JP6083742B2 - 象牙細管封鎖材キット - Google Patents

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Description

本発明は、象牙細管封鎖性が良好で、かつ、封鎖物の強度が高く、酸に対する溶解性が低い象牙細管封鎖材キットに関する。
象牙質の露出に伴う疼痛の抑制は、臨床上の課題である。象牙質の露出理由としては、歯肉の退縮や楔状欠損、支台歯形成や窩洞形成が挙げられる。疼痛の発生機序は十分に解明されていないが、外部からの刺激が象牙細管内液の移動を引き起こして歯髄神経を刺激するという動水力学説が知られている。痛みを抑えるためには、象牙細管を封鎖して象牙細管内液の移動を抑制することが有効とされる。
象牙細管封鎖方法としては、リン酸四カルシウム粒子と酸性リン酸カルシウム粒子を含む粉材と、水を主成分とする液材とを混和し、得られた水系ペーストを象牙質表面に塗布する方法が提案されている(特許文献1)。該方法は、高い割合で象牙細管を封鎖することから、疼痛を効果的に抑制することが期待出来る。しかしながら、封鎖物の耐久性を向上させるという点からは改善の余地があった。
特許文献2には、難溶性リン酸カルシウム粒子、リンを含まないカルシウム化合物、及び、水を含有する象牙細管封鎖剤が記載されている。これによれば、得られたペーストをマイクロブラシを用いて象牙質に対して30秒間擦り込むことで象牙細管が当該封鎖剤によって封鎖されることにより、優れた象牙質透過抑制率が確認された。しかしながら、特許文献1と同様に、封鎖物の耐久性を向上させるという点からは改善の余地があった。
特許文献3には、リン酸カルシウム粒子、分子量300〜50000の縮合ポリリン酸又はその塩を含むリン酸カルシウム組成物が記載されている。これによれば、硬化時間が適切な範囲にあり、歯牙の修復部位にペーストを充填、硬化させた際に良好な辺縁封鎖性を与えることが確認された。しかしながら、当該組成物を象牙細管封鎖材として用いる場合には、象牙細管封鎖性や患部への塗布性を向上させるという点からは改善の余地があった。
WO2010/113800号公報 WO2012/046667号公報 特開2009−195453号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、象牙細管封鎖性が良好で、封鎖物の強度が高く、かつ、酸に対する溶解性が低い象牙細管封鎖材キットを提供することを目的とするものである。
上記課題は、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)を含む粉材(X)と、ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)及び水(C)を含む液材(Y)とからなる象牙細管封鎖材キットであって、リン酸カルシウム混合物(A)の平均粒径が0.5〜10μmであり、ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)と水(C)の重量比(B/C)が0.01〜4であり、粉材(X)と液材(Y)を重量比(X/Y)が0.4〜4の範囲で混合して使用することを特徴とする象牙細管封鎖材キットを提供することによって解決される。
このとき、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)が、酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)と、塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)又はリンを含まないカルシウム化合物(a−3)とを含むことが好適であり、前記酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)が、無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO]粒子、無水リン酸二水素カルシウム[Ca(HPO]粒子、α−リン酸三カルシウム[α−Ca(PO]粒子、β−リン酸三カルシウム[β−Ca(PO]粒子、非晶性リン酸カルシウム[Ca(PO・XHO]粒子、酸性ピロリン酸カルシウム[CaH]粒子、リン酸一水素カルシウム2水和物[CaHPO・2HO]粒子、及びリン酸二水素カルシウム1水和物[Ca(HPO・HO]粒子からなる群から選択される少なくとも1種であることが好適である。
また、このとき、前記塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)が、リン酸四カルシウム[Ca(POO]粒子及びリン酸八カルシウム5水和物[Ca(PO・5HO]粒子からなる群から選択される少なくとも1種であることが好適であり、前記リンを含まないカルシウム化合物(a−3)が、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化カルシウム[CaO]、塩化カルシウム[CaCl]、硝酸カルシウム[Ca(NO・nHO]、酢酸カルシウム[Ca(CHCO・nHO]、乳酸カルシウム[C10CaO]、クエン酸カルシウム[Ca(C・nHO]、メタケイ酸カルシウム[CaSiO]、ケイ酸二カルシウム(CaSiO)、ケイ酸三カルシウム(CaSiO)、及び炭酸カルシウム[CaCO]からなる群から選択される少なくとも1種であることが好適である。
また、このとき、前記粉材(X)及び/又は液材(Y)が、さらにリン酸のアルカリ金属塩(D)を含むことが好適であり、リン酸のアルカリ金属塩(D)が、リン酸一水素二ナトリウム及び/又はリン酸二水素一ナトリウムであることも好適である。
本発明によれば、象牙細管封鎖性が良好で、封鎖物の強度が高く、かつ、酸に対する溶解性が低い象牙細管封鎖材キットが提供される。
本発明は、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)を含む粉材(X)と、ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)及び水(C)を含む液材(Y)とからなる象牙細管封鎖材キットであって、リン酸カルシウム混合物(A)の平均粒径が0.5〜10μmであり、ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)と水(C)の重量比(B/C)が0.01〜4であり、粉材(X)と液材(Y)を重量比(X/Y)が0.4〜4の範囲で混合して使用することを特徴とする。本発明のように、リン酸カルシウム混合物(A)の平均粒径が0.5〜10μmであり、ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)と水(C)の重量比(B/C)が0.01〜4であり、粉材(X)と液材(Y)を重量比(X/Y)が0.4〜4の範囲で混合して使用する構成を採用することにより、象牙細管封鎖性が良好で、封鎖物の強度が高く、かつ、酸に対する溶解性が低い象牙細管封鎖材キットが得られる。
