JP6664191B2 - 脱色剤及び脱色剤の製造方法 - Google Patents
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即ち、脱色剤には、脱色性ばかりか、オイルリテンション性も要求される。例えば、脱色処理後の脱色剤(廃白土)は廃棄されるが、廃白土は、クロロフィル等の色素成分以外にも、脱色に供された油脂類或いは鉱油類に由来する油分を保持している。この油分が多い(オイルリテンション性が悪い)と、脱色に供される油脂類或いは鉱油類の廃棄量が多くなるため、保持される油分が少ない(即ち、オイルリテンション性に優れている)ことが求められるわけである。
さらに、活性白土を製造するには、酸処理が行われるため、当然のことながら、排液処理が容易であり、低コストで製造できること、即ち、生産性に優れていることも求められる。
しかるに、従来公知の活性白土からなる脱色剤は、脱色性、オイルリテンション性及び生産性の何れかについて、さらなる改善が必要となっている。
しかしながら、これらの脱色剤は、優れた脱色性は示すものの、廃白土に含まれる油分が多いため、オイルリテンション性の改善が課題となっている。
しかしながら、この脱色剤では、高濃度の硫酸を用いて短時間で処理を行わなくてはならず、酸処理程度の制御が難しく、さらに、高濃度の硫酸を用いているために、排液処理の費用が嵩み総合的に高コストになるため、生産性の点での改善が必要である。また、脱色性についても、さらなる向上が求められている。
この脱色剤は、脱色に効果的な大きさの細孔を多く含む一方で、この脱色剤(活性白土)を製造するには、酸処理ばかりかアルカリ処理が必要であるため、排液処理に大きな課題を残している。
本発明の他の目的は、上記脱色剤の製造方法を提供することにある。
(1)酸処理するジオクトヘドラル型スメクタイト粘土鉱物の、相対水蒸気圧(P/P0)が0.8であるときの、水蒸気吸着量が14.0質量%〜18.0質量%であること、
(2)前記スメクタイト粘土鉱物が、酸処理に先立って加熱処理して得られること、
(3)前記加熱処理の温度が200℃以上400℃未満であること、
(4)前記加熱処理において、水蒸気吸着法により求めた、加熱処理後の平均細孔直径(DI)と加熱処理前の平均細孔直径(DII)の細孔直径比(DI/DII)が0.90〜1.15の範囲にあり、及び/または、加熱処理後の比表面積(SI)と加熱処理前の比表面積(SII)との比表面積比(SI/SII)が0.90以下であること、
(5)前記加熱処理に先立って、ジオクタヘドラル型スメクタイト粘土鉱物を平均粒径20〜200μmまで粉砕すること、
が好ましい。
特に本発明の脱色剤は、優れた脱色性を示すことから、脱色が困難といわれているRBDパーム油のようなものについての脱色にも好適に使用される。
本発明において、脱色剤として使用される活性白土は、ジオクタヘドラル型スメクタイト粘土鉱物を、該スメクタイトの基本構造が消失しない程度の酸処理により製造されるものであり、その製造方法によっても若干異なるが、一般に、酸化物換算で、下記の化学組成を有している。
SiO2;60〜85質量%
Al2O2;8〜13質量%
Fe2O3;1〜10質量%
MgO;1〜3質量%
CaO;0.1〜2質量%
Na2O;0.1〜1質量%
K2O;0.1〜1質量%
その他の酸化物(TiO2など);1質量%以下
Ig−loss(1050℃);4〜8質量%
このような細孔分布により、優れた脱色性とオイルリテンション性とが発現しているものである。即ち、クロロフィル等の色素は、油脂類或いは鉱油類中に分子が会合した状態で存在しており、このため、全細孔容積に対して、大きなサイズの細孔が色素の吸着に寄与するが、小さなサイズの細孔は、色素の吸着にはあまり寄与せず、むしろ油脂類や鉱油類の吸着に大きく寄与する。本発明で用いる活性白土は、上記のような細孔分布から理解されるように、色素の吸着に寄与する大きな細孔の容積(50〜3000Åの細孔直径での細孔容積(A))が、油脂類或いは鉱油類の吸着に寄与する小さな細孔の容積(17〜50Åの細孔直径での細孔容積(B))に比してかなり多く含んでおり、この結果として、優れた脱色性とオイルリテンション性とを示す。
