剤では、シリカ成分とマグネシア成分とを上記量比で含有することにより、鉄等の重金属成分、特に有機成分と結びついた鉄分等に対して優れた吸着性を示す。
【0040】
また、シリカ成分とマグネシア成分との少なくとも一部が、マグネシア成分層をシリカ成分層がサンドイッチした微小三層構造を形成していることが重要である。即ち、このような三層構造が部分的であれ大量に形成されていることから、本発明の製剤は、鉄以外の重金属成分のみならず脂肪酸成分に対しても優れた吸着特性を示すものと思われる。
【0041】
これらの吸着のメカニズムは定かでないが、マグネシア成分層にシリカが層状に配向した三層構造の、例えば末端部分には、マグネシア成分層と緊密に接合せずにルーズな配向面を余し持っているようなシリカ成分層の部分(図1の点線の四角で囲んだ部分)があって、あたかもその空位の部分(図1の点線の丸の部分)に重金属成分の金属部分を挟み込むように吸着したり、層構造の端面やシリカ成分が接合していないマグネシア成分層の露出部分面に遊離脂肪酸を直接化学吸着したりすることが考えられる。
【0042】
また、三層構造を形成する過程で、結晶性で低比表面積のマグネシア成分が層状に剥離し、結果として生成した微小三層構造粒子もそれら同士の積層はなく、ランダムに分散した状態なため、化学的にマイルドなシリカ成分層からなる広大な粒子表面に、重金属成分や遊離脂肪酸あるいは他の物質が物理的に吸着される要素も大きいと考えられる。
【0043】
一方、単なるシリカとマグネシアとの乾式混合物またはマグネシア単一物の添加では、後述の試験法での鉄分吸着能はやや大きいものもあるが、油脂からの遊離脂肪酸であるステアリン酸やオレイン酸などとマグネシア成分との造塩反応が生じ、金属石鹸である脂肪酸マグネシウム塩が生成してしまい、この結果、安定した脂肪酸吸着能を示さなくなってしまうばかりか、生成した脂肪酸マグネシウム塩が油に溶解・移行して著しく風味を損なう可能性もある。
しかるに本発明では、マグネシアの少なくとも一部にシリカが層状に配向した界面を形成することにより、上記の造塩反応を抑制し、優れた脂肪酸吸着能を安定して確保することが可能となる。
【0044】
また、例えばマグネシア単一物などにおいて、見掛けの鉄分吸着能(計算値)がやや大きく出るのは、本試験法で用いる標準鉄化合物の錯体構造が、強いアルカリ性による分解などにより変化して不溶性となり、油に残存(溶存)しなくなるためではないかと考えられる。
但し、畜肉、鯨肉、血合いを含む魚肉などの血液成分由来のヘム鉄に起因する鉄分を多く含むような、実際の、繰返し使用後の劣化油の場合などでは、鉄成分がより安定な構造のためか、上記のような遊離のマグネシウム成分の作用によっても処理油の残存鉄分はそれほど低減されない。
【0045】
[鉄分吸着試験]
本発明の製剤の特徴的性能である重金属吸着能を代表的に示し、実用的にも最も重要な対象成分である鉄分の除去能は、鉄分吸着能によって評価される。油中の鉄分を吸着し、除去する能力をはかるとき、その試験は、他の一般の試験と同様に、より単純化された一定の条件下で行われるべきである。実際の揚油の系では、その油脂成分は一定でなく油脂であるグリセライド(エステル)中の脂肪酸組成も千差万別である。また、その中に含まれる有機成分と結びついた鉄分の化合形態も常に一定のものではなく、特定も困難である。
実際に、揚種として畜肉や魚肉類が多く使われ、血液成分由来のヘム鉄に起因する鉄分が多く含まれるような系では、特に効果的な鉄分吸着が起こり、逆にそれらがあまり含まれず、揚鍋の材質から溶離してくる鉄分が主で、しかも含有鉄分が微量の系では、あまり効果的な吸着は起こらない傾向も見られる。
【0046】
本発明では、試験試料の鉄分除去能について、次のように単純化した系で吸着試験を行い、吸着前後の油中の鉄分量を、原子吸光光度法を用いて求めることにより一定の評価を試みた。
