JP5363743B2 - リン酸カルシウム組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本実施例で用いられる親水性スメクタイト(コープケミカル株式会社製「ルーセンタイト SWN」、平均粒径4.1μm)及び親油性スメクタイト(コープケミカル株式会社製「ルーセンタイト SEN」、平均粒径3.3μm)の25℃における水蒸気吸着体積を以下の条件にしたがって測定した。まず、100℃で5時間真空乾燥して各測定サンプルの前処理を行った。次に、高精度蒸気吸着量測定装置(日本ベル株式会社製「BELSORP−aqua3」)を用いて、測定温度25℃、測定湿度0〜100%RH(p/p0(相対圧)=0〜1)の条件にて各測定サンプルの水蒸気吸着体積を測定し、湿度50%RH(p/p0=0.5)における測定サンプル1g辺りの水蒸気吸着体積を標準状態(0℃、1atm)に換算することにより25℃における水蒸気吸着体積を求めた。上記親油性スメクタイトの25℃における水蒸気吸着体積は、20cm3(STP)g−1であり、上記親水性スメクタイトの25℃における水蒸気吸着体積は、225cm3(STP)g−1であった。
p:吸着平衡時の水蒸気圧
p0:25℃における飽和水蒸気圧
STP:標準状態
(1)リン酸カルシウム組成物の調製
本実験に使用するリン酸四カルシウム粒子(A1)は、以下の様にして調製した。市販の無水リン酸一水素カルシウム粒子(Product No. 1430, J.T.Baker Chemical Co.社製)及び炭酸カルシウム粒子(Product No. 1288, J.T.Baker Chemical Co.社製)を等モルとなる様に水中に加え、1時間撹拌した後、ろ過・乾燥することで得られたケーキ状の等モル混合物を焼成器(Model 51333, Lindberg, Watertown, WI)中で1500℃、24時間加熱し、その後デシケータ中で室温まで冷却することでTTCP(リン酸四カルシウム)塊を調製した。次に得られたTTCP塊を乳鉢で荒く砕き、その後篩がけを行うことで微粉ならびにTTCP塊を除き、0.5〜3mmの範囲に粒度を整え、粗リン酸四カルシウム粒子を得た。更に、本実施例で使用するリン酸四カルシウム粒子(A1)(平均粒径21.2μm)は、粗リン酸四カルシウム粒子100g、及び直径が20mmのジルコニアボール300gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え、200rpmの回転速度で2時間30分粉砕を行うことで得た。
上記(1)で得たリン酸カルシウム組成物の硬化時間の測定をISO6876(Dental root canal sealing materials)に準じた方法で測定した。PSS(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム)水溶液(東ソー有機化学株式会社製「PS−100」、分子量約100万Da、固形分20%)を凍結乾燥して得たPSS粉末20g及びNa2HPO4(リン酸水素二ナトリウム)3.2gに対して全量が100gとなるように蒸留水を加えて液剤を調製した。上記で得たリン酸カルシウム組成物1gを精秤し、上記調製した液剤から0.25g((A1)及び(A2)の合計100重量部に対し、それぞれPSSを5重量部、Na2HPO4を0.8重量部それぞれ含有)を加えて混練することでリン酸カルシウム組成物ペーストを調製した(このときの混合重量比(粉/液)は4である)。このリン酸カルシウム組成物ペーストを、37℃、相対湿度98%に調整したキャビネット中において、ガラス板上に載せた内径10mm、高さ2mmの空洞を有するステンレス鋼製リング型に充填し、ペースト上部をスパチュラーを用いて平滑とした。次に、混練終了から180秒後より10秒毎に、重量が100gで直径が2mmの平らな末端部を有するインジケータを上記リン酸カルシウム組成物ペーストの垂直面へ垂直に静かに下げ、針先の痕が見えなくなるまでこの操作を繰り返し、混練より針先痕が見えなくなるまでの時間を測定した(n=5)。実施例1により得たリン酸カルシウム組成物の硬化時間は5分57秒±11秒であった。
上記で得たリン酸カルシウム組成物1gを精秤し、これに上記(2)と同様に調製した液剤を加えて混練することでリン酸カルシウム組成物ペーストを調製し(このときの混合重量比(粉/液)は4である)、辺縁漏洩距離の測定に用いた。辺縁漏洩距離の測定はISO/TS11405(第2版、歯科材料−歯質への接着試験)の微小漏洩試験方法に準じて実施した。抜去した単根管の牛歯の歯根ならびに歯髄を除去した後、歯根部分を歯科用コンポジットレジン(クラレメディカル製「AP−X」)で塞いだ。次に、頬側面の中央を#80次いで#2000の研磨紙で研磨しエナメル質の平坦な面を作製した。このエナメル質の面に対して歯科用高速ハンドピースを用いて直径約3mm、深さ約2.5mmの窩洞を作製し、この窩洞中に上記ペーストを充填し、37℃、相対湿度98%の条件で4時間保存することで硬化させた。次に、この試料を37℃の蒸留水中で24時間保存した後にpH7.2に調整した0.2%塩基性フクシン溶液中に浸漬し25℃で24時間保存した。次に、Water−Cooled Diamond Blade(Buehler Ltd製「Isomet」)を用いて窩洞の中央部を切断し、断面をマイクロスコープ(キーエンス製)を用いて拡大像を観察し、歯質と材料の界面において最も深く色素が浸入した距離を辺縁漏洩距離とした(n=5)。実施例1により得たリン酸カルシウム組成物の辺縁漏洩距離は0.31±0.09mmであった。得られた結果を表1にまとめて示す。
実施例1において、PSS粉末、及びNa2HPO4の混合溶液を液剤として用いる代わりに、Na2HPO4(リン酸水素二ナトリウム)3.2gを蒸留水100gに溶解した溶液から0.25g((A1)及び(A2)の合計100重量部に対し、0.8重量部を含有)を分取し、液剤として用いた以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
実施例1において、PSS粉末、及びNa2HPO4の混合溶液を液剤として用いる代わりに、水0.25gを液剤として用いた以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
実施例1において、親水性スメクタイトの含有量を、それぞれ25重量部(実施例4)、及び0.75重量部(実施例5)とし、PSS粉末、及びNa2HPO4の混合溶液を液剤として用いる代わりに、水0.25gを液剤として用いた以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
実施例1において、リン酸四カルシウム粒子(A1)145.8g及び無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)54.2gを混合してリン酸カルシウム粉体組成物を調製し、これに(A1)と(A2)の合計100重量部に対して0.75重量部となるように親水性スメクタイトが分散した水分散液0.25gを加えて混練した以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
実施例1において、親水性スメクタイトの代わりに親油性スメクタイト(コープケミカル株式会社製「ルーセンタイト SEN」、平均粒径3.3μm)を用いてリン酸カルシウム粉体組成物を調製し、PSS粉末、及びNa2HPO4の混合溶液を液剤として用いる代わりに、Na2HPO4(リン酸水素二ナトリウム)3.2gを蒸留水100gに溶解した溶液から0.25g((A1)及び(A2)の合計100重量部に対し、0.8重量部を含有)を分取し、液剤として用いた以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
実施例3において、リン酸四カルシウム粒子(A1)と無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)のモル比(A1/A2)を0.7とした以外は、実施例3と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