このような粒度分布を有する活性白土は、微粒分が除去されているため、極めてろ過性に優れており、使用済みの脱色剤(廃白土)は、ろ過により容易に分離して廃棄或いは回収することができる。また、オイルリテンション性に優れていることから理解されるように、廃白土に含まれる油分も極めて少ない。
上述した本発明の脱色剤として使用される活性白土は、従来の脱色剤に使用される活性白土には見られない特異な細孔分布を示すものであるが、このような細孔分布を示す活性白土は、ジオクタヘドラル型スメクタイト粘土鉱物を原料とし、これを酸処理することにより製造される。
即ち、上記の原料は、何れも天然に産するものであり、多くの夾雑物を含んでおり、例えば、石砂分離、浮力選鉱、磁力選鉱、水簸、風簸等の精製操作に賦した後、酸処理を行われることとなる。
尚、一般的に、ジオクタヘドラル型スメクタイト粘土鉱物の物性値は、夾雑物を除去した後の数値である。
尚、かかる水蒸気吸着量は、水蒸気吸着法から求められる。
即ち、上記の乾燥は、粉砕を容易に行うための処理であり、このときの温度は、例えば、150℃以下、特に100℃程度の温度で乾燥を行うべきである。
また、上記の粉砕は、酸処理前の加熱処理を均一に行うための処理であり、この平均粒径が過度に大きいと、加熱処理が不均一となり、前述した細孔分布を満足する活性白土を得ることが困難となり、さらに脱色性等のバラつきを生じ易くなる。また、平均粒径が小さ過ぎると、加熱処理後に酸処理を行ったとき、処理液がスラリー化し、ろ過性が損なわれ、酸処理物である活性白土の取得(ろ過分離)が困難となるおそれがある。
尚、上記の平均粒径の調整は、篩を用いて容易に行うことができる。
酸水溶液としては、鉱酸類、例えば硫酸、塩酸等、特に硫酸が使用され、その濃度は10〜40質量%が適当である。処理温度は、95℃以下の範囲、処理時間は、処理量によっても異なるが、5〜18時間程度の範囲から、前述した細孔分布が生成するように条件を選択すればよい。
尚、この場合、酸水溶液の循環により、加熱処理物と酸水溶液とを均一に接触せしめて酸処理を行うべきであり、例えば、攪拌機等の機械的撹拌を用い、加熱処理物に剪断力を加えながらの酸処理は避けるべきである。即ち、加熱処理物に機械的剪断力を加えながら酸処理を行うと、粒子崩壊を生じてしまい、前述した細孔分布を得ることが困難となるばかりか、酸処理液がスラリー状になってしまい、ろ過分離も困難となり、生産性が大きく低下してしまうこととなる。
ジオクタヘドラル型スメクタイト粘土鉱物に対する可塑剤の添加量は、該粘土鉱物100質量部(乾燥質量基準)に対して可塑剤が0.1〜20質量部程度とすることが、良好な可塑機能を発揮せしめるために好適である。
例えば、カリミョウバンは、Al原子と共にカリウムを含む硫酸の複塩であり、水に易溶の弱酸性物質であるが、この水溶液に、酸処理した後に得られるろ過物を懸濁分散させることにより、スメクタイトの基本構造の層間にアルミニウム原子が交換性イオンとして導入され、これにより、スメクタイトの構造破壊を有効に抑制しつつ、浸出性Al(交換性Al3+)の量を前述した範囲に調整することができる。
体積基準での平均粒径(μm)は、堀場社製のレーザー回折型粒度分布測定装置LA―960を使用した。溶媒に水を用いた。
1mol/Lの塩化アンモニウム水溶液35gを50ml容の遠沈管に秤取し、活性白土粉末0.5gを加えて振とう機(ヤマト科学(株)製SA300、振とうスピード5)により30分間振とうした。次に遠心分離機((株)クボタ製 5200)により遠心加速度3000rpmで30分処理した液の上澄みを回収した。