すなわち、液体の油脂の代わりに、同様の油状液体であるオレイン酸エチル(エステル)を用い、それに、有機鉄成分として原子吸光標準品にも使われる4−シクロヘキシル酪酸鉄(III)を溶かして、常温でほぼ飽和濃度の有機鉄溶液(1.00±0.15μg(Fe)/g)を調製し、これを、微量金属成分を含んだ揚油のモデル油とする。
本発明者らは、このモデル油を用いて、後に実施例で詳述するように、試料の有する重金属除去能を鉄分吸着能として評価できるに至ったのである。
【0047】
本発明のシリカ・マグネシア系製剤は、粉末法X線回折により、図2に示すようなX線回折像を示し、前記のような微小三層構造の形成は、かかるX線回折像において、回折角2θ(Cu−Kα線)が20度、35度及び61度の付近にそれぞれ低強度で幅広のピークを示すことから確認することができる。また、各ピークが幅広でブロードであることから、ケイ酸マグネシウムの結晶が生成しておらず、本発明の製剤は、実質上、半晶質もしくは非晶質であることが判る。
【0048】
[好ましい特性]
このように、本発明のシリカ・マグネシア系製剤は、シリカ成分とマグネシア成分とを一定の量比で含有し、且つシリカ成分層がマグネシア成分層をサンドイッチした微小三層構造を含有していることから、20μg(Fe)/g以上、好ましくは25μg(Fe)/g以上、特に好ましくは28μg(Fe)/g以上の鉄分吸着能を示し、食用油に含有している鉄分を有効に吸着除去することができ、食用油の精製や繰り返し使用された食用油の再生などの用途に極めて有効に適用される。
【0049】
本発明のシリカ・マグネシア系製剤は、そのシリカ成分とマグネシア成分が互いに遊離していず、緊密に複合しているために、その懸濁液のpHが8.6乃至10.0、特に8.7乃至9.0の範囲にあることが特徴である。
【0050】
本発明のシリカ・マグネシア系製剤は、鉄分やその他の不純物(例えば遊離脂肪酸や着色成分)を安定に吸着除去し得るという点で、比表面積が480m/g以上、更に550m/g以上、特に650m/g以上であることが好適である。
【0051】
[好ましい剤形]
本製剤は、5μm未満の粒子含有率が20体積%以下、更に12体積%以下、特に10体積%以下の粒度分布を有している粉末であることが好ましい。即ち、5μm未満の粒子含有率が上記範囲である粉末を用いることにより、安定して均一な精製処理(吸着処理)を行うことができ、処理後の液(食用油等)のろ過性を高め、製剤を容易に分離することが可能となる。
【0052】
また、上記のような粒度分布を有する粉末として使用する代わりに、直径もしくは長径が5μm乃至5mmである球状もしくは楕円球状、或いは径が0.5mm以上で且つ軸長が50mm以下の円柱形状粒子として使用することもできる。即ち、このような大きさで所定形状の粒状物として使用することによっても、ろ過性等を高めることができる。
かくして得られるろ過性の良好なシリカ・マグネシア系製剤は、例えば使用途中における揚油に0.5〜3.0%の濃度で添加して吸着・ろ過するバッチ処理のみならず、揚油の循環乃至は流通ろ過による断続若しくは連続処理への利用が可能である。
【0053】
[シリカ・マグネシア系製剤の製法]
上述した本発明の食品精製用製剤を製造するためには、原料として、(A)二酸化ケイ素(シリカ)と(B)酸化マグネシウム(マグネシア)もしくはその水和物とを使用する。
これらは、何れも食品製造用のろ過助剤もしくは吸着剤として認可されており、従って、これらの使用により食品精製としての用途が制限されることはない。
【0054】
また、シリカ(A)及びマグネシアもしくはその水和物(B)としては、後述するナノ粒子化が容易となるものを選択するのがよい。
例えば、シリカとしては非晶質の含水タイプのものが好適であり、ゲル法或いは沈降法の何れで製造されたものであってもよいが、一次粒子の小さいものが好適であり、比表面積が150m/g以上、特に300m/g以上であるものが好適である。
またマグネシア或いはその水和物としては、結晶子の小さいものが好ましく、且つ経時による炭酸化が進んでいないものがよい。比表面積が50m/g以上、特に100m/g以上である粉末が好適に使用される。