ここで本発明者らは、リン酸カルシウム系硬化物からなる封鎖物の強度を向上させ、酸に対する溶解性を低下させることにより、口腔内環境における耐久性に優れる象牙細管封鎖材キットを開発するにあたり、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)の平均粒径が、特定の範囲内において優れた象牙細管封鎖性を示すことを見出した。また、縮合リン酸及び/又はその塩の中からウルトラリン酸及び/又はその塩(B)を採用し、該ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)と水(C)を特定の比率で配合し、さらに粉材(X)と液材(Y)を特定の重量比で混合した場合においてのみ特異的に封鎖物の強度及び酸に対する耐溶解性が向上することを見出した。したがって、本発明のように、リン酸カルシウム混合物(A)の平均粒径が0.5〜10μmであり、ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)と水(C)の重量比(B/C)が0.01〜4であり、粉材(X)と液材(Y)を重量比(X/Y)が0.4〜4の範囲で混合して使用する象牙細管封鎖材キットとすることが重要である。
本発明の象牙細管封鎖材キットを象牙質表面に塗布すると、固体粒子が象牙細管に侵入することにより象牙細管が封鎖される。さらに、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)と水(C)とが反応することによりヒドロキシアパタイトに転化しながら硬化することで、象牙細管封鎖物が細管内から脱離することなく、知覚過敏抑制効果の持続が期待できる。
本発明の象牙細管封鎖材キットにおいて、ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)と水(C)の重量比(B/C)は0.01〜4である。重量比(B/C)が、0.01未満の場合、封鎖物の強度が低下するだけでなく、酸に対する溶解性が高まるおそれがある。重量比(B/C)は、好適には0.1以上であり、より好適には0.3以上である。一方、重量比(B/C)が、4を超える場合には、象牙細管封鎖材の粘度が大きくなりすぎて、象牙細管封鎖率が低下するおそれがある。更には均一性も不十分なため、硬化物の機械的強度が低下するおそれがある。重量比(B/C)は、好適には3以下であり、より好適には2以下である。
本発明の象牙細管封鎖材キットにおいて、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)の平均粒径は0.5〜10μmである。水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)の平均粒径が0.5μm未満の場合、象牙細管封鎖材の粘度が大きくなりすぎるだけでなく、硬化物の機械的強度が低下するおそれがある。水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)の平均粒径は、より好適には1μm以上である。一方、平均粒径が10μmを超える場合、象牙細管の大きさと比較して粒径が過大となるために、象牙細管封鎖率が低下するおそれがある。水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)の平均粒径は、より好適には7μm以下である。ここで、本発明で使用される、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)の平均粒径とは、リン酸カルシウム混合物(A)を構成し得る粒子全体を、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定し、算出したものである。
本発明に使用されるウルトラリン酸及び/又はその塩(B)とは、2個以上のPO四面体が酸素原子を共有し重合して生成するリン酸及び/又はその塩(縮合リン酸及び/又はその塩)の一種である。縮合リン酸塩は、MO/Pのモル比(Mは1価の金属)により、ポリリン酸塩、メタリン酸塩、ウルトラリン酸塩に分類される。
ポリリン酸塩は、MO/Pのモル比(R)が2>R>1であり、下記式(1)で表され、直鎖状の構造を有している。
n+23n+1 (1)
(但し、nは2以上の整数である。)
メタリン酸塩は、モル比(R)がR=1であり、下記式(2)で表され、環状または極めて長い直鎖状の構造を有している。上記ポリリン酸塩とメタリン酸塩とを合わせて、ポリリン酸塩と称されることもある。
(MPO (2)
(但し、nは3以上の整数である。)
そして、ウルトラリン酸塩は、モル比(R)が1>R>0であり、下記式(3)で表され、分子中に分枝PO基を有する架橋構造を有しており、上記ポリリン酸塩やメタリン酸塩に比べ、特異な構造を有している。
xMO・yP (3)
(但し、xおよびyは、0<x/y<1である。)
このウルトラリン酸塩における1価の金属としては特に限定されず、ナトリウム、カリウム等が挙げられるが、好適にはナトリウムである。
ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)の平均重合度は特に限定されないが、平均重合度は5〜20であることが好ましい。平均重合度が5未満の場合は、ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)によるリン酸カルシウム硬化物に対する架橋構造が不十分となり、硬化物の機械的強度が低下するおそれがある。ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)の平均重合度は、より好適には7以上である。一方、ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)の平均重合度が20を超える場合は、象牙細管封鎖材の粘度が大きくなりすぎて、象牙細管封鎖率が低下するおそれがある。更には均一性も不十分なため、硬化物の機械的強度が低下するおそれがある。ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)の平均重合度は、より好適には15以下である。