実施例1において、親水性スメクタイトを添加せずにリン酸カルシウム粉体組成物を調製し、PSS粉末、及びNa2HPO4の混合溶液を液剤として用いる代わりに、Na2HPO4(リン酸水素二ナトリウム)3.2gを蒸留水100gに溶解した溶液から0.25g((A1)及び(A2)の合計100重量部に対し、0.8重量部を含有)を分取し、液剤として用いた以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
実施例1において、親水性スメクタイトを添加せずにリン酸カルシウム粉体組成物を調製し、PSS粉末、及びNa2HPO4の混合溶液を液剤として用いる代わりに、水0.25gを液剤として用いた以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
実施例1において、リン酸四カルシウム粒子(A1)145.8g及び無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)54.2gを混合してリン酸カルシウム粉体組成物を調製し、これに(A1)と(A2)の合計100重量部に対して0.25重量部となるように親水性スメクタイトが分散した水分散液0.25gを加えて混練した以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
実施例3において、親水性スメクタイトの含有量を、それぞれ0.25重量部(比較例4)及び35重量部(比較例5)とした以外は、実施例3と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
Claims (15)
- リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物であって、リン酸カルシウム粒子(A)がリン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)からなり、リン酸四カルシウム粒子(A1)と酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の配合割合(A1/A2)がモル比で40/60〜60/40であり、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含むことを特徴とするリン酸カルシウム組成物。
- 層状ケイ酸塩粒子(E)がスメクタイト族に属する層状ケイ酸塩粒子である請求項1記載のリン酸カルシウム組成物。
- 層状ケイ酸塩粒子(E)の平均粒径が0.1〜10μmである請求項1又は2記載のリン酸カルシウム組成物。
- 層状ケイ酸塩粒子(E)の25℃における水蒸気吸着体積が100cm3(STP)g−1以上である請求項1〜3のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物。
- 更にスルホン酸塩(B)及び/又はリン酸のアルカリ金属塩(C)を含む請求項1〜4のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物。
- リン酸のアルカリ金属塩(C)がリン酸一水素二ナトリウム及び/又はリン酸二水素一ナトリウムである請求項5記載のリン酸カルシウム組成物。
- 粉体である請求項1〜6のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物。
- リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含む粉体と水を主成分とする液体とからなる医療用キットであって、リン酸カルシウム粒子(A)がリン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)からなり、リン酸四カルシウム粒子(A1)と酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の配合割合(A1/A2)がモル比で40/60〜60/40であり、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含むことを特徴とする医療用キット。
- リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体と層状ケイ酸塩粒子(E)を含む水分散液とからなる医療用キットであって、リン酸カルシウム粒子(A)がリン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)からなり、リン酸四カルシウム粒子(A1)と酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の配合割合(A1/A2)がモル比で40/60〜60/40であり、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含むことを特徴とする医療用キット。
- リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物粉体の製造方法であって、
リン酸カルシウム粒子(A)がリン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)からなり、リン酸四カルシウム粒子(A1)と酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の配合割合(A1/A2)がモル比で40/60〜60/40であり、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含み、かつリン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を粉体の状態で混合することを特徴とするリン酸カルシウム組成物粉体の製造方法。 - リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物ペーストの製造方法であって、
リン酸カルシウム粒子(A)がリン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)からなり、リン酸四カルシウム粒子(A1)と酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の配合割合(A1/A2)がモル比で40/60〜60/40であり、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含むリン酸カルシウム組成物の粉体に、水を主成分とする液体を加えて混練することを特徴とするリン酸カルシウム組成物ペーストの製造方法。 - リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物ペーストの製造方法であって、
リン酸カルシウム粒子(A)がリン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)からなり、リン酸四カルシウム粒子(A1)と酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の配合割合(A1/A2)がモル比で40/60〜60/40であり、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含む水分散液を、リン酸カルシウム粒子(A)からなる粉体に加えて混練することを特徴とするリン酸カルシウム組成物ペーストの製造方法。 - 請求項1〜7のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物からなる医療用組成物。
- 請求項1〜7のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物からなる骨セメント。
- 請求項1〜7のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物からなる歯科用充填材。
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