【0055】
上記のシリカ(A)とマグネシアもしくはその水和物(B)は、既に述べた通り、重量比R(Sw/Mw)が1.3≦R≦3.0、特に1.9<R<2.1の範囲となる割合で使用する。即ち、このような量割合で使用することにより、種々の特性がバランスよく発現し、種々の成分、特に鉄分等に対する優れた吸着特性を確保することができる。
【0056】
本発明においては、上記のシリカ(A)とマグネシアもしくはその水和物(B)とを、水分の存在下で均質に混合して水性スラリーを調製し、次いで熟成を行い、さらに、水分を除去することにより、目的とする鉄分除去用シリカ・マグネシア系食品精製用製剤を得ることができる。
【0057】
水性スラリーの調製において、各原料(A)、(B)や水の投入順序等に制限はないが、凝集やゲル化現象(増粘)が起こると、前述した微細粒子化(ナノ粒子化)や微小三層構造化等の進行が妨げられるおそれがある。このために、水性スラリーの固形分濃度は低い方が好ましいが、生産性や経済性の見地からは固形分濃度は高い方がよい。従って、固形分濃度は3乃至15重量%、特に8乃至13重量%の範囲にあるのが好適である。
【0058】
また、ゲル化は加熱によっても生じやすくなるが、上記のような均質混合及び熟成は、100℃以下の温度、特に50乃至97℃の温度で行うのが好ましい。
【0059】
原料(A)及び(B)の均一混合による水性スラリーの調製及び熟成は、攪拌翼を備えた攪拌槽中で攪拌下に行うのが一般的であるが、湿式ボールミルやコロイドミルによる粉砕もしくは分散下で行うこともできる。
熟成は、前述したナノ粒子化(微細粒子化)及びシリカ粒子の層状配向化を十分に行うための工程であり、水性スラリーの調製のための均質混合及び熟成は、温度やスラリーの仕込み容量等によっても異なるが、少なくとも0.5時間は必要である。また、温度が高いほど短時間で行うことができる。一般には、1乃至24時間、特に3乃至10時間程度かけて混合及び熟成が行われる。
【0060】
熟成後の水分除去は、スプレー乾燥機やスラリー乾燥機等を用いての蒸発乾燥により行われるが、ろ過や遠心分離等の手段によりある程度の脱水を行った後に、箱形乾燥機、バンド乾燥機、流動層乾燥機等を用いて乾燥を行ってもよい。
【0061】
上記のようにして、例えば水分含有率が10重量%以下であり、脱水により原料粒子である二酸化ケイ素(シリカ)粒子とマグネシア粒子とが緊密に複合化し、少なくとも一部のシリカ粒子層がマグネシア層状粒子に並行に接合した微小層構造を有するシリカ・マグネシア系製剤が、顆粒状、粉状、ケーキ状或いは団塊状で得られる。
これらは、必要により、粉砕・分級、或いは成形を行い、所望の粒子形状として、例えば食品精製の用途に供される。
【0062】
上記の粉砕は、それ自体公知の乾式粉砕法により行うことができ、例えばアトマイザーの如き衝撃式粉砕機や、乾式ボールミル、ローラーミル、ジェットミルなどを用いて行なうことができる。
また、分級は、通常の乾式分級機を用い、重力分級、遠心分級、慣性分級等によって行われる。
このような粉砕及び分級によって、例えば5μm未満の微細粒子含有率が20体積%以下の粉末の形で、本発明の食品精製用シリカ・マグネシア系製剤が得られる。
【0063】
また、成形は、転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、解砕造粒、圧縮造粒、押出造粒等、任意の方法で行うことができるが、一般的には、粒があまり硬くならず、且つ容易に粉化しない程度の強度を有するように成形されるのがよい。このような成形により、例えば、直径もしくは長径が5μm乃至5mmである球状もしくは楕円球状、或いは径が0.5mm以上で、且つ軸長が50mm以下の円柱形状粒子の形で、本発明の食品精製用シリカ・マグネシア系製剤が得られる。
【0064】