本発明に使用される、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)としては特に限定されないが、酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)と、塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)又はリンを含まないカルシウム化合物(a−3)とを含むことが好ましい。
本発明で使用される塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)としては特に限定されず、リン酸四カルシウム[Ca(POO]粒子(以下、TTCPと略記することがある)及びリン酸八カルシウム5水和物[Ca(PO・5HO]粒子からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、特にカルシウムイオンの放出性の観点からリン酸四カルシウム[Ca(POO]粒子がより好適に使用される。
本発明に使用される塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)の平均粒径は0.5〜10μmであることが好ましい。平均粒径が0.5μm未満の場合は、塩基性リン酸カルシウム粒子の溶解が過度になることにより水溶液中のpHが高くなりヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなることで、硬化物の機械的強度が低下するおそれがある。塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)の平均粒径は、より好適には4μm以上である。一方、塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)の平均粒径が10μmを超える場合は、象牙細管の大きさと比較して粒径が過大となるために、象牙細管封鎖率が低下するおそれがある。塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)の平均粒径は、より好適には7μm以下である。塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)の平均粒径は、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)の場合と同様にして測定し、算出したものである。
塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)の製造方法は特に限定されない。市販されている塩基性リン酸カルシウム粒子をそのまま用いてもよいし、適宜粉砕して粒径を整えて使用してもよい。粉砕する際には、ボールミル、ライカイ機、ジェットミルなどの粉砕装置を使用することができる。また、市販の塩基性リン酸カルシウム粒子をアルコールなどの液体の媒体と共にライカイ機、ボールミル等を用いて粉砕してスラリーを調製し、得られたスラリーを乾燥させることにより塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)を得ることもできる。このときの粉砕装置としては、ボールミルを用いることが好ましく、そのポット及びボールの材質としては、好適にはアルミナやジルコニアが採用される。上記のように粉砕して調製した場合の形状は、通常、不定形の粒子となる。
本発明に使用される酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)としては特に限定されないが、無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO]粒子(以下、DCPAと略記することがある)、無水リン酸二水素カルシウム[Ca(HPO]粒子、α−リン酸三カルシウム[α−Ca(PO]粒子、β−リン酸三カルシウム[β−Ca(PO]粒子(以下、β−TCPと略記することがある)、非晶性リン酸カルシウム[Ca(PO・XHO]粒子、酸性ピロリン酸カルシウム[CaH]粒子、リン酸一水素カルシウム2水和物[CaHPO・2HO]粒子、及びリン酸二水素カルシウム1水和物[Ca(HPO・HO]粒子からなる群から選択される少なくとも1種が好適に使用される。これらの中でも、無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO]粒子、及びβ−リン酸三カルシウム[β−Ca(PO]粒子からなる群から選択される少なくとも1種がより好適に使用される。
酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)の平均粒径は0.1〜7μmであることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満の場合は、象牙細管封鎖材の粘度が大きくなり過ぎるおそれがあり、塗布性が低下した結果、象牙細管封鎖性が低下するおそれがある。酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)の平均粒径は、より好適には0.3μm以上である。一方、酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)の平均粒径が7μmを超える場合は、酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)が象牙細管封鎖材中で溶解しにくくなるため、塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)の溶解が過度となり、組成物のpHが高くなることでヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなり、硬化物の機械的強度が低下するおそれがある。酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)の平均粒径は、より好適には3μm以下である。酸性リン酸カルシウム(a−1)の平均粒径は、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)の場合と同様にして測定し、算出したものである。
酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)の製造方法は特に限定されない。市販されている酸性リン酸カルシウム粒子をそのまま用いてもよいし、上記した塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)と同様に適宜粉砕して粒径を整えて使用してもよい。
本発明で使用されるリンを含まないカルシウム化合物(a−3)としては特に限定されないが、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化カルシウム[CaO]、塩化カルシウム[CaCl]、硝酸カルシウム[Ca(NO・nHO]、酢酸カルシウム[Ca(CHCO・nHO]、乳酸カルシウム[C10CaO]、クエン酸カルシウム[Ca(C・nHO]、メタケイ酸カルシウム[CaSiO]、ケイ酸二力ルシウム(CaSiO)、ケイ酸三力ルシウム(CaSiO)、及び炭酸カルシウム[CaCO]等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上が好適に用いられる。中でも、HAp析出能の観点より、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、メタケイ酸カルシウム、ケイ酸二力ルシウム、ケイ酸三力ルシウムからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、水酸化カルシウムがさらに好ましい。
リンを含まないカルシウム化合物(a−3)の平均粒径は0.3〜12μmであることが好ましい。リンを含まないカルシウム化合物(a−3)の平均粒径が0.3μm未満の場合は、組成物中での溶解が早すぎて、象牙細管侵入前に組成物中のカルシウム濃度が高くなるため、酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)表面のヒドロキシアパタイトへの変性が象牙細管侵入前に始まるため、塊状封鎖物を生成しにくくなるおそれがある。リンを含まないカルシウム化合物(a−3)の平均粒径は、より好適には0.7μm以上である。一方、リンを含まないカルシウム化合物(a−3)の平均粒径が12μmを超える場合は、リンを含まないカルシウム化合物(a−3)が、象牙細管の大きさと比較して過度に大きくなるため、象牙細管封鎖性が低下するおそれがある。リンを含まないカルシウム化合物(a−3)の平均粒径は、より好適には9μm以下である。リンを含まないカルシウム化合物(a−3)の平均粒径は、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)の場合と同様にして測定し、算出したものである。
リンを含まないカルシウム化合物(a−3)の製造方法は特に限定されない。市販されているリンを含まないカルシウム化合物をそのまま用いてもよいし、上記した塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)と同様に適宜粉砕して粒径を整えて使用してもよい。
本発明で使用される酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)と塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)の総和のCa/P比は特に限定されないが、1.37〜1.97が好ましい。これによって、初期の象牙細管封鎖性が良好となるとともに、象牙細管封鎖物の機械的強度が高いリン酸カルシウム組成物を得ることができる。上記Ca/P比は、より好適には1.57〜1.77である。
本発明で使用される酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)とリンを含まないカルシウム化合物(a−3)の総和のCa/P比は特に限定されないが、0.9〜1.25が好ましい。通常、Ca/P比はヒドロキシアパタイト中のCa/P比と同等である1.67とするのが好ましいとされている。しかし、酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)、及びリンを含まないカルシウム化合物(a−3)を含む象牙細管封鎖材では、酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)の表面が溶解してリン酸イオンとカルシウムイオンが放出される。次いで、リンを含まないカルシウム化合物(a−3)由来のカルシウムイオンとともに、カルシウムイオンとリン酸イオンとが反応し、ヒドロキシアパタイトを析出させ、塊状封鎖物を生成する。カルシウムイオンが多くなりすぎると、酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)の溶解量が多くなり塊状封鎖物に空隙が生じ、象牙細管封鎖性が低下するおそれがある。酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)及びリンを含まないカルシウム化合物(a−3)の総和のCa/P比は、より好適には1.0〜1.2である。
本発明で使用される水(C)は、象牙細管封鎖材が硬化するために必要不可欠な成分である。象牙細管封鎖材の硬化の機序は、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)と水(C)とが反応して、ヒドロキシアパタイトの析出を伴いながら硬化する。
本発明の象牙細管封鎖材キットは、さらにリン酸のアルカリ金属塩(D)を含むことが好ましい。本発明で用いられるリン酸のアルカリ金属塩(D)としては特に限定されず、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一リチウム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、ならびにこれらの水和物等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上が用いられる。中でも、安全性や純度の高い原料が容易に入手できる観点から、リン酸のアルカリ金属塩(D)がリン酸一水素二ナトリウム及び/又はリン酸二水素一ナトリウムであることが好ましい。
リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径は、1〜20μmであることが好ましい。リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径が1μm未満の場合、組成物中での溶解が早すぎて、象牙細管侵入前に組成物中のリン酸イオン濃度が高くなるため、カルシウムイオンとリン酸イオンの供給バランスが崩れ、ヒドロキシアパタイトの析出速度が低下するおそれがある。更には、リン酸のアルカリ金属塩(D)粒子同士の二次凝集が発生し、同時に混合する他の粒子との分散性が低下するおそれがある。リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径は、より好適には3μm以上である。一方、リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径が20μmを超える場合、リン酸のアルカリ金属塩(D)が組成物中で溶解しにくくなり、ヒドロキシアパタイトの析出速度が低下するおそれがある。リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径は、より好適には15μm以下である。リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径は、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)の場合と同様にして測定し、算出したものである。
リン酸のアルカリ金属塩(D)の製造方法は特に限定されない。市販されているリン酸のアルカリ金属塩をそのまま用いてもよいし、上記した塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)と同様に適宜粉砕して粒径を整えて使用してもよい。
リン酸のアルカリ金属塩(D)は、粉材(X)及び/又は液材(Y)に配合することができる。その配合量は、粉材(X)と液材(Y)を混合して得られるペースト中0.1〜20重量%であることが好ましい。リン酸のアルカリ金属塩(D)の配合量が0.1重量%未満の場合、ヒドロキシアパタイトの析出が促進されないおそれがあり、好適には1重量%以上であり、より好適には2重量%以上である。一方、リン酸のアルカリ金属塩(D)の配合量が20重量%を超える場合、ヒドロキシアパタイトの析出が阻害されるおそれがあり、好適には18重量%以下であり、より好適には15重量%以下である。
本発明の象牙細管封鎖材キットは、本発明の効果を阻害しない範囲で、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)、ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)、水(C)、及びリン酸のアルカリ金属塩(D)以外の成分を含有しても構わない。例えば、フッ素化合物、シリカ粒子、増粘剤、X線造影剤等を配合することができる。
上記フッ素化合物としては特に限定されず、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化銅、フッ化ジルコニウム、フッ化アルミニウム、フッ化スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、フッ化水素酸、フッ化チタンナトリウム、フッ化チタンカリウム、ヘキシルアミンハイドロフルオライド、ラウリルアミンハイドロフルオライド、グリシンハイドロフルオライド、アラニンハイドロフルオライド、フルオロシラン類、フッ化ジアミン銀等が挙げられる。中でも安全性の観点からフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズが好適に用いられる。
上記シリカ粒子は、粉体同士の凝集を防ぎ、取り扱い性を良好に保つことができる。シリカ粒子は特に限定されないが、平均粒径は、0.002〜2μmであることが好ましい。シリカ粒子の平均粒径が0.002μm未満の場合、象牙細管封鎖材の粘度が高くなり取り扱い性が悪化するおそれがあり、好適には0.003μm以上であり、より好適には0.005μm以上である。一方、シリカ粒子の平均粒径が2μmを超える場合、歯質表面の磨耗量が増加するおそれがあり、好適には0.5μm以下であり、より好適には0.2μm以下である。シリカ粒子の平均粒径は、エポキシ樹脂中に分散させた一次粒子を透過型電子顕微鏡を用いて観察することによって算出した。
上記増粘剤としては特に限定されず、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸塩、ポリアスパラギン酸、ポリアスパラギン酸塩、ポリLリジン、ポリLリジン塩、セルロース以外のデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩、カラジーナン、グアーガム、キタンサンガム、セルロースガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、ペクチン、ペクチン塩、キチン、キトサン等の多糖類、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の酸性多糖類エステル、またコラーゲン、ゼラチン及びこれらの誘導体などのタンパク質類等の高分子などから選択される1つ又は2つ以上が挙げられるが、水への溶解性及び粘性の面からはカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸塩から選択される少なくとも1つが好ましい。
上記X線造影剤としては特に限定されず、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、フッ化イッテルビウム、ヨードホルム、バリウムアパタイト、チタン酸バリウム、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス等から選択される1つ又は2つ以上が挙げられる。
また、必要に応じて、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジグリセリン等の多価アルコール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、カンゾウ抽出液、サッカリン、サッカリンナトリウム等の人工甘味料などを加えてもよい。更に、薬理学的に許容できるあらゆる薬剤等を配合することができる。セチルピリジニウムクロリド等に代表される抗菌剤、消毒剤、抗癌剤、抗生物質、アクトシン、PEG1などの血行改善薬、bFGF、PDGF、BMPなどの増殖因子、骨芽細胞、象牙芽細胞、さらに未分化な骨髄由来幹細胞、胚性幹(ES)細胞、線維芽細胞等の分化細胞を遺伝子導入により脱分化・作製した人工多能性幹(iPS:induced Pluripotent Stem)細胞並びにこれらを分化させた細胞など硬組織形成を促進させる細胞などを配合させることができる。