残った沈降物に1mol/Lの塩化アンモニウム水溶液35gを加えて振とう機(ヤマト科学(株)製SA300、振とうスピード5)により30分間振とうした後に遠心分離機((株)クボタ製 5200)により遠心加速度3000rpmで30分処理した液の上澄みを回収した。そして、同様の操作を再度行った。
回収した上澄み液を混合し、定容した後に原子吸光法によりAl、Mg、Na、K、Caを定量した。これらの総量を浸出性カチオン量とし、これに対するAl量の割合を浸出性カチオン量に対する浸出性Al量(%)とした。
マイクロメリティクス社製Tristar 3000を用いて測定を行ない、比表面積はBET法により算出し、細孔容積はBJH法により算出した。また、細孔分布を図1及び図2に示した。
日本ベル株式会社製BELSORP MAXを用いて測定を行った。なお、前処理は150℃で2時間行った。
35±5℃に保持された保温器内のステンレス製ロート(内径26.9mm)に天竺製ろ布をセットし、ろ布の上に110℃で2時間乾燥した試料4.0gを入れた。そこへ少量の軽油を入れ、針金等を用いて試料と軽油をダマがなくなるまでしっかりと混ぜた後、そこへさらに200ml程度軽油を注ぎ込んだ。ろ過の間、真空度(差圧)は300mmHgとし、35±5℃に保った保温器内で行った。試料は、予め、110℃で2時間乾燥したものについて測定を行った。油滴がロートから落下する間隔が60秒を上回るまでろ過を継続した。落下間隔が60秒を上回ったら、試料+ろ布の合量を測定し、次式によりオイルリテンションを算出した。
A(%)=(W−Wo)/W
A:オイルリテンション
W:オイルリテンション測定後の試料+ろ布(g)
Wo:オイルリテンション測定前の試料+ろ布(g)
n―ブチルアミン滴定法にてH0≦―3.0の固体酸量を測定した。試料は、予め、150℃で3時間乾燥したものについて測定を行なった。
[参考文献:「触媒」Vol.11,No6,P210―216(1996)]
JIS K 6220に準じて、鉄シリンダー法により測定を行い、次式により水分換算した嵩密度を求めた。
嵩密度(g/cm3)=G(1−(M/100))
G:嵩密度実測値(g/cm3)
M:試料の110℃乾燥水分(%)
脱色剤の脱色性を試験するには、粘土ハンドブック第二版 日本粘土学会編(技報堂出版)p917の図に示す脱色試験機を用いた。
試験管に油を30g採取し、所定量の活性白土粉末を加えて脱色試験用の攪拌棒でよく混ぜた。各試験管を110℃に保たれた前記の脱色試験機にセットし、20分間攪拌を行った後脱色試験機から取り出し、油と吸着剤の混合スラリーをろ過することにより各脱色油を得た。
なお、活性白土粉末の添加量は、脱酸菜種油に対しては1.0質量%、RBDパーム油に対しては2.0質量%、脱酸米油に対しては1.0質量%であった。
各脱色油の白色光線透過率(蒸留水の透過率を100%としたときの相対値)を(株)平間理化研究所製光電光度型で測定し、その数値をもって各吸着剤の脱色能とした。透過率の数値が高いほど用いた活性白土の脱色能が高いことを表している。
新潟県産のジオクタヘドラル型スメクタイト粘土鉱物(相対水蒸気圧(P/P0)が0.8であるときの、水蒸気吸着量が18.4質量%、相対水蒸気圧が0.5であるときの水蒸気吸着量が9.3質量%)を原料として用い、この原料を粗砕、混練し5mm径に造粒した。得られた造粒物の水分は36質量%であった。
この造粒物1500gを処理槽に充填し、そこに35質量%硫酸水溶液2000mlを循環させ酸処理を行なった。その時の処理温度は90℃、処理時間は7時間であった。酸処理終了後、酸処理物に洗浄水を循環して水洗を行なった後110℃で乾燥、粉砕し、標準篩100meshを通過する活性白土粉末を得た。