このようにして得られる本発明のシリカ・マグネシア系製剤は、既に述べた通り、食品添加物として認可されているシリカ及びマグネシア成分からなり、食品精製の用途に有効に適用できるばかりか、種々の不要成分に対する吸着性に優れており、特に、シリカ成分層がマグネシア成分層をサンドイッチした微小三層構造を有していることから、鉄分吸着能が著しく高い。
繰返し使用により劣化し、鉄分を多く含む揚油の再生をはじめ、同様に鉄分を多く含む魚貝類エキスや畜肉エキス等の濃縮調味液の原料・煮汁から鉄分を除去し、加熱濃縮時の褐変反応(メイラード反応)を抑制し、風味や栄養価の低下を防止する目的や、清酒の着色成分である鉄化合物(フェリクリシン)を除去して脱色する目的にも、有効に使用される。
また、前述したように、食品以外の広く有用な液状物等から不純物としての重金属成分、特に鉄分の吸着・除去による精製、ひいては水の浄化・精製等にも有効に使用することができる。
【0065】
また、脂肪酸吸着能の高いシリカ・マグネシア製剤(0.1≦R≦1.9)やメチレンブルー吸着能と揮発性塩基吸着能の高いシリカ・マグネシア製剤(2.1≦R≦50)を適宜組み合わせて併用したり、一般に吸着剤やろ過助剤として食品精製用に使用されている前記の活性白土や活性炭などと併用することによって、劣化食用油の各種不純物を広範に低減し、より高度な再生処理を行うこともできる
また、必要に応じて、セピオライト、アタパルジャイト、ドーソナイト及びこれらの焼成物を本発明のシリカ・マグネシア系製剤に加えることにより、粒子強度を向上させることもできる。
さらには、本発明のシリカ・マグネシア系製剤を、酸化防止剤、例えばハーブ抽出油、L−アスロルビン酸ステアレート、トコフェノール、ポリフェノール、エピグロカテキンガレート、クエン酸イソプロピル、BHT、BHA、セザモール、セザモリン、γ−オリザノール、没食子酸プロピルなどと併用することもできる。
このような他の精製剤との組み合わせによれば、劣化食用油以外の多くの液状食品を高度に精製処理することが可能となる。
以下に、本発明の実施例について述べる。
【0066】
[試験方法]
本明細書における各特性項目の試験方法は以下によった。
1.鉄分吸着能
本実施例における鉄分吸着能は、鉄換算で1.00±0.15μg(Fe)/g濃度の有機鉄(4−シクロヘキシル酪酸鉄(III))溶液(オレイン酸エチル溶液)100 gから、1 gの試料が吸着できる鉄分のμg数で定義され、日本油化学会制定の基準油脂分析試験法[2.6.3.9鉄(グラファイトファーネス原子吸光光度法)]を参考にした下記の方法により測定し、算出した。
先ず、鉄分として4-シクロヘキシル酪酸鉄(III)(試薬、原子吸光標準品、和光純薬工業(株)製)をオレイン酸エチル(試薬1級、同(株)製)に溶かし、常温(15〜25℃)でほぼ飽和濃度の有機鉄溶液(0.89μg(Fe)/g)を得る。
本有機鉄溶液1.00gを10mL全量フラスコに正しく量り取り、硝酸150μLを加え、さらに4-メチル-2-ペンタノンを加えて全量を10mLにする。これを測定溶液として、上記[2.6.3.9鉄(グラファイトファーネス原子吸光光度法)]の方法により溶液中の鉄分濃度を求め、A(μg(Fe)/g)とする。
次に、本有機鉄溶液50gを共栓付三角フラスコに正しく量り取り、試験粉末である乾燥試料(110℃×2hr.)0.50gを加えて、常温で2時間振とうする。ろ紙(No.2)によってろ過分離した清澄な被試験液1.00gを前段と全く同様に操作して、被試験液中の鉄分濃度を求め、B(μg(Fe)/g)とする。
このとき、試料の鉄分吸着能を下記式により求めた。
鉄分吸着能=(A−B)×100
【0067】
2.鉄分低減率
実際の繰返し使用により上昇した揚油の鉄分濃度(C)の、その揚油100部に対して1部の割合で試料を加えて脱鉄処理したときの鉄分濃度(D)への低減率を下記式により求めた。
鉄分低減率=(C−D)×100/C
但し、本実施例においては、M社員食堂で繰返し使用された揚油(鉄分濃度C=1.15μg(Fe)/g)が被試験油として用いられた。