上記以外のその他の添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。その他の添加剤を含有する場合、その含有量は、象牙細管封鎖材キットを構成する粉材(X)と液材(Y)を混合して得られるペーストの全量に対して、0.01〜15重量%が好ましい。その他の添加剤の含有量が0.01重量%未満の場合には添加効果を発揮しないおそれがあり、0.02重量%以上がより好ましく、0.05重量%以上がさらに好ましい。一方、その他の添加剤の含有量が15重量%を超える場合には、象牙細管封鎖性が低下するおそれがあり、13重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。
本発明の象牙細管封鎖材キットは、象牙質表面に塗布等すること、或いは象牙質表面にすり込むことにより好適に使用される。すり込む操作は、マイクロブラシ、綿棒、ラバーカップあるいは歯ブラシ等で象牙質表面を30秒程度擦るだけでよく、それにより象牙細管内に約10μmの深さで、塊状封鎖物が生成される。
本発明の象牙細管封鎖材キットはペースト状態で象牙質表面に塗布される。ペースト状態の象牙細管封鎖材は、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)を含む粉材(X)と、少なくともウルトラリン酸及び/又はその塩(B)及び水(C)を含む液材(Y)とを、粉材(X)と液材(Y)を重量比(X/Y)が0.4〜4の範囲で混合することにより得られる。重量比(X/Y)が0.4未満の場合には、象牙細管の封鎖に必要な、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)がペースト中に少なすぎるため象牙細管封鎖性が低下するおそれがある。重量比(X/Y)は0.6以上が好ましく、0.8以上がより好ましい。一方、重量比(X/Y)が4を超える場合には、ペーストの粘度が高すぎて塗布する際の操作性が低下するおそれがある。重量比(X/Y)は3以下が好ましく、2以下がより好ましい。
本発明の象牙細管封鎖材キットは、象牙質表面に塗布またはすり込まれることで、象牙細管内に象牙細管封鎖材が侵入し、象牙細管を物理的に封鎖する。また、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)は、水(C)の存在下で、カルシウムイオンとリン酸イオンを供給する。これらは、象牙質に浸透し象牙質中のヒドロキシアパタイトを核として沈着することにより、象牙質の再石灰化を引き起こすことも可能である。したがって、象牙細管封鎖材キットからなる歯面処理材、象牙細管封鎖材キットからなる歯磨材が本発明の好適な実施様態である。また、象牙細管封鎖材キットからなる象牙質知覚過敏抑制材も本発明の好適な実施態様である。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
[平均粒径の測定方法]
本実施例において、水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)と、該(A)に含まれる酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)、塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)、リンを含まないカルシウム化合物(a−3)、及びリン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製「SALD−2100型」)を用いて測定し、測定の結果から算出されるメディアン径を平均粒径とした。
[各成分の調製]
(1)ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)の調製
ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)の一例として本実施例で使用するウルトラリン酸ナトリウム(平均重合度10)は、リジェンティス社品製をそのまま使用した。
(2)リン酸四カルシウム(TTCP)粒子(a−2)の調製
本実施例で使用するリン酸四カルシウム粒子(平均粒径:5.0μm、9.2μm)は、太平化学産業社製品をそのまま使用した。
(3)酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)の調製
酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)の一例として本実施例で使用する無水リン酸一水素カルシウム(DCPA)粒子(平均粒径1.1μm)は、市販の無水リン酸一水素カルシウム粒子(太平化学産業社製、平均粒径15.0μm)50g、95%エタノール(和光純薬工業社製「Ethanol(95)」)を120g、及び直径が10mmのジルコニアボール240gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(ニッカトー社製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え120rpmの回転速度で24時間湿式粉砕を行うことで得られたスラリーをロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間乾燥させ、更に60℃で24時間真空乾燥することで得た。
酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)の一例として本実施例で使用するβ−リン酸三カルシウム(β−TCP)粒子(平均粒径1.0μm)は、市販のβ−リン酸三カルシウム粒子(太平化学産業社製)をそのまま使用した。
(4)リンを含まないカルシウム化合物(a−3)の調製