比較例1と同じジオクタヘドラル型スメクタイト粘土鉱物を原料として用い、この原料を粗砕、混練し5mm径に造粒した。この造粒物を110℃で乾燥し、粉砕し、標準篩100mesh(150μm)を通過する原料粉末を得た。得られた原料粉末の水分は4質量%であった。
この原料粉末を200℃で3時間加熱処理した。加熱処理後の相対水蒸気圧(P/P0)が0.8であるときの水蒸気吸着量が16.5質量%、相対水蒸気圧が0.5であるときの水蒸気吸着量が7.8質量%、加熱処理後の平均細孔直径(DI)と加熱処理前の平均細孔直径(DII)の細孔直径比(DI/DII)は1.03、比表面積(SI)と加熱処理前の比表面積(SII)の比表面積比(SI/SII)は0.87であった。この加熱処理した原料粘土90gを34質量%硫酸水溶液200mlに投入し酸処理を行った。その時の処理温度は90℃、処理時間は5時間であった。酸処理終了後、酸処理物に洗浄水を循環して水洗を行なった後110℃で乾燥、粉砕し、標準篩100meshを通過する活性白土粉末を得た。
実験例1における原料粉末の加熱処理の温度を200℃から300℃に変更して活性白土粉末を得た。なお、相対水蒸気圧(P/P0)が0.8であるときの、水蒸気吸着量が15.6質量%、相対水蒸気圧が0.5であるときの、水蒸気吸着量が6.9質量%、加熱処理後の平均細孔直径(DI)と加熱処理前の平均細孔直径(DII)の細孔直径比(DI/DII)は1.07、加熱処理後の比表面積(SI)と加熱処理前の比表面積(SII)の比表面積比(SI/SII)は0.84であった。
実験例1における原料粉末の加熱処理の温度を200℃から400℃に変更して活性白土粉末を得た。なお、加熱処理後の相対水蒸気圧(P/P0)が0.8であるときの、水蒸気吸着量が13.7質量%、相対水蒸気圧が0.5であるときの、水蒸気吸着量が5.6質量%、加熱処理後の平均細孔直径(DI)と加熱処理前の平均細孔直径(DII)の細孔直径比(DI/DII)は1.29、比表面積(SI)と加熱処理前の比表面積(SII)の比表面積比(SI/SII)は0.66であった。
特許文献3(特開2008−31411号公報)の実験例1に記載の方法で活性白土粉末を得た。
Claims (5)
- ジオクタヘドラル型スメクタイト粘土鉱物の酸処理物である活性白土からなる油脂類もしくは鉱油類の脱色剤であって、
前記活性白土は、窒素吸着法による細孔容積の測定において、17〜3000Åでの細孔直径における細孔容積が0.20〜0.40cm3/gの範囲にあり、且つ、50〜3000Åの細孔直径での細孔容積(A)と17〜50Åの細孔直径での細孔容積(B)との細孔容積比(A/B)が2.2〜5.0の範囲にあることを特徴とする脱色剤。 - 前記油脂類もしくは鉱油類がRBDパーム油である、請求項1に記載の脱色剤。
- 原料であるジオクタヘドラル型スメクタイト粘土鉱物を、水分含量が10質量%以下となるまで乾燥処理し、
次いで、平均粒径20〜200μmまで粉砕処理し、
次いで、加熱処理し、相対水蒸気圧(P/P0)が0.8であるときの水蒸気吸着量を14.0質量%〜18.0質量%に調整し、
次いで、酸処理することを特徴とする脱色剤の製造方法。 - 前記加熱処理の温度が200℃以上400℃未満であることを特徴とする、請求項3に記載の脱色剤の製造方法。
- 前記加熱処理において、水蒸気吸着法により求めた、加熱処理後の平均細孔直径(DI)と加熱処理前の平均細孔直径(DII)の細孔直径比(DI/DII)が0.90〜1.15の範囲にあり、及び/または、加熱処理後の比表面積(SI)と加熱処理前の比表面積(SII)との比表面積比(SI/SII)が0.90以下であることを特徴とする請求項3または4に記載の脱色剤の製造方法。
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