また、脱鉄処理は、上記揚油30gを試験管に秤量し、試験粉末である乾燥試料(110℃×2hr.)0.30gを加えて油浴中で加熱撹拌(110℃×250rpm×20min.)して行い、鉄分濃度の測定は日本油化学会制定の基準油脂分析試験法[2.6.3.9鉄(グラファイトファーネス原子吸光光度法)]に準じて行った。
【0068】
3.比表面積
本実施例においては、各粉体の比表面積を窒素ガスの吸着による所謂BET法によって測定した。BET理論について、詳しくは次の文献を参照のこと。
S. Brunauer, P.H.Emmett, E.Teller, J. Am.Chem. Soc., Vol.60, 309(1938)
なお、本明細書における比表面積の測定は、通常、試料0.10〜0.15g前後を全自動表面積測定装置(ユアサアイオニクス(株)製マルチソーブ12)に装着の吸着試料管に入れ、110℃の恒温乾燥器中で2時間乾燥し、直ちに重量を精秤する。150℃(マントルヒーター設定温度:191℃)で所定の脱気処理をしたのち、窒素ガスを導入し、同装置のプログラムにしたがって比表面積を測定した。
【0069】
4.pH
本実施例においては、110℃で2時間乾燥した試料1gをビーカーに秤りとり、新たに煮沸により脱炭酸した蒸留水を加えて全量を50gとする。超音波をあてて1分間分散処理をし、1時間静置後、ガラス棒で軽く撹拌して2%懸濁液となし、ガラス電極式水素イオン濃度計(株)堀場製作所製M−12)により25℃におけるpH値(自動校正)を測定した。
【0070】
5.粉末法X線回折
本実施例においては、理学電機(株)製X線回折装置(RINT2000システム)を用いて、Cu−Kαにて測定した。回折条件は下記のとおりである。
ターゲット: Cu
フィルター: 湾曲結晶グラファイトモノクロメーター
検出器: シンチレーションカウンター
電圧: 40 kV
電流: 20 mA
走査速度: 3°/min
ステップサンプリング: 0.05°
スリット: DS1° RS 0.15mm SS 1°
照角: 6°
【0071】
[実施例1]〜[実施例8]
シリカ原料として市販の二酸化ケイ素(水澤化学工業(株)製ミズカソーブC-1)、マグネシア原料として市販の酸化マグネシウム(神島化学工業(株)製スターマグU)を用い、実施例1〜10において、前記請求項1で定義した重量比(R)が、それぞれ、R=1.3、R=1.5、R=1.7、R=1.9、R=2.0、R=2.1、R=2.3、R=3.0となり、且つ両原料のSiO2換算でのシリカ成分含有量とMgO換算でのマグネシア成分含有量の合量が150gとなるように原料を量りとる。次に、容量2Lのステンレススチール製タンクに、後から加える粉末原料との合量が1,150gとなるように水道水をいれ、撹拌下、予め量りとった粉末原料を少しずつ加えいれる(固形分濃度:13%)。撹拌を続け、加熱により約15分で95℃まで昇温し、以後10時間かけて均質混合及び熟成を行う。スラリーを減圧ろ過により脱水し、得られたケーキを電気乾燥器にいれ、110℃で乾燥する。最後に乾燥ケーキをサンプルミル(ハンマーミル型粉砕機)で粉砕し、それぞれ、白色の微粉末を得た。
実施例1〜8によって得られた粉末試料の前記試験方法によって測定された各種特性を表1に示した。
繰返し使用された揚油の精製処理の一つの応用例であり、鉄分低減を目的にした脱鉄処理は1%添加によるものであったが、本実施例の鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤によれば、50〜54%の鉄分低減率を示した。活性白土などによる原料油脂の精製工程では、2〜3%添加処理が普通であるが、本実施例の製剤においても、例えば2〜3%の添加により揚油を処理した場合は、さらに格段の効果を発揮することが期待できる。
【0072】
[比較例1]
市販の酸化マグネシウム(神島化学工業(株)製スターマグU)である。
[比較例2]〜[比較例5]
実施例1〜8における重量比(R)を、それぞれ、R=0.8、R=1.0、R=4.0、R=5.0に代える以外は同様の操作によりおこなった。