リンを含まないカルシウム化合物(a−3)の一例として本実施例で使用する水酸化カルシウム(平均粒径1.0μm)は、市販の水酸化カルシウム(和光純薬工業社製、平均粒径14.5μm)50g、99.5%エタノール(和光純薬工業社製「EthanoI,Dehydrated(99.5)」)240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(ニッカトー社製rHD−B−104ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で15時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロ一夕リーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間乾燥させることで得た。
リンを含まないカルシウム化合物(a−3)の一例として本実施例で使用する酸化カルシウム(平均粒径2.0μm)は、市販の酸化カルシウム(和光純薬工業社製、平均粒径10.0μm)50g、99.5%エタノール(和光純薬工業社製「EthanoI,Dehydrated(99.5)」)240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(ニッカトー社製rHD−B−104ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で10時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバボレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間真空乾燥することで得た。
(5)水(C)の調製
水(C)は市販の日本薬局方精製水をそのまま使用した。
(6)リン酸のアルカリ金属塩(D)の調製
リン酸のアルカリ金属塩(D)の一例として本実施例で使用するリン酸一水素ナトリウム(平均粒径4.6μm)は、市販のリン酸一水素ナトリウム(和光純薬工業社製)をナノジェットマイザー(NJ−100型、アイシンナノテクノロジー社製)で、粉砕圧力条件を原料供給圧:0.7MPa/粉砕圧:0.7MPa、処理量条件を8kg/hrとし、1回処理することにより得た。
[粉材(X)の調製]
表1及び表2に示す組成で秤量したリン酸四カルシウム粒子(a−2)、酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)、リンを含まないカルシウム化合物(a−3)、及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を高速回転ミル(アズワン社製「SM−1」)中に加え、1000rpmの回転速度で3分間混合することで、粉材(X)を得た。
[液材(Y)の調製]
表1及び表2に示す組成で秤量したウルトラリン酸及び/又はその塩(B)と水(C)をビーカー中に加え、マグネティックスターラーで1時間攪拌し、その後超音波分散を30分することで、液材(Y)を得た。
[象牙細管封鎖材の調製]
上記で得た粉材(X)と液材(Y)を表1に示す重量比で混合することでペースト状の象牙細管封鎖材を調製した。
[象牙細管封鎖率試験]
(1)牛歯ディスクの作製
健全牛歯切歯の頬側中央を耐水研磨紙で80番、1000番の順に研磨して象牙質を露出し、直径約7mm、厚さ2mmのディスク状にした。この牛歯研磨面をさらにラッピングフィルム(住友スリーエム社製)で1200番、3000番、8000番の順に研磨した。次いで、0.5M EDTA溶液(和光純薬工業株社製)の5倍希釈溶液に30秒間浸漬後、60秒間水洗し、10%次亜塩素酸ナトリウム溶液(ネオクリーナー「セキネ」、ネオ製薬工業社製)を60秒間作用させた後、60秒間水洗した。
(2)象牙細管の封鎖
上記(1)で得られた牛歯ディスクの頬側象牙質表面上に、ペースト状の象牙細管封鎖材を0.1g採取し、マイクロブラシレギュラー(マイクロブラシ社製)を用いて、象牙質処理面中央部の直径5mmの範囲に30秒間すり込んだ。その後、牛歯ディスク表面の象牙細管封鎖材のペーストを蒸留水で除去し、SEM観察用の試験片を得た。
(3)SEM観察
上記(2)で得られた試験片を、室温、減圧下で1時間乾燥し、金属蒸着処理した後、象牙細管封鎖材処理面上の任意の3点を、走査型電子顕微鏡(S−3500N、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて倍率3000倍で観察した。各観察視野内の象牙細管封鎖率を下記式に従って計算し、3点の値を平均した。試験はn=5で行い、各試験で得られた値を平均して、象牙細管封鎖率とした。
象牙細管封鎖率(%)={(封鎖された象牙細管の数)/(象牙細管の数)}×100
[圧縮強度試験]
(1)圧縮強度測定用サンプルの調製
直径が6mm、深さが3mmの分割可能なステンレス製のモールドを平滑なガラス板上に乗せ、気体を含ませないように注意しながらペースト状の象牙細管封鎖材を充填し、上部より平滑なガラス板で圧縮することで組成物ペーストを成型した(n=5)。その後、37℃、相対湿度100%の環境で24時間インキュベートした後、上記モールドより硬化物を取り出し、同じく37℃の蒸留水150ml中に浸漬し、更に24時間保持した。
(2)圧縮強度の測定
上記(1)の後、硬化物の圧縮強度(MPa)を、JIST6609−1に記載された方法に準じて、力学的強度測定装置(株式会社島津製作所製「AG−1 100kN」)を使用し、円柱状の硬化物の軸方向に0.75mm/minの速度で荷重をかけて圧縮強度(MPa)を測定した(n=5)。
[酸溶解性試験]
(1)酸溶解性測定用サンプルの調製
直径30mm、厚さ5mmのポリメチルメタクリレート製で、中央に直径5mm、深さ2mmの孔を設けた円形の試料ホルダの孔の部分に、気体を含ませないように注意しながらペースト状の象牙細管封鎖材を充填し、上部より平滑なガラス板で圧縮することで組成物ペーストを成型した(n=5)。その後、37℃、相対湿度100%の環境で24時間インキュベートした後、上記モールドからガラス板を外した。1200番研磨紙を用いて連続注水下で、硬化物をモールド面と平坦になるまで研磨した。
(2)溶解液の調製
乳酸8.26gと乳酸ナトリウム0.92gを蒸留水に溶解して1Lに調製した。使用前に、この溶液のpHが2.74±0.02であることを確認した。
(3)酸溶解性の測定
試料ホルダの高さ(均等に90度間隔で試料から0.5〜1mm離れた位置で測定した高さの平均値)と、試料のほぼ中心における高さについて、ダイヤルゲージを用いて計測した。試料ホルダの高さから試料の高さを差し引きD(初期深さ)を求めた。試料が充填された試料ホルダを30mLの溶解液を入れた個別の容器に上向きに水平に浸漬した。37℃、24時間浸漬後、試料が充填された試料ホルダを取り出し蒸留水で水洗した。溶解液浸漬後の試料の高さを測定して、溶解後の深さ(D)を計測した。試料の酸による溶解深さ(D)を以下の式によって求めた。