[比較例6]
市販の二酸化ケイ素(水澤化学工業(株)製ミズカソーブC-1)である。
[比較例7]、[比較例8]
比較例1の酸化マグネシウムと比較例6の二酸化ケイ素の各粉末を、重量比(R)が、それぞれ、R=1.7、R=2.3となる割合で、撹拌式小型ミキサーにより乾式混合することによって得た。
[参考例1]
前記特許文献2の実施例1の方法により、山形県櫛引町松根産酸性白土を原料として製した活性ケイ酸と水酸化マグネシウムとをオートクレーブ中で水熱処理して得られた合成層状フィロケイ酸マグネシウムの白色微粉末である。
比較例1〜8及び参考例1による粉末試料の各種特性も表1に示した。
【0073】
【表1】
Figure 0004401111
【0074】
【発明の効果】
本発明の鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤は、食品添加物として認可されているシリカ及びマグネシア成分からなっているため、食品精製の用途にも有効に適用できる。
また、シリカ成分層がマグネシア成分層をサンドイッチした微小三層構造を有していることから、鉄分吸着能が著しく高いという特性を有している。
従って、鉄分を多く含む繰返し使用により劣化した食用油の再生をはじめ、有害もしくは不要乃至は必要以上の鉄分を含有する液状食品等の精製に特に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤におけるナノ複合化と構造について模式的に表した図である。
【図2】実施例5、比較例1、比較例3、比較例5、比較例6及び比較例7による各粉末試料の粉末法X線回折像である。

Claims (6)

  1. シリカ成分とマグネシア成分とを、下記式:
    R=Sw/Mw
    式中、Swは、SiO換算でのシリカ成分の含有量であり、
    Mwは、MgO換算でのマグネシア成分の含有量である、
    で表される重量比(R)が1.3≦R≦3.0の範囲となる割合で含有し、且つシリカ成分とマグネシア成分との少なくとも一部が、マグネシア成分層をシリカ成分層がサンドイッチした三層構造を形成しており、20μg(Fe)/g以上、の鉄分吸着能を有していることを特徴とする鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤。
  2. 前記重量比(R)が1.9<R<2.1である請求項1に記載の鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤。
  3. 粉末法X線回折像において、回折角2θ(Cu−Kα線)が20±1度、35±1度及び61±1度に前記三層構造に基づくピークを示す請求項1または2に記載の鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤。
  4. 比表面積が480m/g以上である請求項1乃至3の何れかに記載の鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤。
  5. 食用油の精製処理に使用する請求項1乃至4の何れかに記載の鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤。
  6. (A)二酸化ケイ素と(B)酸化マグネシウムもしくはその水和物とを、下記式:
    R=Sw/Mw
    式中、Swは、SiO換算での二酸化ケイ素の量であり、
    Mwは、MgO換算での酸化マグネシウムもしくはその水和物の量である、
    で表される重量比(R)が1.3≦R≦3.0の範囲となるように、水の存在下で、少なくとも1時間以上をかけて100℃以下の温度で混合し熟成する工程と、熟成後、水分を除去する工程とからなることを特徴とする鉄分除去用シリカ・マグネシア系製剤の製造方法。
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