D=D−D
:浸漬前の試料の中央部の深さ(mm)
:浸漬後の試料の中央部の深さ(mm)
[操作性試験]
(1)操作性
表1〜2に示す組成からなる粉材(X)0.1gを精秤し、この上に表1〜2に示す組成からなる液材(Y)を表1〜2に示す粉液重量比になるよう加え、練和紙(85×115mm)上で30秒間練和することでペーストを調製した。そのペースト性状について、以下の評価基準に従い操作性を評価した。
(2)操作性の評価基準
A:粉材と液材の練和開始直後のなじみが良く、歯科用練和棒による20秒間の練和により簡単にペーストを得ることができる。得られたペーストの伸びは良く、塗布しやすい。
B:粉材と液材の練和開始直後のなじみが少し悪いが、歯科用練和棒による20秒間の練和によりペーストを得ることはできる。ペーストの伸びは良く、塗布しやすい。
C:粉材と液材の練和開始直後のなじみが悪く、ペーストを得るのに歯科用練和棒での練和を30秒間要する。ペーストの伸びが不十分で塗布しづらい。
D:粉材と液材の練和開始直後のなじみが悪く、ペーストを得るのに歯科用練和棒での練和を30秒間以上要する、または練和することができない。練和できた場合、ペーストの伸びも悪く大変に塗布しづらい。
なお、A〜Cが実使用レベルである。
実施例1〜14
上記示す手順により表1に示す組成で象牙細管封鎖材を調製し、象牙細管封鎖率、圧縮強さ、酸溶解性、操作性を評価した。得られた評価結果を表1にまとめて示す。
比較例1〜7
上記示す手順により表2に示す組成を調製し、象牙細管封鎖率、圧縮強さ、酸溶解性、操作性を評価した。得られた評価結果を表2にまとめて示す。
本比較例に使用するリン酸四カルシウム粒子(平均粒径21.2μm)は、以下の通りに調製した。市販の無水リン酸一水素カルシウム粒子(Product No.1430,J.T.Baker Chemical Co.社製)及び炭酸カルシウム(Product No.1288,J.T.Baker Chemical Co.社製)を等モルとなる様に水中に加え、1時間撹拝した後、ろ過・乾燥することで得られたケーキ状の等モル混合物を電気炉(FUS732PB,アドバンテック東洋社製)中で1500℃、24時間加熱し、その後デシケータ中で室温まで冷却することでリン酸四カルシウム塊を調製した。更に、乳鉢中で荒く砕き、その後箭がけを行うことで微粉ならびにリン酸四カルシウム塊を除き、0.5〜3mmの範囲に粒度を整え、粗リン酸四カルシウムを得た。この粗リン酸四カルシウム100g、及び直径が20mmのジルコニアボール300gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(ニッカトー社製「TypeA−3HDポットミル」)中に加え、200rpmの回転速度で2時間30分粉砕することで得た。
本比較例に使用する直鎖状ポリリン酸ナトリウム(平均重合度10)は、リジェンティス社品製をそのまま使用した。また、ヘキサメタリン酸ナトリウムは、和光純薬社製品をそのまま使用した。
Figure 0006083742
Figure 0006083742

Claims (7)

  1. 水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)を含む粉材(X)と、ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)及び水(C)を含む液材(Y)とからなる象牙細管封鎖材キットであって、
    リン酸カルシウム混合物(A)の平均粒径が0.5〜10μmであり、ウルトラリン酸及び/又はその塩(B)と水(C)の重量比(B/C)が0.01〜4であり、粉材(X)と液材(Y)を重量比(X/Y)が0.4〜4の範囲で混合して使用することを特徴とする象牙細管封鎖材キット。
  2. 水と反応して硬化するリン酸カルシウム混合物(A)が、酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)と、塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)又はリンを含まないカルシウム化合物(a−3)とを含む請求項1記載の象牙細管封鎖材キット。
  3. 前記酸性リン酸カルシウム粒子(a−1)が、無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO]粒子、無水リン酸二水素カルシウム[Ca(HPO]粒子、α−リン酸三カルシウム[α−Ca(PO]粒子、β−リン酸三カルシウム[β−Ca(PO]粒子、非晶性リン酸カルシウム[Ca(PO・XHO]粒子、酸性ピロリン酸カルシウム[CaH]粒子、リン酸一水素カルシウム2水和物[CaHPO・2HO]粒子、及びリン酸二水素カルシウム1水和物[Ca(HPO・HO]粒子からなる群から選択される少なくとも1種である請求項2記載の象牙細管封鎖材キット。
  4. 前記塩基性リン酸カルシウム粒子(a−2)が、リン酸四カルシウム[Ca(POO]粒子及びリン酸八カルシウム5水和物[Ca(PO・5HO]粒子からなる群から選択される少なくとも1種である請求項2又は3記載の象牙細管封鎖材キット。
  5. 前記リンを含まないカルシウム化合物(a−3)が、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化カルシウム[CaO]、塩化カルシウム[CaCl]、硝酸カルシウム[Ca(NO・nHO]、酢酸カルシウム[Ca(CHCO・nHO]、乳酸カルシウム[C10CaO]、クエン酸カルシウム[Ca(C・nHO]、メタケイ酸カルシウム[CaSiO]、ケイ酸二カルシウム(CaSiO)、ケイ酸三カルシウム(CaSiO)、及び炭酸カルシウム[CaCO]からなる群から選択される少なくとも1種である請求項2〜4のいずれか記載の象牙細管封鎖材キット。
  6. 前記粉材(X)及び/又は液材(Y)が、さらにリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む請求項1〜5のいずれか記載の象牙細管封鎖材キット。
  7. リン酸のアルカリ金属塩(D)が、リン酸一水素二ナトリウム及び/又はリン酸二水素一ナトリウムである請求項6記載の象牙細管封鎖材キット。
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